1章 各章共通事項 5節 施工

建築工事監理指針 1章 各章共通事項


5節 施工

1.5.1 施 工

(1) 建築工事の施工は、工場等の流れ作業により同じ物を造るのとは異なり、建物ごとに図面が作成され、施工計画・実施工程等が組まれ、関連する他工事と調整を図りながら施工されるものであり、天候等を含め工程を阻害する要因も多く、これらにも常に対応していかなければならない。

工事における施工計画書、施工図、実施工程表等は、監督職員が一度承諾したものであっても、工事が長期にわたる場合等にあっては施工条件が変化することがある。この場合は、再度検討し変更しなければならない場合があるので、常に工事全体の状況を把握しておく必要がある。

(2) 工事の施工に当たり、施工方法が設計図書に定められている場合は、これを遵守することはもちろんであるが、工法について指定されていないものは、受注者に施工方法等は任されている(契約書第1条第3項)。その場合は関連する他の工事との調整を図り、設計の意図する機能を満足するものであるか、十分に検討する必要がある。

関連する設備工事等で、コンクリート打込み等により隠ぺい状態となる部分の施工は、当該関連工事等の施工の検査が完了するまで行わないことになっている。しかし、「関連工事の検査」が工程の都合等により行い難い場合には、設備工事の監督職員等関係者と打ち合わせ、工事写真等による記録を残して工事を進めることができる(契約書第14条第5項及び「標仕」1.5.1(2))。

1.5.2 技能士

(1) 技能士とは、「職業能力開発促進法」(昭和44年法律第64号)に基づき労働者の有する技能を検定(技能検定)し、この合格者に対して与えられる称号であり、検定職種ごとに特級、一級、二級、三級等に区分するものと、単一等級として等級を区分しないものがある。「標仕」では、このうちの一級技能士又は単一等級の有資格者を、施工品質の向上を図る目的で自ら作業するとともに作業指導を行う者としている。

なお、単一等級としては、ALCパネル施工、樹脂接着剤注入施工等がある。

(2) 技能検定試験の程度は、特級は一級技能士合格後技能労働者として5年以上の実務経験の者が通常有すべき技能の程度、ー級は技能労働者として7年以上の実務経験の者が通常有すべき技能の程度、二級は技能労働者として2年以上の実務経験の者が通常有すべき技能の程度、三級は技能労働者として6箇月以上の実務経験の者が通常有すべき技能の程度であり、単一級は一級と同程度の技能を有する者とされている。

(3) 参考資料の資料2に建槃工事関連の技能検定職種(36職種)の一級及び単ー等級の技能検定合格者数を掲載している。

1.5.3 技能資格者

(1) 建物の構造耐力を左右する重要な部分の施工に当たっては、十分な能力を有する者が施工を行うことにより品質・性能の確保を図る必要がある。また、特殊な技術力が必要な超音波探傷試験等では、試験担当者の技量要件を明確にして、品質確認の信頼性を確保することが重要である。このため「標仕」では、(2)の(ア) から(キ) までに示す部分の施工については一定の技量を有する者が施工を行うとしている。

なお、技能資格者は、施工中、有資格者であることが分かるようにしておく必要がある。

(2) 技能資格者とは、平成8年9月の閣議決定「公益法人に対する検査等の委託等に関する基準」に基づき、技量や技術の判定基準等を示し、これを満たす者としている。

なお、「標仕」で規定している技能資格者には、次のようなものがある。
(ア) 杭の継手の溶接を行う技能資格者(4.3.7参照)
(イ) 鉄筋のガス圧接及び溶接継手の作業を行う技能査格者(5.4.2、5.6.2参照)
(ウ) 鉄筋のガス圧接、機械式継手及び溶接継手の試験を行う技能資格者(5.4.3、5.5.3、5.6.4参照)
(エ) 鉄筋、鉄骨等の溶接作業を行う技能資格者(4.5.3、7.6.3参照)
(オ) 鉄骨の溶接部の試験を行う技能資格者(7.6.11参照)
(カ) スタッド溶接作業を行う技能資格者(7.7.2参照)
(キ) 溶融亜鉛めっき高カボルトの締付け作業を行う技能資格者(7.7.2参照)

(3)「標仕」では規定されていないが、現場における作業管理・調整能力等に優れていると認められた技能資格者として登録基幹技能者がいる。

登録基幹技能者とは、現場施工における十分な経験を有し、上級の職長として技術者及び他の職長との調整能力、一般の技能者に対する施工管理・指導能力に優れ、建設生産現場において要となる技能者のことである。

