1級建築施工管理技士 令和04年 学科 問題4 解説

令和4年 1級建築施工管理技士 一次 解答 解説 問題4

(午前の部)令和4年6月 12 日(日)
問題番号 [ No.31 ] ~ [ No.39 ]までの9問題のうちから、7問題を選択し、解答してください。
[ No.31 ]
合成高分子系ルーフィングシート防水に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1. 加硫ゴム系シート防水の接着工法において、平場部の接合部のシートの重ね幅は 100mm以上とし、立上り部と平場部との重ね幅は 150mm 以上とした。
2.  加硫ゴム系シート防水の接着工法において、出隅角の処理は、シートの張付け前に加硫ゴム系シートで増張りを行った。
3. 塩化ビニル樹脂系シート防水の接着工法において、下地が ALC パネルのため、プライマーを塗布した。
4.  エチレン酢酸ビニル樹脂系シート防水の密着工法において、接合部のシートの重ね幅は、幅方向、長手方向とも 100 mm 以上とした。

答え

  2

[ 解答解説 ]

1.◯

加硫ゴム系シート防水の接着工法において、重ね幅は平場部の接合部は 100mm以上、立上り部と平場部の接合部は 150mm 以上とする。(公共建築工事標準仕様書建築工事編9.4.4(6)(エ))

2.×

加硫ゴム系シート防水の出隅角の処理は、シートの張付けに先立ち、非加硫ゴム系シートを用いて増張りする。(JASS8)

3.◯

下地ALCパネル面に塩化ビニル樹脂系シート防水の接着工法で施工する場合に、ALC パネル面にプライマーを塗布する。

4.◯

エチレン酢酸ビニル樹脂系シート相互の接合部は、原則として水上側のシートが水下側のシートの上になるように張り重ね、その平場の接合幅は、長手、幅方向とも100mm以上とする。(JASS8)

[ No.32 ]
シーリング工事に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1. 外壁ALCパネル張りに取り付けるアルミニウム製建具の周囲の目地シーリングは、3面接着とした。
2.  先打ちしたポリウレタン系シーリング材に、ポリサルファイド系シーリング材を打ち継いだ。
3. シーリング材の打継ぎ箇所は、目地の交差部及びコーナー部を避け、そぎ継ぎとした。
4.  コンクリートの水平打継ぎ目地のシーリングは、2成分形変成シリコーン系シーリング材を用いた。

答え

  1

[ 解答解説 ]

1.×

一般に、ALCパネルに取り付けるサッシ回りの目地はワーキングジョイントであり、目地シーリングは2面接着とする。

2.◯

ポリウレタン系シーリング材に後打ちできるシーリング材には、変成シリコーン系、シリコーン系、ポリサルファイド系等がある。(JASS8)

3.◯

シーリング材の打継ぎ箇所は、目地の交差部及びコーナー部を避け、そぎ継ぎとする。シーリング材の打始めは、原則として、目地の交差部あるいは角部から行う。(公共建築工事標準仕様書建築工事編9.7.4(4)(キ))

4.◯

コンクリートの水平打継ぎ目地のシーリングは、ノンワーキングジョイントのため、3面接着とし、塗装がない場合1・2成分形変成シリコーン系シーリング材または2成分形ポリサルファイド系シーシング材を用いる。

[ No.33 ]
セメントモルタルによる壁タイル後張り工法に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1. 密着張りの張付けモルタルは2度塗りとし、タイルは、上から下に1段置きに数段張り付けた後、それらの間のタイルを張った。
2.  モザイクタイル張りの張付けモルタルは2度塗りとし、1層目はこて圧をかけて塗り付けた。
3. 改良積上げ張りの張付けモルタルは、下地モルタル面に塗り厚4mm で塗り付けた。
4. 改良圧着張りの下地面への張付けモルタルは2度塗りとし、その合計の塗り厚を5mmとした。

答え

  3

[ 解答解説 ]

1.◯

密着張りの張付けモルタル2度塗りとし、タイルは、上から下に1段置きに数段張り付けた後、それらの間のタイルを張る

2.◯

モザイクタイル張りの張付けモルタルの塗り付けは、いかに薄くとも2度塗りとし、1度目は薄く下地面にこするように塗り、下地モルタル面の微妙な凸凹にまで張り付けモルタルが食い込むようにし、次いで張り付けモルタルを塗り重ね、3mm程度の厚さとし、定規を用いてむらのないように塗厚を均一にする。(建築工事監理指針)

3.×

改良積上げ張りは、張付けモルタルを塗厚7~10mmとしてタイル裏面に塗り付けた状態で張り付ける。(JASS19)

4.◯

改良圧着張りの下地面への張付けモルタルは2度塗りとし、その合計の塗り厚を4〜6mmとする。タイル側への塗付けの場合、1〜3mmとする。(公共建築工事標準仕様書建築工事編11.2.6(3)(ア))

[ No.34 ]
心木なし瓦棒葺に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1. 水上部分と壁との取合い部に設ける雨押えは、壁際立上りを 45mm とした。
2.  通し吊子の鉄骨母屋への取付けは、平座金を付けたドリルねじで、下葺材、野地板を貫通させ母屋に固定した。
3.  棟部の納めは、溝板の水上端部に八千代折とした水返しを設け、棟包みを取り付けた。
4. けらば部の溝板の幅は、瓦棒の働き幅の 1/2以下とした。

答え

  1

[ 解答解説 ]

1.×

水上部分と壁との取合い部に設ける雨押さえは壁部で120mm程度立ち上げてむだ折りを付ける。(JASS12)

2.◯

通し吊子はマーキングに合わせて平座金を付けたドリルねじで、下葺材、野地板を貫通させ母屋に固定する。(JASS12)

3.◯

棟部の納めは、溝板の水上端部八千代折とした水返しを設ける。当該部分に棟包みを取り付けて覆い被せる。(建築工事監理指針)

4.◯

けらば部の溝板の幅は、心なし瓦棒の働き幅の 1/2 以下とする。(建築工事監理指針)

[ No.35 ]
防水形合成樹脂エマルション系複層仕上塗材(防水形複層塗材E)仕上げに関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1. 上塗材は、0.3 kg/m2 を2回塗りとした。
2. 主材の基層塗りは、1.7 kg/m2 を2回塗りとした。
3. 出隅、入隅、目地部、開口部まわり等に行う増塗りは、主材塗りの後に行った。
4. 主材の凹凸状の模様塗りは、見本と同様になるように、吹付け工法により行った。

答え

  3

[ 解答解説 ]

1.◯

上塗材は、0.25 kg/m2 以上を2回塗りで、色むらが生じないように塗り付ける。(公共建築工事標準仕様書建築工事編 表15.6.1(その3))

2.◯

主材の基層塗り2回塗りとし、だれ、ピンホール、塗り残しのないよう下地を覆うように塗り付ける。主材基層の所要量は、1.7 kg/m2 以上とする。(公共建築工事標準仕様書建築工事編 表15.6.1(その3))

3.×

入隅、出隅、目地部、開口部まわりなど均一に塗りにくい箇所は、はけやコーナー用ローラーなどで、主材塗りの前に増塗りを行う。

4.◯

主材の凹凸状の模様塗りは、見本と同様になるように、吹付け工法により行う。

[ No.36 ]
アルミニウム製建具に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1. 連窓の取付けは、ピアノ線を張って基準とし、取付け精度を2mm 以内とした。
2. 建具枠に付くアンカーは、両 端から逃げた位置にあるアンカーから、間隔を 500 mm 以下で取り付けた。
3. 外部建具周囲の充填モルタルは、NaCl 換算 0.04 %(質量比)以下まで除塩した海砂を使用した。
4. 水切り及び膳板は、アルミニウム板を折曲げ加工するため、厚さを 1.2 mm とした。

答え

  4

[ 解答解説 ]

1.◯

アルミニウム製建具の取付け精度は ±2mmとする。連窓の取付けの基準は、ピアノ線を張って施工する。

2.◯

アンカーの位置は、開口部より 150mm内外を端とし、中間は500mm内外の間隔とする。アンカーと差し筋は最短距離で溶接する。(JASS16)

3.◯

充填モルタルに使用する砂の塩化物量は、NaCl 換算 0.04 %(質量比)以下とする。海砂等を使用する場合は除塩する

4.×

アルミニウム板を加工して、枠、框、水切り、ぜん板及び額縁に使用する場合の厚さは1.5mm以上とする。(建築工事監理指針)

[ No.37 ]
合成樹脂塗床に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1. 薬品を使用する実験室の塗床は、平滑な仕上げとするため、流し展べ工法とした。
2. 合成樹脂を配合したパテ材や樹脂モルタルでの下地調整は、プライマーの乾燥後に行 った。
3.  エポキシ樹脂系コーティング工法のベースコートは、コーティング材を木ごてで塗り付けた。
4. エポキシ樹脂系モルタル塗床の防滑仕上げは、トップコート1層目の塗布と同時に骨材を散布した。

答え

  3

[ 解答解説 ]

1.◯

流し展べ工法とは、塗床材あるいは塗床材に骨材を混合することによって、平滑に仕上げるセルフレベリング工法で、実験室、工場等に使用される。(建築工事監理指針)

2.◯

合成樹脂を配合したパテ材や樹脂モルタルでの下地調整を行う場合は、プライマーを塗布し乾燥後に行うのが一般的である。(建築工事監理指針)

3.×

コーティング工法は一般に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂に着色剤、充填剤、溶剤または水、仕上調整剤などの添加剤を配合した低粘土の液体(ベースコート)を、ローラーあるいはスプレーにより1~2回塗布する工法である。(JASS26)

4.◯

エポキシ樹脂系モルタル塗床の防滑のための骨材散布は、トップコート1層目の塗布と同時に行う等、上塗り1回目が硬化する前に製造所が指定する骨材をむらのないように均一に塗布する。(建築工事監理指針)

[ No.38 ]
壁のせっこうボード張りに関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1. テーパーエッジボードの突付けジョイント部の目地処理における上塗りは、ジョイントコンパウンドを幅 200 ~ 250 mm 程度に塗り広げて平滑にした。
2. せっこう系接着材による直張り工法において、ボード中央部の接着材を塗り付ける間隔は、床上 1,200 mm 以下の部分より、床上 1,200 mm を超える部分を小さくした。
3. せっこう系接着材による直張り工法において、躯体から仕上がり面までの寸法は、厚さ9.5 mm のボードで 20 mm 程度、厚さ 12.5 mm のボードで 25 mm 程度とした。
4. ボードの下端部は、床面からの水分の吸上げを防ぐため、床面から 10 mm 程度浮かして張り付けた。

答え

  2

[ 解答解説 ]

1.◯

テーパーエッジボードの突付けジョイント部における目地処理の上塗りは、幅 200 ~ 250 mm 程度にジョイントコンパウンドを塗り広げて平滑にする。(建築工事監理指針)

2.×

せっこう系接着材直張り工法における張付け用接着材の塗付け間隔は、ボード周辺部150~200mm床上1.2m以下の部分200~250mm床上1.2mを超える部分250~300mmとする。したがって、ボード周辺部の方が塗付け間隔は小さくなる

3.◯

せっこう系接着材による直張り工法において、躯体から仕上がり面までの寸法は、厚さ9.5 mm のボードで 20 mm 程度、厚さ 12.5 mm のボードで 25 mm 程度とする。

4.◯

ボードの下端部は、床面からの吸水を防止するため床面から 10mm 程度浮かして張り付ける。(建築工事監理指針)

[ No.39 ]
外壁の押出成形セメント板(ECP)張りに関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1. 縦張り工法のパネルは、層間変形に対してロッキングにより追従するため、縦目地を 15mm、横目地を8mm とした。
2. 二次的な漏水対策として、室内側にはガスケット、パネル張り最下部には水抜きパイプを設置した。
3. 幅 600 mm のパネルへの欠込みは、欠込み幅を 300 mm 以下とした。
4.  横張り工法のパネル取付け金物(Z クリップ)は、パネルがスライドできるようにし、パネル左右の下地鋼材に堅固に取り付けた。

