


建設業の限定解除の国家資格、1級建築施工管理技士にサクッと合格するためのブログ。
【 ケース2】
規格品証明書原本は問屋または中間加工業者が保有する場合。
ケース2-1
1次問屋または中間加工業者は自社保有の材料を使用して鉄骨製作業者からの発注書に基づいた加工を行い、用紙Cを作成し、提出する。納品書、送り状を添え、加工済鋼材類を納入する。
ケース2-2
鉄骨製作業者には、1次の中間加工業者から納入される。1次の中間加工業者へは2次問屋または中間加工業者から鋼材等が納入される。
鉄骨製作業者と売買を行う1次中間加工業者は鉄骨製作業者からの発注書に基づいた加工を行い、2次問屋または中間加工業者の発行した原品証明書、納品書、送り状を基に用紙Cを作成し、納品書、送り状を添え、加工済鋼材類を納入する。
【 ケース3】
鉄骨製作業者が手持ちの余材を使用した場合。
5.2 書 式
5.2.1 用紙A1表紙
5.2.2 用紙A2表紙
5.2.3 用紙B:鉄骨工事使用鋼材等報告書
5.2.4 用紙C:ケース1-1, 1-2 鉄骨製作業者が証明書を作成する場合
5.2.5 用紙C:ケース2 中間加工業者が証明書を作成する場合
【用紙C】
建築構造用鋼材の品質証明ガイドライン
この章で取り扱う主要な材料ごとの適用範囲は次のとおりである。
(イ) ALCパネル:屋根(非歩行用)、床、外壁及び間仕切壁
(ウ) 押出成形セメント板(ECP):外壁及び間仕切壁
8.1.2 基本要求品質
(1) この章で対象とするコンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板は、いずれもセメント系の工場生産品であり、材料の寸法や品質等の規格がJISで定められているので、これに適合するものを用い、そのことが分かるようにしておく。
(2) コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板は、一般的に、仕上材の下地として用いられる。したがって、適切な位置に正しい方法で精度よく取り付けられていないと、次工程の仕上げに悪影響を及ぼすだけでなく、耐震性や構造耐力上の欠陥となる場合もある。このため、施工方法や取付けの詳細、施工精度や管理の方法等を品質計画として 施工計画書や施工図等で明確にし、これによって施工を進め、管理した結果が分かるようにしておく。
8.2.1 一般事項
(1) 「標仕」8.2.1で規定している適用範囲は、空洞ブロックを組積し、鉄筋で補強された耐力壁による小規模な構造物としており、補強コンクリートブロック造の3階建以下を想定している。部分的に型枠状ブロックを用いる場合も基本的には本節を参考にして工事を行う。
(2) 作業の流れを図8.2.1に示す。
図8.2.1 補強コンクリートブロック造工事の作業の流れ
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
⑯ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(4) コンクリートブロックの施工に関して、「ブロック建築技能士」の資格制度が設けられている。
8.2.2 材 料
(1) ブロックの種類は、「標仕」8.2.2ではJIS A 5406(建築用コンクリートブロック)に適合するものとし、種類、モデュール呼び寸法及び正味厚さは全て特記により指定されることになっている。特記のない場合、空洞ブロック、圧縮強さC(16)とするとよい。正味厚さは、構造物の規模や使用場所等で決まる。モデュール呼び寸法は、長さ400mm、高さ200mmであり、市販されているブロックのほとんどのものがこのモデュール呼び寸法であるが、これ以外のモデュール呼び寸法のものが用いられる場合には、必ず特記される。
JIS A 5406では、2017年の改正で、環境保全の立場から、セメントとしてJIS R 5214(エコセメント)に規定する普通エコセメントが認められることになった。これは、強度及び耐久性に関する試験データの蓄積が認められ、また、関係官庁において用途拡大について検討されてきた結果、国土交通省における建築材料への利用制限が解除されたことによる。同様に骨材も、スラグ骨材(JIS A 5011-1、JIS A 5011-2、JIS A 5011-3、JIS A 5011-4)、コンクリート用再生骨材(JIS A 5021、JIS A 5022)やこの規格に規定するブロックを破砕した再生骨材も認められており、ブロックヘの表示も不要となった。これらの使用に当たっては法規上の制限もあるので、注意と確認が必要である。
(ア) JIS A 5406では種類として次の6つに区分している。
(a) 断面形状による区分としては、図8.2.2に代表的な形状を示すように空洞ブロック及び型枠状ブロックの2種類に分けられ、空洞ブロックの配筋されている部分には必ずモルタル又はコンクリートを充填することを想定したものであり、型枠状ブロックは空洞部全てにコンクリートが充填される打込み型枠としての機能をもつものである。
(b) 外部形状による区分として、空洞ブロックは基本形ブロック、基本形横筋ブロック及び異形ブロックの3種類に、型枠状ブロックは基本形横筋ブロック及び異形ブロックの2種類に区分された。用語の定義が変更され、基本形ブロックとは空洞ブロックのうち、建築物の組積体に使用する基本的な形状のもので、一方向だけ鉄筋の配置が可能な空洞部をもつ形状のブロックである。基本形横筋ブロックとは、縦横二方向の鉄筋の配置が可能な空洞部をもつ形状のブロックであり、空洞ブロックではこの形状のみで構築されることの多い「ブロック塀」用が想定されたと考えられる。型枠状ブロックの基本形は、基本形横筋ブロックとなる。異形ブロックは隅(コーナー)用、まぐさ用、半切などの用途 によって外部形状の異なるブロックで、基本形ブロック及び/又は基本形横筋ブロックと組み合わせて使用するブロックと定義されている。
(c) 圧縮強度による区分では、空洞ブロックの正味断面圧縮強さの20N/mm2を追加し、D(20)とした。これは高強度ブロックや肉厚を薄くして軽量化したブロックなどが開発されていることも考慮したものである。また、角柱切出し試験体で求める正味断面圧縮強さにより区分し、整理した。
化粧ブロックとは、フェイスシェル表面に、割れ肌仕上げ、こたたき仕上げ、研磨仕上げ、塗装仕上げ、ブラスト仕上げ、リブなど、意匠上有効な仕上げをほどこしたブロックと定義され、素材そのものへの着色等は除外されている。
(e) 防水性による種類として普通ブロック及び防水性ブロックの2種類に区分され、防水性ブロックの記号はWが表示される。型枠状ブロックの透水性規格値が変更されたので使用する場合には注意が必要である。
(f) 寸法の許容差による種類として普通精度ブロックと高精度ブロックの2種類に区分され、高精度ブロックの記号はHが表示される。記号が「E」から「H」に変更されたのは、圧縮強さの区分に「D」が追加されたことにより「D」に連続する「E」では誤解を招くおそれがあると懸念されたためである。ほとんどのブロックは、普通精度ブロックである。
(ウ) ブロックの性能を表8.2.2に示す。
また、モデュール呼び寸法、正味厚さ及び標準目地幅を表8.2.3に示した。要求のある場合には、受渡し当事者間の協議によって表に示す範囲を超えてもよいこととなった。
(2)充填用コンクリートの粗骨材の最大寸法は、鉄筋を挿入する空洞部最小径の1/5以下、かつ、砂利は20mm以下、砕石の場合は15mm以下としている。鉄筋を挿入する空洞部の寸法を表8.2.4及び図8.2.5に示す。例えば、空洞部の最小幅を70mmとした場合、70mm×1/5 =14mmとなり通常粗骨材最大寸法10mmの豆砂利を用いることになる。
図8.2.5 鉄筋を挿人する空洞部(JIS A 5406 : 2017)
(3) 鉄筋は5.2.1を参照する。ただし、鉄筋はSD295、SD345とする。また、曲戻し等の有害な加工を行ったものを用いてはならない。
(4) モルタル用材料は、「標仕」15.3.2を参照する。ただし、セメントは「標仕」6.3.1によるものを用いる。
(5) ブロックは、種類によって区分し、雨水を吸水しないように、又汚れの付着や欠けなどが発生しないように、適切な養生を行って保管する。
8.2.3 モルタルの調合
モルタルの調合は、特記によるとしている。従来は、目地幅が10mmでの組積が一般的であり、「標仕」表8.2.1で対応可能であった。この調合で通常の場合は、「JASS 7 メーソンリー工事」に解説されているとおり、18N/mm2以上の強度は担保されている。しかし、近年は薄目地(5mm程度)用のブロックが用いられる場合もあり、D(20)の ブロックがJIS規格に追加されたことなどから、薄目地等の場合は、特記により調合計画を作成し監督職員の承諾を受けることとなった。また、既調合モルタルの使用も増加している。(-社)日本建築学会「補強コンクリートブロック造設計基準」では、壁体の目地及び空洞部の充填に使用するモルタルの4週圧縮強度を18N/mm2以上としている。
8.2.4 コンクリートの調合
充填部以外のまぐさ、がりょう、立上り基礎、スラプ等に使用するコンクリートは「標仕」6章[コンクリート工事]によるとしている。
8.2.5 鉄筋の加工及び組立
(1) 一般事項
縦筋は、基礎コンクリート打込み時に移動しないように、縦筋中間部への振れ止め用の足場等の設置や頂上部のフックの位置を正確な位置に固定する(図8.2.7参照)。
縦筋が、施工中に揺れを生じると、モルタルとの付着力低下や目地切れを誘発するおそれがあるので、必ず振れ止めで固定する。
(イ) 横筋は、図8.2.6及び図8.2.8に示すように壁端部縦筋に180゜フックとし、かぎ掛けとする。直交壁がある場合は、直交壁に定着させるか、直交壁の横筋に重ね継手とする。
横筋の重ね継手長さは45d、定着長さは40dとし、かぶり厚さ確保のために、できるだけ縦に重ねる。
また、横筋と縦筋の交差部の要所を径0.8mm以上の鉄線で結束する。
(ア) 壁の配筋(交差部、端部の補強筋を含む。)は特記によるとしている。最近では、交差部及び端部に型枠を用いることはほとんどなく、異形ブロックを加工して構成する場合や、型枠状ブロックを加工して構成する場合が多い。
(イ) まぐさは出入口又は窓等の開口部の上部に設ける水平部材で、まぐさの上部の荷重を受け持つため、鉄筋コンクリート造とし、配筋は特記による。プレキャストコンクリート製等の既製まぐさを用いる場合は配筋、曲げ強度、寸法等を考慮する。
8.2.6 縦遣方
縦遣方は、ブロックが所定の位置に正しく組積できるように図8.2.9のように他の作業中に移動しないように独立したものとする。縦遣方が正確に設置されないとコンクリートブロック造の性能に大きく悪影響を及ぼすだけでなく、他工事にも影響を及ぼすので、監督職員は位置や固定状況等について確認を行う。
8.2.7 ブロック積み等
ブロック積みは、「標仕」8.2.7によるほか、次の点に注意する。
(ア) 根付け部分のコンクリートが過度に乾燥している場合や防水性ブロック以外で吸水率の高いブロックを使用する場合は、モルタルの水分が吸収されてドライアウトし、硬化に悪影響を及ぼすので、水湿しを行う。ただし、吸水率の低いブロックを水湿しすると、余剰水が界面部のモルタルの水セメント比を高くし、強度低下となる場合もあり、このような場合は水湿しを行わない。
(イ) 縦遣方を基準として水糸を張り、水糸にならって隅角部より各段ごとに順次水平に積み回る。
(ウ) テーパーにより上下でシェル厚が異なるブロックは、シェル厚の厚い方を上にして構む。
(エ) 目地モルタルは、構造耐力上・防水上支障が生じないように、ブロック接合面全面(フェイスシェル及びウェプ部分)に設ける。
(オ) 所定のかぶり厚さが確保でき、縦筋位置が固定できる箇所や開口部・端部等のフック部分等の縦筋と横筋の交差部の要所は、結束線で緊結する。ただし、縦筋が固定され、移動のおそれがない場合は、結束線による緊結を省略できる。
(カ) 積終わりには降雨時に水がたまらないよう養生する。
(キ) がりょうは、ブロック壁の頂部を固定する役目がある。がりょうに打ち込むコンクリートがブロック壁空洞部に落下しないようにがりょうのすぐ下のブロックには基本形横筋ブロックを使用する。また、がりょう部の型枠とブロックとの取合い部は目地棒等を用い、水漏れがないようにする。
(ク) まぐさは、開口幅が比較的大きい場合は図8.2.10及び図8.2.11に示すように配筋してコンクリートを打ち込んだRC造とする。型枠には合板のほか、溝型ブロック、型枠状ブロック等も用いることができる。
図8.2.10 現場打ちコンクリートによるまぐさ
(ケ) 目地モルタルの硬化以前に目地ごてで目地ずりをするとともに、化粧積み面の汚れをブラス等で清掃する。目地ずりは目地モルタルの表面強度を高め、ブロックと目地モルタルとの接着性を良くするので、耐力上、防水上重要な作業である。
(コ) 化粧目地仕上げは、目地モルタルがある程度硬化後に行い、そのちり(ブロック表面の面と目地仕上げ面の差)が目視で違和感がない状態に仕上げる。
8.2.8 モルタル及びコンクリートの充填
(1) ブロックの吸水率が大きい場合や、夏期で高温乾燥状態の場合は、充填モルタルやコンクリートの水分がブロックに吸収されドライアウトとなりやすいので、充填する空洞部に適度の水湿しを行う。
(2) 逐次充填工法では、縦目地空洞部へのモルタル又はコンクリートの充填は、目地モルタルが安定した後、ブロック2段以下ごとに丸棒等を用いて、鉄筋の移動がないように注意しながら丁寧に突き固める。1日の作業終了時は、ブロックの上端から5cm程度下がり位置で止める。
(3) 充填材料としてのモルタル又はコンクリートの混練量、配合や骨材の最大寸法は、一度に充填する量、空洞部の寸法等を考慮して決める。
打継ぎ位置はブロック上端から5cm程度下がった位置とする。これは防水上の目的と充填モルタル又はコンクリートの打継ぎ面が水平目地と一致してせん断強度を低下させないように配慮したことによる。
(5) 耐力壁のまぐさを受ける壁面部分ではブロックの幅20cm以上の部分の空洞部は、全て最下部からまぐさの下端までモルタル又はコンクリートを充填する。
8.2.9 ボルトその他の埋込み
ボルト、とい受金物、配管の支持金物等の挿入された空洞部にはモルタル又はコンクリートを密実に充填する。金物の埋込み深さ及び定郊方法は、取り付けられるものの質紐を考慮して決める。取付位置は原則として目地位置とするが、これにより難い場合は監督職員と協議して決める。
8.2.10 電気配管
電気配管を埋め込む場合は、ブロック空洞部を利用し、横筋等の配筋のかぶり厚さに支障がないように空洞部の片側に寄せて配管するほか、管の出口にモルタル又はコンクリートを充填し固定する。
8.2.11 養 生
「標仕」によるほか、目地モルタル及び充填したモルタル又はコンクリートが十分硬化するまで、有害な振動、衝撃、荷重等を与えないようにする。また、直射日光、降雨、凍結等を防止するための上屋やシート掛け等の養生を行う。
(ア) 夏期は直射日光等による水分の蒸発を防ぎ、一定の湿潤状態を保つため、モルタル又はコンクリート充填後、組積終了後等はビニルシート等で壁体、打込み部分を覆う。
(イ) 寒冷期は強風による乾燥や低温による初期凍害を防ぐために、上屋・シート等で躯体を覆い保温の処置をして養生する。
(ウ) 出隅部や突出部の欠けやすい部分や、踏付け面等のブロックに破損や若しい汚染のおそれのある部分は板等で養生する。
(エ) 降雨による空洞部への雨水の浸透、目地モルタルの流出等を防止するために上屋、シート等で養生する。
「標仕」に示された補強コンクリートブロック造のほかに、図8.2.12に示す「鉄筋コンクリート組積造」がある。これは建築基準法施行令第80条の2に基づく平成 15年国土交通省告示第463号による工法の名称である。従前は、JIS A 5406に規定する「型枠状ブロック」を用い、空洞部分にグラウト材(コンクリート又はモルタル)を全充填する工法として「型枠コンクリートブロック造」の名称が普及し、設計・構造規準も(-社)日本建築学会「壁式構造関係設計基準集・同解説(メーソンリー編)」 2006年版に示されていた。しかし、材料としてJIS A 5406だけでなくJIS A 5210(建築用セラミックメーソンリーユニット)も使用可能であり、より自由度が高く合理的な工法として「鉄筋コンクリート組構造」に集約されてきており、(-社)日本建築学会より告示に準拠した「鉄筋コンクリート組積造(RM造)建物の構造設計・計算規準(案)・同解説」が2021年3月に出版された。また、施工方法としても「JASS 7」では2009年版から「鉄筋コンクリート組積造」のみとなっている。表8.2.5に補強コンクリートブロック造と鉄筋コンクリート組積造の比較を示す。
図8.2.12 鉄筋コンクリート組積造(RM造)の例
8.3.1 一般事項
また、コンクリートブロックの施工に関して、「ブロック建築技能士」の資格制度が設けられている。
(2) 帳壁工事の作業の流れを図8.3.1に示す。
図8.3.1 コンクリートブロック帳壁工事の作業の流れ
また、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
⑮ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制,管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(4) コンクリートブロック帳聖(間仕切壁)