基幹技能者の資格制度については、国土交通省が「建設産業政策大綱」(平成7年)以来、その整備を促進しており、平成8年「建設産業人材確保・育成推進協議会」において策定された「基幹技能者の確保・育成・活用に関する基本指針」に基づいて、各専門工事業団体が独自に資格の認定を行っている。令和4年3月末現在、40職種で登録基幹技能者に係る民間資格が整備されている。

登録基幹技能者制度は、平成20年4月1日から、建設業法施行規則に登録講習制度として位置付けられた。同日以降に国土交通大臣に登録をした機関が実施する登録基幹技能者講習を終了した者(登録基幹技能者)は、新たに経営事項審査で加点評価されることとなった。

登録基幹技能者制度のより一層の普及・活用と、可能な限り信頼性・専門性の高い公的資格保有者の配置を推進していく観点から、登録基幹技能者のうち、専門工事に関する実務経験年数が、建設業法(昭和24年法律第100号)に定める主任技術者と同等以上と認められるものについて、主任技術者の要件を満たす者として位置付けることとし、建設業法施行規則及び施工技術検定規則の一部を改正する省令(平成29年国土交通省令第67号)により、許可を受けようとする建設業の種類に応じて国土交通大臣が認める登録基幹技能者については、主任技術者の要件を満たすとされた。

1.5.4 ー工程の施工の確認及び報告

(1) 施工の管理は、ー工程の施工の確認の積重ねであり、この確認及び報告をスムーズに行うことが品質管理の最大のポイントである。

ー工程が完了した場合は、速やかに、受注者等の自主検査として設計図書に指定されたとおりであることを計測等により確認させ、監督職員に文書により報告させる。これを受け監督職員は、施工検査を行う。

(2) この報告をスムーズに行えるようにするためには、施工計画書作成の中で、出来上りに対する許容差、計測の方法、それらを記入する報告書の書式等を品質計画として定めておく。

(3) 品質管理の責任を明確にするため、「標仕」1.5.4での確認及び報告は、監督職員が承諾した者が行うとしている。一般的には、建設業法で現場専任が義務付けられている(1.3.1(ア)(d)参照)主任技術者又は監理技術者がこの任に当たることを想定している。

1.5.5 施工の検査等

(1) 「標仕」の施工の検査は、監督職員の検査について定めたものであり、工程の進捗状況を見ながら、施工後の検査・確認が困難なものにあっては、作業中でも時期を失せず検査を行う必要がある。

(2) 「標仕」では、同一の材料・工法等で繰り返し施工する場合で、最初に監督職員が検査を行い、一定の品質を確保できると判断される場合は、以降を抽出検査として監督職員の検査の合理化を図っている。ただし、施工の品質は材料の品質と比べるとばらつきが大きいことが予想されるので、監督職員が必要と認める場合は、随時受注者等に指示し検査を行うことができるとしている。

(3) 見本施工は、施工手順を含めた仕上り程度を見るために実施することが特記された場合に限り行うものであり、場合によっては監督職員及び設計担当者の立会いのもとに施工することもあるので注意する。

1.5.6 施工の検査等に伴う試験

(1) 施工の検査等に伴う試験は、設計図書に定められた品質及び性能を有することが試験によらなければ証明できない場合に行うものであり、設計図書で設定されている場合と、品質計画による監督職員と受注者等の合意により行う場合とがある。

(2) 施工の検査に伴う試験といえども破壊試験は極力避け、工事写真又は非破壊試験として超音波探傷・磁気探査等の工学試験器による判定とし、やむを待ず破壊試験を行う場合は、最小限の破壊試験で判定する。

(3) 試験により材料の品質性能を確認する場合の注意事項は、1.4.5 (6)による。

1.5.7 施工の立会い等

監督職員の重要な業務は施工の確認である。確認の方法には様々なものがあるが、設計図書に規定された必要事項を確認するため、現場において施工の立会いを行うことは有効なことといえる。しかし、立会いを行うに当たっては、適切な時期に行うことが重要であり、時期を失すると意味のないものとなる。このため、立会いの日時について早めに受注者等と打合せを行い、必要な指示をする。
なお、監督職員の都合により適切な時期に立会いができない場合には、その後の工程に支障を来すので、契約書第14条で設計図書に指定されている場合でも、監督職員の立会いを受けることなく施工を行うことができるとしている。ただし、この場合は受注者等に対して、施工を適切に行ったことを証明する記録を整備し、監督職員の求めに応じて提出させる必要がある。

