15章 左官工事 8節 ロックウール吹付け

15章 左官工事

8節 ロックウール吹付け

15.8.1 適用範囲

この節は.JIS A 9504(人造鉱物繊維保温材)に規定される材料を用いて、吸音・耐火・断熱を目的とした半乾式工法及び乾式工法によるロックウール吹付け工事を対象としている。

なお、耐火被覆は7章節による。

(1) ロックウール吹付け工法には、現場配合のセメントスラリーによる半乾式工法と工場配合による乾式工法がある。現場配合による半乾式工法は、吹付け時にノ ズル先でロックウールとセメントスラリーを混ぜ合わせて吹き付ける工法である。工場配合による乾式工法は、ロックウールとセメントをあらかじめ工場で配合混合し、吹付け時にノズル先で水と合わせて吹きつける工法である。

(2) 工場配合による乾式工法は粉塵等により衛生環境が悪くなるので、粉塵の少ない現場配合による半乾式工法が多く使われるようになってきている。

15.8.2 材料

(a) ロックウールは、JIS A 9504に適合するもので、特記がなければホルムアルデヒド放散による区分がF☆☆☆☆等級であり、かつ、国土交通大臣から不燃材料としての認定を受けたものを使用する。

なお、ロックウール保温材は、認定番号NM-8600として認定されている。また、JIS A 9504に規定された品質基準を表15.8.1に示す。

表15.8.1 ロックウール保温材の品質基準(JIS A 9504 : 2011)

(b) セメントは、ポルトランドセメント、高炉セメント又は白色セメントを使用する。

(c) 接着剤は、合成樹脂系のもので、ホルムアルデヒド放散量は、特記がなければ F☆☆☆☆のものを使用する。一般的には、アクリル樹脂系エマルション形や酢酸ビニル・アクリル共重合樹脂エマルション形のものなどが使用されている。

15.8.3 配合及び密度等

(a) 「標仕」では、防火材料として使用することを想定して、吹付けロックウールの配合及び密度を、「標仕」表15.8.1のように定めている。

なお、この配合は、吹付けロックウール(認定番号NM-8601)として認定された構造方法又は建築材料に適合している。

(b) 材料は、「標仕」で規定された品質が得られるように、所定の品質となるようにロックウールとセメントスラリーを現場で結合させる現場調合のもの(15.8.4 (b)(1)に対応)と、セメントとロックウールをあらかじめ工場で配合したもの(5.8.4 (b) (2)に対応)とがある。「標仕」表15.8.1の配合は、工場配合及び現場配合の両方に適用される。

(c) 「標仕」では、仕上げ吹付け厚さは、特記によることとしている。

15.8.4 施工

(a) 下地調整

下地調整は、下地の種類により必要に応じて行いコンクリート、プレキャストコンクリート部材、セメントモルタル及びコンクリートブロックの場合は、水湿しでドライアウト防止の調整を行い、ALCパネルの場合は、合成樹脂エマルションシーラーで吸込み防止の調整を行う。また、プレキャストコンクリート部材で、型枠はく離剤が塗られている場合は、接着力を高めるため合成樹脂エマルションシーラーで下地調整を行う。

(b) 吹付けは、次による。

(1) 現場配合のセメントスラリーによる半乾式工法の場合

(i) 専用吹付け機を使用し、作業開始に先立って予備運転を行い、吹付け機が安全、かつ、正常に作動するかを確認する。

(ii) 水100kgに対しセメント50kg (2袋)を標準とし、かくはん機でセメントスラリーを調合する。

(iii) ロックウールとセメントスラリーの吐出量を点検し「標仕」表15.8.1の範囲となるよう吐出量を調整する。

(iv) 吹付けは、吹付け機より輸送ホースを経て吹付けノズルより吐き出されるロックウールをノズルから噴霧されるセメントスラリーで混合させながら均一に吹き付ける。

(2) 工場配合の乾式工法の場合

(i) 専用吹付け機を使用し、作業開始に先立って予備運転を行い、吹付け機が安全、かつ、正常に作動するか、また、吹付けノズルにより水が正常に噴霧されるかを確認する。

