18章 塗装工事 8節 つや有合成樹脂エマルションペイント塗り(EP-G)

18章 塗装工事

8節 つや有合成樹脂エマルションペイント塗り(EP-G)

18.8.1 一般事項

この節は、建築物の内外壁面、天井等のコンクリート面、モルタル面、せっこうプラスター面、せっこうボード面及びその他のボード面等並びに屋内の木部、鉄鋼面及び亜鉛めっき鋼面に用いる、つや有合成樹脂エマルションペイント塗り仕上げを対象としている。

つや有合成樹脂エマルションペイント塗りは、ホルムアルデヒド発散建築材料に指定されていない塗料を利用した塗装仕様である。屋内の木部、鉄鋼面、亜鉛めっき鋼面に対して、本塗り仕様と同様の用途に適用できる塗装仕様として、4節の合成樹脂調合ペイント塗り及びフタル酸樹脂エナメル塗りがある。しかし、合成樹脂調合ペイント(JIS K 5516)及びフタル酸樹脂エナメル(JIS K 5572)はホルムアルデヒド発散建築材料に指定されており、特記によりF☆☆☆☆以外の材料が指定されている場合には、内装としての使用面積が制限されることになる。つや有合成樹脂エマルションペイント塗りは、ホルムアルデヒド発散建築材料に指定されている塗料を使用していないため、建築基準法のシックハウス症候群対策による規制を受けない。

つや有合成樹脂エマルションペイントは水系塗料であり、合成樹脂調合ペイントやフタル酸樹脂エナメルと比較して、揮発性有機化合物(VOC)の発生が少なく、ホルムアルデヒドの発散等級はF☆☆☆☆である。

18.8.2 コンクリート面、モルタル面、せっこうプラスタ一面、せっこうボード面、その他ボード面等のつや有合成樹脂エマルションペイント塗り

(1) 材 料
(ア) 合成樹脂エマルションシーラー

JIS K 5663(合成樹脂エマルションペイント及びシーラー)に規定される品質のものとする。

(イ) つや有合成樹脂エマルションペイント(JIS K 5660)

JIS K 5660に規定されており、合成樹脂エマルションと着色顔料、体質顔料、補助剤、添加剤等から構成される水系塗料である。

水による希釈が可能で、水を加えて塗料に流動性をもたせることができ、臭気が少なく溶剤の揮散による大気汚染や中毒の危険性が少ない塗料である。そのため、従来のアクリル樹脂エナメルを使用していた部位に使われるようになってきている。

塗付された塗料は、水分が蒸発するとともに樹脂粒子が接近融着して連続塗膜を形成する。気温 –5℃以下では凍結するため、低温保管を避ける。また、気温 5℃以下では施工を避ける。

塗装用具や塗膜硬化機構は、9節に述べる「合成樹脂エマルションペイント」と同様であり、一度硬化乾燥すると表面光沢のある耐水性を有する塗膜になる。

(2) 塗 装

(ア) 「標仕」では、天井面等の見上げの部分においては、外観上特に問題がないため、工程3「研磨紙ずり」を省略することとしている。

(イ) コンクリート面に、つや有合成樹脂エマルションペイント塗りを適用する場合の素地ごしらえは、「標仕」表18.2.5を適用する。

(ウ) 塗装方法は、はけ塗り、ローラーブラシ塗り、吹付け塗りのいずれかとする。

(エ) 塗料の塗付けは、同じ方向にそろえ、1日の工程終了は区切りのよい所まで塗装する。途中で終了したり塗り残したりすると、色むらや光沢むら等の仕上り外観に異常を生じることがある。

(オ) 希釈に使用する水は、水道水を標準として、水道水以外の水を使用する場合は、事前に各材料との適合性を確認する必要がある。

(カ) つや有合成樹脂エマルションペイントは水系塗料であるが、塗料の飛散、粉じんの吸入、皮膚や目への付着等、安全衛生に注意する。

(キ) 塗料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.8.1に示す。

(ク) 各工程の工程間隔時間及び最終養生時間は、十分確保する。工程間隔時間及び最終養生時間が短いと研磨紙ずりの時に目詰りしたり、研磨目が出たりして、仕上り外観を損ねる場合がある。

(ケ) 下塗りに用いる合成樹脂エマルションシーラーは、上塗塗料の製造所の指定する水系塗料とする。

表18.8.1 つや有合成樹脂エマルションペイント渡りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間

18.8.3 木部のつや有合成樹脂エマルションペイント塗り

(1) 材 料
(ア) 合成樹脂エマルションシーラー

 18.8.2(1)(ア)を参照する。

(イ) 合成樹脂エマルションパテ(JIS K 5669)

 JIS K 5669に規定される耐水形薄付け用とする。

(ウ) つや有合成樹脂エマルションペイント

 18.8.2(1)(イ)を参照する。

(2) 塗 装

(ア) 上塗りとの適合性を確保するため、合成樹脂エマルションシーラーはつや有合成樹脂エマルションペイントの製造所が指定する水系塗料とする。

(イ) 合成樹脂エマルションパテの耐水性は、エポキシ樹脂パテのような反応硬化形樹脂パテと比較すると、十分ではない。したがって、塗膜のふくれやはがれを防止するために、浴室や洗面所等の水回り部分への適用は避ける。

(ウ) 塗料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を表18.8.2に示す。

表18.8.2 木部のつや有合成樹脂エマルションペイント塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間

18.8.4 鉄鋼面のつや有合成樹脂エマルションペイント塗り

(1) 材 料
(ア) 鉛・クロムフリーさび止めペイント2種

 18.3.2(2)(ア)を参照する。

(イ) 水系さび止めペイント

 18.3.2(2)(ウ)を参照する。

(ウ) つや有合成樹脂エマルションペイント

 18.8.2(1)(イ)を参照する。

(2) 塗 装

(ア) 水系さび止めペイント又は鉛・クロムフリーさび止めペイント2種の性能を発揮させるためには、素地ごしらえを十分に行い、鉄鋼面に良くなじませるように塗装する。

(イ) 塗料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.8.3に示す。

表18.8.3 鉄鋼面のつや有合成樹脂エマルションペイント塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間

18.8.5 亜鉛めっき鋼面のつや有合成樹脂エマルションペイント塗り

(1) 材 料
(ア) 水系さび止めペイント

 18.3.2(2)(ウ)を参照する。

(イ) つや有合成樹脂エマルションペイント

 18.8.2(1)(イ)を参照する。

(2) 塗 装

塗料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.8.4に示す。

表18.8.4 亜鉛めっき鋼面のつや有合成樹脂エマルションペイント塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間

18章 塗装工事 9節 合成樹脂エマルションペイント塗り(EP)

18章 塗装工事

9節 合成樹脂エマルションペイント塗り(EP)

18.9.1 一般事項

この節は、建築物の内外壁面や天井等のコンクリート面、モルタル面、せっこうプラスター面、せっこうボード面、その他ボード面等に対する合成樹脂エマルションペイント塗りに適用する。平滑で汎用的な着色仕上げを対象としている。

18.9.2 合成樹脂エマルションペイント塗り

「標仕」18.9.2では、合成樹脂エマルションペイント塗りは、表18.9.1により種別は特記による。特記がなければB種と規定している。美粧性が求められる場合には、中塗りの1回目のあとに研磨紙ずりを行い、2回目の中塗りを行うことで平滑性と塗膜の厚みを持たせた仕上げとなるA種を適用する。

(1)材 料
(ア) 合成樹脂エマルションシーラー

 18.8.2(1)(ア)を参照する。

(イ) 合成樹脂エマルションペイント

 JIS K 5663(合成樹脂エマルションペイント及びシーラー)に規定されており、合成樹脂エマルションをベースとして、着色顔料や体質顔料、補助剤、添加剤等 を加えた水系のつや消し塗料である。

水による希釈が可能で加水して塗料に流動性をもたせることができ、臭気が少なく溶剤揮散による大気汚染や中毒の危険性が少ない塗料である。

塗付された塗料は、水分が蒸発するとともに樹脂粒子が接近融着して、連続塗膜を形成する。気温 −5℃以下では凍結するため、低温保管を避ける。また、気温5℃以下では施工を避ける。

JISでは1種(主として外部用)及び2種(内部用)が規定されているが、「標仕」では1種のみをコンクリート面、モルタル面、せっこうプラスタ一面、せっこうボード面、その他ボード面等に適用している。その他木部の着色仕上げには使用可能であるが、金属面には使用できない。

(2) 塗 装

(ア) 塗料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.9.1に示す。

(イ) (ア) 以外は、18.8.2(2)に準ずる。

表18.9.1 合成樹脂エマルションペイント塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間

18章 塗装工事 10節 ウレタン樹脂ワニス塗り(UC)

18章 塗装工事

10節 ウレタン樹脂ワニス塗り(UC)

18.10.1 一般事項

この節は、建築物内部の建具、手すり、床等の木質系部材に対する仕上げを対象としている。

18.10.2 ウレタン樹脂ワニス塗り

(1) 材 料
(ア) 油性顔料着色剤

一般的にはピグメントステインと呼称される着色剤であり、顔料をボイル油や合成樹脂などで練り合わせて添加剤や溶剤を加えたものである。その品質は JASS 18 M-306に規定されている。油性顔料済色剤は1液形油変性ポリウレタンワニス塗りの場合に特記により適用する。

なお、ピグメントステイン(油性顔料着色剤)のみを利用した建築物外部及び内部の木部仕上げについては、18.11.2(1)に[ピグメントステイン塗り]として示している。

(イ) 溶剤形顔料着色剤
18.5.2(1)(イ)を参照する。

なお、溶剤形顔料着色剤は2液形ポリウレタンワニス塗りの場合に特記により適用する。

(ウ) 1液形油変性ポリウレタンワニス(JASS 18 M-301)

イソシアネートと乾性油との反応により得られる、ウレタン結合を有する樹脂を主要な塗膜形成要素とした透明の酸化重合形塗料である。その品質は「JASS 18 塗装工事」M-301に規定されている。

(エ) 2液形ポリウレタンワニス(JASS 18 M-502)

ポリオールとイソシアネート化合物を、主要な塗膜形成要素とした透明の2液反応硬化形塗料で、その品質はJASS 18 M-502に規定されている。

常温で硬化乾燥して溶剤が蒸発すると、ポリオールとイソシアネート樹脂が反応してウレタン結合を有する透明塗膜を形成する。

(2) 塗 装

(ア) 「標仕」では、塗装種別をA種(3回塗り)とB種(2回塗り)としており、特記がなければB種としている。

(イ) 「標仕」表18.10.1の (注)3に示すように着色は特記により行う。また、(注)4に示すように、下塗りとの相性を考慮して、1液形湘変性ポリウレタンワニスの場合は油性顔料着色剤(JASS 18 M-306(ピグメントステイン))とし、2液形ポリウレタンワニスの場合は溶剤形顔料着色剤を使用する。

着色を行わない場合は、素地の色調を活かした木地(生地)仕上げとなる。

(ウ) 下塗り、中塗り及び上塗りの工程には、同一材料を使用する。

「標仕」には規定されていないが、上塗りに 2液形ポリウレタンワニスを使用する場合は、下塗りに2液形ポリウレタンシーラー、中塗りには 2液形ポリウレタンサンディングシーラーを使用する塗装工程も一般的である。2液形ポリウレタンシーラー及び2液形ポリウレタンサンデイングシーラーの品質はJASS 18 M-302に規定されている。

