10章 石工事 7節 特殊部位の石張り

第10章 石工事

7.特殊部位の石張り

10.7.1 適用範囲

アーチ、上げ裏笠木、甲板等に石材を用いる場合はその条件の特殊性を十分考慮して、計画施工する必要がある。 施工面においても標準工法のほか、特殊な材料や工法等の併用が必要となる。

組積造に見られるアーチでは、石材には圧縮力しか作用しないようになっているが、現在、わが国で施工されるアーチ、上げ裏の石材は板材を吊る形式のため、石材に自重が長期荷重として作用するので、長期の曲げ及び引張り耐力が必要である。 石材の耐力も含め、いかに安全策を講ずるかが重要である。

屋外の笠木等では真夏には石材表面が 60℃以上にもなる。 石材の熱伸縮を吸収するため、伸縮調整目地を適当な間隔に設ける。花こう岩の場合、線膨張率は 6~9 x 10-6/℃程度である。外壁等の部位が乾式工法であっても笠木、窓台等平場部分は湿式工法とすることが多い。白華の発生防止のため、笠木類を乾式工法で取り付ける時は金物が勾配なりに取り付けられるので、金物形状に注意する。

10.7.2    アーチ、上げ裏等の石張り

(a)    材料
(1)石材の厚み
石材の厚さは長期の耐力を見込み、十分な寸法を確保する。 溝加工や切欠きは避ける。

乾式工法同様石材の耐力が重要であるので、密度や吸水率等の一般物性のほか、曲げ、仕口部強度を十分に把握しておく。

(2)石材の加工
(ⅰ)見上げ面

見上げ面は原則として、目地合端にだぼ・引金物用の穴を設ける。石材の幅又は長さが、350mmを超える場合は、吊りボルト用の穴を石材 1 枚当たり2 箇所設ける。

(ii) 下がり壁 ・カ石
下がり壁部分等は原則 として、縦目地合端にだぽ ・引金物用の穴を設け、引金物で保持する。
受金物用の力石は、斜めだぼ 2 本と接着剤併用で石材裏面に1枚当たり2箇所設ける。

なお、力石に代えて、アングル材をストーンアンカーで固定する方式も用いられる。

(3)石材裏面の処理
アーチ、上げ裏の石材が万が一にも破損すると、すぐさま落下の危険が生じるため、ガラス繊維メッシュ等による裏打ち処理は有効である。
また、躯体コンクリートを伝わる雨水によるぬれ色や白華を防ぐために石裏面処理が有効である。

いずれの適用も特記されなければならない。

(b)取付け代
(1)湿式工法・空積工法

湿式工法及び空積工法の場合の取付け代(下地と石裏面の間隔)は,40mmを標準とする。

(2)乾式工法

乾式工法及び吊りボルトを用いる場合の取付け代は,70mmを標準とされている。

(c)下地ごしらえ
(1)見上げ面
湿式工法の場合は、流し筋工法を採用するが、上向きの溶接作業となるので防錆処理も含めて施工管理が重要となる。
乾式工法の場合は、壁面の場合とは異なり、先付けアンカーの適用を原則としている。

やむを得ずあと施工アンカーを採用する場合には、上向きに削孔して取り付けなければならいため、品質のばらつきや常時の下向き荷重に対して十分な安全率を見込んで計画する。 吊りボルトの取付けも同様に考える。

(2)下がり壁部分
荷重受金物を石材 1 枚当たり 2 箇所設骰する。

役物で L型にする場合は工場で一体化してくる。 当て石を接着し、合端にはかすがいを取り付ける。

(d)石材の取付け
(1)見上げ面
見上げ部分の石材の固定は、湿式工法では堅固な仮支持枠等で仮支えし、あいだぼ入れとし、引金物、受金物、吊金物を用いて,堅固に取り付ける。

吊りボルトは化粧ボルトを用いるが、意匠上吊りボルトを見せたくない場合は、厚めの石材とし、象眼する方法もある(図10.7.1 参照)。

乾式工法では石材自重による長期荷重が曲げや引張りとして作用するので、十分な安全率を見込む必要がある。
石材寸法を必要以上に大きくしないとか、金物個数を増やすなどである。

金物、治具の工夫により、仮支持枠類を省略できる。


図 10.7.1 上げ裏の施工

( 2) 下がり壁部分
湿式工法では荷重受けとなる力石又は金物を下地に取り付けた受金物に乗せ掛け、引金物、あいだぼにより下地に緊結する。
乾式工法では石材側面のだぼを介しファスナーで面外と鉛直方向の支持を兼用する例もあるが、施工性を考慮して自重受けとなる力石や金物を用いる場合が多い。
湿式工法、乾式工法とも上げ裏部の石材を工場で一体化したL型部材を用いる場合、上げ裏部の石材合端にもだぼを設け、引金物、ファスナーを設置する。

壁目地にシーリング材が施工されても裏面への雨水の浸入は長期的には防ぎようがなく、その雨水が下がり壁下部より滴下したり、上げ裏石内部に水がたまる故障例があるので、雨水排出機構を確保する必要がある(図 10.7. 2 参照)。


図10.7.2 上げ裏部 フラッシングの例

(e)裏込めモルタルの充填

湿式工法を採用した場合には裏込めモルタルを充填するが、その方法は外壁湿式工法に準じる。

( f )目 地

特殊部位では形状納まりが複雑となり、また、施工性も決して良くはない。加工や施工の誤差を吸収するためにも十分な目地幅を確保する。 したがって、他部位との取合い部は誤差の吸収に加え、石張り面の挙動を考慮した十分な幅の伸縮調整目地とする。

10.7.3    笠木、甲板等の石張り

(a)    材料
(1)石材の厚み

笠木、甲板の石材は使用状況に応じた厚さとし、特に屋外に使用する場合は十分な厚さのものを使用する。笠木では石厚 40mm以上を採用することが 望ましい。

(2)石材の加工
(i)湿式工法
湿式工法では、石材の幅が、300mmを超える場合は、目地合端の片側、両端部より50mrn程度の位置に引金物用の穴あけ、目地合端両側、両端部より85mm程度の位置にだぼ用穴あけを行う。 石材の幅が、300mm以下の場合は、目地合端の片側、中央1箇所に引金物用の穴あけ、目地合端両側の両端部2箇所にだぼ用穴あけを行う。

幅の小さい石材ではだぼに引金物を取り付け、引金物用の穴あけをなくし、加工に伴う欠陥を少なくする工夫もある。

(ii) 乾式工法

乾式工法では目地合端両側に,2箇所だぼ用穴あけを行う(図 10.7.3 参照)。


図10.7.3 乾式工法による笠木の取付け例(JASS 9(一部修正)より)

(3)石材裏面の処理
モルタルが比較的多く使用される部位であること、また、笠木は雨水を直接受けるので、白華防止のための石裏面処理は積極的に行うべきである。
外壁にゴンドラを降ろすときの養生不備による損傷や、無理な加力もあり、笠木には不具合が発生しやすいが、

人目に付かず軽微なうちの故障が発見されにくいので、破損時に備えた裏打ち処理も検討する。

(b)取付け代

「標仕」では、湿式工法の場合は 40mmを標準とし、乾式工法の場合は特記によるとしている。笠木下地となるパラペット天端は躯体に屋上側への水勾配を設け、雨水の滞留、流出による白華の発生等の不具合防止を固る。

(c)下地ごしらえ
(1)湿式工法
石材の幅が、300mmを超える場合は、径 9mmのアンカーを下地天端で2 列に、間隔 400mm程度に設けておき、これに引金物緊結用鉄筋を添え溶接する。

石材の幅が 300mm以下の場合は、下地天端中央に引金物を設けて石材を取り付ける。

(2) 乾式工法

所定の位置にアンカーを設け、笠木、窓台の天端で水勾配を設ける。

(d)石材の取付け

(1)湿式工法

笠木の長さは、900mm程度とし、下地清掃と十分な水湿しののち、目地合端の片側にだぼを取り付けておき、他端は、引金物を下地鉄筋に留め付け、通りよく目違い等のないように, 裏込めモルタルを隙間なく充填して固定する。

(2)乾式工法

(ⅰ)石材の輻が 300mm以下の場合は、両端部及び目地合端中央に1箇所ずつファスナーを設ける。

(ⅱ)石材の幅が 300mmを超える場合は、両端部及び目地合端に2箇所ずつファスナーを設ける。

いずれもファスナーは外れ止めで、鉛直荷重の支持は裏込めモルタルによる。全充填を基本とするが団子状に設置する場合もある。

(e)目 地

外部の目地は 8~10mmを標準とし、シーリング材を充填する。これは、止水及び変位吸収を目的としたもので、2成分形ポリサルファイド系シーリング材の使用が多い。   内部目地ではモルタル目地としてもよい。ただし、他部材との取合い部や、変位の予想される部分では伸縮調整目地とし、シーリング材を充填する。

(f ) 面台、棚板の据付け

笠木と同じく水平部材である屋内の面台や棚板の取付けは、床の石張りと同様に行う 。

10.7.4 隔て板

(a)材料
(1)石材の厚み
隔て板は一般的に自立壁となるので.薄い石材では思わぬ衝撃が加わった際に破損につながるため、厚さが特記される。 特記のない場合には40mmを標準とされている。
便所、浴室等に用いられるり隔て板の石質はテラゾが一般的であったが、近年は意匠上花こう岩や大理石の使用例が多い。
ただし、水回りでの大理石の使用には光沢の低下等の不具合が生じやすいので、その特質を踏まえて使用すべきである。

特に床にのみ込ませた石材の下部は、清掃時に汚れた水を吸い上げ、内部に染み込んだ汚れとなるので注意する。

(2) 石材の加工

石材の加工は、目地の合端にだぼ用の穴あけ、上端の端部にはかすがい用の穴あけを行う。

(b)工 法
隔て板と前板の固定方法は、一般的には石板上端を径 6mmのステンレス製かすがいを用い、併せて、縦方向に 2~3 箇所程度径5mmのだぼを用いて固定する。
自立する隔て板は、床仕上げ内に 20mm以上のみ込ませ、モルタルにより固定する。適宜補強金物を用いる。

隔て板と前板の固定は縦方向に 2 箇所以上のだぼを用いて固定する(図 10.7.4参照)。


図 10.7.4 隔て板の例

10.8.1 石先付けプレキャストコンクリート工法

「標仕」に示された湿式工法、空積工法、乾式工法以外に、よく用いられるエ法として「石先付けプレキャストコンクリート工法」がある。  石先付けプレキャストコンクリート工法は、石材をあらかじめ工場でプレキャストコンクリートに先付けすることによって仕上げとし、カーテンウォールのような部材として取り扱う工法である。

したがって、仕上げ工程の高所での危険な作業が減り、資材運搬の効率化や労働カ・輸送の削減、工期短縮、地震力や風荷重に対する安全性向上等の長所があり、湿式工法や乾式工法では対応できない高層の建物や柔構造の建物等に多く採用されている。また、特殊な部位や特別な性能(電波吸収等)をもたせる外壁で張り石仕上げとする場合は、ほとんどがこの工法である。

石先付けプレキャストコンクリート工法では,石材裏面の処理が十分に行えるので、ぬれ色や白華の発生を防ぐことができる。また、プレキャストコンクリートに先付けされている石材は、建物の動きによる変形が直接影響しないため、割れ等を生じることがほとんどない。

詳しくは 17章 3節 日本建築学会 「JASS 9 張り石工事」、同「JASS14 カーテンウォール工事」等を参照

11章 タイル工事 2節 セメントモルタルによる陶磁器質タイル張り

11章 タイル工事
02節 セメントモルタルによる陶磁器質タイル張り

11.2.1 適用範囲

(a) セメントモルタルによるあと張り工法の場合の作業の流れを図11.2.1に示す。


図11.2.1 セメントモルタルによる陶磁器質タイル張り(あと張り上法の場合)の作業の流れ

(b) 施工計画書

施工計画瞥の記載事項は、おおむね次のとおりであるが、その作成に当たってはタイル施工業者の協力を得て、十分検討されたものとする必要がある。

タイルの製造工場は、磁器質タイルの場合、通常設計図書に指定されるが、指定されない場合は、工場の規模、受注能力等を検討して承諾することになる。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(見本決定、施工図完了、材料搬入、着工・ 完了、試験等の時期)
② タイルの製造工場名、施工業者名及び作業の管理組織
③ タイルの種類、形状、寸法(裏あしの形状、高さ、乾式・湿式の別)
④ 張付け用モルタル(調合、塗厚)、保水剤の使用
⑤ タイルの施工箇所、張付け工法、目地工法
⑥ まぐさ、窓台等のタイルの施工法
⑦ タイル割りの基準(基準線目地寸法)
⑧ 伸縮調整目地(位置、構成、施工法)
⑨ 関連工事との取合い(電気、機械、仮設)
⑩ タイル施工箇所の張付け順序
⑪ 下地モルタルの浮きの試験方法及び補修方法
⑫ 1回の張付けモルタルの塗付け量、練混ぜ方法及びその量の確認方法、練置き時間
⑬ タイル張り施工中及び施工後の養生方法(特に外壁の場合)
⑭ 排水勾配(雨掛り、水掛りの場合)
⑮ 水洗い
⑯ タイルの打診試験及び接着力試験方法(箇所、使用機器、試験体の作成方法)
⑰ 接着力試験不合格の場合の処置方法

⑱ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

 

(c) その他

外装タイルの施工に関して、(-社)全国タイル業協会では、タイル工事現場指導員制度を設けており、施工品質の確保に努めている。

11.2.2 材 料

(a) タイルの種類及び品質

(1) JIS A 5209(陶磁器質タイル)の抜粋を次に示す。

タイルのJISは国際規格との整合を図ることを目的の一つにして、平成20年に大幅に改正されている。従来のきじの質による区分(磁器質タイル、せっ器質タイル、陶器質タイル)がなくなり、吸水率の区分が設けられて吸水率によって I類、II類、Ⅲ類に分類されたが、 I類が従来の磁器質、 II類がせっ器質、Ⅲ類が陶器質にほぼ該当する。

JIS A 5209 : 2010
4. 種 類

タイルの種類は、次による。

a) うわぐすりの有無による区分
1) 施ゆうタイル
2) 無ゆうタイル

b) 主な用途による区分
1) 内装壁タイル
2) 内装壁モザイクタイル
3) 内装床タイル
4) 内装床モザイクタイル
5) 外装壁タイル
6) 外装壁モザイクタイル
7) 外装床タイル
8) 外装床モザイクタイル

備 考
1. ユニットタイルとした場合の区分は、次による。
a) 内装壁ユニットタイル
b) 内装壁モザイクユニットタイル
c) 内装床ユニットタイル
d) 内装床モザイクユニットタイル
e) 外装壁ユニットタイル
f ) 外装壁モザイクユニットタイル
g) 外装床ユニットタイル
h) 外装床モザイクユニットタイル

2. モザイクタイルより大きいタイルを混用するモザイクユニットタイルは、ユニットタイル全面積の50%以上がモザイクタイルで構成されなければならない。

c) 成形方法による区分
1) 湿式成形タイル
2) 乾式成形タイル

d) 吸水率による区分
1) I類(3.0%以下)
2) II類(10.0%以下)
3)Ⅲ類(50.0%以下)

参 考
吸水率による区分は、測定方法の変更に伴い、 I類は旧規格の磁器質、 II類はせっ器質、Ⅲ類は掏器質にほぼ該当する。

5. 品質特性

タイル及びユニットタイルの品質特性は、次による。
なお、製造条件が平物と同一の役物は、 5.9~ 5.17の品質特性の試験を省略してもよい。また、ユニットタイルの場合、5.1 ~ 5.17の品質特性を満足したタイルによって構成しなければならない。5.1 表面品質a) タイルの表面品質
タイルの表面品質は、JIS A 1509-2の4.(表面品質の検査方法)に規定する検査を行ったとき、次の基準を満足しなければならない。

1) 平 物
平物の表面品質は、表1による。

表1 平物の表面品質の基準

2) 役 物
役物の表面品質は、表2による。表2 役物の表面品質の基準

b) ユニットタイルの表面品質
ユニットタイルの表面品質は、JIS A 1509-13に規定する検査を行ったとき、表3の基準を満足しなければならない。ただし、役物ユニットタイルには適用しない。

表3 ユニットタイルの表面品質の基準

5.2 形 状
タイルの形状は、製造業者が定める。通常よく使用する標準的な平物及び役物、定形タイル及び不定形タイルの例を付図1に示す。また、 タイルの表面形状は、平面以外の形状とすること又は装飾のために模様を付けることができる。なお、使用部位表示で屋外壁及び屋外床を使用可能とするタイルは、裏あしを付ける。ただし、屋外壁用の外装接着剤張り専用のタイル及び屋外床用のタイルで、適切な施工方法を、カタログ、説明書などによって明示する場合は、裏あしがなくてもよい。また.屋外壁の場合、タイルの裏あしの形状及び高さは、5.7の規定による。

備 考
使用部位で屋外壁に使用するタイルには裏あしを規定しないが、9.3に示すように、ロビー、ホールなどで階高が1階を超えるモルタル施工するタイルには、裏あしを付ける。

5.3 寸 法
タイル及びユニットタイルの製作寸法は、製造業者が定める。通前よく使用するタイルの標準的な長さ及び幅の例を付図3~付図6に、ユニットタイルの標準的な長さ及び幅の例を付図2に示す。

a) 長さ及び幅の許容差
1) タイルの長さ及び幅の許容差
タイルの長さ及び幅の製作寸法に対する許容産は、JIS A 1509-2の5.(寸法及びばちの測定方法)に規定する測定を行ったとき、表4に示す数値とする。

表4 タイルの長さ及び幅の許容差

2) ユニットタイルの長さ及び幅の許容差ユニットタイルの長さ及び幅の製作寸法に対する許容差は、JIS A 1509-13に規定する測定を行ったとき、±1.6mmとする。

b) 厚さの許容差
タイルの厚さの製作寸法に対する許容差は、JIS A 1509-2の5.(寸法及びばちの測定方法)に規定する測定を行ったとき、表5に示す数値とする。

表5 厚さの許容差

5.4 ば ちタイルのばちの基準は、JIS A 1509-2の5.(寸法及びばちの測定方法)に規定する測定を行ったとき、表6に示す数値以下とする。ただし、各辺が50mm以下のタイルについては、JIS A 1509-2の4.(表面品質の検査方法)に規定を行ったとき、目立たなければよい。なお、不定形タイルには適用しない。

表6 ばちの基準

5.5 反 り

タイルの面反り、ねじれ、辺反り及び側反りの基準は、JIS A 1509-2の6(反り及び直角性の測定方法)に規定する測定を行ったとき、表7に示す数値以内とする。ただし、役物及び各辺が50mm以下の平物については、JIS A 1509-2の4.(表面品質の検査方法)に規定する検査を行ったとき、目立たなければよい。なお、不定形タイルには適用しない。

表7 反りの基準

5.6 直角性タイルの直角性の基準は、JIS A 1509-2の6.(反り及び直角性の測定方法)に規定する測定を行ったとき、表8に示す数値以下とする。ただし、役物、各辺が50mm以下の正方形状の役物及び短辺が50mm以下の長方形状の平物については、JIS A 1509-2の4.(表面品質の検査方法)に規定する検査を行ったとき、目立たなければよい。なお、不定形タイルには適用しない。

表8 直角性の基準

5.7 裏あしの形状及び高さ使用部位表示で屋外壁を使用可能とするタイルの裏あしの形状及び高さは、JIS A 1509-2の7.(裏あしの形状及び高さの測定方法)に規定する測定を行ったとき、次による。

a) 裏あしの形状形状は、あり状とし、製造業者が定める。

あり状とは、図1の例1に示すように、裏あしのほぼ先端部の幅(Lo)とほぼ付根部の幅(L1)とが、Lo> L1の関係にある形状をいう。また、例2に示すような裏あしの場合、高さ( h )の中央部付近の幅( L2 )が、Lo> L2を満足しなければならない。なお、例3に示すように、例1及び例2以外の形状であっても、ほぼ付根部の幅( L3 )が、Lo> L3 の条件を滴たしているものについては、あり状とみなす。


