6章コンクリート工事 15節流動化コンクリート
15 節 流動化コンクリート
6.15.1 一般事項

(b) 流動化コンクリートの施工に当たっては、工事現場にコンクリートについて十分な知識と経験をもつ施工管理担当者をおいて、入念な管理を行う必要がある。
6.15.2 材料及び調合
(a) 流動化剤は、JIS A 6204(コンクリート用化学混和剤)で標準形と遅延形に分類し、それぞれの品質規格を定めているが、銘柄によって品質に若干差があるので、JIS A 6204に適合するもののうちから品質の均一性及び使用実績等も考慮して選定する必要がある。
遅延形は流動化効果と凝結遅延効果を併せもつものであり、添加量によって流動化の程度と凝結遅延性が同時に変化するので、所定の凝結遅延性を得るためには、ベースコンクリートには遅延形のAE減水剤を用い、流動化剤は標準形とするのが望ましい。
流動化剤の主成分である高性能減水剤の中には、AE 効果が極めて小さいものがあり、ベースコンクリートに用いられるAE剤・AE減水剤との組合せについても十分に検討する必要がある。
また、流動化コンクリートは、同じスランプの通常の軟練りコンクリートに比較してスランプの経時変化が大きいので、これについても試し練りの段階で検討を加えておくことが肝要である。
(c) 流動化剤は原液で用いられるので、通常の使月量で変化するコンクリートの水セメント比はおおよそ0.3%程度であり、圧縮強度に及ぼす影響はほとんどないこと、及び流動化剤添加前後の圧縮強度に関するする多くの実験報告によっても、流動化コンクリートの圧縮強度とベースコンクリートのそれとの間には、空気量が同じならば 有意な差はほとんど認められていないことにより、流動化コンクリートの調合は、ベースコンクリートの圧縮強度に基づいて定めてよいこととしている。
(e) 流動化コンクリートの空気量は、一般のコンクリートと同様に、通常の場合、普通コンクリートにあっては 4.5%とする。
( f ) 流動化コンクリートの品質は、ベースコンクリートの調合と流動化剤の添加量により左右される。 所要の品質の流動化コンクリートを得るためには、ベースコンクリートの品質が 一般のコンクリートと同様、「標仕」2 節の品質を満足していることが必要不可欠である。
6.15.3 コンクリートの流動化
なお、市街地でのトラックアジテータの高速かくはんは、騒音の問題が発生するので、工事開始前に住民の理解を得る必要がある(6.4.3 (b)参照)。
(b) 流動化剤を水で希釈して使用すると、コンクリートにあと添加される水の量が増えることになり、強度その他の性能に及ぼす影響が無視できなくなるので、流動化剤は原液で使用することとしている。
なお、コンクリート温度の変化、その他の原因により、流動化効果が変化した場合、また、スランプの変動が大きい場合、工事現場における運搬車の待機が長くなった場合等においては、添加量を変更するなど適宜対処する。
(d) 現在、市販されているほとんどの流動化剤は液体であるので、質量又は容積のいずれかで計量することとし、計量誤差は,JIS A 5308(レディー ミクストコンクリート)の 8.2.2 [ 軽量誤差 ]の混和剤の規定と同じく1回計量分量の ± 3 %以内としている 。