(エ) 下塗りは、素地に塗料を十分に浸透させることにより、吸込みが均ーになり、むらを防止するとともに塗膜の付着性を向上させる。

(オ) 1液形油変性ポリウレタンワニスは、油性成分の酸化重合により硬化するため、最短でも24時間程度の硬化時間を必要とする。したがって、乾燥硬化の不良による縮みやしわの発生に注意する。余裕をもった工程間隔時間及び最終養生時間が必要であり、特に、厚膜になると縮みやしわが発生しやすいため、厚塗りを避ける。

なお、ワニスの乾燥塗膜には、塗重ね時間の制約があり、長時間放置してから塗り重ねると層間はく離を生じやすくなるため注意する。

(カ) シンナーは、塗装方法や乾燥条件に応じて使い分けるのが一般的である。肌あれや発泡等の仕上り塗膜の欠陥を生じるため、塗料の製造所が指定するシンナーを用いる。

(キ) 塗装方法は、はけ塗り又はローラーブラシ塗りとする。

(ク) 2液形ポリウレタンワニスに使用しているイソシアネート化合物は反応性が強く、粘膜や皮膚に触れるとかぶれることがあるため、使用の際は安全衛生上十分な措置を講ずる。

(ケ) 各塗装工程の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.10.1に示す。

表18.10.1 ウレタン樹脂ワニス塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間

18章 塗装工事 11節 ステイン塗り

18章 塗装工事

11節 ステイン塗り

18.11.1 一般事項

この節は、建築物の屋内における木部のオイルステイン塗り並びに建築物の屋外及び屋内における木部のピグメントステイン塗り仕上げを対象としている。

18.11.2 ステイン塗り

(1) ピグメントステイン塗り

(ア) ピグメントステイン(油性顔料着色剤)は18.10.2(1)(ア) で解説したように、顔料をボイル油や合成樹脂などで練り合わせて添加剤や溶剤を加えたものである。ビグメントステインは染料でなく顔料を使用しているため、オイルステインより耐候性は良好であり、屋外にも使用される。ピグメントステインは既調合製品であり、品質はJASS 18 M-306に規定されている。

(イ) 塗装は、着色むらが生じないように、はけ塗り又は吹付け塗りとする。塗付け後は、材料が乾き切らないうちに全面をふき、むらが生じないように余分な材料を軽くふき取る。

(ウ) 有機溶剤を用いるため、塗装作業時には換気に注意する。また、作業に使用した紙や布片等は自然発火する可能性があるため、水を入れた容器中に入れた後、乾かしてから処分する。

(エ) ピグメントステインの気温20℃における標準工程間隔時間及び標準最終養生時間は、24時間以上である。

(2) オイルステイン塗り

(ア) オイルステイン(油性染料着色剤)は、18.5.2(1)(ウ)に示したように、油溶性染料を芳香族、脂肪族炭化水素系溶剤(ミネラルターペン等)と少量の油ワニスあるいは合成樹脂ワニスに溶解した着色剤である。品質はJISや日本建築学会材料規格等で規定されていないため、製造所の技術資料や公的試験結果等を参考に適切なものを選定して特記する必要がある。

オイルステインには海外からの輸入品も多い。また、原料として石油由来の溶剤やワニスではなく、自然素材由来の溶剤やワニスを使用することにより安全性に配慮するという製品がある。しかし、自然素材由来であってもホルムアルデヒドが放散する可能性があるため、屋内に使用するオイルステインではホルムアルデヒド放散量の確認が必要である。

(イ) 塗装は、着色むらが生じないように、はけ塗り又は吹付け渡りとする。塗付け後は、材料が乾き切らないうちに全面をふき、むらが生じないように余分な材料を軽くふき取る。

(ウ) 有機溶剤を用いるため、塗装作業時には換気に注意する。また、作業に使用した紙や布片等は自然発火する可能性があるため、水を入れた容器中に入れた後、乾かしてから処分する。

(エ) オイルステインの気温20℃における標準工程間隔時間及び標準最終養生時間は、24時間以上である。

18章 塗装工事 12節 木材保護塗料塗り(WP)

18章 塗装工事

12節 木材保護塗料塗り(WP)

18.12.1 一般事項

この節は、建築物の屋外における木部の木材保護塗料塗りを対象としている。木材保護塗料塗りは、外壁、門柱、バルコニー等の屋外で使用される木質系素地に対する半透明塗装仕上げに用いられる。仕上り面は木質系素地の木目が見えるため、木材の質感を生かした着色仕上げとなる。

18.12.2 木材保護塗料塗り

(1) 材 料

木材保護塗料は、樹脂(アルキッド樹脂、亜麻仁油等)及び新色顔料のほかに、防腐、防かび、防虫効果を有する薬剤を含むことを特徴とする既調合の半透明塗料である。しかし、木材保護塗料に含まれる木材保存剤成分は、主として塗膜の耐久性を向上させるために配合されているもので、いわゆる木材保存剤と比較すると防腐、防かび、防虫効果は低いことに注意する必要がある。

木材保護塗料の品質は、「JASS 18 塗装工事」M-307に規定されている。

なお、JASS 18 M-307は、2013年の「JASS 18」改定(第7次)時より「かび抵抗性」に関する試験項目が追加されている。

「標仕」においてJASS 18 M-307への適合は、「かび抵抗性」を含む最新の規格への適合を要求している。したがって、「かび抵抗性」が確認されていない旧 JASS 18 M-307への適合のみでは不十分である。

(2) 塗 装

(ア) 「標仕」では、塗装種別をA種(3回塗り)とB種(2回塗り)としており、種別の選定は特記により、特記がなければB種としている。

(イ) 木材保護塗料塗りは、素地の状態がそのまま仕上りに影響するため、表18.2.1にしたがった適切な素地ごしらえが必要である。

(ウ) 木材保護塗料は、木材内部に十分浸み込ませることが重要である。また、木材保護塗料は原液で使用することを基本とし、希釈はしない。木材保護塗料は、塗り回数が多くなるにしたがって、木質系素地への浸透性が低下するので、A種の上塗り(2回目)では塗付け量を0.04kg/m2としている。

(エ) 木材保護塗料塗りは、屋外で使用される木質系素地に対して適用される。11節に示したピグメントステイン塗りは屋内及び屋外における木部に適用できる。屋外での耐候性を比較すると、一般に、ピグメントステイン塗りより木材保護塗料塗りの方が優れている。

(オ) 各塗装工程での標準工程間隔時間及び最終養生時間を、表18.12.1に示す。

表18.12.1 木材保護塗料塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間

18章 塗装工事 13節 「標仕」以外の塗装仕様

18章 塗装工事

13節 「標仕」以外の塗装仕様

18.13.1 「標仕」以外の塗装仕様の位置付け

「標仕」に規定されている塗料以外にも新しい塗料が開発されているが、まだ塗装の標準化がされていないこと、また、使用実績も少ないことから一般的な仕様とはなっていない。

しかし、塗装に要求される性能が高まりつつある中で、特記による適用も考えられることから、本節では参考としてこれらの塗料に対する仕様の例を示す。

また、従来の「標仕」には規定されていたが、諸般の事情により平成25年版以降の改定において「標仕」では規定されていない仕様についても、特記による適用の可能性があるので、参考として示している。

18.13.2 合成樹脂エマルション模様塗料塗り(EP-T)

合成樹脂エマルション模様塗料塗りは、建築物の内壁面や天井等のコンクリート面、モルタル面、せっこうプラスター面、せっこうボード面、その他ボード面等に対するスチップル等の模様仕上げに用いられる塗装である。

(1) 材 料
(ア) 合成樹脂エマルションシーラー

 18.8.2(1)(ア)を参照する。

(イ) 合成樹脂エマルションペイント

 18.9.2(1)(イ)を参照する。

(ウ) 合成樹脂エマルション模様塗料(JIS K 5668)
JIS K 5668に規定されており、合成樹脂エマルション、顔料、充填材、添加剤等を配合した高粘度形塗料で、吹付けやローラー塗りでスチップル模様やゆず肌模様等の表面テスクチャーがあり、表面光沢がほとんどない硬化塗膜を形成する。
平成31年版「標仕」のA種では、色調の調整や色替えにJIS K 5663(合成樹脂エマルションペイント及びシーラー)の合成樹脂エマルションペイント1種を仕上げ塗りとして用いていた。

JISでは1種(屋外用)、2種(屋内用)、3種(屋内の天井用)等が規定されているが、平成31年版「標仕」では、上塗りに2種を用い、下塗りと仕上げ塗りには合成樹脂エマルションペイントの1種を用いていた。

(2) 塗 装

(ア) 色調の調整は、一部可能であるが、濃彩色になると粘性が変化して仕上り模様が異なることもあるため、適切な粘度で塗装する必要がある。

(イ) 各材料の希釈割合は、塗料の製造所の指定とする。

合成樹脂エマルション模様塗料は、希釈割合や吹付け塗装ガンの種類、ノズル口径、吹付け圧力、ローラーブラシの種類等によって、表面模様の仕上りや外観が変化するので十分注意する。また、現場においては、あらかじめ塗り見本により仕上りの状態を確認しておく。

(ウ) 材料の保管、調合(水希釈乱、かくはん等)、使用有効期限等は、各材料の製造所の仕様を遵守する

(エ) 合成樹脂エマルション模様塗料塗りは、一般的には次のような塗装方法を適用する。

(a) 下塗りは、はけ塗り、吹付け塗り又はローラーブラシ塗り

(b) 仕上げ塗りと上塗りは、ローラーブラシ塗り又は吹付け塗り

(オ) 希釈に使用する水は、水道水を標準とする。

(カ) 各工程間の工程間隔時間及び最終養生時間が不十分であると、仕上り模様が変化することがあるため注意する。

18.13.3 コンクリート系素地に対する透明塗装

 

打放しコンクリートの外観を生かした透明塗装である。コンクリートの外観が濡れ色になるのを防止するため、下塗りの段階で、濡れ色にならないタイプの浸透性吸水防止材を塗付する場合が多い。透明塗装用の塗料としては、常温乾燥形ふっ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、ポリウレタン樹脂等をビヒクルとしたクリヤ塗料が使用されている。

表18.13.1に塗装仕様の例を示す。この塗装仕様はコンクリート系素地のみではなく、石材等にも適用されている例がある。また、簡易な仕上げとして塗装種別B種のように、浸透性吸水防止材のみを塗り付ける仕様もある。

表18.13.1 コンクリート系素地面に対するクリヤ塗装の工程例

18.13.4 抗菌塗料

MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)による院内感染や0-157対策のため、部位によっては抗菌塗料を用いた塗装が実施されている。よく知られているように、ペニシリン等の抗生物質は多くの細菌性疾息の治療に役立つが、一方では、抗生物質に耐性を有する細菌が病院等の施設にはびこり、各種感染症の原因となることが問題となっている。このような院内感染の原因となる細菌の約1割がMRSAである。この細菌はペニシリン系の抗生物質であるメチシリンに耐性を有しており、通常、健康な人であればほとんど感染の心配はないといわれているが、抵抗力の弱い新生児、老人、入院患者等には感染する場合があり、問題となっている。

抗菌塗料は、このような背景から開発された塗料であり、簡単に説明すれば塗料中に抗菌作用のある薬剤(溶出タイプ)や銀イオン(接触タイプ)等を混人した塗料である。

抗菌塗料の性能は、抗菌性の他に、効果の持続性や安全性により評価される。表18.13.2には、溶出タイプと接触タイプの塗料の特徴を示す。溶出タイプ抗菌塗料は各種抗菌剤が利用されるため抗菌性は高いが、抗菌剤の特徴により細菌に対する効果が異なったり、耐性菌を生じる可能性も否定できない。また、安全性に関しても接触タイプより低い。

