2章 仮設工事 1節 共通事項

2章 仮設工事


1節 共通事項

2.1.1 一般事項

(1) 仮設については、公共工事標準請負契約約款に基づく工事請負契約書第1条第3項において、「仮設、施工方法その他工事目的物を完成するために必要な一切の手段については、この契約書及び設計図書に特別の定めがある場合を除き、受注者がその責任において定める。」と規定しており、受注者がその責任において履行することができる。

したがって、「標仕」2章では、工事の施工に当たり発注者として示すべき最低限の事項について規定している。

(2) 仮設工事計画に当たっては、仮設物によって建物の品質を損なうことなく、安全で効率的な作業を行えるよう検討する必要がある。また、現場近隣の環境保全に配慮するとともに、仮設資材の有効活用も省資源対策上必要である。

(3) (1)で述べたとおり仮設計画は監督職員の承諾事項ではないが、参考までに工事の総合仮設をまとめた施工計画書の記載事項を示すと、概ね次のようになる。

① 工事目的物の位置と敷地との関係(配置と高低)
② 仮囲いの位置、構造及び主要部材の種類
③ 材料運搬経路と主な作業動線
④ 仮設物等の配置(監督職員事務所、受注者事務所、休憩所、危険物貯蔵所、材料置場、下小屋、廃棄物分別置場等)
⑤ 排水経路、工事用電力並びに水道の引込み位置及び供給能力
⑥ 足場並びに仮設通路の位置、構造及び主要部材の種類
⑦ 揚重機(リフト、クレーン、エレベーター、ゴンドラ等)の種類及び配置
⑧ 作業構台の位置、構造及び主要部材の種類
⑨ 墜落防止及び落下物防止並びに感電防止の施設
⑩ 近隣の安全に対する処置(近隣使用道路の配置計画図等)

2.1.2 仮設材料

(1) 一般事項

仮設に使用する材料は、それぞれの用途に応じ、品質、性能等が適正でなければならない。一般に仮設材料は、工事現場において長期間にわたり、かつ、繰り返し使用されることから、品質の確認が容易で性能の低下が生じにくいものでなければならない。

また、仮設材料には、その品質又は使用方法等について労働安全衛生法、消防法、 JIS (日本産業規格)、その他団体等の定める基準による規制等を受けるものがあるので、これらについてあらかじめ検討・確認しておくことが必要である。

特に、足場を構成する仮設機材については、長期間繰り返して使用されるうちにその強度が低下し倒壊事故等重大な災害につながるところから、労働安全衛生法令及び厚生労慟大臣が定める規格に規定される要件を具備するものを使用することが必要である。また、生産、流通段階での安全性の確保を図るために、(-社)仮設工業会では仮設機材に対し、材科、構造及び強度等を規定した認定基準を定めている。

さらに、経年仮設機材(現場で一度でも使用されたことのある仮設機材)が、繰り返し使用されている間の品質、性能等確保のために、原生労働省から経年仮設機材の適正な管理のための通達「経年仮設機材の管理指針」(平成8年4月4日労働省基発第223号の2)(以下、この章では「管理指針」という。)が示されている。

(2) 仮設機材の強度等の確認及び適正な管理
作業現場の安全確保には、仮設機材の製造時における強度等の確認・保証及び経年仮設機材の適正な管理が重要である。仮設機材の強度等の確認・保証について、(-社)仮設工業会では、製造時における足場用機材は、厚生労働大臣が定める規格及び認定基準に適合する旨を、刻印等により機材の全数に表示することを行っている。その表示等は、機材の種類により表2.1.1のとおりである。

なお、足場用機材の規格等に定めるもの以外のものの使用に当たっては、当該機材の製造者あるいは使用者により強度等について確認されたものであることが必要である。

現在製造されている主要な仮設機材は、防錆処理としてめっき、特に、浴融亜鉛めっきが施されているため、錆による肉厚の減少の懸念が少なくなった一方で、より長期にわたって使用される傾向となっており、経年による性能低下がないように適正に管理された仮設機材の使用が必要となる。仮設機材は、変形(曲がり、へこみ、反り等)及び損傷(亀裂、摩耗等)が直接性能低下の要因となるので、経年仮設機材の適正な管理は欠かすことができない。

このことから、厚生労働省の管理指針で規定している経年仮設機材に対して行う管理は、各機材ごとに定められた部位及び項目ごとに変形、損傷、錆等の程度による「選別」、経年仮設機材をいつでも使用できる状態に保持するための「整備」、機材を再使用可能な状態に復元する「修理」(部品交換を含む。)、さらに、性能試験、廃棄及び表示にわたるまで一連の管理基準等が明らかにされている。管理指針に基づき、(-社)仮設工業会では、仮設機材の整備、修理等を行っている機材センター等に対し、「適用工場制度」により、管理が適正である工場を認定し、経年仮設機材が適正な管理のもとに作業現場に提供されるようにしている。

表2.1.1 主な仮設機材とその表示

2章 仮設工事 2節 縄張り、遣方

2章 仮設工事


2節 縄張り、遣方、足場等

2.2.1 敷地の状況確認及び縄張り

(1) 敷地の状況確認
着工に先立ち受注者等が確認する敷地状況には次のような項目があり、監督職員は、受注者等から報告を受け、必要があれば確認、調査等に立ち会う。

(a) 敷地境界の確認
不明確な点があれば、関係者(20.5.1 (3)参照)の立会いを受けて明確にし、記録を残しておく。

(b) 既存構造物、地下埋設物の確認
建築物、工作物、地下鉄あるいは地中に埋設されたガス管、電線、電話ケーブル、給排水管、埋蔵文化財等を設計図書により確認するとともに、関係機関の協力を得て、設計図書に示されたもの以外に地下埋設物がないかを確認する。また、これらの埋設物が工事の障害となるおそれがある場合には、敷地境界、桝やマンホール等から位置を調べ、必要があれば試掘により確認して、必要な対策を講ずる。

なお、土壊汚染に関しては、1.3.10(1)を参照するとよい。

(c) 敷地の高低差及び既存樹木等の確認
敷地の高低差や既存樹木等に関しては、設計図書の指定による敷地の現場測量図等と、着工時の敷地の状況とが整合しているか確認する。また、現状測量図がない場合、必要な測量を実施するなど監督職員と協議する。

(d) 敷地周辺状況の確認
敷地周辺の交通屈や交通規制(特に通学路に注意)及び架空配線等を考慮し、建設機械や資材等の搬出入口の位置が適切かどうかを確認する。道路を占用・使用して工事を実施する場合は、事前に道路管理者及び署察署長に届ける。また、その工事エリアに柵や覆いを設けたり、交通整理員を配置するなどにより、道路交通の事故防止のための必要措置を講ずる(道路法施行令第2章参照)。テレビ電波等受信障害調査が実施されている場合は、工事中に障害が起きる可能性を考慮し、事前調査結果や近隣関係者との対応状況を確認しておく。

(e) 騒音・振動の影牌調査
騒音・振動については、周辺の環境に影響を与える工事や作業条件を事前に確認し、参考資料の資料1等を参照し、適切な処戦を検討しておく。

(f) 近隣建物調査
杭打ち工事、根切り工事等近隣に影響を与えるおそれのある工事を行う場合は、近隣建築物、工作物等に振動によるひび割れ、はく落、沈下等の事故が生じた場合の現状確認の資料とするため、関係者の立会いを求め、できるだけ写真、測量等により現状を記録しておく。さらに、工事中は常時これらの建築物等を観察し、必要な場合、悪影響を与えないよう事前の措置を講ずる。

(g) 排水経路と排水管の流末処理の確認
敷地の排水及び新設する建築物の排水管の勾配(通常1/100〜1/75)が、排水予定の排水本管・公設桝(市町村等で管理する桝)・水路等まで確保できるか、生活・事業系廃水(汚水)と雨水との区分の必要があるかなどを確認する。また、汚水の放流及び放流先(水路・溝等)の、地元管理者の同意の有無を確認しておく。

(2) 縄張り
建築物等の位置を決定するため、建築物外周の柱心、壁心が分かるよう縄等を張ることを縄張りという。建築物の位置と敷地の関係、道路や隣接建築物との関係等は、縄張りを行って確認する。

その際、監督職員は、縄張りの検査を行い、必要に応じて設計担当者の立会いを求め、建物位置を確認し、最終的に決定する。決定に当たっては、次の点に留意する。

(a) 敷地境界の確認
(b) 法規上の制約(斜線、延焼のおそれ、日影限界、避難距離等)
(c) 境界との離れ(設計図書に明示されている寸法確認、民法、施工上の問題等)

2.2.2 ベンチマーク

ベンチマークは、建築物等の高低及び位置の基準であり、移動するおそれのない既存の工作物あるいは新設した木杭、コンクリート杭等に高さの基準をしるしたものである。ベンチマークは、正確に設置し、移動のないようにその周囲を養生する必要がある(図2.2.1)。また、ベンチマークは、通常2箇所以上設け相互にチェックできるようにする。


図2.2.1 ベンチマークの例

監督職員は、ベンチマークの検査を行い、これを基にして敷地及び周辺道路の高低を測量させ、グランドライン(GL)を決定する。GLとは、基準となる地盤面の高さ又はその高さを表す線であり、現状地盤高や設計地盤高とは異なる場合がある。設計図書には設計GLだけが表示されていることが多いので、その場合には、設計GLと GLとの位置関係を明確にする。

なお、「JASS 2 仮設工事」や(-社)日本建築学会「建築学用語辞典」では、ベンチマークという用語を位置を決めるための基準点にも用いている。このように現在では、ベンチマークが高さと位置の両方を兼ねた基準として設けられる場合もある。

2.2.3 遣 方

(1) 遣方は、通常、図2.2.2のようなものであり、建築物の位置及び水平の基準を明確に表示し、次の (ア)から(ウ)のようにしてつくる。しかし、規模の大きな建築物等では遣方をつくらず、その都度測量機器を用いて、ベンチマークや固定物あるいは新設した杭等に設けた基準点から、建物のレベルあるいは建築物の基準墨を出すことが多い。


図2.2.2 遣方の例

(ア) 建築物隅角部、その中問部、根切り線の交差部等の要所で、根切り範囲から少し離れ、根切り後の移動のない位置に地杭〈水杭〉を打ち込む。昔から地杭の頭をいすか切りしているが、「いすか切り地杭」は、その頭部に物が当たったり、たたいたりした場合に、変状で移動をすぐに発見できるようにするための工夫である。

(イ) 地杭に高さの基準をしるし、かんな掛けを施した水貫の上端をその基準に合わせて水平に取り付ける。

(ウ) 工事に支障のない所に逃げ心(基準点)を設け、養生しておく。

(2) 監督職員は、追方の検査を行う。遣方の検査は、墨出しの順序を変えるなど、受注者等が行った方法とできるだけ異なった方法でチェックする。また、その工事現場専用の検査用鋼製巻尺を使用して実施する。

(3) 墨出し
墨出しとは、設計図書に示されたとおりの建築物を造るために、建築物各部の位置及び高さの基準を工事の進捗に合わせて、建築物の所定位置に表示する作業をいい、その建築物の出来上り精度に直接影響する大切な作業である。設計図書どおりの建築物を造るためには、建築物の着工から竣工に至る全工事期間を通じて一貫した位置及び高さの基準が必要である。

そのために、建築物の内外及び敷地周囲に基準高、通り心(基準墨又は親墨)、逃げ心等(ベンチマーク、基準点)を設けて、建物内の墨出し及び検査のための基準にしている。これを図面化し、「墨出し基準図」とし種々の要点を記入しておくとよい(図2.2.3)。


図2.2.3 墨出し基準図の例

墨出しの内容には、大別して表2.2.1に含まれるようなものがあるが、このうちの基準となる墨出しは、仮設工事の範ちゅうに入り、監督職員は、それらの検査を行う。

表2.2.1 施工段階の墨出し・計測作業の例

また、それぞれの墨出しは、次の(a)から(c)のような目的をもって行われる。

(a) 敷地及びその周辺の位置等の確認のための墨出し
(b) 施工のための墨出し
(c) 計測管理のための墨出し

捨コンクリートや1階床の墨出しは、上階の基準墨の基準となるので、建築物周囲の基準点から新たに測り出し、特に正確を期す必要がある。2階より上では、通常建築物の四隅の床に小さな穴を開けておき、下げ振り等により1階から上階に基準墨を上げている。この作業を「墨の引通し」という。

(4) 測量機器
墨出しに用いる一般的な測量機器には、セオドライト(又はトランシット)、レベル、鋼製巻尺、下げ振り、墨つぼ、さしがね、スタッフ(箱尺)、コンベックスルール等がある。計測距離が長い場合には、光波による計測器(光波測距儀)が用いられる。レベルやセオドライトに加えて、トータルステーション等の測定機器も用いられている。トータルステーションは光波測距像と電子式セオドライトを一体化した角度と距離を同時に測定できる測定機器である。

レベルやセオドライト、光波測距儀等の測定器は調整を必要とするので、作業所での使用に際して、事前に専門の業者により、検査、調整をさせる必要がある。
鋼製巻尺は、JIS B 7512(鋼製巻尺)に規定されている1級のものを使用する。

JIS 1級の鋼製巻尺でも1mにつき0.1mm程度の誤差が許容されており、50m巻尺では ±5mm程度の誤差を生じる可能性がある。したがって、通常は工事着手前にテープ合わせをし、同じ精度を有する巻尺を2本以上用意して、1本は基準巻尺として保管しておく。テープ合わせの際には、それぞれの鋼製巻尺に一定の張力を与えて相互の差を確認する必要がある。建築現場では、特に規定しない場合、通常50Nの張力としている。

