1級建築施工管理技士 鉄骨工事 外壁貫通部の止水方法

建築品質 鉄骨造


035)外壁貫通部の止水方法

鉄骨が外壁や屋上を貫通する部分は雨水が浸入しやすい。外壁の仕様に応じた納まりがあるが、いずれも、鉄骨の発注前に相殺を決め、シール受けの側面プレートや防水受けなどを鉄骨工場で取り付けるようにしなければならない。外部鉄骨は溶融亜鉛めっきなど防錆も考慮する。

1.コンクリート外壁やALCパネル外壁を鉄骨が貫通するとき

外壁貫通部の鉄骨の両サイドに外壁厚さ分の側面プレートと、外壁と同面に正面プレートをそれぞれ水密溶接で取り付け、ALCパネルと鉄骨取合い部を二重シールする。隙間には耐火材としてロックウールを充填する。



コンクリート壁をH形鋼が貫通するときは、RC打込みとなり、側面プレートは幅50mm程度でよい。




2.ECP外壁を鉄骨が貫通するとき

ECP(押出成形セメント板:Extruded Cement Panel)は空洞があり板厚が薄く、小口面にシールができないので、外壁面にシールする。鉄骨断面よりひと回り大きな正面プレートを設け、二重シールとする。正面プレート、側面プレート(幅はECP幅 + シール厚)は鉄骨に水密溶接する。金属パネルを鉄骨が貫通するときも同じ考え方である。




3.屋上防水を鉄骨柱が貫通するとき

屋上機械置場の鉄骨柱が屋上防水を貫通する場合、鉄骨柱にコンクリートを巻いてそれに防水を立ち上げる方法と、鉄骨に直接防水を立ち上げる方法がある。



コンクリートに防水を立ち上げる場合は、通常のパラペットの納まりと同じである。コンクリートの天端では鉄骨柱に止水プレートを設け、シールする。
鉄骨柱に直接防水を立ち上げるときは、鉄骨柱足元をボックス形状にして天端に防水立上りの受けプレートを設ける。受けプレートの下に水切りと保護板受けを設置する。

1級建築施工管理技士 鉄骨工事 屋外鉄骨階段

建築品質 鉄骨造


036)屋外の鉄骨階段は建物から離す

屋外の鉄骨階段に関連するトラブルは、屋外階段と接する外壁からの漏水、屋外階段の出入り口まわりなどからの漏水や、階段の歩行音がうるさいなどがある。鉄骨階段では防錆や塗装の耐久性やメンテナンスはもちろん、階段の意匠も重要である。

1.屋外鉄骨階段は外壁から150mm程度離す

外壁の鉄骨階段などに接する外壁から漏水することがある。屋外鉄骨階段が外壁と近接しているため、外壁パネルなどの目地シールが一部施工できていないのが原因である。屋外鉄骨階段は外壁から150mm程度離して、外壁のシールや塗装などが確実にできるよにしなければならない。




2.屋外階段出入口床と階段の床は 120mm以上の段差を設ける

屋外階段出入口の鋼製扉のくつずりまわりのシールが確実に施工できるように、階段の床は内部の床より120mm以上下げる。(避難階段の場合は150mm以下)階段幅木の天端より上でくつずり下部のシールが確実に施工できることが必要である。

3.鉄骨階段の音対策

鉄骨階段は人が昇り降りする時の音が騒音となる場合がある。普段使用する鉄骨階段は、以下を検討する。

①階段を構成する鋼材を厚くし剛性を高める
②段床に塩化ビニルシート(屋外用)を張る
③段床をPCa(プレキャスト コンクリート)板にする

屋内では段床をモルタル塗りとし、タイルカーペットを張ることもできるし、段床に制振鋼板を使うなどの方法もある。




4.鉄骨階段の納まり

階段の段の割付けにおいて、昇り始めを1段先に送ると、ささら桁の折返し及び手すりがきれいに納まる。また、鉄骨階段の幅木は20mm程度に小さくするとスッキリとする。

1級建築施工管理技士 鉄骨工事 鉄骨造の耐火被覆

建築品質 鉄骨造


037)鉄骨造の耐火被覆は認定による

鉄骨の耐火被覆に使う製品には岩綿の吹付け材(湿式・半湿式)や、巻き付けタイプの岩綿マット、けい酸カルシウム板などの耐火成形板、セラミック系の吹付け材、耐火塗料などがある。それぞれ耐火材料として認定を取得しており、設計段階で使う材料は決められている。施工に当たって認定仕様・条件を満足しなければならない。