一方、接触タイプの抗菌塗料としては銀イオンを混入した製品が多い。銀イオンの抗菌メカニズムについてはまだ完全に解明されていないようであるが、細菌の基本代謝経路の酵素阻害や、細胞膜の物質移動阻害を起こすと考えられている。接触タイプ抗菌塗料は、表18.13.2に示すように適応できる菌種が広く、持統性も高いが、塗膜の汚れ等によって接触が阻害され効果が低下する。したがって、必要最小限の抗菌剤を混入している場合も多い。

さらに、抗菌塗料には、以下のような性能が要求される。

(ア) 消毒剤や塗膜の洗浄に耐える塗膜を形成すること。

(イ) 水性のエマルション塗料で臭気も少ない塗料であること。

(ウ) 乾燥が早く、塗装の工期が短期間で済むこと。

(エ) 特殊な工法や工具を利用するのでなく、一般的な塗装技能で施工可能であること。

(オ) 各種素地や旧塗膜に対して付着性が良好であること。

このような要求性能を満足するため、現状ではアクリル樹脂エマルションを中心とした合成樹脂エマルション塗料を利用した抗菌塗料が多い。

表18.13.2 抗菌塗料のタイプ別比較

18.13.5 粉体塗料

従来から、建築用塗料としては「溶剤系塗料」が一般的であり、これは塗膜形成成分である樹脂に顔料を加えて、作業性の向上を図る目的から有機溶剤で希釈されたものであり、大気中へ放出される揮発性成分が全量の1/2程度含まれている。昨今では、環境保全や健康安全への配慮から、非溶剤系塗料への変換が世界的な規模で強く求められており、建築施工の現場における塗装では、有機溶剤を含まない「水系塗料」あるいはトルエンやキシレン、ベンゼンのような有機溶剤ではなく、光化学反応性が低い溶剤を用いた「弱溶剤系塗料」の適用が推進されている。

「溶剤系塗料」に対して、塗料中に有機溶剤や水等の溶媒を全く用いず、塗膜形成成分を粉末化して、塗装工場で静電塗装によって吹付けた後に加熱して、塗膜を形成させるのが「粉体塗料」である。従来の建築分野では、住宅用の門扉やフェンス等ごく限れられた工場製の既製部材 部品についてのみに適用されていたが、VOCを100%削減して、塗装対象の素地に付着しなかった塗料の回収及び再使用が可能で廃棄物も低減できるため、環境保全の観点からは工場塗装において大きな注目を集めている。

既に、民間建築工事の一部ではあるが、アルミニウム合金製サッシ、カーテンウォール及び鋼製建具等に対する工場塗装において「粉体塗料」が適用されている。従来の「溶剤系塗料」に対する塗装仕様とは異なり、下塗りは不要であり、塗膜の付着性確保や素地に対する防食性の観点から、適切な素地ごしらえ(陽極酸化皮膜処理や化成皮膜処理)との組合せが重要となる。現在の建築分野で適用されている「粉体塗料」は海外製品のポリエステル系が主流であるが、硬化形式による塗膜性能の差が顕著であり、製品による性能のばらつきも見られる。特に、日本国内では建築外装に対して、耐候性に優れるふっ素樹脂を含む複合樹脂粉体塗料が採用されている。

2018年10月には、日本建築仕上学会編「建築用アルミニウム合金材料 粉体塗装仕様標準指針・同解説」が発行され、塗装仕様の標準化と使用材料の品質規格及び使用上の留意事項が示されている。採用に当たっては、参考にすることが望ましい。

18.13.6 高日射反射率塗料

高日射反射率塗料は、JIS K 5675(屋根用高日射反射率塗料)に規定されており、太陽光のうち、熱に関与するといわれている近赤外領域を塗膜表面で反射させるという高機能性塗料で、近年開発された技術である。都市部のヒートアイランド現象の緩和や省エネルギー対策を目的として実用化され、特に改修工事における採用が増加している。原理としては、日射熱、特に熱に関与する近赤外線を選択的に反射する、濃色(特に黒や茶色系)の特殊顔料を使用することにより効果を出している。また、平成22年2月5日の閣議決定に基づき、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」の特定調達品目に指定されたことから、大きな注目を集めている。環境省の「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」(令和4年2月25日変更閣議決定)では、高日射反射率塗料とは、日射反射率の高い顔料を含有する塗料であり、建物の屋上・屋根等において、金属面等に塗装を施す工事に使用されるものとしている。その判断の基準としては、次の(ア) 及び(イ) が規定されている。

(ア) 近赤外波長域日射反射率が表18.13.3に示す数値以上であること。

(イ) 近赤外波長域の日射反射率保持率の平均が80%以上であること。

表18.13.3 近赤外波長城日射反射率

なお、近赤外波長域日射反射率、明度L*値、日射反射率保持率の測定及び算出方法は、JIS K 5675によるとしている。

JIS K 5675に適合する資材は、本基準を満たすものとしている。

参考文献

19章 内装工事 1節 一般事項

19章内装工事

1節 一般事項

19.1.1 適用範囲

この章は、建物内部のビニル床シート張り、カーペット敷き、合成樹脂塗床、フローリング張り、畳敷き、せっこうボード張り、壁紙張り等の工事並びに断熱・防露工事等を対象としている。

19.1.2 基本要求品質

(a) 内装工事で使用する材料については、工業製品にあってはJIS、農林物資にあってはJASが指定されている。また、意匠上重要な部位にあっては、設計者から.そのほかの仕様が設計図書等に細かく指定される。JISやJASに適合することの確認方法については、他の材料と同様であるが、設計者からの特別な指定に適合することの証明としては、例えば、色・柄・材料等を見本品等により決定し、これにより確認するようにするとよい。

(b) 内装工事は、多様な材料により構成されるため、一律の仕上り状態を定めることは困難である。一般に内装工事に分類される工事種目としては、何らかの下地材料の上に施工がなされるものであり、また、何らかの仕上げの下地となることもある。

したがって、「所要の仕上り状態」としては、内装工事だけについて考えるのではなく、下地となるコンクリート工事、左官工事、金属工事、木工事等との仕上り精度とのバランス、最終的な仕上りとなる塗装工事やほかの内装材料等の仕上り状態とのバランスを考慮して定めるようにするとよい。

(c) 内装工事の完成後の性能として「標仕」19.1.2(c)では、床と断熱・防露工事について定めている。

床の出来上りとしては、「著しい不陸がないこと」としているが、その許容範囲は、部屋の用途によって一律には定められない。対象とする部屋の用途ごとにどこまでの不陸が許容できるかを定めるようにする。一般的な事務室にあっては、床のレベル計測により定めるのではなく、実際に出来上がった床を人間が歩いた時の感性による評価を考慮するとよい。この場合、(b) に示したように、単に内装工事による仕上げだけを考えるのではなく、下地の完成状態も含めて総合的に考える必要がある。床衝撃音は、床下地の構成方法によって発生する場合が多く、内装工事によるものばかりではない。床嗚りは、完成後の不具合として現れるものもあるが、少なくとも完成時においてこれが認められないことを要求事項としている。

断熱・防露工事にあっては、「断熱性に影響を与える厚さの不ぞろい、欠け等の欠陥がないこと」としているが、一般的な成形断熱材を打込み工法とする場合、コンクリート打込み時等に生じた欠け等の許容する程度、許容範囲を超えた場合の補修方法等について具体的に定めるようにするとよい。断熱材現場発泡工法を採用する場合にあっては、断熱材の吹付け厚さの管理方法として吹付け厚さの許容範囲を具体的に定め、合わせて許容範囲を超えた場合の補修方法を定めるようにする。

(d) ホルムアルデヒド放散量について、「標仕」では、基本要求品質の事項として概括的規定を設けていない。しかし、個別に、JIS又はJAS等で放散量等の品質基準が規定されている材料については、特品がなければF☆☆☆☆のものを使用するとしている。したがって、市場性、部位、使用環境等を考慮してその他の放散量のものを使用する場合は、設計図書に特記されている内容を十分確認し、要求品買を確保する必要がある。

なお、ホルムアルデヒド放散量に関する工事監理上の注意事項等は、10節を参照されたい。

19章 内装工事 2節 ビニル床シート,ビニル床タイル及びゴム床タイル張り

19章内装工事

2節 ビニル床シート、ビニル床タイル及びゴム床タイル張り

19.2.1 適用範囲

(a) この節は、ビニル床シート、ビニル床タイル及びゴム床タイル張り工事を対象としている。

(b) ビニル床シート張り工事作業の流れを図19.2.1に示す。

図19.2.1 ビニル床シート張り工事の作業の流れ

(c) 施工計画書等

(1) 施工計画内の記載事項は、おおむね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(必要に応じて室別・場所別の工程表の作成)
② 製造所名及び施工業者名
③ 材質、色調別に応じた施工箇所
④ 接着剤の種類(施工箇所別)
⑤ 工法(割付け、継目、見切り部分の納まり等)
⑥ 施工時及び施工後の換気方法
⑦ 養生方法

⑧ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文内の書式とその管理方法等

(2) 見本品を提出させ、色調等を設計担当者と打ち合わせて決定する。

(3) 施工図の検討は、次の事項について行う。

(i) タイルの割付け図、模様合せ(シートの場合は、はぎ目、継目の位置)
(ii) 隅部、柱回り、設備関係器具回りの切込み、取合い
(iii) 他の仕上材との取合い(見切り・目地)
(iv) 床改め口回りの納まり

(4) 床仕上げの施工に関する品質確保の一例として、 日本建設インテリア事業共同組合連合会では「床仕上管理士」及び「組合派遣指導員」・「企業内工事指導員」制度を設けており、この「床仕上管理士」の現場への常駐及び「組合派遣指導員」・「企業内工事指導員」の施工現場への派遣による自主的施工管理体制を確立し自主施工検査証を交付している。

19.2.2 材 料

(a) 張付け床材の分類
張付け床材の分類を図19.2.2に示す。


図19.2.2 張付け床材の分類
(b) ビニル床シート

(1) JIS A 5705(ビニル系床材)に規定されている床シートの種類を表19.2.1に示す。

表19.2.1 床シートの種類(JIS A 5705 : 2010)
(2) 特 性
(i) 弾性、耐摩耗性、耐水性、耐薬品性に優れている。
(ii) 熱に弱い。
(iii) 広幅、長尺シートで目地部分の溶接が可能な製品が多く、これらは、止水性及び防塵性が高い。

(iv) 床衝撃音吸収性、保温性及び抗菌性を付与したものがある。

(c) ビニル床タイル

(1) JIS A 5705に規定されている床タイルの種類を表19.2.2に示す。

表19.2.2 床タイルの種類(JIS A 5705 : 2010)
(2) 接着形床タイルの特性
(i) 単層ビニル床タイル
①耐摩耗性、耐薬品性、耐アルカリ性に優れている。また、単層であるため、摩耗が生じても意匠の変化が起きにくい。

② バインダー含有量が比較的多く、柔軟性に優れている。

(ii) 複層ビニル床タイル
① 耐水性、耐油性、耐摩耗性、耐薬品性、耐アルカリ性に優れているが、反面、熱による伸縮性が大きいため、強力な接着剤(ビニル共重合樹脂系溶剤形等)で確実に接着しておく必要がある。

② 印刷層を積層したものは、透明感があり、意匠性に優れている。

(iii) コンポジションビニル床タイル
① 無機充填剤の含有量が多いため、耐シガレット性に優れているが、反面、耐薬品性、耐アルカリ性、耐酸性、耐油性に劣る。
② 温度変化や多少の湿気にも伸縮が少ない。また、なじみ、納まり等の施工性がよい。

