11節 軽量形鋼構造
7.11.1 適用範囲
この節は、冷間成形された軽量形鋼を使用する場合を対象としており、この節に規定されていないものは、1節から10節まで及び12節によればよい。
以前は、軽量形鋼によるラチス構造等が広く用いられていた。しかし、最近では二次部材として使用することが一般的である。
7.11.2 施 工
(a) 材 料
(1) 鋼 材
(i) JIS G 3350(一般構造用軽量形鋼)は、建築その他の構造物に用いる冷間成形の軽量形鋼であり、種類はSSC400 1種類で、断面形状による名称には、軽溝形鋼、軽Z形鋼、軽山形鋼、リップ溝形鋼、リップZ形鋼、ハット形鋼がある。
(ii) 鋼材の品質を試験により証明する場合は、7.2.10による。
(2) アーク溶接棒は、JIS Z 3211 (軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒)を参照する。アーク溶接棒の棒径は4.0mm以下で、かつ、板厚に見合ったものを選ぶ必要がある。炭酸ガスシールドアーク半自動溶接を用いる場合には、溶落ちしないように適切な溶接条件を選定する。
(3) 高カボルトは7.2.2を、普通ボルトは7.2.3を参照する。
(b) 施 工
(1) 切 断
軽量形鋼部材は薄くて複雑な形状であるため、切断に際しては、一般の鋼材と比べて特別な注意が必要である。
① 部材の切断面は、特に図面で指定されたもの以外は軸線に垂直でなければならない。これは、以後の加工・組立・溶接の工程においてすべてこの断面が基準となるためである。また、切断の際、断面形状を損なわないように注意する必要がある。機械切断によって生じたまくれは、やすり等を用いて取り除かなければならない。
② 部材の切断は機械切断とする。①に述べたように、切断面は加工の基準となるものであり、正確さを必要とするためである。
手動ガス切断は、断面が不正確に切断されるため、避けなければならない。不正確に切断された断面をグラインダー等で正確に仕上げることは実際には無理で、体裁だけの補修になってしまうためである。
(2) 防錆
(i) 軽量形鋼構造に用いられる部材は、板厚が薄いので腐食に対する安全性が一般の鋼構造より低く、十分な防錆処置を要する。
(ii) 鋼材に防錆処理を施した場合でも、錆びにくい環境をつくり出すよう努め、足りないところを塗装で補うという考え方が大切である。また、設計上の配慮によって解決される点も多い。その場合の留意点を次に示す。
① 雨水にふれても水が滞留せず、常に乾燥するよう通風を良くする。雨水が滞留するおそれのある部材、例えばリップ溝形鋼の横架材等は、適切な水抜き孔をあけて雨水の排出を考慮する。
② 雨水の掛かる箇所では、再塗装のできない構造を避ける。特に、管形断面の部材では、必要に応じて、端部に同質材のふたをする。また、鋼板挟みの二丁合わせで閉鎖形の断面になるような部材は、隙間を密閉しなければ建築物の外回りへ露出させてはならない。
③ 錆の発生を点検できるような構造とし、再塗装が容易なように考慮する。
④ 防錆上の弱点となりやすい部位には、防ぎ得ない錆を予想し、あらかじめ断面の割増し等肉厚の大きい鋼材の仕様も考慮するとよい。
(iii) 再塗装の困難な建築物の部分及び錆の発生しやすい環境にある建築物の部分の防錆は、亜鉛めっきとするのが望ましい。亜鉛めっきに関しては12節を参照する。
(3) 高力ボルト・ボルト接合
「標仕」ではボルト接合は、特記によるとしている。孔は、組合せ材片を正しく接合するために精度良くあけるとともに、各材片の孔心を一致させるよう工作することが重要である。ドリルあけのまくれやポンチあけの変形は、組み合わせた材片間に隙間を生じてボルトの締付けや摩擦力に支障を来すので、必ず取り除かなければならない。まくれを取るにはグラインダー等で軽く取り除くのがよいが、部材を削り過ぎないよう注意を要する。
軽量形鋼構造に高カボルトを用い、設計上のすべり係数を0.23としている場合、摩擦面は、脱脂等の処理を行ったうえで、堅固な黒皮表面とすることができる。ただし.浮き錆、塵あい、油、塗料等摩擦力を低下させるものを除去する必要がある。脱脂した黒皮表面は、赤錆を発生させた表面に比べてすべり係数が低下する。しかし、軽量形鋼構造に用いられる部材は板厚が薄く形状も複雑なので.黒皮を除去するため薄く削り過ぎたりグラインダーやショットブラストが掛けられないこともあるため、堅固な黒皮は除去しなくてもよい。その場合の摩擦面は.黒皮を除去し赤錆を発生させた場合のすべり係数の1/2 (0.23)以上を確保できるようにしておかなければならない。
高力ボルト接合を行う部材は、その接触面が正確に密着するよう留意する必要がある。特に、軽量形鋼部材は、板厚が薄く、ひずみ・反り・曲がり等が生じやすい部材なので必ず矯正するか、又はフィラー鋼板を挿入するなどしてこれらを補う必要がある。
(4) 高力ボルト及び普通ボルトのピッチ、へりあき等は.7.3.2(c)による。
(5) 「標仕」では、普通ボルトの孔径の限度はボルト径+0.5mmとなっている。ただし「標仕」では、母屋、胴縁類の取付け用ボルトの場合、ボルト径+1.0mmとしている。
(6) 普通ボルトには戻止めが必要であるが、通常次のような工法がある。
(i) 二重ナット
ナットを二重にする(図7.11.1参照)。一般に戻止め用のナットは本ナットと同じ厚さのもの(2種)が用いられるが(7.2.3(b)参照)、やや厚さの薄いもの(3種)でもよい。二重ナットの締付けは、7.5.2 (3)を参照する。
図7.11.1 二重ナット
(ii) スプリングワッシャー
特殊なスプリングになっている座金を用いる。
(iii) 溶接
ナットとボルトを溶接する。この際はボルトの全周にわたり溶接する。この方法は簡易な構造物で、かつ、見ばえに支障のない箇所以外には用いてはならない。
(7) せん断ボルト
せん断ボルトとは、図7.11.2の力Pをせん断力により伝達するボルトであり、ほとんどの普通ボルトはせん断ボルトである。このボルトの耐力は鋼板の側圧で決まる場合があるので、ねじ部分がグリップ(締付け厚さ)に掛かってはならない。このためには厚い座金が必要になる。また、強度上は必ずしも必要ではないが、材料精度等を考えると、完全なねじ山が3山以上ナットの外に出ているようにするのがよい。