また、鋼製巻尺は温度により伸縮するので、測定時の気温により温度補正を行う。標準温度20℃に対して、50m巻尺では10℃の温度差で5.75mm伸縮する。

2章 仮設工事 2節 足場等

2章 仮設工事


2節 縄張り、遣方、足場等

2.2.4 足場等

(1) 足場、作業構台、仮囲い等の仮設設備は、施工の安全確保、公衆災害防止のために重要なものである。このため、足場、作業構台、仮囲い等の仮設設備は、2.1.2で述べた適切な性能を有する材料の使用とともに、「標仕」2.2.4 (1)においては、労慟安全衛生法、建設工事公衆災害防止対策要綱(建築工事等編)その他関係法令等に基づき、適切な構造と保守管理をすることを定めている。これら関係法令等の関係条項は、(9)に示す。

また、足場、作業構台、仮囲い等の設置や使用時においては、労働災害防止のために必要な保護具(保護帽、墜落制止用器具等)の着用、使用が必要である。

なお、平成30年6月8日公布の労働安全衛生法施行令の一部改正により、胴ベルト型(U字つりを除く)安全帯及びフルハーネス型安全帯を指す法令用語として、「安全帯」は「墜落制止用器具」に改められた。

(2) 建設工事は、工事の竣工に向け、現場の状態が日々変化し、その進捗に合わせ、仮設設備は盛替えが必要になる。本設工事が円滑に進むよう適切な時期に、適正な盛替えを施す事前計画と工程管理が必要である。

また、仮設設備が不安全状態になると、危険な施工を強いることになりかねず、施工品質、工程、安全、環境等に悪影響を及ぼすことになる。良好な仮設設備維持のためには、組立・盛替え後の保守点検を始め、作業開始前、地震・悪天候後の保守点検を確実に行い、異常があれば補修・修理し、常に適正な状態にしておくことが必要である。加えて、足場、仮囲い等の仮設設備の設置,解体時、使用時においては、架空線、埋設物、周辺環境影響(騒音・粉じん抑止、路面・周辺清掃、照明確保等)、工事車両、一般交通車両、歩行者などに対し、事故・災害防止、環境保全のための防護・保護措置が必要になるので、これらについても十分に配慮する。

(3) 足場、作業構台等は、「標仕」2.2.4 (4)において、関連工事等の関係者にも無償で使用させるよう定めている。これは、関連工事等の関係者間における一連の工程に著しいずれ、むだ等が生じ、関連工事等の関係者間での無用なトラプルがないようにするためである。

なお、関連工事等の関係者各々が、自らの工事の都合において、これらの構造を部分的な改造を含め改変すること、設置期間を延長することなどは、「標仕」2.2.4 (4)の規定外のことである。

(4) 足 場
(ア) 足場とは、作業者を作業箇所に近接させて作業をさせるために設ける仮設の作業床及びこれを支持する仮設物のことである。

足場の設置では、労慟安全衛生法、建設工事公衆災害防止対策要綱(建築工事等編)その他関係法令等の遵守とともに、足場組立・解体等作業や、足場上作業の安全性を高めるために、「標仕」2.2.4 (2)は、「(別紙)手すり先行工法等に関するガイドライン」における「手すり先行工法による足場の組立て等に関する基準」、「働きやすい安心感のある足場に関する基準」に適合させることが必要であることを定めている。ただし、建築工事は、建築物の形状、周辺状況、作業方法等が様々に異なることから、工事要件に見合う足場形式の選定が必要であり、労慟安全衛生法、建設工事公衆災害防止対策要綱(建築工事等編)その他関係法令等を遵守のうえに、工事を安全で効率的に実施するための各種足場(表2.2.2参照)の適用を排除するものではない。

次に、足場設置時及び足場使用時の概観的な諸条件を示すので、これらの条件を満たす足場設置計画及び使い方をするとよい。

(a) 足場に使用する部材は、所定の構造、強度等を有し、その状態が2.1.2で述べた適正な部材であること。

(b) 足場は、人、物等の積載荷重、風荷重等に十分に耐えうる安定した堅固な構造とすること。また、足場は、作業中又は足場内を通行中に、できるだけ動揺がない構造にすること。

(c) 足場には、昇降設備、手すり・さん等の墜落防止設備、メッシュシート・幅木等の物体落下防止設備を配備したものとすること。

(d) 足場上の作業、足場内の通行に対し、必要な広さを有する作業床を設けること。

なお、床材(作業床)と建地(支柱)の隙問は12cm未満とする。つり足場を除き床材間の隙間は 3cm以下、つり足場は作業床に隙間がないようにする。

(e) 作業目的物と足場作業床の間隔は可能な限り近接して設けること。

(f) 足場作業床上の作業や通行の妨げとなる不要材料は、排除すること。また、足場上には長期に部材を仮置かないこと。

(g) 足場組立・解体作業等中に墜落の危険がある場合、足場上の作業内容によって、やむを得ず臨時に手すり・さん等の墜落防止設備を取り外しての作業の場合、足場から身を乗り出すなど墜落の危険がある作業の場合等では、墜落制止用器具等を使用すること。

(h) 作業の都合で、やむを得ず臨時に手すり・さん等の墜落防止設備、メッシュシート等の物体落下防止設備を取り外した場合は、作業終了後に必ず復旧すること。

(イ) 足場は、工事の種類、規模、構造、敷地及び隣接地の状況、工期等に応じ、施工性と安全作業に適したものを選定し、足場に関する関係法令等に従って堅固に設置する。

(ウ) 足場の材料は、著しい損傷、変形、腐食等があってはならない。特に木材は強度上箸しい欠点となる割れ、節、木目の傾斜等がないものを使用する。

(エ) 鋼管足場用部材及び附属金具、合板足場板は、厚生労働大臣の定める規格に適合するものを使用しなければならない。そのほかの足場部材は、その種類に応じ JISや、2.1.2に示す認定基埠に適合し、所定の性能、品質が保証されたものを使用することが必要である。

(オ) 鋼管足場の部材及び附属金具等の経年品は、厚生労働省通達の管理指針に基づき、2.1.2(2)により適正に管理されたものを使用する。

(カ) 足場に関する関係法令により定められた構造及び規格等に適合する足場以外は、試験、構造計鉢等によりその安全性を確認する。

(キ) 足場の計画では、倒壊・破壊に対する安全性、墜落に対する安全性、資材等の落下に対する安全性を考慮しなければならない。特に倒壊事故につながる風荷重が大きく作用する工事用シート、パネル等を取り付ける場合は風荷重の検討を十分に行い、壁つなぎ材を適切に設置するなどの対策が必要である。

(ク) 足場には、足場の構造、材料に応じて、作業床の最大積載荷重を定め、これを足場の見やすい箇所に表示し、作業者に周知する。この最大積載荷重を超えて積載してはならない。

(ケ) つり足場、張出し足場、高さ5m以上の足場の組立、解体又は変更の作業では、足場組立て等作業主任者の選任と、その氏名、職務を作業場の見やすい箇所に掲示することが必要である。また、足場の組立て、解体又は変更の作業に係る業務(地上又は堅固な床上における補助作業の業務を除く。)に従事する作業者は、この業務に関する特別教脊を受けた者とすることが必要である。

(コ) 足場の組立て、解体又は変更時の点検は、点検表を作成し実施する。

点検者は、足場の組立て等を行った事業者で足場の組立て等を担当した者以外の、足場に関し十分な知識と経験を有する者及び足場の組立て等の注文者で、足場に関し十分な知識と経験を有する者の両者により,点検を行うことが必要である。

なお、「十分な知識と経験を有する者」としては、次の者が適切な,点検者と想定されるので参考にされたい。

(a) 足場の組立て等作業主任者であって、労働安全衛生法(以下「法」という。)第19条の2に基づく足場の組立て等作業主任者能力向上教脊を受けた者
(b) 法第81条に規定する労働安全コンサルタント(試験の区分が土木又は建築である者)や厚生労働大臣の登録を受けた者が行う研修を修了した者等、法第 88条に基づく足場の設置等の届出に係る「計画作成参画者」に必要な資格を有する者

(c) 全国仮設安全事業協同組合が行う「仮設安全監理者資格取得講習」、建設業労働災害防止協会が行う「施工管理者等のための足場点検実務研修」を受けた者等、足場の点検に必要な専門的知識の習得のために行う教脊、研修又は講習を修了するなど、足場の安全点検について、上記(a)又は(b)に掲げる者と同等の知識・経験を有する者

(サ) 足場からの墜落・転落災害を防止するため、厚生労働省から「足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱」が平成27年5月に発出されているので、足場の設置に当たっては、この内容を踏まえることが必要である。

また、墜落制止用器具を使用して行う作業については、厚生労働省から「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」が平成30年6月に発出されているので、これに基づくことが必要である。

なお、屋根工事及び小屋組の建方工事における墜落事故防止対策として、「標仕」 2.2.4(3)においては、JIS A 8971(屋根工事用足場及び施工方法)の施工標準に基づく足場及び装備機材を設置するとしている。

表2.2.2に、屋根面に設ける足場と装備機材との標準的な組合せを示す。
なお、詳細は同規格の「附属書A(規定)施工標準」によるものとする。
表2.2.2 屋根面に設ける足場と装備機材の組合せ(JIS A 8971より引用)

また、「足場先行工法に関するガイドライン」(平成18年2月10日付 基発第 0210001号)5 (12)には、小屋組における屋根からの墜落防止として次の3項目の措置を講ずることが示されている。

①屋根からの墜落防止のため、足場の建地を屋根の軒先の上に突き出し、その建地に手すりを設けること。手すりは、軒先から75cm(参考値[安衛則 563条]:85cm)以上(「建設業労働災害防止規程」では、90cm以上である。)の高さの位置に設け、かつ、中さんを設けること。(図2.2.4)


図2.2.4 屋根からの墜落防止措置の例

② 軒先と建地との間隔は、30cm以下とすること。

③ 屋根勾配が 6/10以上である場合又はすべりやすい材料の屋根下地の場合には、20cm以上の幅の作業床を2m以下の間隔で設置すること。(図2.2.5)


図2.2.5 屋根足場の設置の例

注図:建設業労働災害防止協会発行[木造家屋建築工事の作業指針
作業主任者技能溝習テキスト]より。(一部改変)
※:建設業労働災害防止協会
[建設業労慟災害防止規程]による数値

(シ) 足場の種類は、用途別及び構造別に分類を表2.2.3に示す。

表2.2.3 足場の用途別・構造別分類

(ス) 各足場の例を図2.2.6に示す。






図2.2.6 各足場の例

(セ) 足場の安全基準について、労働安全衛生規則等を踏まえて、その概要を表2.2.4に示す。

表2.2.4 足場の安全基準

(5) 仮囲い

(ア) 仮囲いは、工事現場周辺の道路・隣地との隔離、出入口以外からの入退場の防止、盗難の防止、通行人の安全、隣接物の保護等のために必要である。仮囲いは、工事現場の周囲に工事期間中を通し、建築基準法施行令、建設工事公衆災害防止対策要綱(建築工事等編)等に従って設ける。

(イ) 木造の建築物で、高さが13m若しくは軒の高さが9mを超えるもの又は木造以外で2階以上の建築物の工事を行う場合は、高さ1.8m以上の仮囲いを設ける。ただし、上記と同等以上の効力を有するほかの囲いがある場合又は工事現場の周辺若しくは工事の状況により危害防止上支障がない場合は、仮囲いを設けなくてもよい(建築基準法施行令第136条の2の20)。

(ウ) 仮囲いは、風、振動等に対して倒壊したり、仮囲いの一部が外れ飛散したりしない堅固な構造とする。

(エ) 仮囲いに出入口を設ける場合において、施錠できる構造とし、出入口は必要のない限り閉鎖しておく。また、出入口の開閉による車両等の出入りには、交通誘導員を配置するなどして、一般車両、歩行者等の通行に支障のないようにする。

(オ) 道路を借用して仮囲いを設置する場合は、道路管理者と所轄警察署長の許可を得る。

(6) 仮設通路
(ア) 階段
(a) 高さ又は深さが1.5mを超える箇所で作業を行うときは作業者が安全に昇降するための階段等を設ける(労働安全衛生規則第526条)。階段は、作業者が昇降するために、足場内や工事の進捗に従い建築物内外の仮設通路面等に設ける。

(b) 階段は踏外し、転倒等を防止するために、勾配、踏面、蹴上げ等に留意し適切かつ堅固に設ける。また、踏面は踏板面に滑り止め又は滑り止め効果のあるものを設ける。

(c) 踊り場は階段と一体となって機能する仮設通路であり、労働安全衛生規則第552条を準用し、高さが 8m以上の階段には、7m以内ごとに踊り場を設ける。枠組足場では建枠1層又は2層ごとに設けることが多い。

(d) 階段部分の縁や床面開口部及び踊り場で墜落の危険のある箇所には、高さ 85cm以上の丈夫な手すり及び高さ35cm以上50cm以下の中桟を設ける(労慟安全衛生規則第552条)。一般には、安全性を高めるため高さ90cm以上の丈夫な手すり及び内法が45cmを超えない間隔で中さんを設ける(建設業労働災害防止協会「建設業労働災害防止規程」、(-社)仮設工業会「墜落防止設備等に関する技術基準」参照)。

(e) 足場に使用されている階段は、専用踏板と足場用鋼管とで構成する階段(図2.2.7)と足場導用の階段枠(図2.2.8)の2種類がある。


図2.2.7 専用踏板と足場用鋼管とで構成する階段の例


図2.2.8 足場専用の階段枠の例

(仮設機材認定基準とその解説より)
(f) 枠組足場に使用する階段は、鋼管足場用の部材及び附属金具の規格(厚生労働省告示)、JIS A 8951(鋼管足場)の標準建枠高(階段の高さ)やスパン(階段の輻)寸法に合った専用規格階段を用いるとよい。階段は建枠横架材に架け渡し、上下連結部分は強風時の吹上げ力、衝撃、振動等で脱落、滑り、変形等が生じないように取り付ける。