(ア) 帳壁とは、柱・梁で構成される主体構造物の中に構築され、建築物にかかる水平荷重及び鉛直荷重を負担させない壁であるが、壁体にかかる地震や風によって生じる面外方向の力に耐える必要がある。組積の時期は主体構造が完成した後であり、あと積み工法になるので主体構造体への鉄筋の緊結が重要になる。また、主体構造物の変形を阻害しないためのスリットを適宜設ける。
(イ) (ー社)日本建築学会「壁式構造関係設計規準集・同解説(メーソンリー編)」に規定されている「コンクリートブロック帳壁構造設計規準」には帳壁の規模について次のように記述されている。
なお、主要支持辺とは帳壁を主として支持する辺をいう。主要支点間とは一方の主要支持辺と他方の主要支持辺との間をいう。主要支点間の方向により、主筋と配力筋の方向が定まるので必ず確認する。
(a) ブロック帳壁は地盤面より20mを超える外壁部分に用いてはならない。これは、厳しい風圧や変形性能の規定に、ブロック帳壁で設計することは不可能ではないが、施工方法等も考慮して20m以内としている。10~20mの場合でも告示や本規準等を遵守し構造安全性を確保しなければならない。
(b) 一般帳壁の主要支点問距離(L1)は、3.5m以下とする。ただし、地下部分にある階で、当該階の周囲壁面の見付面積が平均して階高の2/3以上地中に埋没している場合は、4.2m以下とする(図8.3.2参照)。
図8.3.2 主要支点間距離
(c) 小壁帳壁の持出し長さ(L2)は、1.6m以下とする。また、スパンが持出し長さの2倍半を超える場合は、小壁帳壁となる(図8.3.3参照)。
図8.3.3 主となる方向の持出し長さ
(ウ) 壁厚は、仕上げの部分を除き表8.3.1に示す数値以上とする。
なお、外壁で地盤面からの高さが10mを超える部分に使用する場合は、告示や日本建築学会規準等を参考にして定める。
表8.3.1 壁 厚
(5) ブロック塀
ブロック塀は工法が比較的簡単であることから管理も安易に行われやすい。しかし、補強コンクリートブロック造やコンクリートブロック帳壁と比較して、直接風雨にさらされ、荷重の支持も主として地盤面の基礎によっていることから、かぶり厚不足による鉄筋の腐食、配筋不良、基礎構造不備等の原因による地震時の倒壊が多い。また、道路側に建てられることも多く、倒壊による人的被害の危険性は極めて高い。したがって、適切な設計と施工を心掛ける必要がある。建築基準法施行令62条の8 には、高さ、壁の厚さ、控壁の設置、配筋など7項目が定められており、確実に順守しなければならない。
なお、基礎の寸法や配筋については特記となっているため、(-社)日本建築学会の「ブロック塀設計規準・同解説」等を参考に、安全な塀とする必要がある。
「標仕」での適用範囲は、高さ2.2m以下としているが、地盤の特性、基礎の形状、控壁、根入れ深さ、ブロックの厚さ等を検討し、風圧力、地震力に対し安全なブロック塀を構築する必要がある。安全性を確かめるための構造計算の基準は「補強コンクリートブロック造の塀の構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」(平成12年5月23日建設省告示第1355号)に定められている。塀の高さの測り方を図8.3.4に示す。作業の流れは帳壁の図8.3.1を参照する。施工計画書は基礎工事・フェンス工事等を塀全体として作成するとよい。
図8.3.4 塀の高さの測り方(コンクリートブロック塀設計規準・同解説より)
使用するブロックは、「標仕」8.3.2ではJIS A 5406(建築用コンクリートブロック)の規格に適合するもので、種類、圧縮強さ、モデュール呼び寸法及び正味厚さは、特記によるとしている。
なお、一般的には「標仕」表8.3.1に示した空洞ブロックC(16)を用いる。空洞・基本形・化粧無しブロックで10mm目地とし、長さ×高さのモデュール呼び寸法は 400×200(mm)、実寸法は390×190(mm)である。
ブロックの厚さは、表8.3.1に示すように帳壁の規定に適合していることを確認する。化粧ブロックを用いる場合の厚さとは、実厚さではなく、正味厚さを示すので注意が必要である。
ブロックの厚さは、「標仕」8.3.2に示すように、特記がなければ塀の高さが2m以下の場合は120mm、2mを超え2.2m以下の場合は150mmとする。建築基準法施行令第62条の8 第二号には「壁の厚さは、15cm(高さ2m以下の塀にあっては、10cm)以上とすること。」と定められているが、厚さ100mmのブロックでは鉄筋のかぶり厚さ等十分な耐久性が確保できない可能性があり、「標仕」や(-社)日本建築学会「コンクリートブロック塀設計規準・解説」では120mm以上としている。転倒等の安全性を考慮すると塀の高さがおおよそ1.2mを超える場合は、厚さ150mmとすることが望ましい。化粧ブロックを用いる場合の厚さとは、実厚さではなく、正味厚さを示すので注意が必要である。
ブロック塀に化粧ブロックを用いる場合は、基本形横筋ブロックのみで構築される場合がほとんどで、また、縦目地と横目地の幅が異なる寸法の化粧ブロックが多くなっている。例えば、長さ× 高さのモデュール呼び寸法が 400 × 200 (mm)の場合で、縦目地が1mm、横目地は10mmの製品では、製品の実寸法は399 x 190(mm)となる。モデュール呼び寸法体系も多種になっているので、長さ× 高さのモデュール呼び寸法、製品寸法や実厚さについてはメーカーのカタログ等を参考にされたい。
なお、控壁は、RC造とするか型枠状ブロック又は空洞ブロックを用いてコンクリートを全充填する。
8.3.3 モルタル及びコンクリートの調合
モルタル及びコンクリートの調合は、基本的に補強コンクリートブロック造に用いるものと同じと考えてよい。ただし、標誰目地幅が10mmと異なるブロックを用いる場合は、監督職員と協議し、既調合モルタルの使用も検討すると良い。
8.3.4 鉄筋の加工及び組立
壁体に加わる外力で考慮しなければならないのは、主として面外方向の外力である。この外力に抵抗するのは鉄筋であり、鉄筋によって主体構造や基礎に伝達される。この伝達を受け持つのが主筋であり、それと直行方向に配筋されて面材として一体化する役目を持つのが配力筋である。したがって、主筋は、帳壁の場合には主要支点間方向に配置され、主要構造物に十分に緊結されなければならない。塀の場合には、基礎に緊結されなければならない。
(a) 外力は、面外方向の正負両方向に加わるために厚さ方向の中心部に配置する必要から、「標仕」ではブロック空洞部の中心部に配筋するとしている。また、中心部に配筋するためには、鉄筋の位置決め及び床や基礎のコンクリート打設時に移動がないように堅牢な振れ止めを設ける必要がある。
(b) 「標仕」では、壁鉄筋の継手、定着及び末端部の折り曲げ形状は、特記によるとしている。従来は、主筋には継手を設けないとしていたが、帳壁では上下階への定着が困難な場合が多いことや施工性なども考慮して、応力伝達が可能な溶接接合等による継手も認められている。ただし、塀の主筋の場合には、継手は認められていない。
配力筋は、壁端部鉄筋に180度フックによりかぎ掛けすることや、直交壁に定着させる方法などが (-社)日本建築学会の規準に定められている。
「標仕」では、これらについて、特記としており、参考としては (-社)日本建築学会の「壁式構造関係設計基準集・同解説」「壁式構造配筋指針」「JASS 7メーソンリー工事」等の該当部分を用いるとよい。
帳壁の各部配筋を表8.3.2及び表8.3.3に、配筋例を図8.3.5に示す。
表8.3.2 一般帳壁の壁筋(コンクリートブロック帳壁構造設計規準・同解説より)
図8.3.5 ブロック帳壁の種類・鉄筋の名称・主要支点間・主要支持辺等(壁式構造配筋指針より)
(c) 帳壁を土間コンクリート上に設置する場合は、帳壁の鉄筋を土間コンクリート内に定着させるとともに、帳壁下部には補強を行う。
(d) 帳壁工事では、現場作業工程上やむを得ずコンクリート躯体へあと施工アンカーを施工したり、鉄骨躯体へ溶接施工したりして帳壁を緊結させる必要が生じる場合がある。あと施工アンカーの使用は監督職貝の承諾事項である。特に、小壁帳壁のように、曲げ・せん断力が加わる場所に使用する場合は、専門業者による検討や施工も必要である。また、「(-社)日本建築あと施工アンカー協会」等に確認して、適切なものを使用する。
① ブロック塀の配筋は、塀を補強するのみならず、塀と基礎、控壁等と緊結する役目を担っている。地震時の塀の転倒は部材間の連結(継手、定着)不良によるところが多いので、十分施工の確認を行う必要がある。控壁は3.4m以下ごとに設け、鉄筋コンクリート造又は型枠コンクリートブロック造とする。
② 主筋をブロック中心部に配筋するためには、基礎コンクリート打込み前の主筋の位置決め及びコンクリートの打込み時に移動がないように図8.3.6に示すように堅牢な振れ止めを設ける必要がある。縦筋は継手を設けてはならない。
図8.3.6 縦筋頂部の高さそろえ、振れ止めの例
③ ブロック塀頂上部は、横揺れを生じやすい。横筋は壁頂を一体化し横揺れを防止する役目をもっている。したがって、縦筋は頂上部の横筋にかぎ掛けとするか又は90゜フックで余長10d以上とする。頂上部の横筋に縦筋を正確にかぎ掛けするためには図8.3.6に示すように振れ止めを設ける。さらに、頂部の横筋の端部は控壁に定着するか縦筋に180度フックでかぎ掛けすることが望ましい。しかし、現実には控壁との高さの違いなどによりかぎ掛けが困難な場合があり、この場合は横筋を鉛直に曲げ、縦筋と25d以上の定着を取るようにする(図8.3.7)。塀の重ね継手長さ及び定着長さを表8.3.4に示す。
図8.3.7 ブロック塀の配筋例
各部の配筋は、特品によるとしている。各部の配筋は、(-社)日本建築学会「壁式構造配筋指針・同解説」、同「壁式構造関係設計規準集・同解説(メーソンリー編)」を参考にするとよい。帳壁の配筋例を図8.3.8に示す。
図8.3.8 帳壁の配筋例図
8.3.5 縦やり方
塀の縦やり方は、8.2.6による。特に、基礎部分の位置、形状や配筋位置などに合わせた指標として、やり方は小規模工事であっても設けられることが多い。ブロック塀でのやり方の例を図8.3.9に示す。
図8.3.9 コンクリートブロックの組積におけるやり方の例
なお、縦やり方については、電子式の自動式レベル器などが進歩しており、やり方を省略する工事現場が多くなっている。丈夫な基礎の上部に、水平で鉛直な塀の構築が重要である。
8.3.6 ブロック積み等
ブロックの積み方は8.2.7によるほか次による。
(a) 最上段のブロックと主体構造体との取合い部の一例を図8.3.10に示す。最上段を組積し、溝部分にモルタルを充填する。
(b) 開口部に設けるまぐさは、8.2.7 (ク) と同様に行う。
図8.3.10 最上段の納まり例
笠木は、汚れ防止や耐久性向上等の観点から雨水が直接壁面に当たらないようなはね出しのあるものが望ましい。笠木ブロックを用いる場合は、モルタルが充填でき、鉄筋のかぶり厚を十分に確保できる空洞を有し、地震時の脱落防止の対策が考慮されている形状が望ましい。
8.3.7 モルタル及びコンクリートの充填
あと施工の帳壁でスラブ若しくは梁下まで充填する場合は、頂部に投入穴を設ける。部分的であっても、型枠状ブロックを使用する場合には、コンクリートを全充填することを原則とする。
8.3.8 ボルトその他の埋込み
ボルトその他の埋込みは、8.2.9による。
8.3.9 電気配管
8.3.10 養生
9.1.1 適用範囲
(a) 建築物で防水を必要とする部位は屋根、ひさし、バルコニー、外壁及び室内の水回り等である。これらの部位への防水層が必要となる。この防水層を形成するために行う工事が防水工事である。
防水工事の仕様は一般に経験と実績データによるといわれている。このことから「防水工事の仕様」は信頼性のあるものが用いられる。「標仕」に採用している仕様は材料・工法とも常に技術の進歩と実績による検証を含めて検討されたものである。このため新しい防水工法はあまり採用されていないが、これらの工法の防水性能が劣るものではない。新しい防水工法を採用する場合には、施工例等を十分検討したうえで用いるとよい。
(b)「標仕」では、メンブレン防水として、アスファルト防水、改質アスファルトシート防水、合成高分子系ルーフィングシート防水及び塗膜防水を規定している。また、地下構造物を対象とした防水としてケイ酸質系塗布防水を規定している。更に、目地防水として、不定形弾性シーリング材を用いたシーリングの規定がある。
(c) メンブレン防水工事は、不透水性被膜を形成することにより防水するものである。選定に当たっては建物の用途、規模、構造、気候及び施工条件を考慮する必要がある。更に、保全のしやすさ、耐久性等も併せて検討することが大切である。メンブレン防水層の種別選定の目安を表9.1.1に示す。
(d) ケイ酸質系塗布防水工事は、コンクリート表面にケイ酸質系塗布防水材を塗布し、その生成物でコンクリートの毛細管間隙を充填し、防水性能を付与するものである。選定に当たっては部位、用途等を考慮し、更に下地の状態に十分な配慮を行い適用する必要がある。ケイ酸質系塗布防水の適用部位は「標仕」表9.6.1を参照されたい。
(e) シーリング工事は不定形弾性シーリング材を用いて部材の接合部等を充填するものである。シーリング材の種類は被着体に適応するものを選定する。シーリング防水の種別選定の目安は7節を参照されたい。
9.1.2 基本要求品質
(a) 防水工事及びシーリング工事に使用する材料の品質は主としてJISによるものとしており、このJISに適合することの証明方法は1章4節に示すとおりである。 JISのない材料にあっては、主要な材料製造所の指定する製品としており、この指定された製品であることの確認ができる資料を提出させることによって証明ができるようにする。
(b) 防水工事及びシーリング工事は、使用する材料の品質規定だけでなく、指定材料により防水層等を構成する工程についても、官庁営繕工事の実績により「標仕」に詳細に定めている。「所定の形状及び寸法」とは出来上がった状態に対する要求であるが出来形の確認として完成した防水層を切り取ることを要求しているわけではない。品質はプロセスによってつくり込まれるという考え方に立って.定められた材料を定められた手順で施工することで結果として所定の形状及び寸法を確保するようにする。具体的には、このための管理項目、「標仕」で定める以外の詳細な手順を明確にし、プロセスの途中における施工の良否の判定基準及びこれらの限度を超えた場合の処置方法を「品質計画」において提案させるとよい。
完成した防水層やシーリングは、防水上重要あるだけでなく、出来形として見え掛り面に表れてくることから、意匠上も重要になる。このことを踏まえて「所要の仕上り状態」とは、防水機能を果たす部位としての寸法及び形状を満足するだけでなく、見え掛りとなる部分については、取り合う仕上材料とのバランスを考慮して出来形の許容範囲を具体的に定め、これを確実に実施するための管理を行うと考えればよい。
(c) 「標仕」9.1.2(a)(3)、(b)(3)でいう「漏水がない。」とは、例えば、屋上の防水の場合等に水張り試験を行って確認することを要求しているわけではなく、漏水のない品質をプロセスでつくり込むという考えが重要である。つまり、(a)及び(b)と関連して、防水工事及びシーリング工事の施工プロセスをいかに管理するかを具体的に「品質計画」で提案させ、これを実施した結果として、防水工事の基本である漏水のない建物ができると考えればよい。
(1) 防水層の施工の良否は、施工時の気象条件に大きく左右されるので十分注意する必要がある。次の場合は施工を中止する。
(ⅳ) 強風及び高湿の場合
防水施工中、降雨・降雪のおそれが生じた場合には一時中止し、既に施工した防水層について必要な養生を行う。
このため「標仕」9.1.3(b)では、防水層の施工は随時検査を行うことを規定している。
(c) 防水層施工後は、機材等によって防水層を損傷しないように注意するとともに、他の工種の作業員等が防水層に上がらないようにする。やむを得ない場合は必要な養生を行う。
表9.1.1 メンブレン防水層種別選定の目安
2節 アスファルト防水
9.2.1 適用範囲
(a) 「標仕」で取り扱うアスファルト防水は、いわゆる積層式熱工法によるものである。わが国においても、20世紀初めには陸屋根に導入されたといわれる極めて歴史の古い防水工法であるが、防水の主体をなすアスファルトやアスファルトルーフィング類は、建築構法の変化に対応して改質・改良が加えられ、現在においても最も信頼性の高い工法とされている。
アスファルト防水熱工法は、アスファルトとルーフィング類を交互に数層重ねて密着し防水層を構成するもので、通常、6 ~ 10mm程度の厚さに仕上げられる。一般にシート防水層、塗膜防水層とともにメンブレン(膜)防水層と称されている。
更に、ルーフィングの組合せと層数を変えることによって、要求レベルに応じた防水性能をもたせることが可能であり、建物の種類と部位、耐用年数に対応して、適切な防水層を選択することができる。
平成25年版「標仕」では、改質アスファルトルーフィングシート類を併用する工法及び屋根露出防水絶縁断熱工法が採用された。これらは、従来のアスファルト防水の信頼性を維持して少層化が可能で、施工時のCO2削減、省資源及び煙・臭気対策や建築物使用時の省エネルギー等の環境対応の促進並びに工期短縮及び耐久性確保の両立を目的とした工法として、近年、多く採用されているものである。
(b) 作業の流れを図9.2.1に示す。
