令和6年1級建築施工管理技士 二次検定 問題1 解答解説

令和6年 1級建築施工管理技士 二次 解答解説 問題1

問題1
持続可能な建設業を目指して,働き方改革を推進すべく様々な取組が官民一体となって続けられている昨今,建築工事の現場を管理していく上でのあなたの考えについて,次の1.及び2.の問いに答えなさい。

1.右に示す工事概要の建築工事において,あなたが建設現場における統括的な施工の技術上の管理を求められる立場として,機能,性能等の要求された品質を確保しながら適正,かつ,合理的に進める上で,有効と考える現場作業の軽減策3つ提案し,それぞれ次の①から③について具体的に記述しなさい。

ただし,3つの提案の②及び③はすべて異なる内容を記述するものとする。
なお,次の記述は不可とする。

・工事概要に示す工事において施工上必要としない工事及び作業に関する内容
・計画変更確認申請が必要となる内容
・竣工引渡し時期の遅れに繋がる内容
・工程の短縮は図れるが現場作業の軽減には繋がらない内容
・建築設備工事に関する内容

工事概要
(表中「○+△+□」は○下地の上△面に□仕上げ等,下地と表面仕上げの関係を示す。)
工事名  共同住宅新築工事
主要用途 共同住宅52戸
用途地域 住居地域、6m道路隣接
面  積
敷地面積  2,350.00m2
建築面積  758.85m2
延床面積  4,950.60m2
工  期 2024年1月~2025年6月
主要構造 鉄筋コンクリート構造、地上7階建て
最高高さ 23.25m
階  高 1~4階 3.3m,5~7階 3.0m
エレベーター 乗用8人乗り1台
───────────────────────────────
主な構造仕様
根切深さ 2.5m
山留め  親杭横矢板工法
地 業  現場造成杭(アースドリル工法)
コンクリート 普通コンクリート
型 枠  コンクリート型枠用合板
支保工:パイプサポート
鉄 筋  工場加工,現場組立て
柱,梁主筋:ガス圧接継手
───────────────────────────────
主な外部仕上げ
屋 根
陸屋根:アスファルト露出断熱防水
アルミ製笠木
外 壁
主な外壁:コンクリート打放し+ 防水形複層塗材
断 熱 :内断熱工法 現場発泡断熱材吹付け
手すり壁
バルコニー:アルミ製既製品 H =1.2m
外部廊下 :コンクリート打放し + 防水形複層塗材
外部階段 :コンクリート打放し + 防水形複層塗材
:ステンレス製壁付手すり

バルコニー:モルタル下地 + ウレタン系塗膜防水
外部廊下 :コンクリート直均し + ビニル床シート
外部階段 :モルタル下地 + ビニル床シート
建 具
風除室:ステンレス製オートロック式自動扉
強化ガラス共
玄 関:化粧シート張り鋼製扉
窓  :アルミ製サッシ
1~2階網入りガラス共
3~7階フロートガラス共
───────────────────────────────
主な内部仕上げ
(居室,水廻り:天井高さ2.4m,風除室:天井高さ2.5m)

居室 :コンクリート直均し+ 乾式二重床 + フローリングボード
水廻り:コンクリート直均し+ 乾式二重床 + 耐水合板 + ビニル床シート
風除室:モルタル下地 + ノンスリップタイル

居室 :軽量鉄骨下地 + せっこうボード+ビニルクロス
水廻り:軽量鉄骨下地 + シージングせっこうボード+ビニルクロス
風除室:モルタル下地 + 有機系接着剤による小口タイル
天井
居室,水廻り:軽量鉄骨下地 + せっこうボード+ビニルクロス
風除室:軽量鉄骨下地 + アルミスパンドレル
建具他
居室:化粧シート張り木製扉 枠共
水廻り:ユニットバス,洗面化粧台,システムキッチン
風除室:集合郵便受け,インターホンパネル
───────────────────────────────
主な外構仕様
構内舗装
駐車場:アスファルト舗装
駐輪場:コンクリート舗装
アプローチ:インターロッキング舗装
囲 障:化粧フェンス
駐車場入口:レール式門扉
植栽
敷地境界:中木,低木混栽

① 工種名又は作業名等

② あなたが考える有効な現場作業の軽減策とそれが現場作業の軽減に繋がる理由

③ ②の実施に当たって確保すべき品質とそのための軽減策における施工上の留意事項

解答試案

品質を確保しながら進める合理化の問題である。

※工事概要に記載された工事内容に注意して事例を記載する。

特に、設計図書と変更になるような合理化は不可である。

特定行政庁により、設計変更になるか、軽微変更になるかの判断がわかれる場合があるので、軽微な内容であっても注意が必要である。

事例1)