なお、足場専用の階段枠は、(-社)仮設工業会の認定基準があり、その強度及び性能を定め、保証している。

枠組足場に使用する階段の計画例を図2.2.9に示す。


図2.2.9 階段計画の例

(イ) 登り桟橋

(a) 登り桟橋は、足場の昇降又は材料運搬等に用いるために設置された仮設の斜路で、足場板を斜めに架け渡し、適切な間隔に滑り止めのための横桟を打ち付け、手すり、中さん等を設けた構造である。

(b) 登り桟橋は、労働安全衛生規則第552条の架設通路の規定により、図2.2.10のような構造となる。

図2.2.10 登り桟橋

(c) 登り桟橋の幅は90cm以上確保することが望ましい。また、登り桟橋上が、雷、氷等により滑りが予想され、やむを得ずこの状態で登り桟橋を使用する場合に は、あらかじめ滑りを防止する処置を施す必要がある。

(ウ) その他の仮設通路
その他の仮設通路としては、様々なものが使用されてきているが、代表的なものとして、次のようなものがある。これらを用いる場合は、施工条件等や取扱い説明等に沿った適正な配置、使い方をしていくことが必要である。

(a) ハッチ式床付き布枠と昇降はしごが一体となった通路(図2.2.11(イ))は、足場において、足場昇降階段の設置が困難な場合や、緊急的な昇降に使用される。


図2.2.11 その他の仮設通路 (イ)

(b) ベランダ用昇降設備(図2.2.11(ロ))は、枠組足場等から、躯体内部に渡る通路であり、特に、ベランダ等の手すりの立上りを越えるために使用される。


図2.2.11 その他の仮設通路 (ロ)

(c) 鉄骨用通路(図2.2.11(ハ))は、鉄骨上に設けられ材料置き場や足場を結ぶ通路として使用される。


図2.2.11 その他の仮設通路 (ハ)

(7) 落下物に対する防護

(ア) 工事用シート等
工事現場からの飛来・落下物により、工事現場周辺の通行人や隣家への危害を防止するために、足場の外側面に工事用シート、パネル等を取り付ける(建築基準法施行令第136条の5第2項、建設工事公衆災害防止対策要綱(建築工事等編)第27参照)。また、労働安全衛生規則(第537条、第538条)では、足場等からの飛来・落下物による労働災害を防止するため、その危険のおそれのあるときは、幅木、防網(メッシュシート等)を取り付けることが定められている。

① 工事用シートは、帆布製のものと網地製のもの(メッシュシート)の2種類があり、JIS A 8952(建築工事用シート)の1類(シートだけで落下物の危害防止に使用できる)に適合するもの又はこれと同等以上の性能を有するものを使用する。シートは、通常、風荷重を緩和するメッシュシートが多く使用される。

なお、これについては、(-社)仮設工業会の認定基準がある。

② シートの取付けは、原則として、足場に水平材を垂直方向 5.5m以下ごとに設け、シートに設けられた全てのはとめを用い、隙間やたるみがないように緊結材を使用して足場に緊結する(シートに設けられたはとめの間隔は、 JIS A 8952では45cm以下としている。(-社)仮設工業会の認定基準では35 cm以下としている。)(図2.2.12)。緊結材は、引張強度が0.98kN以上のものを使用する。

③ その他にパネル、ネットフレーム等がある。

パネルは、パネル材とフレーム等で構成されたもので、工事騒音の外部への伝播を防止・軽減する役目も果たす防音パネルが一般的に用いられる。
なお、防音と落下物防護を兼ねた防音シートは、防音パネルと同様に用いられている。

ネットフレームは、金属網部(エキスパンドメタル)とフレームを溶接した構造であり、いずれも主に枠組足場に取り付けられる。

④ 建築工事用垂直ネットは、建築工事現場の鉄骨工事で飛来、落下物による災害を防ぐために、鉄骨(つり足場)等の外側面に垂直に取り付けられる。このネットは、合成繊維製の織網生地の織製ネット及び網製ネットで仕立てた、網目の寸法が 13〜18mmのもので、JIS A 8960(建築工事用垂直ネット)に適合するものを使用する。

なお、これについては、(-社)仮設工業会の認定基準がある。

(イ) 防護棚
外部足場から、ふ角75度を超える範囲又は水平距離 5m以内の範囲に隣家、一般の交通等に供せられている場所がある場合には、落下物による危害を防止するため、防護棚(朝顔)を設けなければならない(建設工事公衆災害防止対策要綱(建築工事等編)第23参照)。

① 防護棚のはね出しは、水平面に対し 20〜30゜の角度で、足場から水平距離で 2m以上とする。

② 防護棚は、1段目を地上10m以下、2段目以上は下段より10m以下ごとに設ける。通常、1段目は、地上5m以下に設けるのが望ましい。

③ 一般的に、防護棚は厚み1.6mmの鋼板が用いられてきたが、アルミ合金製の本体フレームにFRP製万能板の使用が増えている。


図2.2.12 工事用シートの取付け例

(8) 作業構台
作業構台には、地下工事等の材料の集積、建設機械の設置等のための乗入れ構台と、建築置材等の一部を仮置きして、建築物の内部に取り込むことなどのための荷受け構台(荷上げ構台)がある。

作業構台上は、常に整理整頓を行うとともに、作業構台自体の状態の保守管理を行い、点検結果を記録及び保管することが必要である。

(a) 乗入れ構台
① 乗入れ構台は、根切り、地下構造物、鉄骨建方、山留め架構の組立、解体等の工事を行う際に、自走式クレーン車・トラック類・生コン車・コンクリートポンプ車等の走行と作業、各資材の仮置き等に使用する。

② 乗入れ構台は、関係法令に従って設ける。(労働安全衛生規則第575条の2〜 8)

③ 使用する鋼材については、JIS適合品又は同等以上の強度をもつものとし、断面欠損や曲がり等、構造耐力上、欠点のないものを用いる。

④ 乗入れ構台の構造は、各種施工機械・車両の重量及びその走行や作業時の衝撃荷重、仮置き資材の荷重、構台の自重、地震・風・雪等の荷重に十分耐え得るものとする。

⑤ 乗入れ構台の計画上の要点は次のとおりである。
1) 乗入れ構台の規模と配置
規模は、敷地及びその周辺の状況、掘削面積、掘削部分の地盤性状、山留め工法、各工事で採用する工法等の条件により決定する。配置は、施工機械・車両の配置や動線、施工機械の能力、作業位置等により決定する。市街地工事では、駐車スペースの確保が難しいことから、可能な限り、余裕のある面積を確保する。

2) 乗入れ構台の幅員
通常計画される幅員は 4〜10mであるが、使用する施工機械、車両・アウトリガーの幅、配置及び動線等により決定する。構台に曲がりがある場合は、車両の回転半径を検討し、コーナ一部分の所要寸法を考慮して幅員を決定する。

3) 乗入れ構台の高さ、勾配等
・高さは、地下躯体(主として1階の梁・床)の作業性を考慮して決める。

・躯体コンクリート打込み時に、乗入れ構台の大引下の床の均し作業ができるように、大引下端を床上端より20〜 30cm程度上に設定する。

・乗込みスロープの勾配が急になると、施工機械・車両の出入りに支障となるおそれがあるので、通常は1/10 ~ 1/6程度とする。

・敷地境界から乗入れ構台までの距離が短い場合は、乗入れ構台のスロープが敷地境界から外に出ないよう留意することが必要である。

⑥ 一般的な乗入れ構台の架構形式と各部材の名称を図2.2.13に示す。

(b) 荷受け構台(荷上げ構台)
① 荷受け構台は、クレーンやリフト、エレベーター類からの材料の取込みに使用される作業構台で、材料置場と兼用することもある。

② 荷受け構台は、関係法令に従って設ける。(労働安全衛生規則第575条の2〜8)

③ 使用する材科は、木材にあっては割れ、腐れ、著しい断面欠損、曲がり等、鋼材にあっては著しい断面欠損、曲がり等、構造耐力上の欠点のないものを用いる。

④ 荷受け構台は、資機材の搬出入に適した位置に設け、揚重機の能力、揚重材料の形状・寸法・数量に応じた形状、規模のものとし、積載荷重等に対して十分に耐える安全な構造のものとする。

⑤ 設置位置は、材料の取込み及び水平運搬に便利な位置を選び、2〜3階に1箇所の割りで設置し、他の階にはそこから運ぶようにしていることがある。また、工事の進捗に伴って転用が必要な場合があるので、移動方法を考慮して設置位置を決めることが必要である。

なお、荷受け構台への資機材の仮置きはできる限り短期間とする。

⑥建築物本体の鉄骨を利用して、荷受け構台を建物外部にはね出して設置した計画例と足場に設けた例を図2.2.14に示す。


図2.2.13 乗入れ構台の架構形状と各部材の名称


図2.2.14 荷受け構台の例

(9) 関係法令等
足場、仮設通路、仮囲い等に関係する関係法令等を次に示す。

(a) 主な関係法令等
① 労働安全衛生法、同施行令、労働安全衛生規則
② 建築基準法、同施行令、同施行規則
③ 建設工事公衆災害防止対策要綱(建築工事等編)

(b) 主な労働安全衛生法関係
① 足場関連
・事業者の講ずべき措置等
労働安全衛生法第20条、第21条、第23条~第25条、第26条

・計画の届出等
労働安全衛生法第88条、労働安全衛生規則第86条

・計画の届出をすべき機械等
労働安全衛生規則第85条

・資格を有する者の参画に係わる工事又は仕事の範囲
労慟安全衛生規則第92条の2

・計画の作成に参画する者の資格
労慟安全衛生規則第92条の3

・作業主任者
労働安全衛生法第14条

・作業主任者を選任すべき作業
労働安全衛生法施行令第6条策十五号

・作業主任者の選任
労働安全衛生規則第16条

・足場の組立等作業主任者の選任
労働安全衛生規則第565条

・足場の組立等作業主任者の職務
労働安全衛生規則第566条

・安全衛生教育(特別教育)
労働安全衛生法第59条第3項、労働安全衛生規則第37条~第39条

・材料等
労働安全衛生規則第559条

・鋼管足場に使用する鋼管等
労働安全衛生規則節560条

・構造
労働安全衛生規則第561条

・作業床の設置等
労慟安全衛生規則第518条~第523条

・最大積載荷重
労働安全衛生規則第562条

・作業床
労働安全衛生規則第563条

・足場の組立等の作業
労働安全衛生規則第564条

・点検
労働安全衛生規則第567条

・つり足場の点検
労働安全衛生規則第568条

・鋼管足場
労働安全衛生規則第570条~第573条

・つり足場
労働安全衛生規則第574条、第575条

② 通路(登り桟橋含む)関連
・通路等
労働安全衛生規則第540条~第544条

・架設通路
労働安全衛生規則第552条

③ 階段関連
・昇降するための設備の設置等
労働安全衛生規則第526条

④ 作業構台(乗入れ構台・荷受け構台)関連
・作業構台
労働安全衛生規則第575条の2~8

⑤ 飛来落下物防護関連
・高所からの物体投下による危険の防止
労働安全衛生規則第536条

・物体の落下による危険の防止
労働安全衛生規則第537条、第563条第1項第六号

・物体の飛来による危険の防止
労働安全衛生規則第538条

・保護帽の着用
労働安全衛生規則第539条

(c) 建築基準法施行令関係
・仮囲い
建築基準法施行令第136条の2の20

・落下物に対する防護
建築基準法施行令第136条の5

・工事用材料の集積
建築基準法施行令第136条の7

(d) 建設工事公衆災害防止対策要綱(建築工事等編)
・飛来落下による危険防止 第11
・仮囲い、出入ロ     第23
・歩行者用仮設通路    第24
・乗入れ構台       第25
・荷受け構台       第26
・外部足場        第27
・防設棚         第28

2章 仮設工事 3節 仮設物

2章 仮設工事


3節 仮 設 物

2.3.1 監督職員事務所

(1) 仮設建物は、床荷重、風荷重等で倒壊しない構造とし、建築基準法、消防法等に従って設置する。

(2) 監督職員事務所

(ア) 「標仕」では、監督職員事務所に設ける電灯、給排水等の設備については、特記によるとされているが、特記がない場合は、監督職員と協議するとなっている。また、備品等の種類及び数量も、特記によるとされているが、これらは必要最小限にすべきである。

(イ) 「標仕」2.3.1(2)(ウ)の規定では、通信費は、受注者の負担となっているが、遠距離のため受注者に著しい負担をかけるような場合は、契約の際、明らかにしておくのがよい。また、光熱水費についても同様である。

(3) 受注者事務所その他
受注者事務所及びその他の仮設建物である休憩所、詰所、守衛所、便所、洗面所、更衣室、シャワー室等の設置に際しては、敷地条件等を考慮し、構造上、安全上、防火上及び衛生上支障のないように関係法令に基づき計画する。便所及び洗面所の 設置については、工事に影響がなく安全で利用しやすい場所に配置する。喫煙場所 は、屋外喫煙所の設置あるいは、屋内に設置する場合は空間分煙とした上で適切な 換気設備を設置するなど受動喫煙防止措置を講じるとともに消火器の配置を行う。また、清潔な食事スペースの確保、熱中症予防としての休憩所への冷房・冷水機等 の配備等、職場生活支援施設や疲労回復支援施設の充実を図る。

なお、作業員宿舎を設置する場合は、工事現場内から分離するものとし、建設業附属寄宿舎規程を遵守する。

(4) 表示板等
(ア) 地域住民への工事に関する情報提供のため、現場表示板を設ける。表示板には、工事名称、発注者名、施工者名、連絡先等を簡明に示す(図2.3.1参照)。