図1 裏あしの形状の例

b) 裏あしの高さ
制作寸法で定めた部分の裏あしの高さは、表9の基準を満足しなければならない。ただし、タイルの端部に傾斜を設けたときは、その部分を除く。

表9 裏あしの高さの基準

5.8 役物の角度タイルの役物の角度の許容差は、JIS A 1509-2の8.(役物の角度の測定方法)に規定する測定を行ったとき、±1.5° とする。

役物の角度の許容差は、複数の面で構成され、かつ、隣接する面との角度が直角の関係にあるものに適用する。ただし、不定形タイル、人為的に表面を凹凸にしたタイル、及び各面又は小さい方の面の長さが 45mm未満のタイルには適用しない。5.9 吸水率タイルの吸水率は、JIS A 1509-3に規定する測定を行ったとき、表10に示す基準を渦足しなければならない。
なお、試験は、煮沸法又は真空法のいずれを採用してもよい。

表10 吸水率の基準

5.10 曲げ破壊荷重及び曲げ強度

タイルの曲げ破壊荷重及び曲げ強度は、JIS A 1509-4に規定する測定を行ったとき次による。ただし、各辺が 50mm以下のタイルには適用しない。

a) 曲げ破壊荷重
タイルの曲げ破壊荷重は、表11に示す基準を満足しなければならない。

表11 曲げ破壊荷重の基準

b) 曲げ強度

タイルの曲げ強度は、測定i結果を記録する。

5.11 耐摩耗性

使用部位表示で屋外床及び屋内床を使用可能とするタイルの耐摩耗性は、次による。

a) 無ゆうタイルの耐摩耗性

無ゆうタイルの耐摩耗性は、JIS A 1509-5に規定する試験を行ったとき、表12に示す基準を満足しなければならない。

表12 無ゆうタイルの摩耗体積の基準

b) 施ゆうタイルの耐摩耗性

施ゆうタイルの耐摩耗性は、JIS A 1509-6に規定する試験を行い、その結果を表13に示すクラスに分類して記録する。

表13 施ゆうタイルの耐摩耗性評価のためのクラス分類

5.12 耐熱衝撃性

局部的な熱衝撃を受ける箇所に使用するタイルの耐熱衝撃性は、JIS A 1509-7に規定する試験を行ったとき、切れ、貫入などの欠点が生じてはならない。

5.13 耐貫入性

施ゆうタイルの耐貫入性は、JIS A 1509-8に規定する試験を行ったとき、貫入が生じてはならない。ただし、装飾のために貫入を施したタイルには適用しない。

5.14 耐凍害性

凍害を受けるおそれのある場所に使用するタイルの耐棟害性は、JIS A1509-9に規定する試験を行ったとき、タイルの表面、裏面又は端部に、ひび割れ、素地又はうわぐすりのはがれがあってはならない。

5.15 耐薬品性

タイルの耐薬品性は、JIS A 1509-10に規定する試験を行い、その結果を表14に示すクラスに分類して記録する。

表14 タイルの耐薬品性評価のためのクラス分類

5.16 鉛及びカドミウムの溶出性

食物が直に接する箇所に使用する施ゆうタイルの鉛及びカドミウムの溶出性は、JIS A 1509-11に規定する試験を行い、その結果を記録する。

5.17 耐滑り性

水ぬれする場所の床に使用するタイルの耐滑り性は、JIS A 1509-12に規定する試験を行い.その結果を記録する。

JIS A 5209: 2010

(2) 屋外の壁に使用するタイルの裏あしについては、(1)に示すようにJIS A 5209で規定されており、形状をあり状とし、その高さは、タイル表面の面積に応じて定められている。

タイルの裏面の例を図11.2.2に示す。


図11.2.2 タイル裏面の例

(3) タイルの材料は、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)において「標仕」に基づき品質を確認し、評価しているので、この結果等を参考にするとよい。ただし、外壁の接着剤による陶磁器質タイル張りに用いるタイルは、平成26年4月以降の適用となる。

(b) タイルの呼称

一般市販タイルの呼称及び寸法を表11.2.1に示す。

表11.2.1 一般市販のタイルの呼称及び寸法

(c) ユニットタイル

モザイクタイルはユニットタイルとして用いられる。また、小口未満の外装壁夕イル並びに100角、150角程度の小型の外装床、内装床及び内装壁タイルもユニットタイルとして用いられる場合が多い。ユニットタイルの寸法及び連結方法を表11.2.2並びに連結方法の例を図11.2.3に示す。ユニットタイルは作業性が良く、接着に支障がないものでなければならない。

なお、外装壁モザイクタイルの樹脂連結ユニットは、表紙がないため、現場での産業廃棄物を減量できるという特徴がある。

表11.2.2 ユニットタイルの寸法及び連結方法

  

  

  
図11.2.3 ユニットタイル連結方法の例

(d)役物タイル

(1) 役物タイルには一体成形のものと接着加工したものとがある。一体成形とは成形品をそのまま焼成したものであり、接着加工品は平物タイルを切断し、エポキシ樹脂等で接着したものである。二面の90°曲がりの役物は標準品として一体成形で製作される場合が多いが、三面以上の曲がりや90°以外の角度のもの、標準寸法以外のものは接着加工で製作される。ただし、接着に使用するエポキシ樹脂は耐久性に優れた品質のものでなければならない。

役物タイルの例を図11.2.4に示す。

(2) 窓まぐさ及び窓台部分に使用するタイルは、窓、出入口戸等との取合部ともなるので、その機能並びに納り等を考慮し、水切りの良いものとする。


図11.2.4 役物タイルの例

(e) 見本品等

(1) タイルは見本を提出させ、色調等を設計担当者と打ち合わせて決定する。

なお、形状、寸法裏あし等について、指定の製品ができることを確認する。

(2) 見本焼き

(i) 特殊な色調のもの、あるいは屋外のタイルで大量に使用する場合等で特記された場合は、見本焼きを行う。

(ii) 見本焼きによってタイルの色調、色むら、配色(2色以上のタイルを混合する場合)等を確認する。

(iii) 見本焼きの所要期間

① 当該製造工場の見本タイルと同じもの及び類似の見本タイルより作る場合は3週間程度必要である。

② タイルの型から作製する場合(同形状、同寸法でも表面のテクスチュアを変える場合等を含む。)、乾式成形法のタイルは7週間程度、湿式成形法のタイルは6週間程度必要である。

(3) 試験張り

(i) 試験張りは、相当量のタイル張りを行う場合でタイルの色調、配色及び目地の幅、色等を決定するために行う場合と、タイルの色調、配色を決定後、目地割り、目地幅等の決定のために行う場合があり、試験張りを行う場合には特記される。

(ii) 試験張りには、1週間程度必要である。見本焼きのあと、試験張りを行ってタイルを決定する場合は、双方に要する期間を考慮に入れておく必要がある。

(f) グリーン購入法適合タイル

陶磁器質タイルは、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」(平成12年5月31日 法律第100号)に基づく「環境物品等」の対象とされている。また、環境物品の判断基準等は、「環境物品等の調達の推進等に関する基本方針」(平成13年3月9日 環境省告示第11号)に示されているので、特記により環境物品として指定された場合は、これに適合することを製造業者等のカタログ等の資料により確認する必要がある(参考資料の資料1 1.3 (g)参照)。

11.2.3 張付け用材料

(a) セメントは、凝結時間、強度発現の速度、乾燥収縮の程度、作業性等を考慮して選択する。一般的にはJIS R 5210(ポルトランドセメント)に適合する普通ポルトランドセメントが使用されている。

(b) 細骨材は、15.2.2(b)によるが、「標仕」表11.2.1では細骨材の最大粒径が定められている。

細骨材の最大粒径が 2.5mmの場合は、川砂をふるいに通したもので得られるが、最大粒径が1.2mn及び 0.6mmの場合は、川砂をふるいに通しても量が得られないので、けい砂あるいは寒水砂が用いられる場合が多い。

(1) けい砂は、鋳型用のものが JIS G 5901(鋳型用けい砂)に粒度及び粒度分布が定められているので、これを用いるのがよい。種別は、最大粒径1.2mmの場合は20号、最大粒径 0.6mmの場合は35号である。

(2) 寒水砂は、大理石を砕いて製造される細骨材で、モルタル用骨材として用いられる粒度のものが市販されており、粒度の異なる2種類程度を現場で混合して用いるのがよい。

(c) 混和剤は、保水剤及びセメント混和用ポリマーディスパージョンが使用される。

(1) 保水剤

(i) 張付けモルタルには、夏期に限らず、四季を通じて保水剤を使用するのがよい。

(ii) 保水剤は、モルタルの乾燥を防ぎ、作業性を向上させる利点をもっている。しかし、混入量を誤ると、モルタルの流動性が増し、だれを起こして作業が困難になるおそれがあるので、規定された量を守ることが重要である。混人量については,15.2.2(d)(4)を参照されたい。

(2) セメント混和用ポリマーデイスパージョン(15.2.2 (d)(5)参照)は、接着性能の向上、張付けモルタルの耐久性の向上、ドライアウトの防止等の目的で使用される。接着性を改善するためには、混入量はセメントに対するポリマーデイスパージョン中の全固形分の質量比で、5%程度混入する必要がある。5%程度とするには、セメント1、砂1~2の混合割合の場合、固形分比45%のポリマーデイスパージョンでは約4倍の希釈液で混練する。ただし、温度又は風の影響で可使時間が短くなることがあるため、試験施工等によって作業性を確認するとよい。

(d) 既製調合モルタル

既製調合の張付けモルタルは、セメント、細骨材、混和剤等を工場において所定の割合に配合したものであり、現場調合モルタルに比較して品質のばらつきが少ない。

市販されている既製調合モルタルは数多くあり、その使用に当たっては、実績等の資料によりタイルの種類や工法に適合するものであることを確認するとともに、その性能(作業性や接着性等)も十分に検討しておく必要がある。

品質基準としてJIS規格はないが、 (-社)公共建築協会の「建染材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4(e)参照)において、表11.2.3のように既製調合モルタル(タイル工事用)の品質・性能基準を定め、評価を行っているので、その結果を参考にするとよい。

表11.2.3 既製調合モルタル(タイル工事用)の品質・性能基準

(e) 吸水調整材は.15.2.2(e)による。

(f) 既製調合の目地材は、セメント、細骨材、顔料、混和剤等を工場において所定の割合に配合した材料である。タイルの種類、日地幅、目地色を確認して材料を選択する。

なお、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)において、表11.2.4のように既製調合目地材の品質・性能基準を定め、評価を行っているので、その結果を参考にするとよい。

表11.2.4 既製調合目地材の品質・性能基準

11.2.4 その他の材料

(a) 引金物は、径0.6mm以上のなましステンレス鋼線(SUS304)を使用する。銅線は、腐食しやすいので使用しない。引金物の取付けは、図11.2.5に示すように湿式成形法のタイルはタイルに設けられた穴に通し、乾式成形法のタイルはエポキシ樹脂により接着する。


図11.2.5 引金物を取り付けたタイルの例

(b) シーリング材は、9章7節による。耐久性、伸縮追随性、水密性、作業性を考慮するとともに、タイル表面を汚さないものを選択する。

11.2.5 張付けモルタルの調合

(a) モルタルの調合

(1) モルタルの調合は「標仕」表11.2.2による。また、砂については11.2.3 (b)による。

(2) 化粧目地用モルタルは、目地幅により砂の容積比は異なる。通常、次のようにするのがよい。

(i) 目地幅が3mm以下で屋内の場合は、0.5 程度とする。
(ii) 目地幅が3mm以下で屋外の場合は、0.5~1.0 程度とする。
(iii) 目地幅が3mmを超えるものの場合は、0.5 ~ 1.5 程度とする。

(3) 既製調合モルタル及び既製調合目地材の使用に当たっては、タイルの種類、工法、目地幅等に適合することを確認する。

(b) モルタルの練混ぜ方法
(1) 1回の練混ぜ量はモルタルの硬化が始まる前に完了するように、60分以内に張り終わる量としている。モルタルの練混ぜを均ーに行うために、機械練りとする。

ただし、室内で少量の場合等は、手練りでもよい。

(2) 粉末状保水剤を使用する場合は、セメントと保水剤を空練り後、砂を加えて空練りし、次に水を加えて十分に錬り混ぜる。

(3) 液状保水剤を使用する場合は、あらかじめ所定の濃度に希釈した溶液を、空練りしたモルタルに混入し、次に水を加えて十分に練り混ぜる。

11.2.6 施工時の環境条件

(a) 外壁タイル張りにおいて、外壁面がぬれるような降雨及び降雪の場合、クレーン等が運行できない強風時等、タイル工事に支障がある時並びにこれらが予想される場合は、施工を行わない。

(b) 冬期のセメントモルタルによるタイル張りにおいて、塗付け場所の気温が 3℃以下及び施工後 3℃以下になると予想される場合には、下地モルタル、張付けモルタル及び目地モルタルが初期凍害を受ける危険性があるため、仮設暖房・保温等による施工面の養生を行う。このような養生を施しがたい場合は、作業を中止する。

11.2.7 施 工

(a) タイルの割付け

(1) 一般的な割付け方法には次の2つの方法があるが、タイルの割付けの場合には、(i) によることが大部分であり、(2)以下の事項を考慮して割付けを行っている。

(i) 規定された寸法の材科を用い、基準線(面の中心あるいは端部柱形、梁形、建具回りの伸縮調整目地等)を定め、その間に割り付ける方法:タイル,ボード類、ブロック等

(ii) 概略の材料寸法を定めておき、基準線の間に割付け目地を規定の寸法として正確な材料の製作寸法を定める方法:石材、プレキャストコンクリート製品等

(2) 屋外の壁の場合

(i) 建具寸法、位置等のわずかな変更により、タイルの割付けが整然と行える場合は建具の方を調整するとよい。

(ii) 躯体寸法等下地のわずかな変更により、タイルの割付けが整然と行える場合は、躯体等の下地を調整するとよい。

しかし、この場合でも構造体の断面不足を生じないようにする。

(iii) 規格化された寸法より多少異なった寸法のタイルも大量にまとまれば、規格品に比べて割高になるが製造できる。ただし、製造に日数を要する。形状についても、寸法が大きくなると、焼成時にひずみが増し、不良品が多くなるなどがあるので、製造に無理のないものにしなければならない。

(iv) 役物タイルは、なるべく規格化された寸法のものを用い、その種類を少なくする。

(v) 床面に勾配のある場合は、壁タイルを勾配に合わせるか、モルタル等の他の材料によって勾配を調整するかを検討する。

(vi) 目地寸法は、小口、二丁掛けで 6~11mm程度である。6mm以下では、目地押えが困難になりやすい。大形床タイルのような大きなものでは、6 ~ 10mm程度にしている。

(ⅶ) タイル面に取り付ける金物、設備機器等の位置をタイル割りに合わせる。

(ⅷ) 躯体寸法、建具寸法等を定めるときは、タイル割り図を作成しておき、これに合わせる。やむを得ない場合でも、タイル割りに無理のないことを確かめておく。

(3) 屋内の壁で内装タイル(陶器質施ゆうタイル)の場合

(i) 建具や躯体との関係等は、外装の場合と同様である。

(ii) タイルはすべて規格化されたものを用いるため、端部には切り物が入りやすいが、半分以下の寸法のものは用いないようにする。また、切り物はなるべく目立たない部分に用いるようにする。

(iii) 壁が天井面までタイル張りで、天井目地の場合は、目地底を基準線として割り付け、床はのみ込みにすることが多い。
内幅木〈サニタリー〉(図11.2.4 (ロ)参照)タイルを用いる場合は、当然床面が下の基準線になる。

なお、隅部では、切り物が隣接するのを避ける。

(iv) 棚の高さ、隔て板の大きさ等は、タイルの目地に合わせる。

(v) 電気、機械の機器の取付け位置、配管の取出し口等は、タイルの目地位置に合わせる。そのため、タイルの割付け図には、機器及び配管の取出し口の位置を記入させ、正確な位置を定めておく。

(vi) 目地寸法は 2~2.5mmが多いが、1.5mmでもできる。


図11.2.6 外部タイル割付けの例(二丁掛けの場合)


図11.2.7 外部タイル割付けの例(小口の場合)

(ii) 内装タイルを使用する場合の例


図11.2.8 隔て板の割付け


図11.2.9 棚板の納まり


図11.2.10 建具枠の納まり


     図11.2.11 隔て板の納まり


図11.2.12 便所タイルの割付け

(b) 下地及びタイルごしらえ

(1) コンクリート素地面をMCR工法とする場合は、「標仕」6章8節に、目荒し工法(高圧水洗)とする場合は、「標仕」15.2.4 (c)による。

(2) 張付けモルタルのドライアウトによる硬化不良や接着不良を防ぐため、下地モルタルが乾燥している場合には、タイル張り前に十分水湿しを行うか又は吸水調整材を塗布する。ただし、改良積上げ張りの場合、吸水調整材の塗布は行わない。

(i) 水湿しは、夏期等で乾燥が著しい場合には、前日に散水しておくようにする。
(ii) 吸水調整材の途布は、15.2.5(a)(1)による。

(iii) 吸水性のタイルは、必要に応じて、適度の水湿しを行う。

(c) 床タイル張り
(1) 張付け面積の小さい場合(トイレ、浴室等)(図11.2.13参照)
(i) 敷モルタルを敷き込み、敷モルタルが硬化したのちに、張付けモルタルを用いてタイル張りを行う。敷モルタルの調合はセメント1に対して砂 3~ 4程度の貧調合とし、少量の水を加えてモルタルを手で握って固まる程度のぱさばさ状にする。

この工法は、張付け面積の小さい場合以外にも水勾配を付ける場合等、精度の高いタイル床仕上げを要求される場所に適している。しかし、下地の強度が (2)の工法より弱いため、車や重量物が乗り人れる場所への使用は避ける。

(ii) 張付けモルタルはセメントペーストではなく、「標仕」表11.2.2の調合によるモルタルを使用する。

一般床タイル又はユニットタイルは、下地に張付けモルタルを塗り付けて、木づち、たたき板等で目地部分に張付けモルタルが盛り上がるまでたたき押さえて、張り付ける。壁タイル張りと同様、モルタルの塗置き時間が長くならないように注意する。大形床タイル張りでは、タイル裏面への付着状況に注意を払う。事前に試験施工を行って、タイル裏面への充填性を確認したうえで、工法選定を行うとよい。


図11.2.13 小面積の場合の床タイル張り

(2) (1)以外の場合:張付け面積の大きい場合(エントランスホール、ポーチ、ピロティ等)(図11.2.14参照)

(i) 「標仕」15.2.5(c)(1)により下地モルタルを作製し、硬化後にタイル張りを行う。タイル張りの前に下地のレイタンスを除去しておく。

この工法は、車や重量物が乗り人れる場所に使用される。

(ii) 張付けモルタルの調合及びタイル張りの方法は、(1)(ⅱ)と同じである。

図11.2.14 大面積の場合の床タイル張り

(3) 水を使用する箇所の床には、必ず水勾配を付けて水たまりができないようにする。勾配は1/100~1/150にするのがよく、1/200が限度である。

(d) 壁タイル張りの工法
(1) 壁タイル張り工法の種類、工法とタイルの組合せ等を表11.2.5に示す。また、「標仕」の工法を図11.2.15に示す。

なお、張付け材料の塗厚は「標仕」表11.2.3による。

表11.2.5 壁タイル張り工法

図11.2.15 「標仕」の工法

(2) 密着張り(ヴィブラート工法)(図11.2.15及び図11.2.16参照)

(i) 在来の圧着張りは、下地モルタル(中塗りまで仕上げる。)面にモルタルを塗り、これにタイルを押し付けて張り、木づちの類でたたき締めてタイルとモルタルをなじませていたが、本工法は、木づちの代わりにタイル張り用振動機(ヴィブラート)を用いてタイル面に特殊衝撃を加えて、タイルをモルタル中に埋め込むようにして張り、目地部に張付けモルタルを盛り上がらせ、そのモルタルを目地ごてで押さえて、目地も同時に仕上げる工法である。この時、張付けモルタルの塗厚が薄い場合や、タイルの押さえ込み不足により深目地となりやすいが、目地深さがタイル厚さの1/2より深い場合には、張付けモルタル硬化後に目地深さがタイル1厚さの1/2以下となるように目地詰めを行う。

なお、タイル面に衝撃を加えることにより、下地モルタルと張付けモルタルの接着性が著しく向上する利点もある。


図11.2.16 密着張り(ヴィブラート工法)

(ii) 張付けモルタルを一度に厚く塗り付けると、下地に十分なこて圧で塗り付け ることが難しく、また、張付けモルタルのだれが生ずるので、必ず二度塗りとする。一度目のモルタル塗りは、下地面への付着が良くなるように、こて圧をかけてしごくように塗り付ける。張付けモルタルの塗厚は裏あしの高さ等を考慮して決める。その目安は5〜8mmとする。一度に塗付け可能な面積の限度は、一人が施工可能な面積として2m2以下、かつ、20分以内に張り終える面積とする。張付けモルタルに触ると手に付く状態のままタイル張りが完了できる作業を目安とするとよい。