答え

  1

[ 解答解説 ]

1.×

長辺の目地幅は 8mm以上、短辺の目地幅は15mm以上とする。(公共建築工事標準仕様書)したがって、縦張り工法のパネルは、縦目地を 8mm以上横目地を15mm以上とする。

2.◯

漏水に対する対策が特に必要な場合は、シーリングによる止水のみだけでなく、二次的な漏水対策として、室内側にはガスケットパネル張り最下部には水抜きパイプを設ける。(建築工事監理指針)

3.◯

欠込み幅の限度は、パネル幅の 1/2以下、かつ、300mm 以下とする。

4.◯

層間変形に対して、縦張り工法の場合はロッキング横張り工法の場合はパネルのスライドにより変位を吸収する。また、横張り工法のパネル取付け金物(Z クリップ)は、パネル左右の下地鋼材に堅固に取り付ける。(JASS27)

1級建築施工管理技士 令和05年 学科 問題4 解説

令和5年 1級建築施工管理技士 一次 解答解説 問題4
(午前の部)令和5年6月11日(日)
問題番号[ No.31 ]~[ No.39 ]までの9問題のうちから、7問題を選択し、解答してください。
ただし、7問題を超えて解答した場合、減点となりますから注意してください。
問題は、四肢択一式です。正解と思う肢の番号を1つ選んでください。
[ No.31 ]
防水工事に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.アスファルト防水密着工法における平場部のルーフィングの張付けに先立ち、入隅は幅300mm程度のストレッチルーフィングを増張りした。
2.改質アスファルトシート防水トーチ工法における平場部の改質アスファルトシートの重ね幅は、縦横とも100mm以上とした。
3.アスファルト防水における立上り部のアスファルトルーフィング類は、平場部のアスファルトルーフィングを張り付けた後、150mm以上張り重ねた。
4.改質アスファルトシート防水絶縁工法におけるALCパネル目地の短辺接合部は、幅50mm程度のストレッチルーフィングを張り付けた。
答え

  4

[ 解答解説 ]

1.◯

アスファルトルーフィング類の張付けにおいて、出隅、入隅には一般平場のルーフィング類の張付けに先立ち、幅300mm以上のストレッチルーフィングを用いて均等に増張り(捨張り)する。(公共建築工事標準仕様書建築工事編9.2.4(4)(ア)(c)表9.2.10)

2.◯

改質アスファルトシートの重ね幅は幅方向、長手方向とも100mm以上とし、2層の場合は上下層の改質アスファルトシートの接合部が重ならないようにする。(公共建築工事標準仕様書建築工事編9.2.4(5)(ア)(a)②)

3.◯

立上り部よりも水下側の平場部が下側になるよう、立上り部のアスファルトルーフィング類の張付けに先立ち、平場部のルーフィング類を150mm以上張り重ねる。(公共建築工事標準仕様書建築工事編9.2.4(4)(イ)(f))

4.×

ALCパネル下地の短辺接合部は、ルーフィングシート張付けに先立ち、目地部に幅 50mm程度絶縁用テープを張付ける。(公共建築工事標準仕様書建築工事編9.3.4(3)(ア)(c))

[ No.32 ]
乾式工法による外壁の張り石工事に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.厚さ30mm、大きさ500mm角の石材のだぼ孔の端あき寸法は、60mmとした。
2.ロッキング方式において、ファスナーの通しだぼは、径4mmのものを使用した。
3.下地のコンクリート面の精度を考慮し、調整範囲が±10mmのファスナーを使用した。
4.石材間の目地は、幅を10mmとしてシーリング材を充填した。
答え

  1

[ 解答解説 ]

1.×

石材のだぼ孔の端あき寸法は、石材の厚みの3倍以上の90mm以上とし、石材幅の辺長の1/4程度である125mm程度の位置にバランスよく設ける。(JASS9)

2.◯

乾式工法のロッキング方式において、ファスナーの通しだぼは、上下固定で径4.0mm、埋込み長さ20mmのものを使用する。(公共建築工事標準仕様書建築工事編10.5.2(2)(ア))

3.◯

外壁乾式工法において、下地のコンクリート面の寸法精度は、±10mm以内とする。この精度を考慮するため、±10mmが調整できるのファスナーを用いる。(公共建築工事標準仕様書建築工事編10.1.3(3)表10.1.1)

4.◯

石材間の目地には、シーリング材を充填する。目地幅は特記がなければ幅、深さとも8mm以上とする。

(公共建築工事標準仕様書建築工事編10.5.3(6)(イ))

[ No.33 ]
金属製折板葺屋根工事に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.端部用タイトフレームは、けらば包みの下地として、間隔を1,800mmで取り付けた。
2.重ね形折板の重ね部分の緊結ボルトは、流れ方向の間隔を600mmとした。
3.軒先の落とし口は、折板の底幅より小さく穿孔し、テーパー付きポンチで押し広げ、10mmの尾垂れを付けた。
4.軒先のアール曲げ加工は、曲げ半径を450mmとした。
答え

  1

[ 解答解説 ]

1.×

端部用タイトフレーム(けらば用タイトフレーム)は、けらば包みの下地として、間隔を 1,200mmで取り付ける。(建築工事監理指針)

2.◯

重ね形折板は、各山ごとにタイトフレームに固定し、重ね部分の緊結ボルトは流れ方向の間隔を600mm程度とする。(公共建築工事標準仕様書建築工事編13.3.3(3)(ウ))

3.◯

折板の底に設ける雨水の落とし口は円形にし、孔の周囲に5〜15mm程度尾垂れを付け、裏側への雨水の回り込みを防止する。

4.◯

金属製折板葺屋根の軒先のアール曲げ加工は、曲げ半径450mmとする。

[ No.34 ]
特定天井に該当しない軽量鉄骨天井下地工事に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.天井のふところが1,500mm以上あったため、吊りボルトの振れ止めとなる水平方向の補強は、縦横間隔を1,800mm程度とした。
2.下り壁による天井の段違い部分は、2,700mm程度の間隔で斜め補強を行った。
3.下地張りのある天井仕上げの野縁は、ダブル野縁を1,800mm程度の間隔とし、その間に4本のシングル野縁を間隔を揃えて配置した。
4.野縁は、野縁受にクリップ留めし、野縁が壁と突付けとなる箇所は、野縁受からのはね出しを200mmとした。
答え

  4

[ 解答解説 ]

1.◯

天井のふところが3mを超える場合は、特記による。天井のふところが1.5m以上の場合は、原則として、吊りボルトの水平補強、斜め補強を行う。水平補強縦横方向に間隔1.8m程度に配置し、斜め補強は相対する斜め材を1組とし、縦横方向に間隔3.6m程度に配置する。(公共建築工事標準仕様書建築工事編14.4.4(8))

2.◯

下り壁、間仕切壁等を境としてに天井に段違いがある場合は、野縁受けと同材またはL-30×30×3 [ mm ]程度の部材で、間隔 2.7m程度斜め補強を行う。(公共建築工事標準仕様書建築工事編14.4.4(7))

3.◯

下地張りのある場合の野縁の間隔は、シングル野縁360mm程度ダブル野縁1,800mm程度とする。ただし、屋外の場合は、特記による。ダブル野縁1,800mm程度の間隔の間隔であり、ダブル野縁の間隔に4本のシングル野縁を間隔を揃えて配置すると、シングル野縁の間隔は1,800÷5 = 360mmとなり、適当と判断できる。(公共建築工事標準仕様書建築工事編14.4.3(2)表14.4.2)

4.×

野縁は、野縁受にクリップ留めし、野縁が壁と突付けとなる箇所は、野縁受からのはね出しは150mm以内とする。

[ No.35 ]
内壁コンクリート下地のセメントモルタル塗りに関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.下塗りは、吸水調整材の塗布後、乾燥を確認してから行った。
2.下塗り用モルタルの調合は、容積比でセメント1:砂 3とした。
3.下塗り後の放置期間は、モルタルの硬化が確認できたため、14日間より短縮した。
4.中塗りや上塗りの塗厚を均一にするため、下塗りの後に、むら直しを行った。
答え
  2

[ 解答解説 ]

1.◯

吸水調整材塗布後の下塗りまでの間隔は、一般に1時間以上とし、乾燥確認してから行う。

2.×

下塗り用モルタルの調合(容積比)は、セメント1:砂 2.5むら直し、中塗り、上塗りは、セメント1:砂 3とする。(公共建築工事標準仕様書建築工事編 表15.3.3)

3.◯

下塗りは、14日以上放置して、ひび割れ等を十分発生させてから、次の塗り付けを行う。ただし、気象条件等により、モルタルの接着が確保できる場合には、放置期間を短縮することができる。(公共建築工事標準仕様書建築工事編 15.3.5(1)(ア)(e))

4.◯

むら直しとは、塗厚または仕上厚が大きいとき、あるいは塗りむらが著しい時に、下塗りの上にモルタルを塗りつけることをいう。これにより、中塗り、上塗りの塗厚が均一となる。セメントモルタル塗りの工程は、下塗り → むら直し → 中塗り → 上塗りの順で行う。

[ No.36 ]
鋼製建具に関する記述として、最も不適当なものはどれか。ただし、1枚の戸の有効開口は、幅950mm、高さ2,400mmとする。
1.外部に面する両面フラッシュ戸の表面板は鋼板製とし、厚さを1.6mmとした。
2.外部に面する両面フラッシュ戸の見込み部は、上下部を除いた左右2方を表面板で包んだ。
3.たて枠は鋼板製とし、厚さを1.6mmとした。
4.丁番やピポットヒンジ等により、大きな力が加わる建具枠の補強板は、厚さを2.3mmとした。
答え

  2

[ 解答解説 ]

1.◯

鋼板類の厚さは、特記による。特記がなければ、片開き、親子開き及び両開き戸の1枚の戸の有効幅が950mmまたは有効高さが 2,400mmを超える場合を除き下記の表とする。外部に面する両面フラッシュ戸の表面板は鋼板製とし、厚さを1.6mmとする。(公共建築工事標準仕様書建築工事編 16.4.4(1)表16.4.2)

2.×

内部建具の両面フラッシュ戸の見込み部は、上下部を除いた左右2方を表面板で包めばよいが、、外部に面する戸は、下部を除き三方の見込みを表面板で包む。(建築工事監理指針)

3.◯

上表により、たて枠は鋼板製とし枠類に分類される。厚さを1.6mmとする。

4.◯

枠の丁番、ドアクローザー、ピポットヒンジ等が取り付く箇所には、裏面に補強板を取り付ける。大きな力が加わる建具枠の補強板は、厚さを2.3mmとする。(公共建築工事標準仕様書建築工事編 16.4.4表16.4.2)

[ No.37 ]
塗装工事に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.アクリル樹脂系非水分散形塗料塗りにおいて、中塗りを行う前に研磨紙P220を用いて研磨した。
2.せっこうボード面の合成樹脂エマルションペイント塗りにおいて、気温が20℃であったため、中塗り後3時間経過してから、次の工程に入った。
3.屋外の木質系素地面の木材保護塗料塗りにおいて、原液を水で希釈し、よく攪拌して使用した。
4.亜鉛めっき鋼面の常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗りにおいて、下塗りに変性エポキシ樹脂プライマーを使用した。
答え

  3

[ 解答解説 ]

1.◯

アクリル樹脂系非水分散形塗料塗りの工程は、素地調整、下塗り、パテかい、研磨、中塗り、上塗りと進む。研磨には研磨紙P220を用いる。

2.◯

合成樹脂エマルションペイント塗りでは、各塗装工程の標準工程間隔時間は、気温20℃においては3時間以上である。

3.×

木材保護塗料塗りは通常屋外で使用される木質系素地に対して適用される。木材保護塗料は、原液で使用することを基本とし、希釈はしない

4.◯

亜鉛めっき鋼面の常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗りの下塗りには、変性エポキシ樹脂プライマーを使用する。(JASS18)