(イ) その他法令等による次の表示板を見やすい所に掲げる。
(a) 建設業の許可票(建設業法第40条、建設業法施行規則第25条)

(b) 建築基準法による確認済の表示(建築基準法第89条、建築基誰法施行規則第11条)

(c) 労災保険関係成立票(労働保険の保険科の徴収等に関する法律施行規則策77条)

(d) 道路占用許可証(道路法第32条、道路法施行令第7条)

(e) 道路使用許可証(逍路交通法第77条)

(f) その他(施工体系図(建設業法第24条の7)、建設業退職金共済制度適用事業主工事現場標識(中小企業退職金共済法)等)


図2.3.1 現場表示板の例

2.3.2 危険物貯蔵所

危険物には、灯油、塗料、油類、ボンベ類、火薬等があり、危険物貯蔵所は、次の事項に注意して設ける。

(ア) 仮設建物、隣地の建築物、材料費場等から離れた場所に設ける。設置スペースがないなど、やむを得ず工事目的物の一部を危険物置場として使用するときは、貯蔵戴等の関係法令が遵守されているか注意する。

(イ) 不燃材料を用いて囲い、周囲に空地を設ける。

(ウ) 各出入口には錠をかけ、「火気厳禁」の表示を行い、消火器等を設け、安全対策を講ずる。

(エ) 塗料、油類等の引火性材料の貯蔵所については、18.1.4(1)(ア)(e)を参照する。
また、ボンベ類置場は、通気がよく、他の建物と十分な離隔距離をとった直射日光を遮る構造とし、危険物や火気厳禁の表示及び消火器の配置を行う。

(オ) 取扱いについては、次に示す関係法令に規定されているので注意する。

(a) 消防法(第3章危険物第10条~第16条の9)
(b) 危険物の規制に関する政令
(c) 危険物の規制に関する規則
(d) 労慟安全衛生規則(第2編第4章第2節危険物等の取扱い等、第4節火気等の管理等)
(e) 建設工事公衆災害防止対策要綱(建築工事等編)(第19危険物貯蔵)

2.3.3 材料置場、下小屋

必要に応じて材料費場、下小屋を設ける。また、廃棄物の再費源化に努めるため、分別作業が可能なスペースと分別容器が設置可能な廃棄物分別置場(ヤード)を設ける。

なお、材料置場は、良好な材料保管ができるような構造とする。

(ア) 砂、砂利、セメント、鉄筋、鉄骨等の材料置場は、泥土等で汚れないように留意する。砂、砂利の場合、床を周囲地盤より高くしたり、水勾配を付けるなどの処理を行う。鉄筋や鉄骨の場合、受材を置き、泥土が付かないようにする。セメント等、吸水してはならないものは、雨水が掛からないように、屋根の付いた置場に保管する。

(イ) 下小屋とは、型枠や鉄筋の加工場やその他配管のねじ切り等の加工場をいう。

(ウ) 廃棄物分別置場(ヤード)は、廃棄物の搬出が容易な場所に設置する。
なお、現場に持ち込まれるこん包材等の減量化にも努めることが必要である。

2.3.4 工事用電気設備、工事用給排水設備

(1) 工事用電気設備は、工事を進めるための動力、照明、通信等に必要とする電力を供給する設備であり、着工から竣工までのほぼ全工程にわたって使用され、仮設工事の中でも重要な位置を占めるものである。

工事の進捗に伴い、負荷設備の増設・変更、設備の移動・盛替え等が多くなり、それに対応する配線等の保守管理が複雑になる。また、配線等は損傷を受けやすく、劣化も早く、粗雑に扱えば感電災害のリスクが高くなる。したがって、受電設備、幹線配線、負荷設備等一連の計画は、現場の条件や工程を十分に把握して、綿密な 事前計画が重要になる。また、運用管理に当たっては、十分な保守が必要である。

なお、工事用電気設備工事では、電気工事士法による電気工事士の資格等(1.3.3及び表1.3.3参照)、労働安全衛生規則の電気取扱い業務特別教育が必要になる。
工事用電気設備の計画から撤去までの作業手順を図2.3.2に示す

(ア) 申請手続き
電気設備の設置及び電力の使用に当たっては、電力会社への電力使用の申込みのほかに、契約電力によっては、経済産業大臣(又は所轄の経済産業局長)及び所轄の消防署長へ届け出なければならない(電気使用制限等規則)。

なお、電力使用申込みから受電までに1箇月余りを要するので、手続きはこの
期間を見込んでおく必要がある。

(イ) 保安責任者
工事用電力設備の保安責任者が、法令に基づいた有資格者であることを確認する(1.3.4及び表1.3.2参照)。


図2.3.2 工事用電気設備の計画から撤去までの作業手順の例

(ウ) 本設への切替え
竣工が近づき、本設の電気設備が受電され、工事用電気設備を撤去する際は、受注者等からの申出を受け、本設への切替えについて協議し、工事用電気設備の撤去の時期や本設への切替えの方法等を事前に決定するとともに、切換え時における感電災害の防止措置を講じる。

(2) 工事用給排水設備には、工事関係者が飲料あるいは洗顔・水洗等に使用する生活水や、基礎杭の施工や型枠の清掃等、工事に使用する工事用水を供給する給水設備と、生活水から生じる雑排水、地下水や雨水を処理する排水設備とがあり、工事を進めるのための重要な設備である。

(ア) 計画
給水設備は、施工計画や工事工程表から、生活用水や工事用水の使用時期、使用場所、使用水量を把握し、水源、要求される水質、水圧、水量等を勘案して、引込み設備、貯水設備、ポンプ設備、配管設備等を計画する。

排水設備は、各工事の施工方法、工事に従事する人員等を確認して、汚水、雑排水、地下水・雨水、特殊排水等、排水の種類ごとに排水時期、排水場所、排水量等を把握し、公共下水道の利用の可否等を勘案して、適切な排水方法を選定する。

(イ) 申請手続き
給水装置を新設、改造又は増設する場合は、水道事業者(地方公共団体の水道局)に届け出る(水道法)。

また、公共下水道に排水するために必要な排水設備を新設、改造又は増設する場合は、公共下水道管理者(地方公共団体の下水道局)に届け出る(下水述法)。
なお、給水、排水の届け出から認可までに1箇月余りを要するので、手続きはこの期間を見込んでおく必要がある。

2章 仮設工事 4節 仮設物撤去等

2章 仮設工事


4節 仮設物撤去等

2.4.1 仮設物撤去等
(1) 工事の進捗に伴い、あるいは外構工事等のために既設の監督職員事務所、受注者事務所等が障害となり、これを撤去し、他の場所に新設あるいは移設する必要がでてくる。

このような場合、通常は工事を行っている敷地内の別の場所に新設あるいは移設することになるが、そのような場所がない場合には工事を行っている建築物の一部を使用することになる。

工事敷地内に新設あるいは移設する場合には、場所や敷地内の人や工事で使用する車両等の通行状況を、また、工事目的物の一部を使用する場合には、工事完成後の入居の予定を、管理官署と事前に打ち合わせておく必要がある。

(2) 工事が完成する時までには、工事で使用した仮設物を撤去する。
工事目的物の一部を使用した場合には、設計図書で示されたとおりにして工事を完成させる。仮設物を撤去した跡及び付近は清掃、地均し等を行っておく。

(3) 仮設物を解体する際には、あらかじめ解体手順を決定し、解体中の仮設物が崩壊・倒壊しないよう災害防止に努める。解体時に作業主任者等の有資格者が必要な場合には、関係法令に従い、有資格者が配置されている必要がある。

2章 仮設工事 5節 揚重運搬機械

2章 仮設工事


5節 揚重運搬機械

2.5.1 一般事項
近年、建築工事の大型化、新工法の開発等に伴い、揚重機も多種多様となりその性能も格段と向上している。この節では、一般的な揚重機の分類、機種の特徴について記述し、その設置計画の考え方を示す。

また、安全(災害・事故防止)については、建築基準法、労働安全衛生法関係法令以外の必要な法令(所轄省庁)についても記述し、留意事項を解説する。

揚重運搬機械使用例を図2.5.1に示す。


図2.5.1 揚重運搬機械使用例

2.5.2 分 類

揚重運搬機械の分類を図2.5.2に示す。

図2.5.2 揚重運搬機械の分類

2.5.3 機種の特徴及び姿図

揚重機種の特徴及び姿図を表2.5.1に示す。

表2.5.1 揚重機種の特徴及び姿図(その1)

表2.5.1 揚重機種の特徴及び姿図(その2)

表2.5.1 揚重機種の特徴及び姿図(その3)

表2.5.1 揚重機種の特徴及び姿図(その4)

2.5.4 設置計画

揚重機械の設置に当たっては、工法の特徴、施工計画全体のねらいに合致した機械を採用する。特に、構造物との納まりや強度を確認し、機械の搬入組立及び解体搬出方法まで考慮して計画を立案する。図2.5.3に計画の検討手順を示す。


図2.5.3 設置計画の検討手順

2.5.5 安全に関する法令

(1) クレーン等安全規則
クレーン等安全規則による諸届を表2.5.2に、クレーン等の運転資格を表2.5.3に示す。

表2.5.2 クレーン等安全規則による諸届

表2.5.3 クレーン等の運転資格

(2) 運搬・移送時に適用を受ける法規

道路運送車両法、道路法、道路交通法について留意する。

(a) 道路関係各法の主な制限基準値を、表2.5.4に示す。

表2.5.4 主な制限基準値

(b) 各法令における車両諸元の測り方を次に示す。

① 道路運送車両の保安基準

② 車両制限令

車両:人が乗車し、又は貨物が積載された状態のもの。けん引している場合はけん引されている車両を含む。

③ 道路交通法施行令

(3) 送配電線の最小離隔距離を確保しなければならない法規

送電線のように電圧が高くなると、直接電線に触れなくても、接近しただけで、電気は空気中を放電してアークが発生し危険である。労働安全衛生規則では、送配電線部分と人体、ワイヤロープ、つり荷の離隔距離を常に保つよう規定している。また、該当する送配電線で、各電力会社の規定と比べ、最小離隔距離が異なる場合は、大きい値を採用する(表2.5.5及び図2.5.4参照)。

表2.5.5 送電線からの最小離隔距離


図2.5.4 離隔距離の例

(4) 航空法による高さの規制
(ア) 地表又は水面から60m以上の高さのクレーンの先端に航空障害灯等の設置
(イ) 空港近辺の高さの制限

(5) 電波法による電波等の規制
(ア) マイクロウェーブ等への障害
(イ) 作業に使用する無線機の許可
(ウ) テレビ等の電波障害

(6) 鉄道近接で適用を受ける法規
鉄道の近接工事は、(-社)日本建設業連合会の「鉄道工事安全管理の手引」に準拠して、必要な手続き・対策及び処置を講ずる(図2.5.5参照)。


図2.5.5 営業線近接工事

2.5.6 安全に関する留意事項

安全に関する留意事項には次のようなものがある。そのほかには、クレーン等安全規則の措置事項を遵守することが必要である。

(ア) 風
クレーンについては、10分間平均風速 10m/s以上の場合、クレーン作業を中止し転倒防止を図る。

(イ) 落雷
落雷のおそれがある場合はクレーン作業を中止する。
なお、オペレーターは、運転室にいる場合、被害を受けることは少ないが、玉掛け者は被災するおそれがあるので退避する。

(ウ) 地盤
移動式クレーンの作業地盤の支持力不足に起因する転倒事故を防止するため、事前に地盤調査を行い、支持力の確保が可能か否かを検討し支持地盤の適切な養生を行う。アウトリガー又は拡幅式クローラーは、最大限に張出し、転倒するおそれのない位置に設置する。

(エ) 安全設備
(a) 組立・解体時の安全対策と設備
クレーン等の組立・解体等は高所作業が多く、特に危険作業となるので、作業指揮者を選任し、作業開始前に十分な打合せ(危険作業事前打合せ)のうえ、作業を行う必要がある。特に、墜落・落下等の労働災害防止対策として安全ネット及び親綱等の設備を設け、また、関係者以外の立入禁止等の措置が必要である。悪天候の場合は作業を中止する。

(b) 使用時の安全対策と設備
クレーン等の使用は、あらかじめ定められる作業計画に従って行う。また、日常の保守管理を十分行い、特に、機器に設置された各種安全装置(過負荷防止装置、巻過防止装置等)の働きを正常に保つよう留意する。

1) リフト、エレベーターの停止階には、必ず出入口及び荷の積卸し口の遮断設備を設ける。

2) リフト、エレベーターの昇降路は人が出入りできないように、また、積荷の落下、飛散がないように外周をネット、金網等で養生する。

3) 機械等の設置に伴って、発生する開口部は、養生の目的に合わせてネット・金網等の適正な材料で養生する。

(オ) 玉掛け作業
玉掛けは、揚重作業に欠かせない作業であり、危険性が高いため有資格者を配置する必要がある(クレーン等安全規則第221条、第222条)。また、玉掛け用ワイヤーロープ、つりチェーン、フック、シャックル、繊維ロープ等は、クレーン等安全規則第213条~第219条の2に規定されたものを用い、作業開始前には玉掛け用具の点検を行い適正なものを使用する(クレーン等安全規則第220条)。

(カ) 表示
クレーン、リフト、エレベーター等は、設置に当たり、作業員に安全作業上の遵守事項、当該機械の運転者、性能等を周知するための表示を行う。また、旋回体範囲内、つり荷の下等への立入禁止の表示等を行う。

(キ) 運転の合図及び通信・信号設備
クレーン、リフト、エレベーター等の運転については一定の合図を定め、合図を行う者を指名してそれに従う。通信・信号設備は、設置条件・使用目的に合わせ最も適したものを選定使用する。

