14章 金属工事 5節 軽量鉄骨壁下地

14章 金属工事

5節 軽量鉄骨壁下地

14.5.1 適用範囲

(a) この節は、一般的な壁仕上材の下地となる軽量鉄骨壁下地工事に適用する。天井の場合とは異なり、壁の場合は外部に面する部分や外壁等の使用は対象外としている。

(b) 作業の流れを図14.5.1に示す。


図14.5.1 軽量鉄骨壁下地工事の作業の流れ

(c) 施工計画書等

(1) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を作成する。

① 工程表(必要に応じて室別、場所別の工程表の作成)
② 製造所名、施工業者名及び作業の管理組織
使用材料の材質、種類、形状、寸法等
④ ランナー取付工具
⑤ 開口部等の補強方法
⑥ 養生方法

作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

(2) 施工図の検討は、各部取合いの納まりのほか、開口部補強方法等について行う。

(3) ランナー・スタッド等の運搬・保管に当たっては、曲りやねじれが生じないよう留意する。

(4) 施工箇所の点検

床・梁下・スラブ下面・壁面の位置、平たんさ(凹凸)を確認し、躯体の面精度が下地材の建込みの支障となる場合には、事前に修正する。

(5) 墨出し

基準墨や地墨等により、施工図に基づき間仕切、壁下地材、ランナー両面等の墨出しを行う。墨出しが直接下地材の取付け位置に出せない場合は、適切な場所に逃げ墨を出す。開口部については、開口枠の取付け方法やクリアランス等を考慮し、補強材位置の墨を正確に出す。

14.5.2 材 料

(a) 壁下地材

(1) 壁下地材及び壁下地材付属金物は、JIS A 6517(建築用鋼製下地材(壁・天井))の規格を満たすものとする。図14.5.2に壁下地材の構成部材及び付属金物の名称を、表14.5.1に壁下地材の構成部材の種類及び組合せを示す。


図14.5.2 壁下地材の構成部材及び付属金物の名称

表14.5.1 壁下地材の構成部材の種類及び組合せ(JIS A 6517:2010を基に作成)

(2) 壁下地材に使用する材料の防錆処理は表14.5.2の亜鉛の付着量で示される。製品は、溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯をスリッターにより定尺幅に切断し、冷間ロールフォーミングにより成形されたものが用いられている。

(3) 壁下地材の性能は、JIS A 6517により定められており、亜鉛の付着量、部材の形状安定性試験及び載荷試験を行い、表14.5.2の規定に適合したものとなっている。

(4) 壁下地材の構成部材の寸法は、JIS A 6517により、表14.5.3のように定められている。

表14.5.2 壁下地材の性能(JlS A 6517: 2010を基に作成)
表14.5.3 壁下地材の構成部材の寸法(JJS A 6517: 2010)
(b) スペーサー等

スペーサーの板厚は、0.7mm以上(板厚の許容差は、JIS G 3302(溶融亜鉛めっ き鋼板及び鋼帯)又はJIS G 3321(溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板 及び鋼帯)による。)とする。また、防錆処理は、JIS G 3302表示記号のZl2以上、JIS G 3321表示記号のAZ90以上と同等のものとする。スペーサーの形状は製造所によって多少異なるが、その目的はスタッドの強度を高め、ねじれを防止し、また、振れ止めを固定するためのものである。

打込みピン・タッピンねじ・ボルト等については、JIS H 8610(電気亜鉛めっき)に規定する1級以上、JIS H 8625(電気亜鉛めっき及び電気カドミウムめっき上のクロメート皮膜)に規定する1級CM1A以上又はこれと同等以上の防錆処理を施したものとする。

14.5.3 形式及び寸法

壁下地材に用いる鋼材は、JIS A 6517(建築用鋼製下地材(壁・天井))の規定に適合するものとする。「標仕」表14.5.1では、50形、65形、90形、100形を示しているが、同JISにはこの他に75形があり、スタッドの高さによって使い分けられている。また、「標仕」では50形は、RC壁等への片面張りの下地を想定しており、自立壁の下地は適用外としている。

表14.5.3にJIS A 6517に規定されている壁下地材の構成部材の寸法を、表14.5.2に壁下地材の性能を示す。

なお、「標仕」表14.5.1でスタッドの高さにより種類を変えているのは、壁の剛性を確保するためである。同一壁面でスタッドの高さが異なる場合は、高い方のスタッドに合わせる。

