10章 石工事 6節 床及び階段の石張り

第10章 石工事

6.床及び階段の石張り

10.6.1 適用範囲

建物内部及び建物周辺の外部床又は階段に、石材を仕上材としてセメントモルタル並びに張付け用ペーストで施工する工事に適用する。下地コンクリートとして土間スラブ、構造スラブ、防水層保護コンクリート等がある。

人が直接接触する部位であること、様々な外力が作用すること、外部にも使用されることから次のようなことに留意する。

 (1)吸水率が少ないこと。
 (2)耐酸性があること。
 (3)耐摩耗性があること。
 (4)汚れにくいこと。
 (5)ぬれた状態でも滑りにくい表面加工とすること。

 (6)部分的な凹凸がなく、平たんであること。

10.6.2    床の石張り

(a)材料
(1)石材の厚みと加工
床用の石材は歩行等の外力が常に作用するので、外壁よりは厚めのものが用いられる。有効厚さ30mm以上が一般的で車両通行部位では40~50mm以上が用いられる。
薄い場合には割れ等の欠陥が出やすい。

滑りに配慮し、本磨きや水磨きは避ける。 また、使用状況から、水掛りとなる部位や、水が持ち込まれやすい部位では粗面仕上げとする。

(2)石材裏面の処理
裏面処理はぬれ色・白華防止を目的としてなされるが、

裏面処理材にはモルタルとの付着性が悪いものもあるので、目的に合った材料を使用して、小口部分も忘れずに処理を行う。また、ぬれ色は下地の適切な排水によっても防ぐことができるので、裏面処理材のみに頼るのではなく、排水計画の十分な検討が必要である。

また、エントランス、風除室等は外部からの雨水が持ち込まれやすく、また、外構から連続して防水がなされていることが多く、屋外側の水が、敷モルタル層を通じて屋内側に浸入し、ぬれ色や白華が発生している例がある。室内側にも防水を施す場合には防水立上りで内外を遮断し、排水経路を確保するなど、対応が望まれる。

また、外部から持ち込まれる雨水に対しては入口に排水溝を設けグレー チングを設置するなどの対策も有効である。 天候に応じてマットを設置したり、こまめなふき取りで対処するなど、維持管理面での対応も有効であり、維持管理 ・ 保全に関する情報として使用者に伝えておく必要がある。

(b)取付け代

下地コンクリー トの凹凸・不陸及び石厚の誤差を吸収するために、石厚に応じた取付け代が必要となる。 特に石厚 50mmを超える割石の場合には、石厚のばらつきが避けられないため、取付け代は 60mm程度とされている。

(c)下地ごしらえ
下地コンクリートにワイヤブラシをかけ水洗いするなど、十分な清掃を行ったのち、水湿しを行い、コンクリートとの付着阻害やドライアウトを防止する。 敷モルタルは所定の厚さで均等に定規で均しながらむらなく敷く。
敷モルタルはセメント1に対し、砂4程度に少量の水を加え、手で握って形が崩れない程度の硬純りモルタルとする。

敷モルタルの厚さの不均ーが仕上げ面にも影響し、割れ、はがれ等の原因となるので、下地コンクリートの大きな不陸は、あらかじめモルタルで調節しておく。

(d)石材の据付け
(1)仮据え

柱脚部や周辺壁に記されたろく(陸)墨より張った水糸に合わせて石材を仮据えし、十分なたたき締めを行う。 あと工程の本据えで隙間が生ずると、割れ、はがれの原因となるので、特に入念に行う。

(2)張付け用ペーストの散布
普通ポルトランドセメントに水を加えた張付け用ペーストを敷モルタルの上に、石材の裏面全面に行きわたるように十分に散布する。
張付け用ペーストは、石材と敷モルタルを付着させるだけでなく、荷重を分散させる目的もある。

また、張付け用ペーストの量が少ないと、石裏に空隙ができ、水に接する外構や出入口回りではぬれ色が抜けにくいことがあるので十分な量を散布する。

(3)本据え

張付け用ペースト散布後、再度石材を置き、木づちやゴムハンマー等で十分たたき締め、不陸や目違いがないように本据えを行う。

(e)目 地
目地は意匠や調整代の目的だけでなく、目地を設けることにより、石材を面として一体化させたり(目地モルタルによる一般目地)、取合い部等での挙動吸収を目的としてシーリング材を施す目地もある。目地部分から雨水や清掃水が流れ込み、ぬれ色・白華の発生等様々な障害を起こしやすい。

床石では、施工時の角欠けや、砂利等が挟まった時の角欠けも多いので、十分な幅の目地を取ることとしている。

(ⅰ)一般目地
①   目地幅

目地幅は目地モルタルやシーリング材が確実に施工できるだけの幅を取る。外部は日射等による挙動の影響があるので、内部より広くする必要がある。

②目地材の充填
石材の上に乗って作業しても差し支えない程度に敷モルタルが硬化したのちに目地材の充填を行う。
目地モルタルはゴム付きへら(ワイパーモップ)を用いて全体に行きわたるよう目地モルタルを詰め込む。