(例)クレーン:無線及び有線装置による通信設備、テレビカメラエレベーター・リフト:インターフォン

参考文献

1級建築施工管理技士 平成27年 学科 問題1解説

平成27年 1級建築施工管理技士 学科 問題1 解答解説

※   問題番号[ No.1 ]~[ No.15 ]までの 15 問題のうちから、12 問題を選択し、解答してください。

[ No. 1 ]
換気に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.静穏時の呼気による成人1人当たりの必要換気量は、二酸化炭素濃度を基にして定めた場合、30 m3/h 程度である。

2.換気量が一定の場合、室容積が大きいほど換気回数は少なくなる。

3.温度差による自然換気の場合、室内外の圧力差が 0 となる垂直方向の位置を中性帯といい、 この部分に開口部を設けても換気はほとんど起こらない。

4.室内空気の一酸化炭素の濃度は、100 ppm 以下となるようにする。

答え

 4 ×
室内環境基準において、空気中の一酸化炭素濃度の許容値は、10 ppm(0.001%)以下とされている。

1 ◯
換気の目的の1つは、室内の汚染物質を排出し、許容濃度以下に抑えることであり、このために必要な換気量を必要換気量という。室内のCO2をもとに定める必要換気量は、一般に成人1人当たり 20〜35 m3/h が推奨されている。

2 ◯
換気回数は次式により求められる。
N = Q / V
N:換気回数 [ 回 / h ]
Q:換気量 [ m3/ h ]
V:室容積 [ m3 ]
3 ◯
中性帯とは上下開口部の間の圧力差が 0 となる部分で、この部分に開口部があっても換気は起こらない。

[ No. 2 ]
日照、日射及び日影に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.北緯 35 度における南面の垂直壁面の可照時間は、春分より夏至の方が長い。

2.建物により影になる時間が等しい点を結んだ線を、等時間日影線という。

3.日射は、一般的に直達日射と天空日射の2つに大別される。

4.同じ日照時間を確保するためには、緯度が高くなるほど南北の隣棟間隔を大きくとる必要がある。

答え

 1 ×
可照時間とは、障害物のない水平面であれば晴れた日の日の出から日没までの時間に日照があるべき時間をいう。北緯35度における南面の垂直壁の可照時間は、太陽が東西軸より南側にある時間となる。夏至(約7時間)よりも春分または秋分(約12時間)の方が長くなる。

2 ◯
等時間日影線は時刻日影図に基づき同じ時間日影となる点を結んだラインで、各時間の影の輪郭を 2時間ごとに連結してできる交点の曲線は、 2時間日影曲線(以下 3時間、4時間日影曲線)といい 2時間日影曲線内は日影となる。

3 ◯
日射とは、地表面または大気中における太陽放射の総称である。大気層を通り抜けて直接地表面に達する太陽光線の日射量を直達日射量、途中で乱反射されて地上に達する太陽光線の日射量を天空放射量といい、直達日射量と天空放射量を合計したものを全天日射量という。

4 ◯
日照時間は、周囲に障害物のある場合は快晴日でも可照時間より少なくなる。集合住宅棟など、ある一定間隔を置いて建てられるとき、その間隔を隣湯間隔といい、冬至の日照時間を参考として決められる。緯度が高くなる(北半球で北の方へ行く)と南北の隣棟間隔を大きくとる必要がある。

[ No. 3 ]
音に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.1つの点音源からの距離が2倍になると、音圧レベルは 6 dB 低下する。

2.向かい合った平行な壁などで音が多重反射する現象を、ロングパスエコーという。

3.残響時間とは、音源が停止してから音圧レベルが 60 dB 減衰するのに要する時間のことをいう。

4.人間が聞き取れる音の周波数は、一般的に 20 Hz から 20 kHz といわれている。

答え

  2
向かい合った室内の天井と床、両側壁等が互いに平行で、かつ反射性のある材料でできている場合、拍手の音や足音等がこの平行面を複数回反射して二重、三重に聞こえる現象をフラッターエコー(鳴き竜)という。

1 ◯
点音源からの距離が 2倍になると、音の強さのレベルは約 6 dB (デシベル)減衰する。

3 ◯
残響時間とは、音源を停止した後、音のエネルギー密度が 60dB減少するのに要する時間をいい、室容積に比例し、室内の吸音力の合計に反比例する。

4 ◯
周波数は、空気粒子の振動が 1秒間に振動する回数振動数ともいう。単位は Hz(ヘルツ)。人間の耳に感じる周波数は 20 Hz 〜 20 kHz といわれている。

[ No. 4 ]
免震構造に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.免震構造とした建物は、免震構造としない場合に比べて、固有周期が長くなる。

2.アイソレータは、上部構造の重量を支持しつつ水平変形に追従し、適切な復元力を持つ。

3.ダンパーは、上部構造の垂直方向の変位を抑制する役割を持つ。

4.地下部分に免震層を設ける場合は、上部構造と周囲の地盤との間にクリアランスが必要である。

答え

  3
免震構造におけるダンパー(減衰器)の役割は、免震層の過大な変形を抑制し、地震時の応答を安定化させることである。

1 ◯
免震構造は、柔らかい積層ゴムやローラー等を挟み込むことによって、固有周期を地震動の影響の少ない長周期帯に一挙にずらすことによって、地震力の建物への伝達を低減する。

2 ◯
アイソレーターは、地震入力に対して絶縁機能を持つもので、地盤の水平方向の動きに対して縁を切り、上部構造を動かないようにする。水平方向の変位を抑制する役割はダンパーが受け持つ。

4 ◯
大きな地震動を免震構造が受けた場合、上部構造は長周期で大きく水平移動するため、上部構造と周辺との接触、衝突を避けるため十分なクリアランスをとる必要があり、設計で考えられる変化量の 1.5 〜 2.0 倍程度の離隔寸法を確保する。

[ No. 5 ]
鉄筋コンクリート構造に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.柱の引張鉄筋比が小さくなると、付着割裂破壊が生じやすくなる。

2.一般に梁の圧縮鉄筋は、じん性の確保やクリープ変形によるたわみの防止に有効である。

3.梁に貫通孔を設けた場合の構造耐力の低下は、曲げ耐力よりせん断耐力の方が著しい。

4.耐震壁の剛性評価に当たっては、曲げ変形、せん断変形、回転変形を考慮する。

答え

  1
柱の引張鉄筋比が過大になると、主筋に沿う付着割裂破壊が生じたり、あるいは変形性能が小さくなったりするので注意する。

2 ◯
圧縮鉄筋は、一般に長期荷重によるクリープたわみの防止、短期(地震時)に対するじん性の確保に効果的である。

3 ◯
梁の曲げ耐力は、一般に主筋の位置と主筋の断面積により決まるが、せん断耐力はコンクリートの断面積及びせん断補強筋量によって決まる。よって、梁貫通孔が設けられると、コンクリートの断面積が減少し、せん断力が著しく低下する。

4 ◯
耐震壁は地震時にねじれないよう、建物の重心と剛心との距離である偏心距離を小さくする必要がある。剛性評価に当たっては、曲げ変形、せん断変形、回転変形を考慮する。

[ No. 6 ]
鉄骨構造に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.溶接継目ののど断面に対する長期許容せん断応力度は、溶接継目の形式にかかわらず同じである。

2.片面溶接による部分溶込み溶接は、継目のルート部に、曲げ又は荷重の偏心による付加曲げに よって生じる引張応力が作用する箇所に使用してはならない。

3.引張材の接合を高力ボルト摩擦接合とする場合は、母材のボルト孔による欠損を無視して、引張応力度を計算する。

4.引張力を負担する筋かいの接合部の破断耐力は、筋かい軸部の降伏耐力以上になるように設計する。

答え

  3
引張材の接合を高力ボルト摩擦接合とする場合、ボルトなどの孔による断面欠損を除いたものを引張材の有効断面積とする。

1 ◯
溶接継目ののど断面に対する長期許容せん断応力度は、突合わせ形式にかかわらず同じである。

2 ◯
片面溶接による部分溶け込み溶接は、ルート部に、曲げまたは荷重の偏心による付加曲げによる引張り応力が作用する場合には用いることができない

4 ◯
引張力を負担する筋かいの軸部が降伏する場合において、当該筋かい端部及び接合部が先に破断しない設計とする。

[ No. 7 ]
杭基礎に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.鋼杭は、曲げや引張力に対する強度と変形性能に優れており、既製コンクリート杭のようにひび割れによる曲げ剛性の低下がない。

2.杭の周辺地盤に沈下が生じたときに、杭に作用する負の摩擦力は、一般に支持杭の方が摩擦杭より大きい。

3.基礎杭の先端の地盤の許容応力度は、セメントミルク工法による埋込み杭の方がアースドリル工法による場所打ちコンクリート杭より大きい。

4.埋込み杭の場合、杭と杭との中心間隔の最小値は、杭径の 1.5 倍とする。

答え

  4
埋込み杭の場合は、その杭頭部の径の2.0倍以上かつ75 cm以上とする。

1 ◯
鋼杭は曲げに強く水平力を受ける杭に適しており、応力に応じて材質や肉厚を変えた合理的な設計ができる。コンクリート杭は質量が軽く、取扱いが簡単である。

2 ◯
支持杭を用いた杭基礎の場合、杭周囲の地盤沈下によって杭周囲面には杭の下向きの摩擦力が働き、これに負の摩擦力が加わるため、支持杭の支持力の方が摩擦杭の支持力より大きい

3 ◯
プレボーリングによる埋込み工法は、アースオーガーで掘削した孔に杭を設置する工法で、セメントミルク工法という。埋込み杭の先端地盤許容応力度は、アースドリル工法による場所打ちコンクリート杭で算定されるので、セメントミルク工法の先端地盤許容応力度の方が大きくなる

[ No.8 ]
荷重及び外力に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.教室に連絡する廊下と階段の床の構造計算用の積載荷重は、実況に応じて計算しない場合、教室と同じ積載荷重の 2,300 N/m2  とすることができる。

2.多雪区域に指定されていない地域において、積雪荷重の計算に用いる積雪の単位荷重は、 積雪量1 cm ごとに 20 N/m2 以上としなければならない。

3.屋根葺き材に作用する風圧力は、平均速度圧にピーク風力係数を乗じて求める。

4.地震力の計算に用いる振動特性係数は、建築物の弾性域における固有周期と地盤種別に影響される。

答え

  1
教室に連絡する廊下の積載荷重は、建築基準法施行令第85条により、集会室等のその他の場合(3,500、3,200、2,100)の床の積載荷重3,500 N/m2とする。

2 ◯
屋根の水平投影面積 [ m2 ]当たりの積雪荷重は、積雪の単位荷重にその地方における垂直積雪量を乗じて求める。単位重量は一般地域では 20 N/m2 以上としなければならない。

3 ◯
屋根葺き材に作用する風圧力 w は、速度圧に風力係数を乗じたもので、次式により算定される。
w = q・Cf
w:風圧力 [ N/m2 ]
q:速度圧 [ N/m2 ]
C:風力係数
建告第1458号により、水平速度圧 q(~)(キューバー)は、
q(~) = 0.6 × Er2V02 × ピーク風力係数(Cf (−) )(シーエフバー)
にて求める。
ただし、Er は平成12年建設省告示第1454号第1第2項に規定する数値、V0は平成12年建設省告示第1454号第2に規定する基準風速の数値とする。

4 ◯
振動特性係数は、地震力を求める際に必要な係数で、建物の固有周期が地盤の固有周期より長い場合には、建物に生ずる地震力を低減させるための係数である。

[ No.9 ]
図のような集中荷重P を受ける3ヒンジラーメンの支点A 及びB に生じる鉛直反力をそれぞれ VA 及び VB  としたとき、それらの反力の大きさの比 VA:VB  として、正しいものはどれか。

VA  : VB
1.  1 : 1
2. 1 : 2
3. 2 : 1
4. 2 : 3

答え

  2
図のように反力を仮定する。
ΣMB = 0より
VA × 3m - P × 1m = 0
3VA = P
VA = P/3(上向き)
ΣY = 0より
VA + VB ーP = 0
P/3 + VB - P = 0
VB -2P/3 = 0
VB = 2P/3(上向き)
VA : VB = P/3 : 2P/3 = 1 : 2
したがって、2が正しい。

[ No.10 ]
図に示す架構に集中荷重 P が作用したときの曲げモーメント図として、正しいものはどれか。
ただし、曲げモーメントは材の引張り側に描くものとする。

答え

  4
左から集中荷重を受けるラーメン架構の柱の変形は、柱頭は右側に引張られ、柱脚は左側から引張られるように変形する。曲げモーメント図は、引張り側に描くことから、4が正しい。

[ No.11 ]
金属材料に関する一般的な記述として、最も不適当なものはどれか。

1.アルミニウムの密度及びヤング係数は、それぞれ鋼の約 1/3である。

2.ステンレス鋼の SUS430 は、SUS304 に比べ磁性が弱い。

3.青銅は銅と錫を主成分とする合金で、黄銅に比べ耐食性に優れている。

4.チタンは鋼に比べ密度が小さく、耐食性に優れている。

答え

  2
ステンレス鋼SUS430(フェライト系)は、鉄とクロムの合金で、SUS304(オーステナイト系)は、鉄とクロムとニッケルの合金である。SUS430は磁石に付く強磁材料で、SUS304に比べて磁性は強い。
1 ◯
アルミニウム及びアルミニウム合金は、密度が 2.78 g/cm3、ヤング係数は 6.37 × 104〜 8.43 × 104 N/mm2である。鋼は密度が 7.88 g/cm3、ヤング係数は 2.05 × 105 N/mm2である。したがって、アルミニウムは密度、ヤング係数とも鋼の約 3分の1である。
3 ◯
青銅(ブロンズ)は銅の合金で、主成分とし、合金の黄銅(真鍮)よりも耐食性が良い
4 ◯
チタンは、比重が 4.5 と鋼材(約7.85)に比べて軽く密度が小さい。しかも極めて腐食しにくく、耐食性が高い