図9.2.1 アスファルト防水工事の作業の流れ
(2) 施工業者の決定に当たっては、工事実績等を検討し、工事の内容、規模等に応じ、適正かどうかを判断する。
また、(-社)全国防水工事業協会は、防水工事の基本要求品質を確保する目的で、平成15年度から防水工事の施工管理に関して、次のような防水施工管理技術者の認定制度を実施しているので参考にするとよい。
(i) 防水施工管理技術者I種(屋根・屋上、屋内、水槽類、地下等の防水工事)
(ⅱ) 防水施工管理技術者Ⅱ種(外壁の防水工事)
(3) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
⑭ 品質管理、基本要求品質の確認方法等
(d) 用語の説明
防水層と下地をなじみよく密着させる目的で、下地に塗布する液状の材料
防水層を形成するために用いるシート状の材料
溶融アスファルトをひしゃく等で流しながら、ルーフィングを張り付けること。
隅、角、ドレン回り、下地コンクリートの打継ぎ部等に、補強のためにルーフィングを張り増すこと。
網状アスファルトルーフィングの目をつぶすように、溶融アスファルトをはけで塗り付けること。
防水層と保護コンクリート又は断熱材と保護コンクリートの間に設ける絶縁・養生のためのシート
下地面の湿気を排出させる装置
「標仕」及び本書の9章[防水工事]では、屋根防水の防水層の立上り・立下りは「立上り」で統一する。「立下り」は地下の外壁の防水等に使用する。
2つの面が出会ってできる凸状の連続線
2つの面が出会ってできる凹状の連続線
出隅・入隅どうし又は相互が出会う箇所
「標仕」及び本9章[防水工事]では、パラペット等の立上りの水平方向の隅を単に「出隅・入関」といい、それと区別するために垂直方向の隅(コーナー部等)を「立上りの出隅・入隅」という。
9.2.2 材 料
(1) アスファルトプライマーはブローンアスファルト等を揮発性溶剤に溶解したもの、あるいはエマルションタイプのアスファルトプライマー(水性アスファルトプライマー)で常温で毛ばけ塗り又はゴムばけ塗りが容易にできる液体である。
アスファルトプライマーを防水下地に塗布すると,下地表面に付着したアスファルト皮膜を形成し、次の工程における溶融アスファルトとの接着を良くする。水性アスファルトプライマーは、脱有機溶剤に対する社会的要請や、火災、人体等に対する配慮から、従来の溶剤タイプに代えて使用される場合が多い。
通常の製品の場合、8時間以内に乾燥するが、気象条件や下地乾燥条件等により遅れる場合があるので、アスファルトプライマーを塗布し、翌日に次の工程の施工を行うのが一般的である。
(2) アスファルトプライマーはアスファルトルーフィング類製造所の指定する製品とされている。
(1) アスファルトはJIS K 2207(石油アスファルト)の防水工事用アスファルトに適合するものを用いる。
種類は表9.2.1のとおり1種~ 4種に区分されているが、「標仕」では平成22年版から3種を使用することと規定されている。これは、防水工事用アスファルト4種が、設備の老朽化等の理由により平成21年度で製造が停止され、国内での調逹が不可能になったためである。
従来、アスファルトの材料的特性として、3種は一般的に温暖地域に適し、4種は一般的に寒冷地域に適するとされていた。しかし、防水工事用アスファルトの実態調査によると「標仕」を適用している工事以外では、寒冷地域においても、3種アスファルトや性能的に3種に近い環境対応低煙低臭型工事用アスファルトが多用されており、その後の経過観察においても、耐久性能に支障がないことが確認されている。また、フラースぜい化点はその値が低いものほど低温特性の良いアスファルトといえるが、3種アスファルトのフラースぜい化点は4種アスファルトの規格値に近いものが一般的に製造されている。
(2) 針入度指数とフラースぜい化点は、防水工事用アスファルトの性状を表す値である。
針入度指数とは、アスファルトの軟化点と25℃における針入度から計算によって求められる値であって、数値が大きいほど、広い温度範囲において軟化あるいは硬化が起こりにくいアスファルトである。
フラースぜい化点とは、フラースぜい化点試験器によって得られる測定値で、低温時におけるアスファルトのぜい化温度を示す。その値の低いものほど、低温特性の良いアスファルトといえる。
(3) 市街地では、周辺環境への配慮や作業環境の改善等のため、JIS 3種アスファルトにおいても、低煙・低臭タイプが使われている。最近では、更に、低煙・低臭に対する要求が高まってきており、そのために、JIS規格品外ではあるが、環境対応低煙低臭型防水工事用アスファルトが開発され、使われるようになってきた。このアスファルトは、溶融施工温度を更に低温にすることで臭い、煙を大幅に低減したものである(図9.2.2参照)。
図9.2.2 発煙量(発煙係数)
(光量測定法による測定例)
図9.2.3 温度・粘度曲線
(回転粘度計による測定例)
図9.2.3の温度・粘度曲線からも分かるように、環境対応低煙低臭型防水工事用アスファルトでは約20℃も低い温度でJIS 3種アスファルトと同程度の溶融粘度になるので、従来のように温度を上げる必要がなく結果的に煙や臭いの発生が少なくなっている。
表9.2.2に環境対応低煙低臭型防水工事用アスファルトの品質の例を示す。しかしながら、低煙・低臭タイプのアスファルトでも、JIS 3種アスファルトと同様に、施工時の煙や臭いの発生をより少なくするためには、アスファルト溶融時の温度管理が重要であり、また、図9.2.9に示した「改良型無煙がま」や「アスファルト溶融保温タンク」の使用が有効である。
表9.2.2 環境対応低煙低臭型防水工事用アスファルトの品質の例
(c) アスファルトルーフィング類
(0) アスファルトルーフィング類の製法及び種類を図9.2.4に示す。
図9.2.4 アスファルトルーフィング類の製法及び種類
(1) アスファルトルーフィングの種類及び品質は、JIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)に表9.2.3及び表9.2.4のように定めらている。
アスファルトルーフィングは、古紙、パルプ、毛くず等の有機質繊維のフェルト状シートにアスファルトを浸透させ被覆して、表裏面に鉱物質粉未を散布し冷却後、規定の長さに切断して1巻としている。
表9.2.3 アスファルトルーフィングの種類(JlSA6005:2005)
表9.2.4 アスファルトルーフィングの品質(JIS A 6005:2005)
(i) 砂付ストレッチルーフィングは、「標仕」9.2.2 (c)(2)では,JIS A 6022によると定められている。
(ⅱ) 一般に、保護コンクリートのない屋根防水の最上層に仕上げ張りとして用いられる。隣接ルーフィングとの重ね部となる表面の片側100mmを除いて砂粒を密着させ、残りの表裏面に鉱物質粉末を付着させたものである。
JIS A 6022に定められている種類並びに品質を表9.2.5及び表9.2.6に示す。
表9.2.5 ストレッチアスファルトルーフィングフェルトの種類及び製品の抗張積の呼び(JlS A 6022:2011)
表9.2.6 ストレッチアスファルトルーフィングフェルトの品質(JIS A 6022:2011)
網状ルーフィングは、引張り、引裂き等の強度が大きく、一般に原紙を基材としたルーフィングと比べてなじみがよいので、立上り防水層の張りじまい、貫通配管回り等の増張りに用いられる。
表9.2.7 網状アスファルトルーフィングの品質(JIS A 6012 : 2005)
(4) 砂付あなあきルーフィング
(i) 砂付あなあきルーフィングは、防水層と下地を絶縁するために用いるルーフィングで、全面に規定の大きさのあなを一定間隔にあけたものである。
(ⅱ)「標仕」9.2.2(c)(4)では,JIS A 6023(あなあきアスファルトルーフィングフェルト)に規定されている「砂付あなあきルーフィング」を用いることとしている。
JIS A 6023に定められている種類並びに品質を表9.2.8及び表9.2.9に示す。
表9.2.8 あなあきアスファルトルーフィングフェルトの種類及び製品の単位面積質量の呼び(JIS A 6023: 2005)
表9.2.9 あなあきアスファルトルーフィングフェルトの品質(JIS A 6023 :2005)
(5) 改質アスファルトルーフィングシート
(i) 「標仕」9.2.2(c)(5)では改質アスファルトルーフィングシートは、JIS A 6013(改質アスファルトルーフィングシート)により、種類及び厚さは特記によることとしている(「標仕」表9.2.3.表9.2.4及び表9.2.8参照)。特記がなければ、改質アスファルトルーフィングシートは、非露出複層防水用R種又は露出防水断熱工法の最上層に使用する場合は露出複層防水用R種を使用することとし、厚さは「標仕」表9.2.3、表9.2.4及び表9.2.8によるものとされている。ただし、「標仕」で規定された厚さは、JIS A 6013での表示値を示しており、JIS A 6013では厚さの許容差はプラス側は規定せず、マイナス側は5%まで認められている。
(ⅱ) 改質アスファルトルーフィングシートR種は、合成繊維を主とした多孔質なフェルト状の不織布原反に、アスファルト又は改質アスファルトを浸透させ、改質アスファルトを被覆したものである。
(ⅲ) 改質アスファルトルーフィングシートは、腐朽、変質しにくく、ストレッチルーフィングと比較しても低温で硬化、ぜい化しにくく、伸び率も大きいので破断しにくいなど、種々の優れた特性をもっている。
JIS A 6013に定められている種類及び品質を表9.2.10から表9.2.12までに示す。
(6) 部分粘着層付改質け付改質アスファルトルーフィングシート
(i) 「標仕」9.2.2(c)(6)では、部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシー トは、JIS A 6013により、種類及び厚さは特記によることとしている(「標仕」表9.2.5、表9.2.6、表9.2.7及び表9.2.8参照)。特記がなければ、改質アスファ ルトルーフィングシートは、非露出複層防水用R種を使用することとし、厚さは「標仕」表9.2.5、表9.2.6、表9.2.7及び表9.2.8によるものとされている。ただし、「標仕」で規定された厚さは、JIS A 6013での表示値を示しており、 JIS A 6013では厚さの許容差はプラス側は規定せず、マイナス側は5%まで認められている。
なお、同告示に基づく、屋根葺材に加わる風圧力の計算例は9.4.4 (b)(11)を参照されたい。
(ⅲ) 改質アスファルトルーフィングシートは、腐朽、変質しにくく、ストレッチルーフィングと比較しても低温で硬化、ぜい化しにくく、伸び率も大きいので破断しにくいなど、種々の優れた特性をもっている。
JIS A 6013に定められている種類及び品質を表9.2.10から表9.2.12までに示す。
表9.2.10 改質アスファルトルーフィングシートの用途による区分及び厚さ(JIS A 6013 : 2005)
表9.2.11 改質アスファルトルーフィングシートの材料構成による区分(JIS A 6013 : 2005)
表9.2.12 改質アスファルトルーフィングシートの品質(JIS A 6013 : 2005)
(i) ストレッチルーフィングは、「標仕」9.2.2 (c)(7)では、JIS A 6022(ストレッチアスファルトルーフィングフェルト)によるストレッチルーフィング1000を使用するように定められている。
JIS A 6022に定められている種類並びに品質を表9.2.5及び表9.2.6に示す。
(1) ゴムアスファルト系シール材は、防水層張りじまいのシーリングに用いたり、防水層貫通配管回り等に塗り付けるものである。
(2) ゴムアスファルト系シール材は、ゴムアスファルトを原料としたもので、従来のアスファルトルーフコーチングに代わる材料である。耐候性、接・粘着性、低温可とう性、垂れにくさ等、シール材としての優れた特性をもっている。
(3) ゴムアスファルト系シール材はアスファルトルーフィング類製造所の指定する製品とされている。
ALCパネルの支持部の目地、PCコンクリート部材の継手目地、コンクリート打継ぎ部等の動きが予想される部分に張り付け、防水層に直接応力が及ばないようにする。
押え金物は防水層の末端部に使用し、防水層のずれ落ち・ロあき・はく離等の防止に用いられるもので、材料は防水層の末端部を機械的に固定するのに十分な剛性と耐久性をもち、更には腐食等の外観上の問題点を考慮して、ステンレス鋼やアルミニウム製のものが一般に使用されている。形状は防水層末端部の形状に応じたものを選ぶ必要があるが、一般的にはアングル状のものあるいは、リブ付きのフラットバー等が用いられる。
成形キャント材は、立上り隅を、45度に面取りするために用いる既製の材料で、耐熱型のプラスチックフォームを主材として傾斜面70mm程度、長さ1m前後としたもので、ルーフィング類製造所の指定するものとする。
(1) 屋根保護防水断熱工法に使用される断熱材には、JIS A 9511(発砲プラスチック保温材)に規定されているA種押出法ポリスチレンフォーム保温板3種b(表9.2.13参照)、A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板1号等があり、これらの材料の特徴は(i)及び(ii)のとおりである。
A種押出法ポリスチレンフォーム保温板(スキンあり)は、圧縮強度が大きく、耐圧縮クリープ性に優れ、また、透湿性・吸収性が小さいため安定した断熱性能を維持する。
A種押出法ポリスチレンフォーム保温板に比べて、一般に圧縮強度が小さく、熱伝導率が大きいが、割れ、欠けに強く圧縮復元性が大きい。
(2) 「標仕」9.2.2(h)では、断熱材の材質及び厚さは特記により、特記がなければ材質は、A種押出法ポリスチレンフォーム保温板3種b(スキンあり)を使用することとしている。
(3) ポリスチレンフォームは、防水層と保護コンクリートの間に設けるいわゆる USD工法に使用される。A種押出法ポリスチレンフォーム保温板3種b(スキンあり)は、熱伝導率、透湿抵抗、耐圧縮性等の点で、「標仕」における防水層種別(AI-1、AI-2及びAI-3)(BI -1、BI-2及びBI-3)の工法に適した断熱材である。
(4) 断熱材の必要厚さは、熱伝導率等から計算により求められる。
表9.2.13 押出法ポリスチレンフォーム保温板の特性(JIS A 9511 : 2009)
(i) 屋根露出防水断熱工法の断熱材
(1) 「標仕」9.2.2 (i)では,断熱材の材質及び厚さは特記により、特記がなければ材質は、JIS A 9511によるA種硬質ウレタンフォーム保温板2種1号又は2号(表 9.2.14参照)の透湿係数を除く規格に適合するものを使用することとしている。
特に、熱伝導率が小さく耐熱性に優れている。しかし、透湿係数がJIS規格に適合するものは市販されておらず、また、断熱材の突付け部からの水蒸気の移動もあることから、屋根露出防水断熱工法で内部結露の発生を抑える必要がある場合は防湿層を配置することとされている。
断熱材の厚さが50mmを超える場合は、防火地域又は準防火地域においては建築基準法第63条の規定に、また、特定行政庁が防火地域及び準防火地域以外の市街地について指定する区域内においては建築基準法第22条の規定に、それぞれ適合する展根構造としなければならない。
表9.2.14 A種硬質ウレタンフォーム保温板の特性(JIS A 9511 : 2009)
(j) 絶縁用シート
絶縁用シートは、防水層と保護コンクリートの間又は断熱材と保護コンクリートの間に設ける絶縁及び養生のためのシートで、「標仕」9.2.2 ( j )では特記がなければ、屋根保護防水工法の場合はポリエチレンフィルム(0.15mm以上)、屋根保護防水断熱工法の場合はフラットヤーンクロスを用いることになっている。フラットヤーンクロスは、ポリブロピレン、ポリエチレン等の平織りのシート(70g/m2程度)としている。
(k) 成形伸縮目地材
成形伸縮目地材は、ポリエチレン等の高密度発泡体よりなり、キャップ側面に付着層又はアンカ一部を設けたもので、「標仕」表9.2.1に規定する品質のものとしている。従来の注入目地材は、外観、耐久性とも施工に左右される面が大きく、現在ではほとんど使用されていないため、「標仕」では成形伸縮目地材のみ規定している。
なお、(-社)公共建築協会では「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)において「標仕」の品質基準に基づき、成形伸縮目地材の評価を行っているので、その結果を参考にするとよい。
(l) 成形緩衝材
成形緩衝材は、保護コンクリートの動きによる立上り防水層の損傷を防止するために立上り隅に取り付けるもので、アスファルトルーフィング類製造所の指定するものを用いる。
(m) 保護コンクリート
「標仕」ではコンクリートの調合は、6章14節[無筋コンクリート]によるものとされている。また、保護コンクリート内にひび割れ防止のために敷設する溶接金網(鉄線径6mm、網目寸法100mm)は、すべての保護コンクリートに敷設することとされている。
(n) 乾式保護材
また、その取付け工法は防水層立上り部の点検維持管理が容易な機構のものとする。
「標仕」9.2.2(n)では、その適用は特記としている。
なお、乾式保護材については、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)において、評価基準を定めて評価を行っているので参考にするとよい。