目地からはみ出した余分なモルタルは、乾いた布で速やかにふき取り、仕上げる。

③ シーリング材の充填

シーリング材は2成分形ポリサルファイド系シーリング材が一般的である。まれに室内床で1成分形シリコーン系シーリング材が使用されるが、シリコーンシーリング材特有の汚染が発生したり、再施工時に新規シーリング材との接着性が阻害されるので好ましくない。

(i)伸縮調整目地
① 設置位箇
石材そのものあるいは躯体側コンクリート・下地コンクリートの膨張や収縮によって、部材の割れ、せり上り、目地割れ等の障害が予想される場合には、伸縮調整目地を設ける。
床面積が広い場合や、細長い通路で一方向の変動が大きい場合は床面積 30m2程度ごと、細長い通路の場合 6 m 程度ごとに伸縮目地を設ける。

隅の立上り部分にも部材の挙動が集中する場合があるので 伸縮調整目地の設置を考慮する。

② 設置工法
伸縮調整目地は図10.6.1に示すように発泡プラスチック材等の弾性目地材で敷モルタルを仕切り、目地とする。
防水層保護コンクリートを下地とする場合も、防水層保護コンクリートの伸縮目地と同じ位置に伸縮目地を設け
る。 位置がずれていると、下地の挙動で石材等にひび割れが発生する場合が多い。
伸縮調整目地にはシーリング材を充填し、仕上げる。
2成分形ポリサルファイド系シーリング材が一般的である。

壁際等雨水のたまりやすい部位ではシーリング材も故障を起こしやすく、雨水の浸入が白華を招くことも多い。


図10.6.1 伸縮調整目地の例

10.6.3    階段の石張り

階段の踏石は床の石張りに準じ、け上げ石は外壁湿式石張りに準じて施工する(図10.6.2 参照)。

屋外階段では、躯体や下地で十分な水勾配及び排水経路を確保し、水が滞留しないことを確認する。水勾配が不十分な場合や滞留水がある場合には、モルタルで下地を補修しておく。踏面に使用する石材は防滑性を高めた粗面仕上げとする。また、床面の張り石との納まりや、排水溝との関係に留意する。 階段石がむく石の場合はアングル材等で下地コンクリートと敷モルタルのずれ防止を講ずる場合もある。


イ.板石を用いた例


ロ.むく石を用いた例

   図10.6.2 階段石の例

1級建築施工管理技士 外構 階段・スロープの防水

建築品質 外構工事


88)階段・スロープの防水

外部から建物地下への階段やスロープでは人や車とともに、雨も一緒に入ってくる。滑りやすく、お汚れやすくなるだけでなく、白華現象(エフロレッセンス)も発生する。下部に部屋があると、アスファルト防水するが、階段やスロープの保護コンクリートが動いて割れたり、防水を切るなどのトラブルが発生する。

1.スロープの基本は緩和勾配と雨水の浸入防止

スロープのはじめと終わりには、車が腹や鼻先を擦らないように緩和勾配を設ける。また、スロープへ雨水が入らないように外部へ向かって勾配を付け、排水溝を設ける。もしスロープに雨水が入ってもいいように、スロープ下部にも排水溝を設けたい。車が通るスロープの仕上げは真空ワッパくし目仕上げをする。スロープ用タイル張りは滑りと剥離の可能性があるので注意する。石なら花崗岩の小舗石(ピンコロ石)が良い。

2.保護コンクリートが滑らないようにする

防水の保護コンクリートは常に下方へ滑る力が働いている。保護コンクリートが滑らないように躯体の方を滑り止め断面とし、その位置に伸縮調整目地を設ける。


スロープの防水

3.地下への階段もスロープと同じ

地下への階段は、降りはじめの段を1段上げて外部の水が入らないようにする。防水を必要とする地下への階段もスロープと同じように保護コンクリートの滑り止めを設ける。
階段を石張りにする場合は防水層の上に浸み込んだ水が下部へ集まり、エフロレッセンスを発生させる恐れがある。この浸み込んだ水は透水パイプで階段下の排水溝に排水するようにする。また、石は浸透性撥水材による表面処理をすると濡れ色にならず、白華現象(エフロレッセンス)も妨げる。


階段の防水

又、外構における階段の踏み面には水が溜まらないように1/100の勾配を設ける。一般的には、段鼻のレベルを蹴込位置のレベルより3mm程度低くする。
水の溜まった踏み面は、落ち葉等を含むと更に危険で、転倒の原因になるので、特に注意したいディテールである。