[ No.38 ]
ALCパネル工事に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.床版敷設筋構法において、床パネルへの設備配管等の孔あけ加工は1枚当たり1か所とし、主筋の位置を避け、直径100mmの大きさとした。
2.横壁アンカー構法において、地震時等における躯体の変形に追従できるよう、ALCパネル積上げ段数3段ごとに自重受け金物を設けた。
3.縦壁フットプレート構法において、ALC取付け用間仕切チャンネルをデッキプレート下面の溝方向に取り付ける場合、下地として平鋼をデッキプレート下面にアンカーを用いて取り付けた。
4.床版敷設筋構法において、建物周辺部、隅角部等で目地鉄筋により床パネルの固定ができない箇所は、ボルトと角座金を用いて取り付けた。
答え

  1

[ 解答解説 ]

1.×

床版敷設筋構法において、床パネルへの設備配管等が貫通する場合の孔あけは、直径50mm以下とする。(建築工事監理指針)

2.◯

横壁アンカー構法においては、パネル重量による下段パネルの損傷を避けるため、ALCパネル積上げ段数3〜5段以下毎にALCパネルの重量を支持する自重受け金物を設ける。(一般社団法人 ALC協会ALCパネル取付く構法標準・同解説第2章第2節3.1b)

3.◯

縦壁フットプレート構法において、デッキプレート下面への下地鋼材の取付けは、下地鋼材がデッキプレートの溝方向と平行となる場合、下地鋼材の取付けに先立ち、下地として平鋼をデッキプレート下面にアンカーなどにより取り付けておく必要がある。(一般社団法人 ALC協会ALCパネル取付く構法標準・同解説第3章第2節2.2)

4.◯

床版敷設筋構法において、建物周辺部、隅角部、階段室廻りなどで目地鉄筋によりALCパネルの固定ができない箇所は、ボルトと座金丸座金または角座金・角座金R)を用いて取り付ける。(一般社団法人 ALC協会ALCパネル取付く構法標準・同解説第4章第1節3c)

[ No.39 ]
内装改修工事に関する記述として、最も不適当なものはどれか。ただし、既存部分は、アスベストを含まないものとする。
1.ビニル床シートの撤去後に既存下地モルタルの浮き部分を撤去する際、健全部分と縁を切るために用いるダイヤモンドカッターの刃の出は、モルタル厚さ以下とした。
2.既存合成樹脂塗床面の上に同じ塗床材を塗り重ねる際、接着性を高めるよう、既存仕上げ材の表面を目荒しした。
3.防火認定の壁紙の張替えは、既存壁紙の裏打紙を残した上に防火認定の壁紙を張り付けた。
4.既存下地面に残ったビニル床タイルの接着剤は、ディスクサンダーを用いて除去した。
答え

  3

[ 解答解説 ]

1.◯

ビニル床シート張りの下地モルタルの浮き部分の撤去の際、ダイヤモンドカッターの刃の出は、モルタル厚さ以下とする。(公共建築改修工事標準仕様書6.2.2(1)(ア))

2.◯

既存合成樹脂塗床材を除去せずに同じ塗床材を塗り重ねる場合は、既存仕上げ材の表面をディスクサンダー等により目荒しして接着性を高める。(公共建築改修工事標準仕様書6.2.2(1)(イ)(b))

3.×

壁紙の張替えは、既存の壁紙を残さず撤去し、下地基材面を露出させてから新規の壁紙を張り付けなければ防火材料に認定されない。(建築改修工事監理指針)

4.◯

既存床仕上材の撤去に関して、下地面に残ったビニル床タイルの接着剤は、アスベストを含有していない場合、新規仕上げの施工に支障のないように、ディスクサンダー等により除去する。(建築改修工事監理指針)

8章 コンクリートブロック工事等 1節 共通事項

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

01節 共通事項
8.1.1 一般事項

この章で取り扱う主要な材料ごとの適用範囲は次のとおりである。

(ア) コンクリートブロック:
小規模補強コンクリートブロック造、帳壁(内・外壁)及び塀(高さ2.2m以下)

(イ) ALCパネル:屋根(非歩行用)、床、外壁及び間仕切壁

(ウ) 押出成形セメント板(ECP):外壁及び間仕切壁

8.1.2 基本要求品質

(1) この章で対象とするコンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板は、いずれもセメント系の工場生産品であり、材料の寸法や品質等の規格がJISで定められているので、これに適合するものを用い、そのことが分かるようにしておく。

(2) コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板は、一般的に、仕上材の下地として用いられる。したがって、適切な位置に正しい方法で精度よく取り付けられていないと、次工程の仕上げに悪影響を及ぼすだけでなく、耐震性や構造耐力上の欠陥となる場合もある。このため、施工方法や取付けの詳細、施工精度や管理の方法等を品質計画として 施工計画書や施工図等で明確にし、これによって施工を進め、管理した結果が分かるようにしておく。

(3) コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板では、構造耐力上必要な強度や耐久性をもつものが特記されることが原則となっている。また、「標仕」で、取付け工法や耐火性能を確保するために必要な事項等が規定されている。「構造耐力、耐久性、耐火性等に対して有害な欠陥がないこと。」とは、例えば、ブロック工事では、設計図書で鉄筋の種類や径、継手や定着の位置、長さ、かぶり)厚さ等が定められているので、これらの仕様をまもり、施工の手順、精度、管理の方法等について、品質計画で具体的に記載し、これによって施工及び管理したことが分かれば、要求された性能を満たしていることになる。

8章 コンクリートブロック工事等 2節 補強コンクリートブロック造

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

2節 補強コンクリートブロック造

8.2.1 一般事項

(1) 「標仕」8.2.1で規定している適用範囲は、空洞ブロックを組積し、鉄筋で補強された耐力壁による小規模な構造物としており、補強コンクリートブロック造の3階建以下を想定している。部分的に型枠状ブロックを用いる場合も基本的には本節を参考にして工事を行う。

(2) 作業の流れを図8.2.1に示す。

図8.2.1 補強コンクリートブロック造工事の作業の流れ

(3) 施工計画曹の記載事項は、概ね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(施工図の作成、各工区別の着工・完了等の時期)
② 施工業者名、作業の管理組織
使用材料及び品質(コンクリートブロック、コンクリート、鉄筋、モルタル)
コンクリート及びモルタルの調合並びに充填方法
⑤ ブロック割りの基準
⑥ 一般部分の工法(鉄筋間隔、定着方法、継手の工法及び位置、ブロックの積み方)
⑦ 一日の枚上げ高さの限度(1.6m)
ブロック壁の取合い部の工法
開口部まぐさの工法及びその周辺の補強方法
がりょうの工法
⑪ 建具枠の取付け方法
⑫ アンカーボルト、木れんが、諸金物等の埋込みの必要な箇所及び処置の方法
⑬ 他の材料による柱、壁等との取合い部の処置の方法
⑭ 設備配管、ボックス類の取付け方法
⑮ 寒冷期の施工に関する対策(シート養生、採暖養生等)

作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

(4) コンクリートブロックの施工に関して、「ブロック建築技能士」の資格制度が設けられている。

8.2.2 材 料

(1) ブロックの種類は、「標仕」8.2.2ではJIS A 5406(建築用コンクリートブロック)に適合するものとし、種類、モデュール呼び寸法及び正味厚さは全て特記により指定されることになっている。特記のない場合、空洞ブロック、圧縮強さC(16)とするとよい。正味厚さは、構造物の規模や使用場所等で決まる。モデュール呼び寸法は、長さ400mm、高さ200mmであり、市販されているブロックのほとんどのものがこのモデュール呼び寸法であるが、これ以外のモデュール呼び寸法のものが用いられる場合には、必ず特記される。

JIS A 5406では、2017年の改正で、環境保全の立場から、セメントとしてJIS R 5214(エコセメント)に規定する普通エコセメントが認められることになった。これは、強度及び耐久性に関する試験データの蓄積が認められ、また、関係官庁において用途拡大について検討されてきた結果、国土交通省における建築材料への利用制限が解除されたことによる。同様に骨材も、スラグ骨材(JIS A 5011-1、JIS A 5011-2、JIS A 5011-3、JIS A 5011-4)、コンクリート用再生骨材(JIS A 5021、JIS A 5022)やこの規格に規定するブロックを破砕した再生骨材も認められており、ブロックヘの表示も不要となった。これらの使用に当たっては法規上の制限もあるので、注意と確認が必要である。

(ア) JIS A 5406では種類として次の6つに区分している。

(a) 断面形状による区分としては、図8.2.2に代表的な形状を示すように空洞ブロック及び型枠状ブロックの2種類に分けられ、空洞ブロックの配筋されている部分には必ずモルタル又はコンクリートを充填することを想定したものであり、型枠状ブロックは空洞部全てにコンクリートが充填される打込み型枠としての機能をもつものである。

(b) 外部形状による区分として、空洞ブロックは基本形ブロック、基本形横筋ブロック及び異形ブロックの3種類に、型枠状ブロックは基本形横筋ブロック及び異形ブロックの2種類に区分された。用語の定義が変更され、基本形ブロックとは空洞ブロックのうち、建築物の組積体に使用する基本的な形状のもので、一方向だけ鉄筋の配置が可能な空洞部をもつ形状のブロックである。基本形横筋ブロックとは、縦横二方向の鉄筋の配置が可能な空洞部をもつ形状のブロックであり、空洞ブロックではこの形状のみで構築されることの多い「ブロック塀」用が想定されたと考えられる。型枠状ブロックの基本形は、基本形横筋ブロックとなる。異形ブロックは隅(コーナー)用、まぐさ用、半切などの用途 によって外部形状の異なるブロックで、基本形ブロック及び/又は基本形横筋ブロックと組み合わせて使用するブロックと定義されている。

(c) 圧縮強度による区分では、空洞ブロックの正味断面圧縮強さの20N/mm2を追加し、D(20)とした。これは高強度ブロックや肉厚を薄くして軽量化したブロックなどが開発されていることも考慮したものである。また、角柱切出し試験体で求める正味断面圧縮強さにより区分し、整理した。

(d) 化粧の有無による種類として素地ブロックと化粧ブロックの2種類に区分される。

化粧ブロックとは、フェイスシェル表面に、割れ肌仕上げ、こたたき仕上げ、研磨仕上げ、塗装仕上げ、ブラスト仕上げ、リブなど、意匠上有効な仕上げをほどこしたブロックと定義され、素材そのものへの着色等は除外されている。

(e) 防水性による種類として普通ブロック及び防水性ブロックの2種類に区分され、防水性ブロックの記号はWが表示される。型枠状ブロックの透水性規格値が変更されたので使用する場合には注意が必要である。

(f) 寸法の許容差による種類として普通精度ブロックと高精度ブロックの2種類に区分され、高精度ブロックの記号はHが表示される。記号が「E」から「H」に変更されたのは、圧縮強さの区分に「D」が追加されたことにより「D」に連続する「E」では誤解を招くおそれがあると懸念されたためである。ほとんどのブロックは、普通精度ブロックである。

図8.2.2 建築用ブロックの断面形状の例(JIS A 5406 : 2017)
(イ) ブロックの種類を表8.2.1に示す。
表8.2.1 ブロックの種類(JIS A 5406 : 2017)

(ウ) ブロックの性能を表8.2.2に示す。

表8.2.2 ブロックの性能(JIS A 5406 : 2017)
(エ) 基本形ブロックのモデュール呼び寸法及び標準目地幅を図8.2.3に、長さ、高さ、実厚さ、正味厚さの例を図8.2.4に示す。
なお、補強コンクリートブロック造では、空洞・基本形ブロックで10mm目地とし、長さ×高さのモデュール呼び寸法は400×200(mm)が一般的である。したがって、長さ×高さの実寸法は390×190(mm)となる。正味厚さは補強コンクリートブロック造の規模(階数)や部位(耐カ・非耐力壁等)によって最小厚さが定められているので規定の厚さ以上とする。100mm、120mm、150mm、190mmが一般的である。化粧ブロックを用いる場合の厚さとは、実厚さではなく、正味厚さを示すので注意が必要である。