図7.11.2 せん断ボルト
7章 鉄骨工事 13節 鉄骨工事の精度
13節 鉄骨工事の精度
7.13.1 一般事項
(a) 「鉄骨造の継手又は仕口の構造方法を定める件」(平成12年5月31日建設省告示第1464号)により,表7.13.1に示す項目について限界値が規定された。①の限界値は、JASS 6付則6[鉄骨精度検査基準]における限界許容差と同じであるが、②の通しダイアフラムと梁フランジの関係は、JASS 6付則6では規定されていない。また、③は、JASS 6付則6よりも厳しい規定となっているので、注意が必要である。表7.13.1に示す項目についての検査方法補強方法等については、鉄骨製作管理技術者登録機構「突合せ継手の食い違い仕口のずれの検査・補強マニュアル」を参考にするとよい。
表7.13.1 溶接部の形状・寸法
(b) 「標仕」7.3.3及び「標仕」7.10.2で、鉄骨の製作精度及び建方等の工事現場施工の精度は、JASS 6付則6によることとしている。次にその抜粋を示す。
この基準は、一般の構造物の主要な鉄骨の製作ならびに施工に際しての寸法精度の許容差を定めたものである。許容差は、限界許容差と管理許容差に区別して定めた。限界許容差は、これを超える誤差は原則として許されない最終的な個々の製品の合否判定のための基準値である。一方、管理許容差は、95%以上の製品が満足するような製作または施工上の目安として定めた目標値であり、寸法精度の受入検査では、検査ロットの合否判定のための個々の製品の合否判定値として用いられる。
寸法精度の受入検査において、個々の製品が限界許容差を超えた場合には不良品として、再製作することを原則とする。ただし、再製作できない場合にはそれに相当する補修を行い再検査に合格しなければならない。また、個々の製品が管理許容差を超えても限界許容差内であれば補修・廃棄の対象とはならない。管理許容差を合否判定値として抜取検査を行う場合、検査ロットが不合格となった場合は、当該ロットの残りを全数検査する。ただし、検査ロットの合否にかかわらず限界許容差を超えたものについては、工事監理者と協議して補修または再製作等の必要な処置を定める。
なお、本基準は以下に示すものには適用しない。
(1) 特記による場合または工事監理者の認めた場合
(2) 特に精度を必要とする構造物あるいは構造物の部分
(3) 軽微な構造物あるいは構造物の部分
(4) 日本産業規格で定められた鋼材の寸法許容差
(5) その他、別に定められた寸法許容差
付表1 工作および組立て
付表2 高力ボルト
付表3 溶 接
付表4 製 品
付表5 工事現場
7章 鉄骨工事 14節 資 料
14節 資 料
7.14.1 溶接用語
JIS Z 3001-1(溶接用語一第1部:一般)
JIS Z 3001-2(溶接用語一第2部:溶接方法)
JIS Z 3001-4(溶接用語一第4部:溶接不完全部)
の抜枠を次に示す。
なお、JIS Z 3001-3(溶接用語一第3部:ろう接)は省略する。
4.1 共通
4.1.1 基本
4.1.2 溶接部の性質
4.2 試験
4.2.1 試験一般
4.4 アーク溶接
4.4.3 溶接継手
4.4.4 溶接姿勢
4.6 特殊の溶接
4.6.5 ロボット溶接
4.7 ガス溶接及び熱切断
4.7.1 溶接・切断方法
JIS Z 3001-1 : 2013
4. 用語及び定義
4.3 融接
4.3.3 アーク溶接
4.3.6 エレクトロスラグ溶接
4.4 アーク溶接の施工
4.4.1 溶接施工
4.4.2 溶接施工管理
4.4.3 溶接補助材
JIS Z 3001-2:2013
4. 用語及び定義
4.2 溶接不完全部一般
4.4 空洞
4.5 介在物
4.6 融合不良・溶込不良
4.7 形状不良
JIS Z 3001-4:2013
7.14.2 建築構造用鋼材の品質証明ガイドライン
(a) 「建築構造用鋼材の品質証明ガイドライン」が.これまでの「建築構造用鋼材の新しい品質証明方式」に代わり,2009年12月に(-社)日本鋼構造協会 建築鉄骨品質管理機構から発行された。本ガイドラインの骨子を次に示す。
(1) 鋼材等の品質確認は、書類による品質確認と現物の品質確認で行われる。
(2) 規格品証明書の原本を保有する工程(会社)が使用した鋼材の規格品証明料の内容をリスト化し,原品証明書(用紙C)を作成発行する。
(3) 用紙Cに基づき鉄骨製作業者は鉄骨工事使用鋼材等報告書(用紙B)を作成する。
(4) 用紙B、Cの表紙として用紙A1、A2を作成する。
(5) ミルシート及びその写しの提出を不要とする。
(6) ミルシートを提出する従来方式の場合によるか本方式によるかは事前に合意しておく。
(b) 「建築構造用鋼材の品質証明ガイドライン」(2009年12月25日1版)の抜粋を次に示す。
なお、実際の工事に適用する場合は、ガイドライン本文を参照する必要がある。
1.2 本ガイドラインの活用の前提
1.2.1 自工程管理に基づく品質管理
施工者は鉄骨製作に必要な設計図書を設計者から受理して後、鉄骨製作業者へ支給する。その仕様に基づき鉄骨製作業者が材料を発注する。鉄骨製作業者が製作した鉄骨製品は施工者の受入検査を経て工事現場へ搬入され,工事現場で組立て、接合され鉄骨が完成する。そして施工者は建物完成後、施主へ引き渡す。このように鉄骨工事においては、施主と施工者、施工者と鉄骨製作業者という2段階の契約関係があり、施工者は建築工事の元請けとして鉄骨製品の品質についても責任を有する。
建築基準法で鋼材類(鋼板、形鋼)はJIS規格適合であることが規定されている。また、鋼材類は初期(製造出荷)段階でJIS規格適合も含む製品の個別識別がなされている。その鋼材類は、製造メーカーから鉄骨製作工場へ直接、あるいは切断などの中間加工をされて納入される。いずれの場合も初期段階で特定された鋼材類が、工程の各段階で間違いなく流通しなければならない。
鋼材類の流通過程の各段階で使用されている鋼材類の品質を確認し、その結果を書類に残し次の工程へ渡すことで結果として流通段階で間違い無く使用されたことが証明できる。
