7節 完成図等
1.7.1 完成時の提出図書
完成時の提出図書としては、完成図及び保全に関する資料がある。一つの工事が分割されて発注される場合は、一般的に工事目的物の完成時に完成図等を提出させればよいが、部分的に完成した状態で途中から受注者が変わる可能性がある場合には、部分的に完成した工事における完成範囲を表現した完成図等を提出させる必要がある。
1.7.2 完成図等
(1) 完成図は、「標仕」1.7.2(1)に「工事目的物の完成時の状態を表現したもの」と定められているとおり、設計変更の内容のほか、受注者等との協議の結果を反映したものでなければならない。また、記入内容は、特記がなければ「標仕」表1.7.1によるとしている。監督職員は、「国有財産台帳等取扱要領について(平成13年5月24日財理第1859号)」を参考に受注者等を指導して完成図を作成させ受領する。
なお、既存の完成図を修正すると特記された場合は、工事の内容を盛り込んだものに修正する。
(2) 令和4年版「標仕」では、完成図の作成方法及び提出方法は、削除された。これは、完成図を電子媒体又は紙媒体のいずれの形式とするかは、それぞれの発注者の実情に合った形式があるためであり、完成図の提出が特記されている場合は、確認して作成させる。
1.7.3 保全に関する資料
(1) 建築物等の利用に関する説明書等
「標仕」に定められている「建築物等の利用に関する説明書」(以下「説明書」という。)は、施設管理者が利用していくうえで必要な事項をまとめたものであり、工事完成後、建物とともに、その管理者に引渡しを行う。作成に当たっては、技術的知識のない事務系職員であっても理解できるよう、専門用語による記述をできるだけ避けること、写真等を使って部位と名称が明確に分かるようにするなど、平易で分かりやすい資料となるよう心掛ける。また、関連工事等にかかわる説明書との内容の調整を十分行うよう受注者等を指導するとともに、なるべく1冊にまとめるよう、関連工事等の監督職員と打合せをする。
建物使用聞始後のクレームの原因の一つに、設計者が意図した使い方と異なる使われ方がされている場合がある。作成に当たっては、この点にも配慮が必要である。
なお、国土交通省では、「建築物等の利用に関する説明書作成の手引き(本編)(平成28年12月版)」「建築物等の利用に関する説明書作成の手引き(防災編)(平成 28年12月版)」を国土交通省ホームページで紹介しているので、参考にするとよい。
記載事項は、概ね次のとおりとする。
なお、以下の記載事項には、設計者が記載する内容が含まれていることに留意する必要がある。
(a) 概要 :目的、説明書の概要
(b) 使用の手引き:設計主旨、施設概要、使用条件、使用方法、将来の改修・修繕における留意事項
(c) 保全の手引き:保全の概要、保全の方法、点検対象・周期一覧表、測定等対象・周期一覧表、取扱資格者一覧表、届出書類一覧表、設計及び工事担当者一覧表、主要な材料・機材一覧表、官公署連絡先ー買表
(d) 保全計画 :保全計画の概要、中長期保全計画、年度保全計画
(e) 保全台帳 :保全台帳の概要、建築物等の概要、点検及び確認記録、修繕履歴、その他の項目の記録
監督職員は、保全に関する資料の提出時に受注者等から内容の説明を受けるとともに、引渡しの際には、施設管理者が説明書の内容を十分理解できるよう受注者等を同席させるなど、必要な事項が伝わるよう配慮することが望ましい。
1.7.4 建設業者が営業所ごとに保管する図書
次の図書については、受注した建設工事ごとに、当該建設工市の目的物の引き渡しをしたときから10年間保管する(建設業法第40条の三)。
(ア) 完成図
(イ) 打合せ記録
(ウ) 施工体系図
参 考 文 献