図8.2.3 モデュール呼ぴ寸法及び標準目地幅(JIS A 5406 : 2017)

図8.2.4 長さ、高さ、実厚さ、正味厚さ及び正味肉厚の例(JIS A 5406 : 2017)

また、モデュール呼び寸法、正味厚さ及び標準目地幅を表8.2.3に示した。要求のある場合には、受渡し当事者間の協議によって表に示す範囲を超えてもよいこととなった。

表8.2.3 モデュール呼び寸法、正味厚さ及び標準目地幅(JIS A 5406 : 2017)

(2)充填用コンクリートの粗骨材の最大寸法は、鉄筋を挿入する空洞部最小径の1/5以下、かつ、砂利は20mm以下、砕石の場合は15mm以下としている。鉄筋を挿入する空洞部の寸法を表8.2.4及び図8.2.5に示す。例えば、空洞部の最小幅を70mmとした場合、70mm×1/5 =14mmとなり通常粗骨材最大寸法10mmの豆砂利を用いることになる。

表8.2.4 鉄筋を挿入する空洞部の寸法(JIS A 5406 : 2017)


 図8.2.5 鉄筋を挿人する空洞部(JIS A 5406 : 2017)

(3) 鉄筋は5.2.1を参照する。ただし、鉄筋はSD295、SD345とする。また、曲戻し等の有害な加工を行ったものを用いてはならない。

(4) モルタル用材料は、「標仕」15.3.2を参照する。ただし、セメントは「標仕」6.3.1によるものを用いる。

(5) ブロックは、種類によって区分し、雨水を吸水しないように、又汚れの付着や欠けなどが発生しないように、適切な養生を行って保管する。

8.2.3 モルタルの調合

モルタルの調合は、特記によるとしている。従来は、目地幅が10mmでの組積が一般的であり、「標仕」表8.2.1で対応可能であった。この調合で通常の場合は、「JASS 7 メーソンリー工事」に解説されているとおり、18N/mm2以上の強度は担保されている。しかし、近年は薄目地(5mm程度)用のブロックが用いられる場合もあり、D(20)の ブロックがJIS規格に追加されたことなどから、薄目地等の場合は、特記により調合計画を作成し監督職員の承諾を受けることとなった。また、既調合モルタルの使用も増加している。(-社)日本建築学会「補強コンクリートブロック造設計基準」では、壁体の目地及び空洞部の充填に使用するモルタルの4週圧縮強度を18N/mm2以上としている。

8.2.4 コンクリートの調合

「標仕」8.2.4による空洞部への充填用コンクリートの調合は、「標仕」表8.2.2の容積調合又は呼び強度 21、スランプ21cmのレディーミクストコンクリートとしている。通常、充填用コンクリートには、空洞部の大きさを考慮して豆砂利コンクリートが用いられる。
「標仕」表8.2.2に示すコンクリートのスランプは、「標仕」表6.2.2に示すスランプの値より大きいので、目視による分離の有無を必ず確認する。

充填部以外のまぐさ、がりょう、立上り基礎、スラプ等に使用するコンクリートは「標仕」6章[コンクリート工事]によるとしている。

8.2.5 鉄筋の加工及び組立

(1) 一般事項

(ア) 縦横筋のかぶり厚さは、鉄筋を覆うコンクリートやモルタルの厚さの最小値をいい、空洞ブロックのフェイスシェルの厚さは含まない。「標仕」の最小値20mmは、図8.2.6による。

縦筋は、基礎コンクリート打込み時に移動しないように、縦筋中間部への振れ止め用の足場等の設置や頂上部のフックの位置を正確な位置に固定する(図8.2.7参照)。

縦筋が、施工中に揺れを生じると、モルタルとの付着力低下や目地切れを誘発するおそれがあるので、必ず振れ止めで固定する。

図8.2.6 かぶり厚さ

図8.2.7 基礎梁配筋工事における補強ブロック造耐力壁縦筋固定方法の例

(イ) 横筋は、図8.2.6及び図8.2.8に示すように壁端部縦筋に180゜フックとし、かぎ掛けとする。直交壁がある場合は、直交壁に定着させるか、直交壁の横筋に重ね継手とする。

横筋の重ね継手長さは45d、定着長さは40dとし、かぶり厚さ確保のために、できるだけ縦に重ねる。

また、横筋と縦筋の交差部の要所を径0.8mm以上の鉄線で結束する。

図8.2.8 補強ブロック造耐力壁の配筋例(壁式構造配筋指針より)
(2) 各部の配筋

(ア) 壁の配筋(交差部、端部の補強筋を含む。)は特記によるとしている。最近では、交差部及び端部に型枠を用いることはほとんどなく、異形ブロックを加工して構成する場合や、型枠状ブロックを加工して構成する場合が多い。

(-社)日本建築学会「壁式構造配筋指針・同解説」、同「壁式構造関係設計規準集・同解説(メーソンリー編)」、「JASS7」等、を参考にするとよい。

(イ) まぐさは出入口又は窓等の開口部の上部に設ける水平部材で、まぐさの上部の荷重を受け持つため、鉄筋コンクリート造とし、配筋は特記による。プレキャストコンクリート製等の既製まぐさを用いる場合は配筋、曲げ強度、寸法等を考慮する。

8.2.6 縦遣方

縦遣方は、ブロックが所定の位置に正しく組積できるように図8.2.9のように他の作業中に移動しないように独立したものとする。縦遣方が正確に設置されないとコンクリートブロック造の性能に大きく悪影響を及ぼすだけでなく、他工事にも影響を及ぼすので、監督職員は位置や固定状況等について確認を行う。

図8.2.9 縦遣方の建方の例(比較的大工事の場合)

8.2.7 ブロック積み等

ブロック積みは、「標仕」8.2.7によるほか、次の点に注意する。

(ア) 根付け部分のコンクリートが過度に乾燥している場合や防水性ブロック以外で吸水率の高いブロックを使用する場合は、モルタルの水分が吸収されてドライアウトし、硬化に悪影響を及ぼすので、水湿しを行う。ただし、吸水率の低いブロックを水湿しすると、余剰水が界面部のモルタルの水セメント比を高くし、強度低下となる場合もあり、このような場合は水湿しを行わない。

(イ) 縦遣方を基準として水糸を張り、水糸にならって隅角部より各段ごとに順次水平に積み回る。

(ウ) テーパーにより上下でシェル厚が異なるブロックは、シェル厚の厚い方を上にして構む。

(エ) 目地モルタルは、構造耐力上・防水上支障が生じないように、ブロック接合面全面(フェイスシェル及びウェプ部分)に設ける。

(オ) 所定のかぶり厚さが確保でき、縦筋位置が固定できる箇所や開口部・端部等のフック部分等の縦筋と横筋の交差部の要所は、結束線で緊結する。ただし、縦筋が固定され、移動のおそれがない場合は、結束線による緊結を省略できる。

(カ) 積終わりには降雨時に水がたまらないよう養生する。

(キ) がりょうは、ブロック壁の頂部を固定する役目がある。がりょうに打ち込むコンクリートがブロック壁空洞部に落下しないようにがりょうのすぐ下のブロックには基本形横筋ブロックを使用する。また、がりょう部の型枠とブロックとの取合い部は目地棒等を用い、水漏れがないようにする。

(ク) まぐさは、開口幅が比較的大きい場合は図8.2.10及び図8.2.11に示すように配筋してコンクリートを打ち込んだRC造とする。型枠には合板のほか、溝型ブロック、型枠状ブロック等も用いることができる。

 

図8.2.10 現場打ちコンクリートによるまぐさ

図8.2.11 既製まぐさ用部材使用例

(ケ) 目地モルタルの硬化以前に目地ごてで目地ずりをするとともに、化粧積み面の汚れをブラス等で清掃する。目地ずりは目地モルタルの表面強度を高め、ブロックと目地モルタルとの接着性を良くするので、耐力上、防水上重要な作業である。

(コ) 化粧目地仕上げは、目地モルタルがある程度硬化後に行い、そのちり(ブロック表面の面と目地仕上げ面の差)が目視で違和感がない状態に仕上げる。

8.2.8 モルタル及びコンクリートの充填

(1) ブロックの吸水率が大きい場合や、夏期で高温乾燥状態の場合は、充填モルタルやコンクリートの水分がブロックに吸収されドライアウトとなりやすいので、充填する空洞部に適度の水湿しを行う。

(2) 逐次充填工法では、縦目地空洞部へのモルタル又はコンクリートの充填は、目地モルタルが安定した後、ブロック2段以下ごとに丸棒等を用いて、鉄筋の移動がないように注意しながら丁寧に突き固める。1日の作業終了時は、ブロックの上端から5cm程度下がり位置で止める。

(3) 充填材料としてのモルタル又はコンクリートの混練量、配合や骨材の最大寸法は、一度に充填する量、空洞部の寸法等を考慮して決める。

(4) 空洞部の寸法が小さいので打込み高さが高いと充填が不完全になりがちである。

打継ぎ位置はブロック上端から5cm程度下がった位置とする。これは防水上の目的と充填モルタル又はコンクリートの打継ぎ面が水平目地と一致してせん断強度を低下させないように配慮したことによる。

(5) 耐力壁のまぐさを受ける壁面部分ではブロックの幅20cm以上の部分の空洞部は、全て最下部からまぐさの下端までモルタル又はコンクリートを充填する。

8.2.9 ボルトその他の埋込み

ボルト、とい受金物、配管の支持金物等の挿入された空洞部にはモルタル又はコンクリートを密実に充填する。金物の埋込み深さ及び定郊方法は、取り付けられるものの質紐を考慮して決める。取付位置は原則として目地位置とするが、これにより難い場合は監督職員と協議して決める。

8.2.10 電気配管

構造躯体であるブロック壁内に上下水道・ガス等の配管を行うと、配管のメンテナンス時に壁を傷つけることになり、建物の耐久性や構造耐力上支障が生じることもあるため、これらの配管をブロック壁内に埋め込んではならない。ただし、電気配管はメンテナンスが不要であり径も細いため、ブロック壁内に埋め込んでもよい。

電気配管を埋め込む場合は、ブロック空洞部を利用し、横筋等の配筋のかぶり厚さに支障がないように空洞部の片側に寄せて配管するほか、管の出口にモルタル又はコンクリートを充填し固定する。

8.2.11 養 生

「標仕」によるほか、目地モルタル及び充填したモルタル又はコンクリートが十分硬化するまで、有害な振動、衝撃、荷重等を与えないようにする。また、直射日光、降雨、凍結等を防止するための上屋やシート掛け等の養生を行う。

(ア) 夏期は直射日光等による水分の蒸発を防ぎ、一定の湿潤状態を保つため、モルタル又はコンクリート充填後、組積終了後等はビニルシート等で壁体、打込み部分を覆う。

(イ) 寒冷期は強風による乾燥や低温による初期凍害を防ぐために、上屋・シート等で躯体を覆い保温の処置をして養生する。

(ウ) 出隅部や突出部の欠けやすい部分や、踏付け面等のブロックに破損や若しい汚染のおそれのある部分は板等で養生する。

(エ) 降雨による空洞部への雨水の浸透、目地モルタルの流出等を防止するために上屋、シート等で養生する。

8.2.12 「標仕」以外の構工法

「標仕」に示された補強コンクリートブロック造のほかに、図8.2.12に示す「鉄筋コンクリート組積造」がある。これは建築基準法施行令第80条の2に基づく平成 15年国土交通省告示第463号による工法の名称である。従前は、JIS A 5406に規定する「型枠状ブロック」を用い、空洞部分にグラウト材(コンクリート又はモルタル)を全充填する工法として「型枠コンクリートブロック造」の名称が普及し、設計・構造規準も(-社)日本建築学会「壁式構造関係設計基準集・同解説(メーソンリー編)」 2006年版に示されていた。しかし、材料としてJIS A 5406だけでなくJIS A 5210(建築用セラミックメーソンリーユニット)も使用可能であり、より自由度が高く合理的な工法として「鉄筋コンクリート組構造」に集約されてきており、(-社)日本建築学会より告示に準拠した「鉄筋コンクリート組積造(RM造)建物の構造設計・計算規準(案)・同解説」が2021年3月に出版された。また、施工方法としても「JASS 7」では2009年版から「鉄筋コンクリート組積造」のみとなっている。表8.2.5に補強コンクリートブロック造と鉄筋コンクリート組積造の比較を示す。