(ii) 材料の吐出量及び噴霧水量を点検し、材料の吐出量に対し必要、かつ、十分な水量を保持できるように調整する。

(iii) 吹付けは、下塗りが乾かないうちに行い、吹付け機より輸送ホースを経て吹付けノズルより吐き出される材料をノズル周囲より噴霧される水で十分湿潤させながら均ーに吹き付ける。

(c) 表面仕上げ

(1) こて均し

吹付け終了後、均ーな所定厚さを確保するため、木製の平こてにて、こて均しして仕上げる。

(2) 表面硬化

こて均し終了後、吹付け材表面を硬化させる必要がある場合、セメントスラリー0.1〜0.2kg/m2程度の吹付けを行う。

15.8.5 施工後の確認

(a) 防火材料は吹付け完了後、厚さ及び密度の検査を行う。

なお、検査は施工者の管理担当者が行う。

(b) 吹付け厚さの確認は、7.9.8による。

(c) 密度の確認は、建物1層あるいは、1,000m2に付き5箇所とする。測定器及び計算方法は7.9.8による。

参考文献

16章 建具工事 1節 一般事項

16章 建具工事

1節一般事項

16.1.1 適用範囲

(a) 「標仕」では建具を次のように分類し、それぞれの特性等については、節ごとに分けて規定している。建具は、出入口や窓等の機能、アルミニウム製や鋼製等の材料、開きや引違い等の開閉方式、防音や断熱等の性能等に分類できるが、「標仕」では建具を提供する建具製作所の区分に一致する材料により分類している。

平成25年版「標仕」では、JIS A 5558(無可塑ポリ塩化ビニル製建具用形材)で樹脂製建具の形材品質基準が標準化されたこと及び省エネ化促進のため、事務庁令、宿令等の外部建具として、新たに樹脂製建具が規定された。

それぞれの適用範囲は、次の各節による。
  4節 鋼製建具
  7節 木製建具
 14節 ガラス
各節の建具等は、事務庁令等に使用する一般的なもの(建具製作所が、通常製作している建具でカタログ等に仕様が指定されているもの)について規定しており、特別注文の建具は対象としていない。また、木製建具は、木造住宅に使用するものを対象とはせず、事務庁舎等の中で使われるものに限定している。

(b) アルミニウム製建具の場合を例にして、作業の流れを図16.1.1に示す。

なお、基本要求品質を確保するため、品質計画を提案させ、これによってプロセスの管理を行う16.1.2(b)及び(c)を参照されたい。


図16.1.1 アルミニウム製建具工事の作業の流れ

(c) 一般に施工図と施工計画書に記載される事項の例を表16.1.1及び表16.1.2に示す。

表16.1.1 建具の施工図の記載事項
表16.1.2 施工計画書の記載事項

これらは、アルミニウム製建具、鋼製建具等の製作に必要な事項であるが、建具の種別、建物の状況、建設場所の立地条件等によっては、要求される性能が異なる場合がある。

また、一般に行われている施工図作成の過程を図16.1.2に示す。図面の早期理解と事前の意思の疎通が必要である。


図16.1.2 施工図作成の過程

(d) 「標仕」16章で使われる建具の分類や一般的な各部の名称等は、次に示すとおりである。また、建具ごとに異なる詳細な名称は、各節の補足説明を参照されたい。

(1) 建具の寸法、部材名称等を図16.1.3及び図16.1.4に示す。


図16.1.3 出人口戸の寸法

 


図16.1.4 開口部窓に関する名称

(2) 戸の種類と構造の例を表16.1.3に示す。

表16.1.3 戸の構造

(3) 戸、窓の開閉方式を図16.1.5に示す。


図16.1.5 戸、窓の開閉方式

(4) 戸の開き勝手を図16.1.6に示す。


図16.1. 6 戸の開き勝手

16.1. 2 基本要求品質

(a) 「標仕」には、建具の種類に応じた材料が規定されている。主要材料の索材はJISが指定されており、一般にJISに適合する証明を建具製作所から提出させる。

材料のJISについては、2節以降の材料の項を参照されたい。

補助材料の中には、「標仕」で、具体的な品質を規定していないものがある。一般にそれらは、建具製作所が使用しているものとしてよいが、材質等が確認できる資料又は実績を確認する。