6.15.4 品質管理
(a) 流動化コンクリートを製造するうえで、ベースコンクリートの品質変動ができるだけ小さくなるように品質管理することが特に重要であるので、一般のコンクリートと同様、ベースコンクリートの品質管理も「標仕」 5 節による。
(b) 流動化後のコンクリートの品質管理試験は、流動化の工程が計画どおりに実施され、所定の品質に適合したコンクリートを製造しているかどうかについて試験し、確認するものであり、あらかじめ定めた頻度で「標仕」5 節に準じて試験を行い、流動化工程の品質を管理し、また、運搬から打込みまでの品質の変化が確認できるようにする。そのため、流動化剤の投入場所には、コンクリートに精通した専任の施工管理担当者を配置し、入念な管理を行う必要がある。
なお、流動化コンクリートの調合強度は、ベースコンクリートの圧縮強度とほぼ同じとみなすことができるので (6.15.2 (c)参照)、ベースコンクリート及び流動化コンクリートの品質管理状態が良好と判断されれば、流動化コンクリートの調合管理強度の管理試験は省略してもよい。
6.15.5 運搬並びに打込み及び締固め
一方、流動化コンクリートは、同一スランプの軟練りコンクリートと比較して、スランプの経時変化が大きい、分離しやすいなど施工に関わる問題点もあるので、運搬並びに打込み及び締固めには、更に、次の事項も考慮する必要がある。
(1) 流動化コンクリートは、通常の軟練りコンクリー トに比べてスランプの経時変化が大きく、また、使用材料や調合によっては、分離や品質変化が生じやすくなることがあるので、流動化後から打込みまでの時間が短くなるように事前に十分検討して、適切な運搬方法を定める必要がある。
(2) 流動化コンクリートは、練混ぜから流動化までの時間が長いほど、流動化後のスランプの経時変化が大きくなる。したがって、練混ぜから流動化剤添加までの時間をできるだけ短時間とし、また、荷卸しから打込み終了までに要する時間も外気温が 25℃ 以下の場合は 30分以内、25℃ を超える場合は 20分以内とすることが望ましい。
6章コンクリート工事 [参考文献]
建築工事標準仕様書・同解説
JASS 5 鉄筋コンクリート工事(2015) 日本建築学会
鉄筋コンクリート造建築物の
品質管理および維持管理のための試験方法(2007)
暑中コンクリートの施工指針・同解説(2000)
型枠の設計・施工指針(2011)
鋼構造設計規準 (2005)
軽鋼構造設計施工指針・同解説(SI単位版)(2002)
木質構造設計規準・同解説 (2006)
コンクリートの調合設計指針・同解説 (1999)
寒中コンクリート施工指針・同解説 (2010)
流動化コンクリート施工指針・同解説 (1989)
コンクリートのひびわれ調査、補修・補強指針(2013)
日本コンクリート工学会
公共建築改修工事・標準仕様書(建築工事編)(平成25年版)
建築保全センタ—
建築改修工事監理指針(平成25年版)
床型枠用鋼製デッキプレート(フラットデッキ)
設計施工指針・同解説 (2006)
公共建築協会フラットデッキ工業会
7章鉄骨工事 1節一般事項