図8.2.12 鉄筋コンクリート組積造(RM造)の例

表8.2.5 補強コンクリートブロック造と鉄筋コンクリート組積造の比較

8章 コンクリートブロック工事等 3節帳壁及び塀

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

3節 コンクリートブロック帳壁及び塀

8.3.1 一般事項

(1) この節の適用範囲は、鉄筋で補強された非構造部材の帳壁及び高さ2.2m以下の塀としているが、これらは、組積する行為は同じであっても目的や考え方が異なる部分が多いので注意する。特に、地震時や暴風時に転倒・倒壊や破損などが懸念される塀の基礎、控壁等については、5章[鉄筋工事]及び6章[コンクリート工事]によることが重要である。

また、コンクリートブロックの施工に関して、「ブロック建築技能士」の資格制度が設けられている。

(2) 帳壁工事の作業の流れを図8.3.1に示す。


図8.3.1 コンクリートブロック帳壁工事の作業の流れ

(3) 施工計画書の記載事項は概ね次のとおりである。

また、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 帳壁の位置と主体構造の種別及び寸法
② 帳壁の主要支点間距離及び主要支持辺の位置
鉄筋の種類、径及び定着・継手の方法・位置
コンクリートブロックの種類、形状寸法
⑤ ブロック割りとその組積パターン(関口部、金物取付け位置を明示)
鉄筋のかぶり厚さ及び鉄筋の間隔・あき
帳壁の施工方法(先積み工法とあと積み工法で、鉄筋の組立順序が異なる)
主体構造との緊結方法(主体構造に対するクリアランスの大きさによる固定緊結又は可動緊結を明示)
鉄筋の継手又は定着方法(溶接の場合は溶接方法)
⑩ 壁端部又は開口部周囲の補強方法
⑪ 仕上げの有無と仕上げ材の種類
⑫ 孔あけ等の位置と寸法
⑬ 先付け金物の位置と取付け方法
⑭ 配管位置とその形状寸法

作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制,管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

 

(4) コンクリートブロック帳聖(間仕切壁)

(ア) 帳壁とは、柱・梁で構成される主体構造物の中に構築され、建築物にかかる水平荷重及び鉛直荷重を負担させない壁であるが、壁体にかかる地震や風によって生じる面外方向の力に耐える必要がある。組積の時期は主体構造が完成した後であり、あと積み工法になるので主体構造体への鉄筋の緊結が重要になる。また、主体構造物の変形を阻害しないためのスリットを適宜設ける。

(イ) (ー社)日本建築学会「壁式構造関係設計規準集・同解説(メーソンリー編)」に規定されている「コンクリートブロック帳壁構造設計規準」には帳壁の規模について次のように記述されている。

なお、主要支持辺とは帳壁を主として支持する辺をいう。主要支点間とは一方の主要支持辺と他方の主要支持辺との間をいう。主要支点間の方向により、主筋と配力筋の方向が定まるので必ず確認する。

(a) ブロック帳壁は地盤面より20mを超える外壁部分に用いてはならない。これは、厳しい風圧や変形性能の規定に、ブロック帳壁で設計することは不可能ではないが、施工方法等も考慮して20m以内としている。10~20mの場合でも告示や本規準等を遵守し構造安全性を確保しなければならない。

(b) 一般帳壁の主要支点問距離(L1)は、3.5m以下とする。ただし、地下部分にある階で、当該階の周囲壁面の見付面積が平均して階高の2/3以上地中に埋没している場合は、4.2m以下とする(図8.3.2参照)。


図8.3.2 主要支点間距離

(c) 小壁帳壁の持出し長さ(L2)は、1.6m以下とする。また、スパンが持出し長さの2倍半を超える場合は、小壁帳壁となる(図8.3.3参照)。


図8.3.3 主となる方向の持出し長さ

(ウ) 壁厚は、仕上げの部分を除き表8.3.1に示す数値以上とする。

なお、外壁で地盤面からの高さが10mを超える部分に使用する場合は、告示や日本建築学会規準等を参考にして定める。

表8.3.1 壁 厚


(5) ブロック塀

ブロック塀は工法が比較的簡単であることから管理も安易に行われやすい。しかし、補強コンクリートブロック造やコンクリートブロック帳壁と比較して、直接風雨にさらされ、荷重の支持も主として地盤面の基礎によっていることから、かぶり厚不足による鉄筋の腐食、配筋不良、基礎構造不備等の原因による地震時の倒壊が多い。また、道路側に建てられることも多く、倒壊による人的被害の危険性は極めて高い。したがって、適切な設計と施工を心掛ける必要がある。建築基準法施行令62条の8 には、高さ、壁の厚さ、控壁の設置、配筋など7項目が定められており、確実に順守しなければならない。

なお、基礎の寸法や配筋については特記となっているため、(-社)日本建築学会の「ブロック塀設計規準・同解説」等を参考に、安全な塀とする必要がある。

「標仕」での適用範囲は、高さ2.2m以下としているが、地盤の特性、基礎の形状、控壁、根入れ深さ、ブロックの厚さ等を検討し、風圧力、地震力に対し安全なブロック塀を構築する必要がある。安全性を確かめるための構造計算の基準は「補強コンクリートブロック造の塀の構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」(平成12年5月23日建設省告示第1355号)に定められている。塀の高さの測り方を図8.3.4に示す。作業の流れは帳壁の図8.3.1を参照する。施工計画書は基礎工事・フェンス工事等を塀全体として作成するとよい。


図8.3.4 塀の高さの測り方(コンクリートブロック塀設計規準・同解説より)


8.3.2 材 料
(1) ブロック

使用するブロックは、「標仕」8.3.2ではJIS A 5406(建築用コンクリートブロック)の規格に適合するもので、種類、圧縮強さ、モデュール呼び寸法及び正味厚さは、特記によるとしている。

なお、一般的には「標仕」表8.3.1に示した空洞ブロックC(16)を用いる。空洞・基本形・化粧無しブロックで10mm目地とし、長さ×高さのモデュール呼び寸法は 400×200(mm)、実寸法は390×190(mm)である。

(a) 帳 壁

ブロックの厚さは、表8.3.1に示すように帳壁の規定に適合していることを確認する。化粧ブロックを用いる場合の厚さとは、実厚さではなく、正味厚さを示すので注意が必要である。

(b) ブロック塀

ブロックの厚さは、「標仕」8.3.2に示すように、特記がなければ塀の高さが2m以下の場合は120mm、2mを超え2.2m以下の場合は150mmとする。建築基準法施行令第62条の8 第二号には「壁の厚さは、15cm(高さ2m以下の塀にあっては、10cm)以上とすること。」と定められているが、厚さ100mmのブロックでは鉄筋のかぶり厚さ等十分な耐久性が確保できない可能性があり、「標仕」や(-社)日本建築学会「コンクリートブロック塀設計規準・解説」では120mm以上としている。転倒等の安全性を考慮すると塀の高さがおおよそ1.2mを超える場合は、厚さ150mmとすることが望ましい。化粧ブロックを用いる場合の厚さとは、実厚さではなく、正味厚さを示すので注意が必要である。

ブロック塀に化粧ブロックを用いる場合は、基本形横筋ブロックのみで構築される場合がほとんどで、また、縦目地と横目地の幅が異なる寸法の化粧ブロックが多くなっている。例えば、長さ× 高さのモデュール呼び寸法が 400 × 200 (mm)の場合で、縦目地が1mm、横目地は10mmの製品では、製品の実寸法は399 x 190(mm)となる。モデュール呼び寸法体系も多種になっているので、長さ× 高さのモデュール呼び寸法、製品寸法や実厚さについてはメーカーのカタログ等を参考にされたい。

なお、控壁は、RC造とするか型枠状ブロック又は空洞ブロックを用いてコンクリートを全充填する。

8.3.3 モルタル及びコンクリートの調合

モルタル及びコンクリートの調合は、基本的に補強コンクリートブロック造に用いるものと同じと考えてよい。ただし、標誰目地幅が10mmと異なるブロックを用いる場合は、監督職員と協議し、既調合モルタルの使用も検討すると良い。

8.3.4 鉄筋の加工及び組立

(1) 加工及び組立一般

壁体に加わる外力で考慮しなければならないのは、主として面外方向の外力である。この外力に抵抗するのは鉄筋であり、鉄筋によって主体構造や基礎に伝達される。この伝達を受け持つのが主筋であり、それと直行方向に配筋されて面材として一体化する役目を持つのが配力筋である。したがって、主筋は、帳壁の場合には主要支点間方向に配置され、主要構造物に十分に緊結されなければならない。塀の場合には、基礎に緊結されなければならない。

(a) 外力は、面外方向の正負両方向に加わるために厚さ方向の中心部に配置する必要から、「標仕」ではブロック空洞部の中心部に配筋するとしている。また、中心部に配筋するためには、鉄筋の位置決め及び床や基礎のコンクリート打設時に移動がないように堅牢な振れ止めを設ける必要がある。

(b) 「標仕」では、壁鉄筋の継手、定着及び末端部の折り曲げ形状は、特記によるとしている。従来は、主筋には継手を設けないとしていたが、帳壁では上下階への定着が困難な場合が多いことや施工性なども考慮して、応力伝達が可能な溶接接合等による継手も認められている。ただし、塀の主筋の場合には、継手は認められていない。

配力筋は、壁端部鉄筋に180度フックによりかぎ掛けすることや、直交壁に定着させる方法などが (-社)日本建築学会の規準に定められている。

「標仕」では、これらについて、特記としており、参考としては (-社)日本建築学会の「壁式構造関係設計基準集・同解説」「壁式構造配筋指針」「JASS 7メーソンリー工事」等の該当部分を用いるとよい。

帳壁の各部配筋を表8.3.2及び表8.3.3に、配筋例を図8.3.5に示す。

表8.3.2 一般帳壁の壁筋(コンクリートブロック帳壁構造設計規準・同解説より)

表8.3.3 小壁帳壁の配筋(コンクリートブロック帳壁構造設計基準・同解説より)

図8.3.5 ブロック帳壁の種類・鉄筋の名称・主要支点間・主要支持辺等(壁式構造配筋指針より)

(c) 帳壁を土間コンクリート上に設置する場合は、帳壁の鉄筋を土間コンクリート内に定着させるとともに、帳壁下部には補強を行う。

(d) 帳壁工事では、現場作業工程上やむを得ずコンクリート躯体へあと施工アンカーを施工したり、鉄骨躯体へ溶接施工したりして帳壁を緊結させる必要が生じる場合がある。あと施工アンカーの使用は監督職貝の承諾事項である。特に、小壁帳壁のように、曲げ・せん断力が加わる場所に使用する場合は、専門業者による検討や施工も必要である。また、「(-社)日本建築あと施工アンカー協会」等に確認して、適切なものを使用する。

(e) ブロック塀

① ブロック塀の配筋は、塀を補強するのみならず、塀と基礎、控壁等と緊結する役目を担っている。地震時の塀の転倒は部材間の連結(継手、定着)不良によるところが多いので、十分施工の確認を行う必要がある。控壁は3.4m以下ごとに設け、鉄筋コンクリート造又は型枠コンクリートブロック造とする。

