1級建築施工管理技士 屋根・防水工事 露出アスファルト防水

建築品質 屋根・防水


006) 露出アスファルト防水の注意点

露出アスファルト防水は日常歩行しない屋上にも用いられる。防水の最終表層は砂付きアスファルトルーフィングなどにする。防水の信頼性は高い。耐久性においては保護アスファルト防水に劣るが、改修などメンテナンスが容易であるという利点がある。

1.露出アスファルト防水の躯体勾配は 1/50以上

露出アスファルト防水ではアスファルトルーフィングの施工時の重なり部に水が溜まらないように、また躯体コンクリート床の直押え精度を考慮して躯体勾配を1/50以上確保する。

2.露出アスファルト防水では躯体勾配で集水する

露出アスファルト防水では排水溝部分の防水施工ができないので、躯体勾配でルーフドレン(RD)に集水する。したがって、躯体勾配においては勾配をシンプルにし、打増しを少なくするようにする。躯体勾配は1/50を基本勾配とし、集水のための寄せ勾配(補助勾配)は1/100とする。

3.露出アスファルト防水の立上り寸法は300mm確保する。

露出アスファルト防水の防水立上りは水上コンクリート天端から300mmを確保する。これは立上り部に雨水をかかりにくくし、かるアスファルト防水の施工を確実にするため。

①コンクリートのパラペットに溶融アスファルトで確実に張り付ける。
②先端を金物で押さえる。
③ゴムアスファルト系シールをする。

露出防水の立上り部で、あごを設けないときは防水押さえの金物の上に大きめの水切りを付けて納める。または笠木を被せる。

4.防水立上り高さが確保できないとき

建物の高さ制限などで立上り高さが確保できないろきは、全体でオーバーフローしてもいように納める。パラペット天端外壁際まで防水を張りあげ、金物で押さえるなどの工法を検討する。

1級建築施工管理技士 屋根・防水工事 パラペット

建築品質 屋根・防水


008 )パラペットは外壁扱いに

防水を立ち上げる下地と水切りとしてのあごを総称してパラペットという。パラペットは外壁と防水の接点にあたり、雨仕舞上重要な部位である。パラペットの外壁が汚れた、クラックが入って漏水した。水が切れずに防水端部に水が廻った、保護コンクリートの膨張でパラペットが外壁から押し出されたなどの事例がある。

1.パラペットはあご先端までを外壁扱いにする

外壁は、通常クラックが入りにくいようにダブル配筋で180mm程度の厚さを確保している。パラペットも同じように、クラックが入って雨水が侵入しないように、あごの先端までが外壁という扱いで、ダブル配筋し、3〜4m程度ごとにひび割れ誘発目地を設ける。


パラペット

2.パラペットの天端は防水する

パラペット天端は雨に叩かれ、強い日射にさらされ、屋根と同じく最も過酷な部位である。微細なクラックが入りやすく、劣化が早い。その天端を保護し、雨水を侵入させないように塗膜防水しなければならない。

3.パラペットの天端勾配は 1/10以上

パラペットの天端についた粉塵が、雨で外壁側に押し流されて外壁を汚さないように、屋上側に向けて 1/10以上の勾配を確保したい。

4.金属笠木はジョイント部の納まりを確認する

パラペットに金属笠木を取り付けることができれば、あごを省略することができる。金属笠木は笠木と笠木のジョイント部の納まりを確認する。金属笠木の熱膨張を考慮するとともに、天端のシールが切れた場合でも漏水に至らないような排水機構を設けるなど配慮が必要である。張り終い部を数ヶ所設けると、そこから外せるのでメンテナンスがしやすくなる。既製品の笠木は天端先端に水返しがあり、内外両側に水切りもある。


金属笠木(既製品)


金属笠木(製作品)