③ 維持管理の容易さに優れている。

(3) 置敷形床タイルの特性

(i) 置敷きビニル床タイル及び薄形置敷きビニル床タイルは、粘着はく離形接着剤を用いて施工を行う。使用時にはずれが生じにくいが、簡単にはがすことが可能で、張替えや再施工が容易な床タイルである。
① 耐水性、耐油性、耐薬品性、耐庶耗性に優れる。
② ガラス不織布等を積層し、温度変化による伸縮性を小さくしてあるため、寸法安定性に優れる。

③ フリーアクセスフロア等のOA床に施工されるものとして、帯電防止性能を付与したものがある。

(ii) 置敷きビニル床タイルと薄形置敷きビニル床タイルは、厚さによって種類分けされている。JISの規定値として、残留へこみ量が異なっている。

(d) 特殊機能床材

(1) 帯電防止床材は、電子計算機室、OA室、工場等の静電気を嫌う部位に使われる床材である。

(i) ビニル床タイルやビニル床シートに帯電防止剤や導電性充填材を練り込み、電気抵抗値を小さくしたもの。

(ii) 帯電防止剤練込み形のビニル床タイルは、吸水による伸びが大きいので、エポキシ樹脂系又はウレタン樹脂系の反応硬化形接着剤を使用する。

(iii) 実用上の注意
① 帯電防止剤練込み形のビニル系床材の抵抗値は、湿度の影響を大きく受ける。

② 歩行による人体帯電は履物の影響もあるので、静電気帯電防止靴(JIS T8103)を着用する必要がある。

(2) 視覚障害者用床タイルは、バリアフリー新法により公共建築等に使用される表面に凹凸のあるタイルである。警告型と誘導型の2種があり、これを組み合わせて使用される。

(3) 耐動荷重性床シートは、移動荷重による耐久性を高めたもので、医療施設、生産施設等に使われる床材である。

(4) 防滑性床材は、床材の表面にエンボス形状を付与することや硬質粒子を配合することにより、防滑性を高めたもので、床面の水ぬれ等によるすべり転倒を軽減させる部位に使われる床材である。

(e) ゴム床タイル

天然ゴム、合成ゴム等を主原料とした弾性質の床材料で、厚さは通常 3.0、4.0、5.0、6.0、9.0mmである。

特性は次のとおりである。
(i) ゴム特有の弾性がある。
(ii) 耐摩耗性が大きい。
(iii) 耐油性が劣る。

(iv) 熱による伸縮が大きい。

(f) リノリウム

「標仕」には規定されていないが、あまに油、松脂、コルク、木粉、石灰石等の天然素材を練り込んで、ジュート(麻布)を裏打ちとして成形されたもので、燃焼時にも有毒ガスの発生が少なく医療福祉施設等で使われている。

(g) 接着剤
(1) 床用接着剤の概要
(i) 接着剤の区分

① JIS A 5536(床仕上げ材用接着剤)では、1)ホルムアルデヒド放散、2)床材の形状、3)用途及び 4)主成分により、次のように区分されている。

1) ホルムアルデヒド放散による区分

ホルムアルデヒド放散による区分を表19.2.3に示す。

表19.2.3 ホルムアルデヒド放散による区分(JIS A 5536 : 2007)
2) 適用床材の形状による区分

床タイル用、床シート用及び床タイル・床シート用に区分されている。

3) 用途による区分
用途による区分は、「平場用」と「垂直面用」に区分され、平場用は更に「一般形」と「耐水形」に区分される。

なお、「標仕」ではJISほど細かく区分していないが、JISの「平場用 – 一般形の接着剤」は「標仕」の「一般の床」に用いる接着剤、また、「平場用 – 耐水形の接着剤」は「いわゆる耐水、耐動荷重、化学実験室等」に用いる接着剤と同様である。

4) 主成分による区分
主成分による区分を図19.2.3に示す。

図19.2.3 主成分による区分

② JISによる区分の表示例を図19.2.4に示す。


図19.2.4 JISによる区分の表示例(JIS A 5536 : 2007)

(ii) エマルション・ラテックス形接着剤と溶剤形接着剤

接着剤は一般に液状である。主成分である合成樹脂やゴムは本来固体であるが、溶媒に溶かすことによって液状となっている。

溶媒として溶剤(アルコールやアセトン等)を使用したものが「溶剤形」であり、水を使用したものが「水溶液形」又は「エマルション形」である。

主成分が「ゴム」である場合の「エマルション」を特に「ラテックス」と呼ぶ。ゴムや合成樹脂は、そのままでは水に溶けないが、細かな粒子とすることで水中に「分散」させて、「水溶液」と同様に扱えるようにしたものが「エマルション」である。ゴムや合成樹脂をエマルションにすることを「乳化」という。

① エマルション・ラテックス形接着剤の特性

水系の接着剤であるから引火の危険がなく、安全性、作業性に優れる。しかし、水の蒸発によって接着力が発現するため、低温での使用に適さない。

1) エマルション形接着剤:合成樹脂を水に分散させた接着剤

2) ラテックス形接着剤:天然ゴム又は合成ゴムを水に分散させた接着剤

② 溶剤形接着剤の特性

溶剤形接着剤は一般的に水系のものに比較して、低温での使用が可能である。ゴム系については適切な待ち時間をとって使用する。使用時は換気を良くし、火気に注意する。

(iii) 反応硬化形接着剤

接着剤塗布後の硬化に至るプロセスが、溶媒(溶剤や水)の揮発による乾燥硬化であるのに対し、接着剤自体が化学反応を起こし硬化するのが、反応硬化形接着剤である。

これにはエポキシ樹脂系接着剤やウレタン樹脂系接着剤がある。

反応硬化形接着剤の化学反応を起こすタイプには、主剤と硬化剤を混合する 2液混合形と下地や空気中の水分と反応する1液形がある。

(iv) 接着剤の種類別特性

① 酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤
乾燥固化すると硬い接着層により強い接着力が得られる。

塗布作業性が良く、特に初期粘着性に優れている。本来は張付け可能時間が短い接着剤であるが、品質改良により、現在はほとんどの製品において張付け可能時間の延長が図られ、施工作業に見合った張付け可能時間が得られるようになった。

溶剤(アルコール)系の接着剤なので引火、毒性に注意し、施工時には、火気・換気等に配慮しなければならない。消防法上の危険物に相当し、集積制限を受ける。貯蔵・保管は、直射日光を避け、換気の良い室内で行なう。

また、水系接着剤と異なり、凍結することがないので、寒冷地での冬期使用が可能である。

酢酸ビニル樹脂は、本来、水によって軟化するものではなく、耐水性のある合成樹脂といえるが、アルカリ性水分との接触で接着力の小さい水溶性物質に変質(化学変化)する。

セメントが介在した下地からの水分は強いアルカリ性水分であることから、下地水分を含んだモルタル下地に対して酢酸ビニル樹脂系接着剤を使用すれば、接着力が低下し、はがれ、浮き、反り等の障害を起こすことになる。

そのため、結果的には水系接着剤と同様に、この酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤であっても、湿気のおそれのある下地には使用できない。

② ビニル共重合樹脂系エマルション形接着剤
塗布作業性と初期粘着性に優れ、張付け可能時間が長く、コストも比較的安いという長所をもつが、接着力は比較的小さい。

品質的には、後述の合成ゴム系ラテックス形接着剤とほぼ同等で、酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤に比べ、共重合とすることで作業性の大幅な改善がなされているが、接着強さは逆に低下している。

水系の接着剤なので、引火・毒性がなく、容易にふき取れ、床材料を汚すことが少ないが、凍結することがあり、寒冷地での冬期使用は難しい。

湿気のおそれのある下地には、再乳化によって接着力が低下し、はがれ、浮き、反り等の事故を起こすことがあるので使用できない。また、鋼板下地には錆を発生させるので直接使用はできない。

③ ビニル共重合樹脂系溶剤形接着剤

ここでいうビニル共重合樹脂とは、酢酸ビニル樹脂にアクリル樹脂やエチレン樹脂等の他の成分を共重合させた合成樹脂を意味する(共重合体:2種類又はそれ以上の化学的に異なった分子がつながったもの)。

特性として、主成分をアクリル樹脂と共重合させたものは、接着性が大幅に高まり、従来の酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤では困難とされていた軟質のビニル床系材料にも優れた接着力を発揮することから、適用範囲が広まり、様々な床材料の直張り施工に使用される。

その他の諸特性は、前述の酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤とほぼ同等であり、塗布作業性や初期粘着性に優れている。
引火・毒性、消防法上の集積制限、湿気のおそれのある下地に使用できないことなども前述の酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤と同じである。

JIS A 5536により、酢酸ビニル樹脂系溶剤形とビニル共重合樹脂系溶剤形とに分類区分されている。現状は、まだ上記分類が完全には認識されておらず、両者が混同されていることがあるので十分注意する必要がある。

④ アクリル樹脂系エマルション形接着剤
塗布作業性、初期粘着性に優れ、接着力は他のエマルション形やラテックス形に比較して大きい。塩化ビニル樹脂分の高い床材に最適で適用範囲が広く、特に、ビニル床シートの直張り施工に多く使用されている。
近年、ビニル幅木の垂直面施工において、溶剤形接着剤による室内空気質汚染対策及び危険物の使用回避等から、同施工にアクリル樹脂系エマルション形接着剤の使用が増えている。
また、タイルカーペットや二重床のビニル床タイルの張替えを安易にして、使用時にはずれを防止する粘着性を付与したアクリル樹脂系エマルション形(ピールアップ形)接着剤もある。

凍結、寒冷地での冬期使用、保管、湿気のおそれのある下地、鋼板等への使用は、他のエマルション形接着剤と同様である。

⑤ エポキシ樹脂系接着剤
様々な床材料に対して強い接着力が得られることから適用範囲が広い。また、塗布作業性が良く、初期粘着性にも優れている。
この接着剤はコストが比較的高く、2液混合の手間がいるといった欠点はあるが、エポキシ樹脂のもつ高接着力、耐水、耐酸、耐アルカリ、耐薬品等.他の接着剤にない優れた特性が高く評価され、特に湿気のおそれのある下地に対しての耐湿用接着剤としての採用が多い。
このほか、工場、実験室、屋外等の特殊条件の場所に使用されることも多い。
使用に当たっては混合比を正確にし、よく練り混ぜてから塗布しなければならず、混合した残りは保存できない。また、反応によって硬化するのであるから、特に低温時での硬化に時間がかかることに注意する。

引火・毒性等の注意すべきことは他の溶剤系の接着剤と同じであるが、反応性のため、特に、皮膚等への接触を避けるようにする。

⑥ ウレタン樹脂系接着剤
様々な床材料に対して強い接着力が得られ、適用範囲が広い。
床材料の施工に使用されるウレタン樹脂系接着剤のほとんどが、水分との化学反応による湿気硬化形の1液性で.反応硬化形接着剤の中では作業性が良く、初期粘着性にも優れている。特に湿気のおそれのある下地の耐湿用接着剤として、土間コンクリート、開放廊下、工場等の場所に多く採用されている。また、2液混合形のものは、ほとんど使用されていない。
含有する溶剤は、塩化ビニル樹脂に対して強い溶解性があるので、接着剤塗布後の待ち時間を適切にとらないと、床材のふくれや軟化を起こしやすくなる。

湿気硬化形であるため、一度缶から出した接着剤は戻すことができない。また、開缶後の余った接着剤は保管期間が短くなるので、短時間の内に使い切ることが望ましい。

引火・毒性等の取扱いに関する注意事項は他の溶剤系接着剤と同様である。エポキシ樹脂系接着剤と同様、反応性なので皮膚等への接触を避ける。

⑦ 合成ゴム系ラテックス形接着剤
床用接着剤に用いられる合成ゴム系ラテックス形接着剤はほとんどがスチレン・ブタジエンゴム(SBR)であると考えてよい。
塗布作業性と初期粘着性に優れ、張付け可能時間が長く、コストも比較的安いという長所をもつが、接着力は比較的小さい。
アクリル樹脂系エマルション形接着剤同様に、ビニル幅木の垂直面施工用途にも使用されている。
水系の接着剤なので、引火・毒性はないが、凍結することがあり、寒冷地での冬期使用は、接着強さの発現が遅れるため避けることが望ましい。