7章鉄骨工事 2節材料










1.適用範囲
この規格は、建築構造物に用いる熱間圧延鋼材(以下、鋼材という。)について規定する。
3.種類及び記号並びに適用厚さ
鋼材の種類は 5種類とし、その記号及び適用厚さは、表1による。
表1種類の記号

4.化学成分
鋼材は、11.1によって試験を行い、その溶鋼分析値は、表2 による。
表 2 化学成分

5. 炭素当量又は溶接割れ感受性組成
5.1 炭素当量又は溶接割れ感受性組成
鋼材の炭素当量又は溶接割れ感受性組成は、次による。
a) 炭素当量は、表3による。炭素当量の計算は、11.1 の溶鋼分析値を用い、式(1)による。
なお、計算式に規定された元素は、添加の有無にかかわらず、計算に用いる。

ここに、Ceq:炭素当量(%)
表3 炭素当量

b) 受渡当事者間の協定によって、炭素当量の代わりに溶接割れ感受性組成を適用してもよい。この場合の溶接割れ感受性組成は、表4 による。溶接割れ感受性組成の計算は、11.1 の溶鋼分析値を用い、式(2)による。
なお、計算式に規定された元素は、添加の有無にかかわらず、計算に用いる。

ここに、
PCM :溶接割れ感受性組成(%)
表4 溶接割れ感受性組成

6. 機械的性質
6.1 降伏点又は耐力、引張強さ、降伏比及び伸び
鋼材は、11.2 によって試験を行い、その降伏点又は耐力、引張強さ、降伏比及び伸びは、表5による。
6.2 シャルピー吸収エネルギー
厚さ12mmを超える鋼材は、11. 2 によって試験を行い、そのシャルピー吸収エネルギーは表 6 による。 この場合、シャルピー吸収エネルギーは.3個の試験片の平均値とする。
なお.個々の試験結果のうち 1個は、27J 未満になってもよいが、19J 以上でなければならない。
表6 シャルピー吸収エネルギー