1.5.8 工法等の提案

(1) 契約後のVE提案(VECP : Value Engineering Change Proposal)は、施工の合理化及びコストの縮減という観点から提案されるものであるが、ここでは、施工方法の代案で、安全、かつ、合理的なものについて提案された場合は、監督職員はそれを受け協議することになっている。所要の品質及び性能が確保されるのは当然であるが、明らかに工事費が異なる場合には設計変更の処理を行う。

(2) 現在、地球規模で環境問題が顕在化する中で、開発と環境を十分調和させながら豊かな環境を創造していくことが課題となっている。

このため、「環境基本計画」(平成24年4月 閣議決定)、「地球温暖化対策推進大綱」(平成14年3月地球温暖化対策推進本部決定)、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(平成12年5月法律第104号、最終改正令和3年5月19日)等が策定された。

官庁施設整備に当たっては、従来から環境負荷の低減に資する技術を積極的に採用してきたところであるが、さらに、この目的に合った民間の開発した新技術を発展させる目的から「標仕」の規定で環境保全に有効な工法について提案があれば協議すると定められている。この場合、環境保全に有効な工法における材料は、原則として、指定されたものを用いることとなっている。

(3) 「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)において、建設業については、一定の猶予期間を置いたうえで、時間外労働の罰則付き上限の制限の一般則を適用するとされた。これを受け、国土交通省では、平成29年6月に「建設業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」、同年7月には、「建設業の働き方改革に関する協議会」が設置された。これらの会議における議論も踏まえ、国土交通省大臣官房官庁営繕部では営繕工事における働き方改革に向け、各種取組を実施するとしており、生産性向上については、施工合理技術の施工者提案を積極的に活用するとしている。

i-Construction(アイ・コンストラクション)の推進等の政府の方針を路まえ、所要の品質及び性能が確保され、現場の生産性向上に有効な工法について、受注者からの提案があれば協議することを定めたものである。

1.5.9 化学物質の濃度測定

(1) 「標仕」では、建築物の室内空気中に含まれるホルムアルデヒド等の化学物質の濃度測定を実施する場合は、次の事項について特記するとされている。

(ア) 濃度測定実施の時期(記載例:施工完了時)
(イ) 測定する化学物質の種類(記載例:ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン)
(ウ) 測定方法(記載例:パッシプ型採取機器により行う。)
(エ) 測定対象室及び測定箇所数(記載例:測定対象室(図示)、測定箇所数(図示))

(2) 濃度測定の測定結果は、まとめて提出を受ける。

(3) 濃度測定の具体的な方法等に関しては、原生労働省ホームページの「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」に、技術資料が掲載されている。

1章 各章共通事項 6節 工事検査及び技術検査

建築工事監理指針 1章 各章共通事項


6節 工事検査及び技術検査

1.6.0 「標仕」における検査の定義

「標仕」において検査と称されているものは、次のように分類される。

(ア) 公共工事の発注者(検査職員)が、会計法や地方自治法に基づく請負契約についての給付の完了の確認をするため必要な検査(会計法第29条の11)
(イ) 公共工事の発注者(技術検査官)が、公共工事品確法及び入契適正化法に基づいて行う技術的検査
(ウ) 監督職員が工事を監督していく過程で行う検査・確認
(エ) 建築主事又は消防等の行政機関が行う検査
(オ) 受注者が施工管理や品質管理のために工事材料や下請負の専門工事業者に対して行う受入検査
(カ) 下請負の専門工事業者が行う自主検査

(ア) は、受注者への支払いの適否を確認する検査で、会計法(地方自治法)上、規定された検査職員が行う。この検杢は「工事検査」と称され、工事が完成したときの「完成検査」、設計図書において工事の完成に先立って引渡しを受けるべきことを指定した部分(指定部分)「完済部分検査」及び受注者が請求した部分払の対象を確認するときの「既済部分検査」の三つがある。

(イ) は、工事の施工において、技術的観点から工事中及び完成時の施工状況の確認及び評価を行う技術検査をいう。技術検査は、原則として「工事検査」時に実施するが、必要に応じて、工事の施工途中でも実施する場合がある。その例としては、出来形及び品質を確認するうえで重要となる時期や発注者が特に必要と認めた時期(事故発生時等)がある(中間技術検査)。