湿気のおそれのある下地には、再乳化によって接着力が低下しはがれ、浮き,反り等の事故を起こすことがあるので使用できない。錆板下地には錆を発生させるので直接使用できない。

⑧ 合成ゴム系溶剤形接着剤
ここでいう合成ゴムとは、主としてクロロプレンゴム(CR)又はアクリルニトリル・ブタジエンゴム(NBR)を指すことが多い。
合成ゴム系溶剤形接着剤は、様々な床材料に対して高い接着性を示し、初期接着力に優れるため、硬い材料やくせのある材料を使用する場合、又は垂直面の施工を行う場合には下地への納まりが良い。
しかし、合成ゴム系溶剤形接着剤が床材料の施工に使用されるのは、垂直面やその補助的な場所であって広い平場での直張り施工にはほとんど使用されない。これは、その使用方法が下地と材料への両面塗布が必要であることや塗布性の悪さによるものといえる。
配合添加する樹脂の影響で、ビニル系床材を沿色汚染させることがある。

また、一般に耐水性は良くないので.湿気のある下地には使用できない。

1) クロロプレン系

ビニル系床材又は軟質塩化ビニル幅木の可塑剤の移行を受けやすく、軟化して接着力の低下と、床材料の縮みやはがれを引き起こすことがある。

2) ニトリル系
ゴム系ではあるが、硬い皮膜が得られ、可塑剤の移行を受けにくいので、軟質のビニル系床材(特にビニル床シートや軟質塩化ビニル幅木、単層及び複層ビニル床タイル)に使用する場合は、このニトリル系を採用する。
溶剤系の接着剤なので引火・毒性に注意し、施工時には、火気・換気等に配慮しなければならず、保管時にも、消防法上の集積制限や夏期の高温に注意する。

水系接着剤と異なり、凍結することがないので、寒冷地での冬期使用が可能である。しかし,塗布量が過多であったり、溶剤が多く含まれた状態で施工すると、基材が変色することがある。

(2) 接着剤のホルムアルデヒド
「標仕」では、接着剤のホルムアルデヒド放散量は、特記がなければF☆☆☆☆としているので、放散量が指定されたものであることを確認して、接着剤の選定を行う必要がある。

なお、JISの規格品を使用する場合、規格品としての扱いができないものなどを使用する場合の確認方法等については、19.10.5を参照されたい。

(3) その他の床材用接着剤
海外資材等で「標仕」に規定されていない材料を、特記により使用する場合は、床材とともに接着剤もJIS適合品以外のものを使用する場合もある。この場合の接着剤は、床材製造所の指定するものを使用するが、品質については JIS A 5536に準じたものであることを確認する必要がある。

なお、ホルムアルデヒド放散量の確認については、(2)と同様である。

(h) 下地処理材
モルタル下地の袖修に使う材料で 0.5 ~ 1mm程度の薄塗りで使用するポリマーセメントモルタルである。

酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂エマルションを主体とするもので、現場でポルトランドセメント、砂、水等を混ぜて、地べらや金ごてで仕上げる。

19.2.3 施 工
(a) 下地
(1) 木質下地の場合
(i) 下地合板は、たわみ・振動のない構造とする。
(ii) 下地合板は、不陸、目違いのないように張り付ける。

(iii) 釘頭は、合板面より沈め気味に打ち込む。

(2) コンクリート及びモルタル旅りの下地の場合
(i) 一般階でも施工後、窓の開閉、開口部等の養生に注意し、水や湿気が浸入しないようにする。

(ii) 下地は平滑で表面強度が十分ある状態とする。

(b) 下地の乾燥
施工に先立ち、下地の乾燥を確認する(9.2.4 (a)参照)。
下地乾燥の判断法の一例として、高周波水分計を用いて確認する方法がある。また、その他の簡易判断法としては次のフィルム法がある。

(i) 約1m2の下地に普通ポルトランドセメントを薄くまき、ポリエチレンフィルムをかぶせ周囲を密封し、2時間後にセメントをかき集め軽く吹いて飛散すればよい。

(ii) 約1m2の下地にポリエチレンフィルムを敷き、翌朝、フィルム下面に結露がなければよい。

また、春から雨期にかけては、地下階の床や土間コンクリートでは表面結露を生じることが多いので季節的にはこの時期の施工は避けたほうがよい。しかし、やむを得ず施工する場合には、ジェットヒーター等で床面の温度上昇を図ると同時に換気を良くする必要がある。

(c) 張付け

(1) 張付けに先立ち、下地面の清掃を十分に行う。

(2) シート類は、長手方向に縮み、幅の方向に伸びる性質があるので長目に切断して仮敷きし、24時間以上放置して巻きぐせをとり、なじむようにする。

(3) 接着剤は、製造所の指定するくし目ごてを用いて塗布する。異なるくし目ごてを用いると張付け後シート類の表面にくし目が目立つ場合がある。

(4) 接着剤塗布後、状況に応じた待ち時間を適切にとり、シート類を張り付ける。

(5) シート類の張付け後は、表面に出た余分の接着剤をふき取り、ローラー等で接着面に気泡が残らないように圧着する。

(6) ビニルを表層とした床シートは、防湿・防塵等の目的で、はぎ目及び継手を熱溶接する場合が多い。この場合の工法を次に示す(図19.2.5参照)。

(i) 床シート張付け後、接着剤が完全に硬化してから、はぎ目及び継手を電動溝切り機又は溝切りカッターで溝切りを行う。

(ii) 溝は、深さを床シート厚の2/3程度とし、V字型又はU字型の均ーな幅とする。

(iii) 熱溶接機を用いて、溶接部を材料温度160〜200℃の温度で、床シートと溶接棒を同時に溶融し、溶接棒を余盛りが断面両端にできる程度に加圧しながら溶接する。


図19.2.5 ビニル床シートの熱溶接

(iv) 溶接完了後、溶接部が完全に冷却したのち、余盛りを削り取り平滑にする。

(7) 床タイル類の張付け

(i) 冬期の施工では、張付け時の圧着を特に十分に行う必要がある。

(ii) ラテックス形接着剤やエマルション形接着剤は、床材の伸縮を完全に防止できないので、目地部のせり上がりや目地部に隙間が発生する場合がある。したがって、施工環境によっては、接着剤の種類を変える必要がある。

(iii) タイル類の張付け後の圧着は (5) のシート類と同じにする。

(iv) ゴム床タイルの張付けにゴム系溶剤形接着剤を用いるときは、接着剤を下地及びタイル裏面に塗布し指触乾燥後、張り付ける。次いで、木づち又はゴムづちでたたいて圧着する。

(8) 立上げ幅木

床面にこぼれた水や薬品が壁際から床下地へまわるのを防ぐ目的で、ビニル床シートを床面から壁に向かって、立ち上げて張り付け、幅木と床を一体に立ち上げる工法がある。シートを立ち上げると、小端処理をする必要がでてくる(図 19.2.6参照)。

処理方法としては、次のようなものがある。

① 小端をシリコーンシーリング材等でシールする方法
② キャップをかぶせる方法(金属見切りやビニル製ウォールキャップ等)

③ 入り幅木にする方法


図19.2.6 立上げ幅木の小端処理方法

(9) 表面仕上げ及び養生

(i) 張上げ後、特に通行の頻度の高いところ、材料の搬出入口、便所、洗面所の出人口等の水掛りとなるおそれのあるところでは、布やシートを掛けるなどして十分養生する。

(ii) 完全に接着強度が出るまで(1 ~ 2週間)は、水ぶき等を避ける。また、局部的な荷重を加えないように注意する。

(iii) 表面仕上げは、床材をクリーナーで洗浄後、製造所の指定するワックス類を塗布し、乾燥つや出しして仕上げる。

床材の表面処理として特殊な防汚加工(UV加工:紫外線硬化樹脂の塗工等)を施しているものがあるので、これらの床材ヘワックス類の塗布を行う場合は、製造所に確認し、必要に応じて行う。

(d) 施工時等の換気

接着剤塗布から施工時や表面仕上げ時は、室内空気汚染物質の濃度が高くなるので、作業中や養生時は、換気を十分に行い濃度の低減に努める。

(e) リサイクル
床施工時の余材・端材の発生量は、施工面積の約5%にのぼる。これらの余材・端材のうち、再資源化できる材料については、再資源化に積極的に取り組むことが望ましい。

再資源化の方法として、インテリアフロア工業会では、余材・端材のリサイクルシステムを開発している。

ビニル系床材は、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」における「特定調達品目」として追加された。判断の基準は、再生ビニル樹脂系材料の合計重量が製品の総重量比で15%以上使用されていることであり、配慮事項は、工事施工時に発生する端材の回収、再生利用システムについて配慮されていることである。備考として、JIS A 5705(ビニル系床材)に規定されるビニル系床材の種類で記号KSに該当するものについては、判断の基準の対象とする「ビニル系床材」に含まれないものとする. となっている。

19.2.4 寒冷期の施工

張付け時の室温が5℃以下又は接着剤の硬化前に5℃以下になるおそれがある場合は、接着剤が硬化せず、所要の接着強度が得られないので施工を中止する。

やむを得ず施工する場合は、ジェットヒーター等による採暖等を行う。
なお、全国月別平均気温は、参考資料の資料3を参照されたい。

19章 内装工事 3節 カーペット敷き

19章内装工事

3節 カーペット敷き

19.3.1 適用範囲

(a) この節は、織じゅうたん、タフテッドカーペット、ニードルパンチカーペット及びタイルカーペットの敷込みを対象としている。

(b) 作業の流れを図19.3.1に示す。


図19.3.1 カーペット敷込み工事の作業の流れ

(c) 施工計画書等

(1) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(製作期限、搬入、敷込みの時期、必要に応じて室別敷込み工程)
② 施工業者名及び防炎表示者登録番号
③ 構成材料の品質、密度
④ 取付け用付属品
⑤ 割付け要領:継目の位置
⑥ 各部取合い納まり(他の仕上材、床改め口、設備機器との取合い)
⑦ 工 法
⑧ 施工時及び施工後の換気方法
⑨ 養生方法

⑩ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

(2) 見本品を提出させ、風合(肌触り、踏み感触)、色合等について、設計担当者と打ち合わせて決定する。

(3) 床仕上げの施工に関しての「床仕上管理士」及び「組合派遣指導員」・「企業内工事指導員」制度等については、19.2.1(c)(4)と同様である。

19.3.2 一般事項

(a) パイル糸

(1)羊毛
そ(梳)毛糸及び紡毛糸は、毛(混紡を含む。)とし新毛80%以上のものとする。
ただし、再生羊毛及びくず羊毛を含まない。
①そ(梳)

そ(梳)毛糸は、細くて長い繊維が用いられている(通常7 〜12番手)。

② 紡毛糸(ぼうもうし)

紡毛糸は.太く短い繊維が用いられている(通常3 ~7番手)。

(2) 化学繊維

化学繊維には木材パルプから造るレーヨン及び石油から造られるアクリル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル等がある。これらの繊維を用いる場合は、長所、短所をよく把握し、使用目的に応じた最適なものを選ぶのがよい。

例えば、羊毛にナイロン糸を混ぜ耐久性の向上を図る。また、通行量の多い廊下等は、洗浄性が良く、耐久性に富んだナイロンフィラメント糸を用いるなど、使用場所に応じたものがよい。