鋼材等の品質確認は「書類確認」と「現物確認」によって行われる。そして「書類確認」については、「規格品証明書の確認」がポイントとなる。(注1)
鉄骨の品質は関連する全ての工程で作りこむという自工程責任による自主管理を尊重することで過度の費用が発生しないようにする事ができる。本ガイドラインは特に鋼材類の流通や各工程段階での自主管理を明確に打ち出したものと考えることができる。
施工者は鉄骨製作業者を通して提出される書類の内容を確認することで材料管理の証しとすることになる。そのため、書類の内容について施主や行政機関に説明ができるように鉄骨製作業者の材料管理体制・方法や鉄骨製作業者から材料の切断などの発注を受ける中間加工業者の管理体制を把握しておくことも重要である。
なお、規格品証明書の記載内容(機械的性質、化学成分)のレベル(例えば、化学成分値の多少など)や実際に使用された鋼材類から試験片を採取して、機械試験や化学成分分析を行って記載内容と照合を行うなどは考えていない。但し、当事者間の協議などで化学成分値を試験する場合、携帯型分析器で分析したり鋼材から試験片を採取して分析する方法がある。なお携帯型分析器には機械によって分析可能な成分に違いがあったり、シールドガスが必要となるなど特徴があるので使用にあたっては注意が必要である。
本ガイドラインでは、流通過程で切断などの工程がある「鋼材類」を主に対象とする。但し、証明書には溶接材料、高力ボルトなどを含むため呼称は「鋼材等」としている。
(注1)
規格品証明書の定義はJASS6による。JASS6では、規格証明書について「JIS、その他の団体などの公的に認知された規格があり、その報告規定に基づいて製造業者が発行する証明書。もしくは、国土交通大臣認定品に適合することを証明する書類で、社名・捺印のあるものを言う。」と規定されている。
1.2.2 裏書ミルシートに代わる原品証明書の採用
本ガイドラインで提案されている鋼材品質証明の方法は、いわゆるミルシート提出方式に代わるものである。結果としてミルシートの提示・提出が不要となるものである。一見、管理レベルが下がったかのように思われるが実際に切断を行う業者にとっては材料の出所を明確にし、記録に残すことが求められ、本ガイドラインによって原品証明書を作成・管理するのは、むしろ厳しい管理方法である。また、作成した書類が最終的に使用材料のJIS適合証明の証拠となるものであり責任も重くなる。
したがって、原品証明書の採用にあたっては、提出方法、保管方法、保管期間、業務対価等について事前に工事関係者で文書合意しておくこととする。
また、ミルシートについては提出を義務としないこととしているが、本ガイドラインによる証明方法へ移行するまでの間、鋼材の品質確認を”原品証明書による”のか”規格品証明原本、裏書きミルシートの提出による”のかについても、事前に工事関係者の合意により決定しておく。(注2)
(注2)
ミルシート提出方式においては、いわゆる紐付き材について、材料と工事名を紐付け管理するために、規格品証明書に需要家名として材料を購入した会社名でなく、部材を使用する需要家・工事名称を記載する場合がある。
切板会社やファブリケーターの在庫材についてはミルシートの需要家名や工事名が異なっていても、トレーサビリティが確保されていれば使用に問題はない。
今後、原品証明書方式を基本とすることから、原則として需要家名は材料購入会社名を記載することとし、材料の取り扱い(他工事への使用など)は購入会社の自由裁量とする。
1.2.3 証明コストの負担と発注仕様への明示
本ガイドラインに沿って.鋼材の加工業者等が使用した鋼材について証明書の作成を行うために必要な作業や記録の保全については、一定のコストが生じることは事実である。このため、建築の施工者は鉄骨製作業者等に対して、証明書の作成.提出を発注仕様書に明示する等により契約業務として明確化しその費用を支払う必要があり、鉄骨製作業者は.その前段の鋼材の流通、加工、生産業者に対して同様の対応をとる必要がある。
こうしたコストは、最終的に建築費の一部となり建築主が負担することになるが、建築用鋼材の品質は建物利用者の生命等の安全に直結するものでありかつ、万一鋼材が誤用されたときの被害の大きさに鑑みれば、建築主においては、使用鋼材等が明らかにされていない建築物の受け渡しを受けるべきでなく、コスト削減を名目に省略されてはならない不可欠な負担であることを理解する必要がある。さらに建築主は、建築主事等による検査受検の申請者として、使用鋼材等が法令に適合していることに関する書類等を提出する立場にもある。
このため、建築主に対する意識啓発について行政も含め建築界全体として取り組む必要があるとともに、施工者においては、建築主との個別の契約において、本ガイドラインに沿った報告書等の提出を業務内容とする必要がある。
なお、鋼材を使用したそれぞれの工程で使用鋼材を明らかにする本ガイドラインの方法は、施工者が施工現楊における成分検査により使用鋼材を事後的に特定するなどの他の方法よりも合理的で、全体としての証明コストが低いことは明らかである。
2. 鋼材等の品質確保のフロー
2.1 書類による品質確認
書類による品質確認の流れの概略を以下に示す。
(1) 各工程(会社)が行った品質確認の結果は原品証明書(用紙C)にとりまとめ次の工程(会社)へ提出する。
この原品証明書は鋼材等の規格品証明書原本(ミルシート)を保有し加工を行った工程が作成する。この会社には一般流通業者(問屋)で自社保有材を少量販売する会社も含まれる。
原品証明書を取りまとめた工程は、その鋼材等の品質を確認した結果について保証する責任を負う。但し、規格品証明書の記載内容に関して保証責任は無い。
(2) 原品証明書を作成する工程は、原品証明書から規格品証明書原本へ遡れることが可能な仕組みを構築しなければならない。
(3) 鉄骨製作業者は.使用した鋼材等の品質を確認した結果を「鉄骨工事使用鋼材等報告書」(用紙B)にまとめ、用紙Cとともに施工者に提出する。(注3)
なお、鉄骨製作業者の確認は前工程(会社)の発行した原品証明書を確認する方法と自社工程を確認する方法の二つがある。
また,鉄骨製作業者の会社様態によっては、製作を担当する製作工場が行う場合もある。