笠木ジョイント部 ディテール

5.パラペットは屋上床と一体打ちにする

パラペットを屋上床面で打ち継ぐと、その打ち継ぎ目地からの漏水だけでなく、防水の保護コンクリートが膨張して躯体パラペットを押し出すこともある。したがって、屋上パラペットは下階と一体打ちとし、打継ぎを設けないことが原則である。どうしても打継ぐ場合は、屋上水上コン天より100mm上がって位置で打ち継ぐ。

1級建築施工管理技士 屋根・防水工事 屋上断熱防水

建築品質 屋根・防水


009) 屋上断熱防水は油断大敵

屋上スラブは昼間の日射熱によって躯体が蓄熱し、直下階は熱負荷が大きくなる。躯体は熱膨張し、最上階妻壁にクラックを発生させる。アスファルト防水自体も熱による膨張収縮で劣化する。屋上断熱防水はそうしたマイナスを小さくする。すなわし最上階を快適な空間にし、防水の耐久性を高め、躯体に対する熱影響を小さくする効果がある。

1.屋上断熱防水には断熱欠損部が発生する

屋上には断熱できない部分が発生する。機械基礎、ハト小屋、ルーフドレンまわり、目隠し壁の支柱基礎などの部分などである。その断熱が欠損したままだと、スラブ下(天井裏)で結露する恐れがあるため、断熱欠損部のスラブ下には断熱を設けなければならない。
屋上に機械基礎が多い場合は、外断熱にこだわらず、内断熱の方が効率よく、効果的な場合もある。

屋上断熱防水の断熱欠損部の処置

2.ヒートブリッジ(熱橋)部は内部断熱を重ねる

ヒートブリッジとは外部の熱を内部に橋渡しする(伝える)部分で、熱橋という。外壁断熱と屋上断熱との取合い部や、屋上断熱が欠損した部分などが熱橋となる。熱橋部分は内断熱を屋上断熱に600mm程度※重なる位置まで断熱する。

※省エネルギー申請図書、住宅性能評価図書に記載した熱橋範囲の長さは確保する。
(熱橋用断熱材、部位、建築地域によって異なる。)

3.断熱防水でも鉄骨床梁が結露する

鉄骨造の屋上に鉄骨支柱を立てるとき、鉄骨支柱は鉄骨床梁から立つ。この場合支柱と床梁は外気温と同じように冷え込み、支柱位置で梁が結露する。支柱位置から両側約1mの範囲は断熱を考慮する必要がある。梁の耐火被覆が吹き付けであれば断熱性もあるが、巻き付け耐火被覆の場合は内部結露する可能性がある。

屋上鉄骨の断熱

1級建築施工管理技士 屋根・防水工事 屋上 設備基礎

建築品質 屋根・防水


010) 屋上設備基礎は最小限に

屋上に設備基礎を置く場合、屋上防水のやり替えや補修の際に設備機器を移動したり停止させたりしないために、躯体立上げ式の基礎(以下機械基礎という)を設け、その基礎に防水を立ち上げる。機械基礎が多いと漏水のリスクや、躯体コスト、防水コストも高くなる。設備設計の機械配置に基づいて単純に基礎を設置するため、基礎の数も多く、屋上排水も考慮されていないことがある。

1.機械基礎の数は極力少なくする

機械基礎の上に鉄骨架台を組んで設備機器をのせるようにすれば、機械基礎の数は大幅に少なくできる。また、機械荷重や基礎と梁位置などの調整も必要で、設備担当者任せにしてはならない。

機械基礎の配置


機械基礎 断面

※機械基礎の配筋は一般的にはスラブへL2以上の定着必要である。
その折り曲げ位置はスラブ厚さの中心を超えた位置とする。
(スラブ上端筋の上に置くのでは定着にならない)

2.屋上の水勾配の向きに沿わせる

機械基礎が雨水の集水を妨げているのを見かける。機械基礎を布基礎とする場合は屋上勾配の流れに沿って配置し、雨水の集水をスムーズにしたい。できれば布基礎より独立基礎にした方が雨水の集水はスムーズとなる。