1.EV機械室や通信機械室などの耐火被覆材は飛散しない仕様にする

直天井(鉄骨躯体あらわし)の居室や天井チャンバー、エレベーター機械室やエレベーターシャフト、通信機械室などは耐火被覆材の岩綿などが飛散しないようにしなければならない。湿式岩綿の吹付けかい岩綿マット、耐火成形板などにする。

2.吹付け耐火被覆材は吹付け厚の管理が重要

吹付けに当たって、必要吹付け厚さを確保できるよう管理ピンをセットするなどの施工管理が重要である。

3.耐火被覆を欠損させてはならない

鉄骨の柱や梁に仕上げの下地金物を取り付けるときは、耐火被覆を欠損させないような取付けとする。空隙のできるような取付けは不可である。


鉄骨の耐火被覆

4.耐火塗料は維持管理が必要

耐火塗料は使用場所や環境の条件によって劣化するため、経年の状態を確認し、劣化の状況によっては塗装の補修や改修をする必要がある。特に外部に耐火塗料を用いた場合は、劣化が早く進む。竣工後建築主や建物管理者が維持管理することになるので、採用時(設計時)に十分に説明しなければならない。

5.耐火塗料の塗り厚管理

耐火塗料はわずか数mm厚の塗装で、火災時には塗料が発泡して耐火性能を発揮する。薄い塗り厚で耐火性能を発揮するため、特に塗り厚管理が重要である。塗装面積と使用材料の量と、サンプリングで塗り厚を管理する。平滑に仕上げたい場合は、下地の平滑性と同時に塗装段階で研磨などの工程が入るので、特に厳しく塗り厚を管理する。




耐火被覆平滑仕上げの工程(例)

1級建築施工管理技士 く体工事 鉄骨工事 / 製品検査

第7章 鉄骨工事 鉄骨の製品検査

鉄骨の製品検査

鉄骨造の製品検査には中間検査と受入検査というのがある。

中間検査というのは製作の途中で行うもので、全数作ってしまってからの検査で不良が発生した場合に被害が大きくなるようなケースで行うもので、比較的規模の大きいものの場合に行う。

受け入れ検査というのは
すべての鉄骨部材ができあがった(原則出来高 100%)時、現場へ受け入れる前に行う検査である。

製品検査で行う内容は
大きく分けて書類検査と現物の検査がある。
鉄骨製造工場へついて、まず行うのが書類検査である。

1)書類検査
・承認済みの鉄骨製作図の確認
・鋼材のミルシートの確認
・鉄骨部材の流通経路の確認
・溶接部分の試験結果の確認
・その他、防錆塗装の膜厚検査記録

2)対物検査
実際の物の寸法などの検査を行う。
一般には、対物検査2と呼ばれる検査である。

「対物検査2」とは、鉄骨業者の自主検査済みの材料から
柱・梁を5本づつ抽出する。(設計者による)

その製品と承認図との製品誤差が規定の範囲内にあるのを確認します。

つぎに、同じ製品を今度は作業所側の人が検測を行い、その製品誤差と、鉄骨業者の製品誤差とを比較する。

その誤差が規定値の範囲にあることで判断する。(「t 検定、F検定」)

この「t 検定、F検定」というのは、抽出した5本の検査の誤差のばらつき度合いを確認することにより、検査対象部材の全数が適合範囲内にあると判断できる統計的手法である。

その他、対物検査では、
加工状況や、溶接の状況なども、目視、検測して確認する。

材料の材質検査として、サムスチール、溶接部の内部の状態の確認として超音波探傷検査(UT検査)、膜厚の検査などにより製品の適合性を確認する。
以上で問題がなければ、作業所が出荷を許可します。その検査は、監理者の立会いの元で行う。