(4) 施工者は.書類および現物の確認後その結果を「鉄骨工事使用鋼材等報告書」(用紙A2を表紙として、用紙B、Cとともに)として工事監理者に提出する。
(5) 工事監理者は、内容を確認し発注者である施主に報告する。その後、施主の代理として中間検査・完了検査時に特定行政庁、建築主事ないしは、確認検査機関に提出または提示する。(用紙A1を表紙として、用紙A2,用紙B, Cとともに)鉄骨工事における鋼材、確認書類の流れ、関連関係者の行為については、付録aも参照。
(注3) JASS6では、鉄骨工事の元請けとして施工者(ゼネコン)、鉄骨製作の受注者を鉄骨製作業者(ファブリケータ)としている。本書でも、定義はこれに倣う。
2.2 現物の品質確認
(1) 本ガイドラインでは鋼材類の現物での確認方法を原則、塗色識別によることとしている。従ってSS・SM材のようなプリントマークの無いSN鋼材以外にも適用できる。
現物確認の方法としてSN材でのプリントマーク、形鋼類でのラベル確認も有効であるが、保管期間、取扱い不備で消える、読み難い、剥がれるなどが懸念される。このような不具合が無く明瞭に識別可能な場合にはSN材でのプリントマーク、形鋼類でのラベル確認も適用できる。なお、鋼材の識別表示は原則、付録bに示す日本鋼構造協会規格(JSS I 02 2004)による。また、鋼材のマーキング、ラベル表示例を付録c、高力ボルトヘッドマーク一覧表を付録d、溶接材料の原品表示例を付録 e、およびアンカーボルトの表示例を付録 f に示す。(注4)
(注4)
原品の識別方法として、切断部材に部材番号を記入する場合がある。規格識別の番号記入や多桁数の番号記入など要求仕様は様々であり、また番号記入ができない小物部材等もあり、部材番号記入については、事前に記入方法、作業費用等につき文書合意しておくこととする。
3. 本ガイドラインで使用される書類について
3.1 原品証明書〈用紙C〉
(1) 規格品証明原本を保有し最初に作業する工程(会社)は保有する規格品証明書原本内容をリスト化し、原品証明書を作成・発行する。(注5)
原品証明書の発行タイミングは、工事の節・工区などの単位に纏めて発行することを基本とし、事前に関係者にて取り決めておくこととする。
これ以降の工程は直前工程の発行した原品証明書から必要項目を転記し、原品証明書を作成する。
(2) 規格品証明書原本、規格品証明書原品のコピー、原品証明書は適切な期間保有する。保管期間が過ぎた場合は破棄できる。
保行期間が法令で定められた場合、あるいは設計図書の特記のような別規定がある場合はそれに従う。改正建設業法において、「営業に関する図書の保存が引渡し後、10年」と定められた。これに準拠して保存期間を定める施主、施工者などもあると考えられるので工事開始前に関係者で保存の方法・期間・管理費用等について文書合意しておくことが重要である。なお、鉄鋼メーカーにおいては規格品証明書の現物やデータの保存期間は、各社の判断となっている(今後JIS認証制度等において保存期間を定めることも提案されている)。
なお、通常の商行為で使用する納品書などの扱いについてはここでは関与しない。
一般流通業者(問屋)が自社保有材料を少量販売する場合、規格品証明書原本、原本相当規格品証明書、原品証明書に対応する鋼材類が全て使用された場合は、保管期間の間はファイルする必要がある。
また、鉄骨製作業者は、一般流通業者や切板会社への発注の際には、発注先の会社がトレーサビリティーをとれているところかどうかを留意して選定する必要がある。
(3) 原品証明書を受け取る工程(会社)は、原品証明書を発行する工程(会社)の発行に関わる管理が適切に行われているかの確認を適時行う義務がある。
特に、残材(端材)の管理方法(ラベル、ステンシルが残されているか、あるいは転記されているか。切断報告書にこれらの記載があるか等)に留意する必要がある。
なお、その確認の頻度は特に定めないが、ISO認証の有無などを考慮して当事者間で協議する。
(4) 使用鋼材が発注仕様に適合していることの説明責任(立証責任)は鉄骨製作業者他、鋼材を調達した者が負う。従って、鉄骨製作業者の材料管理責任者は、原品証明書から規格品証明書原本へ遡ることが可能かどうかなどを確認しなければならない。
(5) 原品証明書の記載事項は以下の通りとする。
・日付、当該業者名、責任者名、署名あるいは捺印
・整理番号
・部材・部品あるいは記号:柱・梁(フランジ・ウェブ)、ブレース、アンカーボルト、ダイアフラム
・規格、種類:JIS規格、国土交通大臣認定
・寸法、数量(重量)
・メーカー名:鉄鋼メーカー、中間加工業者
・証明書番号、製品番号
製品番号:規格品証明書原本において個々の製品を特定できる項目名とする。
スプライスプレート、リブプレート、ガセットプレートについては.記載項目は、部位・部材、規格、メーカー名のみとする。
なお、納品書、送り状など既に使用している帳票を利用する場合で、上記項目で鋼板番号等の不足な項目がある場合は別途、同帳票に追記し、原品証明書とすることもできる。
(記載スペースが無い、価格が表示されているなどで当事者外への提出が難しい場合は規格品証明書原本をリスト化した原品証明書を作成する)。
(6) 原品証明書以外の添付書類は原則不要とする。
添付書類の提出を求める場合は、必ず事前に書類内容、提出方法、対価等につき関係者の合意により決定しておくこととする。
(注5)
JASS 6では、「原品証明書とは、規格品証明書(原本相当規格品証明書を含む)のついている鋼材の切断・切削・孔あけなど中間加工を施す業者、あるいは一般流通業者(問屋)が少量販売する鋼材に付して発行する証明書」と定義しているが、本ガイドラインでは規格品証明再原本を保有する鉄骨製作業者が作成する証明書も加える。
3.2 鉄骨工事使用鋼材等報告書〈用紙B〉
(1) 鉄骨製作業者は、製作の元請けとして原品証明書に基づき「鉄骨工事使用鋼材等報告書」を作成する。
記載項目は以下の通りとする。
・日付、鉄骨製作業者名、材料管理責任者名・捺印、鉄骨製作管理技術者登録番号
・部位・部材:柱・梁(フランジ、ウェブ)、ブレース、アンカーボルト、ダイアフラム、溶接材料、高カボルト、スプライスプレート、リブなど