① 工種名等:鉄筋工事

② 軽減策と軽減に繋がる理由:

鉄筋工事において、梁鉄筋先組工法を採用する。躯体工事の工程短縮と品質確保、及び、現場作業が軽減できるため。

③施工上の留意事項:

梁鉄筋先組工法は、柱梁の仕口部分の鉄筋定着が及び補強筋の施工が困難になる場合があるので、事前に各種配筋の位置、所定の長さ、位置等で確実に定着されていることに留意する。

事例2)

① 工種名等:木工事(内部間仕切り壁下地)

② 軽減策と軽減に繋がる理由:

内部間仕切り壁下地に、パネル枠(壁の長さ、高さに合わせた材木枠内に胴縁を組み込んだもの)を採用した。

工場内生産品の間仕切りを取り付けるだけなので、造作大工の手間が省略_化でき、仕上げ工事の工期短縮ができるため。

③ 施工上の留意事項:

躯体精度のばらつきが悪いとよけいに手間がかかるので、躯体精度の品質管理には十分に注意して施工する。

事例3)

① 工種名等:コンクリート工事

② 軽減策と軽減に繋がる理由:

最上階屋根パラペットのプレキャストコンクリート化を行う。予め工場にて製作することにより、現場での配筋工程を大幅削減することができる。

③ 施工上の留意事項:

屋根スラブには水勾配があるので、かぶり厚さを確保するため、パラペットの部位によって鉄筋の差筋に注意する。

事例4)

① 工種名等:型枠工事、鉄筋工事

② 軽減策と軽減に繋がる理由:

トラス筋付きデッキプレート工法は、デッキプレートとトラス筋が一体となっているので、コンクリート打設時には型枠として、硬化後にはトラス筋がスラブ主筋となる構造であり、型枠工事と鉄筋工事を同時に施工できるので合理化となる。

③ 施工上の留意事項:

デッキプレートの梁等への掛り代は所定の長さを確保し、床開口の大きさ、補強等はメーカーの仕様に従って行う。

2.建設業における働き方改革の課題の1つとして,建設現場における時間外労働が挙げられる。右に示す工事概要の建築工事に係わらず,あなたの今日までの経験を踏まえて,建築工事の施工に従事する者の時間外労働の現状に関して,次の①及び②について具体的に記述しなさい。
ただし、1.の②と同じ内容の記述は不可とする。

① これまでの建設現場における施工や工程,管理等の業務において,施工に従事する者の時間外労働を増長させていた要因とそれが時間外労働の増長に繋がっていた理由

② ①の対策として,あなたが有効と考える建設現場における組織としての取組や工夫

解答試案

① 建設現場において、施工方法や手順が徹底されいていないと、その確認のために何度も手戻りすることになり、労働時間の増長につかがる要因となる。

②各工種又は作業について、できるだけ早い段階で関連する作業員を交えて問題点や留意点などを挙げて施工計画を立案し、その施工方法や手順を徹底し、手戻りによる確認作業をなくす。

平成24年1級建築施工管理技士 実地検定 問題1 解答解説

平成24年度 1級建築施工管理技術検定 実地 問題1


問題1

建築工事においては、資源循環の推進や建設副産物対策などの環境負荷の低減に向けた取り組みが行われている。

あなたが経験した建築工事のうち、施工にあたり建設副産物の発生抑制、再使用、再生利用、 熱回収、適正処分などの対策について、施工計画の段階から検討し、実施した工事を1つ選び、 下記の工事概要を具体的に記入した上で、次の問いに答えなさい。

なお、建築工事とは、建築基準法に定める建築物に係る工事とする。ただし、建築設備工事を除く。

[ 工事概要 ]
イ.工 事 名
ロ.工 事 場 所
ハ.工事の内容
新築等の場合:建物用途、構造、階数、
延べ面積又は施工数量、
主な外部仕上げ、
主要室の内部仕上げ
改修等の場合:建物用途、主な改修内容、
施工数量又は建物規模
ニ.工 期 (年号又は西暦で年月まで記入)
ホ.あなたの立場

1. 工事概要であげた工事において実施した、発生抑制再使用再生利用熱回収適正処分の 建設副産物対策から、異なる対策を 3 つ選び、それぞれ次の1から4の事項について、具体的に記述しなさい。