[ No.12 ]
石材の一般的な特徴に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.安山岩は、硬度が高く、耐久性に優れる。

2.粘板岩は、吸水が少なく、耐久性に優れる。

3.砂岩は、汚れが付きにくいが、耐火性に劣る。

4.石灰岩は、加工しやすいが、耐水性に劣る。

答え

  3
砂岩(堆積岩)は、耐火性に優れているが吸水性の大きなものは耐凍害性に劣るとともに汚れや苔がつきやすい

1 ◯
安山岩(火成岩)は噴出した火山岩で、組成鉱物は斜長石、角閃石などで、硬く、色調は灰褐色のものが多く光沢がない。また、強度、耐久性に優れ、特に耐火性が大きい

2 ◯
粘板岩(変成岩)は、吸水性が少なく耐久性に優れている

4 ◯
石灰岩(堆積岩)は、取付け部耐力、曲げ強度等は他の石材に比べて小さく耐水性に劣る

[ No. 13 ]
ガラスに関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.強化ガラスは、板ガラスを熱処理してガラス表面付近に強い引張応力層を形成したもので、 耐衝撃強度が高い。

2.Low-E 複層ガラスは、中空層側のガラス面に特殊金属をコーティングすることで、日射制御機能と高い断熱性を兼ね備えたガラスである。

3.熱線反射ガラスは、日射熱の遮蔽を主目的とし、ガラスの片側の表面に熱線反射性の薄膜を形成したガラスである。

4.型板ガラスは、ロールアウト方式により、ロールに彫刻された型模様をガラス面に熱間転写して製造された、片面に型模様のある板ガラスである。

答え

  1
強化ガラスは、板ガラスに熱処理を施し、表面付近に強い圧縮応力層を形成したもので、耐衝撃強度が高い割れても破片が細粒状になる。加工後の切断はできない。

2 ◯
中空層側のガラス面に特殊金属をコーティングして断熱性能を高めた製品(低放射ガラス、Low-Eガラス)には、日射熱の流入に配慮した製品や内部を真空近くまで減圧し内部にガス封入した製品がある。

3 ◯
熱線反射ガラスは、フロート板ガラスの表面に反射率の高い薄膜(金属酸化物)をコートしたガラスで、日射エネルギーを反射し冷房負荷を軽減させる。可視光線を 30〜 40%反射し、ハーフミラー状になる。

4 ◯
型板ガラスは、2本の水冷ローラーの間に、直接溶解したガラスを通して製板するロールアウト方式により生産されるガラスで、下部のロールに彫刻された型模様をガラス面に型付けする。片面に型模様のある板ガラスである。

[ No. 14 ]
シーリング材に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.1成分形高モジュラス形シリコーン系シーリング材は、耐熱性・耐寒性に優れ、防かび剤を添加したものは、浴槽や洗面化粧台などの水まわりの目地に用いられる。

2.2成分形低モジュラス形シリコーン系シーリング材は、耐光接着性に優れ、ガラス・マリオン方式のカーテンウォールの目地に用いられる。

3.2成分形ポリウレタン系シーリング材は、耐熱性・耐候性に優れ、金属パネルや金属笠木などの目地に用いられる。

4.2成分形変成シリコーン系シーリング材は、耐候性・耐久性が良好で、プレキャストコンクリートカーテンウォールの部材間の目地に用いられる。

答え

  3
2成分形ポリウレタン系シーリング材は耐熱性、耐候性にやや劣るため、金属パネルや金属笠木などの目地には適していない

1 ◯
1成分形シーリング材は、あらかじめ施工に供する状態に調整されている成分形シーリング材。その中で1成分形高モジュラス形シリコーン系シーリング材は、耐熱性、耐寒性に優れ、防かび剤を添加したものは、水周りの目地に用いられる。

2 ◯
2成分形シーリング材は、施工直前に基剤と硬化剤を調合し、練り混ぜて使用するシーリング材をいう。

4 ◯
2成分形変成シリコーン系シーリング材は硬化途中に大きなムーブメントが予想される部位(金属カーテンウォールの目地、プレキャストコンクリートカーテンウォール部材の目地など)に用いる。

[ No. 15 ]
塗料に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.合成樹脂調合ペイントは、木部面の塗装に適している。

2.つや有合成樹脂エマルションペイントは、屋内の鉄鋼面の塗装に適している。

3.合成樹脂エマルションペイントは、せっこうボード面の塗装に適している。

4.アクリル樹脂系非水分散形塗料は、ガラス繊維補強セメント板(GRC板)面の塗装に適している。

答え

  4
アクリル樹脂系非水分散形塗料は、屋内のコンクリート面やモルタル面に適用し、ガラス繊維補強セメント(GRC板)面の塗装には適さない

1 ◯
合成樹脂調合ペイントは、はけ塗り作業に適しており、はけ目やだれが少なく、表面光沢をもつ平滑な仕上がり塗膜が得られるのが特徴。特に木部面塗装に適している。

2 ◯
つや有合成樹脂エマルションペイントの塗膜硬化機構は、合成樹脂エマルションペイントと同様である。一度硬化すると表面光沢のある、耐水性を有する塗膜になる。したがって屋内の鉄鋼面の塗装に適している。

3 ◯
合成樹脂エマルションペイントは合成樹脂共重合エマルションやラテックスをベースとして、着色顔料や体質顔料、補助剤、添加剤等を加えた水系塗料である。コンクリート、モルタル、プラスター、せっこうボード、その他ボード等の面に適している

3章 土工事 1節 一般事項 

第3章 土工事 


01節 一般事項

3.1.1 適用範囲

(a) この章は、建築物の建設工事に伴う根切りや地下掘削後の埋戻し、建物周辺の盛土等の土工事並びに山留め工事を対象とするもので、大規模な敷地造成工事等は対象としていない。

(b) 作業の流れを図3.1.1に示す。

図3.1.1 土工事の作業の流れ

(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を作成する。

① 工程表(山留め設置、根切り、埋戻し、山留め撤去等の時期)
② 山留めの工法及び安全を確認できる構造計算書(荷重、振動等に対する安全性の確認等)
③ 根切りの工法(順序、掘削機の種類と能力、予定搬出土量等)
④ 残土の処理方法(場外処理の場合は、地番、距離、処分地の種類等)
⑤ 法勾配並びに法面の養生方法及び法面の滑動のおそれがある場合の観測方法
⑥ 排水計画(排水溝の位置、釜場の位置、地下水の状況、揚水ポンプ能力と台数、台風あるいは停電時の対策、揚水停止時期の検討、流末の処置)
⑦ 埋戻し土の種類、締固め方法及び余盛り高さ
⑧ 安全管理対策(3.1.3の具体的実施方法及び関連対策等)
⑨ 公害対策(3.1.3の具体的実施方法等)
⑩ 作業のフロー、管理の項目・水準、方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

3.1.2 基本要求品質

(a) 一般に根切りの寸法や形状については設計図書に示されることはないが、法面の勾配等は、その掘削深さや土質等によって労働安全衛生法等によって定められている。したがって「形状及び寸法が所定のもの」としては、これらに基づき安全性を確保できるように、具体的な工法や安全対策等を提案させ、これによって施工させるようにする。

また、床付け面より下を深掘りしたり掘削機の刃先で乱したりして、地盤をかく乱すると、上部構造に沈下等の悪影響を与えるおそれがある。このため、掘削に当たっては床付け面をいかにかく乱しないような工法を採用するのか、また、もし万一床付け面を乱した場合の処置方法も含めて品質計画として提案させるようにするとよい。ここで床付け地盤が設計時に想定した条件と異なる場合は、設計担当者と打ち合わせて、処理方法を検討し、必要に応じて「標仕」1.1.8による協議を行い処理する。

(b) 埋戻しや盛土の材料は、一般に天然のものであり、「標仕」表3.2.1による種別の同じものが指定されていても、工事現場により材料の品質性状は異なったものとなる場合が多い。

一般に、土の場合は、その種類や含水状態によって、適切な締固めの方法や使用する機器等が異なる。したがって最も適切な締固めの方法及び管理の基準や方法等を品質計画で定め、それに従って管理したことが分かるようにしておく。

3.1.3 災害及び公害の防止

(a) 災害防止のために、特に注意する必要のある事項は、次のとおりである。

(1) 周囲の建物等の安全の確保
(2) 地中埋設物等に対する確認及び処置
(3) 土砂の崩壊による危険防止のための次の観測、測定等

なお、危険箇所については、常時巡視する態勢が必要である。
① 周辺地盤、法面に発生するひび割れ
② 周辺地盤の沈下、移動
③ 湧き水、漏水
④ 山留めの土圧、変形

(4) 法面保護
法面保護の方法には、通常次のようなものがある。

① メッシュ入りモルタル吹付け
② モルタル吹付け
③ 短期間及び大雨に対してはシートによる覆い
④ 吹付けは種

(b) 公害防止のために、特に注意する必要のある事項は、次のとおりである。
(1) 騒音、振動の防止
生活環境の保全と建設工事の円滑化を図るため、住居が集合している地域、病院又は学校周辺の地域等で、設計図書に、低騒音型・低振動型建設機械を使用するよう指定された場合は、「低騒音型・低振動型建設機械の指定に関する規程」(平成9年7月31日建設省告示第1536号)により指定された建設機械を使用する必要がある。

(2) 建設副産物の処理
建設副産物については.1.3.8を参考に適切に処理する。

(3) 土壌汚染対策については.1.3.11(a)による。

(4) 近隣の水位の低下並びに油滴、塵あいの飛散による汚れの防止等の調査及び防護、養生の検討

(5) 工事現場以外(運搬途中、敷地周辺)の道路、排水路の土砂、泥水による汚れ等の防止及び堆積しておく埋戻し土の雨による流出るの防止

(6) 連搬車の事故防止
(i) 土砂等を運搬する車両は、交通事故の防止対策等からダンプカー協会に加入している車両を優先的に使用する(土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特別措置法(昭和42年法律第131号))。

(ⅱ) 工事現場へ出人りする際の事故防止に努める。

1級建築施工管理技士 平成27年 学科 問題2解説

平成27年 1級建築施工管理技士 学科 問題2 解答解説

※   問題番号[ No.16 ]~[ No.20 ]までの 5 問題は、全問題を解答してください。

[ No. 16 ]
アスファルト舗装に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.プライムコートは、路盤の仕上がり面を保護し、その上のアスファルト混合物層との接着性を向上させる。

2.粒度調整砕石は、所要の粒度範囲に入るように調整された砕石で、路盤の支持力を向上させる。

3.フィラーは、アスファルトと一体となって、混合物の安定性、耐久性を向上させる。

4.シールコートは、路床の仕上がり面を保護し、その上の路盤との接着性を向上させる。

答え

  4
シールコートは、表層の水密性の増加、劣化防止、滑り止め及びひび割れの目つぶしなどの目的で既設の舗装面にアスファルト乳剤などを散布し、この上に骨材を散布して仕上げる。

1 ◯
プライムコートは、路盤の仕上げり面を保護し、その上に舗装すすアスファルト混合物層との接着をよくするために、路盤の仕上げ後にアスファルト乳剤を 1.5 ℓ /m2程度散布する。

2 ◯
粒度調整砕石は、JIS A 5001(道路用砕石)の規定により、用途に応じて清浄堅硬で耐久性があり、細長い石片、ごみ、泥、有機不純物等を有害量含まないもの。路盤の支持力を向上させる

3 ◯
フィラーは、アスファルトと一体となって、混合物の安定性や耐久性を向上させる働きがあり、一般には石灰岩または火成岩を粉末にした石粉が用いられる。

[ No. 17 ]
電気設備に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.電圧の種別で低圧とは、直流にあっては 750 V 以下、交流にあっては 600 V 以下のものをいう。

2.大型の動力機器が多数使用される場合の電気供給方式には、単相3線式 100/200 V が多く用いられる。

3.特別高圧受電を行うような大規模なビルや工場などの電気供給方式には、三相4線式 400 V 級が多く用いられる。

4.バスダクトは、電流の容量の大きい幹線に用いられる。

答え

  2
大型の動力機器が多数使用される場合の電気供給方式は、三相4線式が用いられる。単相3線式 100/200Vは、負荷の大きい住宅や店舗等で比較的容量の大きい照明、コンセント用の幹線に使用される。三相3線式200Vは、中規模建築物等で電動機等に使用されている。

1 ◯
電圧の種別には、低圧高圧及び特別高圧の3種類がある。電気設備に関する技術基準を定める省令(電圧の種別等)第2条 第1項 第一号 により、低圧とは直流にあっては 750V以下交流にあっては 600V以下と規定されている。

3 ◯
屋内配線に用いられる電気方式には、単相2線式単相3線式三相4線式がある。三相4線式は、主に大規模な建築物に用いられる。

4 ◯
バスダクトは、銅やアルミの裸導体を導体支持物で支持または絶縁物で被覆したもので、主として大きな電流が流れる低圧の幹線に使用する。

[ No. 18 ]
給水設備の給水方式に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.水道直結直圧方式は、水道本管から分岐した水道引込み管から直接各所に給水する方式である。

