1級建築施工管理技士 RC造工事 ひび割れ誘発目地

建築品質 鉄筋コンクリート造


027)壁のひび割れは漏水につながる

コンクリートはセメントと水との水和反応で硬化してできる水硬性の物質である。硬化する段階で乾燥収縮し、ひび割れ(クラック)が発生する。ひび割れしやすさはコンクリートの水セメント比や鉄筋量などで変わってくるが、ひび割れは必ず発生する。外壁ではそのひび割れが漏水の原因になり、鉄筋が錆びて、躯体の劣化につながる。
そこでひび割れをあらかじめ想定した目地に集中して発生させ、他の部分にひび割れが発生しないように「ひびわれ誘発目地」を設ける。
ひび割れ誘発目地の使用は構造設計図に特記されているが、そうでない場合は工事監理者に構造設計者と協議してその仕様を決めてもらう。
尚、壁式構造では一般的に誘発目地を設けない。

1.ひび割れ誘発目地の位置はデザインする

設計者は、ひび割れ誘発目地の位置を、柱際から900mm以内に、壁は3~4mごとに設けることが望ましい。また、開口部の四隅はひび割れが入りやすいので鉄筋で開口補強を確実にしたいが、補強では無理があると考えられる場合は、開口際にひび割れ誘発目地を設けるようにしたい。


ひび割れ誘発目地

2.ひび割れ誘発目地の深さは壁厚の1/5~1/4程度とする

ひび割れ誘発目地に確実にひびが入るようにするには、外部と内部の目地深さの合計を、壁厚の1/5~1/4程度とする。壁が厚い場合は目地だけでは厚さの確保が難しいので、壁内に縁切りのための型鋼など入れる。
目地部分で鉄筋のかぶり厚さを確保することは言うまでもない。

3.ひび割れは外壁だけではない

ひび割れは外壁だけに起こるのではない。バルコニーのようなはね出しスラブ、パラペット、擁壁、腰壁などにも同様にひび割れ誘発目地を設ける必要がある。

1級建築施工管理技士 RC造工事 鉄筋のかぶり

建築品質 鉄筋コンクリート造


029)鉄筋のかぶり不足は建築基準法違反

鉄筋コンクリート造の鉄筋はコンクリートのアルカリで保護されている。コンクリートは空気中の炭酸ガスなどで次第に中性化されていく。中性化が進行すると微細なクラックなどから雨水が侵入し、鉄筋が錆びはじめ、やがてはコンクリートを押し出し破壊する。鉄筋のかぶり厚さはコンクリート造の寿命を左右する重要なポイントである。

1.鉄筋のかぶり厚さ確保の基準は建築基準法

かぶり厚さとは最も外側にある鉄筋の表面から、コンクリート端部までの最短距離を言い、建築基準法施行令第79条によって定められている。

2.目地底のかぶり厚さを確保する

打継ぎ目地やひび割れ誘発目地の目地底から最小かぶり厚さを確保する。目地部のシールは耐久性がないため、仕上げなしと考える。また、防水のための切欠き部などでも必要かぶり厚さは確保しなければならない。

3.施工誤差を見込んだかぶり厚さを設計かぶりとする

鉄筋のかぶり厚さを確実に確保するためには、施工誤差10mmをあらかじめ見込んだ設計かぶり厚さを確保することが必要である。

4.仕上げありとは中性化に対して有効な仕上げであること

かぶり厚さにおける仕上げありとはコンクリートに石やタイルを張る、モルタルを塗るなどでコンクリートを保護し中性化を防ぐために有効な仕上げがあることをいう。
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)によると、仕上塗材や塗装は仕上げがないのと同じ扱いになる。仕上げなしの場合は、10mm以上の増打ちが必要である。