(b) 「標仕」には、建具の形状として使用材料の板厚等を規定している。一般にJISがある材料にあっては、JISの呼び名に対応するものを使用するが、これには許容差が含まれている。ただし、実厚の指定のある防火戸に使用する鋼板では、指定された値以下となる許容差は認められないので注意する。

また、製作所で加工し組み立てて、現場に搬入される建具の製品としての寸法精度は、一般の建築部材と比べて高い。しかし、これを現場に取り付けてはじめて建物の一部となるため、いくら製品としての精度が良くても、取り付けた結果の精度が適切でないと、建具としての性能を満足しないことになる。「所定の形状及び寸法を有する」とはまず,使用する材料の原さ等の確認方法をどのようにするか取り付けたのちの建具としてどの程度の精度を確保するかについてあらかじめ「品質計画」において提案させ,これによってプロセスの管理を行うことと考えればよい。

建具の表面状態は、建具の耐久性や意匠上の観点から重要な管理項目である。

一般に表面処理又は塗装が指定されており、現場に搬入された材料が指定どおりであっても、取り付けたのちの仕上り状態が問題である。したがって「所要の仕上り状態」としては、指定された表面処哩等の確認方法のほか、取付け後の傷、汚れ、反り、へこみ、著しい色むら等の許容限度、これらの限度を超えた場合の処置方法も含めて「品質計画」で提案させるようにする。

(c) 建具は、建物の構成材として16.1.7に示すような種類の性能が要求され、必要な性能が設計図書に特記される。外部に面する建具の性能値としては、耐風圧性、気密性及び水密性が特記されるが、耐風圧性は法令に定められた基準がある。その他の性能は、建物のグレード等に応じて設計担当者が特記する。

建具に求められる性能は、建具の種類や取り付けられる部位ごとに異なるものであり、例えば、シャッターやオーバーヘッドドアでは、気密及び水密性は要求されず、耐風圧性のみが要求される。また、屋内用で、遮音又は気密性が要求される建具では、これらの性能が特記される。

一方、16.1.7に示す性能は、製品としての建具の性能であり、建物の部位としてのものではない。これは、一般に取り付けられた状態での性能は、確認が困難であり、事実上は不可能なことによる。このため、建具工事では、要求される性能をもつ建具製品を建物に取り付けることで、要求される性能が確保できるようにする必要がある。

以上のことから、「所定の性能を有する」とは、建具製品としての性能の確認方法、製品の性能が確保できる取付け方法等について「品質計画」で明らかにし、定められた方法が手順どおり行われたことを、どのように確認し記録していくかを提案させ、実施させることと考えてよい。

一般に、建物の耐震性は構造部材の安全性だけでなく、建具や内装等の非構造部材の安全性も重要な事項であるが、耐風圧性、気密性、水密性等とは異なり、建具の耐震性が具体的に特記されることは少ない。しかし、非構造部材としての耐震性を付与することは重要である。「所要の耐震性能を有する」こととは、窓ガラスの破損に対する安全性の確認等も含めて16.1.7 (a)(6)を参考にして検討を行うことと考えればよい。

なお、大きな層間変位に対応させるには、意匠、構造を含めた設計上の検討が必要となる場合が多いので関係者を含めて打合せを行い、必要に応じて「標仕」1.1.8による協議を行う。

16.1.3 防火戸

a) 防火戸の取扱い

(1) 網入板ガラスや耐熱板ガラスの使用又は設備との関係等重要な事項は、防火区画や防煙区画が分からなければ適切な建具の配置を計画できない。防火区画や防煙区画は、本来設計図に明示されているものであるが、明示のない場合もあるので、計画通知書(確認申請書)に付属する図面の写し等により確認を行う。

(2) 耐熱板ガラスはJIS規格が制定されておらず、「標仕」にも規定されていないが、耐熱板ガラスを使用して大臣認定を取得したものがある。

(3) 常時解放型の防火戸の機構は、一般に表16.1.4のようなものである。

表16.1.4 防火戸の機構

(b) 法令等に関連して、建具を防火戸とする箇所は、おおむね次のとおりである。

① 防火区画
② 延焼のおそれのある部分
③ 防火区画に接する外壁
④ 避難階段
⑤ 変電室
⑥ 発電機室.
⑦ 蓄電池室
⑧ 機械室・ボイラー室
⑨ 書庫
⑩ 防災センター
(c) 防火戸