なお、くし目ごてを用いるとタイル裏面への充填性が十分に確保できないため用いてはならない。

(iii) 振動工具による加振は、一枚のタイル全体に張付けモルタルが均等に充填されるように加振位置を複数筒所とし、張付けモルタルがタイルの周囲から目地部分に盛り上がる状態になるまで行う。張付けモルタルを塗ってからタイルを張り始めるタイミングが早過ぎると水分が浮き出て水膜を生じる。タイミングが遅過ぎると薄皮状の膜が生じてタイルと張付けモルタルの接着が悪くなる。

張付けモルタルの締まり具合の確認が重要である。

(iv) モルタルに混入する砂の最大粒径は、「標仕」表11.2.1では2.5mmと定められているが塗厚が5mm程度、目地幅が 8mm以下の場合は、塗付け作業及び目地部のモルタルの盛上がり及び仕上りを考え、粒径 1.2mmのものを用いるのがよい。

(v) タイル張付けは、上部より下部へと張り進めるが、まず1段置きに水糸に合わせて張り、そのあと間を埋めるようにして張る。上部より続けて張ると、タイルのずれが起きやすく目地通りが悪くなる。

(vi) 本工法のタイルの接着力は、衝撃を与える時間に影響されるので適正な衝撃時間を与えなければならない。タイルの大きさと適正な衝撃時間、衝撃位置の関係は表11.2.6のとおりである。

なお、張付けモルタルの塗置き時間は20分程度までが望ましい。

表11.2.6 タイルの大きさと衝撃時間、衝撃位置

(vii) 密着張りのプロセス管理法としては、タイル裏面への充填性の検査が望ましい。密着張りの場合、タイルの裏あしに張付けモルタルがかん合して、一体性が確保されていることが、最も重要な管理ポイントの一つである。検査は、図11.2.17に示すように、タイルを張り付けた直後に、タイルをはがしてタイル面への充填性を確認する。判定基準は、タイル裏面の充填面積の割合(充填面積率)で管理することが一般的で、そのときの管理下限値を90%程度にしていることが多い。


図11.2.17 タイル裏面への充填性検査(密着張り)(JASS 19より)

(3) 改良積上げ張り

(i) タイル張りの作業においては、出隅部・入隅部・開口部等を基準として、その間にタイルを張り込む形でタイル張りを行う。タイル張りの基準となる箇所には、あらかじめ決定したタイル割りに基づいて、これらを目地通りよく張り上げるため、上下引き通しの基準線を設ける。

階段が多い高層の建築物の場合は、張力をかけることができ、風等による揺れの少ないピアノ線を、また低層の建築物の場合はナイロン製の糸を水糸として用いること多い。

(ii) コーナ一部や開口部回りの役物タイルは、その他の平部分のタイル張りに先立ち、基準を設けるために施工する。また垂直の目地通りを確保するため.建物最上部のコーナータイル又は平タイルを基準タイル張りとして先に施工する。

これらのタイル張りは、仕上り面精度を確保する基準となるので慎重に行う必要がある。

(iii) 改良積上げ張りでのタイル張りは、タイル裏面に小形の金ごてを用い、張付けモルタルを仕上り代よりも3〜4mm程度厚めに塗り、仕上り墨を見ながら隅角部の両辺にわたって位置を正確に、また均等によくたたき込む。

(iv) タイルヘのモルタルの塗付けは、外装タイルの場合はタイル裏面の裏あし先端から4〜7mm程度、内装タイルの場合はタイル裏面から13〜18mm程度隙間のないように行う。通常、タイルを手に持ち、れんがごて等を用いて塗り付けるが、タイルの隅角部にはモルタルがまわらないことがある。塗厚を一定にし、隅々までモルタルを塗り付けるため、合板等で型を作り、ここにタイルを敷き並べて塗り付けるとよい。ただし、モルタルを塗り付けたタイルは、長くとも 5分以内に張り付けることが肝要である。

(v) 一般に改良積上げ張りは、下部から張り上がる。小口・二丁掛けの形状では、ずれが生じることは少ないが、タイルの形状が大きかったり、厚さが厚かったりするとずれが生じることがある。ずれを止めるためにセメントの粉を掛けることがあるが、白華発生防止のため絶対行ってはならない。ずれが生じる場合は目地に棒等をかって上へ張り進める。

また、タイルを上へ積み上げていくとき、下部のタイルに荷重が掛かるような場合が少なくない。タイルのはく離を防ぐため、1日の施工高さを1.5m程度と「標仕」では規定している。

(vi) 内装の場合で、張付けモルタルの量が適切でなく隙間ができた場合はモルタルを補充する。

(ⅶ) 化粧目地は「標仕」11.2.7(c)(3)(iv)による。

(4) 改良圧着張り
(i) 改良圧着張りは、張付けモルタルを下地側とタイル災面の両方に途って、タイルを張り付ける工法である。

下地側には、軟らかめに練ったモルタルを金ごてを用いて薄くこすり付けるように塗り付けて、下地面との密着を確保したのち、直ちに張付けモルタルを塗り重ねて4〜6mm程度に塗り付ける。

定規を用いて平たんな面を出したのち、木ごて・発泡スチロール板(約200 × 200 × 30mm程度)で表面を平たんにするとともに粗面i状態とする。この面の上にタイル張りを行うが、タイル張りまでの時間は、モルタル練りからタイル張り終了まで60分以内とする。

(ii) タイル裏面に張付けモルタルを塗り付ける際は、タイルを固定するための専用の治具等を用いて、3~4mm程度の厚さで、こて圧をかけて、タイル裏あし全体にモルタルが充填するように塗り付ける。この張り方の重要な管理ポイントは、張付けモルタルの塗置き時間である。作り置きをしないで、タイル裏面に張付けモルタルを塗り付けたタイルは、直ちに張り付ける作業手順とする。

(iii) タイル張りを終了したのち、目地の通りを確認し、更に、目地部の盛り上がったモルタルを目地ごて・木の棒等を用いて取り除き、ささら(細い割り竹をたばねたもの)等を用いて掃除しておく。

(5) マスク張り
(i) マスク張りは、25mm角を超え、小口未満のタイルの張付けに用いられる。
(ii) 張付けモルタルには、メチルセルロース等の混和剤を用いる。

(iii) タイル裏面にモルタルを塗り付けるのに使用するマスク板(図11.2.18及び表11.2.7参照)は、この工法に専用のもの((-社)全国タイル業協会で入手できる)を用いる。

現在用いられているマスク板は、肉厚が 6〜7mmのモザイクタイルの場合、マスクの厚さが 3mmではタイル裏面へのモルタルの充填が不足し、また、マスクの厚さが5mmでは、張付けたタイルがずれやすく、目地部へのはみ出しが多く汚れが生じやすい 。 そのため、マスクの厚さは 4mmが適切である。


図11.2.18 マスク板の形状の一例

表11.2.7 マスク板の大きさ及び開口率

(iv) マスクを介しての張付けモルタルの塗付けは、金ごてを用いて行う。ゴムごて等を用いると塗厚が薄くなり、所定の塗厚が得られないため注意が必要である。

(v) タイル張付けは、目地通りを定めた墨に合わせて、目地部に張付けモルタルがはみ出すまで、たたき板でたたき押えをしながら張り付ける。

張り手と塗り手とが、2人1組で作業を行うと効率が上がる。

マスク張りの重要な品質管理ポイントは、張付けモルタルの塗置き時間の管理である。作り置きをしないで、タイル裏面に張付けモルタルを塗り付けたタイルは、直ちに張り付ける作業手順とする。マスク張りにおけるタイル浮きの最大原因は、タイルのたたき込み不足によるものである。張付けモルタルの塗布量が少なく、十分なたたき込みができないと、タイルの四隅に隙間が生じて、目地部から雨水が浸入しタイルの浮きにつながるため、目地部分の表紙張りの一部が、はみ出したモルタルにより湿るまで、表紙張りユニットタイルのたたき押えを十分に行う。

(vi) 表紙張りのユニットタイルは、張り付けたのち、紙に水湿しを行い、これをはがす。紙をはがす時期は、タイル張り後速やかに行うのがよい。

この水湿しは、水を含ませたスポンジ、霧吹きあるいは左官用水はけによるが、園芸用薬剤散布のための霧吹きが短時間で均ーに水湿しができる。紙はがし後著しい配列の乱れがある場合は、速やかにタイルの配列の乱れを、金ごてと小形ハンマーを用いて修正する。モルタルの硬化が進行してからは、タイルの接着を損ねることになりかねないため、張付けモルタルが軟らかいうちに行う。この時間の判断には十分な注意を払う必要がある。また、修正後は再度たたき板でたたき押えをする。

(6) モザイクタイル張り

(i) 張付けモルタルの派付け面積を3m2以下と「標仕」では規定している。これはモルタル下地面に張付けモルタルを塗り、タイルをたたき押さえながら張り進める工法では、張付けモルタルを塗り付けたのち、タイル張りまでの時間(オープンタイム)の長短により、タイルの接着性が大きく影響を受けるので、これを規定する必要があるためである。

張付け可能なオープンタイムは、季節・風向き・湿度・日射の有無等様々な因子が作用するため、張付けモルタルの締まりや皮ばりがりしいときには、塗付け面積を小さく管理する必要がある。

(ii) 張付けモルタルの塗付けは、いかに薄くとも2度塗りとし、1度目は薄く下地面にこすりつけるように塗る。これは、下地モルタル面の微妙な凹凸にまで張付けモルタルが食い込むようにするためである。

次いで、張付けモルタルを塗り重ね 3mm程度の厚さとし、定規を用いてむらのないよう塗厚を均ーにする。

張付けモルタルの塗付けは、金ごて押えとすることが原則である。

(iii) たたき押えは、全面にわたって十分に行う必要があるが、その目安は、タイル目地に盛り上がった張付けモルタルの水分で、紙張りの目地部分がぬれてくることによって判断する。

(iv) モザイクタイル張りのプロセス管理法としては、タイル裏面への充填性の検査が望ましい。モザイクタイル張りの場合、タイルの裏あしに張付けモルタルがかん合して、一体性が確保されていることが、最も重要な管理ポイントの一つである。検査は、 タイルを張付けた直後に、タイルをはがしてタイル面への充填性を確認する。判定基準は、タイル裏面の充填面積の割合(充填面積率)で管理することが一般的で、その時の管理下限値を90%程度にしていることが多い。

(v) 表紙張りのユニットタイルは、タイル張り終了後、張付けモルタルがやや締まったと思われるころ(夏期は 20分程度まで、冬期は40分程度まで)、ユニットタイルの紙にスポンジ又は霧吹きにより水を与えて、でんぶんのりを軟化させて紙はがしを行う。その後、目地の配列を見て、修正を要するような箇所については手厚しを行う。

(vi) タイル張りが終了したのち.張付けモルタルの締まりを見計らって、目地の掃除を行う。用いる道具は千枚通し等先端が細く鋭利なものであり、モルタルをさらっていく。特に、伸縮調整目地を設ける位置(他種の部材との取合い箇所、入隅部等)のモルタルは、入念に取り除いておくことが必要である。

(e) まぐさ、窓台等へのタイル張り
まぐさ、ひさし先端下部等は、特にはく落のおそれが大きいので、原則として、タイル張りを避けるのがよい。設計図書で役物のタイル張りを指定された場合は、図11.2.19及び図11.2.20のような工法で行う。この時、はく落防止用引金物(なましステンレス鋼線0.6mm以上のもの)をタイルに取り付けることが必要である。

なましステンレス鋼線を張付けモルタル中に埋め込む場合は0.6mm程度とし、下地側のアンカービス等に緊結する場合は0.8mm程度を使用する。


図11.2.19 まぐさタイルの取付け


図11.2.20 窓台タイルの取付け

(f) 斜め整へのタイル張り

斜め壁は、雨掛りが多いことから防水層が設けられる場合が多い。防水層の上にモルタル下地を作製してタイル張りを行うと、長年の間に防水層が劣化して、防水層からモルタル及びタイルがはく離する危険性がある。そのため、斜め整で防水附がある場合には、下地モルタル層をステンレスアンカーとステンレスメッシュによりコンクリート躯体に固定して、タイル張りを行うのがよい(図11.2.21参照)。


図11.2.21 斜め壁のタイルの取付け例

11.2.8 養生及び清掃

(a) 養生

(1) 陶磁器質タイル張りにおいては、施工時の強い直射日光、強風等がタイルの接着に影響を及ぼすため、シートを張るなどして養生を行う。

(2) 冬期のタイル張りにおいて、気温が3℃以下に降下するおそれのある場合は、仮設暖房及び保温を行うか、日中暖かいうちに作業を止め、シート張り等の保温を行い気温が降下しても凍害を受けないようにする。

(3) 施工中及びモルタルが十分に硬化しないうちに、タイル張り面に振動、衝撃等を与えると、接着強度を低下させる原因となるので、避けなければならない。また、床タイルの場合には、同様の理由により3日間はタイル面を直接歩行しないようにする。やむを得ず道板等を使用する場合も、1 日間 は歩行しないようにするのがよい。

(b) 消 掃
タイル面の水洗いを十分に行っても清浄にならない場合は、やむを得ず酸類を用いて汚れを落とすことがある。この場合は、その周辺及び酸が流れる途中の材料を汚染あるいは腐食させることのないように、十分注意する必要がある。酸は30倍程度に希釈した工業用塩酸を用いることが多いが、酸洗い後の水洗いが特に大切であり、酸が目地に残らないように手早く入念に行う必要がある。また、濃度の高い酸で洗うと、タイル面の汚れは落ちやすくなるが、目地材が侵されるので使用してはならない。酸性フッ化アンモニウム等のフッ酸系の溶液は、溶液の濃度、使用時の条件(温度、洗浄時間)及びタイルの種類により、タイル表面を傷めることがあるため注意を要する。ラスタータイルは、タイル表面の損傷が目立ちやすいため、特に注意する必要がある。使用を検討する場合は、必ずサンプルを用いて、実際の清掃時と同じ条件で試験を行い、タイル表面の損傷の有無を確認して判断する。

11章 タイル工事 3節 接着剤による陶磁器質タイル張り

11章 タイル工事

03節 接着剤による陶磁器質タイル張り

11.3.1 適用範囲

(a) 屋内壁への接着剤張りは従来から「標仕」に採用されていたが、屋外壁への接着剤張りは平成25年版「標仕」から新規に採用された。

有機系接着剤による外壁タイル張り工法は、建設省建築研究所(当時)が実施した官民連帯共同研究「有機系接着剤を利用した外装タイル・石張りシステムの開発」(平成5~7年度)において産学官が協力して研究開発され、その成果を参考として、JIS A 5557(外装タイル張り用l有機系接着剤)が制定された。その後、工事仕様の標準化が活発となり、平成22年4月に日本建築仕上学会から「ALCパネル現場タイル接着剤張り工法指針(案)・同解説」が刊行され、平成24年7月に(-社)日本建築学会の「JASS 19 陶磁器質タイル張り工事」の中で「有機系接着剤によるタイル後張り工法」として規定された。

(b) 接着剤による陶磁器質タイル張りの場合の作業の流れを図11.3.1に示す。


図11.3.1 接着剤による陶磁器質タイル張りの作業の流れ

(c) 施工計画書

施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりであるが、その作成に当たってはタイル施工業者の協力を得て、十分検討されたものとする必要がある。

タイルの製造工場は、通常設計図書に指定されるが、指定されない場合は、工場の規模・受注能力等を検討して承諾することになる。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(見本決定、施工図完了、材料搬入、着工・完了、試験等の時期)
② タイルの製造工場名、施工業者名及び作業の管理組織
③ タイルの種類、形状、寸法
④ 接着剤の種類、製造業者
⑤ タイルの施工箇所、張付け工法、目地工法
⑥ まぐさ,窓台等のタイル施工法
⑦ タイル割りの基準(基準線、目地寸法)
⑧ 伸縮調整目地(位置、構成、施工法)
⑨ 関連工事との取合い(電機、機械、仮設)
⑩ タイル施工箇所の張付け順序
⑪ 下地モルタルの検査方法及び補修方法(面精度、乾燥状態、浮き、ひび割れ)
⑫ 接着剤の塗付方法(こて、単位面積当たりの使用量、1回の塗布量)
⑬ タイルと接着剤との接着割合
⑭ タイル張り施工中及び施工後の養生方法(特に外壁の場合)
⑮ 水洗い
⑯ タイルの打診試験及び接着力試験方法(箇所、使用機器)

⑰ 接着力試験不合格の場合の処置方法

11.3.2 材 料

(a) タイルの種類及び品質は、11.2.2(a)による。ただし、JIS A 5209(陶磁器質タイル)が2010年の追補により、「5.7 裏あしの形状及び高さ」は、外装壁タイル接着剤張り専用タイルの場合には裏あしがなくてもよいと改正されている。

「標仕」では外壁に接着剤張りを行なうときのタイルは、原則として、接着剤張り専用タイルを使用することとしている。接着剤張り用の外装タイルは、裏あしが低い又は裏面が平滑な専用タイルであるため、原則として、これを用いる。接着剤張り専用以外のタイルを使用する場合には、タイルと接着剤との接着が確保できるように接着剤の塗布方法があらかじめ確認されたものを用いる。全国タイル工業組合では「外装タイルと有機系接着剤の組合せ品質認定制度」(Q-CAT)を平成21年12月より施行しており、この中で裏あしが高いタイルについても使用する接着剤及び接着剤の塗布方法との組合せを評価して認定しているため、参考にするとよい。

接着剤張り用タイルの裏面形状は、次の理由によりセメントモルタルによる外壁のタイル張りに用いるタイルと異なる。

セメントモルタルによるタイル張りの場合には、セメントモルタルとタイルの接着性、施工品質のばらつき、長期の接着耐久性等を考慮すると、機械的なかみ合わせによる保持が必要である。一方、接着剤張りの場合には、JIS A 5557(外装タイル張り用有機系接着剤)の解説によると、タイルと接着剤の界面や下地と接着剤の界面には何らかの化学的な結合による接着がなされていることからあり状の裏あしは必要不可欠な条件ではない。また、接着剤張りにおいては、接着剤の塗厚がモルタルより薄くなることから、タイルの裏あしが高過ぎると接着面積が減少し、接着性能が低下する。

接着剤張り専用タイルを用いない場合は、事前にタイルと接着剤との接着性を確認し、適切な接着剤の塗付方法を決定する必要がある。

(b) 役物タイルは、11.2.2 (d)による。

(c) タイルの試験張り、見本焼き等は、11.2.2 (e)による。

(d) まぐさ又はひさし先端下部に用いるタイルは、図11.2.4に示すびょうぶ曲がりを使用するか、又は標準曲がりを縦張りする。

11.3.3 張付け用材料

(a) 屋内に使用する有機系接着剤は JIS A 5548(陶磁器質タイル用接着剤)に適合するものを使用する。

(1) JISでは陶磁器質タイル用接着剤はタイプ Ⅰ ~Ⅲ に区分されるが、その用途による区分は表11.3.1 のとおりであり、下地の湿潤状態及び接着後の使用環境により分類される(表11.3.2参照)

表11.3.1 接着剤の用途による区分(JIS A 5548 : 2003)
表11.3.2 下地状況と使用環境(JIS A 5548 : 2003解説)

 

「標仕」表11.3.1ではタイプI 又はタイプ Ⅱ を上記区分に基づいて使用することとしている。

なお、使用環境の予測が困難な場合は、タイプ I を使用する必要がある。

(2) ホルムアルデヒド放散量に関しては、この接着剤が指定建築材料(表19.10.2 参照)でないため、建築基準法では規制の対象にならない。しかし、「標仕」では、JISでホルムアルデヒド放散量に関する品質基準が規定されているため、特記がなければF☆☆☆☆のものを使用することとしている(19章10節参照)。

(b) 屋外に使用する有機系接着剤は、JIS A 5557(外装タイル張り用有機系接着剤)に適合するものを使用する。JIS A 5557 による接着強さと皮膜物性の品質規格を表11.3.3に示す。

また、JIS A 5557の主成分による区分では表11.3.4に示すように一液反応硬化形と二液反応硬化形があるが、「標仕」では一液反応硬化形に限定している。一液反応硬化形は、練混ぜの必要がなく、練混ぜ不良に起因する事故を防止することができる。