6.3 厚さ方向特性
鋼材は、11.3 によって試験を行い、その厚さ方向特性は表 7による。
表7 厚さ方向特性

表5 降伏点又は耐力、引張強さ、降伏比及び伸び

7. 超音波探傷試験
SN400C 及び SN490C の厚さ16 mm 以上の鋼板及び平鋼は、11.4 の試験を行い、判定は 表8 による。 SN400B及びSN490Bの厚さ 13 mm以上の鋼板及び平鋼は、受渡当事者間の協定によって超音波探傷試験を実施してもよい。その場合、試験は、11.4 によって行い、その判定は表8 による。
表8 超音波探傷試験

14. 表示
検査に合格した鋼材は、鋼材ごと又は 1結束ごとに、次の項目を適切な方法で表示する。 ただし、受渡当事者間の協定によって、項目の一部を省略してもよい。
a ) 種類の記号(超音波探傷試験を行ったことを示す記号及び熱処理の記号を含む。)
b ) 溶鋼番号又は検査番号
c ) 寸法
d ) 結束ごとの数量又は質量 (鋼板と鋼帯の場合)
e ) 製造業者名又はその略号
JIS G3136:2012


1,適用範囲
この規格は、主として鋼構造にセットの温度が 0℃~ 60℃の範囲で使用する構造用トルシア形高カボルト・六角ナット・平座金のセット(以下、セットという。) について規定する。
3,構成及び種類・等級
3.1 構 成
セットの構成は、3.2 に規定する構造用トルシア形高カボルト(以下、ボルトという。)1個、構造用高力六角ナット(以下、ナットという。)1個、構造用高力平座金(以下、座金という。)1 個によって構成する。
3.2 種類・等級
セットの種類・等級は、1種類、1等級とし、セットを構成する部品の機械的性質による等級の組合せは、表1 による。
表1 セットの種類及び構成部品の機械的性質による等級の組合せ

JSS Ⅱ 09-1996
1. 適用範囲
この規格は、主として鋼構造に使用する摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット(以下、セットという。) について規定する。
4 セットの構成及び種類・等級
4.1 セットの構成
セットの構成は.4.2 に規定する摩擦接合用高力六角ボルト(以下、ボルトという。) 1個、摩擦接合用高力六角ナット(以下、ナットという。)1個及び摩擦接合用高力平座金(以下、座金という。)2個によって構成する。
4.2 種類・等級
セットの種類は、セットを構成する部品の機械的性質によって、1種及び 2種とし、さらにトルク係数値によってそれぞれ Aと Bとに分け、セットを構成する部品の等級は、表 2~表5 に示すそれぞれの機械的性質によって決まる。 (表 2 ~ 5省略)
セットの種類及び適用する構成部品の機械的性質による等級の組合せは、表1 による。
表1 セットの種類及び構成部品の機械的性質による等級の組合せ

6. セットのトルク係数値
セットのトルク係数値は、12.4 によって試験したとき、表6に適合しなければならない。 この場合、トルク係数値は、次の式によって求める。

ここに
k:トルク係数値
T:トルク(ナットを締め付けるモーメント)(N・m)
d:ボルトのねじ外径の基準寸法(mm)
N:ボルト軸力( N )
表6 セットのトルク係数値

11. 潤滑及び防せい(錆)処理
ボルト、ナット及び座金には、それらの品質に有害な影響を与えない潤滑及び防せい(錆)処理を施すことができる。
13. 検査
13.5 セットのトルク係数値検査
セットのトルク係数値検査は、12.4 によって試験を行ったとき、箇条 6に適合しなければならない。 また、この検査では検査ロットの保証品質水準は、次による。
a) 検査ロットのトルク係数値の標準偏差の保証品質水準は、危険率5%以下、相対標準誤差 8%以下とする。 適用に当たっては、工程が安定状態にある場合は、品質管理データ又は検査データを用いてもよい。 また、特に必要がある場合は、受渡当事者間の協定によって、相対標準誤差を規定の値より若干多くとり、サンプルの大きさを少なくしてもよい 。
b) 検査ロットのトルク係数値の平均値の保証品質水準は、表13 に示す値以上とする 。標準偏差は、a) によって求められた値を用いる 。
注 )この検査ロットとは、4.3.5 に示す 1セットロットを指す。
表13 トルク係数値の平均値の保証品質水準