(ウ) は、監督職員が工事監督の一環として行う確認を中心とした行為であり、「標仕」では「監督職員の検査」という用語として定義し、(ア) と(イ) とは異なるものとしている。「標仕」の2章以降の各章において、この「監督職員の検査」という用語は頻繁に出てくるが、配筋検査等がこれに該当する。

建築においては、実際の施工を行うのはほとんどの場合が、専門工事業者である。監督職員は、直接の契約相手先ではない専問工事業者に対して検査(確認)を行うのではなく、受注者等が元請けとして確認したものを検査する。また、(ウ) の前に行う元請けとして専門工事業者の施工内容をチェックし合否の判断を下す行為が、(オ) の受入検査である。一方、これに先立ち専門工事業者が自ら施工段階に行う検査が(カ) の自主検査であり、鉄骨製作工場において工場の品質管理担当者が行う製品検査がこれに該当する。

1.6.1 工事検査

工事検査は、発注者が自ら又はその補助者(検査命令を受けた検査職員)が会計法又は地方自治法に基づき請負契約についての給付の完了の確認を行うために受注者に対して行う検査である。民間工事では、一般的に、工事監理者が工事の検査を施主に代わって行うが、予算決算及び会計令(昭和22年4月)では検査を行う者(検査職員)と監督職員との兼職を禁止しているので、原則として監督職員が工事検査を行うことはできない。

工事検査は、「標仕」1.1.2(ナ) に記述してあるように、
(ア) 工事が全て完成した場合(「標仕」1.6.1(1))
(イ) 指定部分の工事が完成した場合(「標仕」1.6.1(1))
(ウ) 契約書の規定により受注者から部分払の請求があった場合(「標仕」1.6.1(2))

この三つの場合に実施される。工事がそれぞれ該当する要件に達したときに受注者は監督職員を通して工事の完成等を通知することになっている。検査に先立ち監督職員は、検査に必要な設計図書類、工事関係図苫等がきちんと整備されていることを確認しておく必要がある。

なお、契約書第32条第3項のとおり、受注者は、工事検査に必要な資機材、労務等を提供する。また、契約書第32条第2項では、発注者又は検査職員は、必要があると認められるときは、その理由を受注者に通知して、工事目的物を最小限度破壊して検査することができ、この場合においての、検査又は復旧に直接要する費用は、受注者の負担としている。

1.6.2 技術検査

技術検査は、公共工事品確法及び入契適正化法に基づき、技術的観点から行う検査である。「標仕」1.1.2(ニ) では、技術検査は「公共工事品確法に基づき、工事中及び完成時の施工状況の確認及び評価をするために発注者又は検査職員が行う検査をいう。」と定義している。地方整備局工事技術検査要領においては、1.6.1の「検査職員」としてではなく、技術検査適任者である「技術検査官」が行うとしているが、通常、「検査職員」と同一の職員が行っている。その実施については、「標仕」1.6.2 (1)で規定されているように工事検査と併せて行われるもの、中間技術検査として行われるものがある。

このうち、中間技術検査はその性格上、工事の適切な時期に行う必要があるため、他の技術検査と異なり受注者等の意見を聞いて検査日を決めることになる。
技術検査は、国土交通省では、地方整価局工事技術検査要領において、工事の適正、かつ、能率的な施工を確保するとともに工事に関する技術水準の向上に資することを目的として実施される検査と定めている。

1.6.3 工事成績

技術検査を終了した場合、技術検査官は、地方整備局工事技術検査要領(第6工事成績の評定)及び請負工事成績評定要領に基づき工事成績を評定する。また、工事完成時には、工事中の施工状況を把握する者(技術評価官)も工事成績評定を実施し、工事成績及び工事の技術的難易度の評定結果を工事完成後に受注者に通知することを地方整備局の所掌する直轄事業については、請負工事成績評定要領に定めている。

1章 各章共通事項 7節 完成図等

建築工事監理指針 1章 各章共通事項


7節 完成図等

1.7.1 完成時の提出図書

完成時の提出図書としては、完成図及び保全に関する資料がある。一つの工事が分割されて発注される場合は、一般的に工事目的物の完成時に完成図等を提出させればよいが、部分的に完成した状態で途中から受注者が変わる可能性がある場合には、部分的に完成した工事における完成範囲を表現した完成図等を提出させる必要がある。