表11.3.3 接着強さ及び皮膜物性の品質(JIS A 5557 : 2010)

 

表11.3.4 主成分による区分(JIS A 5557 : 2010)

JIS A 5557の品質規格は目地詰めを行うことを前提にしている。目地詰めを行わない場合には接着剤が日射や雨水の影響を受けるため、JISの規定に加えて耐候性及び耐汚染性の確認が必要となる。「標仕」ではこれらの品質を規定している。耐汚染性は接着剤の成分が雨水等により溶出してタイル表面に付着してタイル表面を汚すことがないかを調べる試験であり、暴露試験は白又は淡色のタイルを使用して確認する。

全国タイル工業組合の「外装タイルと有機系接着剤の組合せ品質認定制度」(Q-CAT)では、耐候性、耐汚染性についても規格を作成して認定しているため、参考にするとよい。

11.3.4 シーリング材

(a) シーリング材は、9章7節による。耐久性、伸縮追従性、水密性、作業性を考慮するとともに、タイル表面を汚さないものとする。

(b) コンクリート躯体のひび割れ誘発目地、水平打継ぎ目地がある場合には、タイル 面にも伸縮調整目地を設置し、いずれもシーリング材を使用し、その位置を一致させる。タイル目地詰めを行わなく、かつ、タイルの目地幅が広い場合には図11.3.2に示すようにタイル面ではなく、下地モルタル面にシーリング材を施工する。その他の場合には図11.3.3に示すようにタイル面にシーリング材を施工する。「標仕」では、これらのシーリング材の種類は特記としている。特記がなければ、躯体については、基本的に紫外線の影響を直接受けないことから、ポリウレタン系シーリング材とする。伸縮調整目地その他の目地は、表面に露出することから、変成シリコーン系シーリング材とする。


図11.3.2 「目地詰めを行わなく、かつ、
目地幅が広い場合の伸縮調整目地の納まり例

 


図11.3.3 目地詰めを行う場合の伸縮調整目地の納まり例

 

(c) 有機系接着剤は原則としてシーリング材の表面に接触することはないが、シーリング材と接着剤が各々の小口面で接触する場合が考えられる。互いの成分の影響により組合せによっては、シーリング材及び接着剤の汚れ、はがれ、未硬化等の原因となることがあるため、事前に試験によって確認しておく必要がある。試験方法は、日本接着剤工業会規格 JAI 17(シーリング材と接着剤の相互汚染性試験)が提案されている。次に試験内容を示す。

JAI 17-2013

1. 適用範囲

本規格は外装タイル有機系接着剤と建築用外装シーリング材の互いの影響による汚染性を確認するための試験方法について規定する。

2. 引用規格
JIS H 4000 アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条
JIS H 4100 アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材
JIS A 5557 外装タイル張り用有機系接着剤
JIS A 5758 建築用シーリング材
JIS K 7100 プラスチックー状態調節及び試験のための標準雰囲気

3. 試 験
3.1 試験の一般条件
a) 試験体の作製は、特に指定のない限り、JIS K 7100に規定する標準状態(温度 23± 2℃、湿度50±10RH%)で行う。

b) 接着剤、シーリング材及び試験に用いる材料は、標準状態の室内に作製前24時間養生しておかなければならない。

3.2 試験材料

a) 接着剤 JIS A 5557 外装タイル張り用接着剤
b) シーリング材 JIS A 5758 建築用シーリング材
c) 基材JIS H4000に規定するアルミニウム合金又はこれらにJIS H 8601に規定する陽極酸化被膜を施したアルミニウム板で、寸法75 × 75 × 2mm。
d) セバレータ JIS H 4100に規定するアルミニウム合金又はこれらにJIS H 8601に規定する陽極酸化被膜を施したアルミニウム角材で、寸法12 × 75 × 6 mm。
e) スペーサ 高さ6mm長さ75mmの角材で表面及び側面に離型処置を施したもの
たとえば、

①セパレータと同様のアルミニウム角材で、寸法約6 × 75 × 6mm。表面及び側面3面に離型材を塗布したものあるいはマスキングテープを張ったもの

②シーリング材に用いる発泡ポリエチレン製 6mm角型バックアップ材
などが良い。

3.3 試験方法
3.3.1 汚染性試験体の作製
a) スペーサの取り付け
基材に図1のような配置でスベーサを両面テーフ等で取り付ける


図1 汚染試験体スペーサ取り付け

b) 先打ち材の充填
二成分シーリング材もしくは二液反応硬化型接着剤の場合は、あらかじめ製造業者の指示に従って計量、混合したのち、試料をスペーサで挟まれた図1の左側①で示した部分全体に、スペーサに沿って充填する。プライマーを使用する場合は製造業者の指示に従う。

c) 先打ち材の養生及び後打ち材の充填
先打ち材を23℃ 50%にて3日間養生後、中央のスベーサを取り除き、硬化した先打ち材表面端部をマスキング等で養生する。後打ち材が二成分シーリング材もしくは二液反応硬化型接着剤の場合は、あらかじめ製造業者の指示に従って計量、混合したのち、試料を先打ち材と図1の右端のスベーサに沿って、充填塗布(図2)する。プライマーを使用する場合は製造業者の指示に従う。 充填後、ただちに先打ち材表面の養生を取り除く。

d) 後打ち材の養生
作製した試験体を23℃ 50%RH1日養生し、スペーサを取り除いて試験体とする。


図2 汚染試験体(後打ち材充填後)

3.3.2 比較用試験1本の作製

a) スペーサ及びセパレータの取り付け
基材に図3のような配置でスペーサ及びスペーサを両面テープ等で取り付ける。


図3 比較用試験体スペーサ取り付け

b) 先打ち材の充填
二成分シーリング材もしくは二液反応硬化型接着剤の場合は、あらかじめ製造業者の指示に従って計量、混合したのち、試料をスペーサで挟まれた図3の左側①で示した位置に充填する。プライマーを使用する場合は製造業者の指示に従う。

c) 先打ち材の養生及び後打ち材の充填
先打ち材を23℃50%にて3日間養生後、セパレータ表面をマスキング等で養生する。

後打ち材が二成分シーリング材もしくは二液反応硬化型接着剤の場合は、あらかじめ製造業者の指示に従って計量、混合したのち、試料をスベーサに沿って図3の右側の位置に充填する(図4)。プライマーを使用する場合は製造業者の指示に従う。

d) 後打ち材の養生
作製した試験体を 23℃ 50% RH 1日養生し、スペーサを取り除いて試験体とする。


図4 比較用試験体(後打ち材充填後)

3.3.3 促進試験

2.3.1で作製した汚染性試験体及び 2.3.2で作製した比較用試験体を恒温室内にて 50 ± 2℃で 7 日間養生する。

3.3.4 汚染性確認試験

a) 目視による確認
促進試験後、目視にて汚染試験体及び比較検討用試験体のシーリング材及び接着剤を観察し、汚れ、色相、界面での剥離の有無について目視にて確認し、変化のあったものを記録する。

b) 指触による確認
促進試験後、指触にて汚染試験体及び比較検討試験体のシーリング材及び接着剤を観察し、硬さ、タックの変化、表面ブリードの有無について確認し.変化のあったものを記録する。

c) 界面の状態確認試験
汚染確認試験体を、図5のように短手方向約10mmのところで切り出し試験体とする。シーリング材と接着剤の接触部から各々15mmのところに標線を引き、標線間が40 mmまで開くように、図6の矢印の方向にゆっくり引張り、相互の界面の状態を観察し記録する。


図5 引張り試験体の採取


図6 界面の状態確認試験

JAI 17-2013

 

11.3.5 施工時の環境条件

(a) 降雨時や降雪時には、施工に支障があるばかりでなく、接着面が湿潤状態になり、引張接着強度の低下を生じさせる可能性があるため、作業を行わない。

(b) 塗付け場所の気温が 5℃以下又は施工後 5℃以下になると予想される場合には、接着剤の塗付け作業性が悪化したり、接着剤が硬化する時間が遅くなる危険性があるため、作業を中止する。やむを得ず作業を行う場合には、仮設暖房、保温等により施工面の養生を行って、5℃以上になるようにする。

11.3.6 施工前の確認

タイル張りを行ううえで必要な下地の乾燥の程度は、使用する接着剤の種類によっても異なるため、接着剤によって管理基準を決める。11.3.3(a)に示すように屋内に使用する接着剤においては、タイプ Ⅱ では乾燥していることが必要であり、タイプ Ⅰ は湿っている下地に使用できる。

屋内のボード下地の場合は、ボード下地が乾燥していることを確認する。モルタル下地でタイプ Ⅱ の接着剤を使用する場合は、水分計で測定して含水率が 8%以下であることを確認する。乾燥期間が十分でなく含水率が 8%を超える場合には、施工後の使用環境に水や温水の影響がなくてもタイプ I の接着剤を使用する必要がある。

屋外のモルタル下地の場合は、目視で下地表面が乾燥した色をしていることを確認する。降雨のあとなどで、モルタル下地表面がぬれ色になっている状態では接着性能が非常に悪くなるため、タイル張りを行ってはならない。

11.3.7 施 工

(a) 下地及びタイルごしらえ

(1) コンクリート素地面をMCR工法とする場合は、「標仕」6章8節、目荒し工法(高圧水洗)とする場合は「標仕」15.2.4 (c)による。

(2) 外装壁タイル接着剤張りは、下地の動きや温度変化によるディファレンシャルムーブメントを緩和してタイルのはく離を防止する工法であり、接着剤張りの特徴を生かすためには型枠精度を上げてモルタル下地の厚みを低減した方がよい。このため、「標仕」ではコンクリートの打放し仕上げの種別をA種とし、コンクリートの仕上りの平坦さは3mにつき7mm以下にするように求めている。また、モルタル塗りの材料は、JIS A 6916(建築用下地調整塗材)によるセメント系下地調整厚塗材2種(下地調整塗材CM-2)を使用し,2回塗りを行うこととしている。モルタル下地の塗厚としては、10〜 15mm程度となり、従来からのモルタル塗りの約20mmに比較して簿くなる。ただし、モルタルの塗厚が薄すぎるとA種を採用したとしてもタイル下地として必要な精度を確保できないことから、10mm以上の塗厚が必要である。

接着剤張りの場合は、下地表面に凹凸があると下地と接着剤との接着性が悪くなるため、モルタルの仕上げは金ごて1回押えとする。また、接着剤張りは接着剤の塗厚がセメントモルタルによるタイル張りに比べて薄いため、仕上りが下地精度の影響を受けやすいため、精度の良い下地が必要である。

モルタルの浮きの原因と補修方法については、11.1.4を参照されたい。

(3) 内装壁タイル接着剤張りのモルタル下地は、15.2.5による。ボード下地は、せっこうボード、けい酸カルシウム板のタイプ2、合板が使用される タイル張りに先立ち、ボード間にタイル張りに支障となる段差がないかを確認する。

(4) 接着剤張りは、下地が乾燥していた方がよいため、水湿しを行ってはならない。また、吸水調整材を塗布すると、吸水調整材と接着剤との接着が悪くなる場合があるため、塗布してはならない。

(b) 壁タイル張り

(1) 外装壁タイル接着剤張りは、「標仕」では、原則として、接着剤張り専用タイルを使用することとするとともに、タイルの種別、大きさ、裏あし高さと裏面反りにより接着剤の使用量を規定している。接着剤の塗布に使用するくし目ごては、一般的に表11.3.5に示すこてが使用される。

接着剤張り専用タイル以外のタイルは、裏あしが高いため、表11.3.5に示す接着剤の使用量とくし目ごてでは、タイルと接着剤の接着割合が少なくなる場合がある。したがって、事前に試験施工等を行い、タイルと接着剤の接着割合が 60%以上を確保できるように、使用するくし目ごてと接着剤の塗布量を決定する。 Q-CATでは、タイルによって使用する接着剤と使用するくし目ごてが決められているため、それに従う。

表11.3.5 接着剤塗布に使用するくし目ごての種別

内装壁タイル接着剤張りは、くし目高さが 3〜5mmのくし目ごてを使用して接着剤を塗布する。

(2) 内装壁タイル接着剤張り

(i) 1回の塗布面積は、「標仕」では、3m2以内、かつ、30分以内に張り終える面積としている。

なお、接着剤が2液混合形の場合は、季節や施工時の温度によって張付け可能時間が異なるので注意する。

(ii) 接着剤を金ごて等でモルタル下地又はボード下地に塗布し(通常、3mm厚程度)、 くし目ごてでくし目を立て、タイルを張り付ける。

(iii) 目地間隔を正確に保つようにする。

(iv) 1枚張りの場合は、手でもみ込むようにして押さえ付け、目地部に接着剤がはみ出すようにする。
ユニットタイルの場合は、まず全面を軽くたたきながら合わせ、目地の通りを手直しし、ついで目地部に接着剤がはみ出すまでたたき板でたたいて密着させる。また、タイル張り中にタイル表面に付着した接着剤は、その都度直ちに布でふき取っておく。

目地直しは、張り付けたタイルが自由に動く間(通常、タイル張付け後 30分程度)に行う。

(v) タイルの吸水が大きく、目地詰めの際の水湿しを行う場合は、接着剤が硬化してから行う。ボード下地のけい酸カルシウム板は、比重1.0のものを使用する。繊維強化セメント板等の乾湿による挙動が大きいものは、反りが発生し、タイルのひび割れやはく離が生じることがあるため使用しない。

(vi) タイル面の清掃は他のタイル張りと同様に行う。

(ⅶ) 業務用厨房のレンジ周りの壁等高温になるおそれのある箇所への使用は、接着剤が劣化してタイルがはく離する危険性があるため避ける。

(3) 外装壁タイル接着剤張り

(i) 1回の塗布面積の限度は、「標仕」では30分以内に張り終える面積としている。これは、接着剤の張付け可能時間内に張り終えるようにするためである。

(ii) 接着剤の塗付けは、くし目ごてを用いて下地面に平たんに塗り付け、次に接着剤の塗厚を均ーにし、かつ、厚みを確保するために図11.3.4に示すように壁面に対してくし目ごてを60°の角度を保ってくし目を付ける。くし目の角度が小さく、こてを寝かした状態でくし目を立てると、くし目の高さが低くなり、接着剤の塗布量が少なくなる。また、くし目の角度が大きすぎても施工性が悪く、くし目がきちんと立たなくなることがあるため、塗布量が少なくなる傾向がある。また、図11.3.5に示すように、タイルの裏あしとくし目の方向が平行となると、タイルと接着剤との接着率が少なくなることがあるため、裏あしに対して直交又は斜め方向にくし目を立てる。


図11.3.4 こての角度(JASS 19より)


図11.3.5 くし目と裏あしが平行になった場合の接着状態(JASS 19より)

接着剤の塗布方法としては、図11.3.6に示すようにくし目を立てたままにする方法と、図11.3.7に示すようにくし目を立てたのちに平たんにならす方法とがある。平たんに塗り付ける場合にも、塗厚を均ーにするために一旦くし目を立てる。


図11.3.6 くし目を立てて接着剤を塗布する場合の手順(JASS 19より)

 


図11.3.7 接着剤を平たんに塗布する場合の手順(JASS 19より)

 

(iii) 二丁掛け等のタイル1枚張りの場合は、手でもみ込んだのちに、タイル張りに用いるハンマーでたたき押さえるか、又は密着張りで使用する振動工具で加振して張り付ける。ユニットタイルの場合は、モザイクタイル張りやマスク張りに用いるたたき板でたたき押さえて張り付ける。意匠上、表面に段差があるユニットタイルは、たたき板だけではユニットタイル全体が十分に押さえきれない場合があるので、手で均等にもみ込んだのちにたたき板でたたき押さえる必要がある。

(iv) タイル張りのプロセス管理として、タイルと接着剤との接着状態の検査を行

うとよい。検査方法としては、タイルを張り付けた直後に図11.3.8のようにタイルをはがし、タイルと接着剤の接着状態を確認する。合否の判定は接着割合で行い、タイル裏面への接着剤の接着率が60%以上、かつ、タイル全面に均等に接着していることを基準にするのが一般的である。図11.3.9(ニ)に示すように接着割合が大きくても接着している箇所が一方に偏っているとタイル裏面に大きな空隙ができるため不合格とする。

11.3.8 養生及び清掃

(a) 養 生

寒冷期に施工する場合には、11.3.5(b)による。

(b) 清 掃

接着剤がタイルに付いた場合には、硬化前に溶剤でふき取るか、又は接着剤が硬化したのちに汚れ除去用の発泡樹脂製品、砂消しゴム等で削り取る。表面が粗いタイルは、溶剤等でふき取ると、接着剤がタイル表面に残り、あとに汚れとなる場合があるので接着剤が硬化したのちに除去した方がよい。溶剤を使用する場合には、接着面に溶剤が掛からないように注意する。

目地材による汚れ、他の工事による汚れ等の清掃は、11.2.8(b)による。


図11.3.8 接着状態の検査(JASS 19より)

 


図11.3.9 接着状態(JASS 19より)

11章 タイル工事 4節 陶磁器質タイル型枠先付け

11章 タイル工事
04節 陶磁器質タイル型枠先付け

11.4.1 適用範囲

(a) 作業の流れを図11.4.1に示す。

図11.4.1 陶磁器質タイル型枠先付け工法の作業の流れ

(b) 施工計画書

型枠先付け工法は.コンクリート躯体工事開始時にタイルを必要とするので、見本、見本焼き及び見本張りは躯体工事の2箇月程度前には決定されていなければならない。施工計画で検討すべき項目は次のような事柄である。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(見本決定、施工図完了、タイル及びタイルユニットの製造、材料搬入体工事工程、着工・完了、試験等の時期)
② タイルの製造工場名、施工業者名及び作業の管理組織
③ タイル型枠先付けの種別
④ タイルの種類、形状、寸法(裏あしの形状、高さ、緊張材取付け部のタイルの形状、乾式・湿式の別)
⑤ タイル及びタイルユニットの試験、検査要領、合否の判定基準(タイルの寸法精度、品質及びタイルユニットの寸法精度)
⑥ タイル及びタイルユニットの取付け順序及び方法
⑦ まぐさ、窓台等の取付け方法
⑧ 割付けの基準(基準線、目地寸法)
⑨ 伸縮(調整、ひび割れ誘発)目地(位置、構成,施工法)
⑩ タイル型枠先付け面のせき板、精度、検査基準
⑪ 関連工事との取合い(建具、電気、機械等)
⑫ タイルユニット取付け中及び取付け後の養生方法(コンクリート打込みまでの雨掛り)
⑬ 目地モルタルの調合(桟木法の目地, タイル補修の張付けモルタル)
⑭ コンクリート打込み方法(コンクリートの打込み、棒形振動機による締固め、型枠振動機による締固め)
⑮ 外壁型枠の取外し時期及び方法(留付け材の取外しを含む)
⑯ 外壁型枠取外し後の養生(上階コンクリート打込みによる汚れ防止)
⑰ 先付けされたタイルの検査及び合否の判断基準(検査方法、タイル張替え基準)
⑱ タイル裏面のコンクリートの品質
⑲ タイルの打診検査及び接着力試験方法(箇所、使用機器、試験体の作成方法)
⑳ タイルの補修方法(時期、コンクリートの補修、張替え)
㉑ 水洗い
㉒ 発生材処理(裏打ち材等)

㉓ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

(c) タイル型枠先付け工法用部材の用語

(1) タイルシート

タイル表面に合成樹脂フィルム又はクラフト紙を台紙として接着剤等で張り付けて、ユニット化したシート(台紙が軟らかいものは合板の裏打ちを行う。) (11.4.3(a)(1)参照)

(2) 目地桝

硬質ゴム等を用いて、目地部分を桝目状に成形したタイル保持用の目地枠材(11.4.3(a)(2)参照)。

(3) タイルユニット

タイルシート又は目地枠材によって所定の形状及び寸法にユニット化された部材で、平ユニット、柱形ユニット等がある。

(4) 仮付けタイル

型枠緊張材が型枠を貫通する箇所に用いる発泡プラスチック製等の埋め板。脱型後にタイルを張り付けるモルタル厚さを含めた厚さとする。

(5) 仮目地材

タイルの目地部分に打ち込んだコンクリートが、所定の深さ以上にはみ出したり、セメントペーストがタイル表面を汚染しないように、タイルシートにあらかじめ取り付ける目地部充填材。