2.水道直結増圧方式は、水道本管から分岐した水道引込み管に増圧給水装置を直結し、各所に給水する方式である。

3.圧力水槽方式は、一度受水槽に貯留した水を、ポンプを介して直接各所に給水する方式である。

4.高置水槽方式は、一度受水槽に貯留した水をポンプで建物高所の高置水槽に揚水し、この水槽からは重力によって各所に給水する方式である。

答え

  3
圧力水槽方式(圧力タンク方式)は、上水や井水を一度受水槽に貯水し、これをポンプで圧力水槽に送水し、圧力水槽内の空気は圧縮、加圧して、その圧力で各所に給水する方式である。

1 ◯
水道直結直圧方式は、2階建て程度の小規模建物向けであり、水道管から給水菅を引き込み、直接、水道の圧力を利用し、各水栓に給水する方式で、給水圧は水道本管の圧力に左右される。設備費及び維持費が最も安価である。

2 ◯
水道直結増圧方式は、低中層、中規模建物向きで受水槽、高置水槽共に不要である。事前協議が必要となる。

4 ◯
高架水槽方式(高置タンク方式)は、上水や井水を一度受水槽に貯水し、ポンプで屋上等の水槽に揚水し、この水槽から重力によって各所に給水する方式で、中層、中規模以上の建物の一般的な給水方式。

[ No. 19 ]
エレベーターの管制運転に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.地震時管制運転は、地震発生時に地震感知器の作動により、エレベーターを避難階に帰着させるものである。

2.火災時管制運転は、火災発生時にエレベーターを避難階に帰着させるものである。

3.自家発時管制運転は、停電時に自家発電源でエレベーターを各グループ単位に順次避難階又は最寄り階に帰着させるものである。

4.浸水時管制運転は、地盤面より下に着床階がある場合で、洪水等により浸水するおそれがあるときに、エレベーターを避難階に帰着させるものである。

答え

  1
地震時管制運転は、地震感知器との連動によってエレベーターを最寄階に停止させる機能であり、地震発生時に乗客の安全を図り、機器の損傷を防止するため、できるだけ早期にエレベーターを最寄階に停止させることが目的である。
(機械設備工事監理指針)

2 ◯
火災時管制運転は、火災発生時にエレベーターを避難階に呼び戻す機能。この装置は防災センターで切換スイッチによる火災報知機の防炎信号によってすべてのエレベーターを一斉に避難階に呼び戻し帰着させるもの。
(機械設備工事監理指針)

3 ◯
自家発時管制運転は、停電時に自家発電源でエレベーターを各グループ単位に順次避難階に帰着させる機能。また、自家発電源の容量に余裕ができた場合、緊急救出の必要がある場合を考え、手動にて順不同に運転させて、早期に救出を完了させることができる。(機械設備工事監理指針)

4 ◯
浸水時管制運転は、地盤面より下に着床階があるエレベーターが高波、洪水等により浸水するおそれがある場合に、外部よりエレベーターへ信号を与えてエレベーターを速やかに最下階以外の避難階に帰着させる機能

[ No. 20 ]
請負契約に関する記述として、「公共工事標準請負契約約款」上、誤っているものはどれか。

1.受注者は、工期内で請負契約締結の日から6月を経過した後に、賃金水準又は物価水準の変動により請負代金額が不適当となったと認めたときは、発注者に対して請負代金額の変更を請求することができる。

2.発注者は、受注者が契約図書に定める主任技術者若しくは監理技術者を設置しなかったときは、契約を解除することができる。

3.受注者は、発注者が設計図書を変更したために請負代金額が 2/3 以上減少したときは、契約を解除することができる。

4.発注者は、工事の完成を確認するために必要があると認められるときは、その理由を受注者に通知して、工事目的物を最小限度破壊して検査することができる。

答え

  1
発注者はたは受注者は、工期内で請負契約締結の日から12月を経過した後に日本国内における賃金水準または物価水準の変動により請負代金額が不適当となったと認めたときは、相手方に対して請負代金額の変更を請求することができる。(公共工事標準請負契約 約款第25条第1項)

2 ◯
発注者は受注者が主任技術者または監理技術者を設置しなかったときは、この契約を解除することができる。(公共工事標準請負契約 約款第47条第1項)

3 ◯
受注者は、発注者が設計図書を変更したため請負代金額が 2/3 以上減少した時は、契約を解除することができる。(公共工事標準請負契約 約款第49条)

4 ◯
発注者は、工事の完成を確認するために必要があると認められるときは、その理由を請負者に通知して、工事目的物を最小限度破壊して検査することができる。
(公共工事標準請負契約 約款第31条)

3章 土工事 2節 根切り及び埋戻し

第3章 土工事 


02節 根切り及び埋戻し

3.2.1 根切り

(a) 根切りの留意点
根切りに先立ち処置する必要のある事項は、おおむね次のとおりである。

(i) 地盤調査の結果による地層及び地下水の状況把握
(ii) 近接した建物等への影響の有無(2.2.1 (a)(iii)参照)
(iii) 地中埋設物(2.2.1(a)(ii)参照)で根切りに掛かるもの及び周辺にあるものの移設養生等の処置
(iv) 山留めの安全性の確認(建設工事公衆災害防止対策要綱(建築工事編)(平成5年1月12日建設省経建発第1号)では、根切り深さ1.5 mを超える場合には、原則として山留めを設けるとしている(同要綱第45参照)。)
(v) 機械掘削を行う場合の転倒、転落の防止
(vi) 構台を架設した場合の荷重、振動に対する安全性の確認

(b) 根切りの概要
(1) 根切りの種類
(i) 総掘り :地下室等がある場合に建物全面を掘る。
(ii) 布掘り :連続基礎等の場合に帯状に掘る。
(iii) つぼ掘り:独立基礎等の場合、角形又は丸形に掘る。

(2) 根切り深さ
根切り深さは、砂利地業等の突固めによるくい込み量〈突代、突べり〉(土質等により0 ~ 30mm位まで)を見込んだ深さとする。

(3) 根切り範囲の計画
根切り範囲を定めるには、山留め、コンクリート型枠の組立、取外し等の作業がある場合においても作業が十分できるよう、山留めと型枠組立材料との間に作業者が入れる間隔を見込んでおく。その間隔は、通常の場合は図3.2.1のように、布掘りでは基礎幅から300~600mm、総掘りの場合は 1m 程度とする。ただし、除去の必要のないラス型枠材料等による場合や、連続地中壁やソイルセメント壁による山留め壁を直接外型枠として使用する場合等ではこの限りではない。


(イ)布掘りの場合


(ロ)総掘りの場合(外型枠が必要な場合)


(ハ)総掘りの場合(外型枠がない場合)
図 3.2.1 根切り範囲

(4) 根切り工事の計画
根切り工事では、掘削と山留め支保エの架設がバランスよく、かつ、 タイミングよく行われることが非常に大切である(図3.2.2参照)。また、掘削の実施においては、山留めの設計条件を十分に確認し、設計条件に合致した方法により施工を行うとともに安全を確認して工事を実施する必要がある。


(イ) バランスのとれた掘削方法


(ロ) バランスがくずれやすい掘削方法
図3.2.2 掘削方法

(5) 根切り底の施工
根切り底は、水平にしなければならないのは当然のことであるが、機械掘削をする場合には所定の深さより深く掘り過ぎないこと及び地盤面を乱さない(荒らさない)ことに注意する必要がある。深く掘り過ぎたり、乱したりした場合は、砂地盤の場合には、ローラー等による転圧や締固めによって自然地盤と同程度の強度にする。シルトや粘性土等の場合には、自然地盤以上の強度をもつ状態に戻すということは非常に困難なので、砂質土と置換して締め固め、自然地盤と同程度の強度にする処置が必要となる。また、砂質土による置換では強度の回復が困難と判断される場合は、セメント、石灰等の改良材を用いて地盤の改良を行う方法もあるので、地盤強度の確保の方法等について設計担当者と打ち合わせる。

一般的なバケットを用いた機械掘削では、通常床付け面より300~500mmの位置より手掘りとするか、バケットに平板状の特殊なアタッチメント(鋼板等)を取り付けたもので、根切り底が乱されるおそれのないものとして、機械を後退させながら施工する(図 3.2.3参照)。杭間ざらいでは、杭体に損慟を与えることや地盤の乱れを生じることのないよう、小型の機械に変更するなどし、十分に注意して施工を行う。

また、地下水処理が十分でない場合、根切り底が乱されるため、地下水の処理は十分に行う。


図 3.2.3 機械掘削の例

(6) 根切り底の検査
根切り底は、レベルチェック及び地盤状態の検査をしたのちに、捨コンクリートや基礎スラプの施工にかからなければならない。レベルチェックは、レベルを用いたり、遣方に水糸を張りスケールを用いるなどして行う。測定部分の大きさにもよるが、つぼ掘りは周囲4点と中央1点、布掘りは2 ~ 3 mごとに1点、総掘りは 4mごとに1点程度を目安として実施することが望ましい。地盤の状態(根切り底の乱れ及び地層の種類・強さ等)に関する検査は、通常、床付け地盤が設計図書、地盤調査報告書に示された地層、地盤に合致していることを土質試料等を参考に目視によって確認するが、その確認が難しい場合には「標仕」1.1.8の規定に基づき土質試験や原位置試験等の適切な試験によって確認する。

参考として地盤の状態の簡易判別法を示す(表 3.2.1 参照)。

表 3.2.1 地盤の状態の簡易判別法( JASS 3(一部修正)より)

(c) 掘削深さと法面の勾配

(1) 法面の勾配
法付けオープンカット工法により掘削を実施する場合、法面の勾配は、土の安息角や粘着力により決まるが、特に粘着力は土の含水量によっても変化する。切土における法面勾配の目安として表 3.2.2 が示されている。法面の勾配は、規模が大きくなれば安定計算によって安全を確かめて決定する。また、法面及び法尻は安定勾配以下であっても、降雨・乾燥のくり返しにより崩れやすくなるので、存置期間中に異常を生じないように、排水・養生を行う。地下水位が浅い場合は、排水溝、集水桝等による地下水処理を行う(図 3.2.4参照)。


(イ)ウェルポイントによる地下水位の低下


(ロ)法面の崩壊防止


(ハ)砂粒子の流出防止


(ニ)法面の養生
図 3.2.4 法面の排水、養生の例( JASS 3より)

表3.2.2 切土に対する標準法面勾配(山留め設計施工指針より)

(2) 手掘り掘削時の規定
手掘りとする場合は、労慟安全衛生規則に勾配と高さが定められているので、これらを基に安全性を確保しながら掘削する(表 3.2.3参照)。

表3.2.3 手掘りによる掘削作業での掘削面の勾配の基準(労例安全衛生規則)

(d) 寒冷期における施工時の注意

(1) 施工上の留意点
寒冷地の冬期施工に当たって、特に注意をしなければならないものに凍結現象がある。凍結した土は強度的にみて良質な地盤と間違えやすいが、氷が溶けると体積が減少し、沈下現象に結びつく。したがって、凍結させないような施工管理が必要である。

(2) 凍結時の対策
床付け地盤が凍結した場合、この土は乱された土と同様に扱い、良質土と置換するなどの処置を行う。

(e) 土工事用機械
土工事に用いられる主な使用機械を、表 3.2.4に示す。また、根切り用の掘削機械の種類を図 3.2.5に示す。

施工に用いる機械については、近接住民の生活環境の保全の必要性のある場合について、昭和51年に「建設工事に伴う騒音振動対策技術指針」(昭和62年全面改正)が定められているので、これによって施工する。

表 3.2.4 土工事作業と主な使用機械

図 3.2.5 根切り用掘削機械の種類

3.2.2 排 水

(a) 地下水処理工法の概要

地下水処理工法には、大別して排水工法、止水工法、リチャージ工法があり、図 3.2.6 に示すようにそれぞれ多くの種類がある。工法の選定に当たっては、必要とする揚水量・排水を行う地下水の深度等の目的に対する適合性・施工性・工期・コストのほか、揚水による地下水位低下に伴う井戸枯れや地盤沈下等の周辺への影響を考慮しなくてはならない。多くの場合、止水工法は山留め工法に直接かかわるため地下水処理工法と山留め工法は同時に検討すべきである。

また、最近では周辺の井戸枯れや地盤沈下防止等を目的にリチャージ工法を採用することもある。


図 3.2.6 地下水処理上法の種類(山留め設計施工指針より)

(b) 排水工法
排水工法は、地下水の揚水によって水位を掘削工事に必要な位置まで低下させる工法で、地下水位の低下量は揚水量や地盤の透水性等によって決まり、通常、透水係数が 10-4cm/s程度より大きい地盤(帯水層)に適用される。

土粒子の径と排水工法の適用範囲を図 3.2.7に示す。

図 3.2.7 土粒子の径と排水工法の適用範囲(根切り工事と地下水より)

この排水工法を集水原理で分ければ、ウェル等の排水設備に流入する水を揚水する重力排水工法と、負圧等を利用して強制的に水を流入させ排水する強制排水工法とがある。現在よく用いられる工法は、釜場工法、ディープウェル工法、ウェルポイント工法及びバキュームディープウェル工法であり、工法は排水の実施位置及び必要とする揚水量等を考慮し決定する。

(c) 各種排水工法の特徴と注意点は次のとおりである。
(1) 釜場工法
根切り部へ浸透・流水してきた水を、釜場と称する根切り底面よりやや深い集水場所に集め、ポンプで排水する最も単純で容易な工法である(図 3.2.8参照)。釜場は、根切りの進行に合わせて下げるとよい。

また、この工法の注意点は次のとおりである。

① 湧水に対して安定性の低い地盤への適用は、ボイリングを発生させ地盤を緩めることにつながるので好ましくない。

② 主として、雨水を処理する場合は、根切り底に排水溝(明きょ)を設けるなどして雨水を集水桝に集めてポンプで排出する。この場合、集水桝は 図 3.2.9 のように基礎に影響を与えない場所に設ける。