(1) 防火戸の運用

 防火戸は二つの形態で運用される。

① 国土交通大臣が定めた構造方法による製品(例示仕様)を使用する。

具体的には、平成12年建設省告示第1360号及び同第1369号に基づいて製作された製品を使用し施工する。この場合は、法律で定められた構造で施工するので認定書や認定番号はない。したがって、施工する仕様が規定に適合するか確認する。

② 国土交通大臣の認定を受けたもの(個別認定)を使用する。

建築基準法で構造方法が規定された ①以外のものは、個別に試験を受けて国土交通大臣の認定を取得する必要がある。個別認定品には認定番号と認定書があるので写しを確認する。認定番号は、特定防火設備がEA – □□□□(4桁の数字)、防火設備がEB – □□□□となっている。

(2) ガラス入り特定防火設備として、耐熱板ガラス及び網入板ガラスを一部使用して個別認定を受けているものがある。この防火設備については、(-社)日本サッシ協会から「ガラス入り特定防火設備運用指針/安全設計指針」が発行されているので参考にするとよい。

同様に樹脂製・木製で防火設備や特定防火設備の認定を受けたものも多く使われている。

(3) 遮煙性能を有する防火設備に関しては、建築基地法施行令第112条第9項及び第14項で、たて穴区画(吹抜き部、階段の部分、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースその他これらに類する部分)はその他の部分と遮煙性能を有する防火設備で区画するように義務付けている。

昇降機(EV)の昇降路に関しては昭和56年建設省告示第1111号が平成14年-5月に失効したことから、新しく遮煙性能をもつ防火設備として国土交通大臣認定CAS – □□□□/複合防火設備(準耐火構造壁・床付き)が誕生し、多くの認定品が使われるようになってきている。

しかし、施行令第112条では昇降路と同様に階段室等のたて穴区画にも義務付けていることから、平成16年3月22日の消防法改正では、同区画の防火設備の遮煙性を高める方法として、昇降路で認定され性能が明確な国土交通大臣認定 CAS – 0257等がこれに適合すると推奨しているので参考にするとよい。

(4) 防火戸にがらりを設ける場合は、防火ダンパー付きのものとする必要がある。

(d) 防火戸の安全性

防火シャッター、自動回転ドア等の事故発生に伴う防止措置として、平成17年 12月1日建築基準法施行令第112条第14項第一号ロが施行され、防火区画に取付けの防火戸(特定防火設備又は防火設備)の閉鎖作動時に、周囲の人の生命又は身体の安全確保のため、危害防止措置の対応が義務付けられた。危害防止措置の要求性能は、昭和48年建設省告示第2563号(最終改正 平成17年12月1日国土交通省告示第1392号)に規定されており、概要は次のとおりである。

(i) 閉鎖作動時の運動エネルギー(MV2/2)が 10J以下であること。
ただし、
 M:防火設備の質量(kg)

 V:防火設備の閉鎖作動時の速度(m/s)

(ii) 防火設備の質量が15kg以下であること。ただし、質量が15kgを超える場合は、水平方向に閉鎖するもので閉じ力が150N以下であること、又は周囲の人と接触した場合に 5cm以内に停止すること。

16. 1. 4 見本の製作等

特別注文の建具が特記される場合等では、その製作に先立ち、性能と機能を確認するため見本品が製作されることがある。特記により建具見本品を製作する場合は、見本品の製作期間と性能(水密性、気密性、強度、遮音性等)、機能(開閉等)の確認試験期間を製作工程に見込む必要がある。

16.1.5 取付け調整等

(a) 建具工事の品質管理としては、製作所による社内検査と取付け後の建具の調整により当初の建具の品質が確保されていることを確認する検査がある。

(b) 社内検査

(1) 社内検査の要領は、施工計画書で示されるので、その要領に基づいて検査を行わせ、結果を報告書として提出させるとよい。

(2) 報告書の主な内容は、次のとおりである。

① 建具符号、形式
② 全体の形状、使用材科の材質・板厚等
③ 表面処理の種別及び皮膜又は複合皮膜の種類(「標仕」表14.2.1[表面処理の種別]による)
④ 主要部分の寸法精度(JIS A 4702 (ドアセット)又はJIS A 4706(サッシ)による)
⑤ 漏水防止処置
⑥ 仕上げの状態