(d) 一般事項
タイル型枠先付け工法では、タイル面からコンクリートの充填状況を脱型後に確認するのが難しいという弱点がある。したがって、壁等の部材のタイル先付け面の反対側の面に断熱材、仕上材等を打ち込む工法は避けなければならない。

また、本工法は、建物の外壁タイル張り部分に全面的に採用されるほか、はく離した場合事故につながるような箇所に採用される場合もある。例えば、梁底、軒裏等の上げ裏となる部分、ひさしの出の小さい開口の上部の壁等である。この場合、先付け部分とあと張り部分の納まりに注意する必要がある。納まりの例を図11.4.2に示す。


図11.4.2 型枠先付けとあと張り部の納まり

 

(e) 仮設・養生

(1) 足場は、作業能率と仕上りに影響するので安全を確保したうえで、取付け位置や揚重設備等については十分検討する必要がある。

(2) 鉄骨等の溶接がある箇所では、タイルシートや目地桝等に直接溶接火花が当たらないように養生する。

(3) SRC造の柱・梁形等は、外型枠建込み後のタイル配列ができないので、足場上であらかじめタイルユニットを外型枠に配列固定できるように足場を組むことが必要である。

(4) 著しい降雨の場合やコンクリート打込み間隔が長い場合には、シート養生を行い、雨水によるタイルの脱落及び日射による粘着剤やフィルム材の変質・劣化を防止することが必要である。

11.4.2 材 料

(a) タイルの種類及び品質は11.2.2(a)によるほか、主に外壁に用いられるので、耐凍害性を有するタイルを使用しなければならない。

(b) タイル型枠先付け工法では、型枠に固定されることで、あと張り工法のように不陸や通りの調整ができないため、偶角部に用いる役物タイルの角度にばらつきがあると、見ばえが悪くなるので「標仕」では、角度の許容差をJIS A 5209の規定より小さくして ± 1° 以内としている。

また、隅角部に用いる役物タイルの形状は、角度の不ぞろいを目立たなくするため、等辺(図11.4.3(イ))でなく不等辺(図11.4.3(ロ))にするのがよい。


図11.4.3 隅角部に用いる役物タイルの形状

(c) タイルの試験張り、見本焼きは 11.2.2(e)によるほか、スケジュールについて次の点に注意が必要である。

陶磁器質タイル先付け工法の場合には、躯体工事開始時にタイルを必要とするので、目地桝法及び桟木法では躯体工事開始の2箇月程度前、シート加工の期間を要するタイルシート法では3箇月程度前にタイルが決定されていなければならない。見本焼き及び試験張りのスケジュールは、これを考慮して決定する必要がある。

(d) 陶磁器質タイル型枠先付けのタイルユニット等
(1) タイルユニット
(i) タイルユニットの寸法や品質等の性能に問題があると、取付け作業の困難、コンクリート打込みによるタイルの割れや埋没の発生、型枠取外し後の裏打ち材の除去作業等に影響し、ひいては仕上りの出来ばえが悪くなるので十分な性能が必要である。

なお、タイルユニットには次のような性能が要求される。

① 型枠への配列固定が容易にできる。
② セメントペーストが漏れない。
③ 裏打ち材、台紙、目地桝がはがしやすい。
④ 型枠取付け後、雨水に対する養生を必要としない。
⑤ 現場で加工できる。
⑥ 目地及びジョイント部の仕上りが良い。
⑦ 寸法精度が良い。
⑧ 型枠の締付け、コンクリートの締固め及び側圧でタイルがはく落しない。また、割れない。

⑨ 廃材(裏打ちシート等)が少ない。

(ii) タイルシートによるタイルユニットのタイルの割付け寸法、ユニットの寸法及び許容差、対角線長の差、目地深さの標準を表11.4.1に示す。

表11.4.1 タイルシートによるユニットの寸法、許容差等

 

(iii) 目地桝によるタイルユニット(アルミ専用型枠の場合を除く。)の目地枠の形状、タイルの割付け寸法、ユニットの寸法及び寸法許容差、対角線長の差、桝目の内法寸法の許容差、ベース厚さ並びに目地深さの標準を表11.4.2に示す。

表11.4.2 目地桝によるユニットの寸法.許容差等

 

(iv) タイルユニットの寸法の測定位置を図11.4.4に、目地枠材の桝目及びベース

厚さの測定位置を図11.4.5に示す。


図11.4.4 タイルのユニット寸法の測定位置


図11.4.5 目地枠材の桝目及びベース厚さの測定位置

(v) タイルシートのはく離性については、製造所の実績表により確認する。

(2) 型枠に用いるせき板には、コンクリート型枠用合板や金属製タイル先付け用パネル(図11.4.8(ロ)参照)がある。

(3) 型枠緊張材を目地部分に通す場合には、コンクリート中に残る金物のかぶり厚さが確保できるように専用のものを用いる。型枠緊張材及びその取付け方法の例を図11.4.6に示す。


図11.4.6 型枠緊張材を目地部分に通す場合の例

(4) その他の材料

(i) 伸縮調整目地の目地材は、取り外す際にタイルをはがすことがないように、材質は発泡プラスチック等を用いる。

(ii) タイルユニットの取付けは、ステープル又は専用のゴム付きの頭なし釘を用いる。

11.4.3 タイル型枠先付けの種類

(a) タイル型枠先付けには、型枠にタイル又はタイルユニットを取り付ける工法によって次の3種類に大別される。

(1) タイルシート法

タイルシートを型枠内面に仮付けしてコンクリートを打ち込む方法である(図11.4.7参照)。


図11.4.7 タイルシート法

(2) 目地桝法

目地桝を型枠に取り付け、タイルをはめ込みコンクリートを打ち込む方法である。釘打ちによりゴム等の目地桝を型枠に固定したのち、タイルを目地桝に取り付ける方法(図11.4.8参照)。


図11.4.8 目地桝法

(3) 桟木法

大形特殊タイルの取付け方法には、桟木法がある。これは、自重の大きい大形タイルを桟木に引っ掛け、特殊釘で仮止めしてコンクリートを打ち込む方法である(図11.4.9参照)。


    図11.4.9 桟木法

(b) タイル型枠先付け各工法の材料、型枠の条件等を表11.4.3に示す。

表11.4.3 タイル型枠先付け各工法の材料、型枠の条件等

 

(c) タイル型枠先付け工法の種類は、「標仕」11.4.3では、特記するよう定められているが、種類は先付けするタイルの大きさ等により表11.4.3のようになる。

11.4.4 施 工

(a) 割付け

(1) 割付けは、原則として、陶磁器質タイル張り工法と同様である。ただし、躯体工事開始時にタイルを必要とするので、早期に割付けを決定する必要がある。

(2) タイルシート法及び目地桝法の場合は、標準ユニットを基本にし、標準ユニットが使用できないときは、役物ユニットを使用する。この場合、材料管理や作業管理が困難になるので、なるべくユニットの種類を少なくするように割り付ける。

このため設計の当初から、役物タイル及び役物ユニットを少なくするよう階高やスパン幅をできるだけ統一する必要がある。

(3) タイルユニットの割付けの一例を図11.4.10に示す。


図11.4.10 タイルユニットの割付け図(小ロタイルの例)

(b) 伸縮調整目地及びひび割れ誘発目地

(1) タイル型枠先付けの場合、目地の役割は特に重要である。

コンクリートの乾燥収縮によって起こるひび割れに対処するために設けるひび割れ誘発目地、建物の隅角部等の作業が困難なとき、又はタイルやタイルユニットの寸法精度、取付け精度等、施工の誤差を考慮して設ける目地を「標仕」では伸縮調整目地といっている。

(2) 伸縮調整目地は目地幅も大きく、また、細かく入れる必要があるので意匠上への影響が大きい。したがって、設計担当者と十分打ち合わせて決定する。

(3) 伸縮調整目地の大きさは、図11.1.5に示してあるが、作業性を考慮すれば幅25mm以上が望ましい。

(c} 小口以上の大きさのタイルをまぐさ又はひさし先端下部に用いる場合、何らかの不具合が生じてもタイルがはく落することのないよう、図11.2.5に示す引金物を取り付ける。しかし、型枠先付け工法の場合、コンクリート打込みにより、引金物が型枠面あるいはタイル裏面に密着しては目的を果たさないばかりか、かえってコンクリートの未充填部を作ることとなってしまう。したがって、コンクリート打込み前に引金物がコンクリート躯体の斜め上方向に、確実に定着できる手段を講ずることが必要である。

(d) 型 枠

(1) タイル先付け用の型枠には打放し仕上げと同程度の精度が要求される。

(2) 型枠は、仕上げ及び経済性を考え大型パネルとするのがよい。大型パネルを用いる場合転用ができないと不経済になるので、階高及びスパン幅等設計上の配慮が必要である。

(3) 型枠の精度を高めるには、特に次の点に注意する。

(i) 建込み精度の確保(コンクリート打込み中にも注意)
(ii) 型枠の剛性
(iii) 型枠接合部の精度(特にコンクリート打継ぎ部)
(ivl 隅角部の型枠の精度及び剛性
(v) 桟木の寸法の精度(両面かんな掛けを行い、せい寸法を一定にする)

(vi) セパレータの締付け程度(締付け過度に注意)

(4) 型枠の精度は、タイルの仕上りを考えれば、建入れ、通りの精度については 1/750、階高については ±5mm、壁厚については ±3mm以下が望ましい。

また、コンクリート打込み後も目標とする精度が保てるよう、支保工を十分に用い、コンクリートの打込み方法及びコンクリートの側圧による誤差をなくすようにしなければならない。

(5) この工法に用いる大型パネル及びその頂部と脚部の納まりの一例を図11.4.11に示す。


図11.4.11 大型パネルの詳細及びその頂部と脚部の納まり

 

(e) コンクリートの打込み及び養生

(1) コンクリートは、通常のRC造に用いられている設計甚準強度 21N/mm2、スランプ18cm程度のものであればよいが、(3) に示す締固め作業に困難を伴うような断面形状のSRC造等の場合、流動性のよいコンクリート等を検討するとよい。

(2) タイルを打ち込む壁の増打ちは、構造上必要な壁厚に20〜40mm程度増やしたものとされている。「標仕」11.4.4 (e)(3)(i)では、棒形振動機による締固めは、加振部がタイルに直接触れないように操作することが定められており、壁厚や配筋に対する設計上の配慮が必要である。

(3) 先付け工法の場合、コンクリートの締固めは、タイルの接着力を確保するため特に重要である。このため、「標仕」11.4.4(e)(3)ではコンクリートの輸送管1系統につき、型枠振動機2台以上を、「標仕」6.6.5(e)に定めている配置に追加することにしている。

なお、締固めは、6.6.5の注意事項を十分守らなければならない。また、先付け工法を意識しすぎて振動機による振動及びたたき締めを過度に行うとかえって悪い影響がある。

(4) 型枠取付け型振動機を用いる場合、内壁側の型枠に取り付けて、上部の梁、スラブは棒形振動機を使う併用方式がとられている。型枠取付け振動機による締固めの留意事項として次のような事項が挙げられ、事前に十分な施工計画の検討が必要である。

(i) コンクリートの打込み順序に合わせた振動機の配置計画の検討
 ① 振動機の取付け間隔及び台数
 ② 振動機の盛替え順序
 ③ 人貝の配置

 ④ 電源の確保

(ii) 型枠からのセメントペースト漏れ防止

 型枠の精度及び事前のチェック

(iii) 振動機の加振時間の検討

 かけ過ぎの防止

(iv) 型枠緊張材(フォームタイ)の緩みに対する検討
 ① 型枠の監視

 ② 改良形緊張材の使用

(v) タイル型枠先付け工法の種別の検討

 型枠の振動によるタイルのはく離落下の防止

(vi) その他

(5) コンクリート打込み時に、下階のタイル壁面にセメントペーストが流出して、すでに施工された壁面を汚したときは、速やかに水洗いによりタイル壁面の清掃を行う。

また、必要に応じ、前もってポリエチレンシート等でタイル面を養生する。

(f) タイル取付け面の型枠の取外し

(1) タイル取付け面の型枠を取り外す場合、タイル表面に傷をつけないように注意して作業する必要がある。

(2) タイル面に粘着テープ、接着剤等が残った場合は汚れが残らないよう速やかに清掃する。また、セメントペーストがタイル表面に付着した場合も速やかに清掃する。

(3) タイル及びタイルユニット取付けに用いた釘、ステープル等の金属類が壁面に残った場合、錆により汚れが生じるので速やかに取り除かなければならない。

(4) 仮付けタイル部分は、仮付けタイルを取り外したのち、(h)(3) により張替えを行う。

この場合、仮付けタイルの厚さは張付けモルタルの厚さを含めたものを用いる。

(g) 材料保管等

(1) タイルユニット及び副骰材は、直射日光や雨水による材料の変質・劣化がおきる場合があるので、シート養生を行い保管する。

(2) タイルシートや目地桝はプラスチック製が多いので、火気には十分注意して保管する。

(h) タイル壁面の補修

(1) 先付け工法では、先付けされたタイルに不良箇所のないように施工すべきであるが、不良箇所が生じた場合は、将来はく離を起こさないよう、工法を十分検討し補修しなければならない。

(2) 施工不良の発生要因及び対策、判定方法、補修方法を表11.4.4に示す。

(3) タイルの張替えは、不良部分のタイルを取り、躯体部分をタイル裏面より10mm程度はつって行う。タイルの張付けは、躯体部分に5mm程度張付けモルタルを塗り付けタイル裏面にも張付けモルタルを5mm程度塗り付け、図11.4.12に示すようにタイル裏面に空隙を生じないよう張り付ける。

なお、はつり範囲が構造体部分にまで及ぶ補修の場合は、タイル張付けモルタルは、平成13年国土交通省告示第1372号に規定されているポリマーセメントモルタルを用いる。


図11.4.12 タイル張替え工法

(i) 試 験

打診試験及び引張接着試験の方法及び試験結果の判定は11.1.5 (b)及び(c)による。ただし、型枠先付け工法においては次の点が異なる。

(i) 接着力試験の試験体は、タイルの周辺をタイル裏面まで切断する。

(ii) 接着力試験結果の判定は、タイルの引張強度が1個でも0.6N/mm2未満のものがある場合は不合格とする。

打診検査によってはタイル裏面の軽微なじゃんかが検知されない場合がある。目視でタイル目地を詳細に調べることがじゃんかの発見に有効なので、打診検査の際、目視によるじゃんか検出を行うのが望ましい。