フィラメント(Filament) :JIS用語「連続したきわめて長い繊維」。無ねん(撚)又はわずかなより糸として用いられ、紡績糸より滑らかである。

紡糸の際、不規則に凝固させる又は熱可塑性を利用し断面形状を変えることなどにより、かさ高加工したものがある。

(b) 染色方法

パイル糸の染色方法は大別して先染と後染があり、羊毛は先染とするが、更にそ毛糸は糸染、紡毛糸は原毛染(綿染)とする。ナイロンは、原着又は後染とする。

(i) 先染
① 原着

繊維にする前に顔料を入れて着色する。

② 綿染

糸になる前に染色する方法。

③ 糸染

糸を紡いだのち、染色する方法で、1色に染める浸染と部分ごと異色染をするものがある。

(ii) 後染
① 反染(ピース染)

製織後、裏加工する前に染色する方法で、1色に染める浸染と繊維により着色性が異なることを利用して1液で2〜4色に染める異染があり、それぞれバッチ染色法と連続染色法がある。

②捺染(なっせん)(プリント)

パイル面に直接柄を表現する方法。

(c) 防虫加工

「標仕」19.3.3(a)(3)で、羊毛については、パイル糸は防虫加工をするように定められている。また、ウールマーク、ファーンマークのあるものは、防虫加工がなされている。化学繊維は、虫害に対しては極めて強い。

ファーンマーク:
ウールズ・オブ・ニュージーランドのシンボルマークであり、美しい自然環境の象徴でもある、植物の「シダ」を形どったニュージーランド羊毛の品質保証マークである。
(d) 帯電防止

(1) カーペットの上を人が歩くと、摩擦により人体に静電気がたまる場合がある。静電気(人体帯電圧)が3kV程度以上になったときに,導電体と接触すると、放電され. ショックを感じるといわれている。

静電気の発生は、繊維の種類、カーペットに接するもの(靴底等)、湿度等によって異なるため、帯電しにくい素材の選択又は湿度を上げるなどの対策が必要である。

(2) 帯電防止には色々な加工方法があるが、その帯電防止性能については、「標仕」 19.3.3(a)(4)では、JIS L 1021-16(繊維製床敷物試験方法ー第16部:帯電性一歩行試験方法)による人体帯電圧の値の3kV以下とし、その適用は特記によるとしている。

(e) 防炎性能

(1) 消防法令により、高層建築物(高さ31mを超える。)、地下街、劇場、公会堂等は防炎規制の対象となっている(法第8条の3第1項、令第4条の3第1項)。

(2) 防炎規制の対象物品は、法で定める基準以上の防炎性能を有するものとし、防炎性能を有するものである旨の表示(防炎表示)をしなければならない。

(3) 防炎表示は、ピース物(置敷き)の場合は裏面張付け、施工もの(室内等に固定されたもの等)は、各部屋ごとに主要な出入口(1箇所以上)等に防炎ラベル(図19.3.2参照)を張り付ける。

なお、防炎表示を附するものは消防庁長官の登録を受けたものでなければならない。

(4) 「標仕」では、公共建物を対象としているため、高さ31m以下の場合でも3節「カーペット敷き」を適用する工事では防炎性能を有し、防炎表示のあるものと定めている。

防炎性をもたせる方法としては、繊維製造の段階で防炎成分を加えるなどがある。


図19.3.2 防炎ラベル

(f) ウールマーク、ファーンマーク、ステッキマーク

パイル糸の種類が毛(混紡を含む。)のカーペットを用いる場合は、ザ・ウールマークカンパニー(AWI)で登録し、管理されているウールマーク及びウールマークブレンド(図19.3.3(イ)及び(ロ)参照)、ウールズ・オブ・ニュージーランドで登録し、管理されているファーンマーク(図19.3.3(ハ)参照)、又は英国羊毛公社で登録し、管理されているステッキマーク(図19.3.3(ニ)参照)の張り付けられたものを用いるのがよい。


図19.3.3 ウールマーク・ファーンマーク・ステッキマーク

19.3.3 材 料

(a) カーペットの分類を図19.3.4に示す。


図19.3.4 カーペットの分類

(b) 織じゅうたん(機械織りカーペット)

ウィルトンカーペットは、18世紀の中ごろ、イギリスのウィルトン市で初めて機械織りとして作られたカーペットである。

色は1〜5色を使い美しい模様を織り出すことができる。また、パイルの長さも自由に変えられるので、無地物でも表面のテクスチャーに変化をつけた柄が出せる。

織り方は、基礎となる布地部とパイル糸を同時に織り込み、地よこ糸3本ごとにパイル糸をすくい上げてループ状としたもの(三越織り)で、2本のよこ糸でパイル糸を完全に押さえるので抜毛がない。また、よこ糸2本ごとにパイル糸をすくい上げてループ状にしたもの(二越織り)が、ブラッセルカーペットであり、これをカットしたものをベルベット織りという。このようにたて糸、よこ糸とパイル糸を同時に織り込んでいるので、組織がしっかりしており施工後伸びてしわができず、物理的にも、外観的にも品質が安定して優れている。

なお、ウィルトンカーペット及びブラッセルカーペットの製織構成と各部の名称を図19.3.5及び6に示す。

JIS L 4404(織じゅうたん)では、他にアキスミンスターカーペット等があるが、「標仕」ではこれらを織じゅうたんとし、種別、織り方等は特記によることとしている。


図19.3.5 ウィルトンカーペットの製織構成


図19.3.6 ブラッセルカーペットの製織構成

(c) タフテッドカーペット

普及用として考案された機械刺しゅう敷物で、生産速度が早く価格が安い。製造方法は一列に並んだ千数百本のミシン針によって基布(ジュート、合成繊維等)にパイルを植え付け、パイルの変形、抜けを防ぐため基布の裏から固着剤(ラテックス等)で加工する。通常は、基布(第一基布)の裏にもう1枚裏布(第二基布)を張り付けて、カーペットの変形を防ぎ、踏み心地を良くしている。ループパイルやカットパイルのものがある。パイルの材質は化学繊維、羊毛等の天然繊維及びこれらの混紡が用いられる。

なお、タフテッドカーペットの製織構成と各部の名称を図19.3.7に示す。

ジュート:
黄麻(こうま)という植物の繊維から作られる素材。通気性・保温性に優れ、丈夫な点が特徴で、織り方によって、ヘッシャンクロス、ガンニークロス、ジュートフェルトなどがある。

 


図19.3.7 タフテッドカーペットの製織構成

(d) ニードルパンチカーペット

シート状の繊維を基布に積み重ね又は基布を挟み込み、かえりのあるニードル(針)で突き刺してフェルト状にしたものである。ゴム等のバックコーティング剤等で補強したり、目の荒い織物を心材としてその両面にフェルト状とした繊維層を置き、織物を通して繊維相互を刺し絡めて作ることが多い。一種の不織布であるので、裁断面から糸のほつれがなく自由にカッティングでき、施工は容易である。繊維層の材質は、ポリエステルが最も多く用いられている。

(e) タイルカーペット

タフテッドカーペット等を基材として裏面に強固なバッキング材(図19.3.8参照)を裏打ちしたタイル状カーペットであって、500 × 500(mm)の正方形が大半を占める。官庁、オフィス、学校、病院、銀行、工場、研究所等ではOA機器の普及及び発展に伴い、多く使用されるようになってきた。二重床と組み合わせても使用されている。

タイルカーペットの特性としては、施工が迅速であり、部分補修が容易であるが施工に際しては下地の平たん性が要求される。タイルカーペットの構造は、図 19.3.9のとおりである。


図19.3.8 バッキング材の種類


図19.3.9 タイルカーペットの構造

(f) 下敷き材(アンダーレイ)

グリッパー工法で使用する下敷き材は、「標仕」19.3.3(e)ではJIS L 3204(反毛フェルト)の第2種2号、呼び厚さ8mmを用いるように定められている。

なお、一般的な下敷き材の材質.製法等を表19.3.1に示す。

表19.3.1 下敷き材の材質、製法等

(g) 取付け用付属品

(1) グリッパー

グリッパーは、米国で製作され普及したものであるが、現在市販されているグリッパーは、厚さ6〜7mm、幅23~25mm、長さ1.2mの米松合板に、とび出し 4~5.6mmの針が60度の角度で15mm程度の間隔に2列に逆さに打ち込んであるもので種類には、木床用、コンクリート床用がある(図19.3.10参照)。


図19.3.10 グリッパー

(2) 釘・木ねじ

黄銅製、ステンレス製又は防錆処理を施したコンクリート用釘を用いるのがよい。

(h) 接着剤

「標仕」では、接着剤は JIS A 5536(床仕上げ材用接着剤)により、カーペット製造所の指定するものとしホルムアルデヒド放散量は、特記がなければF☆☆☆☆としている。

なお、タイルカーペット用接着剤はJIS A 5536に規定する粘着はく離形(ピールアップ形)のアクリル樹脂系エマルション形接着剤が一般的に使用されているが、過度なせん断荷重が加わる場所では、ずれやはがれが生ずる場合があるため、粘着はく離形ではなく、接着強度の高い接着剤を選択する必要がある。

19.3.4 工 法

(a) 共通事項
(1) 工法には次の種類がある。
(i) グリッパー工法

床の周囲に釘又は接着剤で固定したグリッパー(スムースエッジ)にカーペットの端部を引っ掛け、緩みのないよう一定の張力を加えて敷き詰める工法である。耐衝撃性を高めるために下敷き材が使用される。

(ii) 全面接着工法

接着剤を使ってカーペットを床に固定する工法で温・湿度の変化による伸縮を防ぎ、維持・補修も容易である。

(iii) タイルカーペット全面接着工法

カーペット製造所の指定する粘着はく離形接着剤を使用し、市松張りを原則とする。

タイルカーペットの特徴は、部分的に簡単にはがせて、かつ、簡単に張り替えることができる点にある。

(2) 基準床高(下地床高)

下地床高の基準は、一般に下敷き厚さ+毛足長さ=カーペット敷き厚さとして定めてよい。

なお、国土交通省大臣官房官庁営繕部整備課「建築工事標準詳細図」には、下敷き厚さ+カーペット厚さ=総厚さよりグリッパー工法では 3mm、全面接着工法では2mm差し引いた厚さと定められている(図19.3.11参照)。


図19.3.11 「建築工事標準詳細図」による基準床高

(3) 敷き方の種類

(i) 敷詰め:床面いっぱいにカーペットを敷き詰める方法

(ii) センター敷き:廊下や階段等の床の中央部に長手方向に連続して敷く方法

(iii) 置敷き:カーペットを床に置いて敷くだけで、ピース敷き、中敷き等がある。

(iv) 重ね置き:敷き詰めたカーペットの上にアクセントを付けるために部分的に敷く方法

(4) 下地

下地の不陸は、カーペットを敷き込んだ場合に表面に現れ、見苦しくなるので注意する。

(b) グリッパー工法
(1)下敷き

下敷き材のはぎ合せは、通常突付けとし、下地がモルタル塗りの場合等は、ジョイント及び四方を接着剤で接着する。木造の場合は.釘等で留め付ける。

(2) グリッパー取付け

グリッパー取付けは.カーペットの厚さに応じて、周辺に沿って連続して図19.3.12のように均等な溝(隙間)をつくり、釘又は接着剤で取り付ける。


図19.3.12 カーペットの厚さに応じたグリッパーの取付け位置

(3) 上敷き

仕上げをする前には継目は真直ぐになっているか、模様があっているか、毛並みは同一方向にそろっているか、十分によく伸び切っているかを検査する必要がある。施工直後に表面に多少の凹凸が残る程度でも、その後の歩行によってたるみやしわを生じトラプルの原因となる。