1.7.2 完成図等

(1) 完成図は、「標仕」1.7.2(1)に「工事目的物の完成時の状態を表現したもの」と定められているとおり、設計変更の内容のほか、受注者等との協議の結果を反映したものでなければならない。また、記入内容は、特記がなければ「標仕」表1.7.1によるとしている。監督職員は、「国有財産台帳等取扱要領について(平成13年5月24日財理第1859号)」を参考に受注者等を指導して完成図を作成させ受領する。

なお、既存の完成図を修正すると特記された場合は、工事の内容を盛り込んだものに修正する。

(2) 令和4年版「標仕」では、完成図の作成方法及び提出方法は、削除された。これは、完成図を電子媒体又は紙媒体のいずれの形式とするかは、それぞれの発注者の実情に合った形式があるためであり、完成図の提出が特記されている場合は、確認して作成させる。

1.7.3 保全に関する資料

(1) 建築物等の利用に関する説明書等
「標仕」に定められている「建築物等の利用に関する説明書」(以下「説明書」という。)は、施設管理者が利用していくうえで必要な事項をまとめたものであり、工事完成後、建物とともに、その管理者に引渡しを行う。作成に当たっては、技術的知識のない事務系職員であっても理解できるよう、専門用語による記述をできるだけ避けること、写真等を使って部位と名称が明確に分かるようにするなど、平易で分かりやすい資料となるよう心掛ける。また、関連工事等にかかわる説明書との内容の調整を十分行うよう受注者等を指導するとともに、なるべく1冊にまとめるよう、関連工事等の監督職員と打合せをする。

建物使用聞始後のクレームの原因の一つに、設計者が意図した使い方と異なる使われ方がされている場合がある。作成に当たっては、この点にも配慮が必要である。

なお、国土交通省では、「建築物等の利用に関する説明書作成の手引き(本編)(平成28年12月版)」「建築物等の利用に関する説明書作成の手引き(防災編)(平成 28年12月版)」を国土交通省ホームページで紹介しているので、参考にするとよい。

記載事項は、概ね次のとおりとする。
なお、以下の記載事項には、設計者が記載する内容が含まれていることに留意する必要がある。

(a) 概要    :目的、説明書の概要
(b) 使用の手引き:設計主旨、施設概要、使用条件、使用方法、将来の改修・修繕における留意事項
(c) 保全の手引き:保全の概要、保全の方法、点検対象・周期一覧表、測定等対象・周期一覧表、取扱資格者一覧表、届出書類一覧表、設計及び工事担当者一覧表、主要な材料・機材一覧表、官公署連絡先ー買表
(d) 保全計画  :保全計画の概要、中長期保全計画、年度保全計画
(e) 保全台帳  :保全台帳の概要、建築物等の概要、点検及び確認記録、修繕履歴、その他の項目の記録

監督職員は、保全に関する資料の提出時に受注者等から内容の説明を受けるとともに、引渡しの際には、施設管理者が説明書の内容を十分理解できるよう受注者等を同席させるなど、必要な事項が伝わるよう配慮することが望ましい。

1.7.4 建設業者が営業所ごとに保管する図書
次の図書については、受注した建設工事ごとに、当該建設工市の目的物の引き渡しをしたときから10年間保管する(建設業法第40条の三)。

(ア) 完成図
(イ) 打合せ記録
(ウ) 施工体系図

参 考 文 献

一次対策 建築学

1.建築学
1°.計画原論
 1-1.換気
 1-2.伝熱・結露
 1-3.日照・日射・日影
 1-4.採光・照明
 1-5.音に関すること
 1-6.マンセル表色系

2°.一般構造
 2-1. 建築物に加わる荷重、外力
 2-2.基礎構造
 2-3.鉄筋コンクリート構造1
 2-4.鉄筋コンクリート構造2
 2-5.鉄骨構造1
 2-6.鉄骨構造2

3°.建築材料
 3-1.セメント・骨材・コンクリート
 3-2.鋼材
 3-3.建築用ガラス
 3-4.防水材料
 3-5.シーリング材
 3-6.石材・左官材料
 3-7.床材料・屋根材料
 3-8.ボード類