11.4.5 漬 掃

清掃については、11.2.8(b)を参照する。

表11.4.4 不良の発生要因等

11章 タイル工事 5節「標仕」以外の工法

11章 タイル工事
05節「標仕」以外の工法
11.5.1 陶磁器質タイル先付けPC部材
(a) 作業の流れ
作業の流れを図11.5.1に示す。
図11.5.1_陶磁器質タイル先付けPC部材製作の作業の流れ.jpg
図11.5.1 陶磁器質タイル先付けPC部材製作の作業の流れ
(b) タイル先付けPC部材の種類
タイル先付けPC部材は、型枠ベッドにタイル又はタイルユニットを取り付ける方法によって、図11.5.2 〜4の3種類に大別される。
図11.5.2_タイルシート法_イ.jpg
図11.5.2_タイルシート法_ロ.jpg
図11.5.2_タイルシート法_ハ.jpg
図11.5.2 タイルシート法
図11.5.3_目地桝法.jpg
図11.5.3 目地桝法
図11.5.4_タイル単体法.jpg
図11.5.4 タイル単体法
(c) 材 料
(1) タイルは「標仕」11.4.2による。
(2) タイルユニットは「標仕」11.4.2(e)によるほかに、60℃程度の蒸気養生で著しい変形・変質のない材料としなければならない。
(3) タイルユニットには次のような性能が要求される。
(i) 型枠への配列固定が容易にできる。
(ii) セメントペーストが漏れない。
(iii) 裏打ちシート・目地桝がはがしやすい。
(iv) シート、目地桝の加工が容易にできる。
(v) 目地及びジョイント部の仕上りが良い。
(vi) 寸法精度が良い。
(ⅶ) 廃材が少ない。
(4) タイルシートによるタイルユニットの割付け寸法、ユニットの寸法及び許容差、対角線長の差、目地深さの標準は、表11.5.1による。
表11.5.1 ユニットの寸法、許容差等の標準(タイルシート)
表11.5.1_ユニットの寸法,許容差等の標準(タイルシート).jpg
(5) 目地桝によるタイルユニットの目地枠の形状、タイルの割付け寸法、ユニットの寸法及び寸法許容差、対角線長の差、桝目の内法寸法の許容差、ベースの厚さ、目地深さの標準を表11.5.2に示す。
表11.5.2 ユニットの寸法、許容差等の標準(目地桝)
表11.5.2_ユニットの寸法,許容差等の標準(目地桝).jpg
(d) タイル先付けPC部材の製作
タイル先付けPC部材の製作は「標仕」17章3節及び20章3節によるが、タイル先付けPC部材の場合には次の点に注意する必要がある。
(i) 型枠の組立
① タイルを敷き並べる面は、コンクリート等の付着物が残っていると、タイルの配列固定上の障害となるので丁寧に取り除く。
② タイルを敷き並べる面にははく離剤を塗り付けない。また、タイルを先付けしない型枠面は、タイルを敷き並べる前にはく離剤を塗り付ける。タイル裏面にはく離剤が付着すると接着強度の低下につながるので注意する必要がある。
(ii) タイル及びタイルユニットの敷並べ
① タイルシート法
タイルユニットは、コンクリートの打込みの際に移動しないように、両面粘着テープ、所定の接着剤等を用いて型枠に固定する。
② 目地桝法
1) 目地桝の固定は、平部では必要ないが、立上り部分は両面粘着テープ等で固定する。
2) タイルの固定は,所定の接着剤等で行う。
③ タイル単体法
1) タイル単体法では、タイル割付け図に従って型枠面に基準線を引き、600 mm間隔程度にタイルの位置決めの定規となる目地(決め目地)を固定したうえでタイルを敷き並べるとよい。
2) 目地材は幅の異なる数種類を用意し、タイルの寸法のばらつきを目地幅で調整しながら敷き並べるとよい。
(iii) 鉄筋溶接金網の取付け
タイル裏面に接してスペーサーを置くと、タイルとコンクリートの接着面積が減少するので、鉄筋・溶接金網は、水平に吊り下げて、所定のかぶり厚さを確保するのがよい。鉄筋のかぶり厚さが不足していると、コンクリートの中性化及び塩害により鉄筋が錆びやすくなり、錆によって表面のコンクリートとタイルが押し出されてはく落に至ることがあるため、注意が必要である。
溶接金網で垂れやすいものについてはスペーサーを使用することとなるが、タイルと面で接するものは避ける。
(iv) コンクリートの打込み
コンクリートの締固めに際して、棒形振動機を使用する場合は、その先端でタイルに衝撃を与えないように注意する。また、テープルバイプレーターを併用する場合は、前もって試験打ちを行い、タイルの移動やセメントペーストの漏れ出しがないか確認しておくことが望ましい。
(v) コンクリートの養生
加熱養生を行う場合は、温度の上昇・下降の勾配及び最高温度についてタイルの接着強度の低下の原因とならないように注意しなければならない。また、タイルを敷き並べた型枠ベッド面に蒸気が直接当たり、型枠ベッド面の温度がコンクリート温度より極端に上がると、タイルの接着強度に悪影響を及ぼすこととなるため、蒸気の配管及び噴出口の設定にも注意する必要がある。
(vi) 脱 型
脱型・移動・反転等では、コーナ一部のタイルに大きな力が加わり、タイルの欠け、はく落等が生じないように注意する必要がある。
(ⅶ) タイル面の清掃
タイル面の清掃は、11.2.8(b)による。
(ⅷ) タイルの補修
タイルの欠落、浮き、埋没、著しい破損及び割れがあるものは、タイルの張替えを行う。張替えの方法ば11.4.4 (h)(3)による。
(ix) 養 生
PC部材の保管中に雨水による汚れがタイル表面に強固に付着する場合があるので、汚れが付着しないように養生方法を工夫する必要がある。
(e) タイルの接着性の検査
(1) 打診による確認
タイル面は全面にわたり、打診用ハンマーを用いて打診を行う。打診の方法は、「標仕」11.1.5(b)による。
(2) 接着力試験
タイルは、必要に応じて試験体を作製して接着力試験を行うとよい。接着力試験を実際に建物に取り付けられるPC部材で行うと、その補修箇所が欠陥につながることが考えられるため、試験体で行うことが望ましい。接着強度は陶磁器質タイル先付け工法に準じ、0.6N/mm2以上とするのが適切である。接着力試験の方法は、「標仕」11.1.5(c)による。
11.5.2 タイル張り外壁のはく落防止の工法
タイル張り外壁のはく落事故を防止するための技術開発が活発に行われている。既往の報告によればタイル張り外壁のはく落事故の多くは、コンクリート躯体と下地モルタルの界面はく離によるもの、あるいは下地モルタルと張付けモルタルの界面はく離によるものである。これらの界面はく離を防止する目的で(1)から(6)までに示すような工法が開発され、普及しはじめている。
これらの工法は営繕工事では今までの実績が少なく、現段階で「標仕」に採り上げられていない。しかし、タイル張り外壁のはく落防止に対する要求が高まっており、特記による採用も考えられることから、次に工法の概要を述べる。
(1) 下地吹付け工法
吹付け用に調合したモルタルをモルタルポンプを用いて圧送し、高圧空気と一緒に吹き付けて、モルタル下地を作る工法である。こて塗りによらず機械で吹き付けることにより、コンクリートとモルタルとの接着強度のばらつきが少なくなる。また、施工性が向上し、省力化を図ることができる。
この工法で使用する吹付け機械の例を図11.5.5に示す。吹き厚に応じてノズルの径(φ 4,6,9mm)を選択する。
吹付け工法のモルタルは、軽量骨材が混入された既製調合モルタルが使用される場合が多い。軽量骨材が混入されている理由は、こて押えを容易にするためとモルタルのだれと飛散を少なくするためである。このようなモルタルを使用する場合は、必ず翌日に散水を行う。現場調合モルタルの場合は、けい砂等を骨材に使用し、セメント混和用ポリマーデイスパージョンを混和する。吹付け工法の場合には、モルタル軟度の管理が重要であるが、適切なモルタルの軟度は調合、施工時の環境条件、下地の吸水の程度等によっても異なるため、実施工前に試験施工を行って吹付け状態を確認する必要がある。
吹付けの手順は、15 mmを超える厚さに吹き付ける場合は、下吹き・中吹き・上吹きの3回吹きとし、15mm以下の場合は中吹きを省略した2回吹き、7mm程度の場合は上吹きのみを上付け・下付けに分け、追いかけ吹きとするのが一般的である。
図11.5.5_吹付け機械の例.jpg
図11.5.5 吹付け機械の例
(2) 立体繊維材料張り工法
(i) 立体繊維材料の種類
立体繊維材料は、タイル張り仕上げのはく落防止を目的として開発されたもので、表11.5.3に示すものが代表的である。素材繊維としてポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、炭素繊維が使用されている。利用形態は、立体網目不織布及び立体織布の2種類がある。
表11.5.3 立体繊維材料の種類
表11.5.3_立体繊維材料の種類.jpg
(ii) 施工法
下地調整されたコンクリート面にポリマーセメントモルタルで立体繊維材料を張り付ける。モルタルと躯体との一体化をより高めるうえでアンカーピンの併用が望ましい。施工手順の一例を図11.5.6に示す。
図11.5.6_施工手順の一例.jpg
図11.5.6 施工手顧の一例
(3) 躯体コンクリートに直接タイル張りする工法
モルタルにより下地を作製しないで、コンクリートに直接タイル張りを行う工法で、「直張り」と呼ばれている。下地モルタルがないために接着界面の数が減少する。この工法を採用するためには、コンクリートの精度を高める必要があり、要求される仕上り精度コンクリート型枠の精度等を考慮して判断する必要がある。
コンクリート表面は下地モルタル表面に比べて平滑である。特にせき板に表面処理合板や鋼板を使用した場合には顕著である。この平滑なコンクリート面は、張付けモルタルの付着が悪く、コンクリート界面からのはく離原因の一つに挙げられている。このため、平滑なコンクリート面には必ず目荒しを行う。
タイル張りは、コンクリート下地との付着を良くするために、ポリマーセメントを用いて、こて圧をかけてこすりを行ったのち、同じ調合のポリマーセメントを塗り付けて、タイル張りを行う。
また、タイル張り前にコンクリートの不陸補修を行う場合のモルタルも.ポリマーセメントモルタルを使用する。
(4) 押出成形セメント板へのタイル張り
押出成形セメント板に対してタイル仕上げを行う方法として。は次の3種類がある。
① 現場におけるタイル張り
図11.5.7に示すようなタイル張り専用のあり状の溝を設けた押出成形セメント板に、モルタルを用いてタイル張りを行う。押出成形セメント板は、温度変化や乾燥・湿潤によるディファレンシャルムーブメント、外力等による壁面の動きはRC壁に比較して大きい領向があるため専用のものを用いる必要がある。また、張付けモルタルにはポリマーセメントモルタルを用いるのが望ましい。マスク張りの場合は溝にモルタルが充填されるように押出成形セメント板にも張付けモルタルを塗り付け、硬化の状態を見計らってタイルを張り付ける。
図11.5.7_タイル張り用押出成形セメント板表面の断面例.jpg
図11.5.7 タイル張り用押出成形セメント板表面の断面例
② タイル工場張りパネル
図11.5.7と同じ専用の押出成形セメント板に、工場でモルタルを用いてタイルを張り付けたパネルであり、工場張りであるためにタイルの接着強度のばらつきが少ない。
③ 乾式工法
図11.5.8に示すように、リブを設けた押出成形セメント板に専用のタイルを引っ掛けていく工法であり、タイルのはく落の危険性が少ない。タイルは一部を接着剤、金具等で固定する。
図11.5.8_押出成形セメント板を下地とした乾式工法の例.jpg
図11.5.8 押出成形セメント板を下地とした乾式工法の例(最新タイル工事施工マニュアルより)
(5) 先付け特殊繊維シートによるタイル張りモルタル層のはく落防止工法
特殊繊維シートとは、図11.5.9に示すように、スパンボンド基布にビニロン繊維をニードルパンチ加工した繊維シートの片面に、アクリル系ポリマーセメントを含浸コーティングしたシートである。この特殊繊維シートを、タッカー等により合板型枠に取り付けて、建て込み、コンクリートを打ち込む。脱型後は、ビニロン繊維面が繊維シート状のタイル下地層となる。この下地面に対して、張付けモルタルでタイルを直張りする工法である。躯体コンクリートとタイル張付けモルタルの間に、特殊繊維シートによる機械的な連結が付与され、万が一タイル張りモルタル層に浮きが生じても、はく落を防止する。
図11.5.9_特殊繊維シート.jpg
図11.5.9 特殊繊維シート
(6) コーン状係止部材及び短繊維混入モルタルを併用したタイル張り工法
ループ状突起物を有するコーン状の係止部材と、短繊維を混入したモルタルとを用いることで、躯体コンクリート表面とモルタル層の界面でのはく落を防止するタイル張り工法がある。施工手順の一例を図11.5.10に示す。
図11.5.10_施工手順の一例.jpg
図11.5.10 施工手順の一例
参考文献
表11.5_参考文献.jpg

13章 屋根及びとい工事 4節 粘土瓦葺

13章 屋根及びとい工事

4節 粘土瓦葺

13.4.1 一般事項

(1) この節は、粘土瓦を使用した屋根を対象としている。

なお、平成22年版「標仕」から、12章[木工事]の「小屋組」及び「屋根野地、軒回りその他」が削除されたため、13章においても適用される下地から木造下地 が削除されている。しかし、本書の12章では、「標仕」以外の工法として、平成 19年版「標仕」の「小屋組」及び「屋根野地、軒回りその他」の仕様及びその解説を残してあること、瓦葺は木造下地に施工される場合が多いことなどから、この節では木造下地関係の記述も参考に残した。

(2) 作業の流れを図13.4.1に示す。


図13.4.1 粘土瓦葺の作業の流れ

(3) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(着工及び完了の時期)
② 瓦の種類、製造所
③ 施工業者及び施工管理組織
④ 揚重及び小運搬計画
役物及び留付け用釘・緊結線・金物等の種類

風圧力及び地震力に対応した瓦等の留付け工法、管理の項目、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書及びその管理方法等

(4) 粘土瓦葺の施工水準の確保と施工の信頼性向上を図るため、(-社)全日本瓦工事業連盟では、「瓦屋根工事技士」資格制度を設けており、瓦屋根工事に関する知識及び技術の維持・向上、施工管理、安全管理等の能力を有する資格者を育成し、技術者の認定登録を行っている。

13.4.2 材 料

(1) 粘土瓦は、JIS A 5208(粘土がわら)により製造されたものとする。

(ア) 粘土瓦の種類、大きさ、産地等は設計図書に特記される。

(a) 粘土瓦の基本形となる桟瓦の形状及び寸法を、図13.4.2 及び 表13.4.1に示す。


図13.4.2 桟瓦の形状(JIS A 5208 : 1996)

表13.4.1 桟瓦の寸法(JIS A 5208 : 1996)

(b) 粘土瓦は、日本の三大産地として、愛知県三河地方の三州瓦、島根県の石州瓦、兵庫県淡路島の淡路瓦があるが、日本各地(原料の粘土の産する所)で土質・焼成等の特質を生かした瓦が生産されている。

(イ) 役物瓦は、使用箇所ごとにその種類が設計図書に特記される。また、雪止め瓦を使用する場合についても特記されることになっている。

J形の役物瓦の種類及びその使用箇所を、図13.4.3に示す。


図13.4.3 屋根の各部及び桟瓦と主な役物の名称

(ウ) 「標仕」では、瓦の、JIS A 5208に基づく凍害試験等を行う場合は、特記によるとしている。JISによる凍害試験は、凍結融解及び観察の操作を1回とし、その繰返し回数は「当事者間の協定による」とされているが、一般的には、繰返し回数は 5〜10回程度であり、寒冷の程度に応じて定めた繰返し試験成績書により確認する。

(2) 瓦桟木は、瓦の掛止め用等に使用するもので、その材質・寸法は設計図書に特記される。しかし、湿気による腐朽防止のため、「標仕」12.3.1による防腐処理を施した杉を標準としている。また、それらと同等の性能を有すると認められる人工木材、金属製品等も市販されている。

(3) 棟補強用心材は、冠瓦の取付け等に用いられるもので、その材質・寸法は設計図書に特記される。しかし、湿気による廊朽防止のため「標仕」12.3.1による防腐処理を施した杉が一般的に使われている。また、それらと同等の性能を有すると認められる人工木材、金属製品等も市販されている。

(4) 瓦緊結用釘又はねじ、緊結線、棟補強用金物等

(ア) 「標仕」では、瓦緊結用釘又はねじは、ステンレス製で、胴部の形状は振動等で容易に抜けないものとし、種類、径及び長さは特記によるとされている。

また、「標仕」13.4.3 (1)では、瓦緊結用釘又はねじの有効長さの最小値は、先端が野地板厚さの2分の1以上に達する長さ又は野地板の裏面(下地)まで貫通する長さとし、特記によるとされている。


図13.4.4 瓦緊結用釘又はねじの例

(イ) 補強に使用する釘、ねじ及びパッキン付きねじは、ステンレス製とする。

なお、パッキン付きステンレスねじのパッキンは、耐亀裂性及び耐候性を有し、かつ、ねじを締めても頭部から飛び出さない材質及び形状のものとする。


図13.4.5 瓦補強用ねじの例

(ウ) 緊結線は、合成樹脂等で被覆された径1.0mm以上の銅線又は径0.9mm以上のステンレス製とする。

(エ) 棟補強等に使用する金物等は、ステンレス製又は溶融亜鉛めっき処理を行った鋼製とし、材質、形状及び寸法、留付け方法は、特記による。

 
図13.4.6 棟補強材取付け金物の例

 


図13.4.7 棟瓦の例

(5) 下葺材は、一般的に二次防水として使用されるものであり、「標仕」では、標準としてJIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)に基づくアスファルトルーフィング940又は改質アスファルトルーフィング下葺材とし、種類は設計図書に特記される。

なお、緩勾配で漏水のおそれがある(J形瓦では、屋根勾配が4寸未満で流れ長さが10mを超える)場合は、防水性能の優れた「標仕」9.3.2 (1)に規定する改質アスファルトシートの使用について検討する必要がある。

(6) 葺土は、棟や壁際で冠瓦やのし瓦を安定させるために用いるもので、次による。

(ア) 「標仕」では、モルタル、山砂又は真砂土と消石灰をふのりの煮汁と適量の水で、丁寧に練り上げたものを使用するとしている。

(イ) 既調合のものを使用する場合は、信頼できる機関の試験成績書又は使用実績等により品質を確認する。

13.4.3 工 法

(1) 屋根葺材、外装材等は、建築基準法施行令第39条において「風圧並びに地震その他の震動及び衝撃によって脱落しないようにしなければならない。」と規定されている。

なお、風圧力の計算方法や風圧等に応じた取付け工法等については、(-社)全日本瓦工事業連盟等で2021年改訂版「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」等を作成しているので参考にするとよい。

(2) 下葺の工法

(ア) 下葺材を野地板等の下地に留め付ける場合、通常、タッカーを使用してステープルで留め付けるが、しわ、破れ、浮き等の損傷が生じないよう注意する。特に重ね部分については漏水が生じるおそれがあるため、施工に当たってはステープル等を必要以上に深く打ち込まないようにするなど十分な注意が必要である。

ステープルを使用しない工法には、接着工法、釘にシール用パッキンを組み合わせた工法等がある。

(イ) 棟、谷部分は、平部分に比べ変形による動きが大きく、損傷しやすいため防水性の高い下葺材(13.4.2 (5)参照)の使用についても検討することが望ましい。

(3) 瓦桟木の取付け

(ア) 瓦の取付け工法によって桟木の取付け位置が異なるため施工計画書に記載する。桟木の取付け位置は、軒瓦の出寸法及び登り寸法並びに桟瓦の働き寸法を割り付け、これに基づいて墨打ちを行う。

切妻の瓦割付けの例を図13.4.8に示す。


図13.4.8 切妻瓦割付けの例

(イ) 木材以外の下地として一般的によく行われているのは、コンクリートにパーライトモルタルを塗った下地で、下地面の仕上り精度が高く、桟木の留付けはモルタルが固まらないうちであれば、木下地用の釘が使用可能である。その施工例を図13.4.9に示す。

図13.4.9 パーライトモルタル下地の施工例

(4) 平部の工法は、「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」では、次のような方法が示されている。

(ア) 全ての桟瓦は、1本以上の釘で瓦桟木に留め付ける。

(イ) 全ての軒瓦は、上端重ね部(尻部)の2か所を釘又は緊結線で留め付け、さらに、桟山をパッキン付きステンレス鋼製ねじ若しくは緊結線で補強するか又は重ね部の端をステンレス鋼製7形釘で補強する。

(ウ) 袖瓦は、瓦の形状に応じて以下の方法で緊結する。

(a) J形瓦は、尻部の2か所を釘又は緊結線で留め付け、さらに、桟山や袖部の垂れ際をパッキン付きステンレス銅製ねじ又は緊結線で補弛する。

(b) S形瓦は、垂れ部の2か所をパッキン付きステンレス鋼製ねじで緊結し、さらに、山部(尻部)にステンレス鋼製釘等で緊結する。

(c) F形瓦で、桟瓦に垂れが付いた一体型袖については、尻部に釘1本以上と露出部の軒際をパッキン付きステンレス鋼製ねじ1本で補強する。後付け袖については、平部1か所と側面2か所をパッキン付きステンレス鋼製ねじ1本で緊結する。

(5) 棟の工法は種々の工法があるため、「標仕」では特記によるとしている。

「標仕」では、標準的な棟の工法として、7寸丸伏せ棟、F形瓦用冠瓦伏せ棟(三角冠伏棟)及びのし積み棟の三つの工法の仕様が規定されている。平成31年版「標仕」から、のし一体棟工法は、近年の生産量の減少から、削除された。

その三つの工法の例を図13.4.10に示す。


図13.4.10 標準的な棟の工法の例

13章 屋根及びとい工事 5節 とい

13章 屋根及びとい工事
5節 と い

13.5.1 一般事項

(1) この節は、雨水排水用の各種雨どい(とい)を対象としている。

(2) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

とい(軒どい、たてどい)の材種と大きさ
とい(軒どい、たてどい)の継手の工法
とい(軒どい、たてどい)の受金物の形式と取付け工法並びに建物の納まり
④ とい(軒どい、たてどい)の排水勾配
⑤ 軒どいの製造業者による軒どいの取付け方法(硬質塩化ビニル雨どい)
ルーフドレンの位置、高さ、取付け工法
⑦ ルーフドレンの形式(防水種別及び使用箇所等による形式)
たてどいの防露の工法(床貫通部分を含む)
⑨ たてどい掃除口の有無

施工の確認方法

13.5.2 材 料

(1) 「標仕」では、表13.5.1で、といその他に適用する材種等を示している。次にその特徴を示す。
(ア) 配管用鋼管

JIS G 3452(配管用炭素鋼鋼管)は、圧力の比較的低い蒸気、水(上水道を除く。)、油、ガス、空気等の配管に用いるもので、黒管と白管(亜鉛めっき)があり、「標仕」では白管を用いることとしている。試験水圧は2.5MPaである。種類の記号 はSGPである。

(イ) 排水管継手

JPF DF 001(排水用ねじ込み式鋳鉄製鋼管継手)は、SGPを用いた排水配管に使用するねじ込み継手19種類、呼び11/4~6について規定したもので、鋳鉄製又は可鍛鋳鉄製である。90゜エルボ、Y等には流れ勾配が付いている。鋳放し品、溶融亜鉛めっき品及び内面樹脂コーティング品があるが、「標仕」では溶融亜鉛めっき品を用いることとしている。

(ウ) 硬質ポリ塩化ビニル管

JIS K 6741(硬質ポリ塩化ビニル管)は、一般流体輸送用の管で、呼び径と厚さの組合せによって、VP、VM及びVUの3種類がある。水圧試験値はVPが 2.5MPa、VMが2.0MPa、VUが1.5MPaである。呼び径はVPが13~300、VMが350~500、VUが40~600であり、同じ径でも肉厚が異なり、VPは、VUの 2倍程度の肉厚となっている。管の色は灰色で、定尺は4m、種類の記号はVP、 VM、VUである。

「標仕」表13.5.1では、使用圧力の大きいVPを使用することになっている。また、屋内に硬質塩化ビニル管を使用しない理由は、建築基準法施行令第129条の2の4第1項第七号に該当する防火区画等を貫通する排水管は、その貫通する部分及び前後 1mを不燃材料でつくらなければならないためである。

(エ) 硬質ポリ塩化ビニル管継手

JIS K 6739(排水用硬質ポリ塩化ビニル管継手)は、硬質ポリ塩化ピニル管の VP管を使用する排水配管の冷間差込み接合に用いる継手で、エルボ、Y、両Y、ソケット等14種類がある。

(オ) ルーフドレン

(a) ルーフドレンは、日本鋳鉄ふた・排水器具工業会規格の「JCW 301-2018(ルーフドレン)」(ろく屋根用Ⅰ型)を使用し、ルーフドレンの張掛け幅を 100mm以上とする。これは、アスファルト防水や改質アスファルトシート防水における防水層の重ね幅(100mm以上)と同程度の張掛け幅とすることで、ルーフドレンに防水層を確実に張り掛けるためである。この張掛け幅の規定は、アスファルト防水及び改質アスファルトシート防水だけでなく、合成高分子系ルーフィングシート防水にも適用するとしている。

なお、張掛け幅以外の内容も、JCW 301-2018に準拠している。


図13.5.1 ルーフィング類の張掛け幅(つばの幅)100mm
たて形ルーフドレンの例

 


図13.5.2 ルーフィング類の張掛け輻(つばの幅)100mm
横形ルーフドレンの例

(b) ルーフドレンについては、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料 設備機材等品質評価事業」(1.4.4 (5)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

(c) ルーフドレンは防水種別に応じたものとする。「アスファルト防水 シート防水用」と「モルタル防水・塗膜防水用」を用意している製造所が多い。

(d) 近年のゲリラ豪雨対策として、排水量を増やせるサイホン式の排水システムの採用が見うけられる。サイホン式の排水システムは、従来の空気と水が混在した重力方式の雨水排水システムに対し、とい管内を満流状態にすることにより、細い管で高速に排水するシステムである。特殊なルーフドレンとシステム設計が必要であるが、JIS等で規格化されていないため、詳細については製造所に確認するとよい。採用に当たり主な留意事項は以下のとおりである。