② 主筋をブロック中心部に配筋するためには、基礎コンクリート打込み前の主筋の位置決め及びコンクリートの打込み時に移動がないように図8.3.6に示すように堅牢な振れ止めを設ける必要がある。縦筋は継手を設けてはならない。


図8.3.6 縦筋頂部の高さそろえ、振れ止めの例

 

③ ブロック塀頂上部は、横揺れを生じやすい。横筋は壁頂を一体化し横揺れを防止する役目をもっている。したがって、縦筋は頂上部の横筋にかぎ掛けとするか又は90゜フックで余長10d以上とする。頂上部の横筋に縦筋を正確にかぎ掛けするためには図8.3.6に示すように振れ止めを設ける。さらに、頂部の横筋の端部は控壁に定着するか縦筋に180度フックでかぎ掛けすることが望ましい。しかし、現実には控壁との高さの違いなどによりかぎ掛けが困難な場合があり、この場合は横筋を鉛直に曲げ、縦筋と25d以上の定着を取るようにする(図8.3.7)。塀の重ね継手長さ及び定着長さを表8.3.4に示す。


図8.3.7 ブロック塀の配筋例

 

表8.3.4 定着及び重ね継手の長さ(コンクリートブロック塀設計規準・同解説より)
(2) 各部の配筋

各部の配筋は、特品によるとしている。各部の配筋は、(-社)日本建築学会「壁式構造配筋指針・同解説」、同「壁式構造関係設計規準集・同解説(メーソンリー編)」を参考にするとよい。帳壁の配筋例を図8.3.8に示す。


図8.3.8 帳壁の配筋例図

8.3.5 縦やり方

塀の縦やり方は、8.2.6による。特に、基礎部分の位置、形状や配筋位置などに合わせた指標として、やり方は小規模工事であっても設けられることが多い。ブロック塀でのやり方の例を図8.3.9に示す。

図8.3.9 コンクリートブロックの組積におけるやり方の例

なお、縦やり方については、電子式の自動式レベル器などが進歩しており、やり方を省略する工事現場が多くなっている。丈夫な基礎の上部に、水平で鉛直な塀の構築が重要である。

8.3.6 ブロック積み等

ブロックの積み方は8.2.7によるほか次による。

(ア) 帳壁

(a) 最上段のブロックと主体構造体との取合い部の一例を図8.3.10に示す。最上段を組積し、溝部分にモルタルを充填する。

(b) 開口部に設けるまぐさは、8.2.7 (ク) と同様に行う。


図8.3.10 最上段の納まり例

(イ) ブロック塀

笠木は、汚れ防止や耐久性向上等の観点から雨水が直接壁面に当たらないようなはね出しのあるものが望ましい。笠木ブロックを用いる場合は、モルタルが充填でき、鉄筋のかぶり厚を十分に確保できる空洞を有し、地震時の脱落防止の対策が考慮されている形状が望ましい。

8.3.7 モルタル及びコンクリートの充填

モルタル及びコンクリートの充填は、8.2.8による。

あと施工の帳壁でスラブ若しくは梁下まで充填する場合は、頂部に投入穴を設ける。部分的であっても、型枠状ブロックを使用する場合には、コンクリートを全充填することを原則とする。

8.3.8 ボルトその他の埋込み

ボルトその他の埋込みは、8.2.9による。

8.3.9 電気配管

電気配管は、8.2.10による。

8.3.10 養生

養生は、8.2.11による。特に、ブロック塀は、屋外工事がほとんどであるため、気象状況に応じた養生に注意する。

8章 4節ALCパネル

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

4節 ALCパネル

8.4.1一般事項

(1)「標仕」8.4.1で規定している適用範囲は、ALCパネルを屋根(非歩行用)、床、外壁及び間仕切壁に用いる場合である。

なお、ALCパネルは、多孔質のため軽量であり、耐火性に優れている反面、吸水率が大きい(30~40%)等の性質があるので、外壁等に用いる場合は、仕上材の選定、結露・凍害対策等について注意する必要がある。

(2)ALCパネルの施工に関して、「エーエルシーパネル施工技能士」の資格制度が設けられている。

(3)この節における「構法」と「工法」の使い分けを次に示す。
・構法:材料や部品の構成方法

・工法:建築物の施工の方法

(4)作業の流れを図8.4.1に示す。

図8.4.1 ALCパネル工事の作業の流れ

(5)構造設計指針

(ア) ALC協会では、平成25年に、(独)建築研究所監修「ALCパネル構造設計指針・同解説」を改定し、ALCパネル及びALCパネルを用いた帳壁等の構造設計の技術指針としている。

(イ) 「標仕」における取付け構法の種別とパネル構法の名称を図8.4.2に示す。

図8.4.2「標仕」における取付け構法の種別と構法の名称

(6)施工計画書及び施工図

(ア) 施工計画書
施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。

また、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(施工図の作成、各ブロック別の着工・完了等の時期)
② パネルの製造所、製品名及び施工業者名
パネルの区分、単位荷重、厚さ、長さ、耐火性能
④ パネルの搬入・保管方法
⑤ パネルの取付け詳細及び工法
⑥ パネルと建具枠等の取合い及び納まりの詳細
⑦ 設備用配管ボックス類に対する処置
目地用モルタル、仕上材等の種類、調合、工法及び使用箇所
シーリング材の使用箇所及び種類
⑩ パネルの養生計画

⑪ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

(イ) 施工図
施工図は、次の内容について作成する。
① パネル割付け図
所要部分にどのような形状・寸法のパネルを使用するかを表す図面であるが、出入口、設備器具用等の開口部も記入し、無理のない構造となるように作成する。また、伸縮目地の配置もパネル割付け図に記入する。

なお、「標仕」8.4.3(5)に定められている限度より狭い幅のパネルが入らないようにする。

② 各部詳細図

パネルの取付け工法、建具枠等の取付け工法、パネルと他の材料との取合いや納まり等の詳細を表す(8.4.3~8.4.5参照)。

8.4.2 材 料

(1)ALCパネル

(ア) ALCとは、Autoclaved Lightweight Aerated Concreteの略である。

(イ) ALCパネルは、JIS A 5416(軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル))に適合するものを使用する(平成12年建設省告示第1446号)。

(ウ) JIS A 5416の抜粋を次に示す。

JIS A 5416:2016
5.品 質
5.1 ALCの品質

5.1.1 圧縮強度及び密度
ALCの圧縮強度及び密度は、9.2に規定する試験を行ったとき、表3の規定に適合しなければならない。

表3 – 圧縮強度及び密度
5.1.2 乾繰収縮率
ALCの乾燥収縮率は、9.3に規定する試験を行ったとき、表4の規定に適合しなければならない。

表4ー乾燥収縮率

6 寸法及び許容差
6.1 厚形パネルの寸法
厚形パネルの呼び寸法は、表10による。

表10-厚形パネルの呼び寸法(単位 mm)

6.2 薄形パネルの寸法
薄形パネルの呼び寸法は、表11による。
なお、附属書Aに、代表的な薄形パネルを示す。

表11-薄形パネルの呼び寸法(単位 mm)

6.3 ALCパネルの寸法許容差
ALCパネルの呼び寸法に対する寸法許容差は、9.8に規定する試験を行ったとき、表12の規定に適合しなければならない。

表12-ALCパネルの許容寸法差(単位 mm)

6.4 コーナーパネルの直角度
コーナーパネルの直角度は、9.8に規定する試験を行ったとき、表13の規定に適合しなければならない。
なお、直角からのずれの符号は、図6による。

表13ーコーナーパネルの直角度の許容値

図6-コーナーパネルの直角度
JIS A 5416:2016

(エ)「標仕」では、パネル材料はJIS A 5416の厚形パネルとし、特記事項を「区分、単位荷重、厚さ、幅、長さ、耐火性能等」と規定している。特記事項の記載例として、「JASS 21 ALCパネル工事」のパネルの特記仕様を下表に示す。

表8.4.1 JASS21 9節特記 9.2特記事項 a.(3)材料パネル
(*種類、寸法(*厚さ)、製造業者)(4.1)の記載例
ここで、単位荷重には、パネルの設計荷重(表8.4.2参照)の値が特記される。

なお、単位荷重とは、パネルに加わる外力を単位面積当たりの値で表したものである。

表8.4.2パネルの設計荷重

耐火性能については、国土交通大臣が定めた構造方法(平成12年建設省告示第1399号)において、外壁,間仕切壁については、厚さ75mm以上で1時間、屋根については30分、床については厚さ100mm以上で1時間の耐火性能を有する構造として例示仕様が定められている。床の2時間については、国土交通大臣の認定により、厚さ120mm以上とされている(表8.4.3参照)。

詳細については、パネル製造所に確認するか又は「ALCパネル防耐火構造(告示仕様)設計施工標準(ALC協会)」等を参照するとよい。

表8.4.3パネルの耐火性能

(オ) ALCの種類は、パネル短辺小口に表示されている。パネル製造所各社の表示例を表8.4.4に示す。屋根、床及び外壁については、表裏の方向があり、正しい方向に建て込む。

表8.4.4 パネル短辺小口の表示の例
(2) 金物及び表面処理

(ア)金物は、「標仕」8.4.2(2)による。

(イ)ALCの取付けには、各種の金物が用いられるが、鋼材の場合には、モルタル等で保護される場合を除き、防鋳処理が必要になる。
取付け金物の表面処理は「標仕」8.4.2(3)(ア)によるが、これと同等以上の性能を有する表面処理を行った金物を使用する場合は、監督職員との協議による。

下地鋼材及び開口補強鋼材の表面処理は「標仕」8.4.2(3)(イ)で表18.3.1[鉄鋼面の錆止め塗料の種別]のA種又はB種の錆止め塗料2度塗りとする。

(3) モルタル等

(ア) モルタルは、密実に充填する必要があるので、作業性の良好なものを用いる。ALCが乾燥していると、モルタルの水分がALCに吸収され、充填欠陥が生じゃすい。メチルセルロース等の保水剤を混和剤として用いると、この欠陥の防止に効果がある。施工条件にもよるが、混和剤を使用したほうがよい。

(イ) パネルの補修用モルタルは、溝掘り、孔あけ、切欠き等の部分補修用として用いられる。「標仕」8.4.2(4)(イ)では、パネル製造所の指定する製品としている。これらの製品は既調合のものであり、水を加えて練り混ぜて使用する。

なお、パネルを補修する際、補修用モルタルとALCとの付着性を確保するために補修下地を補修用シーラーで処理することが必要である。この場合、用いるシーラーもパネル製造所指定のものとする。

(4)シーリング材

シーリング材は、「標仕」9章7節により、特記がなければ、「標仕」表9.7.1による。

(5)耐火目地材
耐火又は防火上必要な場合、伸縮目地を構成するパネル相互の接合部に挿入する耐火目地材は、特記による。耐火目地材としては、アルカリアースシリケートウールがあり、大臣認定番号NM-2982やNM-1089が一般的に使用されている。

なお、平成28年版「標仕」に記載されていたJIS R 3311(セラミックファイバーブランケット)の1号は、発がん性物質を含有するために平成31年版で削除された。また、JIS A 9504(人造鉱物繊維保温材)のロックウール保温板1号についても施工しにくく、一般的に使用されていないことから削除されている。


8.4.3 外壁パネル構法

(1)ALC外壁パネル工事においては、正負の風圧力及び地震時の層間変形に対応できるパネル仕様(厚さ、長さ、配筋等)と取付け構法を採用する必要がある。各構法の風圧力に対する取扱いの概要を表8.4.5に示す。すなわち、風圧力の小さい場合には標準的な構法で対応できるが、風圧力の大きな場合には、検討が必要になる。

詳細については、パネル製造所に確認するか又は「ALCパネル取付け構法標準・同解説(ALC協会)」等を参照するとよい。

表8.4.5 外壁パネル構法の風圧力に対する取扱いの概要
(2) パネル幅の最小限度は、300mmとする。納まり的に小幅のパネル(幅300mm未満)を使う場合は、特記による。