14. 製品の呼び方
セットの呼び方は、規格番号又は規格名称、セットの機械的性質による種類、セットのトルク係数値による種類、ねじの呼び × ボルトの長さ(ℓ)及び指定事項による。
注)特に指定事項がある場合は、括弧で示す。

15 表 示
15.1 製品の表示
セットの構成部品に関する表示は、次による。
a) ボルト頭部の上面に、次の事項を浮き出し又は刻印で表示しなければならない。
1) ボルトの機械的性質による等級を示す表示記号( F8T 又は F10T )
2) 製造業者の登録商標又は記号
b) ナット上面に、ナットの機械的性質による等級を示す表示記号を、表14 の表示記号を用いて浮き出し又は刻印で表示しなければならない。
なお、受渡当事者間の協定によって、製造業者の登録商標又は記号を表示してもよい。
表14 ナットの表示記号

c) 座金には、機械的性質の等級を示す記号は、表示しない。
なお、受渡当事者間の協定によって、製造業者の登録商標又は記号を表示してもよい。
15.2 包装の表示
包装には、次の事項を明瞭に表示しなければならない。
a) 規格名称
b) セットの機械的性質による種類
c) セットのトルク係数値による種類
d) ねじの呼ひ × ボルトの長さ(ℓ)
e) 数量
f ) 指定事項
g) 製造業者名又は登録商標
h) セットのロット番号
i ) セットの検査年月
JIS B 1186 : 2013











7章鉄骨工事 3節工作一般








(平成12年12月26日 建設省告示第2464号 最終改正 平成19年5月18日 )
第1 鋼材等の許容応力度の基準強度
一 鋼材等の許容応力度の基準強度は、次号に定めるもののほか、次の表の数値とする。
(表省略)
二 建築基準法第37条第一号の国土交通大臣の指定するJISに適合するもののうち前号の表に掲げる種類以外の鋼材等及び同条第二号の国土交通大臣の認定を受けた鋼材等の許容応力度の基準強度は、その種類及び品質に応じてそれぞれ国土交通大臣が指定した数値とする。
三 前2号の場合において、鋼材等を加工する場合には、加工後の当該鋼材等の機械的性質、化学成分その他の品質が加工前の当該鋼材等の機械的性質、化学成分その他の品質と同等以上であることを確かめなければならない。ただし、次のイからハまでのいずれかに該当する場合は、この限りでない。
イ.切断、溶接、局部的な加熱、鉄筋の曲げ加工その他の構造耐力上支障がない加工を行うとき。
ロ.摂氏500度以下の加熱を行うとき。
ハ.鋼材等(鋳鉄及び鉄筋を除く。以下ハにおいて同じ。)の曲げ加工(厚さが6mm以上の鋼材等の曲げ加工にあっては、外側曲げ半径が当該鋼材の厚さの10倍以上となるものに限る。)を行うとき。
第2 溶接部の許容応力度の基準強度
(省略)
第3 鋼材等の材料強度の基準強度
一.(省略)
二.(省略)
三.第1第三号の規定は、前2号の場合に準用する。
第4 溶接部の材料強度の基準強度
(省略)


7章鉄骨工事 4節高カボルト接合
















7章鉄骨工事 5節普通ボルト接合


7章鉄骨工事 6節溶接接合



4.13.5 組立て部材の補修要領
開先形状、ルート間隔の不良、すき間の大きい場合の補修方法の概略を示す。
(1) ルート面(ルートフェイス)
ルート面が大きすぎるときは図4.13.33のようにアークエアガウジングまたはグラインダーで削りとる。
(2) ルート間隔(ルートギャップ)
ルート間隔が狭いときは図4.13.33のようにグラインダーまたはアークエアガウジングで正規の寸法に削除する。アークエアガウジングによる凹凸のはなはだしい箇所はグラインダーで仕上げる。広いときは継手の一方または両方を肉盛りして丁寧に仕上げる。