⑦ その他必要に応じて開閉の作動状況等

(3) 最近では、建具材料の加工にNC加工機を使用する例が増えてきており、同一形式の建具の場合、寸法精度については抽出検査としてよい。

(c) 「標仕」16.1.5(a)の「取付け調整」は、具体的には次の事項が調整されていることをいう。

(1) 開閉作動が円滑であること。
(2) 施錠、解錠の操作が円滑であること。
(3) 施錠後に大きながたつきがないこと。

(4) 付属金物(はずれ止め、戸当り、ドアクローザー等)の取付け、調整が完了していること。

(d) モルタル、プラスター等が長時間アルミニウム材に付着すると変色することがある。固化する前は、容易に取り除けるので、早期に水洗い等により清掃し除去する必要がある。

16.1.6 その他

(a) 最近の建具では、開閉操作が複雑なものもある。オーバーヘッドドア等では誤操作が事故につながる可能性もあり、適宜、建具製作所より操作方法の表示情報を得て表示するとともに、工事完成時には、「標仕」1.7.3に基づき取扱い説明書を整備する必要がある。

(b) 個人情報保護法施行に伴い、個人情報を預かる公共建物においては開口部の不正侵入防止対策が必要となってきている。また、近年の侵入犯罪の増加に伴い、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に定められた日本住宅性能表示基準に「防犯に関すること(開口部の侵入防止対策)」が追加され.その中で侵入を防止する性能が確かめられた部品として「防犯建物部品」が該当されるものとされた。このような背景から、「防犯建物部品」が特記されることが予想される。

「防犯建物部品」とは、「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」が、一定の防犯性能があると評価した建物部品であり、「官民合同会議」が公表する「防犯性能の高い建物部品目録」に掲載されたものである。

部品ごと、に定められた試験方法により合格したものが、5分間の侵入抵抗性能があると認められ、それらには「CPマーク」表示がなされる(図16.1.7参照)。また、公表された「防犯建物部品」(建具関連)は、公表されたガラス、ウィンドウフィルム及び錠を組み込むことにより防犯性能が確保されるということになっている。


図16.1.7 CPマーク

なお、「防犯建物部品」には業界別に次の① から⑦ のものがある。詳細は(公社)全国防犯協会連合会又は各団体のホームページに掲載されているので参考にされたい。

① 窓関係(サッシ全般、雨戸、面格子、窓シャッター):(-社)日本サッシ協会
② ドア関係(ドアA種、ガラスドア、引戸、ガラス引戸):(-社)日本サッシ協会
③ ドア関係(ドアB種):(-社)日本シャッター・ドア協会
④ シャッター関係(重量・軽量シャッター、オーバーヘッドドア、スイッチボックス、窓シャッター):(-社)日本シャッター・ドア協会
⑤ 錠関係(錠、電気錠、シリンダー、サムターン):日本ロック工業会
⑥ ガラス関係:板硝子協会

⑦ ウインドウフィルム:日本ウインドウフィルム工業会

16.1.7 建具の性能等

(a) 建具に共通する主な性能の概要は、次のとおりである。

なお、特別注文の建具であっても、性能確認のための試験には多大な経費を要する場合があるので、試験の実施が特記されていない場合は、試験を強要してはならない。

(1) 耐風圧性
JIS A 4702 (ドアセット)又はJIS A 4706(サッシ)に規定される等級が特記される。
等級を超える風圧力の場合は、性能を確保するための品質基準を含めて風圧力の数値が特記される。

また、高さ60mを超える建物については、(-社)日本建築学会「建築物荷重指針・同解説」6章[風荷重]を用いる場合もある。

なお、平成12年建設省告示第1458号では、「高さ13m以下の建築物」、「高さ 13mを超える建築物の高さ13m以下の部分で高さ13mを超える部分の構造耐カ上の影響を受けない部分及び1階の部分又はこれに類する屋外からの出入口(専ら避難に供するものを除く。)を有する階の部分」の屋外に面する帳壁は適用除外とされている。高さ13m以下の部位に作用する風圧力については、「建築物荷重指針・同解説」に定める計算式によるほか、2節以降に掲げる建具の種類に応じた計算方法(16.2.2(a)、16.3.2(a)、16.11.2(c)、16.13.2(b). 16.14.2(b)参照)によって算定することができる。また、同告示に規定する計算式を高さ13m以下にそのまま適用することも技術的には可能である。