・規格、種類:JIS規格、国土交通大臣認定
・品種、形状:鋼板、鋼管、切板、H形鋼・・
・納入者 :鉄鋼メーカー、中間加工業者
・規格確認方法:現物・書類確認の方法
・証明書ページ:原品証明書の検索用
(2) 書類構成
表紙、鉄骨工事使用鋼材等証明書、原品証明書
・添付科類について
原則として添付書類は不要とする。
(3) 作成対象とする部位・部材を以下に示す。
下記の部位・部材を対象とする。但し、別途指示がある場合はそれによる。
柱:柱体、仕口内スチフナー、ダイアフラム、フランジ ・ウェブ
大梁、小梁:フランジ ・ウェブ
ブレース、アンカーボルト、スプライスプレート、リブプレートなど
3.2. 補 鉄骨工事使用鋼材等証明書作成時の対象部位・部材について
3.3 鉄骨工事使用鋼材等報告書〈用紙A2〉
施工者が工事監理者に提出する際に作成するもの。前記の原品証明書、鉄骨工事使用鋼材等証明書を確認した上、これらの表紙として用紙A2を作成する。
3.4 鉄骨工事使用鋼材等報告書〈用紙A1〉
工事監理者が建築主事等に提出する際に作成するもの。前記の原品証明書、鉄骨工事使用鋼材等証明書、施工者が発行した鉄骨使用鋼材等報告書を確認した上、これらの表紙としてA1を作成する。
4. 鋼材類と報告書の流れ例
鋼材類と報告書の流れをいくつかのケースに分けて示す。これらは代表的な流通過程のモデル化である。この他にも流通形態があると思われるが、本ガイドラインの主旨を理解して適用することが必要である。
また、流通過程で関与する商社など一部の機能は省略している。
このフローで示している「納品書、送り状」は、加工された製品に関するものを指している。
【 ケース1 】
規格品証明書原本は鉄骨製作業者が保有する場合。
ケース 1-1
鉄骨製作業者がロール発注し、鋼材、規格品証明書原本がメーカーから鉄骨製作業者へ送られる場合。
ケース 1-2
鉄骨製作業者がロール発注する。鋼材は中間加工業者で切断などの加工をされ鉄骨製作業者へ送られる。規格品証明書原本は中間加工業者を経由しないで、メーカーから鉄骨製作業者へ送られる場合。
なお、コラムについてはケース4、BH業者、B-BOX業者についてはケース5に示している。
【 ケース2】
規格品証明書原本は問屋または中間加工業者が保有する場合。
ケース2-1
1次問屋または中間加工業者は自社保有の材料を使用して鉄骨製作業者からの発注書に基づいた加工を行い、用紙Cを作成し、提出する。納品書、送り状を添え、加工済鋼材類を納入する。
ケース2-2
鉄骨製作業者には、1次の中間加工業者から納入される。1次の中間加工業者へは2次問屋または中間加工業者から鋼材等が納入される。
鉄骨製作業者と売買を行う1次中間加工業者は鉄骨製作業者からの発注書に基づいた加工を行い、2次問屋または中間加工業者の発行した原品証明書、納品書、送り状を基に用紙Cを作成し、納品書、送り状を添え、加工済鋼材類を納入する。
【 ケース3】
鉄骨製作業者が手持ちの余材を使用した場合。
ケース3-2 ケース2の場合の余材:ケース2の方法による。
5.2 書 式
5.2.1 用紙A1表紙
5.2.2 用紙A2表紙
5.2.3 用紙B:鉄骨工事使用鋼材等報告書
5.2.4 用紙C:ケース1-1, 1-2 鉄骨製作業者が証明書を作成する場合
ケース1の場合の余材の時はケース1に、ケース2の場合の余材の時はケース2に倣う。
5.2.5 用紙C:ケース2 中間加工業者が証明書を作成する場合
【用紙C】
建築構造用鋼材の品質証明ガイドライン
7.14.3 SN鋼材材質識別表示記号・位置及び鋼材の識別表示標準
(a)「SN鋼材材質識別表示記号・位置」(新しい建築構造用鋼材より)を次に示す。
(b) 日本鋼構造協会規格JSS I 02(鋼材の識別表示標準)の抜粋を次に示す。
表 – 1 識別色および塗色方法
参考文献
一次検定 施工(躯体工事)鉄骨工事 8-1 工作・組立て・溶接
1級建築施工管理技士
学科対策 過去問題【 重要ポイント 】
3.施工(躯体工事)
8° 鉄骨工事
8-1 鉄骨工事(工作・組立て・溶接)
下記の正誤を判断せよ。
(工作・組立て)
①床書き現寸は、一般に工作図をもってその一部又は全部を省略することができる。
答え
◯
②自動ガス切断機で開先を加工し、著しい凹凸がしょうじた部分は修正した。
答え
◯
③鋼材の曲げ加工を加熱加工とする場合は、200〜400℃の青熱ぜい性域で行ってはならない。
答え
◯
④高力ボルト用の孔あけは、板厚が16mmの場合、せん断孔あけとすることができる。
答え
×
[ 解説 ]
高力ボルト用の孔あけ加工は、板厚に関係なくドリルあけとする。高力ボルト以外のボルト、アンカーボルト、鉄筋貫通孔もドリルあけを原則とするが、板厚が13mm以下のときは、せん断孔あけとすることができる。
(高力ボルトの孔径)
⑤スタッド溶接後のスタッド仕上がり高さの管理許容差は、±1.5mmとした。
答え
◯
⑥露出形式柱脚におけるベースプレートのアンカーボルト孔の径は、アンカーボルトの径に5mmを加えた数値以下とする。
答え
◯
(溶接)
⑦半自動溶接を行う箇所の組立て溶接の最小ビード長さは、板厚が12mmだったので、40mmとした。
答え
◯
[ 解説 ]
溶接ビードの必要長さは、
板厚さ 6mm まで 30mm以上
板厚さ 6mmを超えると 40mm以上
満たない場合は、ショートビードとなる。
⑧裏当て金を用いる柱梁接合部のエンドタブの取付けは、母材に直接溶接した。
答え
×
[ 解説 ]
裏当て金を用いる柱梁接合部のエンドタブの取付けは、直接、母材に組立溶接をしない。
(エンドタブ)
・エンドタブは、特記のない場合は切断してよいので、クレーンガーターの場合は、溶接後切断してグラインダーで仕上げ加工を行う。
・溶接を手溶接とする場合は、エンドタブの長さは、自動溶接より長くする。
・完全溶け込み溶接の両端に、継手と同等の材質、同厚、同開先のエンドタブを取り付ける。
⑨鉄骨溶接部の溶接割れを防止するためには、継手の拘束度を大きくする。
答え
×
[ 解説 ]
継手の拘束度を大きくすると割れが発生しやすい。継手の拘束を小さくする。
(鉄骨溶接部の溶接割れの防止)
・低水素系の溶接棒を使用する。