(3) パネルの短辺小口相互の接合部、出隅及び入隅のパネル接合部並びにパネルと他部材との取合い部に設ける目地については、「標仕」8.4.3(7)及び(8)により、伸縮目地とし、目地寸法は特記により、特記がなければ10~20mmとされている。また、それらの伸縮目地に耐火目地材を充填する場合は、「標仕」8.4.3(9)により、特記によるとされている。

(4)開口補強鋼材の取付け方法は、取付け構法の種別に応じた取付け方法とする必要がある。開口補強鋼材には等辺山形鋼が主に用いられるが、適応できる開口部の大きさには構造的に限界があるので注意する。

なお、開口補強鋼材の部材寸法選定の目安を表8.4.6に示す。

表8.4.6 開口補強鋼材の部材選定の目安(横横もこの表に準ずる)
算定条件
縦材支点間2.8mとし、次の方法で算定した。
なお、この場合、開口部に作用する風圧力を直接構造躯体へ負担させる構法とする必要がある。
(5)各構法の取付け例を次に示す。

(ア) A種(縦壁ロッキング構法)の取付け例を図8.4.3に示す。

図8.4.3 A種(縦壁ロッキング構法)取付け例(その1)

     B部(平パネルを用いた場合)平面詳細図

      B部(コーナー用役物を)用いた場合)平面詳細図
(注)伸縮目地の寸法及び耐火目地材の充填については、特記による。

 図8.4.3 A種(縦壁ロッキング構法)取付け例(その2)

    A部断面詳細図

    B部断面詳細図


    C部断面詳細図

(注)伸縮目地の寸法及び耐火目地材の充填については、特記による。

図8.4.3 A種(縦壁ロッキング構法)取付け例(その3)

(イ) B種(横壁アンカー構法)の取付け例を図8.4.4に示す。


 A部(一般部縦目地)平面詳細図

 


 A部(一般部横目地)断面詳細図


     B部 平面詳細図
(注)伸縮目地の寸法及び耐火目地材の充填については、特記による。

図8.4.4 B種(横壁アンカー構法)取付け例

8.4.4 間仕切壁パネル構法

(1)各構法の取付け例を次に示す。

(ア) E種(縦壁フットプレート構法)の取付け例を図8.4.5に示す。


    A部平面詳細図

 


    C部平面詳細図

 


        B部平面詳細図


        D部断面詳細図
(注)伸縮目地の寸法及び耐火目地材の充填については、特記による。
図8.4.5 E種(縦壁フットプレート構法)取付け例

 

(イ) 「標仕」表8.4.3のC種及びD種の構法については、外壁パネル構法のそれぞれA種及びB種の構法による。

(ウ) 間仕切壁共通取付け例を図8.4.6に示す。

E部、F部の立面図は図8.4.5による。


   E部立面詳細図(E種)

 


    F部姿図(E種)(JASS21より)
図8.4.6 間仕切壁共通取付け例

なお、「標仕」には規定されていないが、「ALCパネル取付け構法標準・同解説(ALC協会)」では、間仕切壁の専用構法として「間仕切壁ロッキング構法」がある。

(2)パネルの短辺小口相互の接合部、出隅及び入隅のパネル接合部並びにパネルと他部材との取合い部の伸縮目地の処置については、「標仕」8.4.3(7)から(9)が適用される。

(3) 100mを超える竪穴区画やハロゲン化物消火設備等を設置する防護区画において、煙等の漏えい防止対策が必要な場合には、「乾式工法を用いた防火区画等における煙等の漏えい防止対策に係る指導基準」(平成21年4月10日東京消防庁通達)を参考にするとよい。

8.4.5 屋根及び床パネル構法

(1) F種(敷設筋構法)の取付け例を図8.4.7に示す。


     A部(短辺目地部)断面詳細図

 


   A部(長辺目地部)断面詳細図

 


    B部(長辺方向)断面詳細図

 


     C部(短辺方向)断面詳細図
図8.4.7 F種(敷設筋構法)の取付け例

(2)屋根又は床パネルと外壁パネルとの取合い部分の隙間に関する処置については、「標仕」8.4.3(12)が適用される。「標仕」8.4.3(12)でいう「スラブ」には、屋根及び床パネル工法におけるパネルも含まれているからである。屋根又は床のパネルと外壁パネルとの取合い部分の隙間にもモルタル又は耐火目地材の充填が適用される。

8.4.6 溝掘り、孔あけ及び開口部の措置

(1) 外壁及び間仕切パネル並びに屋根及び床パネルの現場での加工は、原則として、行わないが、場合により必要となることがある。表8.4.7に溝掘り又は孔あけ等が必要な例と加工の限界の例を示す。

表8.4.7 溝掘り又は孔あけ等が必要な例と加工の限界の例

(2) 開口部に加わる荷重は、開口補強鋼材により、直接構造躯体に伝える必要がある(表8.4.6参照)。この場合、間仕切壁E種は、開口補強鋼材の縦材上部が面内方向に可動となるように取り付ける。

(3) 表8.4.7を超える場合は、パネル強度やパネル割付けの検討を行い、必要に応じて有効な開口補強鋼材を設ける。

8.4.7 養生その他

(1) パネル幅又は長さ全体にわたりひび割れのあるものやパネルの補強鉄筋が露出しているような欠けがあるものなど、構造耐力上支障があるものは、廃棄する。

ALCパネルは、取扱い時に割れや欠けが生じやすい材料であり、軽微な損傷のパネルを一律に廃棄することは、現実的でない。使用上支障のない範囲の欠けのあるパネルは、通常、補修して使用されるが、廃棄・補修の限度には仕上方法等の使用条件及び破損箇所・大きさ等が影響する。この補修して使用できる目安は、表8.4.8を参考にして決める。

なお、表8.4.8の目安を超える場合は、監督職員と協議のうえ、パネルが使用上支障がないことを確認し、補修して使用する。

表8.4.8 補修して使用できる破損部分の大きさの目安の例(JASS21より)

(2) 工事完了後のパネル養生

ALCパネル工事完了後、防水及び仕上げ工事を開始するまでの間、パネルの濡れ、汚れ、破損等を防止するための適切な養生を行う。

(3)「標仕」の関連事項を次に示す。

(ア) 仕上塗材仕上げの下地処理及び下地調整(「標仕」15.6.4(4)及び15.6.5(4)参照)

(イ) 塗装工事の素地ごしらえ(「標仕」18.2.6(1)参照)

(4) 壁仕上げの留意点

(ア) ALCパネルは、表面強度が小さいので、強い接着力は期待できない。したがって、高強度の仕上材やモルタルの厚塗り、石張り等の重い仕上げは適さない。

(イ) ALCパネルは、吸水性が比較的高いので、一般的な条件では外壁面に防水性の高い仕上げ材料を選ぶ必要がある。

(ウ) 透湿性のある外壁仕上げは、室内側からの湿気の蓄積による凍害防止に効果があるが、湿気の蓄積が透湿性を上回る条件では、効果がない。

(エ) 海岸沿いでは、一般地域に比べ、よりグレードの高い仕様を選ぶ。

(オ) 外壁面には、「標仕」表15.6.1にある複層塗材E又は複層塗材CEが一般的に用いられるが、外装薄塗材E又は外装薄塗材Sも使用できる。複層塗材REは、硬化時の凝集力が強く、ALCを破壊しはく離させるおそれがあるため、不適当である。パネルに適合する仕上塗材を参考として、表8.4.9に示す。

表8.4.9 仕上塗材の種類とALCパネルとの適合

(5) 床仕上げの留意点

(ア) ALC用に開発されたモルタルの使用が望ましい。

(イ) 普通モルタルを使用する場合は、保水剤混入貧配合のモルタルを用い、塗厚は15mm程度を上限とし、これ以上の厚塗りを避ける。

(ウ) ALCパネルや梁のたわみ及びモルタルの乾燥収縮によるひび割れを防止するため、溶接金網を固定しながら全面に敷き込む。また、大梁上部のモルタルには必ず伸縮目地を設ける。

(6) ALCパネル内に水分が浸透する主な原因には、次のようなものがある(特に、寒冷地では留意する)。

(ア) 雨漏りあるいは外壁仕上げを通して水がALCパネル内に浸透する。直接の雨掛りや土、雪等とパネルが接しない納まりとする必要がある。

(イ) 建物の室内側の冷橋部分等の結露水がALCパネル内に浸透する。この結露は、室内が高温多湿となるほど大きな問題となる。サッシ、排気口回りや浴室の壁等で問題が起こることが多く、場合により防湿層の設置や結露した水分を放出する工夫等が必要となる。

(7) 寒冷地域におけるALCパネル下地外壁への現場でのタイル張りは、タイルの裏面に雨水が浸入した場合、それが凍結しタイルがはく落するおそれがあるため、避ける。

8章 5節 押出成形セメント板 外壁パネル工法

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

5節 押出成形セメント板(ECP)

8.5.3 外壁パネル工法

(1) 取付け方法

取付け方法は、パネルの縦張り工法と横張り工法の2方法がある。地震時の層間変位にパネルが追従できるように、縦張り工法の場合は、ロッキングできるように、また、横張り工法の場合は、スライドするように取り付ける。

外壁パネル工法の種別を表8.5.2に、その取付け例を図8.5.3及び図8.5.4に示す。

表8.5.2 外壁パネル工法


           姿図

 


               平面図
  図8.5.3 縦張り工法(ロッキング方式)の取付け例(その1)

 


 図8.5.3 縦張り工法(ロッキング方式)の取付け例(その2)

 


      開口部断面詳細図

 


         開口部平面詳細図

 


 図8.5.3 縦張り工法(ロッキング方式)の取付け例(その3)

 


           姿図

 


          平面図
図8.5.4 横張り工法(スライド方式)の取付け例(その1)

 


            断面部
図8.5.4 横張り工法(スライド方式)の取付け例(その2)

 


     開口部断面詳細図

 


           開口部平面詳細図

 


         コーナー部出隅平面詳細図
  図8.5.4 横張り工法(スライド方式)の取付け例(その3)

 

(2) 風圧力
風圧力により支持間隔が決められる。建物の形状や使用部位等によって風圧力が異なるため、パネルの取付け耐力の検討を行う必要がある。

詳細については、ECP(押出成形セメント板)協会「ECP施工標準仕様書」等を参照するとよい。

(3) 地震カ
躯体の層間変形角に対する追従性能と、躯体から仕上げ材までの耐力の検討を行う必要がある。

詳細については、「ECP施工標準仕様書」等を参照するとよい。

(4) 耐火構造

耐火構造は、建築基準法施行令第107条の規定に基づく技術基準に適合したものである。そのため所定の耐火性能を満足するパネル及び仕様により行う。

(5) パネル下地金物

パネルの下地金物は、構造体にパネルを確実に取り付けるためのものであり、必要な強度が十分確保できるものを用いる。パネル下地金物は、S造の場合は溶接、 RC造の場合は埋込みアンカー等により安全性を確認し取り付ける(14.1.3(1)参照)。

(6) パネル幅の最小限度

パネル幅が小さい場合は、衝撃による破損のおそれが大きくなるため、「標仕」8.5.3(6)ではパネルモジュールの1/2である300mmを最小限度としている。

(7) 欠け、傷等の補修
軽微な損傷があるパネルで、パネルの構造耐力の低下がないと判断されるもの、防水性能が確保できると判断されるもの及び外観が著しく損なわれないものは、補修して用いることができる。

補修手順については、「ECP施工標準仕様書」を参照するとよい。

(8) パネル相互の目地幅

パネル相互の目地帳は、地震時の変形に対応する縦張り工法及び横張り工法の場合も短辺の方が大きな目地幅が必要である。「標仕」8.5.3(9)では、目地幅は、特記によるとしているが、長辺は10mm以上、短辺は15mm以上としている。