(o) れんが
立上り部の保護をれんが押えとする場合に使用するれんがには、主として粘土を原料として焼成した普通れんがと、セメントモルタルでれんが状に成形したモルタルれんががあるが、「標仕」では、特記がなければ、普通れんがを用いるものとされている。
(p) メタルラス
主に室内のモルタル保護の左官工事の塗り下地に使用するメタルラスには、平ラス、こぶラス、波形ラス及びリブラスの4種類があるが、「標仕」では、特記がなければ、JIS A 5505(メタルラス)の平ラス2号を用いるものとされている。
(q) モルタル
モルタルは細粒の骨材である砂と結合材としてのセメントを、適用部位により「標仕」表9.2.2に示された調合のセメントモルタルを使用するものとされている。
(r) ルーフドレン
(1) ルーフドレンは「標仕」13章5節により、本体、防水層押え及びストレーナの材質をJIS G 5501(ねずみ鋳鉄品)のFC150又はFC200とし、「標仕」表 13.5.2によるものとされている。
(2) 平成25年版「標仕」では.ルーフドレンのつばは、水密性の確保のため、防水層の張掛け幅が100mm以上確保できる形状のものとされた。
(s) 防水材料の保管と取扱い
大量の保管又は取扱いは、消防法第3章(危険物)により処置する。
(2) アスファルトプライマーやゴムアスファルト系シール材は、使用している溶剤による皮膚のかぶれ、密閉された場所における中毒等、健康を害する場合があるので、換気をするなど作業環境には十分注意する。
雨露等に当たったアスファルトを溶融すると気泡が発生し、塗った皮膜は多孔質になり、防水性能を損なうおそれがある。
なお、袋入りアスファルトを積み重ねるときは、10段を超えて積まないようにして荷崩れに注意する。
(4) ルーフィング類は、吸湿すると施工時に泡立ち、耳浮き等接着不良になりやすいので、屋外で雨露にさらしたり直接地面に置いたりしないで、屋内の乾燥した場所にたて積みにしておく。砂付ストレッチルーフィング等は、ラップ部(張付け時の重ね部分)を上に向けてたて積みにする。また、ラップ部保護のため2段積みにしてはならない。
9.2.3 防水層の種類、種別及び工程
平成25年版「標仕」では改質アスファルトルーフィングシートの流し張り及び部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシートを併用する工法が追加規定された。これらの改質アスファルトルーフィングシートを併用する工法は、従米の防水性能とその耐久性を維持してルーフィング類の層数を少層化したもので、使用する防水工事用アスファルトの使用量を削減することが可能な工法である。
(ⅶ) 屋内防水密着工法 (E-1、E-2)
(2) 密着工法と絶縁工法
平成25年版「標仕」では、屋根保護防水密着工法((1)の(i)及び(ii))で従来のアスファルトルーフィング1500及びストレッチルーフィング1000のアスファルト流し張り2層を改質アスファルトルーフィングシートの流し張り1層で代替する少層化工法が A-3として規定された。
(ii) 絶縁工法((1)の(iii)、(iv)、 (v)及び(vi))
また、屋根露出防水絶縁工法では、日射によって気化・膨張した水分が絶縁層の間を自由に拡散・移行することができる。しかし、脱気装置を設けることにより、ふくれを低減できるため脱気装置を併用して外気に拡散させる方法を取ることが標準とされている。「標仕」9.2.3(5)及び(6)では、その種類及び設置数量は、特記がなければルーフィング類製造所の指定するものとしている。
② 絶縁工法には次のような種類があるが、「標仕」9.2.3 (3)~(6)では節易な方法で確実に部分接着ができる従来の砂付あなあきルーフィングと、平成 25年版からは、部分粘着層付き改質アスファルトルーフィングシートによる工法を指定している。砂付あなあきルーフィングを用いる場合は、砂付あなあきルーフィングを敷き並べたのち、次工程の流し張りの際に使用する防水工事用アスファルトが砂付あなあきルーフィングのあなから流れ出ることにより、下地と部分的に接着する。その分、次工程で使用するアスファルトの量は、通常の流し張りで使用する量よりも多く、1.2kg/m2としている。
1) 防水層の最下層にあなあきルーフィングを用いる方法(図9.2.5(イ)参照)
2) 溝付き、突起付き又は部分粘着層付きルーフィングシートを用いる方法(図9.2.5(ロ)参照)
3) ルーフィングやアスファルトパネルを点張り、線張り、袋張り等によって下地に部分密着させる方法
(イ) 砂付あなあきルーフィングの場合
(ロ) 部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシートの場合
図9.2.5 絶縁工法
③「標仕」では、絶縁工法の工程2に砂付あなあきルーフィングを用いる場合は、「立上り部は、砂付あなあきルーフィングを省略する。」とされている。これは、砂付あなあきルーフィングは、一般平場部で防水層と下地を絶縁するためのもので防水性能を付与するものではないとの考えから、それまで 立上り部には砂付あなあきルーフィングに代えてストレッチルーフィングを密着張りしていたが、それは省略してもよいということである(図9.2.21 参照)。
保護防水とは、防水層の上にコンクリート、コンクリートブロック等の保護層を設ける防水のことをいう。これらの保護層を設ける目的は、一つには、直射日光の遮断や外力による損傷の防止等によってアスファルト防水層の耐久性向上を図ることであり、もう一つの目的は、屋上を歩行可能な仕上りにして何らかの用途に供するためである。
「標仕」では、主として前者を目的として、コンクリートによる保護層を設けることとしている。
保護断熱防水は、屋根スラブの外側に防水層と組み合わせて断熱材を設ける 外断熱防水である。躯体に対する熱応力の影響、室内側の表面結露、断熱材の 内部結露、暖房停止時の室温変動等に対し、スラブの下(室内側)に断熱材を設ける方法に比べて有利な点が多く、コンクリート建築物屋根断熱の大部分で採用されている。外断熱防水には、防水層の上に断熱材を置く方法と、防水層の下に置く方法とがあるが、それぞれに適した材料と適用の選択が重要である。
「標仕」でいう断熱防水は、防水層の上に吸水性の特に小さい断熱材を設け、絶縁材シートを敷き、保護コンクリートを設けるものである。また、直射日光や外気温の高低による影響から防水層を保護する効果もある(図9.2.6参照)。
図9.2.6 屋根保護防水断熱工法
露出防水は、最上層に比較的耐久性のある砂付ストレッチルーフィングを用いるものであるが、一般の歩行には適していない。防水層の保護や美観のためには、砂付ストレッチルーフィングの上にシルバー系やその他の着色塗料を塗り付ける。
露出防水は、補修が容易であるという利点があり、更に、コンクリート保護層等のない分、重さを軽減することができる。表9.1.1 に示すように、各種スラブ下地の屋根に、使用形態、施工性、経済性等を考慮して選定される。
平成25年版「標仕」では、防水層の保護と美観を目的として、砂付ストレッチルーフィングの上にはシルバー系やその他の着色塗料を塗布することとされた。仕上塗料の種類及び使用量は特記によるものとされている。
また、防水層押えのない露出防水では、日射によって気化・膨張した水分を、絶縁層を自由に拡散、移行させ脱気装置を併用して外気に拡散させる方法を取らなければならない。その脱気装置の種類及び設置数量は特記により、特記がなければアスファルトルーフィング類製造所の指定するものとされている。
① 露出断熱防水は、屋根スラブの外側に防水層と組み合わせて断熱材を設ける外断熱防水である。
躯体に対する熱応力の影響、室内側の表面結露、暖房停止時の室温変動等に対し、スラブの下(室内側)に断熱材を設ける方法に比べて有利な点が多<、コンクリート建築物屋根断熱の大部分で採用されている。
② 露出断熱防水は、断熱材を防水層の下に置く方法で、特に寒冷地の場合は断熱材と防水層の間に下地の水分が透過してきて冬期に内部結面が発生する可能性がある。このため、「標仕」では、防湿層として断熱材の下にアスファルトルーフィングを流し張りした防湿層を配置している。
③ 屋根露出防水断熱工法において断熱材を併用する場合には、9.2.2 (i)の硬質ウレタンフォーム保温板を用いる。
④「標仕」においては、断熱材に防水工事用アスファルトが直接触れることで発生する気泡が経時でのふくれ発生につながらないよう、粘着層付改質アスファルトルーフィングシートを張り付けたのちに熱工法で砂付ストレッチルーフィングや露出防水用改質アスファルトルーフィングシートを流し張りして露出防水層を形成する工法が採用されている。
⑤ 平成25年版「標仕」では、防水層の保護と美観を目的として、砂付ストレッチルーフィング又は露出防水用改質アスファルトルーフィングシートの上に仕上塗料を塗布することとされた。仕上塗料の種類及び使用量は特記によるものとされている。
また、近年は高反射率塗料を仕上塗料として用いて、太陽光による防水層の温度上昇を小さくして防水層の耐用年数の向上を目指す手法も多くとられてきている。夏季における温度上昇を小さくして防水層の耐用年数を向上させることは、特に太陽光の影響を大きく受ける屋根露出防水絶縁断熱工法に有効とされている。
(I)通常、防水層の種別は、建物の用途、規膜、構造、気候、施工条件を考慮して「標仕」表9.2.3~表9.2.9から、更に、補修の難易耐久性等も併せて勘案して表9.1.1から選定される。
(2) 屋内防水密着工法のうちE-1については主として貯水槽、浴槽等に用いることを想定したものである。
その他の場所に用いる場合は工程3を省略することが「標仕」表9.2.9に注記されている。
9.2.4 施 工
(a) 防水層の下地
仕上げの程度は、平場のコンクリート下地の場合はコンクリート直均し仕上げとし、工程を「標仕」15.3.3 (a)の(1)から(3)までとしている。また、立上りは「標仕」表6.2.4のB種のコンクリート打放し仕上げとしている。
便所、浴室等の防水層の下地は、施工精度や配管、便器の取合い等を考應してモルタル塗りとする場合は、「標仕」9.2.4 (a)(1)により図面に特記することとされている。
また、凹凸がある場合は、サンダー等で平たんにする。
② 下地は十分に乾燥していること。表面が乾燥しているように見えても、 コンクリート内部まで乾燥するには天候の状況によってかなり時間を要する。乾燥が不十分な下地に施工すると露出防水では、平場コンクリート内部の含有水分が気化・膨張してふくれが生じやすいので注意する。
4) 目視による乾燥状態の確認
防水層の納まり、下地との接着、施工後の水はけ等、水密性・耐久性のうえから適切な形状の下地を確保しておかなければならない。平場・立上り部の下地施工時に十分注意するとともに、不適と思われる部分は防水層施工前に直しておく。
① 設計図による所定の勾配を確実に付ける。
② 防水層のなじみをよくするために行われる出隅・入隅の面取りは、平成25年版「標仕」では通りよく、45°の面取り(図9.2.7参照)とされ、入隅の半径50mm程度の丸面処理は、一般には行われなくなってきているため削除された。成形はモルタル又はコンクリートによる。
図9.2.7 下地の形状
③ 露出防水における入隅は、モルタル又はコンクリートの面取りに代えて、成形キャント材を用いることができることとしている(図9.2.7参照)。
④ 入隅の面取りが斜面の場合には、一般に50mm x 50mm x 1/2でつくられることが多いが、保護コンクリートの厚さが50mm程度で断熱層のない場合には、立上り面に接する部分が鋭角になって、保護層の動きで防水層に損傷を与える危険性がある。特に、屋内防水の立上り部の入隅において、保護モルタルの厚さを十分に確保できずに鋭角になる場合には、面取りの長さを短くするなどの処置が必要である。
⑤ 屋内保護密着防水工法で、出隅・入隅の面取りにより保護層等の施工に支障が生じるおそれがある場合は、面取りを行わない場合もある。
(3) ドレン、貫通配管回り
(i) ルーフドレンをコンクリートと同時打込みとするのは、確実に固定して防水層に悪影響を与えないようにするためである。したがって、あとから位置の補正等をしないように正しい位置・高さに設ける。
ルーフドレンや排水落し口等は、スラブ面より低くし、周囲の水はけを良くする。なお、必要に応じてスラブコンクリート下面の打増しをする。
(ⅱ) 配管類の防水層の貫通は、可能な限り避ける。やむを得ない場合は、スリーブを使用しこれを完全に固定する。貫通部の周囲のスラブ面は、特に平たんにし、配管類を含め下地の汚れ除去等清掃を十分に行う。
(b) アスファルトプライマー塗り
アスファルトプライマーは、毛ばけ・ローラーばけ又はゴムばけを用いて塗り付ける。この時に防水下地以外の面を汚さないように注意する。
なお、吹付け方法は揮発性溶剤により薄め過ぎたり、吹出口が詰まって、一様に塗付けできないおそれがあるほか、飛散により周囲を汚しやすいので用いない。
(c) アスファルトの溶融
アスファルトの引火に備え、消火器、消火砂、鉄板のふた等を溶融がまの風上側に準備しておく。
(ⅱ) コンクリートスラブの上に設置する場合は、床から250mm以上離すか、又は熱による悪影響のない構造形態の溶融がまを使用する。
(ⅲ) やむを得ず完成した防水層の上に設置する場合は、防水層に有害な影響を与えないよう保護コンクリートを打つか、コンクリート平板や繊維強化セメント板等を敷くなどして養生を行う。
(2) アスファルトの溶融は、大きな塊のまま溶融がまに投入すると、局部加熱が生じやすくなるため、小塊にして溶融がまに投入する。
(3) アスファルトの溶融温度の上限は、「標仕」ではアスファルト製造所の指定する温度としている。これは、過熱による引火及びアスファルトの物性低下を防止するためである。
自動温度制御装置を組み込んだ改良型溶融がまも使用されている(図9.2.9参照)。
「標仕」では同一アスファルトの溶融を3時間以上続けないこととされているが、これは局部加熱によるアスファルトの変質を避けるためである。工場でアスファルトを保温タンクに詰めて、現場に搬入するタイプは過熱がないため、この限りでない。
(4) 溶融アスファルトは、施工に適した温度(精度)を保つように管理する。溶融アスファルトの温度の下限は、一般の3種アスファルトで 230℃程度、低煙・低臭タイプのアスファルトでは 210℃程度とされている。
溶融アスファルトの温度低下について、図9.2.8に示す。
図9.2.8 アスファルトの温度低下推定値
(ハイスラー線図による)
(イ) 改良型溶融がま
(ロ) 一般の溶融がま
(ハ) アスファルト溶融保温タンク
図9.2.9 アスファルト溶融がま
(5) 屋根保護防水断然工法の断熱材は熱により変形・溶融しやすいため、断然材に溶漁アスファルトを直接掛けずに、下地側に塗り広げたのちに断熱材を張り付けるなどする。
(6) 溶融がまは、温度管理、煙・臭いの低減、効率アップ等の面から年々改良が加えられており、近年は、大型の保温タンクに溶融アスファルトを充填して施工場所に持ち込んだり、あるいは施工場所において電気ヒーターで溶融したりすることにより、更に煙・臭いの低減を図ったものもある(図9.2.9参照)。
(1) 一般平場のルーフィングの張付けに先立ち、ストレッチルーフィングを用いて次の増張りを行う。増張りのストレッチルーフィングどうしは突付けとし、突付け部分が開いた場合は、水みちとならないように、アスファルトを塗り付ける。
(i) コンクリート打継部及びひび割れ部は、幅50mm程度の絶縁用テープを張った上に、幅300mm以上のストレッチルーフィングで図9.2.10のように増張りする。ただし、絶縁工法の場合は、幅50mm程度の絶縁用テープを張り付けたのち、平場の1層目のルーフィング類を張り付ける。
図9.2.10 コンクリート打継ぎ部及びひび割れ部の処理例
(ii) 出隅・入隅、立上りの出隅・入隅及び出入隅角の増張りは次による。
① 出入隅角は、図9.2.11及び図9.2.12のように増張りする。屋根露出防水断熱工法で断熱材を立上り際まで張る場合の出入隅角の増張りは、平場の断熱材の上で行なう。
図9.2.11 出隅・入隅及び出入隅角の増張りの例(JASS 8より)
図9.2.12 出隅・入隅及び出入隅角の増張りの例:
立上りの出隅・入隅に増張りを行う場合(JASS 8より)
② 平成25年版「標仕」では、屋根保護防水工法で立上り部の保護が乾式工法の場合及び屋根露出防水工法の場合は、立上り部の出隅・入隅の増張りは行わず、図9.2.11のように増張りするものとされた。これは、立上りの出隅・入隅において、立上り部の保護が現場打ちコンクリート及びれんがの場合以外では、保護層の動きによる影響が防水層に及ばないためである。屋根露出防水断熱工法で断熱材を立上り部の際まで張る場合は、図9.2.13のように増張りは平場の断熱材の上で行う。
(イ)入隅部
(ロ)出隅部
図9.2.13 露出防水断然工法における出隅・入隅部の施工例
③ 屋根保護防水工法で立上り部の保護が現場打ちコンクリート及びれんがの場合の出隅・入隅及び立上りの出隅・人隅には、幅300mm以上のストレッチルーフィングを図9.2.12のように増張りする。
④ 増張りどうしを重ねる必要はない。ただし、突付けとした増張りどうしの間隔が開いた場合は、その部分にアスファルトを塗り付け、水みちとならないようにする。また、はみ出したアスファルトは刷毛等で均しておく。
なお、重ね部からはみ出たアスファルトはその都度はけを用いて塗り均しておく。