③ べた基礎のように上部構造の応力を地盤に伝えるために設けた基礎スラプ下の地盤は、その影評範囲を地下水で乱してはならない。床付け地盤面に地下水が流入する場合には適当な排水処置をとり、地下水により基礎スラプ下の床付け地盤の支持力が低下しないようにしなければならない。

④ 釜場にはフィルターを設け、地盤中の砂分を揚げないようにしなければならない。


図 3.2.8 釜場工法


図 3.2.9 集水枡の位置

(2) ディープウェル工法
根切り部内あるいは外部に径500~1,000mmで帯水層中に削孔し、径300~600 mmのスクリーン付き井戸管を設置してウェルとし、水中ポンプあるいは水中モーターポンプで帯水層の地下水を排水する工法である(図 3.2.10 参照)。砂層や砂礫層等、透水性のよい地盤の水位を低下させるのに用いられる。この工法は、ウェル1本当たりの揚水量が多く、また、深い帯水層の地下水位を大きく低下させることが可能であるなどの特徴があるが、(4)のウェルポイント工法等に比べて設置費用が多額である。したがって、必要排水量が非常に多い場合、対象帯水層が深い場合、帯水層が砂礫層であるなどによりウェルポイント工法では処理できない場合、ウェルポイントの設置によってだめ工事(手直し工事)が多くなる場合等に採用すると有効である。

また、ディープウェル工法による揚水は、周辺地下水位も大きく低下させることが多く.周辺の井戸枯れや地盤沈下等を生じるおそれがあるので、採用に当たってはこの点を考慮しなくてはならない。


図 3.2.10 ディープウェル工法

(3) 明きょ・暗きょ工法
明きょ工法は排水溝により集水し、暗きょ工法は地中に設置した暗きょにより集水し、排水する方法をいう。

(4) ウェルポイント工法
根切り部に沿ってウェルポイントという小さなウェルを多数設置し、真空吸引して揚排水する工法であり( 図 3.2.11参照)、透水性の高い粗砂層から低いシル卜質細砂層程度の地盤に適用される。可能水位低下深さはヘッダーパイプより4~6m程度である。1本当たりの揚水量は土質によって異なるが、通常10~20ℓ/min程度、場合によっては50ℓ/minになることもある。

また、この工法の注意点は次のとおりである。

① 地下水位低下により、周囲地盤が多少とも沈下するため、計画時にその影響を調査・検討する。

② 地下水をくみ上げるため、周囲の井戸水等の水位低下や井戸枯れを生じることもあるので事前に調査する必要がある。

③ ポンプが故障した場合、水位の上昇により山留め崩壊等の大事故になるおそれがあるので、予備ポンプの設置が必要である。

④ 排水により、根切り底・法面・掘削面に異常が起こらないように排水処理を確実に行う。

⑤ ウェルポイントの排水を停止する場合は、地下水位の上昇により、建物、地中埋設物等の浮上がりによる破壊、損傷等を起こさないように、排水停止時期について十分に検討する。

⑥ 気密保持が重要であり、パイプの接続箇所で漏気が発生しないようにする。


図 3.2.11 ウェルポイント工法

(5) バキュームディープウェル工法
ディープウェルに真空ポンプを組み合わせた排水工法で、帯水層の透水性が低い場合やディープウェルの設置方法が悪いため、水位低下しにくい場合に採用することが多い。ウェル内を負圧にして地下水を吸引するため、ウェルの気密性を保つ必要がある。

(d) 止水工法
止水工法は、図 3.2.12 に示すように、根切り部周囲に止水性の高い壁体等を構築し根切り部への地下水の流入を遮断する工法で、大別すると地盤固結工法・止水壁工法及び圧気工法がある。

盤ぶくれ防止のために被圧帯水層を遮断したり、山留め背面地盤に砂質土層があってこれを止水する必要のある場合や、地下水の低下によって周辺の井戸枯れや地盤沈下、あるいは地下水塩水化等が問題になり排水工法が適用できない場合等に、止水工法が採用される。更に、下水道・水路等の放流場所がない場合や、放流場所の可能放流(排水)量が小さく排水工法が採用できない場合、下水道料金や排水工法の設備設置費のために止水工法を採用した方が低コストで済む場合等にも採用される。また、現場条件やコスト等から止水工法と排水工法を併用する場合もある。

止水工法としてよく用いられるのは、止水壁工法と地盤固結工法であり、工法選定の際の主な注意点は次のとおりである。

① 止水壁は山留め堅としても用いることが大部分であり、設計の際はこの点を考慮しなくてはならない。

② 工法によって施工深度や適用地盤等が異なり、また、敷地条件によって採用できない場合がある。

③ 一般には仮設であるが、止水矢板工法を除き撤去できない。


図 3.2.12 止水工法による地下水処理

(e)リチャージ工法
リチャージ工法は復水工法ともいい、ディープウェル等と同様の構造のリチャージウェル(復水井)を設置して、そこに排水(揚水)した水を入れ、同一のあるいは別の帯水層にリチャージする工法である(図 3.2.13参照)。この工法は、周辺の井戸枯れや地盤沈下等を生じるおそれがある場合の対策として有効な工法である。

本工法の注意点を次に示す。

① 同一帯水層にリチャージする場合、排水工法だけを採用する場合に比べて必要排水(揚水)量が増加するので、ディープウェル等の排水設備も増える。その程度はリチャージウェルが揚水井に近いほど多くなる。したがって、リチャージウェルは揚水井とできるだけ離す方が効果的である。

② 山留め壁の根入れ以浅の帯水層けリチャージする場合、山留め壁への側圧(水圧)が増加するので検討が必要となる。

③ リチャージ量は、水中の鉄分、細粒分のほか、バクテリア等によって目詰りし、次第に減少する。したがって、必要に応じてリチャージウェルの洗浄が必要である。


図 3.2.13 リチャージ工法の例(根切り工事と地下水より)

3.2.3 埋戻し及び盛土

(a) 埋戻しに当たっては、埋戻しが不十分な場合沈下が生じ、建物周辺の外構や埋設管等に影響を及ぼす可能性がある。

施工に当たっては、埋戻し材料の選定と締固め管理が重要となる。

(b) 埋戻し部の型枠材等の撤去
埋戻しに先立ち、埋戻し部の型枠材等を撤去したのち、埋戻し作業を実施する。これは、型枠材を存置すると腐食により地盤の沈下を生ずる場合があるためである。なお、腐食に伴う沈下の発生のおそれのない型枠材としてはラス型枠材料等があり、これを使用した場合には撤去の必要はない。

(c) 材料及び工法等
(1) 埋戻し及び盛土の種別等
「標仕」では、埋戻し及び盛土の種別を、土の種類とそれに適した工法の組合せとして「標仕」表 3.2.1のように区分し、その種別を特記することとしている。
このうちA種は、山砂で一般的には水締めのきく砂質土を想定している((3)参照)。

また、B種は、当該現場で発生した根切り土の中で、有機物、コンクリート塊等を含まない良質土を想定しているが、このような良質の発生土が埋戻し等に必要な量として不足する場合は、設計担当者と打ち合わせ、必要に応じて「標仕」 1.1.8による協議を行う。

C及びD種については、建設発生材の有効活用が社会的命題であり、積極的に使用することが望ましい。

国土交通省では、建設工事に伴い副次的に発生する建設汚泥の処理に当たって、基本方針、具体的実施手順等を示すことにより、建設汚泥の再生利川を促進し、最終処分場への搬出量の削減、不適正処理の防止を図る目的から、「建設汚泥の再生利用に関するガイドライン」(平成18年6月12日)を作成した。

このガイドラインは、国土交通省所管の直轄事業に適用するとともに、その他の事業においてもガイドラインに準拠して建設汚泥を取り扱うことを期待しているものであるが、環境基本法に基づく土壌汚染対策法に定める特定有害物質の含有量基準に適合しない建設汚泥は対象外としている。

なお、上記以外として「標仕」には規定されていないが、最近では、建設発生土に水や泥水を加えて泥状化したものに固化材を加えて混練した流動化処理土が用いられる場合がある( JASS 4参照)。

(2) 埋戻し土の性状
埋戻し土には腐食土や粘性土の含有量が少なく、透水性の良い砂質土を用いるのがよい。また、均等係数が大きいものを選ぶ。均等係数の算定は土の粒度試験結果の片対数用紙の対数目盛に粒径を、算術目盛に通過質量百分率をとって、図 3.2.14のような粒径加積曲線として描く。そしてその性質を定量的に示す係数として、均等係数 Ucと曲率係数 U’c を次式から求める。


図 3.2.14 粒径加積曲線

(3) 埋戻し及び盛土材料の粒度組成
山砂、川砂及び海砂の粒度組成の一般的な比較は表 3.2.5のようになり、埋戻し土には山砂が最も適している。これは埋戻し土としては、分離作用を強く受けて均一粒子となっている砂(海砂等)よりも砂に適度の礫やシルトが混入された方が大きい締固め密度が得られるからである。
また、使用する埋戻し土については、必要に応じて粒度試験等を実施するのが望ましい。表 3.2.6 に埋戻しに適した材料の粒度と性質を示す。

表 3.2.5 山砂、川砂及び海砂の一般的な粒度特性

表 3.2.6 埋戻しに適する材料の粒度と性質( 山留め設計施工指針より)

(4) 土質と締固め方法
締固めは、川砂及び透水性のよい山砂の類の場合は水締めとし、透水性の悪い山砂の類及び粘土質の場合はまき出し厚さ約300mm程度ごとにローラー、ランマー等で締め固めながら埋め戻すのが原則である。埋戻し時には、建物躯体のコンクリートが締固めを行うのに必要な強度を発現していることを確認する。建築物周囲の深い根切りの部分は、機械で締め固めるのは困難なことが多いので、整地後の地盤沈下を防止するには、川砂又は透水性のよい山砂の類を使用し、水締めをする必要がある。設計屈瞥の指定が適当でないと思われる場合は、設計担当者と打合せを行い決定する。

(5) 土の含水と締固め
土は、ある適当な含水比のとき最もよく締め固まり、締固め密度を最大にすることができる。このような含水比を最適含水比という。

(6) 寒冷期の施工時の注意
凍結土を埋戻し、盛土や地均しの材料として使用すると、凍結土が浴けた際に、地表面に凹凸・舗装面や犬走りにひび割れ等が発生しやすくなるので、使用してはならない。

(d) 余盛り
埋戻し及び盛土には、土質による沈み代を見込んで余盛りを行う。余盛りの適切 な標準値はなく、表 3.2.7 は一つの参考値であるが、これにより推定することは容易でない。通常の埋戻し( 地下2階で幅 1m程度 )において、砂を用い十分な水締めを行う場合 50~100mm、粘性土を用い十分な締固めを行う場合、100~150mm程度が余盛りの目安と考えられるが、重要な盛土では、試験により余盛りを決めるのがよい。

表 3.2.7 余盛りの参考値

3.2.4 地 均 し

地均しは、均しを行う地表面の不陸を修正し、草木の除去及び清掃をして、一様にかき均したのち、仕上げ面を一様になじみ起こしをして、良質土をまきかけ、歩行に耐えうる程度に締め固める。ここで、地表面は施工時に工事車両の走行や作業通路として締め固められており、地均し面の不陸の発生要因となるため、なじみ起こしは確実に実施する。また、寒冷期の施工に当たっては、凍結土を使用しないようにする。

3.2.5 建設発生土の処理

(a) 建設発生土処理についての注意事項
建設発生土を搬出する際、工事用車両の作業所出入口には、標識・点滅灯等を設置し、第三者に工事用車両の出入りを明示するほか、車両誘導員を配置して人身事故の防止及び作業所周辺道路に交通渋滞を生じさせないよう努力する必要がある。

また、建設発生土の運搬に当たっては過積載防止に努めるとともに、運搬中に土砂がこぼれ落ちないようにシート等を掛けて養生する。タイヤに付着した泥土は作業所内で洗浄し、通行する逍路を汚損しないようにする。

なお、平成14年に制定された土穣汚染対策法により、「その土地が特定有害物質によって汚染されており、当該土地の形質の変更をしようとするときの届出をしなければばらない区域」として都道府県知事が指定した区域内で土工事等を行う場合は、施行方法等の計画を事前に知事に届け出ることとされているので注意する (1.3.11 (a)参照)。

(b) 建設発生土処理に関する法規
建設発生土の運搬は、「土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特別措置法」に基づき、地方運輸局長から表示番号の指定を受けたトラックとする必要がある。また、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」並びに各地方公共団体による規制・指導に基づき建設発生土処理計画を作成し、これに従って適切に処理する。

なお、これらのほかに、(一財)土木研究センターの「建設発生土利用技術マニュアル」等が参考となる。

(c) 建設発生土の再利用
国土交通省が推進している「建設発生土情報交換システム」により、近隣地域での建設発生土や購入希望土等の情報がデータベース化されている。これを活用することにより、建設発生土の再利用を図ることが望ましい。
また、建設発生土の再利用については、平成3年建設省令第19号に技術基準が示されている。その抜粋を次に示す。

建設業に属する事業を行う者の再生資源の利用に関する判断の基準となるべき事項を定める省令
(平成3年10月25日 建設省令第19号 最終改正 平成13年3月29日)
(建設発生土の利用)
第4条
建設工事事業者は、建設発生土を利用する場合において、別表第1の上欄に掲げる区分に応じ、主として下欄に掲げる用途に利用するものとする。
2 前項の場合において、建設工事事業者は、建設発生土の品質等に関する技術的知見に基づき、建設工事の施工又は完成後の工作物(建築物を含む。以下同じ。)の機能に支障が生じないよう、適切な施工を行うものとする。
3 建設工事事業者は、建設発生土の利用に当たって、あらかじめ建設発生土の発生又は利用に係る必要な情報の収集又は提供に努めるものとする。