・溶接部とその周辺の予熱により、溶接部の冷却速度を遅くする。
・炭素当量の少ない鋼材を使用する。
( 錆止め塗装 )
⑩鋼管などの密閉される閉鎖形断面の内面は、錆止め塗装は行わない。
答え
◯
⑪鉄骨製作工場で錆止め塗装を行う場合、現場溶接を行う箇所及び隣接する両側100mmの範囲、溶接部の超音波探傷試験に支障をきたす範囲は、塗装を行わない。
答え
◯
⑫ブラスト処理で素地調整を行った鉄面は、
直ちに錆止め塗装を行う。
答え
◯
一次検定 施工(躯体工事)鉄骨工事 8-2 建方
1級建築施工管理技士
学科対策 過去問題【 重要ポイント 】
3.施工(躯体工事)
8° 鉄骨工事
8-2 鉄骨工事(建方)
下記の正誤を判断せよ。
①露出形式柱脚におけるアンカーボルトでは、二重ナット及び座金を用い、その先端は、ねじがナットの外に3山以上出るようにする。
答え
◯
[ 解説 ]
・引張力を負担するアンカーボルトの埋込み位置ずれの修正は、台直しによって行ってはならない。
・通心と鉄骨建方用アンカーボルトの位置のずれの
管理許容差は、± 5mm
限界許容差は、± 8mm
とする。
②柱のベースモルタルは、建入れを調整しやすくするため、全面塗り仕上げ工法とする。
答え
×
[ 解説 ]
柱のベースモルタルは、建入れを調整しやすくするためには、後詰め中心塗り工法とするのがよい。
・鉄骨の建方に先立って行うベースモルタルの施工において、ベースモルタルの養生期間は3日間以上とする。
・鉄骨柱据付け面となるベースモルタル天端の高さの
管理許容差は、± 3mm
限界許容差は、± 5mm
とする。
③ウェブを高力ボルト工事現場接合、フランジを工事現場溶接とする混用接合は、原則として、高力ボルトを先に締め付け、その後溶接を行う。
答え
◯
[ 解説 ]
柱・梁接合部の混用継手及び併用継手の仮ボルトの締め付け本数は、ボルト1群に対して、1/2程度、かつ、2本以上とする。
④高力ボルト摩擦接合における仮ボルトの締付け本数は、一群のボルト数の1/3程度、かつ、2本以上とする。
答え
◯
⑤柱の溶接継手のエレクションピースに使用する仮ボルトは、普通ボルトを使用して全数締め付ける。
答え
×
[ 解説 ]
柱の溶接継手のエレクションピースに使用する仮ボルトは、全数締め付けなければならないが、普通ボルトではなく、高力ボルトを用いる。
⑥架構の倒壊防止用ワイヤロープを使用する場合、これを建入れ直し用に兼用してはならない。
答え
×
[ 解説 ]
架構の倒壊防止用ワイヤーロープを使用する場合、このワイヤロープを建入れ直し用に兼用してよい。
・鉄骨の建て方における柱の倒れの管理許容差は、柱1節の高さの1/1000以下、かつ10mm以下とする。
・建入れ直しのワイヤーロープは建方精度を確保するため、各節、各ブロックの現場溶接が終わるまで緊張させたままにしておく。
・建入れ直しは、建方の進行とともに、できるだけ小区画に区切って行うのがよい。
・建方時の予期しない外力に備えて、1日の建方終了ごとに所定の補強ワイヤを張る。
⑦梁の接合部のクリアランスに矢(くさび)を打ち込んで押し広げる方法は、計測寸法が正規より小さいスパンの微調整に用いられる。
答え
◯
⑧梁の高力ボルト接合では、梁の上フランジのスプライスプレートをあらかじめはね出しておき、建方を容易にする。
答え
◯
⑨建方精度の測定に当たっては、温度の影響を考慮する。
答え
◯
一次検定 施工(躯体工事)鉄骨工事 8-3 高力ボルト接合・耐火被覆
1級建築施工管理技士
学科対策 過去問題【 重要ポイント 】
3.施工(躯体工事)
8° 鉄骨工事
8-3 鉄骨工事(高力ボルト接合・耐火被覆)
下記の正誤を判断せよ。
(高力ボルト接合)
①高力ボルト接合の摩擦面は、ショットブラストにて処理し、表面あらさは50μmRz以上を確保した。
答え
◯
②1次締め及び本締めは、ボルト1群ごとに継手の中央部より周辺部に向かって締め付けた。
答え
◯
③1mmを超える肌すきが生じたために入れたフィラープレートは、脱落を防止するためスプライスプレートに溶接した。
答え
×
[ 解説 ]
部材接合面に、はだすきが生じた場合、はだすき量が1mmを超える場合は、フィラーを入れる(1mm以下の場合は処理不要)。フィラープレートは、溶接すると溶接欠陥や母材に悪影響を与えるため、行ってはならない。
④座金は、面取りがしてある方を表にして使用した。
答え
◯
[ 解説 ]
高力ボルトと接合部材の面が1/20以上傾斜している場合、大きい偏心応力が働くおそれがあるので、勾配座金を用いる。
⑤呼び径がM20のトルシア形高力ボルトの長さは、締め付け長さに20mmを加えた値を標準とした。
答え
×
[ 解説 ]
高力ボルトの長さ(首下長さ)は、締付け長さの表の長さを加えた値を標準とする。M20のトルシア形高力ボルトの長さは、締付け長さに30mmを加えた値を標準とする。
⑥ナット回転法による締付け完了後の検査は、1次締付け後の本締めによるナット回転量が120 °±45 °の範囲にあるものを合格とした。
答え
×
[ 解説 ]
ナット回転法による締付け完了後の検査は、1次締付け後のナットの回転量120°± 30° の範囲にあるものを合格とする。(JASS6)
⑦呼び径が M22 のトルシア形高力ボルトの長さは、締付け長さに 25 mmを加えた値を標準とした。
答え
×
[ 解説 ]
呼び径がM22のトルシア形高力ボルトの長さは締付け長さに35mmを加えた値を標準とする。
(耐火被覆)
⑧吹付け工法は、耐火被覆材料を鉄骨に直接吹付ける工法であり、軽量セメントモルタル吹付けは硬化までの養生が不要である。
答え
×
[ 解説 ]
吹付け工法は、耐火被覆材料を鉄骨に直接吹き付ける工法で、軽量セメントモルタルの場合、吹付け後硬化するまでの2週間程度の養生が必要。
・耐火被覆材の吹付け厚さは、確認ピンを用いて確認する。
・高層建築の耐火被覆材の吹付けは、ロックウール、セメント、せっこう、水を混合して圧送する湿式工法で行う。
⑨巻付け工法は、無機繊維のブランケットを鉄骨に取付ける工法であり、施工時の粉塵の発生がほとんどない。
答え
◯
[ 解説 ]
巻付け工法において、耐火被覆材の取り付けに用いる固定ピンは、鉄骨にスポット溶接により取り付ける。