14.5.4 工法

(a) ランナーの取付け

ランナー両端部の固定位置は、端部から50mm内側とする。継手は突付け継ぎとし、端部より約50mm内側に固定する。ランナーの固定間隔は、ランナーの形状や断面性能及ぴ軽量鉄骨壁の構成等から900mm程度を限度としている。コンクリートスラブヘの固定には、低速式びょう打ち機による発射打込みびょう(JIS A 5529)等を用いるが、使用に当たっては、安全管理に十分注意する。上部梁が鉄骨の場合は、耐火被覆等の終了後、あらかじめ取り付けられた先付け金物にスタッドボルト、タッピンねじの類又は溶接で固定する。

(b) スタッド・スペーサーの取付け

(1) スタッドの切断

スタッドは、ねじれのないものを使用し、上部ランナーの高さに合わせて切断する。上部ランナーの上端とスタッド天端の隙間は、10mm以下とする。また、振れ止めが水平に通るように、スタッドに設けられた振れ止め用の貫通孔の位置を調節する。

(2) スペーサーの取付け

スタッドの両端のスペーサーは、スタッドの建込みを容易にするため、端部よりずらして取り付け、建込み後に上下のランナーの近くにセットする。また、振れ止め位置のスペーサーについても振れ止めを取り付けたのち、振れ止め固定を兼ねてスペーサーを固定する。いずれも、緩み・がたつきのないようスペーサーの間隔は、600mm程度に固定する。

(3) スタッドの建込み

スタッドを上下ランナーに差し込み、半回転させて取り付ける。仕上げのボード類はスタッドに直接タッピンねじの類で取り付けられるため、間隔を精度良く建て込む。また、スタッドにねじれや倒れがあると、仕上げボードに目違いを生じるので、建入れ、通りに十分注意する。

スタッドがコンクリート壁等に添え付く場合は、ランナーと同様に、振れ止め上部(間隔 約1.2m程度)を打込みピン等で固定する。

(c) 振れ止めの取付け

振れ止めは、床ランナー下端より間隔 約1.2mごとに設ける。ただし、上部ランナー上端から400mm以内に振れ止めが位置する場合には、その振れ止めは省略することができる。

振れ止めは、フランジ側を上向きにしてスタッドに引き通し、振れ止めに浮きが生じないようスペーサーで固定する。設備配管や埋込みボックス等で振れ止めを切断する場合は、振れ止めと同材又は吊りボルト(ねじ山径9.0mm)で補強する。

(d) 開口部の補強

(1) 出入口等
(i) 垂直方向補強材
垂直方向補強材は、建具が留め付けられるため、戸の開閉による振動や衝撃荷重に耐えられるように、「標仕」では、上は梁又はスラブ下に達するものとし、上下ともあと施エアンカー等で固定した取付け用金物に溶接又はボルトの類で取り付けることとしている。65形で補強材の長さが4.0mを超える場合は、同材の補強材を2本抱き合せ、上下端部及び間隔 600mm程度に溶接したものを用いる。

垂直方向の補強材は、上部ランナーが鋼製天井下地材に取り付けられる場合でも、上部は梁下・スラブ下に固定する必要がある。階高が大きく補強材が長くなり過ぎる場合は、補強材を支持するための鉄骨梁等を設け、これに固定する場合もあるが、十分な支持強度を確保する必要がある。

なお、補強材とスタッドは直接接触させず、戸の開閉に伴う振動がなるべくスタッドに伝わらないようにすることを原則とするが、開口部の形状等により、剛性が求められる場合や補強材の変形が大きくなるおそれのある場合はスタッ ドと溶接するなどの方法で剛性を確保する。

(ii) 水平方向補強材

開口部の補強材は、補強材の断面性能等から開口幅は2m程度、取り付く建具等の質量も一般的な物を対象に選定されているため、開口幅が大きい場合や重量物が取り付く場合等は、別途強度計算等によって補強材を選定する必要がある。

(2) そで壁端部の補強

そで壁端部の補強は、開口部の垂面方向の補強材と同材を用いて行う。

(3) ダクト等

ダクト類の小規模な開口部の垂直方向の補強材は、水平方向の補強材と組み合わせ、溶接等により固定する。分電盤等の重量物が取り付く場合には、出入口等の開口部補強材取付け用金物と同様の取付け用金物を添えて、溶接又はタッピンねじの類で取り付ける。