ただし、「実施した内容」はそれぞれ異なる内容の記述とする。

①選んだ建設副産物対策
②工種名
③実施した内容
④結果とあなたの評価

解答例

1)建設副産物対策1

選んだ建設副産物対策:発生抑制

工種名:内装工事

実施した内容

搬入材料は梱包材(包装材、ダンボール等)を減らしたものを選定し、パレット等による搬入を実施した。

結果と評価:現場搬入材の選定及び無梱包を指導・促進したことにより、建設副産物を大幅に減らすことができ、産業廃棄物処理費を大幅に削減できた。

2)建設副産物対策2

選んだ建設副産物対策:再使用

工種名:型枠工事

実施した内容

合板型枠について、規格、寸法を統一し、小ばらしにならないように解体、補修を行い再使用した。また、使用した型枠材は表面をケレンし、外構工事の基礎部分に再使用した。

結果と評価

型枠工事の省力化ができ、廃材が減少し、材料費の抑制につながり、建設廃棄物の資材の再使用が図られた。

3)建設副産物対策3

選んだ建設副産物対策:再生利用

工種名:基礎工事、杭工事

実施した内容

コンクリートの破片(ガラ)及び現場内の地中障害物を撤去した際に発生したコンクリート破片(ガラ)、また現場造成杭の上部のコンクリート破片(ガラ)等を現場内でクラッシャーで砕き、軟弱な場内仮設道路の舗装に使用した。

結果と評価

場内仮設道路を設置するために、軟弱地盤を改良しなければならなかったところをクラッシャランで代用することができ、地盤改良費、場外処分費のコストダウンにつながった。

4)建設副産物対策4

選んだ建設副産物対策:熱回収

工種名:型枠工事

実施した内容

再使用できなくなった型枠用木材・木くずの中で、チップ化できない廃材を分別して、燃料として燃料化施設へ持ち込んだ。

結果と評価

産業廃棄物の発生が抑制され、再度燃料として利用することにより、循環型社会に貢献できた。

5)建設副産物対策5

選んだ建設副産物対策:適正処分

工種名:全工種

実施した内容

養生シート、繊維くずなどは、産業廃棄物管理表(マニュフェスト)による廃棄物の管理方法によって産業廃棄物の運搬、処分を業とする者に委託した。ウエス、手袋、ハケ類など消耗品は焼却し管理型最終処分場に埋めた。

結果と評価

返送されたE票で適正な処分がされたことを確認した。また焼却灰を適正に処分して、環境汚染を防止できた。

2.工事概要であげた工事にかかわらず、あなたの今日までの工事経験に照らして、地球環境保全 のため建築工事現場においてどのような取り組みを行うべきか、次の2つの環境問題から 2 つを 選び、具体的に記述しなさい。

ただし、 1.の「実施した内容」と重複しないこと。

[ 環境問題 ]
・ 地球温暖化
・ 熱帯林の減少
・ 水質汚染

解答例

1)地球温暖化

・現場従業員の個人の車での通勤を禁止し、マイクロバスか公共交通期間での通勤とする。

・工期を厳守し、時間外作業はできるだけ行わず、夜間の仮設伝統・電力の使用は避ける。

・アスファルト防水からシート防水に変更して熱加工を排除した。

2)熱帯林の減少

・できる限り木製型枠を使用せず、メタルフォーム等を用いる。

・可能な限り、プレキャスト化を図り、現場での型枠の使用量を少なくする。

・床型枠に合板型枠を使用せず、フラットデッキを使用する。

・基礎、地中梁は合板に替えてメッシュ型枠とする。

3)水質汚染

・工事現場で発生する排水は、沈砂槽を用いて沈殿・ろ過させ、上澄水のみ下水に放流する。

・地下工事の湧水は、沈砂槽を通して、pHを確認しながら下水に放流する。

・リバース工法の泥水を脱水機にかけ、水と土砂の分離を図った。

・場所打ち杭の施工で発生する排泥水は沈砂槽で浄化してから下水へ放流することで排泥水の流出を防止する。

平成25年1級建築施工管理技士 実地検定 問題1 解答解説

平成25年度 1級建築施工管理技術検定 実地 問題1


問題1

建築工事の施工技術は、社会的・経済的環境等により変化しており、建築物の性能水準の 高い、より高度な技術による施工が求められている。その一方、建設業の就業者数の減少も大きな 課題となっており、このような中で、施工技術や合理化工法の開発など新たな取組みが行われている。

