1級建築施工管理技士 RC造工事 構造スリット

建築品質 鉄筋コンクリート造


028)構造スリットは漏水に注意する

阪神淡路大震災において、RCラーメン構造の建物が多く損傷した。腰壁によって柱が短柱となり崩壊したものが多い。このため、RCラーメン構造として耐震設計するとき、柱が腰壁等により拘束されないように、柱や梁の際に隙間を設けることが多い。これを構造スリット(または耐震スリット)という。柱際の構造スリットは鉛直スリット、梁際の構造スリットは水平スリットという。この構造スリットが外壁にある場合は漏水の原因にもなるケースがある。

1.構造スリットの幅を確保する

構造スリットの幅は躯体の大地震時の変位量と同じだけ必要である。通常大地震時の変位角は1/100であるから、階高3.5mの時、鉛直スリット幅は3,500mm/100 = 35mmとなる。水平スリットは躯体の面内変形と面外変形に対して、梁と壁の縁が切れていれば良いので、実際には施工できる幅として25mm程度としている。この構造スリットの幅は構造設計図に明記されてるので、必ず確認する。

2.外壁の構造スリットから漏水させない

外壁の構造スリットには止水性と耐火性が求められる。止水は外部側を二重シールとし、内部側も必ずシールをする。特に水平スリットは水返しの段差を設ける納まりにする。耐火性に関してはロックウール(岩綿)を密実に充填する。中地震でも変位が発生するため、シールは切れやすく、定期的なシールのメンテナンスも必要である。

3.水平スリットは防水立上りの上に設ける

屋上防水と取り合う外壁の場合、防水が変位によって切れないように立上りまでを一体としたい。できればあごの上部に水平スリットを設ける。この場合あらかじめ構造設計との調整が必要である。内部の厨房や浴室の壁に水平スリットが設けられている場合も同じで、防水の立上りの上に水平スリットを設ける。

4.構造スリットの施工精度確保が重要

鉛直スリットは柱・壁のコンクリート打設時の側圧が均等にかからないと片寄りやすい。補修や手直しができない箇所なので施工管理が重要である。

1級建築施工管理技士 建具工事 構造スリットにつく建具

建築品質 外部建具


056)構造スリットにつく建具

鉄筋コンクリート造の構造スリット(耐震スリット)に取り合う開口部のまわりは地震時に変位を起こす。一般に大地震時の最大変位は階高の1/100を想定している。中地震にもある程度の変位が発生し、サッシの4辺を固定すると、変形して部分的に破損する。

1.地震時の変位に対して破損しない建具にする

地震時の躯体の層間変位に対して建具に大きな損傷が起きないようにしなければならない。少なくとも毎年1回は発生する中地震で、建具に支障をきたさないことが重要である。中地震での変位量は構造設計者に確認し対応を決定する。具体的には建具の上下枠は水が入りやすのでモルタルで充填して躯体と固定し、縦枠は自由に変形して躯体変位に対応するようフリーにする。縦枠のフリーの部分は、枠を躯体にアンカーせずに、モルタルを詰めないため、耐風圧に見合った枠補強が必要となる。モルタルに代えてロックウールを密実に充填し、二重シールとする。

2.横長建具は上枠をスライドにする

横長の窓で縦枠が短い建具の場合は、縦枠の変位角が大きくなり建具枠やガラスの破損の可能性が高くなる。このため、横長の建具の上枠はスライド機構をもった枠とし、ロックウールを充填する。この場合、上枠のシールが切れやすくなるため、必ず水切りを設ける。

3.構造スリットにつく窓には庇をもうける

構造スリットに付く窓の躯体とのシールは二重シールにしても切れやすい。建具は壊れなくても、シール切れによる漏水の恐れがある。できれば窓上部に庇を設ける。抱き納まりにするだけでも違う。構造スリットの外壁と同面に建具を納めてはならない。同面納まりにする建具に計画するなら、構造スリットを設けない構造設計が必要である。