① ドレン径、配管径、合流などのシステム設計については、製造所の仕様による。

② サイホン作用を利用するため、中継ドレンを設けない。

③ 取り付け高さの異なるドレン、通常の重力方式のドレンを同一系統に接続しない。

④ 満流、非満流の繰り返し脈動となるため配管の支持方法、ピッチ等を個別に検討する。

⑤ ルーフドレン近くでは、満流、非満流の切り替わり時の音が懸念されるため、静粛性が求められる室の近傍では、ドレン直下の竪樋・ドレン下部に遮音シート巻きを検討する。

⑥ 流速が早く、流量も多いので、外構の桝接続部分では雨水が溢れないよう、桝のサイズ等を調整する。

(カ) 硬質塩化ビニル雨どい

硬質塩化ビニル樹脂を成型して作られた雨どいで、JIS A 5706(硬質塩化ビニル雨どい)に適合するものとする。ただし、JISによるものは、主に住宅に用いられる丸型のものである。非住宅用の形式の例を図13.5.3に示す。


図13.5.3 非住宅向け硬質塩化ビニル雨どいの例

(キ) 表面処理鋼板

といに使用する塗装鋼板及び被覆金属板は、鋼板の両面に塗装又は樹脂被覆が施されたもので、「標仕」では、JIS G 3312、JIS G 3318、JIS G 3322及びJIS K 6744の4種類のものが規定されている。

(ク) ステンレス鋼板

「標仕」では、といに使用するステンレス鋼板は、JIS G 3320(塗装ステンレス鋼板)又はJIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)としている。

(ケ) アルミニウム製雨どい

アルミニウム製雨どいは、「標仕」では規定されていないが、美観性の良さや優れた耐久性等を理由に、実績が増えている。アルミニウム製雨どいは、JIS H 4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)による押出形材でできており、外表面は陽極酸化塗装複合皮膜処理がされている。内面は表面処理を行わなくても20年以上の大気暴録で孔食深さが 0.3mm以下であり、十分な耐食性がある。また、エポキシ樹脂塗装等でさらに防食性を高めているものもある。高強度支持金物を用いることで、とい受金物の支持間隔を通常より大きくすることが可能な製品もある。

(2) とい受金物

とい受金物は、軒どいやたてどいの形状に合わせて数多くの種類が作られている。

「標仕」表13.5.2は、といの材種、といの種類及びとい径によるとい受金物寸法、取付け間隔を示している。

軒どい、たてどいの受金物は、といに加わる荷重や衝撃に十分耐えうる形状、寸法のものとし、とい材料の耐候性、耐食性に見合った材質又は防錆処理としたものとする。具体的には、JIS H 8641(溶融亜鉛めっき)のHDZT49以上が望ましく、近年ではステンレス製やJIS G 3323(溶磁亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板及び鋼帯)等を用いる場合もある。

なお、「標仕」では、とい受金物及び足金物の材種、形状及び取付間隔は、特記によるとされており、特記がなければ、表13.5.2により、溶融亜鉛めっきしたものとされている。ステンレス製のものも製造されている。

(3) 防露材

(ア) 「標仕」では、一般部分の保温筒はJIS A 9511(発泡プラスチック保温材)のEPS-C-3(ビーズ法ポリスチレンフォーム保温筒の3号)を使用し、とい径に応じて厚さ20mm又は40mmのものを粘着テープで巻くこととしている。 EPS-C-3は、ホルムアルデヒドを放散しない材料である。

また、防火区画等の貫通部分では、JIS A 9504(人造鉱物繊維保温材)のロックウール保温筒を使用し、とい径に応じて厚さ20mm、25mm又は40mmのものを亜鉛めっき鉄線で巻くこととしている。ロックウール保温筒のJISにおけるホルムアルデヒド放散による区分には、F☆☆☆☆、F☆☆☆及びF☆☆がある。「標仕」では、特記がなければ、F☆☆☆☆と定めているので注意する。

なお、一般部分においても、保温筒の使用箇所が 70℃以上となる場合は、ロックウール保温筒を使用する。

(イ) 粘着テープは、JIS Z 1525(包装用ポリ塩化ビニル粘着テープ)による1種で、厚さ0.2mmのものを使用するとよい。

粘着テープは、支持体によって分類される。種類、記号及び厚さを表13.5.1に示す。

表13.5.1 粘着テープの種類、記号及び厚さ

(ウ) 合成樹脂製カバーは、合成樹脂を使用した難燃性の樹脂製カバーとし、JIS A 1322(建築用薄物材料の難燃性試験方法)に規定する防炎2級に合格したものとし、板厚 は0.3mm以上とする。

(エ) アスファルトルーフィングは、製品の単位面積質量の呼びが 940以上のものがよい。

(オ) ビニルテープは、JIS Z 1901(防食用ポリ塩化ビニル粘着テープ)に準ずる金属の防食性があるもので、厚さ0.2mmの不粘着性で半つやのものがよい。

13.5.3 工 法

(1) 鋼管製といの工法

(ア) 継手は、原則として、排水管継手とする。径が大きいものでも、なるべく溶接継手は避けるようにする。径が80mm以下のものは細いため、溶接により溶着金属が管内にはみ出し、ごみ等が付着し、管が詰まる可能性があるため、溶接継手は不適当である。

排水管継手を使用すると、継手部分が膨らんで意匠上好ましくない場合は、「標仕」13.5.3(1)(ア)で、径が80mmを超える管についてだけ溶接継手を認めることとしている。この場合、溶接工法が適切であるかどうかを確認する。

(イ) 管の接続後のねじ切り部、溶接部には、亜鉛めっき面の錆止め塗料として、「標仕」表18.3.2の変性工ポキシ樹脂プライマーを塗り付ける。

(ウ) 建築基準法施行令第129条の2の4第1項第七号に該当する防火区画等を貫通する排水管は、その貫通する部分及び前後 1mを不燃材料でつくらなければならない。また、同施行令第112条第20項で、貫通する部分の隙間をモルタル等の不燃材料で埋めなければならないと規定している。

(エ) 「標仕」では、といの下がり止めは、厚さ6mm程度の金物2個を、上下端のとい受金物及び中間1本おきのとい受金物ごとに、また、屋内で各階にスラブがある場合はスラブごとに取り付けるよう規定しているので注意する。

(オ) とい受金物をコンクリートに取り付ける場合は、図13.5.4のように行う。


図13.5.4 とい受金物をコンクリートに取り付ける場合

(2) 鋼管製といの防露巻工法

「標仕」表13.5.4の防露巻きについて図解すると、図13.5.5のようになる。


       図13.5.5 鋼管製といの防露巻き

(3) とい受金物の工法

(ア) とい受金物の形式を、図13.5.6及び図13.5.7に示す。


図13.5.6 たてどい受金物の例

 


 図13.5.7 軒どい受金物の例

(4) 硬質ポリ塩化ビニル管製といの工法

(ア) 継手は、原則として、JIS K 6739(排水用硬質ポリ塩化ピニル管継手)とする。管と継手は、ビニル系接着剤等を用いて行う冷間接合とする。接合部には、接着剤をつけ過ぎないようにする。

(イ) 継いだといの長さが10m以上になる場合は、製造所の指定するエキスパンション継手等で伸縮を吸収する。

(ウ) 配管用鋼管との接続は、鋼管用アダプターやTSバルブ用ソケット等を利用して行う。

(エ) といの下がり止めは、「標仕」では、といの製造所の仕様により固定するとしている。製造所の仕様には、といと同じ材質の部材(例えば、たてどいを輪切りにしたものや、それを細かなピースに切断したものなど)をたてどい受金物の上部のたてどい本体に接着剤を用いて固定する方法等がある。

(5) 硬質塩化ビニル雨どいの工法

硬質塩化ピニル雨どいの取付け方法は製造所の仕様によるが、次の事項に留意する。

(a) 軒どい

① といの継手、水止め及び曲がり等は、専用の部品を接着剤で取り付ける。
② 受金物は、所定の流れ勾配をとる。
③ 受金物とといは、1.2mm程度の金属線又は別の方法(金物の金属つめ等)で取り付ける。

④ とい1本の長さは10m以内とし、伸縮は集水器部分で吸収するようにするか、製造所の指定する長さ、方法で吸収する。

(b) たてどい
① 継手は専用の部品を用い、接着剤を用いて継ぐ。

② 継いだといの長さが10m以上になる場合は、製造所の指定するエキスパンション継手等で伸縮を吸収する。

(6) 鋼板製雨どいの工法

鋼板製雨どいの取付け工法は、次の事項に留意する。

(a) 軒どい

① といの両端部分は、丸型は耳巻き、角型は折曲げ又は耳巻きとする。

② 継手を設けないことが原則であるが、やむを得ない場合は、重ね代40mm程度とし、相互に力心を差し込みはんだ付けするか又は製造所の指定する方法による。大型のといの場合はリベット留めとする。
リベットをブラインドリベットとする場合は、シールドタイプとする。

なお、継手は漏水の原因となるので止水の処理を確実に行う。

③ 塗装及び被覆鋼板をはんだ付けする場合は、塗膜等のはく離と、そのあと処理に注意する。

④ といは、所定の流れ勾配をとり、伸縮は集水器、あんこう部分で吸収する。

(b) たてどい

① 継手は小はぜ掛けとし、はぜの緩止めを行う。

② 長さ方向の継手は、上にくるたてどいを下のといに直径寸法程度又は60mm程度差し込んで継ぐ。

(c) 谷どい

① 谷どいは、大量の雨水を処理すると同時に、じんあい、土砂等もここに流れ込んでくる。したがって、雨水やじんあい等の的確な処理のために必要な大きさ、勾配及び形状が大切な点となる。さらに谷どいは、ややもすると雨水とじんあい、土砂が一緒にたまりやすく、そのため屋根以上に腐食が早い。また、谷どいと屋根の接合部分からの漏水は、即室内への雨漏りとなるので、この部分の納め方が非常に難しくなる。納め方は屋根工法によって変わる。さらに、寒冷地域や積雪地域で一般地域と同じ方法で谷どいを納めると、氷や雪のため息わぬ漏水事故を引き起こす結果になるため注意する。

② 谷どいは、落ち口と落ち口の間又は落ち口とエキスパンションの間を1枚の板で所定の形状寸法に加工する。

③ 継手を設けないことが原則であるが、やむを得ない場合は、水上に設け、50mm以上重ね合わせ、リベット、薄板用小ねじ等で2列に千烏に留め付ける。
リベットをブラインドリベットとする場合は、シールドタイプとする。

なお、継手は漏水の原因となるので止水の処理を確実に行う(図13.5.8参照)。

④ 継手部分は、重ね合せ部にシーリング材を入れて留め付ける。

⑤ 受金物は、谷どいの底幅に合わせて、表13.5.2により間隔500mm以下で取り付け、勾配は1/200以上とする。


図13.5.8 谷どいの継手

 

表13.5.2 谷どいと受金物

⑥ 谷どいの長さが15m以上になる場合は、エスキパンション継手を設ける。谷どいの水上端部に水止め板をリベット、簿板用小ねじ等で取り付け、両端部間は20mm程度開け、エキスパンション継手のキャップは水止め板につかみ込み取り付ける。水止め板は谷どいと同材とする。

リベットをブラインドリベットとする場合は、シールドタイプとする。

なお、やむを得ず異種金属の組合せとなる場合は、両者間に硬質プラスチックフィルム(厚さ0.5mm以上)を挟み込み、電気的に絶緑させる。

⑦ 概して、寒冷地域や積雪地域で谷どいを設けることは少なく、とりわけ北悔道では皆無に近い。その理由として、各部が氷結したり、雪のため、谷どいが埋もれて、とい本来の機能が発揮されないことが多いためである。したがって、上記の地域で谷どいを施工する場合は、融雪ヒーターを取り付けるなどの対策が必須である。

(7) ルーフドレンの工法

(ア) 「標仕」13.5.3(5)では、ルーフドレンの取付けは、原則としてコンクリート打込みとしているので注意する。ルーフドレンが傾いてしまうと排水管の接続が困難となるため、ルーフドレンが水平となるよう確実に固定する。取付けに際しては、ドレンのつばの天端レベルを周辺コンクリート天端より30~50mm程度下げ、コンクリート打込み時の天端均しでは、半径600mm前後をドレンに向かって斜めにすりつける。

なお、「標仕」では、構造スラブ厚が確保できない場合等、必要に応じて図13.5.9のようにコンクリートで増打ちを行うこととしている。


図13.5.9 たて形ルーフドレンのコンクリート増打ち

(イ) 防水施工及び押えコンクリート打込みに際しては、ルーフドレン内にアスファルトやセメントペーストが流入、付着しないよう養生等を行う。

(ウ) 横形ルーフドレンを設置する場合、その直下には梁がある場合が多いので、適切な勾配を取るために、 ドレンをスラブ天端から 30~50mm程度下げて固定するためには、梁天端を下げる必要がある。また、鉄骨鉄筋コンクリート梁では、鉄骨梁も下げることになり、十分な調整が必要となる場合が多い。さらに、場合によっては、階高を上げなければならないこともあるため、注意が必要である(図13.5.10参照)。


図13.5.10 横形ルーフドレンによる梁天端下がり

 

(エ) 縦形ルーフドレンを、パラペットの立上り部分に接近して取り付けると、ストレッチルーフィングやシート類の切張り補強、シート類の重ね張り作業が不確実となり、不具合を起こす原因になる。したがって、これらの施工が確実にできるように、立上り部からある程度離す必要がある(表13.5.3参照)。

表13.5.3 ルーフドレンの下地の形状・寸法

 

(8) 清掃、その他

ルーフドレン及びといの取付け完了後、清掃を行う。

なお、取付け完了後の通水の確認は、通常の建物では降雨時又はドレンからの水の流し込みにより、管の接続部、横引き部等を目視で漏水のないこととする。

参考文献

16章 建具工事 2節 アルミニウム製建具

16章 建具工事

2節 アルミニウム製建具

16.2.1 適用範囲

(a) 「標仕」に定められているアルミニウム製建具は、建具製作所が、既製のアルミニウム押出形材及び金具その他の材料を用いて、通常製作している建具で、幅及び高さはその建具製作所が定めた製作範囲とし、カタログ等で枠の形状、断面寸法、金具仕様が指定されているものを対象としている。

いわゆる特別注文建具(オーダー製品)は、発注の際、断面寸法や金物等、また、仕様及び性能が要求され、新形の形材を使用するものは、「標仕」では対象としていない。

(b) 建具の品質保証、建具製作所の責任の明確化という意味から、なるべく建具に建具製作所名等を表示させるのがよい。

16.2.2 性能及び構造

(a) 建具の性能及び構造は、JIS A 4702 (ドアセット)又はJIS A 4706(サッシ)に規定されており、設計担当者がJISに基づく性能等を特記することが原則である。しかし、一般的には「標仕」表16.2.1の耐風圧性や水密性等の組合せによる種別が特記される。

なお、JISによる等級を超える風圧力の場合は、16.1.7 (a)(1)を参照されたい。

「標仕」表16.2.1は、事務庁舎等に通常使用する外部に面する建具の性能等級を組み合わせて表したもので、強さのグレードで表すと、A種は耐風圧性能 2,000Pa、B種は同2,400Pa. C種は同2,800Paとなる。また、これらの性能等級の組合せは、(-社)公共建築協会が行っている「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」のアルミニウム製建具の性能値と整合している。

なお、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位に対する風圧力に関する資料として、(-社)日本サッシ協会では、実績に基づき旧建築基準法施行令第87条及び旧昭和46年建設省告示第109号に規定されていた計算式を示している。

(b)「標仕」では、複層ガラスを用いる引違い、片引き及び上げ下げ形式の建具は、ガラス質量の中心が障子中心に近く安定性の高い枠見込み100mmの建具とされている。

また、「標仕」では規定されていないが、複層ガラスを用いた枠見込み70mmの引違い及び片引きの建具も市販されている。

16.2.3 材 料

(a) アルミニウム押出形材

「標仕」16.2.3 (a)(1)で定めているJIS H 4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)の中で最も一般的な形材は、A6063Sである。

(b) アルミニウム板

「標仕」16.2.3(a)(2)で定めているJIS H 4000(アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条)の中で最も一般的な板材は、A1100P-H14・H16・H24、A1200P-H24、A5005P- H14・H34であり建築用として使われている。

(c) 通常使用するアルミニウム合金の種類、強さ等を表16.2.1に示す。

表16.2.1 通常使用するアルミニウム合金の種類
    (JIS H 4000 : 2006及びH 4100: 2006)

(d) 補強材、力骨、アンカー等

鋼材は小さい断面で強度が得られるので、補強材として見え隠れ部分に使用する。接触腐食を起こすおそれがあるので防食処理をする必要がある(「標仕」14.1.3(c) 参照)。

アルミニウム合金に接触しても安全な金属は、亜鉛、クロム、ステンレス(ただし、アルミニウム合金に比べてステンレスの体積が小さい場合)等である。銅、銅合金等は、直接接触していなくても、銅の上を伝った水が接触するだけで強い腐食が起こることもある。

(e) 気密材及び擦れ合う部分、振れ止め、戸当りの類

合成ゴム(クロロプレンゴム等)、合成樹脂(塩化ビニル、ポリアミド等)の有機質のものが使われている。

擦れ合う部分(戸車)、振れ止め(面外方向への振れを防止してスムーズに作動させるために障子に取り付ける小部品)、戸当り(アルミ形材どうしが直接ぶつかるのを防止するため障子又は枠に取り付ける小部品)を、「標仕」では、従来、「原則として、ポリアミド製」としていたが、引張強さ、耐衝撃性、耐摩耗性等の性能をもった合成樹脂が開発され、適材適所で使用されてきているため、平成25年版「標仕」では、「耐久性を有し使用箇所に適したもの」とされた。

また、接触や衝突により損傷を受けやすい部品については、建具製作所では交換部品を用意している。

(f) 網戸等

(1) 防虫網の材料には、合成樹脂、ガラス繊維入り合成樹脂、ステンレス(SUS316)等があるが、一般には合成樹脂である。平成25年版「標仕」では、合成樹脂の線径が0.25mm以上であることが明確にされた。

(2) ガラス繊維入り合成樹脂製は、ガラス繊維に塩化ビニルを被覆して織ってあり、熱による伸縮は少ないが、運搬中にたるみが生じやすい。

(3) ステンレス製は、排気ガス、塩害等により発錆することがある。また、ステンレス網の張付けの際、アルミニウム形材に傷をつけやすく、傷部分がステンレス網と接触すると、環境によってはアルミニウム形材が腐食する場合がある。

(4) 網戸の主な部分に使用する材料及び付属部品は、表16.2.2に示す規格又はこれと同等以上の品質をもつものとし、それぞれの機能を果たすのに十分な強さがあり、かつ、接触腐食を起こさないもの、又は腐食防止処理を施したものとする。

表16.2.2 網戸に使用する材料等の規格

(5) 網戸の加工及び工作は、次による。

(i)  押出形材及び成形板材は、著しいひずみがないこと。
(ii) かまち及び桟の接合は、強固とする。
(iii) 補強材等にアルミニウム合金以外のものを使用する場合には、接触腐食防止処埋を施したものとする。

(iv) かまち及び桟の材料の表面には、JIS H 8602(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)に規定する陽極酸化塗装複合皮膜の種類B又は同等以上の性能をもつ表面処理を施したものを使用する。

(6) 防鳥網

外部に面するがらりには、小鳥の巣作り等を防止するために防鳥網を張ることもある。

(g) 小ねじは、ステンレスが多く使われており、高力アルミニウム合金は、現在ほとんど使われていない。

(h) 外部建具の周囲に充填するモルタルに使用する防水剤は、塩化カルシウム系等金属の腐食を促進するものでないこと。市販の防水剤には、この種のものが比較的多いので注烈する。

なお、充填モルタルの砂の塩分含有量を「標仕」でNaCl換算0.04%(質量比)以下と規定しており、海砂等は、除塩する。塩化物による腐食は、保護塗装でも防げない場合が多い。

16.2.4 形状及び仕上げ

(a) アルミニウム板を加工して、枠、かまち、水切、ぜん板及び額縁等に使用する場合の厚さは1.5mm以上とするが、形状、寸法補強板の有無.モルタル充填の施工条件等を考慮して板厚を決める必要がある。

アルミニウム押出形材の水切の既製品としては、働き幅 100、110、120mm程度がある(図16.2.6参照)。

(b) 枠見込み70mmの製品は、鉄筋コンクリート用が主であるが、ALC用、鉄骨用が用意されているものもある。枠見込み100mmの製品は、一般に鉄筋コンクリート用のものが多い。

