実践11 仕上工事4 石工事

1級建築施工管理技士 実践11 仕上工事4 石工事 大理石・花崗岩

建築施工管理者にとっては、石工事の正しい施工法を見つける事はとても重要なことである。
建築材料としての石材は、金属とともに最高級の仕上げ材である。
しかも、石材は天然材なので、それぞれ性質が異なるために、材料の性質を知った上で取り扱う必要がある。
また、仕上げ方法や取付け工法も多種にわたっている。
最近では、壁は乾式工法が主流であるが、湿式工法もいまだに使われることが多く、床石はパサモル張りが主流である。

以下、石工事の施工管理のポイントを書き出す。

割付け図・施工図を作成しロスを低減する

大理石や花崗岩は、建築の仕上げ材の中では最も高価な材料である。
しかも、国外から輸入することが多く、製作・輸送期間も長いことから、追加発注が発生しないように充分注意しなければならない。
なぜなら、一度でも追加発注が発生してしまうと、海外からの運賃で高額な費用負担になるとともに、数カ月かかるので、完成の期日が遅れてしまう場合もあるためである。
石工事の施工で、一番大切なのは割付け図・施工図である。
割付け図を書く目的は、材料を正確に把握し、数量を積算し、カッティングリストを作成することにある。
もちろん発注前には設計者の承認を取得することが前提になる。
設計者は、石の割付け図・施工図にことさらこだわりを持つので、何度か修正や変更が発生する。
従って、製作期間・輸送期間と長期にわたっての調達になるので、十分な時間の余裕を持って割付け図と施工図の作成を開始しなければならない。
通常は、製作に2〜3カ月、輸送に0.5〜1ヵ月を要する場合が多い。
石を外国に直接発注する場合は、割付け図を作成する必要がある。
標準の石の大きさは、600 × 600 × 20mm、
300 × 300 × 12〜15mmなどのサイズが多い。
その場合は材料ロスが最小限になるように、割付を工夫する。
近年、現場内の分業化が進んで、現場マンが石の施工図作成に全くかかわらない場合が増えている。
石の施工店に作成させ、施工図係に調整を一任しているケースがある。これでは、納得できる細部の納まり管理、石の加工ミスの防止、無駄のない工程管理が到底できない。
施工管理者としては、施工図作成段階から関わって、品質・工程・原価管理のリーダーシップをとっていくべきである。

色合いと模様合せ

大理石や花崗岩の工事の中で、もっとも尊重されるのは、色合いと模様合わせである。
“ブックマッチ”と呼ばれているが、本を開いた時のように左側と右側、上と下の模様が連続する合わせ方がブックマッチである。
もっとも難しい工法のひとつである。
最近の主流は、既製品の小さめの石を壁や床に張る方法であるが、その場合は色合いと模様はあえて合わせないで、シャッフルして使用するようにほうがよい。
欠けや割れについては工場で選別してから梱包して運び込む方法が一般的である。
仕様の厳しい海外工事等の場合では、あらかじめ工場で色調統一を行うための選別を行うことがあるが、特別仕様である。
工場での一次選別では不揃いなものが混ざることがあるので、現場で二次選別を行う。
その場合は、工場から届いた材料を開封後、現場の空きスペースで敷き並べて不、不揃いなものを取り替えてから張る方法がとられる。
それらを行うか否かは、設計者や管理者との調整を行って判断することになる。
世界には多種多様な石材がある。
それらはきちんと施工管理することで、天然の素晴らしい色調を現すので、建築施工管理者の力量が表れる工事のひとつである。

外壁の石張りと留意点

建物の外壁に石張りする場合は、さらに注意が必要である。
張り石表面の汚染、目地部の割れ、張り石の浮き・剥離・張り石の裏面の湿気からくる濡れ色、目地部からの白華、コーキングの剥がれなどの故障例がある。
材料選定に関して、外壁には吸水率の高い大理石や砂岩の使用は控える。
花崗岩の中でも吸水率の高い材料は、故障が多いので避けるべきである。
施工法は、最近では乾式工法が一般的になっている。
30mm厚さの花崗岩もしくは大理石を直接ステンレス製のブラケットで支えて、ダボピンで、1枚ごとに固定していく方法で、ヨーロッパ発祥の工法である。
乾式工法は多くの品質問題を解決してくれる工法なので、コスト的には高価だが急速に普及した。
日本は地震が多く、温度差も大きいので、乾式工法の目地は、動きの許容できる変性シリコンが使われている。
目地はエキスパンションジョイントのシール材の中には、揮発性故に石を汚染するものもあるので、プライマとシール材の選定は注意深く行う必要がある。
1990年代初めに考案され、現在の主流になっているのは、層間変位吸収型の金物で、ルーズ穴によりスエイする方式のものである。
形状が簡素化され部品数が削減されているために、作業能率が上がり、コストも抑えられてきている。