(4) 留付け及び敷込みの工法

(i) 張りじまいは、ニーキッカー(図19.3.14(イ))で伸展しながらグリッパーに引っ掛け、カーペットの端を図19.3.13のようにステアツール(図19.3.14(ロ))を用いて溝に巻き込むように入れる。30m2( 6 × 5 [ m ] )程度を超える施工にはパワーストレッチャー(図19.3.14(ハ))を使用して施工する。


図19.3.13 カーペット張りじまい


図19.3.14 カーペット敷込み用工具

(ii) センター敷きの張りじまいの各部納まりを図19.3.15に示す。


図19.3.15 センター敷きカーペット張りじまい

(iii) センター敷き、置敷きのカーペットの切り口の端部は、30mmまでパイル糸をはさみで刈り取り、裏面に折り返して千烏縫い(図19.3.16参照)とするか、接着剤で張り付ける。


図19.3.16 千鳥縫い

(5) 階段の納まりを図19.3.17に示す。


図19.3.17 階段敷きの納まり

(6) 硬質の床材及び他のカーペットと取り合う場合の納まりを図19.3.18に示す。


図19.3.18 取り合う場合の納まり

(7) 接 合

(i) 「標仕」19.3.4 (c)(6)では、はぎ合せ、幅継ぎは次のいずれかによると定めている。

① つづり縫いは、従来から一般に行われている工法で、丈夫な綿糸、亜麻糸又は合成繊維糸で間ぜまに手縫いで行う(図19.3.19参照)。


図19.3.19 つづり縫い

② ヒートボンド工法

ヒートボンド工法は、図19.3.20のように接着テープ(シーミングテープ)をアイロン(160℃程度)で加熱しながら、接着はぎ合せをする工法である。


図19.3.20 ヒートポンド工法

(ii) ウイルトンカーペットの接合部のカット
接合部を織目にそってはさみで切りそろえたのち、両端を突き合わせて接合部に不自然な線がないことを確認して接合する。

なお、切口に合成ゴム系の接着剤を塗りほつれ止めを行う。

(iii) タフテッドカーペット接合部のカット
クッションバックカッター(図19.3.21(イ))を用い目通しカットを行う。

なお、ループパイルの場合は、ループパイルカッター(図19.3.21(ロ))を使用するのがよい。


図19.3.21 カッター

(iv) 丈継ぎ及び斜め継ぎ

割付け計画の段階でできるだけ避ける。やむを得ず行なう場合は、図 19.3.22のように重ね合わせ、カーペットを裁断する。両方のカーペットをまくり上げ、接着テープを継目の部分に置き、のりを付け、押さえて接着する(図 19.3.23参照)。


図19.3.22 ダブルカット


図19.3.23 幅継ぎ

(c) 全面接着工法
(1) 接着剤

接着剤は、カーペット自体の収縮を押さえるため、はく離強度よりもせん断強度を重視したタイプを使用する(図19.3.24参照)。

なお、せん断強度は.0.15N/mm2程度以上のものが望ましい。


図19.3.24 はく離強度とせん断強度

(2) 接合部のカット

(i) 幅接合〈幅継ぎ、幅ジョイント〉は、ループパイルカッターを使用して目通しカットを行う。

(ii) 丈接合〈丈継ぎ、丈ジョイント〉は、割付け計画の段階でできるだけ避ける。やむを得ず行う場合は、ダブルカット(図19.3.22参照)とし、カット面の基布部に瞬間接着剤を使用して、接合線を押え板(木づくり)で押さえて24時間程度養生を行う。

(d) タイルカーペット全面接着工法
(1) 接着剤

タイルカーペット接着剤は、カーペット製造所の指定する粘着はく離形(ピールアップ形)を使用する。

(2) 割付け

割付け寸法は、基本的にビニル床タイルと同様であり、材料のサイズと部屋のサイズ(実測値)とから計算される。この時、パイル目の方向を確認するとともに端部に細幅のタイルカーペットがこないようにする。

(3) 下地

コンクリート下地に張り付ける場合、下地の乾燥が十分でないと異臭の原因となることがあるため、下地が十分乾燥していることを確認する。

(4) 張付け

基準線に沿ってタイルカーペットを押し付けながら部屋の中央部から端部へ敷込んで行く。

特に指定がない限り市松張りを原則とする。

タイルカーペットのバッキングの種類によって、目地詰めの要領が異なることに注意する。

出入口部分には、「3分の2以上の大きさのもの」がくるように割り付ける。これは出入口部分に切断された小さなタイルカーペットがくると、歩行によってはがされるからである。

ビチューメンバッキングの場合は、軟らかで、かつ、弾力性をもたないために、圧縮の力を吸収し変形したままになってしまうが、塩ビバッキングの場合は、ガラス繊維等の心材が入っていることもあって、硬いため圧縮の力に反発し、無理に押し込むと反りやふくれとなってしまうことがある。

(5) フラットケーブルを敷設する床(アンダーカーペット配線)への施工

基本的には、フラットケーブルの敷設の前にタイルカーペットを施工することを前提とするが、事前に発注者・設計者・建築業者・電気工事業者等の関係者がお互いに確認をしておくことが重要である。

(6) フリーアクセスフロア(二重床)への施工

床パネルの段違いや隙間を1mm以下に調整したのち、タイルカーペットを施工する。タイルカーペットの割付けは、床パネルの目地とタイルカーペットの目地を100mm程度ずらして行う。

19.3.5 品質確認

(a) 検査項目

カーペットの品質を確認するための検査を行う場合は、カーペットの種類に応じてJIS L 4404(織じゅうたん)、JIS L 4405(タフテッドカーペット)又は JIS L 4406(タイルカーペット)による。

(b) 染色堅ろう度

パイル糸の染色堅ろう度は、(a)のJISによって試験した耐光堅ろう度及び摩擦堅ろう度(乾燥)の等級が、4級以上のものであればよい。ただし、特に濃色のもの又は淡色のものは、いずれか一方の堅ろう度が3級であってもよい。

(c) 外観の品質

外観の品質は、JIS L 4404、JIS L 4405及びJIS L 4406に定められている。なお、JISが制定されていないニードルパンチカーペットはこれに準ずる。

検査を行う場合は、敷物の検査を専門に行っている (-財)ケケン試験認証センター又は公認の検査機関がよい。

(-財)ケケン試験認証センター

(d) ホルムアルデヒド放散量

カーペットは指定建築材料(19.10.3(b)参照)ではなく又 JISでもホルムアルデヒド放散量に関する品質基準が定められていないため、「標仕」においても放散量を規定していない。

なお,関係業界団体等では、平成14年の国土交通省告示(19.10.3(b)参照)に準じて自主基準を作成し、これに基づきホルムアルデヒド発散等級を表示しているものもある。

19章 内装工事 4節 合成樹脂塗床

19章内装工事

4節 合成樹脂塗床

19.4.1 適用範囲

(a) この節は、主にコンクリート床面に塗床材を塗り付けて、シームレスな床を形成し、機械的強度(耐荷重性、耐摩耗性、耐衝撃性等)、化学的特性(耐水性、耐薬品性、耐熱性、耐候性等)及び居住性(歩行感、美観、防音性等)等を付与する塗床工事のうち、厚膜型塗床材(弾性ウレタン樹脂系塗床材及びエポキシ樹脂系塗床材)、薄膜型塗床材(エポキシ樹脂系塗床材)を用いて、床仕上げを行う工事を対象としている。平成25年版「標仕」より薄膜型塗床材が追加された。

なお、「標仕」では規定されていないが硬化の速いメタクリル樹脂系塗床材と耐熱性に優れる水性硬質ウレタン系塗床材についても参考に示す。

(b) 作業の流れを図19.4.1に示す。


図19.4.1 合成樹脂塗床工事の作業の流れ

(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(必要に応じて室別・場所別工程表の作成:下地ごしらえ、塗床材施工、養生等)
② 製造所名、銘柄、色番及び施工業者名
③ 材料保管方法、取扱い注意事項(消防法、労働安全衛生法等により管理)
④ 室別・場所別の工法
(表面仕上り状態:平滑、防滑、つや消し
工法:流し展べ、樹脂モルタル仕上げ)
⑤ 下地コンクリートの水分管理、表層強度の確認、下地ごしらえ(下地状況別)
⑥ 施工時期・工期(他の仕上げ工事との関係)
⑦ 施工環境(気温、湿度、結露、塵あい、臭気、騒音等)
⑧ 施工時及び施工後の換気方法
⑨ 養生方法( 塵あい、傷、汚れ、雨水、硬化前の歩行等からの保護)
⑩ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の様式とその管理方法等

⑪ 廃材の分別処理(不燃物、可燃物、劇毒物等)

(d) 施工図の検討は、次の事項について行う。
(1) 隅部、柱回り(幅木)との取合い
(2) 設備関係器具回り、グレーチング回りの納まり
(3) 他の仕上材との取合い(見切り、目地)

(4) 床改め口回りの納まり

(e) 塗床の詳細に関しては、日本塗り床工業会「塗り床のソリューション塗り床の不具合抑止対策集」や「塗り床ハンドブック」に不具合対策だけでなく材料選定から保守管理に至るまでの注意点等がまとめられているので、参考にするとよい。

塗り床ハンドブック(日本塗り床工業会)

19.4.2 材 料

(a) 塗床材の種類と特徴

(1) 塗床材の種類を図19.4.2に示す。


図19.4.2 塗床材の種類

(2) 各種合成樹脂塗床材の特徴と主な用途を、表19.4.1から表19.4.3までに示す。

表19.4.1 無溶剤形塗床材の特徴と主な用途
表19.4.2 溶剤形塗床材の特徴と主な用途
表19.4.3 水性形塗床材の特徴と主な用途
(3) 主な合成樹脂塗床材の性能と使い分け

(i) 厚膜型塗床材は、材料の比重によって異なるが約1mm以上の厚塗りが可能で、機械的、化学的性能を要求される床に用いられる。厚みがつくことからコンクリート素地の細かい凹凸を軽減する効果があるため、掃き掃除の時の防塵効果はもとよりモップ拭きやゴムレーキ掃除に適する平滑性を与えることも可能である。コンクリートに水が浸み込むことなくすぐに乾くことから、より衛生的な環境を提供することができる。

(ii) 厚膜型のウレタン樹脂系塗床は、弾力性、耐摩耗性に優れた材料で歩行感に優れ.靴音を低減できることから、一般事務所、廊下、病院等人が歩行する場所に適する。

(iii) 厚膜型のエポキシ樹脂塗床は、機械的強度、耐薬品性、美装性のバランスが良く、最も汎用的な無溶剤形塗床材である。ただし、低温硬化性と耐候性に欠点があるため、冬季の施工では施工管理に注意を要する。また、耐候性付与のためにアクリル系・ウレタン系のトップコートを塗装する場合がある。

(iv) 平成25年版「標仕」で規定された薄膜型塗床材は、下地の凹凸がそのまま 仕上りに現れる塗床材で、ローラー刷毛で簡単に施工することができる。厚膜型塗床材より簡易な塗床材で防塵性があり台車の通行や人の歩行程度の用途に用いる。庁舎の場合、電気室、機械室、倉庫、搬入口、軽作業の床に使用され、コンクリートからの発塵を抑え、容易に掃き掃除ができる環境が得られる。また、簡易的に雨水・水の浸透を防ぎ、コンクリートを保護する。

(v) 「標仕」では規定されていない塗床材として、メタクリル樹脂系塗床材は低温環境下での施工、短時間施工が可能で、耐薬品性、耐候性に優れるため、主に食品関連床、屋外の床等に使用されている。また、水性硬質ウレタン系塗床材は、特に耐熱水性や耐衝撃性の要求が高い食品工場、厨房、学校の給食室、給食センター等の施設に適する。