(ii) 部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシートの張付けは、裏面のはく離シートをはがしながら、しわが入らないように張り付ける。重なり部は、上層のルーフィング類を流し張りすることにより、水密性を確保することができるが、施工途中で施工を中断する場合の重なり部の処理はアスファルトルーフィング類製造所の仕様によるものとする。
(iii) アスファルトルーフィング類の重ね幅は、幅方向、長手方向とも原則として 100mm以上重ね合わせる。また、原則として、水下側のアスファルトルーフィング類が図9.2.14のように、重ね部の下側になるように張り重ねねる。
図9.2.14 ルーフィング類の千島張り工法
(イ) 砂付あなあきルーフィングの継目
(ロ)部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシートの継目
図9.2.15 絶縁用材料の継目の処理
ただし、絶縁工法の場合、砂付あなあきルーフィングの継目は突付けとし、図9.2.15(イ)のように敷設する。施工時に、風のために砂付あなあきルーフィングの移動やまくれ等のおそれのある場合には、要所をアスファルトで点付けして固定しておく。
部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシートの継目は図9.2.15(ロ)のように張り付ける。
(iv) アスファルトルーフィング類の重ね部が各層で同じ箇所にならないよう.図9.2.14のように張り重ねる。
(v) 露出防水絶縁工法及び露出防水絶縁断熱工法の立上り部際の500mm程度は防水工事用アスファルトを用いて、立上り部の1層目のルーフィングを図9.2.16のように密着張りをする。ただし、露出防水断熱工法で、断熱材の上に防水工事用アスファルトを用いる場合は、流し張りに支障のない程度の低い温度で密着張りを行う。
(イ) 砂付あなあきルーフィングの場合
図9.2.16 露出防水絶縁工法における出隅・入隅部の納まり例
(vi) 「標仕」では、立上りと平場のアスファルトルーフィング類は別々に張り付けることになっているが、立上りの高さが400mm未満の場合は、平場のアスファルトルーフィング類をそのまま張り上げることができるとされている。
(vii) 保護防水絶縁工法の立上り部際の500mm程度は防水工事用アスファルトを用いて、立上り部の1層目のルーフィングを図9.2.16のように密着張りをする。
なお、隣り合う4枚の断熱材の角が一点に集中しないようにする。
図9.2.17 屋根露出防水断然工法の断熱材の張付け方法の例(JASS 8より)
(3) 立上り部の張付け
(i) 「標仕」9.2.4(d)(3)(ⅰ)では、屋根保護防水工法における防水層の立上り部の納まりは、あごのないパラペットの天端部を含めて下層になるほど30mm程度ずつ短くして、末端部は幅100mm程度の網状ルーフィングを増張りし、溶融アスファルトで目つぶし塗りをしたのち、端部にゴムアスファルト系シール材を塗り付けるとされている。
ただし、平成25年版「標仕」では.監督職員の承諾を受けて端部を押え金物で押さえる場合とともに、立上りを乾式保護仕上げとする場合にも、所定の位置に各層の端部をそろえたうえで押え金物で固定する方法を採用することができるようになった。
れんが押えの場合で、前者の納まりの例を図9.2.18に、乾式工法の場合で、後者の納まりの例を図9.2.19に、前者の納まりの例を図9.2.20に示す。
図9.2.18 屋根保護防水密着断熱工法の例(「標仕」表9.2.4 種別 AI-2)
〔立上り:れんが押えの場合〕
図9.2.19 屋根保護防水密着断熱工法の例(「標仕」表9.2.4 種別 AI-3)
〔立上り:乾式工法の場合〕
図9.2.20 屋根保護防水絶縁断熱工法の例(「標仕」表9.2.6 種別 BI-3)
〔立上り:乾式工法の場合〕
(ii) 「標仕」9.2.4 (d)(3)(ii)では、屋根露出防水工法における防水層立上り部の納まりは、所定の位置に各層の端部をそろえ、押え金物で固定した上に、ゴムアスファルト系シール材で末端処理をするとされている(図9.2.21 ~23参照)。
図9.2.21 屋根露出防水絶縁工法の例(「標仕」表9.2.7 種別 D-2)
図9.2.22 屋根露出防水絶縁工法の例(「標仕」表9.2.7 種別 D-4)
図9.2.23 屋根露出防水絶縁断熱工法の例(「標仕」表9.2.8 種別 DI-2)
(iii) 押え金物は、特記がなければ既製のアルミニウム製 L-30×15×2.0 (mm)を用いるとしている。「標仕」9.2.4(d)(3)(iii)では、留付けはステンレスビスで 450mm程度以下のピッチとされている。
(4) ルーフドレン、便器及び貫通配管等の張付け
(i) ルーフドレン・貫通配管回りは、立上り部分以上に漏水を起こしやすい箇所であるから、入念な施工が必要である。ルーフドレンのつばへの増張り及び防水層の張掛け幅は、平成25年版「標仕」では、100mm程度とされた。配管類の防水層貫通は、配管経路を変えるか納まりを変えるなどして極力避ける。
(ii) ルーフドレン回りは300mm以上ストレッチルーフィングを増張りするとされている。また、ドレン回りの増張りとパラペットの入隅の増張りは兼用することができる。
絶縁工法における砂付あなあきルーフィング又は部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシートとストレッチルーフィング増張りとの納まりを、図9.2.24に示す。
図9.2.24 ルーフドレン回りの納まりの例
(iii) 貫通配管及び和風便器回りに用いる網状ルーフィングは、アスファルトで十分に目つぶし塗りを行う。
貫通配管回り及び洋風便器配管回りの防水層の納まりは図9.2.25による。
図9.2.25 貫通配管回りの防水層の納まり例
(iv) 和風便器回りの防水は、施工が困難である。床を水洗いする場合は、特に納まりに注意する。便器保護のために、周囲に張り付けてある材料が、防水層になじまない場合は、上部は30mm程度これを除去し、アスファルトを厚さ3mm程度塗り付けて、なじませる(図9.2.26参照)。
図9.2.26 和風便器回りの防水層の納まりの例
(5) ふくれその他の補修
空隙、気泡、しわ等が生じた場合は、各層ごとに補修する。ただし、ふくれの補修箇所は防水層の欠陥部分となりやすいので、保護層のある場合でふくれに進行性がなく小面積のものは、補修をしない方がよい場合がある。
補修方法は、図9.2.27のように、ふくれ箇所をカッター等の用具で十文字又はH型に切開して、空気を押し出すようにしてアスファルトを流して張り付け、更に切開した寸法より大きめのルーフィングを増張りする。
図9.2.27 ふくれの補修例
(6) アスファルト塗り
(i) アスファルト塗りは、原則として、はけ塗りとし、均ーに所定量を塗り付ける。特殊な器具を用いる場合は、性能をよく確かめる。
(ii) アスファルトのはけ塗りは、塗付け量が十分に確保できる温度にして行う。
(7) 脱気装置
(i) 屋根露出防水絶縁工法において、下地水分の気化・膨張による防水層のふくれを低減するのに、砂付あなあきルーフィング及び部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシートの非接着部分での拡散によるだけでは対処できない場合が多い。
このような場合には、水分を積極的に外気に拡散させる脱気装置を併用する手段が有幼である。
脱気装置には、平場に取り付けるものと、立上り部に取り付けるものとがあるが、種類及び設置数量は、特記がなければルーフィング類製造所の指定するものとしている。
なお、設置数量の目安としては、通常、防水層平場 25~100m2に1個程度であるが(表9.2.15参照)、装置によって排出能力が異なるので、正確な分担面積はルーフィング類の製造業者の資料を参考にするとよい。
(ii) 脱気装置は、通常、保護防水絶縁工法には設けない。その理由は、絶縁工法とする目的が下地のひび割れや継目の動きによる防水層の破断を防ぐことにあって、露出防水の場合のように、防水層のふくれの低減を目的とするものではないからである。
しかし、近年は、工期短縮、工費低減の要請から、デッキプレートを型枠にしてコンクリートを打ち込んだ屋根スラブが多くなっている。このコンクリートは非常に乾燥しにくいので、保護防水工法においても、絶縁工法をとるとともに脱気装置を設けて、積極的に水分の排出を図ることが必要な場合もある。
この保護防水絶縁工法に用いる脱気装置は、立上り部に設ける型式のものが適している。平場設置型のものでは、保護コンクリートの動きによって脱気装置を損壊したり、防水層に損傷を与えるおそれがある。
表9.2.15 脱気装置の種類(JASS 8より)
(e) アスファルト防水層施工の途中における検査の留意点は、次のとおりである。
また、防水層完成時においては、仕上り面・納まり等の外観検査とともに各材料が規定量どおりに施工されていることを確認する。この場合、アスファルトの使用量は、防水層全体としての数量を把握することを重点において、全使用量から単位面積当たりの数量を算出して確認する。
防水層の検査としては、切取りによる方法もあるが、破壊検査となることから検査後の補修が必要なことと、補修部分が防水上の欠陥につながりやすいので「標仕」では規定していない。
(f) 施工時の降雨・降雪に対する処置は.次のとおりとする。
(1) 張り付けたルーフィングの末端部及び張りじまいにはアスファルトを塗り付けておく。
(a) 成形緩衝材の取付け
(1) 「標仕」では,保護コンクリートの動きによる防水層の損傷を防ぐため、断熱層の有無にかかわらず入隅には成形緩衝材を用いることとしている。
(2) 成形緩衝材は、絶縁用シートの敷込みに先だって溶融アスファルト等で入隅に固定する。
(b) 断熱材の張付け
(1) 断熱材の張付けは、防水層の最終工程で塗り付けされたアスファルトが、断熱材に支障のない温度になったときに隙間のないように張り付ける。断熱材は、ずれない程度に固定されればよいので、ポリスチレンフォームが溶融しないように十分注意して張り付ける。
(2) 張付け後の断熱材に隙間、へこみ、欠損等が生じた場合は、防水層に傷をつけないように注意しながら断熱材を挿入するなどして補修する。
(3) ルーフドレン回り、入隅部分の断熱材の納まりは図9.2.28による。
(4) 入隅部分の断熱材は、図9.2.28のように緩衝材に接して張り付ける。
(c) 絶縁用シートの敷込み
絶縁用シートは、立上り面に30mm程度張り上げるようにする。
また、強風時には、重ね部分の要所をモルタルで押さえ、フィルムの浮揚を防止する。
フラットヤーンクロスは、粘着テープ、ゴムアスファルト系シール材等で要所を固定する。重ね幅は100mm程度とする。
(d) 平場の保護コンクリート
なお、厚さは「標仕」9.2.5(d)で、特記がなければ、コンクリートこて仕上げの場合は80mm以上、タイル張り等の仕上げを行う場合は60mm以上とし、所要の勾配に仕上げることとしている。
(2) すべての保護コンクリートに、ひび割れを防止するため、溶接金網を伸縮調整目地内ごとに敷き込む。溶接金網の重ね幅は、金網部分を1節半以上、かつ、150mm以上とし、コンクリート打込み時に動かないように鉄線で結束し、コンクリート厚さの中間部にコンクリート製スペーサー等を用いて設置する。
なお、溶接金網の敷設に当たっては、防水層を損傷しないように注意する。
(3) 室内防水保護コンクリートは、屋根の場合に準拠して行う。一般に室内の場合は面積が小さく、コンクリートの動きも小さいことから、絶縁層及び伸縮調整目地は設けないのが普通である。ただし、面積が大きい場合(1辺の長さが10m程度以上)や、吸水による伸ぴ等が考えられる場合には、伸縮調整目地を適宜設ける。
また、保護コンクリートに配管を埋め込む場合等は、配管に先立ち防水層の上に厚さ 15mmの保護モルタルを施す。
(e) 立上り部の保護
立上り部の保護は次により、適用は特記としている。
れんがやコンクリート押えといった湿式工法に対して防水層立上り部前面にボード類を設置する乾式工法がある。
乾式工法の一例として、防水立上がり部乾式保護工法がある。この工法については、防水立上がり部乾式保護工法研究会により「防水立上がり部乾式保護工法(設計・施工)技術指針」が作成されている(図9.2.29参照)。
図9.2.29 防水立上がり部乾式保護工法の例
(ii) れんが押え
れんが積みは、図9.2.30のように立上り防水層から20mm程度離して半枚積みとし、各段ごとにその隙間にセメントモルタルを充填する。
目地幅は10mmとし、縦目地は芋目地にならないようにれんが割りする。れんが積みした表面は、セメントモルタルで仕上げる。
セメントモルタルの調合比は、セメント:砂=1 : 3 とする。
図9.2.30 立上りの保護の例(れんが押えの場合)
コンクリート押えは、無筋コンクリートを上部天端まで打ち込む。
屋内等でモルタル押えとする場合は、ひび割れ防止とモルタルの脱落防止のため、防水層表面に 200mm間隔程度に千鳥状にとんぼを付けて、これに平ラス 2号を取り付けたのち、モルタルを厚さ 30mm程度に塗り付ける。
(f) 伸縮調整目地
なお、目地は周辺の立上り部等まで達するように、また、保護コンクリートの下面まで達するように設ける。
図9.2.31 伸縮調整目地割りの例
図9.2.32 伸縮調整目地の施工例(JASS 8より)
伸縮調整目地は、絶縁層の上に施された保護コンクリートが、乾燥収縮及び温度、水分による伸縮でひび割れが発生したり、移動によってパラペットを押し出したりすることを防ぐために設けるものである。したがって、保護コンクリートの上から下まで通して、かつ、周辺の立上り部等まで達するように目地が切られていないと、この目的が十分達成できないことになってしまう。
伸縮調整目地は、図9.2.32のように成形伸縮目地材を用いて構成する。
(2) 成形伸縮目地材を絶縁用シート表面に目地の割付け及びレベル調整の水糸に従ってコンクリートレベルまでを調節しながら目地建てを行い、コンクリート流入圧や打設圧に対して安定するように成形伸縮目地材の両サイドに据付けモルタルを盛り付けて固定する。この場合、固定用据付けモルタルを成形伸縮目地材キャップの天端まで盛り上げて固定してはならない。キャップの天端まで盛り上げた場合は、保護コンクリートの目地周辺のコンクリートに小さなひび割れが多数発生して外観上の不具合となる。したがって、据付けモルタルは成形伸縮目地材のキャップの下端にフック状のアンカーがあるところまでモルタルを盛り上げて固定することが重要である。
なお、高さ可変型の成形伸縮目地材では、保護コンクリートの打込み圧力で押し流されたり移動することを防止する目的で、固定用の粘着テープの状況や留付け高さ可変用のピンの状況を十分に確認して、目地材が確実に留め付けられてから、据付けモルタル等で確実に固定することが重要である。
屋上排水溝にはひび割れ防止のために、溶接金網を挿入したうえで、モルタル金ごて仕上げとすることが一般的であったが、平成25年版「標仕」9.2.5(g)では.屋上排水溝の適用は特記によるものとされた。
9.3.1 適用範囲
(a) 改質アスファルトシート防水工法は、シート状に成形された改質アスファルトシートを種々の方法により施工する工法であるが、「標仕」で取り扱う改質アスファルトシート防水工法は,改質アスファルトシートをトーチバーナーを用いて施工するトーチ工法及び粘着層付改質アスファルトシートを用いる常温粘着工法である。
トーチ工法はトーチバーナーを用いることにより、改質アスファルトシート相互の接合部及び改質アスファルトシートどうしが溶融一体化することが特徴である。トーチ工法は海外では広く普及している防水工法であり、わが国でも 1992年に JIS A 6013(改質アスファルトルーフィングシート)が制定(2005年改正)されたのをきっかけに急速に普及した工法である。一方、常温粘着工法は、裏面に粘着層を施した粘着層付改質アスファルトシートを裏面のはく離紙等をはがしながら下地に接着させる工法で、戦後まもなく導入されたものであるが、1974年に当時の日本住宅公団に採用されたことから普及した工法である。いずれの工法も、においが出ない、溶剤の使用量が少ないなど近隣への影響が少ない工法である。常温粘着工法はトーチ工法と同様な性能・耐久性をもち、施工性も良好なことから、平成25年版「標仕」で採用された。また、従来の屋根露出防水密着工法に加え、動きの大きい下地への対応として屋根露出防水絶縁工法及び建物使用時の省エネ対策として露出防水絶縁断熱工法も同じく採用された。
(b) 作業の流れを図9.3.1に示す。
図9.3.1 改質アスファルトシート防水の作業の流れ
(c) 準 備
(1) 設計図書の確認、施工業者の決定については、9.2.1(c)に準ずる。
(2) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
⑪ 品質管理、基本要求品質の確認方法等
(d) 用語の説明
防水層を形成するために用いるシート状の材料
裏面に粘着層を付けた改質アスファルトシートで、粘着層を全面に設けた密着用と部分的に設けた絶縁用がある。部分的に設けたものを部分粘着層付改質アスファルトシートという。
増張りに適した形状に裁断されたシート状の材料
改質アスファルトシートをトーチバーナーで溶融しながら張り付ける工法