(3) 隅肉溶接におけるすき間
被覆アーク溶接およびガスシールドアーク溶接の場合は表4.13.3、サブマージアーク溶接の場合は表4.13.4による。








鉄骨の柱ーはり(梁)溶接部の機械的性質の安定化及び向上は、建築物の耐震性の点で極めて重要である。したがって、社団法人日本建築学会では、柱ーはり溶接では、各適用鋼種において所定の機械的性質を確保するため、解説表3のように入熱及びパス間温度を管理する必要があるとしている。

ロボットを建築鉄骨溶接に使用する場合は、社団法人日本ロボット工業会による建築鉄骨溶接ロボットの型式認証が必要であり、認証書にはワイヤの種類、溶接入熱及びパス間温度の範囲などが記載されているため、それらに従うものとし、解説表3はロボット溶接には適用しない。























1. 適用範囲
この規格は、マグ溶接及びセルフシールドアーク溶接による半自動溶接技術検定における、試験方法及び判定基準について規定する。
2. 定義
この規格で用いる主な用語の定義は、JIS Z 3001によるほか、次による。
(1) 組合せ溶接
初めの 1~3パスをティグ溶接で行い、その後をマグ溶接で行う溶接。
3. 技術検定試験の種類
技術検定試験の種類は、溶接方法、溶接姿勢、継手の種類及び試験材料の厚さの区分などによって表1のように分け、その記号は、同表のとおりとする。

JIS Z3841 : 1997
1章 総 則
1.1 適用範囲
この規準は、炭素鋼からなる鋼構造部材の完全溶込み溶接接合部(以下、溶接部という)を超音波探傷試験によって検査する場合に適用する。ただし、板厚 6mm未満のもの、直径が300mm未満の円周継手(角形鋼管柱溶接角部を除く)、鋼管長手継手および分岐継手には原則として適用しない。
超音波探傷試験方法は、手動のパルス反射法で直接接触法による。
ただし、特別な調査研究によりその信頼性が確認された超音波探傷法による場合は、この規準によらなくてよい。
1.2 一般事項
1.2.1 この規準は、溶接部に存在する欠陥の超音波探傷試験方法および合否判定を示す。
1.2.2 超音波探傷検査の範囲および判定結果の処置は、当事者間において構造物の規模、溶接部の有する構造耐力上の重要度などを考慮して定める。
1.2.3 超音波探傷試験方法に関する事項で、この規準に規定する以外の事項は、JIS Z 3060(鋼溶接部の超音披探傷試験方法)による。
1.4 探傷方法
板厚・継手形状・開先形状および溶接方法を考慮し、原則として下記に示す方法による。
(1) 平板状溶接部の一般溶接部は、斜角ー探触子法による。
(2) 鋼管溶接部の円周継手および遠心力鋳鋼管溶接部は、斜角ー探触子法による。
(3) 箱形断面内のエレクトロスラグ溶接部は、垂直ー探触子法による。
(4) 斜角ー探触子法の適用が困難なT継手や突合せ継手は、垂直探傷法またはタンデム探傷法による。
2章 探傷装置および付属品
2.3 接触媒質
原則として、グリセリンペーストまたは濃度 75%以上のグリセリン水溶液を使用する。なお、必要に応じて適正な感度補正を行う場合は、この限りではない。
2.4 標準試験片および対比試験片
2.4.1 標準試験片
JIS Z 2345(超音波探傷用標準試験片)に規定するA1形STB、A2 形系STBおよび A3 形系STBを使用する。
2.4.2 対比試験片
(1) 対比試験片の種類
被検材の形状・寸法など、または探傷方法により、ARB. JIS Z 3060に規定する RB-A6 あるいはRB-42 のいずれかを用いる。
(2) ARB試験片
ARBの形状および寸法は図2に示すもので、被検材と同じ材料で製作するか、またはその被検材と超音波特性の近似した材料で製作するものとする。また、標準穴と仕上げ面との平行度は0.3mm以下とし、仕上げ面の平行度はそれぞれ0.1mm以下とする。
3章 探傷の準備
3.2 探傷面の手入れ
探傷面に、スパッタ、浮いたスケールおよび超音波の伝播を妨げるさびなどが存在する場合には、これらを除去する。また探傷面が粗い場合には適切な方法で仕上げを行う。
なお、塗料またはめっきなどで表面を処理する場合には、処理前に探傷することを原則とする。
4章 斜角探傷法
4.1 斜角ー探触子法
4.1.1 適用範囲
探傷面が平板状の継手の溶接部および直径が300mm以上の鋼管の円周継手溶接部を、探傷する場合に適用する。なお、超音波特性が著しくA1 形STB. A2 形STB または A3 形系STBと異なる被検材の溶接部を探傷する場合には付則1に示す探傷方法を適用する。また、固形エンドタブを用いた梁端フランジ溶接始終端部を探傷する場合には、付則2に示す探傷方法を適用することができる。
4.1.6 距離振幅特性曲線によるエコー高さ区分線の作成
(1) 欠陥を評価するために、エコー高さ区分線を作成する。エコー高さ区分線は距離振幅特性曲線により、4.1.5に定めた試験片を用いて作成する。
(2) エコー高さ区分線は、原則として実際に使用する探触子を用いて、目盛板または補助目盛板(以下、 目盛板という)に記入する。
(3) A2 形系STBまたは RB-A6 を使用する場合には、φ 4X4mmの標準穴を用いてエコー高さ区分線を作成する。ARBまたはRB-42を使用する場合には、それぞれの標準穴を用いてエコー高さ区分線を作成する。
(4) エコー高さ区分線の作成にあたっては、図3 に例示する位置に順次探触子を置き、目盛板にそれぞれのエコー高さのピークをプロットする。
(5) 一定の感度におけるプロット点を直線で結び、1つのエコー高さ区分線とする( 図4参照〕。このとき、最短ビーム路程のプロット点より左はその高さで線を延長する。ただし、A2 形系STBまたはRB-A6を用いる場合で、公称屈折角が45度の探触子を用いる場合は、最短ピーム路程のプロット点は1スキップとする。