3.基礎間隔は防水の施工性を考慮する

機械基礎の間隔及び機械基礎とパラペットの間隔は防水の立上りが確実にできるように、またメンテナンスもできるように十分に(600mm以上)確保しておく。

4.露出防水では点検ルートに歩廊を設ける

露出防水や断熱露出防水などでは、機械のメンテナンスのための点検歩廊や配管類も鉄骨架台と一体にすると、防水を傷めないので理想的である。

5.軽微な機械の固定は保護コンクリートの上の基礎でよい

防水のメンテナンス時などに容易に移動できる軽微な機器は、防水の保護コンクリートと一体の置式基礎でもよい。ただし、伸縮目地をまたがない計画とする。

軽微な機械基礎

1級建築施工管理技士 屋根・防水工事 ハト小屋

建築品質 屋根・防水


011) ハト小屋は雨水が入りやすい

屋内の設備機器と屋上の設備機器とを接続する配管類を、防水を傷めないで屋上に取り出すための小屋を一般にハト小屋という。ハト小屋室内から多くの配管を取り出すため、その配管まわりから雨水が侵入しやすい。また、ハト小屋内部での結露などのトラブルも多い。

1.ハト小屋の庇は深くする

はと小屋の防水の立上りのあごの上から設備配管を取り出し、その配管の周囲はアルミパネルなどの金属板で塞ぐ。配管のパネルの取合いはシールに頼るため、そこに雨水がかからないようにハト小屋の庇を深くする。


ハト小屋


ハト小屋の例

2.ハト小屋の屋根、庇は防水する

小規模のハト小屋の屋根はウレタンの塗膜防水程度でよいが、屋根の規模が大きくなったらクラックが入りやすいため、塩ビシート防水が安心である。

3.ハト小屋の内部には結露防水の断熱を

ハト小屋内部には室内天井内の暖気が上ってくるため、結露する可能性が大きい。したがって、ハト小屋内部は結露しないように断熱する必要がある。ハト小屋の面積が大きいときは、室内の気密性を高めるために床を設け、点検口を設けることも検討する。

4.ペントハウス(塔屋)の外壁から配管取り出しは水切りを設ける

ペントハウスはどの外壁から設備配管を取り出す場合は、大きく囲うような水切りを設け、配管まわりのシール部分に雨水がかからないようにする。また、配管は外部側を低くするように外勾配を設ける。

外壁からの配管の取り出し

5.小規模の配管取り出しには既製品のハト小屋を検討

屋上への配管取り出しが少ない場合は、既製品のハト小屋の利用も検討する。或いは、逆に数が多い場合は、PC化を検討も視野に入れる。

既製品ハト小屋の例

1級建築施工管理技士 屋根・防水工事 目地シール

建築品質 屋根・防水 ROOF・WATER PROOF


012) 目地シールは2面接着が基本

部材と部材の接合部(目地部)を、止水目的で塞ぐことをシーリング(シール)という。そのシーリング材(以下シール材)は、適正に使わないと切れやすく漏水の原因となる。また、シール材が外壁を汚したり、シールの表面に塗装したことによってブリーディング(軟化、滲みなど)を起こすこともある。

1.挙動する目地部のシーリングは2面接着とする

挙動する目地シーリングは3面接着だと切れやすい。2面接着だからこそ挙動に追従することができる。ただし、コンクリート造の水平打継ぎ目地などのように挙動しない固定目地部のシールは3面接着でもよい。


2.目地シールの幅と厚さの設計

外部金属部材の目地幅は部材の熱伸縮や層間変位、施工誤差、施工性などを考慮し、シーリング材の許容変形率をもとに決める。

外部金属部材の目地幅 W ≧ δ × 100/ε + 目地の許容誤差
δ:目地の変形量(mm)
ε:シーリングの許容変形率(%)
シールの厚さは基本的にシール幅が大きいほど厚さが必要