粘着層付改質アスファルトシート裏面のはく離紙等をはがしながら張り付ける工法
9.3.2 材 料
改質アスファルトシートは、改質アスファルト等をシート状に成形したもので、合成繊維不織布等を補強材として構成したものと補強材を用いないものがある。改質アスファルトは、アスファルトにスチレン・ブタジエン・スチレン(熱可塑性ゴムの一種で、通常SBS系と略す。)やアタクチックポリプロピレン(非結晶性ポリプロピレンで、通常APP系と略す。)等の改質剤を添加してアスファルトの温度特性や耐久性を改良したものである。APP系改質アスファルトによる改質アスファルトシートは、トーチ工法に使用されることが多く、SBS系改質アスファルトによる改質アスファルトシートは、トーチ工法及び常温粘着工法に使用され,また.アスファルト防水にも使用される。
(i) 改質アスファルトシート
①「標仕」9.3.2(a)では、改質アスファルトシートは JIS A 6013(改質アスファルトルーフィングシート)により、種類及び厚さは特記によることとしている。特記がなければ、改質アスファルトシートの種類及び厚さは「標仕」表9.3.1から表9.3.3により、種類は表9.3.2によるR種とされている。また、厚さは表9.3.1に従い、トーチバーナーを用いて施工する改質アスファルトシートは、それ以外の方法で施工する改質アスファルトシートよりもそれぞれの用途による区分で1.0mm厚いものを使用するよう規定されている。「標仕」表9.3.1から表9.3.3で規定された厚さは、JIS A 6013での表示値を示しており、JIS A 6013では厚さの許容差はプラス側は規定せず、マイナス側は5%まで認められている。
② 改質アスファルトシートのR種は、合成繊維を主とした多孔質なフェルト状の不織布原反に、アスファルト又は改質アスファルトを浸透させ、改質アスファルトを被覆したもので,低温で硬化・ぜい化しにくく、伸び率も大きいので破断しにくいなど、種々の優れた特性をもっている。
③ 露出防水用改質アスファルトシートは、表面に鉱物質粒子の圧着又は金属はくの積層等の処理を行ったものとする。
(ⅱ) 粘着層付改質アスファルトシート及び部分粘着層付改質アスファルトシート
①「標仕」9.3.2(a)では、粘着層付改質アスファルトシート及び部分粘着層付改質アスファルトシートはJIS A 6013により、種類及び厚さは特記によることとしている。特記がなければ、粘着層付改質アスファルトシート及び部分粘着層付改質アスファルトシートの種類及び厚さは、「標仕」表9.3.1から表9.3.3により、いずれの粘着層付改質アスファルトシート及び部分粘着層付改質アスファルトシートの種類もR種とされている。「標仕」表9.3.1から表9.3.3で規定された厚さは、JIS A 6013での表示値を示しており、JIS A 6013では厚さの許容差はプラス側は規定せず、マイナス側は5%まで認められている。
② 改質アスファルトシートのR種は、合成繊維を主とした多孔質なフェルト状の不織布原反に、アスファルト又は改質アスファルトを浸透させ、改質アスファルトを被覆したものである。粘着層付改質アスファルトシートは改質アスファルトシートの裏面全面に粘着層を配したものである。また、部分粘着粘着層付改質アスファルトシートは改質アスファルトシートの裏面に粘着層をスポット状又はストライプ状に配して粘着層のない部分を通気層として利用するものである。また、使用前のブロッキングを防止するはく離紙又ははく離フィルムを配したもので、使用時にははく離紙又ははく離フィルムをはがしながら、下地対象面に転圧等を併用して張り付けるものである。
③ 粘着層の品質はアスファルトルーフィング類製造所ごとに異なるが、その接着強度は強風による飛散、浮き等が生じないようにその粘着層の面積比が決められている。そのため、「標仕」では、粘着層はアスファルトルーフィング類製造所の指定する製品とされている。風圧力に関しては、建築基準法施行令第82条の4の規定に基づき「屋根ふき材及び屋外に面する帳壁の風圧に対する構造耐カ上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」(平成12年5月31日 建設省告示第1458号)により算定する。
なお、同告示に基づく、屋根葺材に加わる風圧力の計算例は9.4.4(b)(11)を参照されたい。
④ 露出防水用改質アスファルトシートは、表面に鉱物質粒子の圧着又は金属はくの積層等の処理を行ったものとする。
「標仕」9.3.2(b)では、増張り用シートは、JIS A 6013の非露出複層防水用R種に適合するものとし、厚さ2.5mm以上としている。ただし、粘着層付改質アスファルトシートは厚さ1.5mm以上とすることとしている。増張りに適するように裁断し、下地の動きの大きいALCパネル短辺接合部及びPCコンクリート部材の目地部に用いる。また、防水層が疲労、破断しやすい出隅・入隅又は防水層の納まり上の欠陥となりやすい出入隅角、ルーフドレン回り等の要所に防水性を高めるために用いる。
(1) プライマー、あなあきシート,絶縁用テープ、シール材及び仕上塗料は,同じ種類・用途でも原料の調合や製造法が異なる場合がある。そのため、「標仕」9.3.2 (c)(1)では、改質アスファルトシート製造所の指定する製品としている。
プライマーは、改質アスファルトシートの施工に先立って下地に塗布する材料で、下地と改質アスファルトシートとの接着効果を向上させることを目的としたものである。一般的には、アスファルトや改質アスファルトを有機溶剤に溶解させた溶剤系と水に分散させたエマルション系がある。使用又は取扱いについては、消防法、労働安全衛生法等の規定を遵守しなければならない。
あなあきシートは、防水層と下地との間を絶縁するために用いられる材料で、シート全面に一定の間隔で穴が開いており、トーチ工法で改質アスファルトシートの張付けの際、溶融改質アスファルトが穴から流れ込み、下地へ規則的な部分接着となる。
絶縁用テープは、紙、合成樹脂等のテープ状のものに、粘着剤等を付着させたもので、幅50mmのものが用いられる。ALCパネル短辺接合部及びPCコンクリート部材目地部等大きな動きが予想される部分に張り付け、防水層に直接力が及ばないようにする。
シール材は防水層張りじまいや貫通配管回り等に使用されるもので、防水層上の弱点を補い、防水層の水密性を確保する材料である。材質は防水層に影響を与えないものとする。
仕上塗料は、露出防水用改質アスファルトシートの上に塗布し、防水層の美観と耐久性の向上(砂落ち防止、温度上昇低減)を目的として使用されるもので、一般にはエマルション系の塗料が多く使用される。
なお、仕上塗料は、塗料の品質性能上、長期的な耐久性を望むことが困難であり一定期間で塗り替える必要がある。
押え金物は、9.2.2(f)による。
(2) 屋根露出防水絶緑断熱工法に用いる断熱材は、屋根スラブと防水層の間に設置される。「標仕」9.3.2(c)(2)では、材質及び厚さは特記により、特記がなければ材質は、JIS A 9511(発泡プラスチック保温材)によるA種硬質ウレタンフォーム保温材の保温板2種1号又は2号で透湿係数を除く規格に適合するものとしている。
断熱材の必要厚さは、熱伝導率から計算により求められる。断熱材の厚さが 50mmを超える場合は、防火地域又は準防火地域においては建築基準法第63条の規定に、また、特定行政庁が防火地域及び準防火地域以外の市街地について指定する区域においては同第22条の規定に、それぞれ適合する屋根構造としなければならない。
なお、断熱材の固定に使用する接着剤等は、断熱材及び防水層に影響を与えないものとする。
9.3.3 防水層の種別及び工程
「標仕」9.3.3では、改質アスファルトシート防水工法は、屋根根露出防水密着工法、屋根露出防水絶縁工法及び屋根露出防水絶縁断熱工法とされ、また、それぞれの防水層の種別及び工程は「標仕」表9.3.1から表9.3.3により、適用は特記によるとしている。平成25年度「標仕」では、従来の屋根露出防水密着工法の2工法が3工法になり、更に、屋根露出防水絶縁工法の3工法及び屋根露出防水絶縁断熱工法の2工法が規定された。
露出単層防水用の改質アスファルトシートをトーチバーナーにより下地に全面密着させるトーチ工法による単層仕様の防水層である。
1層目に非露出複層防水用の粘着層付改質アスファルトシートを全面密着させ、更に、2層目に露出複層防水用の粘着層付改質アスファルトシートを張り合わせる複層の常温粘着工法による複層仕様の防水層である。
1層目に非露出複層防水用の部分粘着層付改質アスファルトシートで下地に部分的に接着させ、更に、2 層目の露出複層防水用の改質アスファルトシートをトーチバーナーにより張り合わせるトーチ工法による複層仕様の防水層である。下地に部分的に溶着させ絶縁工法とする場合は、1層目の部分粘着層付改質アスファルトシートに代え、非露出複層防水用の改質アスファルトシートとする。立上りは1層目の部分粘着層付改質アスファルトシートに代え、非露出複層防水用の改質アスファルトシートをトーチ工法で密着させる工法とする。
あなあきシートを敷き並べた上に露出単層防水用の改質アスファルトシートの裏面をトーチバーナーにより全面溶融し、穴の部分だけを下地に溶着させるトーチ工法による単層仕様の防水層である。改質アスファルトシートを下地に部分的に溶着させて絶縁工法とする場合は、あなあきシートを省略する。立上りは、あなあきシートを省略し密着工法とする。
1層目に非露出複層防水用の部分粘着層付改質アスファルトシートで下地に部分的に接層させ、更に、2層目に露出複層防水用の粘着層付改質アスファルトシートを張り合わせる常温粘層工法による複層仕様の防水層である。立上りは1層目の部分粘着層付改質アスファルトシートに代え、非露出複層防水用の粘着層付改質アスファルトシートを密着させる工法とする。
最初に断熱材を接着剤等によりド地に接着し、その上に非露出複層防水用の部分粘着層付改質アスファルトシートを張り付け、更に、2層目の露出複層防水用の改質アスファルトシートをトーチバーナーにより張り合わせる複層仕様の防水層である。立上りには断熱材は施工せず、1層目は非露出複層防水用の改質アスファルトシートをトーチ工法で密着させる。「標仕」表9.3.3では防湿層の設置は特記としているが、「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計、施工及び維持保全の指針」(平成18年国土交通省告示第378号)の地域 I、地域 Ⅱ 及び地域Ⅲにおいては、防湿層の設置が望ましい。防湿層としては、改質アスファルトシート系の常温粘着用シートを使用する場合が一般的である。
最初に断熱材を接着剤等により下地に接着し、その上に非露出複層防水用の部分粘着層付改質アスファルトシートを張り付け、更に、2層目の露出複層防水用の粘着層付改質アスファルトシートを張り合わせる常温粘着工法による複層仕様の防水層である。立上りには断熱材は施工せず、1層目は非露出複層防水用の粘着層付改質アスファルトシートを密着させる。ASI-T1と同様「標仕」表9.3.3では防湿層の設置は特記としている。
(4) ALCバネル及びPCコンクリート部材を下地とする場合のALCパネル短辺接合部及びPCコンクリート部材の目地部の処置は、改質アスファルトシート張付けに先立ち、(1)においては、増張り用シートにより増張りを行い、(2)及び(3)においては、絶縁用テープを張り付ける。また、ALCパネルを下地とした場合は、プライマーの使用量を0.4kg/m2とする。
9.3.4 施 工
防水層の下地は、9.2.4(a)を参照されたい。ただし、出隅及び入隅は図9.3.2に示す形状とする。
図9.3.2 出隅及び入隅の形状
プライマー塗りは、下地の乾燥を確認したのちに、清掃を行い、塗布する。
(ⅱ) ALCパネル下地の場合は、所定量をはけ等により2回に分けて塗布する。 2回目の塗布は、1回目に塗布したプライマーが乾燥したことを確認したのちに行う。
(ⅲ) プライマーは改質アスファルトシートの張付けまでに十分乾燥させる。
改質アスファルトシートの張付けに先立ち、増張り用シートを用いて次の増張りを行う。
(i) ALCパネルの短辺接合部
① 屋根露出防水密着工法において、トーチ工法(種別 AS-T1及び AS-T2)の場合は幅300mm程度の増張り用シートを用いて接合部両側に 100mm程度ずつ張り掛け、絶縁増張りを行う。常温粘着工法(種別 AS- J1)の場合は、幅50mm程度の絶縁用テープを張り付けたのち、幅300mm程度の増張り用シートを用いて増張りを行う(図9.3.3参照)。
② 屋根露出防水絶縁工法及び屋根露出防水絶縁断熱工法においては、トーチ工法(種別 AS-T3、AS-T4及びASI-T1)及び常温粘着工法(種別 AS-J2 及びASI- J1)のいずれの場合も増張り用シートによる増張りは行わず、ALCパネル短辺接合部に幅50mm程度の絶縁用テープを張り付ける処理だけでよい。
図9.3.3 屋根露出防水密着工法におけるALCバネル短辺接合部の増張り例
(ⅱ) PCコンクリート部材の接合部の目地部
① 屋根露出防水密着工法において、トーチ工法(種別 AS-T1及び AS-T2)の場合は部材の両側に100mm程度ずつ張り掛けることのできる幅の増張り用シートを用いて絶縁増張りを行う。常温粘着工法(種別AS_J1)の場合は、幅50mm程度の絶緑用テープを張り付けたのち、同様に行う(図 9.3.4参照)。
図9.3.4 屋根露出防水密着工法におけるPCコンクリート部材接合部目地部の増張り例
(ⅲ) 出隅及び入隅は、幅200mm程度の増張り用シートを100mm程度ずつ張り掛けて増張りを行う(図9.3.5参照)。
図9.3.5 出隅・入隅部の増張り例
また、出入隅角は幅200mm程度の増張り用シートを用いて図9.3.6のように行う。
図9.3.6 出入隅角の増張り例
(ⅳ) ルーフドレン回りは、増張り用シートをルーフドレンのつばと、つばから 100mm程度の範囲の下地に張り掛けるように張り付ける(図9.3.7参照)。トーチ工法の場合は、トーチバーナーでよく溶融させて張り付け、焼いた金ごて等で増張り用シートの段差を均す。常温粘着工法の場合は、ローラー転圧にトーチバーナーを併用するなどして張り付ける。増張り用シートの段差はトーチバーナー等を使用して均す。
図9.3.7 ルーフドレン回りの増張り例
(ⅴ)貫通配管回りは、150mm程度の増張り用シートを用いて貫通配管と根元を増 張りし、更に増張り用シートを貫通配管周囲の下地に150mm程度張り付ける(図 9.3.8参照)。トーチ工法の場合は、トーチバーナーでよく溶融させて張り付け.焼いた金ごて等で増張り用シートの段差を均す。常温粘着工法の場合は、ローラー転圧にトーチバーナーを併用するなどして張り付ける。増張り用シートの段差はトーチバーナー等を使用して均す。
図9.3.8 貫通配管回り増張り例
(d) 改質アスファルトシートの張付け
(1) 平場の張付け(密着工法)
(i) トーチ工法の場合
① 改質アスファルトシートの張付けは、改質アスファルトシートの裏面及び下地をトーチバーナーであぶり、改質アスファルトを十分溶融させ、丁率に張り付ける。
② 改質アスファルトシート相互の接合は、原則として、水上側が水下側の上に重なるように張り重ね、重ね幅は長手・幅方向とも100mm以上とする。}
③ 複層防水の場合は改質アスファルトシートの重ねが上下層で同一箇所にならないように張り付ける(図9.3.9参照)。その際、1層目の改質アスファ ルトシートの表面及び2層目の改質アスファルトシートの裏面をトーチバーナーであぶり、相互の改質アスファルトが十分溶融されていることを確認し、空気の内包、破れ、密着不良等ができないように張り付ける。
図9.3.9 改質アスファルトシートの張り方
④ 改質アスファルトシート相互の接合に当たっては、溶融した改質アスファルトがシート端部からはみ出すように十分溶融させ施工する。
⑤ 改質アスファルトシートの3枚重ね部は、水みちになりやすいので、中間の改質アスファルトシート端部を斜めにカットする(図9.3.10参照)か、焼いた金ごてを用いて角部を滑らかにするなどの処理を行う。
図9.3.10 改質アスファルトシートの3枚重ね部の納まり例
⑥ 露出防水用の改質アスファルトシートの砂面に改質アスファルトシートを重ね合わせる場合、重ね部の砂面をあぶり、砂を沈めるか、砂をかき取って改質アスファルトを表面に出した上に張り重ねる(図9.3.11参照)。
図9.3.11 露出防水用改質アスファルトシートの重ね部の処理例
(表面の砂をかき取る例)
⑦ 接合部からはみ出した改質アスファルトは、焼いた金ごて等を用いて処理する。この際、改質アスファルトシートの重ね部に口あき等のある箇所は、焼いた金ごてを差し込み再炭溶融して接着させる。
(ⅱ) 常温粘着工法の場合
① 改質アスファルトシートの張付けは、シートの裏面のはく離紙等をはがしながら空気を巻き込まないように、平均に押し広げ、転圧ローラー等を併用して張り付ける。
② 改質アスファルトシート相互の重ねは、(i) ②及び (i) ③による。
③「標仕」9.3.4 (d)(1)(ⅱ)では、改質アスファルトシート相互の張付けは、改質アスファルトシート製造所の仕様によるとしている。改質アスファルトシート相互の接合には、転圧ローラーによる転圧だけでなく、トーチバーナーやシール材等が併用されることが多い。
④ 改質アスファルトシートの3枚重ね部には、シール材を充填するか、トーチバーナーであぶり、焼いた金ごてを用いて滑らかにする。また、トーチ工法と同様に、中間の改質アスファルトシート端部を斜めにカットして行ってもよい。