⑩成形板張り工法は、加工した成形板を鉄骨に張り付ける工法であり、耐火被覆材の表面に化粧仕上げができる。
答え
◯
[ 解説 ]
耐火板張り工法において、繊維混入けい酸カルシウム板は、一般に吸水性が大きいため、雨水がかからないよう養生を行い、接着剤と釘を併用して取り付ける。
⑪左官工法は、下地に鉄鋼を使用し各種モルタルを塗る工法であり、どのような形状の下地にも施工継目のない耐火被覆を施すことができる。
答え
◯
例)セラタイカ等
実践6 鉄骨工事1
①鉄骨工作図のミスをなくす
鉄骨工事の最も重要なことは、図面の不整合や記載ミスを徹底的に川上で取り除いておくことである。
今まで日本においては、鉄骨工作図の作成は、平面図や軸組図および詳細図に頼っていて、多くの専用CADソフトが開発され、自動化が図られてきているが、2次元の図面では、その作図ミスを防ぐには経験豊富な専門家が必要なのが現状である。
しかし、世界情勢に目を向けると、鉄骨設計業界においては、3Dの設計ツールが浸透してきている。
まず、最初に立体モデルを作成し、順次細部の設計に進むように手順がかわってきていて、不整合や部材の干渉も立体モデルで確認することができる。
すなわち、経験に頼ることなく、図面ミスが防げる。
承認する側も、立体シミュレーションモデルで検討できるので、より図面の正確度が増し安心できる。
したがって、すでにプラント業界であるように、建築鉄骨業界においても「性能発注方式」へと変化できる可能性につながっていきている。
一部の鉄骨製作会社では、3次元モデルと工作図・原寸図・部品図・発注伝票・数量表とが連携しているので、間違いようがないもので、受け入れ時の製品検査においても、実際に確認するものは、施工要領書どおり製作されているかとか、溶接の状態と書類の整備状況のみになりつつあり儀式化しつつあるように感じる。
つまり、3次元CADの活用により、製造の合理化を図るとともに、経験者に頼らない生産ラインになってきている。
②工場での材料トレーサビリティ管理の徹底
鋼材には、異鋼種同断面(見た目は変わらないが、強度や性質が異なる)のものがあるので、材料が混在すると品質保証ができなくなる。
すなわち、鋼材の取違えは、建物の品質に直接影響し、不適合な建物となる。
鉄骨工場では、承認された工作図に基づき、板・形鋼・山形鋼・溝形鋼などから材料をそれぞれの形状に切断・加工し部材を組立て、そして溶接していく。
設計によっては、数種類の材種の部材が使用されているので、材料を混在させて使用するミスが発生する可能性がある。
製作段階では、材料の取り違えが発生しないように、材料の切取り計画を作成し、混同を防ぐ。
どの部材がどの親材料から切り出されたものかを記録し、後で確認できるようにしておく。
その記録(トレーサビリティ管理)は、製品を保証する記録であり、監理者は製品検査時に確認を求める必要がある。
日本においては、分業化が進み、部品製作までを一次加工の専門会社(シャーリング会社)に発注している。しかし、トレーサビリティの根本思想は変わらないので、材料の取り違えが発生しないように、抜き取り検査などを行う。
③鉄骨部材の加工・組立ての管理
鉄鋼メーカーは各種の「強度や性質の異なる鋼材」を製造し、規格に合った品質保証を実施している。
1995年の阪神淡路大震災では、鉄骨の被害も多かったが、その被害報告も反映し、2000年に建築建築基準法が改正され、新たな規定が追加された。
鉄骨の分野では、溶接不良などの教訓を反映し、建築鋼材専用のSN鋼材(1994年に登場)の使用が急速に普及した。
鉄骨の加工・組立てはファブリケータと呼ばれる鉄骨製作工場で行われる。鉄骨製作工場はその規模や技術的な内容によって、S・H・M グレード等の認定の仕組みがあり、それぞれの得意な分野の製品を作っている。
また、分業化が進んだ昨今では、材料発注を商社に、1次加工を専門業者に依頼してい鉄骨製作工場が多い。
鉄骨工事には多くの試験が存在し、それぞれの試験は、建築主・設計者・ゼネコン・鉄骨ファブによって選択され、役割と責任が決められる。
1次加工の段階では、材料試験、溶接施工性試験、溶接棒の試験などが大切になる。
また、製作段階においては、仮組立て試験、中間試験、溶接部のUT検査、そして最後の製品検査がある。
現場管理者の役割として、鉄骨の発注から製品検査、輸送から現場組立てまでのすべての段階の管理計画を、その流れに沿って「鉄骨品質管理計画書」として作成し、設計監理者の承認を取得し、意向をフィードバックする。
併せて、鉄骨ファブが作成する「鉄骨製作要領書」の確認と承認を行う。
加工・組立ての段階でもっとも大切なことは、工場溶接の管理である。溶接品質に係る要因には、
・溶接部位と溶接方法の選定
・溶接姿勢と溶接工の資格
・被溶接材料と溶接棒の選定
などの組合せがある。
その工事の特徴に合わせた「組合せの施工試験」を行い、溶接部の外観や機械試験を経て、ベストな組合せを選ぶ。
機械的な試験の項目には、
・引っ張り試験、
・マクロ試験、
・シャルビー試験
などがある。
溶接作業が終了し、塗装工程に入る前に、溶接部の外観検査と、超音波探傷検査(UT検査)を行うが、UT検査はファブリケーターが行うものとは別に、第三者(独立した検査会社)により行う必要がある。
④現場での鉄骨接合
鉄骨が無事組み上がると、次に重要になるのは接合部の工事である。
現場接合には、主に高力ボルト接合と現場溶接接合があるが、それぞれ資格をもった管理者を配置し、管理者を中心に品質管理を行う。
高力ボルト接合においては、施工要領書に基づき、各ロットごとにボルトの軸力試験、締付け道具のキャリブレーションテストを実施する。
ほかに締め付ける環境・順序やナットの方向などの制限も規定されている。
現場溶接接合においては、AW溶接検定の合格者が行うが開先部分の状態管理、目違いの許容範囲、溶接棒の種類、余熱の条件などが決められているので、施工要領書の規定に従って行う。
また、溶接部の検査として外観検査のほかに、第三者による超音波探傷試験が
一般的に必要である。
超音波探傷検査の抜取率は常に問題になるので、あらかじめ構造設計者と協議し決めておく。
⑤鉄骨工事の安全管理