最小厚さは
シール幅10mm未満の時、シール幅と同じ厚さ
シール幅10mm以上の時、シール幅 × 1/2 かつ10mm以上


3.ダブルシール、深シールはシール幅20mm以上確保する

1次シール施工時に2次シール部のマスキングテープを貼り込む必要がある。目地幅が20〜25mmなければマスキングテープを貼るときに指が入らない。また、2次シールの時はバックアップ材の代わりにボンドブレーカー(ポリエチレンテープ)を使えば目地深さを小さくできる。深目地シールの時も同じく施工幅が必要である。


4.シリコンシールは外壁面を汚す

設備工事のベントキャップ(換気口)まわりにシリコンシールを使って、外壁を汚すことがある。外壁にシリコンシールを使ってはならない。

外壁の石やタイル壁のシールはPS2(2液性ポリサルファイド系シール)にする。
サッシの外部側ガラスシールのシリコンシールが下部の壁を汚すこともある。
汚れ防止の観点から外部側シールをPS2にし、内部側をシリコンシールにする。ただし、ガラス溝に排水機構を設けること、及びシールのメーカーや施工店がガラスシールの保証を出すことが前提となる。

5.化粧打放しコンクリートのシールはMS2に
*MS2(2液性変性シリコン)

化粧打放しコンクリートはシール施工後に仕上げの撥水塗装をする。シールはノンブリードタイプのMS2が良いが、塗布する撥水材との相性は確認する。

6.シールの上から着色塗装するシールはPUに
*PU(ポリウレタン系シール)

コンクリートやコンクリート系パネルの目地シールに外壁と同じ塗装をする場合、PS2ではブリーディングを起こす。シール表面に塗装を掛ける場合はノンブリードタイプのPUとする。

1級建築施工管理技士 屋根・防水工事 屋上緑化

建築品質 屋根・防水 ROOF・WATER PROOF


014)屋上緑化には灌漑設備と排水を

屋上緑化は都市のヒートアイランド現象を抑え、CO2削減効果があると期待されている。地域によっては条例などで緑化面積を規定しているところもある。屋上緑化を積極的に活用・展開すると同時に、防水上のトラブルにも注意したい。

1.屋上緑化で防水を傷めない

屋上緑化によって防水を傷めてはならない。植栽時やメンテナンス時に防水を傷めないように、必ず防水の保護層(保護コンクリート)が必要である。さらに植物の根は水のあるところへ伸び、防水をも傷めることがある。これを防止するため、耐根層及び耐根保護層の敷設が必要である。
屋上緑化の土がパラペット(防水立上り部)に接すると漏水の原因になる。パラペットと植栽の縁石の間はメンテナンス用の空間を設け、防水立上りに水を近づけないようにする。


屋上の植栽

2.植栽の土壌深さと強風対策

植栽の高さによって育成最小土壌深さがある。屋上は風が強い。高木は支柱が必要である。高木でなくとも、根が張るまで支柱で保持していやると安定が早い。また、強風による樹木の枝折れ、飛散防止も検討する。


植栽の土壌深さ

3.潅水設備は必要不可欠

人による潅水が計画されているなら、近くに散水栓を設けるだけでよいが、そうでない場合は土の乾燥状況をセンサーが感知して、あるいはタイマーによって自動で潅水できるようにしたい。できれば雨水を溜めて、潅水に利用したい。

4.屋上緑化は排水・保水性と施肥などのメンテナンスが大事

屋上の植栽部の排水性を良くすることは重要である。屋上保護コンクリートから一段(3㎝程度)かさ上げして植栽部の排水勾配を設けると、排水性が良くなる。また、土は軽量で通気性が良く保水性も良いものを採用したい。

5.ルーフドレンの落葉対策

屋上庭園では、落葉や枯葉、砂や泥によってルーフドレンが詰まる可能性がある。清掃などのメンテナンスはもちろんであるが、ルーフドレンの手前に泥溜を設け、落葉よけストレーナー(SUS製メッシュ状の筒)などを設けることも必要である。