⑤ 露出防水用の改質アスファルトシートの砂面に改質アスファルトシートを重ね合わせる場合は、砂面にゴムアスファルト系のテープ又はペースト等で処理したのちに張り付け、転圧する(図9.3.12参照)。また、トーチ工法と同様に砂をかき取って改質アスファルトを表面に出したのちに張り付け.転圧する方法もある。
図9.3.12 重ね部の処理例
「標仕」9.3.3 (2)及び「標仕」9.3.3 (3)では、トーチ工法の種別 AS-T3、AS-T4及びASI-T1並びに常温粘着工法の種別 AS-J2及びASI-J1を絶縁工法としている。
「標仕」表9.3.2及び「標仕」表9.3.3の工程で示される各シートの張付けは、①~③による。ただし、「標仕」9.3.4 (d)(1)(i) 及び「標仕」9.3.4(d)(1)(ⅱ)では、立上り際の幅500mm程度は改質アスファルトシートを全面密着させることとしている。また、改質アスファルトシートの張付けが複数日になる場合は、作業を中断する部分の雨仕舞処理、風対策等を考慮する。
① 部分粘着層付改質アスファルトシートの張付け(種別AS-T3、 AS- J2、ASI-T1及びASI- J1)
1)部分粘着層付改質アスファルトシートの張付けは、(1)(ⅱ)①による(図9.3.13参照)。
2) 部分粘着層付改質アスファルトシート相互の重ね幅は、幅方向は100mm程度とし、長手方向は突付けとし、その部分に200mm程度の増張り用シートを張り付ける(図9.3.14参照)。
なお、部分粘着層付改質アスファルトシート相互の張付けは、改質アスファルトシート製造所の仕様による。
3) 立上り際は、風による負圧が平場の一般部より大きくなるため、立上り際の幅500mm程度は密着工法とする(図9.3.15及び図9.3.16参照)。
図9.3.13 部分粘着層付改質アスファルトシートの張付けの例
図9.3.14 接合部の処理例
図9.3.15 立上り際の部分粘着層付改質アスファルトシートの納まり例
図9.3.16 ASI-T1の場合の立上り際の
部分粘着層付改質アスファルトシートの納まり例
② あなあきシートの張付け(種別 AS-T4)
1) あなあきシート相互は、隙間ができないように突付けで敷き並べる。突付け部の下側に改質アスファルトシート片(200 × 100(mm)程度)を3〜4m程度の間隔で敷き込み、空気の通路を設ける(図9.3.17参照)。
2) あなあきシートの上に改質アスファルトシートを張り付ける場合、あなあきの部分に溶融した改質アスファルトが十分に流れ込んでいることを確認しながら張り付ける。
3) 立上り際は、風による負圧が平場の一般部より大きくなるため.立上り際の幅500mm程度は密着工法とする(図9.3.18参照)。
図9.3.17 あなあきシートの敷き並べ例
図9.3.18 立上り際のあなあきシートの納まり例
「標仕」表9.3.2では、種別 AS-T3 及び種別 AS-T4 の場合、改質アスファルトシートを部分的に溶着する方法も可能とされている。
なお、立上り際の幅500mm程度は密着工法とする。
2) 改質アスファルトシート相互の接合部は、(1)(ⅰ)②による。
図9.3.19 部分的に溶着する張り方の例
(3) 断熱材の張付け
「標仕」では、屋根露出防水絶縁断熱工法における断熱材の張付けは、改質アスファルトシート製造所の仕様によるとしているが、施工の際には次の点に留意する。
① 断熱材は、順次隙間なく張り付ける。
(図9.3.20参照)。
③ 貫通配管回りへの断熱材の張付けは、貫通配管の回りに隙間及び浮きができないように張り付ける(図9.3.21参照)。
図9.3.20 ルーフドレン回りへの断熱材の張付け例
図9.3.21 貫通配管回りへの断熱材の張付け例
② 平場が部分粘着層付改質アスファルトシートを用いた絶縁工法の場合は、部分粘着層付改質アスファルトシートを非露出複層防水用の改質アスファルトシートに代えて張り付けて、平場へ張り重ねる。
③ 立上り部への改質アスファルトシートの末端部は、所定の位置にそろえて、押え金物を用いて留め付け、シール材を充填する(図9.3.22参照)。
① 立上り部の張付けは、(1)(ⅱ)による。
② 平場が部分粘着層付改質アスファルトシートを用いた絶緑工法の場合は、部分粘着層付改質アスファルトシートを非露出複層防水用の粘着層付改質アスファルトシートに代えて張り付けて、平場へ張り重ねる。
そろえて、口あきのないよう転圧し、押え金物を用いて留め付け、シール材を充填する。
図9.3.22 防水層端部の納まり例
(5) ルーフドレン、貫通配管等との取合い
① ルーフドレン回りは、改質アスファルトシートをトーチバーナーを用いてルーフドレンのつばに100mm程度張り掛かるように、増張り用シートの上に張り重ねる。防水層端部にはシール材を塗り付ける。絶縁工法の場合は、ルーフドレンのつばから400mm程度は密着させる。
② 貫通配管回りは、改質アスファルトシートをトーチバーナーを用いて貫通配管及び周囲の増張り用シートに張り重ね、貫通配管立上りの所定の位置に防水層の端部をそろえ、ステンレス製既製バンド等で防水層端部を締め付け、防水層の末端部及び貫通配管の根元部はシール材を塗り付ける(図9.3.23 参照)。
① ルーフドレン回りは、粘着層付改質アスファルトシートをルーフドレンのつばに100mm程度張り掛かるように、改質アスファルトシート製造所の仕様により増張り用シートの上に張り重ねる。防水層端部にはシール材を塗り付ける。絶縁工法の場合は、ルーフドレンのつばから 400mm程度は密着させる。
② 貫通配管回りは、粘着層付改質アスファルトシートを所定の位置に防水層の端部をそろえ、ステンレス製既製バンド等で防水層端部を締め付け、防水層の末端部及び貫通配管の根元部はシール材を検り付ける(図9.3.23参照)。
図9.3.23 貫通配管回りの取合い例
(1) 仕上塗料は、かくはん機等を用いて、顔料及び骨材等が分散するように注意しながら十分練り混ぜる。
(2) 仕上塗料塗りは、所定の塗布量をはけ又はローラーばけ等によりむらなく均一になるように塗布する。
改質アスファルトシート防水層施工途中における検査の留意点は9.1.3(b)を参照されたい。
9.4.1 適用範囲
(a) 合成高分子系ルーフィングシート防水は、一般にシート防水と総称され、通常、厚さ1.0〜2.0mmのルーフィングシートを下地に張り付けて構成される。「標仕」では、歩行を前提としない露出防水を想定して規定されている。
(1) このルーフィングシートは、合成ゴム又は合成樹脂を主原料としており、耐候性に優れている。
(2) 「標仕」では、接着工法(種別:S – F1、S – F2)及びルーフィングシートを機械的に固定する工法(種別:S – M1、S – M2、S – M3)が規定されていたが、平成25年版「標仕」では、プラスチック系保温材を断熱材として使用する断熱工法における、接着工法(種別:SI – F1、SI – F2)及び機械的固定工法(種別:SI – M1、SI – M2)が追加された。
(3) 塩化ビニル樹脂系(種別:S – F2)では保護材不要で軽歩行ができる施工も一般化している。
(4) 耐候性が優れていること以外に、施工時に火を使わない、施工が簡単、工期が短いなどの長所があるが、ルーフィングシートは一般に薄く、施工時に傷きやすいので注意を要する。
(b) 作業の流れを図9.4.1に示す。
図9.4.1 合成高分子系ルーフィングシート防水工事の作業の流れ
(c) 準 備
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
⑪ 品質管理、基本要求品質の確認方法
(d) 用語の説明
防水層を形成するために用いるシート状の材料
合成高分子を主原料としたルーフィングシート
合成高分子を主原料としたルーフィングシートに基布その他を複合したルーフィングシート
基布又は性状の異なるシート状のものを複合して寸法安定性、力学的物性等を改善した複合ルーフィングシート
補強布に強度を依存する複合ルーフィングシート
下地ヘプライマー、接着剤を用いてシートを全面接着する工法
下地へ固定金具を用いて機械的にシートを固定する工法
プラスチック系保温材を下地とシートの間に敷設し断熱材として使用する工法
9.4.2 材 料
ルーフィングシートは、JIS A 6008(合成高分子系ルーフィングシート)に適合するものを用いる。
(i) ルーフィングシートの種類は、表9.4.1に示すように均質シートと複合シートに大別される。
「均質塩ビ」には、引張強さ1,000N/cm2以上のものと、1,800N/cm2以上のものがあり、後者は主として機械的固定工法のものに使用する。
また、ルーフィングシートの種類と特性の関係は表9.4.2のようになる。
なお、幅は1.0m、1.2m又は1.5mのものが一般的である。
(iii) ルーフィングシートは、1巻ごとに包装の見やすい箇所に次の事項が表示されている。特に「標仕」では、露出防水を標準としているので、⑨の試験が実施済みのものであることを確認する必要がある。
⑨ 促進暴露処理及びオゾン処理試験実施の有無
絶縁用シートは、種別 SI – M2 に適用するもので、敷設又は張付けに支障なく、防水層の品質を低下させないもので、面材のないA種押出法ポリスチレンフォー ム保温板への塩化ビニル樹脂系ルーフィングシートの可塑剤の移行を防止する目的で使用される。
絶縁用シートの厚さについて「標仕」では規定していないが、一般には発泡ポリエチレンシート等の厚さ1.5mm以上のもののほか、フィルムや裁維類の補強材を積層した発泡ポリエチレンシートで厚さ1.0mm程度のもの及びポリエステル系やポリプロピレン系の不織布シートで厚さ 2.0mm程度のものが使用されているので、合成高分子系ルーフィングシート製造所仕様を確認する必要がある。
なお、下地と防水層、断熱材と防水層の間を緩衝、絶縁する目的で、種別 S – M1、S – M2、S – M3、SI – M1及び SI – M2 で絶縁用シートを使用するよう設計図書で指定された場合の材料等は上記に準ずる。
(c) その他の材料
同じ種類のシートでも原料の調合や製造法が多少異なる場合がある。そのため、「標仕」9.4.2(c)では、プライマー、接着剤、仕上塗料、シール材(定形・不定形を含む。)等は、合成高分子系ルーフィングシート製造所の製品又はその指定するものとしている。
一般的には、接着剤と同質又は類似の材質のものに、溶剤等を加えて溶解させた低粘度のもの又はエマルション系のもので、下地表面にある程度浸透するようにしたものが多い。
ルーフィングシートの種類とプライマーの一般的な組合せを次に示す。
ニトリルゴム系プライマー
なお、種別S – E2でプライマーの塗布は、ALCパネル下地のみとしている。
(ii) 接着剤
通常使用されている接着剤を表9.4.4に示す。
増張り用シートは、ルーフドレン、貫通配管、出入隅角等に補強を目的として使用する。そのほかにPCコンクリート部材、ALCパネルの目地処理に補強を目的として使用する場合もあり、合成高分子系ルーフィングシート製造所の指定する製品としている。
成形役物は、出隅角、入隅角の形状に合うように、ルーフィングシートと同じ材料を成形加工したものであり、出入隅角の処理に用いられる。
シール材は、合成ゴム、合成樹脂を主成分としており、定形又は不定形の製品がある。定形のものにはテープ状シール材等がある。不定形のものには防水上端末シール等に用いる変成シリコーン系、ポリウレタン系等のシール材及びシート接合部小口に塗布する液状シール材がある。
固定金具は、機械的固定工法に使用され、厚さ0.4mm以上の防錆処理した鋼板、ステンレス鋼板及びこれらの片面又は両面に樹脂を積層加工したもので、円盤状、プレート状及びアングル状のものがある。
なお、固定金具に使用する固定用アンカー及びプラグは、合成高分子系ルーフィングシート製造所の指定する製品とする。
絶縁用テープは、下地の接合部の動きが予想される部分に張り付け、ルーフィングシートに直接応力が及ばないようにするためのものであり、紙、合成樹脂等のテープ状のものに粘着剤等を付着させたもので、テープ幅は 50〜150mm程度のものが用いられる。
なお、仕上塗料は経年により外観機能が低下するため、美観の維持のためには一定期間での塗替えが望ましい。
その期間は合成高分子系ルーフィングシート製造所の仕様に示されている。
押え金物は、適度な剛性と耐久性を有し、防水層の立上りの末端部を確実に留め付け、防水層のはがれやずれ等を防止するために用いられるもので、材質は一般に耐食アルミニウムやステンレス鋼で、厚さ1.0mm以上のプレート状やアングル状のものが用いられる。
① 「標仕」では、断熱工法に使用する断熱材は、JIS A 9511(発泡プラスチック保温材)によるとされている。また、断熱材はルーフィングシートの品質を低下させないもので、種別 S – F1及びS – F2 の接着工法に使用するものは下地へのなじみがよく、耐溶剤性に優れたA種ポリエチレンフォーム保温材(JIS A 9511の密度及び熱伝導率の規格に適合するもの)が用いられる。
種別 SI – M1 及びSI – M2 の機械的固定工法に用いられる断熱材は、耐圧強度を必要とするもので、A種硬質ウレタンフォーム保温板2種1号又は2号(透湿抵抗を除く規格に適合するもの)又はA種押出し法ポリエチレンフォーム保温板が用いられる。
② A種押出し法ポリスチレンフォーム保温板は一般的には面材のない製品であるが、種別 SI – M2の場合、表面側に可塑剤移行防止層としての機能を有する面材を張り合わせた製品を使用することも多い。
断熱材の厚さが50mmを超える場合は、防火地域又は準防火地域においては建築基準法第63条の規定に、また、特定行政庁が防火地域及び準防火地域以外の市街地について指定する区域内においては建築基準法第22条の規定に、それぞれ適合する屋根構造としなければならない。
機械的固定工法で断熱工法(種別SI − M1及びSI − M2)を採用する場合は、下地水分による断熱材への吸水の影響を軽減するため、下地と断熱材の間に敷設する。厚さ0.15mm程度のポリエチレンフィルムが一般的である。
9.4.3 防水層の種別及び工程
(i) 加硫ゴム系ルーフィングシートを接着剤を用いて下地へ全面接着し、塗装仕上げを施す工法である。ルーフィングシートには、あらかじめ工場で加工された粘着層付又は接着剤付のルーフィングシートもある。また、「標仕」では特に規定されていないが、塗料に遮熱顔料を配合することで太陽光の近赤外領域のエネルギー反射率を高めた高反射率塗料を仕上塗料として使用することで、表面温度の低減が可能である。
なお、「標仕」では規定されていないが、あらかじめ着色したルーフィングシートもある。
(ii) 一般的なルーフィングシートの厚さは 1.0〜2.0mmであるが、「標仕」では、特記がない場合は 1.2mmを標準厚さとしている。ただし、複合シートを用いる場合は1.5mm以上とする。
(iii) ルーフィングシートは、伸びが大きい弾性体のため下地の動きによく追従し、繰返し疲労にも大きな抵抗力を有する。
(iv) ルーフィングシート相互の接合は接着剤及びテープ状シール材を用いて行う。
(v) 2.0mm程度の厚塗り塗装仕上げを施した場合は、軽歩行に供することも可能である。
(2) 種別S − F2(塩化ビニル樹脂系接着工法)及び SI − F2(塩化ビニル樹脂系断熱接箔工法)
(i) 塩化ビニル樹脂系ルーフィングシートを接着剤を用いて下地へ全面接着する工法であり、ルーフィングシート自体が着色されているので、仕上げ塗装は不要である。
(ii) 一般的なルーフィングシートの厚さは 1.2〜2.5mmであるが、軽歩行する場合も想定されるので、「標仕」では、特記がない場合は2.0mmを標準厚さとしている。
(iii) ルーフィングシート相互の接合には熱風又は溶着剤を用い、ルーフィングシートの接合面を溶かして接合する。シート端部は液状シール材を用いてシールする。
(iv) 耐摩耗性及び接合性能が良好なため、保護層なしで軽歩行に供することが可能である。
(v)「標仕」では特に規定されていないが、シートに遮熱顔料を配合することで シート自体の太賜光の近赤外領域のエネルギー反射率を高めたシート(基材 シートはJIS A 6008適合品)を使用することで表面温度の低減が可能である。
(3) 種別 S − M1(加硫ゴム系機械的固定工法)及び SI − M1(加硫ゴム系断熱機械的固定工法)
(i) 加硫ゴム系複合ルーフィングシートを固定金具を用いて下地へ機械的に固定し、塗装仕上げを施す工法である。また、「標仕」では特に規定されていないが、塗料に遮熱顔料を配合することで太陽光の近赤外領域のエネルギー反射率を高めた高反射率塗料を仕上塗料として使用することで表面温度の低減が可能である。固定金具の先付け工法で固定金具と接合する場合は、電磁誘導加熱による熱融着とする。
なお、「標仕」では規定されていないが、あらかじめ着色したルーフィングシートもある。
(ii) 機械的に固定するため下地の乾燥状態の影響を受けにくい。
(iii) この機械的固定工法に使用するルーフィングシートは、繊維等で補強された複合シートが使用され、「標仕」では、特記がない場合は 1.5mmを標準厚さとしている。
(iv) ルーフィングシート相互の接合は接着剤及びテープ状シール材を用いて行う。
(v) 立上り部は一般的に接着工法で施工されるが、機械的固定工法で行う場合もある。
(4) 種別S – M2(塩化ビニル樹脂系機械的固定工法)及びSI – M2(塩化ビニル樹脂系断熱機械的固定工法)