学科 建築学 計画原論 1-1 換気

1級建築施工管理技士 学科対策 過去問題
【 重要ポイント 】

1.建築学
1°.計画原論

1-1.換気
下記の正誤を判断せよ。

①建材や接着剤などから発生するホルムアルデヒドは、室内空気汚染の原因となり、室内空気環境を評価するための対象物質の一つである。

答え

 ◯

②室内の許容二酸化炭素濃度は、一般に10,000ppn( 1% )とする。

答え

 ×

[ 解説 ]
二酸化炭素濃度(含有量)は、1000ppm以下
一酸化炭素濃度(含有量)は、10ppm以下

③第2種機械換気方式は、室内圧を負圧に保つことができるので、クリーンルームや病院の手術室などに用いられる。

答え

 ×

[ 解説 ]
第2種機械換気方式は、給気は給気機等の機械で行い、排気は自然排気とする方式で、クリーンルーム、手術室、ボイラー室、発電室等に使用し、室内圧正圧となる。

第3種機械換気方式は、自然給気と排気機による換気方式で、浴室便所などに用いられる。

④室内外の温度差による自然換気量は、他の条件が同じであれば、流入口と流出口の高低差が大きいほど多い。

答え

 ◯

[ 解説 ]
温度差による自然換気の場合、室内外の圧力差が0になる垂直方向の位置を中性帯といい、この部分に開口部を設けても換気はほとんど起こらない。

⑤風上側と風下側に外部開口部をもつ室における、風力による自然換気量は、風向きが一定であれば、外部風力に比例する。

答え

 ◯

[ 解説 ]


風圧力による換気量は、他の条件が同じであれば、
風上側と風下側の風圧係数の差(Cf −Cb)の平方根比例する。

⑥静穏時の呼吸による二酸化炭素濃度をもとにして定めた場合、成人一人あたりの必要換気量は、30m3/h程度。

答え

 ◯

⑦在室者の呼吸による必要換気量は、室内の二酸化炭素発生量を、室内の許容二酸化炭素発生量を室内の許容二酸化炭素濃度と外気の二酸化炭素濃度の差で除して求める。

答え

 ◯

[ 解説 ]
必要換気量は、室内の空気環境を良好な状態に保つために必要とされる最小限の取入れ外気量である。

一次検定 建築学 計画原論 1-2 伝熱・結露

1級建築施工管理技士 学科対策 過去問題
【 重要ポイント 】

1.建築学
1°.計画原論

1-2,伝熱・結露
下記の正誤を判断せよ。

①壁体の熱貫流抵抗は、熱伝達抵抗と熱伝導抵抗の和によって得られる。

答え

 ◯

②壁体の含湿率が増加すると、壁体の熱伝導率は小さくなる。

答え

 ×
[ 解説 ]
壁体内に含まれる空気は熱伝導率は小さいが、含湿率増加することにより、水分を含ことににあるので熱伝導率大きくなり、結露の原因ともなる。

 

③外断熱の施された熱容量の大きな壁は、室温の著しい変動の抑制に有効である。

答え

 ◯

④外皮平均熱貫流率は、建物の断熱性能評価の指標であり、この値が小さいほど断熱性能が高い。

答え

 ◯

⑤相対湿度は、湿り空気中に含まれている水蒸気分圧のその温度における飽和水蒸気分圧に対する割合で示される。

答え

 ◯

⑥露点温度とは、湿り空気が冷やされて空気中に存在する一部の水蒸気が凝縮し水滴となり始める温度をいう。

答え

 ◯

⑦絶対湿度を一定に保ったまま乾球温度を上昇させると、相対湿度は高くなる。

答え

 ×

[ 解説 ]
水蒸気量に変化がなく、気温を上昇させると、相対湿度低くなる

⑧冬季の暖房時に、外壁出隅部の室内側は、温度が低下し結露しやすい。

答え

 ◯

[ 解説 ]
壁体比べ大きな熱伝導率を持つ部材が壁内部にあると熱が集中して流れ、熱橋となり結露しやすい

⑨表面結露は、壁面で空気が冷却され露点温度以下になると壁表面に生じる。

答え

 ◯

⑩内部結露は、壁体内部の水蒸気圧が温度に応じた飽和水蒸気圧より低い場合に生じる。

答え

 ×

[ 解説 ]
内部結露は、壁体内部の水蒸気圧が、壁体内部の温度に応じた飽和水蒸気圧より高い場合に生じる

一次検定 建築学 計画原論 1-3.日照・日射・日影

1級建築施工管理技士
学科対策 過去問題【 重要ポイント 】

1.建築学
1°.計画原論

1-3.日照・日射・日影
下記の正誤を判断せよ。

①日照率とは、1日(24時間)に対する日照時間の比を百分率で表した値である。

答え

 ×

[ 解説 ]
日照率 = 日照時間/可照時間 × 100 (%)
日の出から日没までの時間を可照時間、
実際に日照のあった時間を日照時間という。
1日(24時間)に対する比ではない。