ダクト類の四周については、下地材・補強材等がダクトに接触して、振動が伝わらないように注意する。また、設備の配管等がスタッドを貫通して設けられる場合、貫通孔が1箇所に媒中しないように配慮し、必要に応じて補強等の処置を行う。

(e) 緩止め

下地相互のボルト・小ねじによる固定箇所が繰返し外力や振動を受ける場合、ばね座金等を用いるか、又は緩止めの溶接を行う。

(f) 施工後の確認

仕上材料取付け前の確認項目は、次のとおりである。

(i) 開口部補強の適否
(ii) スタッドの建込み間隔の精度(通常の天井高では ±5mm以下とする。また、スタッドの垂直の精度 約 ±2mmとする。)
(iii) 溶接した箇所の鋳止め塗装

錆止め塗料塗りは、14.4.4 (k)を参照する。

(g) 軽量鉄骨壁下地の解説図を図14.5.3に示す。


図14.5.3 軽量鉄骨壁下地

 

14.5.5 「標仕」以外の工法

変位追従性を有する壁下地工法は、耐震性を考慮してRC壁、ALC壁等ヘボードを片面張りしたもので、地震時の挙動に有効な工法である。施工する躯体壁に鋼製下地材(スタッド)を所定の間隔に特殊弾性接着剤で固定し、その後にボード片面張りを行う。高い安全性と変形追従性を有する工法である。

一次検定 施工(仕上工事)金属 7-2 軽量鉄骨壁下地

1級建築施工管理技士
学科対策 過去問題【 重要ポイント 】

4 施工(仕上工事)
7° 金属工事

7-2 軽量鉄骨壁下地
下記の正誤を判断せよ。
①ランナーは、両端部は端部から50mm内側で固定し、中間部は900mm間隔で固定した。

答え

  ◯

[ 解説 ]
ランナーを軽量鉄骨天井下地に取り付ける場合は、タッピンねじの類又は溶接で、間隔900mm程度に固定する。

②スタッドは、上下ランナーに差し込み、半回転させて取り付けた。

答え

  ◯

③スタッドの高さが4.5mだったので、90形のスタッドを用いた。

答え

  ◯

[ 解説 ]
スタッドは、上部ランナーの上端とスタッド天端のすき間が10mm以下となるように切断する。

④スタッドの間隔は、ボード2枚張りの場合は600mmとし、ボード1枚張りの場合は300mmとした。

答え

  ×

[ 解説 ]
スタッドの間隔は、ボード2枚張りの場合は450mm程度、ボード1枚張りの場合は、300mm程度とし、スタッドの上下は、ランナーに差し込む。

⑤スタッドの建込み間隔の精度は、±5mmとした。

答え

  ◯

⑥スペーサーは、各スタッドの端部を押さえ、間隔600mm程度に留め付けた。

答え

  ◯

⑦スタッドの高さが2.5mだったので、振れ止めは、床面ランナー下端から約1.2mの高さに1段のみ設けた。

答え

  ◯

⑧振れ止めは、フランジ側を下向きにして、スタッドに引き通した。

答え

  ×

[ 解説 ]
振れ止めは、ウェブの背の下側、フランジ側上向きにしてスタッドに引き通し、振れ止めに浮きが生じないようにスペーサーで固定する。
振止めは、床面から1,200mm程度の間隔でスタッドに引き通し、スペーサーで固定する。

⑨65形のスタッド材を使用した高さ4.0mのそで壁端部にスタッド材を2本抱き合わせて溶接したものを補強材として用いた。

答え

  ×

[ 解説 ]
袖壁の端部の補強は、使用するスタッド材の種類に応じて、出入り口など開口部に用いる垂直方向の補強材(C-60x30x10x2.3)と同材をスタッドに溶接等固定し補強する

参考)金属の表面処理

・海岸近くの屋外に設ける鋼製手摺は、溶融亜鉛めっきとし、上に塗装を行う。
・ステンレスと銅合金の接触腐食防止処置として、銅合金を塩化ビニル材で被覆する。
・ステンレスとアルミニウムの接触腐食防止処置として、アルミニウムにアクリル系の塗料を塗布する。
・ステンレスのヘアライン仕上げは補修が比較的容易なので、取付け後についた軽微な傷は現場で補修する。。