石の汚れに対する対策と養生の励行

石工事は、取付けが終わっても、工事の終わりにはならない。
その後の汚れや傷を防ぐための養生が重要である。
例えば、吸殻が雨に打たれると、そのアクでせっかくきれいに張った床石などを汚してしまうことになる。
それらは、いちど石材に入り込んでしまうと取り除くのは困難である。コーヒーなども同様に、シミが取れないので気を付ける必要がある。
天然の石は、顕微鏡で見ると微細な巣だらけである。産地は生成の起源によって、それぞれ異なる性質がある。火山の噴火によってできる花崗岩などは、産地によって吸水率に大きな差が見られる。
白い大理石のビヤンジカララなども、浴室に使用されることが多いが、骨材は使用された水によっては、数ヶ月後に黄変し、取り替えざるを得なくなくような事故例の報告もある。
天然の材料は、常に施工のリスクを抱えているので、その材料の今までの事故例を十分調査して対応することが大切である。
最近では、石の表面に塗布するフッ素シラン系塗布剤が使用されるようになってきた。
> フッ素シラン系塗布剤

アクアシール

花崗岩や大理石の表面に塗布含浸させ、毛細管現象を抑えるメカニズムで、今まで問題だった裏面からのアクや、湿気やアルカリなどの吸上げを完全に防止できる効果がある。
また、防滑処理のためのフッ化水素系の塗布剤も使用され始めた、
床仕上げに使用されている本磨きの花崗岩は、人の動線にあたる部分の転倒防止の措置が必要で、そういった部分に処置を施すものである。
いずれにしても、石工事はできるだけ工事の終盤に行うように計画するが、それでも工事が完了するまでに、汚れたり傷ついたりする危険があるので、十分に養生することが必要である。

1級建築施工管理技士 石工事 外壁乾式工法

建築品質 外壁石


043) 外壁石張りは乾式工法とする

外壁石張りの湿式工法では、下部固定部取付けモルタルや裏込めモルタルに水が廻って、雨が上がった後に石の表面が濡れ色になったり、白華現象(エフロレッセンス)の発生や冬場は凍害などの恐れもある。さらに、地震などの際、躯体の変位やクラック発生の影響を直接受けて、石が割れたり剥がれたりする可能性もある。湿式工法は、公共建築工事標準仕様書で高さ10m以下の外壁工事に適用するとされている。石張りをいつまでも美しく保ち、躯体の変位の影響を受けにくい乾式工法が主流になっている。

1.乾式工法による石の取付け

石取付けのだぼ穴部分が風圧力に耐えるか、使用石材の強度試験で確認する。石は4カ所のファスナーで固定するが、1カ所は効いてないものとして、それでも十分耐力があることを確認し、石の厚さを決める。通常は石厚30mm以上(内部は25mm以上)とし、だぼ穴にファスナー(取付け金物)で取り付ける。ファスナーはステンレス(SUS)製とし、1段ごとに石の荷重を受ける。石の目地幅は8mmとし、ポリサルファイド系シーリング(PS-2)を充填する。幅木だけは湿式取付けとし、取付けモルタルの天端を塗膜防水して侵入水は縦目地から排水する。

2.乾式工法の石張りは人や物の衝撃で割れやすい

乾式の場合、腰部分は物や人の衝撃で割る恐れがある。板厚を上げるか、繊維強化プラスチック(FRP)で裏打ち補強をするなど検討する。

3.下がり壁部分の石の取付けに注意する

外壁の下がり壁やまぐさ(開口部の上部の壁)部の石には、その荷重を受けるための石(力石)を2カ所設ける。力石はだぼピン2本と接着剤を併用して壁石に固定されており、石受け金物に荷重を預ける。外壁の石目地から入った水は、ステンレス製フラッシング(塞ぎ板)で目地部へ導かれ、水抜きから外部に排出される。

4.上げ裏(軒天井部)の石取付け

上げ裏部や梁底などの石張りは落下しないように、必ずファスナーと吊りボルト併用で固定する。吊りボルトはSUS製とし、石一枚に2カ所以上設け、吊りボルト1本でも十分支持できるような強度を確保する。大地震(400gal)時、鉛直方向の震度K=1.0でも脱落しない安全性が求められる。また、石は一部が割れても脱落しないようFRPで裏打ち補強をする。