長辺の目地は、パネル同士をかみ合わせるため製品ごとに一定の幅となる。短辺の目地幅は、地震時の層間変位を吸収できるように設定する。また、日常の温度変化によるパネルの長さ変化に対してシーリング材の伸縮が許容範囲内に入るように設定する。

(9) 出隅及び入隅のパネルの目地幅

目地の動きは、建物部位によって様々であることから、部位ごとの変形量を考慮して目地幅を設定する必要がある。特に、出隅及び入隅のパネル目地幅は、大きくする必要があり、「標仕」8.5.3 (10)では特記によるとしているが、特記がなければ 15mm程度としている。また、開口部周囲の目地についても同様な考慮が必要である。

(10) パネルの表裏確認
パネルの表裏の確認方法は、パネル短辺、又は長辺の小口面に表裏が記載されているので、それにより確認する。強度上、表裏による違いはないが、表面はパネル製造所で仕上げ面としての表面処理や検査が行われている。

8章 5節 押出成形セメント板 間仕切壁パネル工法

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

5節 押出成形セメント板(ECP)

8.5.4 間仕切壁パネル工法

(1) パネルの取付け工法
外壁パネル工法と同様に、横張り工法と縦張り工法がある。横張り工法は外壁パネル工法の横張り工法と同様である。

縦張り工法は、風圧力等の外力が加わらない部位に用いる場合には、パネルの上下端2箇所で固定する。固定方法は、上下端のパネル取付け下地として溝形鋼あるいは山形鋼を用い、専用の取付け金物によりパネルを固定する(図8.5.5参照)。


            姿 図

 


    コーナー部           目地部

 
壁付き部
(注)耐火目地材の幅は30mm以上とし、厚さは隙間寸法の1.2倍程度とする。

図8.5.5 間仕切壁の取付け例

(2) 間仕切壁パネル構法における耐震性能は、躯体の層間変形角に対する追従性能と、下地金物の耐力の検討を行う必要がある。

詳細については、「ECP施工標準仕様書」等を参照するとよい。

(3) 溝形鋼材又は山形鋼の取付け

下地鋼材として用いる溝形鋼材又は山形鋼の取付けは、精度の確保が最も重要である。そのため、施工直前に位置を正確に決めることのできる、あと施エアンカー等による取付けを原則とする。しかし、エレベータシャフトのように下地が鉄骨の場合は溶接等による取付けも可能である。

(4) 工事現場でのパネルの切断

工事現場でのパネルの切断は、パネルの硬度が大きいので専用のダイヤモンドディスクカッターを用いて切断する。また、パネルヘの孔あけは、ドリルにより行う。振動ドリルを用いるとパネルが破損するおそれがあるので用いてはならない。

(5) 防火区画の形成

間仕切壁の耐火性能は、建築基準法施行令第107号の規定に基づく技術基準による。そのため、防火区画を形成する場合は、所定の耐火性能を満足するパネル及び仕様により施工する。縦張り工法の上部取付金物及び横張り工法の全ての取付金物は、建築物の階に応じて所定の耐火性能を有する耐火被覆を行う(図8.5.6参照)。

なお、100mを超える竪穴区画やハロゲン化物消火設備等を設附する防談区画において、煙等の漏えい防止対策が必要な場合には、「乾式工法を用いた防火区画等における煙等の漏えい防止対策に係る指導基準」(平成21年4月10日東京消防庁通達)を参考にするとよい。


    図8.5.6 間仕切壁の取付け例

8章 5節 押出成形セメント板 溝掘り及び開口部の処置、施工における留意点

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

5節 押出成形セメント板(ECP)

8.5.5 溝掘り及び開口部の処置

(1) パネルの表裏面に溝掘りを行ってはならない。パネルに溝を設けると、溝部において破損のおそれが大きいため溝掘りは禁止されている。

(2) 出入ロ・窓等の開口を設ける場合は、バネルに孔あけ及び欠き込みを行わない。パネル割付けの際に開口がある場合は、開口位置を図8.5.7に示すように、パネル割付けに合わせる。開口の周囲には補強材を設け、開口部にかかる風荷重は、原則として補強材によって直接躯体に伝えなければならない。


図8.5.7 窓等の開口部の設置とパネル割り

(3) 設備開口を設ける場合は、パネルに孔あけ及び欠き込みを行わない。やむを得ず、孔あけ及び欠き込みを行う場合は、欠損部分を考慮した強度計算を行い、安全が確認された大きさを限度とする。ただし、計算結果にかかわらず、孔あけ及び欠き込みの限度は、表8.5.3の数値以下とする。


表8.5.3 パネルの孔あけ及び欠き込みの限度


8.5.6 施工における留意点

(1) 計画上の留意点

(ア) 面内せん断力を負担するような箇所・取付け工法での使用は避ける。

(イ) 支持間隔や厚さにより許容荷重が異なるため、必ず強度計算を行って確認する。

(ウ) 開口部には、風圧力に見合った開口補強鋼材を用いる。

(エ) 構造体との取合い部分は、クリアランスを設ける。

(オ) 漏水に対する対策が特に必要な場合は、シーリングによる止水のみではなく、二次的な漏水対策も検討する(図8.5.8及び図8.5.9参照)。

図8.5.8 縦張り工法の二次的な漏水対策の例

図8.5.9 横張り工法の二次的な漏水対策の例

(カ) タイルをモルタルにて張り付ける場合は、タイル仕上げ用パネル(タイルベースパネル等)を用い、張付けモルタルはポリマーセメントモルタルとする。

有機系接着剤にてタイルを張り付ける場合は、フラットパネルを用い、JIS A 5557(外装タイル張り用有機系接着剤)に規定する弾性接着剤を用いる。タイル張り乾式工法の場合は、リブを設けた専用パネルを用い、専用タイルを引っ掛ける。タイルの一部は接着剤で固定する。

(キ) タイルの割付けはパネル内割付けとし、タイル及び張付けモルタルがパネル目地をまたがないようにする。

(ク) パネルにより仕切られる空間の湿度差が大きい場合は、パネルに反りが発生するおそれがある。このような場合、パネルの使用される環境条件等を考慮した取付け方法等により、反り防止対策を必ず行うようにする。

(ケ) 寒冷地等厳しい条件下で用いる場合は結露の検討も必要である。

(2) 施工上の留意点

(ア) バネル間の目地にはシーリングを行う。そのためシーリング工事の良否が壁の防水性能を左右する。バックアップ材は四角形のものを選定し、適切なシーリング材深さ(10mm以上)となるように調整し、二面接着となるように施工する(図8.5.10参照)。


         図8.5.10 パネル間目地シーリング

(イ) 取付け金物(Zクリップ)は下地鋼材に30mm以上の掛り代を確保し、取付けボルトがZクリップのルーズホール中心に位置するように取り付ける(図8.5.11参照)。

図8.5.11 Zクリップ掛り代

参考文献

9章 防水工事 1節 一般事項

第09章 防水工事

1節 一般事項
 

9.1.1 適用範囲

(a) 建築物で防水を必要とする部位は屋根、ひさし、バルコニー、外壁及び室内の水回り等である。これらの部位への防水層が必要となる。この防水層を形成するために行う工事が防水工事である。

防水工事の仕様は一般に経験と実績データによるといわれている。このことから「防水工事の仕様」は信頼性のあるものが用いられる。「標仕」に採用している仕様は材料・工法とも常に技術の進歩と実績による検証を含めて検討されたものである。このため新しい防水工法はあまり採用されていないが、これらの工法の防水性能が劣るものではない。新しい防水工法を採用する場合には、施工例等を十分検討したうえで用いるとよい。

(b)「標仕」では、メンブレン防水として、アスファルト防水、改質アスファルトシート防水、合成高分子系ルーフィングシート防水及び塗膜防水を規定している。また、地下構造物を対象とした防水としてケイ酸質系塗布防水を規定している。更に、目地防水として、不定形弾性シーリング材を用いたシーリングの規定がある。

(c) メンブレン防水工事は、不透水性被膜を形成することにより防水するものである。選定に当たっては建物の用途、規模、構造、気候及び施工条件を考慮する必要がある。更に、保全のしやすさ、耐久性等も併せて検討することが大切である。メンブレン防水層の種別選定の目安を表9.1.1に示す。

(d) ケイ酸質系塗布防水工事は、コンクリート表面にケイ酸質系塗布防水材を塗布し、その生成物でコンクリートの毛細管間隙を充填し、防水性能を付与するものである。選定に当たっては部位、用途等を考慮し、更に下地の状態に十分な配慮を行い適用する必要がある。ケイ酸質系塗布防水の適用部位は「標仕」表9.6.1を参照されたい。

(e) シーリング工事は不定形弾性シーリング材を用いて部材の接合部等を充填するものである。シーリング材の種類は被着体に適応するものを選定する。シーリング防水の種別選定の目安は7節を参照されたい。

9.1.2 基本要求品質

(a) 防水工事及びシーリング工事に使用する材料の品質は主としてJISによるものとしており、このJISに適合することの証明方法は1章4節に示すとおりである。 JISのない材料にあっては、主要な材料製造所の指定する製品としており、この指定された製品であることの確認ができる資料を提出させることによって証明ができるようにする。

(b) 防水工事及びシーリング工事は、使用する材料の品質規定だけでなく、指定材料により防水層等を構成する工程についても、官庁営繕工事の実績により「標仕」に詳細に定めている。「所定の形状及び寸法」とは出来上がった状態に対する要求であるが出来形の確認として完成した防水層を切り取ることを要求しているわけではない。品質はプロセスによってつくり込まれるという考え方に立って.定められた材料を定められた手順で施工することで結果として所定の形状及び寸法を確保するようにする。具体的には、このための管理項目、「標仕」で定める以外の詳細な手順を明確にし、プロセスの途中における施工の良否の判定基準及びこれらの限度を超えた場合の処置方法を「品質計画」において提案させるとよい。

完成した防水層やシーリングは、防水上重要あるだけでなく、出来形として見え掛り面に表れてくることから、意匠上も重要になる。このことを踏まえて「所要の仕上り状態」とは、防水機能を果たす部位としての寸法及び形状を満足するだけでなく、見え掛りとなる部分については、取り合う仕上材料とのバランスを考慮して出来形の許容範囲を具体的に定め、これを確実に実施するための管理を行うと考えればよい。

(c) 「標仕」9.1.2(a)(3)、(b)(3)でいう「漏水がない。」とは、例えば、屋上の防水の場合等に水張り試験を行って確認することを要求しているわけではなく、漏水のない品質をプロセスでつくり込むという考えが重要である。つまり、(a)及び(b)と関連して、防水工事及びシーリング工事の施工プロセスをいかに管理するかを具体的に「品質計画」で提案させ、これを実施した結果として、防水工事の基本である漏水のない建物ができると考えればよい。

9.1.3 施工一般
(a) 施工時の気象条件

(1) 防水層の施工の良否は、施工時の気象条件に大きく左右されるので十分注意する必要がある。次の場合は施工を中止する。

(i) 気温が著しく低い場合
(ⅱ) 降雨・降雪等のおそれがある場合
(ⅲ) 降雨・降雪等のあとで、下地が十分乾燥していない場合

(ⅳ) 強風及び高湿の場合

(2) 施工時の降雨、降雪に対する処置

防水施工中、降雨・降雪のおそれが生じた場合には一時中止し、既に施工した防水層について必要な養生を行う。

(b) 施工の各段階における監督職員の検査
本来期待する防水機能は、材料と工法の選択により決まるものであるが、更には、施工段階の合理的な品質管理によってつくり込まれるものである。
したがって、使用する材料の確認だけでなく、実際の施工の各段階における適切な時期に、適切な作業が行われていることを確認することが重要である。

このため「標仕」9.1.3(b)では、防水層の施工は随時検査を行うことを規定している。

(c) 防水層施工後は、機材等によって防水層を損傷しないように注意するとともに、他の工種の作業員等が防水層に上がらないようにする。やむを得ない場合は必要な養生を行う。

表9.1.1 メンブレン防水層種別選定の目安