②同じ日照時間を確保するためには、緯度が高くなるほど南北の隣棟間隔を大きくする必要がある。

答え

 ◯

③建物の高さを高くした場合、日影は遠くに伸びるが、一定の高さを超えると長時間影となる
範囲はあまり変化しない。

答え

 ◯

④日差し曲線は、地平面上のある地点が周囲の建物によって、日照時間にどのような影響を受けるか検討するのに用いられる。

答え

 ◯

⑤日照図表を用いると、冬至などの特定日に、対象となる建物が特定の地点に及ぼす日照の影響を知ることができる。

答え

 ◯

⑥南面の垂直壁の可照時間は、春分より夏至の方が長い。

答え

 ×

[ 解説 ]
北緯35°付近の終日の直達日射量の変化は、下記。

・南面の垂直壁の可照時間は、春秋分では12時間夏至では7時間なので、春分より夏至の方が短い。

・夏至における南向き鉛直面の終日の直達日射量は、水平面の直達日射量より大きい。

東向き鉛直面西向き鉛直面終日の直達日射量は、季節にかかわらず同じ。

⑦冬至における南向き鉛直面の終日の直達日射量は、水平面の直達日射量より大きい。

答え

 ◯

⑧東向き鉛直面と西向き鉛直面の終日の直達日射量は、季節にかかわらず西向きの鉛直面のほうが大きい。

答え

 ×

[ 解説 ]
東向き鉛直面西向き鉛直面終日の直達日射量は、季節にかかわらず同じ。

⑨建物の高さが同じである場合、東西に幅が広い建物ほど影の影響の範囲が大きくなる。

答え

 ◯

[ 解説 ]
東西に隣接した建物間の北側の少し離れた場所に生じる。
長時間日影となる領域を、島日影という。

⑩ブラインドは、窓面の内側より外側に設置するほうが室内への熱負荷を軽減できる。

答え

 ◯

[ 解説 ]

一次検定 建築学 計画原論 1-4.採光・照明

1級建築施工管理技士
学科対策 過去問題【 重要ポイント 】

1.建築学
1-4.採光・照明

下記の正誤を判断せよ。

①全天空照度とは、天空光が遮断されることのない状況で、直接日光を除いた全天空による、ある点の水平面照度をいう。

答え

 ◯

[ 解説 ]
照度とは、受照面の単位面積当たりの入射光束。

②光度とは、反射面を有する受照面の光の面積密度をいう。

答え

 ×

[ 解説 ]
光度とは、点光源のある方向の光の強さを示す量

③昼光による室内の採光では、一般に天空光を活用することを考える。

答え

 ◯

[ 解説 ]



昼光率D = E/Es × 100 (%)
室内の採光計画においては、一般に変動しない明るさの指標である昼光率を用いる。

④昼光率とは、全天空照度に対する室内のある点の天空光による照度の比をいう。

答え

 ◯

⑤ある点における間接昼光率は、壁や天井などの室内表面の反射率の影響を受ける。

答え

 ◯

⑥形状と面積が同じ側窓は、その位置を高くしても、昼光による室内の照度分布の均斉度は変わらない。

答え

 ×

[ 解説 ]
均斉度は、室内の明るさが均一かどうかを知るための指標で、室内の最大照度と最小照度の比。窓が高い位置にあるほど窓付近と室奥との照度差が少なくなるので明るさが均一となり、均斉度上がる。窓が低い位置にある場合は、窓直下の照度が最大となり室奥にいくにしたがって急激に照度が小さくなるかめ、照度差が大きく均斉度が小さくなる。

天窓は側窓に比べて採光量や照度分布等が優れている。建築基準法では、天窓の面積は側窓の3倍の面積に相当するとみなす。

⑦人工照明は、人工光源の直接光と反射光を利用して行われる。

答え

 ◯

⑧グレアとは、高輝度な部分、極端な輝度対比や輝度分布などによって感じられるまぶしさをいう。

答え

 ◯

一次検定 建築学 計画原論 1-5.音に関すること

1級建築施工管理技士
学科対策 過去問題【 重要ポイント 】

1.建築学
1-5.音に関すること

下記の正誤を判断せよ。

①室内の向かい合う平行な壁の吸音性が高いと、フラッターエコーが発生しやすい。

答え

 ×

[ 解説 ]
室内の天井と床、両側の壁などが互いに平行でかつ反射材料でできている場合、音の反射が規則的に繰り返され、二重、三重に聞こえる現象を、フラッターエコー(鳴き竜)という。室内の向かい合う平行な壁の吸音性高いと、発生しにくい