(i) 塩化ビニル樹脂系ルーフィングシートを固定金具を用いて下地へ機械的に固定する工法であり、ルーフィングシート自体が着色されているので、仕上げ塗装は不要である。固定金具の先付け施工法で固定金具との接合は、溶剤溶着又は熱風若しくは電磁誘導加熱による熱融着で行う。
(ii) この機械的固定工法に使用するルーフィングシートは、均質シート及び繊維等で補強された複合シートが使用され、一般に非歩行屋根に使われるので、「標仕」では、特記がない場合は1.5mmを標準厚さとしている。
(iii) ルーフィングシート相互の接合には熱風又は溶着剤を用い、ルーフィングシートの接合面を溶かして接合する。シート端部は、液状シール材でシールする。機械的に固定するため下地の乾燥状態の影響を受けにくい。
(iv) 立上り部は一般的に接着工法で施工されるが、機械的固定工法で行う場合もある。
(v) 「標仕」では特に規定されていないが、シートに遮熱顔良を配合することでシート自体の太陽光の近赤外領域のエネルギー反射率を高めたシート(JIS A 6008適合品)を使用することで表面温度の低減が可能である。
(i) 熱可塑性エラストマー系ルーフィングシートを固定金具を用いて下地へ機械的に固定する工法であり、ルーフィングシート自体が着色されているので、仕上げ塗装は不要である。固定金具との接合は、熱風又は電磁誘導加熱による熱融着で行う。
(ii) この機械的固定工法に使用されるルーフィングシートは、繊維等で補強された複合シートが使用され、一般に非歩行屋根に使われるので「標仕」では、特記がない場合は1.2mmを標準厚さとしている。
(iii) ルーフィングシート相互の接合は熱風を用い、ルーフィングシートを溶かして接合する。シート端部は、液状シール材でシールする。機械的に固定するため下地の乾燥状態の影響を受けにくい。
9.4.4 施 工
なお、防水施工中に降雨・降雪が予想される場合は、防水層が施工されていない部分から防水層の下に水が浸入しないように防水層端部を粘着テープ又はシール材等で処置する。
防水層の下地において、入隅は通りよく直角とし、出隅は面取りとする。ALCパネル、PCコンクリート部材等の目地処理以外はアスファルト防水の下地の項を参照する。
プライマーの塗布は、下地の表面を清掃したのち、その日に張り付けるルーフィングの範囲に、ローラーばけ又は毛ばけ等を用いて規定量をむらなく塗布する。
接着剤の塗布は、プライマーの乾燥を確認したのち、下地面、断熱材及びルーフィングの裏面に、ローラーばけ又はくしべら等を用いてむらなく塗布する。この際、種別S – F2ではルーフィングシートの直ね部分には接着剤を塗布しないように注意する。
なお、接着剤のオープンタイムは、15分から120分程度まである。ルーフィングシートを張る適切な乾燥状態は、気象条件によって差異があるので、指で押してもほとんどべとつかない程度を目安とする。
種別S − F2でエポキシ系又はウレタン系接着剤を用いる場合は、下地面のみにむらなく塗布する。
ALCパネル下地で種別S − F1、SI − F1、S − F2及びSI − F2の場合は、一般部のルーフィングシートの張付けに先立ち、パネル短辺の接合部の目地部に幅50mm程度の絶縁用テープを張り付ける。
種別 S − F1、SI − F1、S − F2及びSI − F 2の場合、「標仕」ではPCコンクリート部材の目地処理は特記としているが、PCコンクリート部材の製造所により、目地幅、固定取付け方法(コッター)が異なるため、絶縁用テープの幅、増張り用シートの有無等は合成高分子系ルーフィングシート製造所の仕様を確認する。種別 S − F1及び S − F2におけるPCコンクリート部材の目地処理の方法を図9.4.2に示す。
図9.4.2 PCコンクリート部材の目地処理の例
種別S − F1及びSI − F1の場合はルーフィングシートの張付けに先立ち、200mm角程度の増張り用シートを張り付ける(図9.4.3参照)。
図9.4.3 出入隅角の増張りの例
種別S − F2及びSI − F2の場合はルーフィングシートを施工後に、成形役物を張り付ける(図9.4.4参照)。
図9.4.4 出入隅角の処理の例
なお、種別S − F1 及びSI − F1の場合、「標仕」ではPCコンクリート部材の入隅部において増張りは特記としているが、PCコンクリート部材の製造所により、目地幅、固定取付け方法(コッター)が異なるため、増張り用シートの有無及び幅等は合成高分子系ルーフィングシート製造所の仕様を確認する必要がある。種別S − F1のPCコンクリート部材の入隅部の増張りの方法を図9.4.5に示す。また、SI − F1の場合、断熱材を固定し、断熱材の線膨張・収縮・ひずみ等による防水層に対する影響を緩和させるために、立上り際の平場には図9.4.6に示すように、幅100mm程度の非加硫ゴム系シートを張り付けている。
図9.4.5 PCコンクリート部材の入隅部増張りの例
図9.4.6 断熱材の立上り際の施工例
① 種別S – F1及びS – F2のルーフドレン回りは、図9.4.7による。ルーフドレン回りは、不具合を生じやすい部位なので、張り付けたシート類のローラー転圧を十分に行う。特に、シート類相互の接合部の段差部は、ステッチャー等で十分に転圧する。
② 種別 SI – F1及び種別 SI – F2 のルーフドレン回りの施工例を図9.4.8に示す。シート敷設に先立ち、断熱材をドレンのつばの300mm程度手前で止め、端部は45° 程度の勾配とする。
なお、「標仕」では規定されていないが、種別 S – F2 及び SI – F2で、塩ビ樹脂被覆されたルーフドレンを使用する場合は、シートを熱風融着又は溶剤溶着で水密性の高い接合が可能であるため、この場合のルーフドレンヘのシートの張掛け幅は40mm以上とすることができる。また、塩ビ樹脂被覆されたルーフドレンについては、合成高分子ルーフィング製造所の指定する製品とする。
図9.4.7 ルーフドレン回りの納まりの例
図9.4.8 ルーフドレン回りの納まりの例(断熱工法の場合)
(ii) 貫通配管回り
①種別 S − F1及び S - F2の貫通配管回りは、図9.4.9による。配管回りは、不具合を生じやすい部位なので、張り付けたシート類のローラー転圧を十分に行う。特に、シート類は、切込みを入れずに丁寧に仕上げる。
②種別SI - F1及び SI - F2 の貫通配管回りの施工例を図9.4.10に示す。シート敷設に先立ち、断熱材を配管回りに隙間ができないように張り付ける。
図9.4.9 配管回りの納まりの例
図9.4.10 貫通配管回りの納まりの例(断熱工法の場合)
(8) ルーフィングシートの張付け
(i) 張付けは、原則として水上側のシートが水下側のシートの上になるように行い、下地に全面接着とし、接着剤の適切な施工可能時間内に、できるだけルーフィングシートに引張りを与えないよう、また、しわのできないよう注意して行う。
なお、種別 S − F2で接着剤にエポキシ系及びウレタン系を使用する場合は、シート側に塗布しない。
(ii) 接合部は、不具合を生じやすいので特に注意して施工する。種別S − F1及びSI - F1の場合の接合は、接着剤をルーフィングシート両面に塗布し、かつ、テープ状シール材を併用して張り付け、ローラー等で押さえて十分に接着させる。3枚重ね部は、あらかじめ不定形シール材で接合段差部を均しておく。
種別S - F1及びSI - F1のルーフィングシートの3枚重ね部は、内部の段差部分に必ず不定形シール材を充填する。種別 S - F2及びSI - F2の3枚重ね部は、熱風融着し、よく押さえる。ルーフィングシートの端部を液状シール材を用いてシールする。図9.4.11に3枚重ね部の施工例を示す。
図9.4.11 3枚重ね処理の例
(iii) ルーフィングシートの接合部の施工は、次のように行う(図9.4.12参照)。
① 種別S - F1及びSI - F1では接着剤をルーフィングシート両面に塗布し、かつ、テープ状シール材を併用して張り付け、ローラー等で押さえて十分に接着させる。
② 種別S - F2及びSI - F2では重ね部を溶剤溶着又は熱風融着し、接合端部を液状シール材でシールする。
図9.4.12 ルーフィングシートの接合部の例
(iv) ルーフィングシートの接合幅は、表9.4.5による。
(v) 断熱工法の場合、断熱材の敷設は、接着剤を下地と断熱材に塗布し、乾燥後隙間ができないように張り付ける。断熱材にポリエチレンフォーム保温板を使用する場合、断熱材上でのルーフィングシートの施工は、ローラー転圧時にたわみが生じやすいので十分に注意して施工する。種別SI – F1及びSI – F2の施工例を図9.4.13に示す。
図9.4.13 平場部の施工例(断熱工法の場合)
(9) 立上り部の防水層末端部の納まり
防水層の末端部は、図9.4.14に示すように端部にテープ状シール材を張り付けたのちにルーフィングシートを張り付け、押え金物を用いて留め付けて、更に、不定形シール材で処理する。
図9.4.14 防水層末端部の納まりの例(S – F1及びS – F2の場合)
なお、厚途りの軽歩行用仕上げの場合は、一度に厚くならないように注意する。
種別S − M3 :熱可塑性エラストマー系)
なお、品質計画を作成するに当たっては次の事項を考砥する。
なお、風圧力の鉢定方法は、(11)による。
(ii) 各部位の所定の耐風圧力を確保するには、適切なプラグや小ねじを選定(材質、寸法、打込み深さ等)し、必要な固定箇所数を定める必要があり、合成高分子系ルーフィングシート製造所の仕様を確認する。
(iii) 絶縁用シートの敷設は、「標仕」では種別SI − M2で行い、種別S − M1、S − M2、S − M3及びSI − M1では原則として行わないが、次の理由により冬期の寒冷地では絶縁用シートを敷設する必要があり、合成高分子系ルーフィングシート製作所の仕様を確認する。
① 寒冷期に湿潤状態で施工した場合は、コンクリート下地表面の棟害による凹凸の発生のおそれがある。特にモルタルで下地の不具合を補修した部分等は、数年後に凍害を受けてはく離し、小さくて鋭角な突起物や石粒等が発生する場合もある。
② 多雪・寒冷地域では、鋭利な突起物の存在は、上からの積雪荷重により、影響を受けやすい。
施工時の天候によって次の点に注意する。
① 降雨・降‘雪中は施工を中止する。
なお、防水施工中に降雨・降雪が予想される場合は、防水層が施工されていない部分から防水層の下に水が浸入しないように、防水層端部を粘着テープ又はシール材等で処置する。
防水層の下地は、入隅は通りよく直角とし、出隅は面取りとする。また、下地は乾燥状態の影響を受けにくい工法であるが、雪や雨がやんだ時点で施工する場合は、たまり水をふき取り、積雪はきれいに除去してから行う。それ以外は.アスファルト防水の下地の項を参照する。
なお、断熱材の敷設は、平場のみに適用する。立上りに敷設する場合は、合成高分子系ルーフィングシート製造所の仕様による。
① 断熱材の敷設に先立ち、下地の上に防湿用フィルムを継目100mm程度重ねて隙間なく敷き並べる。
② 断熱材の敷設は、合成高分子系ルーフィングシート製造所が指定する工法によって断熱材及び絶縁用シートを敷き並べる。断熱材の隙間は断熱効果に影響するため、隙間ができないように十分注意して行う。断熱材が風で飛ばされないように、また、経時変化による反りやあばれを防止するため、断熱材を接着剤、テープ、固定金具等で仮止めする。固定金具の先付け工法の場合は、本固定と兼用でき、仮止めを省くことができる。入隅周囲は固定力を高めるため固定金具で固定する。
なお、種別SI − M1では絶縁用シートは使用しない。
種別S − M1 及びSI − M 1ではルーフィングシートの張付けに先立ち、200 mm角程度の増張り用シートを張り付ける(図9.4.3参照)。種別S − M2、SI − M2及びS − M3ではルーフィングシートを張り付けたのち、成形役物を張り付ける(図9.4.4参照)。
① ルーフドレン回りは、図9.4.15による。ルーフドレン回りは、不具合が生じやすい部位なので、張付けたシート類のローラー転圧を十分に行う。特に、シート類相互の接合部の段差部は、ステッチャー等で十分に転圧する。
② 種別SI − M1及びSI − M2 のルーフドレン回りの施工例を図9.4.16に示す。シート敷設に先立ち、断熟材をドレンのつばの300mm程度手前で止め、端部は45°程度の勾配とする。
③「標仕」では、ルーフドレンのつばへのシートの張掛け幅は100mm以上とされている。
なお、種別S − M2及びSI − M2で、塩ビ樹脂被覆されたルーフドレンを使用する場合は、シートを熱風融着又は溶剤溶着で水密性の高い接合が可能であるため、「標仕」では規定されていないがこの場合のルーフドレンヘのシートの張掛け幅は40mm以上とすることができる。また、塩ビ樹脂被覆されたルーフドレンについては、合成高分子ルーフィング製造所の指定する製品とする。
図9.4.15 ルーフドレン回りの納まりの例
(ii) 貫通配管回り
なお、施工に際し複合シートは、伸びにくいため均質シートと併用して行うこともある。
② 種別SI − M1及びSI − M2の貫通配管回りの施工例を図 9.4.18に示す。シート敷設に先立ち、断熱材を配管回りに隙間ができないように張り付ける。
図9.4.17 配管回りの納まりの例
(7) ルーフィングシートの固定
ルーフィングシートを固定金具を用いて取り付ける工法には次の3種類がある。
所定の位置にルーフィングシートを敷設したのち、合成高分子系ルーフィングシート製造所の仕様により固定金具を固定釘で取り付け、その上に適切な増張りを行う。この場合、種別S − M1及びSI − M1は接着剤による接着とし、種別S − M2及びSI − M2は溶剤溶着又は熱風融着、種別S − M3は熱風融着とする。
防水層施工下地に合成高分子系ルーフィングシート製造所の規定する箇所に固定金具を固定釘で取り付けたのち、所定の位置に敷設したルーフィングシートを固定金具に溶剤溶着又は熱風若しくは電磁誘導加熱による熱融着とする。
所定の位置にルーフィングシートを敷設したのち、ルーフィング相互の接合部で、合成高分子系ルーフィングシート製造所の規定する箇所に固定金具を固定釘で取り付け、固定金具を覆うように隣接ルーフィングシートで接合する。
図9.4.19 固定金具のあと付け工法の例
図9.4.20 固定金具のあと付け工法の納まりの例(断熱工法の場合)
図9.4.21 固定金具の先付け工法の例
図9.4.22 固定金具の先付け工法の納まりの例(断熱工法の場合)
図9.4.23 固定金具の接合部内工法の例
図9.4.24 固定金具の接合部内工法の納まりの例(断熱工法の場合)
(ii) 入隅部
入隅部は、プレート状、アングル状等の固定金具を用いてルーフィングシートを同定する。図9.4.25及び図9.4.26に施工例を示す。
図9.4.25 入隅部納まりの例
図9.4.26 入隈部納まり(断熱工法)の例
(8) ルーフィングシート相互の接合
ルーフィングシート相互の接合幅は、表9.4.6による。接合部は、原則として水上側のシートが水下側のシートの上になるように張り重ねる。
図9.4.27 接合部内固定工法の接合部の例
種別S – M1及びSI – M1の場合の接合は、接着剤をルーフィングシート両面に塗布し、かつ、テープ状シール材を併用して張り付け、ローラー等で押さえて十分に接着させる。3枚重ね部は、あらかじめ不定形シール材で接合段差部を均しておく。
種別S – M2及びSI – M2の場合の接合は、溶剤溶着又は熱風融着によって行い、種別S – M3の場合の接合は熱風融着によって行う。接合端部は液状シール材でシールする。3枚重ね部は熱風溶接機で熱融着させ、液状シール材でシールする。3枚重部の施工例を図9.4.28に示す。
図9.4.28 3枚重ね部の処理の例
(9) 立上り部の防水層末端部の納まり
(i) 種別S – M1及びSI – M1の場合
立上り部を機械的固定工法で行う場合は、端部にテープ状シール材を張り付けたのちにルーフィングシートを張り付け、末端部は押え金物で固定した上にシール材を充填する。笠木タイプの納まりの例を図9.4.29に示す。
図9.4.29 笠木タイプの納まりの例
(ii) 種別S – M2、SI – M2及びS – M3の場合
水切りあごタイプの納まりの例を図9.4.30、笠木タイプの納まりの例を図9.4.31に示す。
図9.4.30 水切りあごタイプの納まりの例
図9.4.31 笠木タイプの納まりの例
(10) 仕上塗料
仕上塗料の塗布は、所定屈をローラーばけを用いてむらなく塗布する。近年では遮熱顔料を配合することで太陽光の近赤外領域のエネルギー反射率を高め、表面温度の低減が可能な高反射率塗料を仕上塗料として使用される事例が増加している。また、「標仕」では規定されていないが、あらかじめ着色されたルーフィングシートもある。
シートの強度や固定金具の耐力等は合成高分子ルーフィングシート製造所の資料によるが、風圧力に関しては、建築基準法施行令第82条の4の規定に基づき「屋根ふき材及び屋外に面する帳壁の風圧に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」(平成12年5月31日 建設省告示第1458号)により算定する。
一般的な屋根で、建物高さ20m、地表面粗度区分Ⅲ、基準平均風速36mの場合の風圧力の値を表9.4.7 及び図9.4.32に示す。
Er = 0.912、V0 =36 m/s
ピーク風力係数( Cf )
Aの部位:-2.5
Bの部位:-3.2
Cの部位:-4.3
表9.4.7 陸屋根の風力計算例