屋上の雨水排水路


落葉よけストレーナー

1級建築施工管理技士 屋根工事 屋根勾配の確保

建築品質 屋根  roof


018) 屋根仕上げに合った屋根勾配を

建築の屋根は厳しい自然環境に耐えなければならない。風雨に耐える屋根が建物の寿命を決めるといってもよい。
屋根をゆるい勾配にしたために雨が漏るといった品質問題がある。
屋根材料と葺き方は多種にわたり、その葺き方ごとに雨を漏らさない最小勾配がある。設計者は最小勾配を守って屋根をデザインする必要がある。

1.屋根は不燃材で葺く

建築基準法により屋根は不燃材で葺かなければならない。また、30分耐火にしなければならない屋根もある。屋根としての耐火認定品を使うときは、認定条件や工法を確認する必要がある。

2.屋根の最小勾配は屋根葺きの種類で決まる

屋根材料は定尺があり、大きさに限度がある。材料どうしにジョイントは瓦のように重ねて水を切るもの、金属板のように折曲げ加工(はぜ折り)で連結するものなど、雨が入らないように工夫されているが、それは雨水を切る勾配が確保されていることを前提としている。屋根葺きの種類によって雨を漏らさない最小勾配がある。
和瓦葺きの屋根は一般に4寸5分勾配といわれ、同じ勾配の甍の連なる街並みは美しい。

3.屋根の設計・施工は風圧力を算定してから

屋根は台風など強風で剥がれて飛散させてはならない。屋根は平成12年建設省告示1454号、同第1458号により風圧力を算定し、その風圧力に耐えるように葺かなければならない。
特に軒先や軒隅部、棟部では大きな負荷がかかる。
この負圧に対して、例えば屋根材が釘止めなら、釘の引き抜き抵抗力が負圧に勝っていることを確認する必要がある。不足している場合は本数を増やすなどして耐風圧を増す必要がある。

風圧力:W = q × Cf(高さ13m以下の建築物は適用外)
q:平均風速圧 [ N/mm2 ] で地表面粗度区分や高さ、
風速による q = 0.6× Er2× V02
Er:平均風速の高さ方向の分布係数
(告示第1454号Zb,ZG、
αは地表面粗度区分に応じた数値)
屋根面の平均高さHがZb以下の時
Er = 1.7 ( Zb/ZG )α
屋根面の平均高さHがZbを超える時
Er = 1.7 ( H/ZG )α
V0:基準風速 [ m/s ] 地域ごとに決められた風速
Cf:ピーク風圧係数で屋根形状ごとに
計算方法が定められている
Cf = ピーク外圧係数 ー ピーク内圧係数

※ちなみに切り妻屋根では、屋根傾斜角20° の時に負のピーク外圧係数は次のとおり最大となる。
一般部 -2.5
周辺部 -3.2
隅角部 -3.2
棟隅部 -5.4

1級建築施工管理技士 屋根工事 瓦屋根

建築品質 屋根  roof


019) 瓦は風で飛ばないように

粘土瓦葺きは日本の文化であり、景観上も、耐久性やメンテナンス性からも優れた屋根である。台風時の瓦の飛散防止や耐震性確保の観点から、引掛け桟瓦を釘止めとする工法が主流となっている。

1.瓦には規格がある

瓦の材質と大きさは「JIS A5208 粘土かわら1996」で定められている。最も一般的な和瓦の引掛け桟瓦J型の53Aは3.3m2当たり53枚、瓦サイズは長さ305mm、幅305mm、はたらき寸法は長さ 235mm、幅265mm(許容差±4mm)、谷深さは35mm以上である。吸水率はいぶし瓦で15%以下である。寒冷地では耐凍害性を証明する資料(JISによる凍害試験成績など)を確認する。

2.風で飛散させない

屋根の瓦は強風時の負の風圧力によって飛散する。よって、屋根の風圧力を建設省告示第1454号、同第1458号によって求め、それに耐えうる工法を採用することが重要である。( 018 参照)。一般に軒先やけらば、棟端部などは負圧が大きくなるので必ず確認し、適切な耐風工法を採用する。耐風工法と耐風圧(負圧)は全日本瓦工事業連盟による瓦屋根標準設計・施工ガイドラインを参考にする。
(  )の数字は最大引き上げ荷重を示す。