②障害物が音波の波長より小さいと、音波が障害物の背後に回り込む現象を回折という。

答え

 ◯

[ 解説 ]
音波の回折現象は、障害物がその波長より小さいと起こりやすい。

③聞こうとしている音が、それ以外の音の影響によって聞きにくくなることをカクテルパーティ効果という。

答え

 ×

[ 解説 ]
カクテルパーティ効果とは、2つ以上の音を同時に聞いているとき、その中の1つの音を選択して、聴取できることをいう。
設問の記述は、マスキング現象

④無指向性の点音源からの音の強さは、音源からの距離の二乗に反比例する。

答え

 ◯

[ 解説 ]
音の強さ ∝ 1/ ℓ2

⑤同じ音圧レベルの騒音源が2つになった場合、音圧レベルは1つの場合より約3dB大きくなる。

答え

 ◯

⑥室内騒音の程度を評価するためにNC値が用いられるが、NC値は大きいほど静かに感じる。

答え

 ×

[ 解説 ]
騒音のオクターブバンドごとの音圧レベルの測定結果を図にプロットしてすべての点を上回る最小の曲線をNC値を呼び、大きいほど許容する騒音はうるさく感じる

⑦吸音率は、壁などの境界面に入射する音のエネルギーに対する反射されなかった音のエネルギーの比で表される。

答え

 ◯

⑧同じ透過損失の値をもつ2枚の壁を一定の距離以上に離すと、1枚の時に比べて透過損失は2倍の値となる。

答え

 ◯

[ 解説 ]
床衝撃音レベルの遮音等級と表すL値は、値が小さいほど遮音性能高い

⑨コンクリート間仕切り壁の音の透過損失は、一般に高周波数域より低周波数域のほうが大きい。

答え

 ×

[ 解説 ]
コンクリート間仕切り壁の透過損失は、低周波数域より高周波数域の方が大きい

⑩残響時間とは、音が鳴り止んでから、はじめの音圧レベルより60dB減衰するのに要する時間のことをいう。

答え

 ◯

[ 解説 ]
残響時間は、室容積比例し、室内の総吸音力反比例する。

一次検定 建築学 計画原論 1-6.マンセル表色系

1級建築施工管理技士
学科対策 過去問題【 重要ポイント 】

1.建築学
1-6.マンセル表色系

下記の正誤を判断せよ。

①マンセル色相環において、対角線上にある2つの色は、補色の関係にある。

答え

 ◯

[ 解説 ]
マンセル色相環では、RとBG、YRとB等のように向かい合わせの色どうしは補色になっており、向い合う色相は、混色すると無彩色になる。

②明度は、色の明るさを表し、理想的な黒を10とし、理想的な白を 0 として、10段階に分けている。

答え

 ×

[ 解説 ]
マンセル表色系では、無彩色は記号Nと明度だけで表す。
(例)白:N9、灰:N5、黒:N1
明度は理想的な黒を0、理想的な白を10として、0〜10の11段階に分ける。
しかし、実際には理想的な黒や白は得られないので、1〜9の値になる。

③彩度は、色の鮮やかさの程度を表し、マンセル色立体では、無彩色軸からの距離で示す。

答え

 ◯

[ 解説 ]
中心の無彩色軸から距離が離れるほど、鮮やかさが増す。

④鮮やかさが増すにつれて、彩度を表す数は大きくなる。

答え

 ◯

[ 解説 ]
中心の彩度は0であり、中心から離れるほど鮮やかさが増し、数値も大きくなる。

⑤マンセル記号「5Y8/10」のうち、数値「8」は明度を表す。

答え

 ◯

[ 解説 ]
マンセル記号「 5Y8/10」を表し、5Yは色相、8は明度、10は彩度を示している。
(覚え方)マンセルの 鮮やか
マンセル色立体



⑥「5R6/10」の記号のうち、「5R」は色相を表す。

答え

 ◯

[ 解説 ]
マンセル記号「 5R6/10」を表し、5Rは色相、6は明度、10は彩度を示している。