以上が、鉄骨の製品検査の流れになる。

検査内容については、それぞれ細かく設計図書(構造図)(契約図)に記載されている場合があるので、その内容に従って行う。
(参考)下記書籍

1級建築施工管理技士 く体工事 高力ボルト接合に関する用語

鉄骨工事の用語
そのうち高力ボルトに関する基本的な用語をまとめました。
覚書にどうぞ
スプライスプレート:
 添え板。継手を構成するために母材に添える板。
フィラープレート:
 厚さの異なる板を高力ボルトで摩擦接合する場合、
 その差が 1mm 以内になるように充填する板。
JIS形高力六角ボルト:
 頭が六花形の高力ボルト。
 ボルトの頭にF10T と刻印されている。
 Friction Joint(摩擦接合)
 10 tf/㎝2 = 100 N/mm2
 Tensile Strength(引張強度)
トルシア形高力ボルト
 トルシア形は、頭が丸く先端はピンテール
 と呼ばれる締付け反力を受けて破断する部分で構成されている。
 ボルトの頭に S10T と刻印されている。
溶融亜鉛めっき高力ボルト:
 溶融めっき処理された高力ボルト。
 ボルトの頭にF8T と刻印されている。
摩擦面処理
 摩擦面の黒皮・浮きさび・塵埃・油・塗装・溶接スパッタなどを取り除き、
 すべり係数 0.45以上を確保する処理を行うこと。
 すべり係数を確保する方法として、
 自然発錆による赤さび、
 ショットブラストまたは
 グリッドブラストがある。
 ショットブラスト、グリットブラストの場合は
 50 μmRz以上の表面粗さを確保できれば赤さびとしなくてもよい。
 範囲はスプライスプレート全面に行う。(JASS6)
 溶融亜鉛めっきの場合
 摩擦面はめっき後軽くブラスト処理を行って、表面粗さを 50μmRz以上とする。
 摩擦面にブラスト以外の処理を行う場合は、監理者に確認する必要がある。
 その場合はすべり耐力試験を実施する。その工場の実績により確認する場合もある。
 ブラスト以外の処理の例)りん酸処理など
参考文献
建築高力ボルト接合管理美術者講習テキストより(建築鉄骨品質管理機構)




1級建築施工管理技士 く体工事 鉄骨工事 品質管理

第7章 鉄骨工事 品質管理


鉄骨の製品検査

鉄骨造の製品検査には
中間検査と受入検査があります。
中間検査というのは製作の途中で行うもので、全数作ってしまってからの検査で不良が発生した場合に被害が大きくなってしまわないように途中で行うもので、比較的規模の大きいものの場合に行います。

受け入れ検査というのは、すべての鉄骨部材ができあがった(原則出来高 100%)時、現場へ受け入れる前に行う検査です。
製品検査で行う内容は、大きく分けて書類検査と現物の検査があります。
鉄骨製造工場にて、まず行うのが書類検査です。

1)書類検査
・承認済みの鉄骨製作図の確認
・鋼材のミルシートの確認
・その流通経路
・溶接部分の試験結果
・その他、防錆塗装の膜厚検査記録

2)対物検査
実際の物の寸法などの検査を行います。
一般には、対物検査2と呼ばれる検査です。
「対物検査2」とは鉄骨業者の自主検査済みの材料から柱・梁を5本づつ抽出し、その製品と承認図との製品誤差が規定の範囲内にあるのを確認します。
つぎに、同じ製品を、今度は作業所の者が検測を行い、その製品誤差と、鉄骨業者の製品誤差とを比較します。

その誤差が規定値の範囲にあることで判断します。「t 検定、F検定」といいます。
その他、対物検査では、加工状況や、溶接の状況なども、目視、検測して確認します。
代表的な材料のUT検査やサムスチール、膜厚の検査をする場合もあります。
それで問題がなければ、施工者が出荷を許可し、現場に受け入れることになります。

通常、その検査には、工事監理者が立会います。
以上が、鉄骨の製品検査の流れになります。
精度確認の確認方法、基準は下記による。

鉄骨精度測定指針