①瓦全数緊結工法(2,209N/m2
すべての瓦を瓦尻に瓦緊結用釘で固定する

②桟山固定縦桟工法 3列毎縦桟固定(6,222N/m2
瓦全数緊結用釘全固定に加えて、瓦山の先端部をパッキン付きステンレスねじ縦桟木に固定する。

③組み合わせ葺き工法(耐風型瓦固定工法)(6,285N/m2
耐風型瓦はJ形瓦の切欠き部に突起を設けた瓦である。下部突起は受け側で、上部突起は押さえ込みとして、瓦の浮き上がりに対して抵抗するようにしたもの。この耐風型瓦を使用し、瓦尻を瓦緊結用釘で固定する。

④7形釘補強工法 3列毎7形釘固定(6,222N/m2
         2列毎7形釘固定(8,266/m2
瓦緊結用釘で全固定とし、瓦先端の重なり部分を7の字形状の釘で押さえ込む工法である。
けらばや軒先も風圧力(負圧)が大きく、次の補強を参考にすると良い。

⑤右袖瓦縦桟ねじ補強(16,000N/m2

⑥右袖瓦谷右側ねじ補強(12,600N/m2

⑦軒先瓦縦桟ねじ補強(12,800N/m2

⑧軒先瓦7形釘補強(11,000/m2

1級建築施工管理技士 屋根工事 銅板の一文字葺き

建築品質 屋根  roof


020) 銅板の一文字葺きは熱伸縮する

銅板葺きは施工直後は銅色であるが、だんだん黒ずんで自然に緑青を発生し、長期にわたって美しい屋根となる。最初から緑青を発生させたものもあるが、緑青の深みが違う。空気中の窒素酸化物などが美しい緑青の発生を妨げることもあるので、採用する環境にも注意を要する。

1.銅板の材料

屋根材料として銅板はJIS H3100の銅合金記号C2100〜2400の丹銅を用いる。色合いが美しく、展延性、絞り加工性、耐候性が良い。厚さは0.3、0.35、0.4(10〜12オンス)がよく使われる。銅板の定尺は365mm × 1212mm(1.2尺 × 4尺)が一般的で、455mm × 1212mmもある。一文字葺きではこの銅板の四つ切りが一般的である。また、銅板は他の金属との電食にも注意が必要である。


銅板の定尺

2.銅板葺きは下地が大事

銅板は柔らかく加工しやすいため、下り棟部や唐破風等の曲線部などを自由に美しく葺けるのが特徴でもある。銅板は下地がそのまま仕上げに現れるため、曲線部や軒先、けらば、棟、下り棟、谷部など木製下地の仕上がりが大事である。

3.一文字葺きと屋根勾配

銅板の葺き方で最も一般的なのは一文字葺きである。銅板を軒先から棟に向って横一文字にはぜ折りして重ねて葺いていく。下葺きは瓦葺きと同じアスファルトスーフィング940品を葺き、銅板はその上に吊り子で固定していく。風圧力に対しては吊り子の強度で対応する。軒先やけらばの風圧力の負圧が強い部分では吊り子の数を増やすなどする。


銅板一文字葺き

4.勾配が緩い屋根は下葺きで防水する

屋根勾配3/10以下の時は、下葺きをアスファルトルーフィング940品に代えて、ゴムアスシート( t=1mm程度)を防水シートとして用いる。特に谷部は勾配が緩くなり雨水も集まるので、必ずゴムアスシートを下葺きにする。

5.銅板は熱伸びが大きい

銅板は熱伸びも大きい。(線膨張率:1.7mm/m℃)広い面積を銅板一文字葺きする場合は、5.5m内外ごとに熱伸びを吸収する熱伸縮ジョイントを設ける。


銅板の熱伸縮ジョイント