(6) 目盛板には、4本以上のエコー高さ区分線を記入する。隣接する区分線の感度差 は6dBとする。なお、このエコー高さ区分線を記入した目盛板を校正目盛板という。
4.1.7 U線・H線・M線および L線
さきに作成したエコー高さ区分線のうち、目的に応じて、少なくとも下位から3番目以上の線を選びこれをH線とし、これを感度調整規準線とする。H線は、原則として、欠陥エコーの評価に用いられるビーム路程の範囲で、その高さが40%以下にならない線とする。
H線から6dB高いエコー高さ区分線をU線、H線から6dB低いエコー高さ区分線をM線、12dB低いエコー高さ区分線をL線とする。
4.1.8 エコー高さの領域
U線・H線・M線およびL線で区切られたエコー高さの領域を表10に示すように名付ける。

4.1.10 探傷面
(1) 突合せ継手の探傷
図5に示すように片面両側から探傷することを原則とする。
(2) T継手および角継手の探傷
図6に示すように両面片側から探傷することを原則とする。


4.2 タンデム探傷法
4.2.1 適用範囲
タンデム探傷法は、狭開先溶接部の、開先面の融合不良および溶込み不良を探傷する場合に適用する。また、探傷はタンデム基準線をもとに、探傷ジグを使用して1探傷断面ごとに行う。
5章 垂直探傷法
5.1 適用範囲
垂直探傷法は、斜角探傷法の適用が困難な溶接部の欠陥検出およびエレクトロスラグ溶接で施工された箱形断面内のダイアフラム溶接部の溶込み幅の測定に適用する。
6章 欠陥の評価
6.1 一般事項
6.1.1 斜角ー探触子法とタンデム探傷法と45度を併用した場合、欠陥の評価は探傷法別に行う。
6.1.2 斜角ー探触子法で公称屈折角70度と45度または65度と45炭を併用し、同一欠陥を両探触子で検出した場合は、公称屈折角70度または65度の探傷結果を採用して欠陥の評価を行う。
6.1.3 斜角ー探触子法で公称屈折角70度と65度、または公称周波数 5MHzまたは 2MHzで同一欠陥を検出し、欠陥評価が異なる場合には、エコー高さが高い方の探傷結果を採用して欠陥の評価を行う。
6.1.4 垂直探傷法の欠陥評価は下記(1)または(2)で別々に行う。
(1) 溶接部の内部欠陥
(2) 箱形断面内に設けるダイアフラムのエレクトロスラグ溶接部の溶込み幅
6.2 合否判定の対象とする欠陥
合否判定の対象とする欠陥は、欠陥指示長さが被検材の板厚 t に応じて、表12に示す値以上の欠陥とする。ただし、板厚が異なる突合せ継手の場合は、被検材の板厚は薄いほうの板厚とする。

6.3 欠陥評価長さ
同一断面内の欠陥群で深さ方向の位置が同一とみなされ、かつ欠陥と欠陥の間隔が長いほうの欠陥指示長さ以下の場合は、同一欠陥群とみなし、その欠陥評価長さは、それらの欠陥の欠陥指示長さとの間隔の和とする。
また、欠陥と欠陥の間隔が長いほうの欠陥指示長さを超える場合は、それぞれ独立した欠陥とみなしその欠陥評価長さはそれぞれの欠陥長さとする。
なお、欠陥群が応力に対して同一断面内であるか、また、深さ方向位置が同一であるかは、表12に示す値に応じておのおのの欠陥の欠陥エコーが最大工コー高さを示す位置との相対関係により定める。
6.4 欠陥評価長さの境界値
突き合わせる被検材の板厚 t に応じて、欠陥評価長さの境界値 S、M、ML、Lおよび LL は表13に示す値とする。

7章 合否の判定
7.1 単位溶接線
溶接線長さが300mm以上の場合は、欠陥が最も密となるような連続した長さ300mmを、溶接線長さが300mm未満の場合は全長を、それぞれ単位溶接線とする。溶接部の合否は、単位溶接線の合否に店づいで判定する。
7.2 単位溶接線の合否
単位溶接線の合否は、溶接部に作用する応力の種類に応じて、欠陥評価長さおよびエコー高さの領域を用いて判定する。ただし、単位溶接線に複数の欠陥が存在する場合は、欠陥評価長さの総和も考慮して合否の判定を行う。なお、それぞれの欠陥でエコー高さの領域が相違する場合は、そのうちもっとも高いエコー高さ領域を採用する。
7.2.1 疲労を考慮しない溶接部
下記の(1)または(2)により単位溶接線の合否を判定する。
(1) 溶接部に引張応力が作用する場合
欠陥のエコー高さ領域に応じて、欠陥評価長さあるいはその総和が、表14に示す境界値以上ある単位溶接線は不合格とする。

(2) 溶接部に引張応力が作用しない場合
欠陥のエコー高さの領域に応じて、欠陥評価長さあるいはその総和が、表13に示す境界値以上ある単位溶接線は不合格とする。

7.2.2 疲労を考慮して表面仕上げされた溶接部
欠陥を表面に近い欠陥と内部の欠陥とに分類し、それぞれ下記(1)または(2)により単位溶接線の合否を判定する。ここで表面に近い欠陥とは、欠陥の深さ方向の位置と板厚表面との間隔が板厚の1/4未満の欠陥をいい、内部の欠陥とは、欠陥の深さ方向の位置と板厚表面との間隔が板厚の1/4以上の欠陥をいう。
(1) 表面に近い欠陥
欠陥指示長さが表12に示す最小値以上の欠陥指示長さを含む単位溶接線は不合格とする。
(2) 内部の欠陥
欠陥のエコー高さの領域に応じて、欠陥評価長さが表16に示す境界値以上ある単位溶接線は不合格とする。

綱構造建築溶接部の超音波探探傷査規準(2008)
7章鉄骨工事 7節スタッド溶接等