(c) 構造

「標仕」で、枠見込み70mmのサッシの引違い及び片引きの障子において、グレイジングチャンネルが使用できる構造とされているのは、単板ガラスを想定したものである。複層ガラスには適用しない。

なお、ガスケットは、JIS A 5756(建築用ガスケット)に規定されるガスケットがよい。

(d) 表面処理

(1) 「標仕」表14.2.1に建具に使用するアルミニウム材の表面処理の種別が示されているが、そのなかでJIS H 8602(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)が2010年に改正され、仕様規定から性能規定になったことにより、平成25年版「標仕」では、陽極酸化塗装複合皮膜の種類がB(一般的な環境の屋外)とされた。種類BはJISにおける複合耐食性及び耐候性の性能のグレードを示している。

また、「標仕」16.2.4(d)において、種別及び標準色・特注色の別等は特記によるとされている。

(2) 表面処理の工程は、ほとんど素材の段階で行われる。見え掛り加工小口等は必要に応じて塗装で補修することもある。

(3) 沿岸地域で、アルミニウム製建具の腐食を防ぐには、清掃が最も有効である。清掃を怠ると、防食の効果が期待できないので、設計面でも清掃のしやすさの配慮が必要であり、更に、施設管理者への十分な説明も重要である。

(c) 絶縁処埋

(1) ここでいう絶縁処理とは、アルミニウム材と周囲に充填するモルタルとの絶縁及びアルミニウム材と鋼材等との接触腐食を避けるための絶縁をいう(14.1.3(b) 参照)。

(2) 絶縁用の塗料は、一般の建具では、建具表面に塗装されるものと同一材とする。 JIS H 8602(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)に規定される「種類B」の塗膜は、建具表面及び裏面が同時に塗装されるため絶縁処理も兼ねている。

表面処理が「標仕」表14.2.1のA種及びC種では、アルカリ性に接する箇所は絶縁処埋を行う必要がある。

(f) 出入口のくつずりにステンレスを使用する場合は、「標仕」16.4.3(b)及び「標仕」表16.4.2による。

なお、くつずりに折曲げステンレス板を取り付け、レールとする場合の例を図16.2.1 に示す。


図16.2.1 くつずりとレール

(g) 製品の寸法許容差は、JIS A 4702 (ドアセット)又はJIS A 4706(サッシ)により、工場組立完成品に対するものとする。

(h) 結露水の処理は、建具から外へ排水する方法と結露水をためる方法があるが、障子や枠及びガラスの種類等、地域条件によって一律に規定できないため、特記となっている。また、寒冷地等で外部に排水すると結露水が凍結し問題となる場合もあるため、地域条件を踏まえ結露受け等の対応を検討する。結露水の処理の一例を図16.2.2 に示す。


図 6.2.2 結露水の処理の一例

16.2.5 工 法

(a) 加工及び組立

(1) 一般に建具は、製品の形で現場へ搬入する。特殊な寸法等のものは、現楊で組立を行う場合もある。

(2) 建具の隅の納まりは種々あるが、一般に素材を仕口の形に合わせて加工し突き付け、小ねじ留めとしている。そのため、接合は強固であるが、動きやすく、現楊で取り付けるまでは全体の形も不安定なので、取扱いは十分に注意する。
突付け部は、漏水防止のためのシーリング材又はシート状の止水材を使用する。

小ねじの位置は、できるだけ雨掛りを避けるが、やむを得ない場合でも、水がたまりやすい部分は、避けることが重要である。仕口の一例を図16.2.3に示す。


図16.2.3 仕口の組立例

(b) 取付け

(1) 取付けの際には、養生材をできるだけ残して、やむを得ず取り除いた養生材は、取付けが終わったのちに、できるだけ早く復旧する。

周囲の仕上げに支障のある養生材は、仕上げに先立ち取り除く。

(2) 取付け基準

(i) 取付けには、基準墨(心墨、陸墨、逃げ墨)を出し、図16.2.4のように建具にも基準墨に合う位置にマークして位置を調整する。マークのない場合は、一般に枠面で測定する。連窓等陸墨が出せない場合は、 レベルを用いたり、ピアノ線を張り基準とする。

(ii) 取付け精度は、許容差を ±2mm程度とする。


図16.2.4 建具取付け用墨とマーク

(3) 鉄筋コンクリート造への取付け

(i) 一般に市販されている躯体付けアンカーには、長さの短いものがあるので、なるべく長いものを使用する。躯体付けアンカーを型枠に取り付け、コンクリート中に埋め込む(打ち込む)。

(ii) 建具の取付けは、くさび等で仮留めし位置及び形状を正確に決め、躯体付けアンカーに溶接して本取付けを行う。仮留めのままでは動きやすいので、できるだけ早い時期に固定する。

建具アンカー以外の部分(枠材等)に溶接してはならない。また、溶接スパッタ等が枠材に付着すると、アルミニウムの表面仕上げに悪影響を及ぼすため養生を行う。

(iii) 外部回りの建具では、枠回りにモルタルを充填する際、仮留め用のくさびは、必ず取り除かなければならない。

(iv) 出入口、点検口等のくつずり、下枠等で取付け前にあらかじめモルタルを充填しておく必要のある箇所は、図16.2.5のように行う。


図16.2.5 くつずりのモルタル充填

(v) シーリング材の施工は、プライマー及びバックアップ材を使用するが、挙動の少ない鉄筋コンクリート造のサッシ回りでは、バックアップ材を省略し、三面接着としてもよい(「標仕」9.7.4(b)参照)。「標仕」9.7.3の目地の深さの確保は、高い施工精度が必要なので注意する。

また、プライマーは、施工箇所の下地材料(被着体)に適したものとする。

(4) 鉄骨造の場合の取付け

(i) 鉄骨下地と建具枠の四周の間にくさび、平板等をはさみ込んで建具の動きを固定し、溶接又は小ねじ留め等を行う。

溶接箇所は、スパッタ等を収り除き、「標仕」表18.3.2のA種の錆止め塗料を塗り付ける。

建具アンカー以外の部分(枠材等)に溶接してはならない。また、溶接スパッタ等が枠材に付着すると、アルミニウムの表面仕上げに悪影響を及ぼすため養生する。

(ii) シーリング材の施工は、プライマー及びバックアップ材を用い、二面接着とする。プライマーは、施工箇所の下地材料に適したものとする。

(c) 漏水防止

(1) 鉄筋コンクリート造の場合

(i) 漏水防止のためには、抱き納まりがよい。抱き納まりは、壁面を流れ落ちる水膜が途切れ、サッシヘの雨掛りが少ないなど漏水防止に有効である。

面付け納まりは、壁面を流れ落ちる水膜が切れずに直接サッシに掛かるため、不利な形態であり、建具周囲、特に上枠には設計上の配慮が必要である。

(ii) 抱き納まり

抱き納まりのサッシの例を図16.2.6に示す。

抱き寸法は、配筋やコンクリートの施工性とサッシ取付け用欠き込み部のひび割れや欠け防止を考慮した寸法とする。また、開口下面は、1/10程度の外勾配か、12mm程度の立上りを設け、金属製水切を設けるのがよい。勾配や立上りをより大きくすると、躯体コンクリートと充填モルタルとの界面がサッシ下枠の水切よりはみ出すので望ましくない。サッシ回りのモルタルの確実な充填のためには、開口上部と左右には45mm程度、下部は75mm程度の隙間を設け、水切り板とサッシ下枠部を二度に分けてモルタル詰めするとよい。そのため、開口部の型枠を正確に組むことが重要である。モルタル充填後に、外部サッシ枠と躯体コンクリートとの間に直接シーリング材を施すが、シーリング材の接着面にモルタルが付着していないこと、更にはモルタルがはみ出していないことを確認する。

また、建具取付け後、壁面がぬれるような雨の時には、建具周辺から漏水がないか調査し、漏水があれば補修する。不完全なままタイル張り等を仕上げるとその後の補修は難しくなる。


図16.2.6 抱き納まりのサッシの例(建築工事標準詳細図より)

(iii) 面付け納まり

開口下面の形状やモルタル充填のための隙間は、抱き納まりと同様である。

タイル張り仕上げでは、外部のシーリング材(一次シーリング)をサッシ枠 とタイル間に施すこととなり、タイル裏面を伝った雨水には無防備である。そのため、サッシと躯体コンクリートとの間を直接つなぐシーリング材(二次シーリング)が必要となり、二重シーリング工法が特記されていなければならない。枠周囲の躯体コンクリートをはつると、この二次シーリングが不可能になるので、はつりは避けなければならない。

(2) 鉄骨造の場合の取付け
外部のシーリング材をサッシ枠と壁材との間に施すこととなるが、モルタル充填がなく、シーリング材に欠陥が生じると、直接漏水に至る危険がある。そのため、二重シーリング工法が特記されていることが望ましい。

16章 建具工事 3節 樹脂製建具

16章 建具工事

3節 樹脂製建具

16.3.1 適用範囲

(a) 平成25年版「標仕」では、3節に「樹脂製建具」が新しく規定された。樹脂製建具は、寒冷地において断熱性の高い建具として普及してきている。

樹脂製建具の主要構成材料である無可塑ポリ塩化ビニルの主な特徴は、優れた断熱性(熱伝導率がアルミニウムの約1/1,000)と耐塩害性であり、樹脂形材については、2010年に JIS A 5558(無可塑ポリ塩化ビニル製建具用形材)が制定されている。

「標仕」で規定している樹脂製建具は、建具製作所が、既製の無可塑ポリ塩化ビニル製建具用形材及び金具その他の材料を用いて、通常製作している建具で、寸法はその建具製作所が定めた製作範囲とし、カタログ等で枠の形状、断面寸法、金具仕様が指定されている標準建具(既製品)を対象としており発注の際、断面寸法や金物等並びに仕様及び性能が要求され、新形の形材を使用する特別注文建具(オーダー製品)は対象としていない。

(b) 樹脂製建具工事の作業の流れを図16.3.1に示す。


図16.3.1 樹脂製建具工事の作業の流れ

(c) 樹脂製建具は、原則として、建具の加工及び組立からガラスの組込みまで一貫して建具製作所にて行うことで、性能・品質を確保している。

建具の品質保証、建具製作所の責任の明確化及び改修や維持管理という意味から、建具に建具製作所名等を表示させるのがよい。

(d) 「標仕」では外部に面する建具を対象としている。

16.3.2 性能及び構造

(a) 建具の性能及び構造は、JIS A 4702 (ドアセット)又はJIS A 4706(サッシ)に規定されている。「標仕」表16.3.1は、事務庁舎等に通常使用する外部に面する建具の性能等級を組み合わせて表したもので、強さのグレードで表すと、A種は耐風圧性能 2,000Pa、B種は同 2,400Pa、C種は同 2,800Paとなる。

なお、平成12年建設省告示策1458号において適用除外となっている部位に対する風圧力に関する資料として、(-社)日本サッシ協会では実績に基づき旧建築基準法施行令第87条及び旧昭和46年建設省告示第109号に規定されていた計算式を示している。

(b) 枠の見込み寸法は、要求される性能や建具寸法により決まることから、「標仕」では、特記によるとされている。

樹脂製建具は複層ガラスの使用を前提としているため、枠の見込み寸法は、一般的には、アルミニウム製建具より大きいものとなり、国内で流通している製品では、スイング系で 60~80mm程度、スライディング系で100~125mm程度である。

(c) 「標仕」で樹脂製建具に要求される断熱性能は、H-4 等級及び H-5等級であるが、JIS A 4702 又は JIS A 4706に規定されている断熱性能等級の最高グレードである H-5等級(0.430m2・K/W以上)を超える熱貫流抵抗値を保持する製品もある。 H-5 等級を超える性能が要求される場合は、特記にて熱貫流抵抗値が指定される。

(d) 樹脂製建具の防火設備は、国土交通大臣の認定を受けた製品を使用する。

16.3.3 材 料

(a) 樹脂形材

「標仕」16.3.3(a)で規定している JIS A 5558(無可塑ポリ塩化ビニル製建具用形材)の材料の性能に適合したものとされている。樹脂形材の材料の性能を表 16.3.1に示す。

表16.3.1 樹脂形材の材料の性能(JIS A 5558 : 2010)

(b) 補強材、力骨、アンカー等

鋼材は、小さい断面で強度が得られるので、補強材として主に樹脂形材の内部に使用される。排水経路上に補強材として使用する場合には、防錆処置を施す必要がある。また、補強材とそれを固定するねじに接触腐食を起こすおそれがある箇所には、防食処理をする必要がある(「標仕」14.1.3(c)参照)。

(c) 気密材及び擦れ合う部分、振れ止め、戸当りの類

「標仕」では、耐久性を有し使用箇所に適したものとされており、一般的には、合成ゴム(クロロプレンゴム等)、合成樹脂(塩化ビニル、ポリアミド等)の有機質のものが使われている。また、接触や衝突により損傷を受けやすい部品については、建具製作所では交換部品を用意している。

(d) 網戸等

樹脂製建具に用いる網戸のかまち及び桟に用いる材料は、アルミニウム製建具と同様、アルミニウム合金である。

なお、かまち及び桟の色は樹脂製建具の色に合わせることが多い。

(e) ガラス

(1) ガラスのはめ込みは、原則として、建具製作所にて行い、性能・品質を担保する。

(2) ガラスは、複層ガラスを用いることを原則としているが、遮音性能及び断熱性能を要求されない場合で、単板ガラス又はパネルを用いる場合は特記によるとされている。

(3) 複層ガラスのガラス厚は、最小のガラス板厚( 3mm以上)及び中間層( 12mm以上)を想定し、18mm以上としている。また、複層ガラスは、中間層の厚さのほか、中間層の気体の種類、ガラスの種類によっても断熱性能が異なる。

(4) 遮音性を期待する場合(T-2等級)の複層ガラスは、低音域の遮音低下防止のため、2枚のガラス厚を異なる厚さにすることが望ましい。

(f) グレイジングガスケット

ガラスのはめ込みには、一般的に、JIS A 5756(建築用ガスケット)に準ずるグレイジングガスケットやグレイジングビードを用いる。グレイジングチャンネルやシーリング材は、通常用いない。

16.3.4 形状及び仕上げ

(a) ガラス溝は、一般的には押縁構造とする。

(b) 主要構成材料である無可塑ポリ塩化ビニルは、その組成の40%が石油、60%が工業塩であることから、金属とは異なり、腐食の要因となる金属水酸化物が発生しないため、表面処理をする必要はない。

(c) 「標仕」では、枠・かまちの接合部は、溶接接合としている。

(d) 形材は、通常、押出前に樹脂に顔料を練り込んで色を出している。標準色は一般的には白色である。特注色は、無可塑ポリ塩化ビニル材料とそれ以外の材料を共押出成形(2層押出し)することによって積層させる方法で製作する。特注色の中でも、黒・ブラウン・シルバ一色は市場での汎用性が高いことから、建具製作所では在庫をもっている場合が多い。ほかの色も製作は可能であるが、調色(マスターバッチの製作)が必要となるため、樹脂製建具の製作に当たっては、調色にかかる期間及びコストを考慮する必要がある。

16.3.5 工 法

(a) 加工及び組立

一般に、ガラス及び押縁を建具製作所にてはめ込んだのち、建築現場へ搬送する。建具製作所が定めた搬送における製品重量を超えるものについては、現場でガラス及び押縁をはめ込む場合もある。

(b) 取付け

(1) 取付けの際は、養生材をできるだけ残して、やむを得ず取り除いた養生材は、取付けが終わったのちにできるだけ早く復旧する。周囲の仕上げに支障のある養生材は、仕上げに先立ち取り除く。

(2) 枠等のアンカーのピッチは、防火認定の条件及び枠の変形防止を考慮し400mm以下としている。

(3) 取付け基準

(i) 取付けには、基準墨(心墨、陸墨、逃げ墨)を出し、図16.2.4のように建具にも基準墨に合う位置にマークをして位置を調整する。マークのない場合は、一般に枠面で測定する。連窓等陸墨が出せない場合は、レベルを用いたりピアノ線を張ったりして基準とする。取付け精度は、許容差を± 2mm程度とする。

(ii) 建具寸法が大きい場合や、枠と躯体の間隔寸法が大きい場合には、枠の湾曲、垂下がり、はらみ、つづみ等を防止するため、図16.3.2のように枠に切張りを行う。


 図16.3.2 枠の切張り

(4) 鉄筋コンクリート造及び鉄骨造への取付け

鉄筋コンクリート造及び鉄骨造へ取る付ける場合は、建具アンカー溶接時に溶断を行ってはならない。また、溶接スパッタが枠材に付着しないよう、十分な養生を行う。溶接スパッタが枠材に付着すると枠材表面に悪影響(焦げ等)を及ぼし、復旧が困難となる。

(c) 樹脂製建具の清掃方法

(1) 樹脂製建具の清掃方法を表16.3.2に、注意事項を次に示す。

(2) 磨き粉、たわし等の硬いものは、樹脂を傷つけるため使用しない。

(3) 次の有機溶剤等は、枠材に悪影響を及ぼす場合があるため使用しない。

(i) ハロゲン化炭化水素系溶剤(クロロホルム、塩化メチレン等)
(ii) ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等)
(iii) 芳香族系溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレン等)
(iv) アルコール系溶剤(メチルアルコール、エチレンアルコール、その他のアルコール類)
(v) 酸性物質(塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、蟻酸等)

(vi) その他(シンナー等)

(4) 外装材の酸洗い等の清掃時には、清掃液が建具に付着しないよう十分な養生を施す。

表16.3.2 樹脂製建具の清掃方法

16章 建具工事 6節 ステンレス製建具

16章 建具工事

6節 ステンレス製建具

16.6.1 適用範囲

この節では、事務庁舎等の主な出入口等に使用する建具を対象としている。

16.6.2 性能及び構造

性能については、16章 1節及び 16.4.2を参照する。

なお、ステンレス製建具には、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.6.3 材 料

「標仕」では、ステンレス鋼板はニッケルを含むオーステナイト系のSUS304を標準としていたが、これは、SUS304が加工性、耐食性及び経済性の均衡の取れた材料であったからである。しかし、最近では、世界的にニッケルを始め希少金属(レアメタル)が激減し入手に支障も出てきたため、平成22年版「標仕」に、JIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)に規定されているフェライト系(ニッケルを含まない。)のSUS430J1L及びSUS430の2種類が標準として追加された。

更に、平成22年5月には、SUS304と同等の耐食性を有するフェライト系のSUS443J1がJIS G 4035に追加されたことにより、平成25年版「標仕」にSUS443J1が規定された。

SUS430J1L及びSUS443J1は、SUS304に近い耐食性を有するため、外部や水回りに使用し、SUS430は高い耐食性を必要としない屋内の建具等に使用するというように使い分けをするとよい。

なお、更に耐食性を要求される塩害地向けには、SUS316が使われる場合がある。

16.6.4 形状及び仕上げ

(a) 裏板の板原は1.6mm以上、補強板の類の板厚は2.3mm以上である。

ステンレスに接触する鋼材は、ステンレスの腐食の原因となることがあるので、裏板、補強板等の重要な補強材は、錆止め塗装を行う必要がある。

なお、両面フラッシュ戸の中骨、力骨の類は、「標仕」18.3.3(f)(4)より塗装されない。また、超強力両面粘着テープが張り付けられる部分も、接着強度が低下するため塗装されない。

(b) 表面仕上げをHL以外とする場合は、表14.2.1[ステンレス板の表面仕上げ]を参照されたい。

(c) ガラス溝の寸法及び形状は.16.4.4(c)による。

16.6.5 工 法

(a) 普通曲げとは、特に処置しない普通の曲げ方である。角出し曲げとは、図16.6.1に示す方法で曲げるので、角が鋭くなり意匠的にはよいが、強度を著しく弱めるので、裏板を用いて補強するため高価である。その他、一部にはロール成形により曲げる方法も行われている。

なお、角出し曲げ加工ができる板厚は、1.5mm以上であり、一般に表16.6.1による3種類の加工方法が行われている。

ただし、a角については割れが生じやすいので注意を要する。一般的にはb角・c角を用いる方がよい。

また、板厚の異なる組合せの場合は、出来ばえをそろえるため、切込み後の残り寸法を1.5mmの板に合わせる場合が多い。


図16.6.1 角出し曲げの方法

表16.6.1 角出し曲げ加工の種類

(b) 取付けは、16.2.5 (b)に準じる。