(b) 下地調整材
(1) 樹脂パテ

塗床材と同質の樹脂に無機質系充填材あるいはセメント等の水硬性物質又はよう変性付与材等を加えパテ状とし、φ2mm以下のピンホール、巣穴及びひび割れ等の目つぶしあるいは不陸の修正に用いる。

(2) 樹脂モルタル

床面の不陸が大きな場合あるいは欠損部分が大きな場合は、無溶剤形の樹脂に質量比で 3〜10倍の骨材(けい砂等)を混合した樹脂モルタルで充填する。

(3) ポリマーセメントモルタル

水硬性のセメント系粉体に合成樹脂エマルションを混入したポリマーセメントモルタルやセルフレベリング材で、下地の不陸や巣穴を修正する場合がある。しかし、ポリマーセメントモルタルは、塗床材に含まれる溶剤や可塑剤の影響により強度の低下を来し、はく離やふくれの原因となることがあるので、塗床材の下地に適用する場合は注意する。

(c) 塗床材

(1) 塗床材は、一般に、プライマー、ベースコート及びトップコートで構成される。ベースコートとは、「標仕」でいう、弾性ウレタン樹脂系塗床材塗り、エポキシ樹脂系塗床の流し展べ工法における下塗り及び上塗り、厚膜流し展べ工法の骨材混合ペースト塗り、樹脂モルタル工法の樹脂モルタル塗り等の金ごてで塗り付けるものがある。これに加えて薄膜型塗床の工法の下塗り及び上塗りのローラーばけを用いて塗布するものも含む。

(2) 主材/硬化材又はA/B等と表示される2成分形の材料は、混合することにより化学反応で硬化するため、混合不十分な材料を用いると硬化不良となるので注意する。

(3) 使用季節の表示がある材料は、表示の期間に使用する。

(4) 塗床材には皮膚に接触すると湿疹・かぶれを生じるものがあるので取扱いに注意する。

(5) プライマーは塗床材を塗布する場合に下地コンクリートとの接着性を高めるために用いられるもので、下地コンクリートの湿潤状態、油潤状態等により特殊なプライマーを使い分ける場合がある。

(6) 無溶剤形の塗床材に骨材等の充填材を混合すると厚膜流し展べ材や樹脂モルタル材等ができる。

(7) 表面仕上げを滑りにくくする場合には、材料にけい砂やウレタンチップ等の骨材を混合して塗布するか又は材料が硬化する前に骨材を散布して防滑仕上げとするのが一般的であるが、材料によう変剤を加えローラー塗りでスチップル模様として防滑を行うこともある。

(d) 合成樹脂塗床材の品質

(1) 「標仕」表19.4.1から表19.4.3までに、各塗床材の品質と試験方法が規定されている。しかし、これらに規定された試験方法は塗床材を対象として規定されたものではないため、具体的な塗床の試験方法の一例としては、JISに準拠して定められた日本塗り床工業会の「塗り床試験方法」による試験結果が「標仕」に規定する品質を満たしていることを確認すればよい。

(2) 薄膜型塗床材は諸性能のバランスに優れたエポキシ樹脂系とされている。エポキシ樹脂は物理的性能・耐汚染性に優れるが、直射日光により、経時で黄変やチョーキング(白亜化)が生じる場合がある。

(3) ホルムアルデヒド放散量については、特記がなければ F☆☆☆☆としているので、指定された品質のものであることを確認して使用する。

なお、ホルムアルデヒドの放散量とその確認方法等については、19.10.5を参照されたい。

(4) 薄膜型塗床材は、溶剤形と水性形がある。一般には溶剤形が使用されるが、キシレン・エチルベンゼン等の有機溶剤を含むので、一般の人が立ち入る居室の床に施工する場合には水性形とし、ホルムアルデヒドの放散量や学校環境衛生基準(平成21年3月31日文部科学省告示第60号)に指定される化学物質を放散しない材料であるかを安全データシート(SDS)等で確認して使用する。

19.4.3 工 法

(a) 下地の処理

(1) コンクリート床下地の表層部分はレイタンスやぜい弱層があるため、あらかじめ研磨機、研削機等でコンクリート表層のぜい弱な層を除去し強固な面とする。

また、油分等が付着している場合は脱脂処理をする。

(2) 幅木との取合い、グレーチングの納まり等異種材との取合い部分の納まりは、あらかじめ同材のパテ材や樹脂モルタルで平滑に処理しておく。

(3) 合成樹脂を配合したパテ材や樹脂モルタルで下地調整を行う場合は、プライマーを塗布したのちに行うのが一般的である。

(4) 下地のひび割れ、ピンホール、巣穴等の樹脂パテ処理が不十分な場合には、塗床材がその中に流れ落ち、塗床にピンホールや欠損が生じるので、同材のベースコートでしごくとよい。

(b) プライマーの塗布

(1) プライマーを塗布する場合には、施工場所の換気を十分に行い、プライマーの所定量をローラーばけ、はけ、金ごて等を用いてたまりを生じないように塗り付るる。プライマーの吸込みが激しく塗膜を形成しない場合は、全体が硬化したのち、吸込みが止まるまで数回にわたり塗る。

(2) 下地調整はプライマーが乾燥後、下地のくぼみや隙間等の大きさにより適宜 19.4.2(b)の材料を使い分け平滑に仕上げる。

(c) 塗床材の塗付け

(1) 塗床の仕上げの形態には薄膜型塗床工法、流し展べ工法、樹脂モルタル工法等があり、ベースコートの種類、塗付け方法で区分される。塗床の形態と特徴を表 19.4.4に示す。

表19.4.4 塗床の形態と特徴

(2) トップコートはベースコートの保護を主目的として用いられ、耐候性、意匠性、機能性(防滑性、帯電防止性、防汚性)等の性能が付与される。表19.4.5にトッ プコートの種類と用途例を示す。

表19.4.5 トップコートの種類と用途例

(3) 各工程における塗り間隔は、塗床材の種類により上限と下限がある場合があるので注意する。この間、前工程の塗り面には塵あいや水が付着しないようにあらかじめ十分に養生しておく。

(4) ベースコートの塗布は、気泡が混入しないようにして練り混ぜた塗床材を床面 に流し、ローラーばけ又は金ごてを用い塗りむらにならないよう平滑に仕上げる。

(5) 立上り面の施工はだれを生じないよう、よう変剤を混入した材料を用いる。

(6) 弾性ウレタン樹脂系塗床は、硬化する時に少量のガスを発生することがあり、1回の塗付け量があまり多いと内部にガスを封じ込めて仕上り不良となるので 、1回の塗付け量は2kg /m2以下とし、これを超える場合は塗り回数を増す。塗付け量2kg/m2以下は、硬化物比重1.0の場合で、塗付け厚さ2mm以下となる。

(7) エポキシ樹脂系塗床

(i) 樹脂モルタル工法は、流し展べ工法に比べて塗布厚みがあり、かつ、圧縮強度が高いので耐荷重性のある床をつくることができる。

(ii) 樹脂モルタル工法では、プライマーと樹脂モルタルの間にタックコートを塗布する。タックコートの役割は、下地と樹脂モルタルとの密着性を良くし金ごてによる樹脂モルタル塗りの作業性を良くする。タックコートを施工した塗面がゲル化する前に樹脂モルタルを塗り付ける。

(iii) 樹脂モルタルの塗付けは、こてむらとなりやすいので、定規を用いてあらかじめ平たんに塗り広げるなどして平滑に仕上げる。硬化後に目止めを行う。

(8) 防滑のための骨材の散布は、下塗りが硬化する前に製造所が指定する骨材をむらのないように均ーに散布する。散布は手まきが一般的であるが、より均ーに散布するためにガン吹きとする場合もある。

(9) メタクリル樹脂系塗床

(i) 施工前に下地の表面温度を測定し、製造所の指定するプライマー、ベースコート及びトップコート樹脂液に対する硬化剤又は硬化促進剤の添加量を決定する。

(ii) メタクリル樹脂系塗床材は、一般に可使時間が 10〜20分と短いので広い面積の施工を行う場合は、テープ見切りを行うなどして塗継ぎにならないように注意する。

(iii) 塗膜厚が薄過ぎるとワックスの造膜を阻害し、硬化不良の原因となることがあるのでいずれの工程でも薄過ぎないよう注意する。

19.4.4 施工管理

(a) 下地コンクリート

(1) 塗床材を施工するコンクリート又はモルタル下地の養生期間は、夏期で3週間以上、冬期で4週間以上を目安とするが、天候に大きく左右されるためこれで下地が十分に乾燥したと判断することは早計である。下地の乾燥状況を簡易的に判定する方法については、日本床施工技術研究協議会の「コンクリート床下地表層部の諸品質の測定方法、グレード」(2006年4月)中の「水分量」の測定方法を参考にするとよい。この試験は、床面に乾燥度試験紙を不透湿性透明ビニル粘着テープで張り付け、試験紙が水分により変色した程度を色で判定する方法と、コンクリート・モルタル用高周波静電容量式水分計により測定する方法の二とおりがある。

>日本床施工技術研究協議会

(2) 春から雨期にかけては、地階の床や土間コンクリートでは表面結露を生じることが多いので、この時期の施工は避けた方がよい。しかし、やむを得ず施工する場合には天候の安定した日を選ぶとともに換気を十分に行う必要がある。

(3) コンクリート床の表面はブリーディング水に伴うレイタンスやドライアウトによるぜい弱層があったり、油分や塵あい等が付着して十分な接着力が得られなくなることがあるので事前に表面強度を確認しておく必要がある。また、原則として軽量コンクリートは、塗床下地に不適当であるが、下地の状態や条件により施工できる場合もある。

下地の表面強度を簡易に測定する方法として「コンクリート床下地表層部の諸品質の測定方法、グレード」中の「表面強度」の測定方法を参考にするとよい。この試験は、超硬質のピンに一定の荷重を加えながら下地表層を引っかき、その傷跡の形状と幅で下地の表面強度を判定するものである(図19.4.3参照)。


図19.4.3 引っかき試験

(4) コンクリート床の表面凹凸(表面の細かい凹凸)や不陸(表面全体的なたわみやうねり)が大きい場合には、塗床材が流れたり、材料使用量が予想以上に多くなる場合が多いので、あらかじめ確認しておくとよい。

表面の凹凸や不陸を測定する方法として「コンクリート床下地表層部の諸品質の測定方法、グレード」中の「表面凹凸、不陸」の測定方法を参考にするとよい。この試験は、長さ2mの直定規と長さ1.8mの水準器を使って容易にできる方法である。

(b) 塗床材の塗付け

(1) 施工場所の気温が低い(5℃以下)場合や湿度が高い(80%以上)場合等は、低温による塗床材の硬化不良や結露による仕上り不良を防止するため施工を中止する。

(2) 使用季節の表示(夏タイプ、冬タイプ)あるいは促進剤の添加量による硬化時間の表示がある場合、硬化時期に対応した材料及び添加量の確認をする。

低温下(5℃以下)の施工あるいは2時間以内で塗床を使用したい時は、メタクリル樹脂系塗床材を用いるとよい。

(3) 塗床材は種類により、また、防滑仕上げやつや消し仕上げは骨材の散布量により仕上り状態や色調等の風合に差があるので、採用に際しては塗り見本等を確認する必要がある。

(4) 引火性の塗床材を塗り付ける場合は、通風、換気、火気に注意する。

(5) 仕上げ後、適度な表面強度を得るためには、エポキシ樹脂系やウレタン樹脂系の場合、冬期で3日間、春秋期で2日間、夏期で1日間程度の養生が必要である。