鉄骨組立て工事は、何もないところからクレーンと作業員だけで組み上げていく最も危険を伴う作業である。
したがって、その作業の安全管理・足場管理・労務管理は事故を防ぐためにきわめて大切である。
現場管理者の任務として、それらの安全計画の立案を入念に行う必要がある。
特に足場計画は、それぞれの段階ごとに作業員の安全が確認できる計画とするのがよい。
多くの建設会社では鉄骨建て方事前検討会を実施し、計画の確認、関係者の目線合わせを行っている。
何事も計画通り進むとは限らないので、不測の事態に備えて、
最低限必要な資材と解決方法およびルールを決めて臨むことが大切である。
鉄骨建て方を安全に進める上でもっとも大切なことは、余裕のある安全で効率的な計画を立案することである。
それにより、作業員の無理・無駄・無謀を防ぎ、事故の防止につながる。
例えば、作業所の空きスペースを利用し、鉄骨梁や小梁や足場や安全ネットなどをアセンブリングしてから、クレーンで一気に持ち上げる手法が、もっとも効率的で安全である。
若干の設備費がかかるが、それ以上の安全管理費節減や工期短縮の効果が期待できる。
1級建築施工管理技士 鉄骨工事 鉄骨の位置決め
032)鉄骨位置は何から決めるか
鉄骨柱の基礎や根巻きが地上に見えている、鉄骨柱が中途半端に内側によっているために外壁下地取付け金物が多く必要になっている、屋根勾配が鉄骨でとれていないため余分な下地が必要になる、といった事例が見られるケースがある。
これらは、構造設計と意匠設計との調整不足である。
鉄骨造では、設計段階で(確認申請前に)意匠と設備や構造との施工図レベルの検討・調整が必要である。
1.鉄骨柱位置は外壁の取付け寸法に合わせて決定する
鉄骨造の鉄骨柱の位置は外壁パネルとの関係を考慮して、できるだけ外壁側に寄せた位置で決定する。外壁位置は面積に関係する。鉄骨位置は構造に影響する。したがって鉄骨造では設計段階で仕上げなどの施工図レベルの検討・調整が必要である。
ALC横張り
2.基礎、柱脚を外部に突出させない
鉄骨造の柱脚は基礎の上にセットされるが、地中の基礎の高さ、1回床仕上げレベルとの関係、柱位置及び外壁位置の関係を調整しておく必要がある。基礎の天端レベルを下げてベースプレートを設置すれば、外壁の腰をパネルと同面にきれいに納めることができる。
また、柱部の腰壁厚が一般の腰壁厚より薄くなり、クラックが入りやすいので、あらかじめ、ひび割れ誘発目地を設けるほうが望ましい。
ALC横張り
3.屋根スラブの水勾配は鉄骨レベルで確保する
設計者は、雨水の集排水計画による水勾配に合わせて、屋根の鉄骨レベルを決定する。鉄骨の勾配はできるだけシンプルにしたいので、構造設計者との調整が必要である。コンクリートスラブを設ける場合は増し打ちを少なくし、排水溝のための床下がりなどに対応した梁レベルなども考慮する。
1級建築施工管理技士 鉄骨工事 開口補強は耐風型にする
033)開口補強は耐風型にする
鉄骨造におけるコンクリート系パネルや金属パネルなどの外壁は、パネル取付けのための間柱や胴縁が設けられる。その外壁に開口部(窓や出入り口など)を設けるときは、必ず開口補強が必要である。その開口補強を外壁業者にまかせてしまっては、十分な強度が確保されない。
1.単窓の開口補強
単窓の場合、開口補強材は二次部材であるため、構造軸組ずに表されないケースがある。窓の位置による風圧とその負担面積、窓の幅と高さ、外壁材の重量及び撓みを考慮して、計算により開口補強部材を決める。構造設計者に確認する。
単窓の開口補強
2.横連窓の開口補強と耐風梁
(1) 横連窓で、間柱を設けて室内に見せてよい場合
工場などのように内部に間柱があっても良いと割り切れる場合は、間柱の間に開口補強を設けるだけでよい。
横連窓の開口補強(室内側に間柱を見せてよい場合)
(2) 横連窓で、間柱を室内に見せない場合
間柱を設けないで横連窓にする場合は、腰壁、連窓、垂壁のそれぞれにかかる風圧に耐えなければならないので、柱間に耐風梁が必要である。耐風梁は支点間距離が長いため、面外方向の撓みを1/200以下、かつ20mm以下にする。耐風梁は構造軸組図に表記されなければならないが、記載されていなケースもあるので、確認する。
横連窓の開口補強(間柱を見せない場合)
1級建築施工管理技士 鉄骨工事 鉄骨あらわし部分はデザインする
034)鉄骨あらわし部分はデザインする
構造設計図では接合部などが記号化してある。柱と柱、柱と梁の接合部は溶接接合が多いが、その他の接合部は剛接合でもピン接合でもガセットプレートと高力ボルトでの接合となる。鉄骨がそのまま仕上げとなってあらわしになる部分が、ガセットプレートと高力ボルトがむき出しのままできあがってしまって、後悔する場合がある。
意匠設計者は、鉄骨がそのまま仕上げとなってあらわしになる部分は構造設計者とよく協議をおこない、デザインするべきである。
1.鉄骨はスリムにする
ロール材(圧延鋼材)のH形鋼は合理的に作られているが、見付けは大きい。意匠上重要な部分は、厚板鋼材を用いて工場組立のH形鋼(ビルドH)にすれば見付けはスリムになる。鉄骨柱も厚板の溶接組や無垢材で細い柱をつくることも可能である。またH形鋼のウェブに穴を開ければ軽い表現も可能である。
鉄骨をスリムに
2.鉄骨の接合部を溶接接合でスッキリと
溶融亜鉛めっきの鉄骨の接合は、ボルト止め(溶接は不可)である。この場合はできるだけ大きく溶接接合で部材をつくり、ボルト止めの箇所数をできるだけ少なくする。また、そのボルト止めの位置も目立たないところにするなども検討を行う。
溶融亜鉛めっきしない場合は現場でも溶接接合ができる。運搬などの制限で、工場では大きくつくれない場合は、現場で、しかも足場の良い地上で大きく組み立てることも可能である。塗装仕上げの場合は再塗装などのメンテナンスを考慮しておくことは言うまでもない、
溶接接合でスッキリと
3.構造的な力をデザインする
建物の水平力を建物内部のコア壁やフレームで負担させ、外周部の柱には鉛直力だけ負担させれば、柱は細い部材(たとえば鉄骨無垢柱など)にできる。また、軸力を引張で負担する丸鋼ワイヤーなどの引張材を用いることも可能である。構造的な力をシンプルにすれば、部材もシンプルになり空間をスッキリと演出できる。
水平力を別に負担させれば端は細くなる