あなたが経験した建築工事のうち、品質を確保した上で施工の合理化を行った工事を1つ選び、 下記の工事概要を具体的に記入した上で、次の問いに答えなさい。

なお、建築工事とは、建築基準法に定める建築物に係る工事とする。ただし、建築設備工事を 除く。

[ 工事概要 ]
イ.工 事 名
ロ.工 事 場 所
ハ.工事の内容
新築等の場合:
建物用途、構造、階数、
延べ面積又は施工数量、
主な外部仕上、主要室の内部仕上
改修等の場合:
建物用途、
主な改修内容、施工数量又は建物規模
ニ.工 期 (年号又は西暦で年月まで記入)
ホ.あなたの立場

1. 工事概要であげた工事で、あなたが担当した工種において実施した、施工の合理化の事例を2 つあげ、次の1から4について、それぞれ具体的に記述しなさい。

ただし、2つの事例の「合理化を行った目的と実施した内容」は、それぞれ異なる内容の記述とすること。また、現在一般的に行われている躯体・仕上げ材料のプレカットに関する記述は不可とする。

① 工種又は部位等
② 合理化を行った目的と実施した内容
③ 実施した内容が合理化に結び付く理由
④ 実施した内容が品質を確保できる理由

解答例

1)事例1

① 工種又は部位等:

  鉄筋工事、型枠工事

② 合理化を行った目的と実施した内容:

躯体工事の工程短縮と品質確保のため、鉄筋工事において、梁鉄筋先組工法を採用した。また、型枠工事においては、床型枠にトラス筋付きデッキプレート工法を採用した。

③ 実施した内容が合理化に結び付く理由:

鉄筋を先組みすることにより、現場作業が軽減できるので、作業効率が上がり工期短縮につながる。また、トラス筋付きデッキプレートを使うことにより、現場での配筋作業・型枠解体作業が軽減できる。

④ 実施した内容が品質を確保できる理由:

地組で配筋できるため、施工精度を高くすることができ、各梁の配筋検査も余裕をもって行え、配筋の品質確保につながる。

2)事例2

① 工種又は部位等

 木工事(内部間仕切り壁下地)

② 合理化を行った目的と実施した内容:

仕上げ工事の工期短縮のため、内部間仕切り壁下地に、パネル枠(壁の長さ、高さに合わせた材木枠内に胴縁を組み込んだもの)を採用した。

③ 実施した内容が合理化に結び付く理由:

工場内生産品の間仕切りを取り付けるだけなので、造作大工の手間が省略_化でき、工期短縮につながる。

④ 実施した内容が品質を確保できる理由:

内部間仕切り壁の品質が均一に保たれ、作業員の技量によるばらつきがなくなるため品質が確保できる。

[ 解説 ]

設問1は工事概要であげた現場で実施した内容を順序にしたがって記述する。また、施工の合理化とは「原価を抑える」「品質を向上させる」「工程を短縮する」「安全性を高める」ために行った施工方法の変更など、施工面での工夫である。今回の問題では、プレカットに関する記述は除くとあるので、合理的な施工方法、ある程度組立てまでされる工場生産品の採用などを記述することが必要である。

2. 上記の工事概要であげた工事にかかわらず、あなたの今日までの工事経験に照らして、施工の合理化の方法であって、建設資材廃棄物の縮減に効果があると考えられる施工方法と、それが 効果的であると考える理由を具体的に記述しなさい。

ただし、現在一般的に行われている躯体・仕上げ材料のプレカットに関する記述は除くものと する。また、上記 1.の②「実施した内容」及び③「合理化に結び付く理由」と同じ内容の記述は不可とする。

解答例

①建設資材廃棄物の縮減に効果があると考えられる施工方法:

内装工事の外壁内側の仕上げについて、壁のモルタル塗りを石こうボード直張り工法に変更した。

②効果的であると考える理由:

モルタル塗りと比較して材料の搬入、現地塗りが少なくなり、資材廃棄物の縮減が図られる。また、養生期間が少なく工期短縮に有効であるとともに、砂を現場に入れないため、整然とした作業環境が実現される。

[ 解説 ]

設問2は工事概要であげた現場にかかわらず、自分の考えを記述する。

設問1にある条件「品質を確保できる理由」は求められていないがその代わりに「建設資材廃棄物の縮減に効果がある」といった条件が付いているため、建設廃棄物の発生を抑制できる施工の合理化について記述する必要がある。解答例では、壁のモルタル塗りを石こうボード直張りに変更しているが、工期短縮に効果がある。