5.柱及び梁の主筋にD29以上を使用し仕上げなしのケース

主筋のかぶり厚さは鉄筋径の1.5倍以上を確保する。

1級建築施工管理技士 RC造工事 コンクリートの打設

建築品質 鉄筋コンクリート造


030)コンクリートは密実に打つ

鉄筋コンクリート造は鉄筋とコンクリートの線膨張率が同じなので一体化することができる。鉄筋コンクリートは鉄筋の曲げ強さとコンクリートの圧縮強さを活かしたハイブリッド構造である。したがって、鉄筋のまわりに隙間なくコンクリートを充填すること、すなわち、コンクリートを密実に打つことが最も重要である。

1.コンクリートが入りやすい大きな断面にする

設計者は、コンクリートがスムーズに流れて入りやすい断面や型枠形状を設計するのが望ましい。薄い断面や小さな断面では、骨材が途中で止まって空隙ができる。
塞ぎ型枠は空気が逃げずに溜まることがあり、空気抜きなども必要である。

2.無筋のコンクリート部分をつくらない

どうしても部分的に小さな断面にする時、かぶり厚がとれないからと無筋にすると引張強度がなく、ひび割れしやすい。かぶり厚が確保できないときは、防錆鉄筋やメッシュ筋を入れる。SUS筋は膨張率が大きいので望ましくはない。

3.型枠の脱型しやすい断面にする

型枠脱型時にコンクリート躯体に力がかかって、ひび割れを発生させてはならない。脱型時はコンクリート強度も十分出ていないケースがある。脱型時に躯体に力がかからないような型枠断面にしなければならない。

4.鉄筋の間隔を確保する

鉄筋の間隔が狭いと骨材が詰まり、コンクリートが均一に打設できないばかりでなく、鉄筋とコンクリートの一体化が図れない。特に柱と梁が交わる部分などは鉄筋施工図で検討し、鉄筋の間隔をしっかり管理することが重要である。

5.コンクリートの施工管理が重要

コンクリートが鉄筋の間を流れるように隙間なく充填されるには、骨材の大きさやスランプ値などの設定が適切でなければならない。もちろんコンクリート打設時の入念な施工と管理が重要であるのは言うまでもない。バイブレーターのかかすぎや高所からの落下打ちは、骨材の分離やジャンカの原因になるので禁物である。

1級建築施工管理技士 RC造工事 化粧打ち放しコンクリート

建築品質 鉄筋コンクリート造


031)化粧打ち放しコンクリート

化粧打ち放しコンクリートでは型枠の状態がそのまま仕上げになるため、型枠工事の施工管理が重要になる。施工者は工事着手前に施工計画書を作成、施工図に反映し、型枠やコンクリート工事の関係者と綿密に打合せする必要がある。

1.設計意図・意匠をモックアップで確認

合板型枠や杉板型枠など型枠材料を確認する。杉板の時は木目出しの程度など設計意図を詳細に確認し、そのうえでモックアップを作成する。この場合実際に納入するプラントでつくったコンクリートを使い、コンクリートの色相も含めて確認することが大事である。
浸透型撥水材の塗布などの打ち放しコンクリートの仕上げ材は、最初のモックアップ段階で確認する。実際の施工段階では、躯体の感想が大事であり、吸い込みの違いによる色ムラの発生などにも注意が必要である。

2.型枠の割り付けやセパレーター等の割り付けを確認

セパレーター等は鉄筋との関係やセパレーターが交差する部分の段差などが調整できていることを確認する。

3.型枠のジョイント部、出隅・入隅部は止水型枠にする

型枠の出隅からコンクリートの水分が出ると、砂だけが出隅に残り、シャープな出隅ができない。桟木を控えてパッキンを挟むなどの工夫をする。

4.サッシや金物、および設備機器の納まりを確認

コンクリート図の承認は、建具や打込み金物の施工図やコンクリートに関連する設備機器の承諾とほぼ同時になされなければならない。設備器具の取り付け部もあらかじめ欠き込みを設けるなど、納まりをデザインするほうがよい。

5.打設後の養生と補修も重要

上階のコンクリート打設時に下階のきれいに打ち上がったコンクリートが汚されることもある。打設後の下階の躯体の養生も大事である。補修が必要ない美しいコンクリートを打つことが基本であるが、万が一に備えて補修の要領も検討しておく。