性能の確認は、部材の構造計算又は建具製作所で実施した試験の報告書等により行う。

特記により試験を行う場合は、JIS A 1515(建具の耐風圧性試験方法)による。

(2) 気密性
JIS A 4702又はJIS A 4706に規定される等級又は圧力差10Paに対する単位面積、単位時間当たりの通気量(m3/m2・ h)が特記される。
性能の確認は、建具製作所で実施した類似建具の試験の報告書等により行う。

特記により試験を行う場合は、JIS A 1516(建具の気密性試験方法)による。

(3) 水密性
JIS A 4702又はJIS A 4706に規定される等級が特記される。
なお、等級を超える条件の場合は、JIS A 1517(建具の水密性試験方法)での室内側に漏水を生じない限界の上限圧力差又は平均圧力差が特記される。
性能の確認は、建具製作所で実施した類似建具の試験の報告内等により行う。

特記により試験を行う場合は.JISA1517による。

(4) 遮音性
JIS A 4702又はJIS A 4706に規定される等級が特記される。
性能の確認は、建具製作所で実施した類似建具の試験の報告書等により行う。

特記により試験を行う場合は、JIS A 1416(実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法)に準ずる。

(5) 断熱性

(i) JIS A 4702若しくはJIS A 4706に規定される等級又はJIS A 2102-1(窓及びドアの熱性能ー熱貫流率の計算ー第1部:一般)及びJIS A 2102-2(窓及びドアの熱性能ー熱貫流率の計算ー第2部:フレームの数値計算方法)に基づく熱貫流率計算(単位面積1m2の温度差1Kに対する通過熱量)の熱貫流率 (W/m2・K)で特記される。

性能の確認はJIS A 2102-1及びJIS A 2102-2に基づく熱貫流率計算又は建具製作所で実施した類似建具の試験の報告書等により行う。

特記により試験を行う場合は、JIS A 4710(建具の断熱性試験方法)による。

(ii) 住宅の窓等の断熱性能表示

住宅の窓等に関して、エネルギーの使用の合理化に関する法律第86条(一般消費者への情報の提供)に基づき「窓等の断熱性能に係る情報提供に関するガイドライン」(住宅の窓を製造し、又は輸入する事業を行う者が当該窓の断熱性に係る品質の一般消費者への情報提供のための表示に関し講ずべき措置に関する指針)(平成19年12月28日経済産業省告示第321号 最終改正平成22年5月24日)が経済産業省より公表されているので参考に示す。

同ガイドラインに基づき「窓」(住宅用の窓におけるガラス組込み完成品)を完成させた建具製作所の場合、個々の商品に対し、出荷段階において表16.1.5の表示区分で「省エネ建材等級ラベル」(図16.1.8参照)を張り付けている。


図16.1.8 省エネ建材等級ラベル

表16.1.5 省エネ建材等級ラベルの表示区分表示区分
(6) 耐震性
建具の耐震性は、一般に建物の層間変位に対して窓ガラスが破損・脱落して人的被害を及ぼさないようにすることである。

建具にはめ込まれた窓ガラスの建物の層間変位に対する安全性は、図16.1.9に示すブーカムの提案式によって求めてよい。

なお、この式はガラスとその周囲の枠との関係を示すものである。

一般に固定窓(FIX)部では、層間変位が直接枠に作用するのでこのまま適用できる。しかし、可動部では、枠と障子との間に隙間があるため、まず枠が変形し障子にぶつかり、はじめて障子が変形する。また、引戸では、更に障子の回転も考慮できる。したがって、障子にはめ込まれたガラスの層間変位に対する安全性は、多くの震災でも証明されているように、固定窓の場合に比べはるかに高い。

また、ドアセットの層間変位に対する安全性は、16.4.2(e)による。

図16.1.9中の① が平常時の状態であり、ガラス小口とサッシのガラス溝との間には、C1~C4の隙問(エッジクリアランス)が設けられている(16.14.3 (a) (2)参照)。建物の層間変位によって、建具の上下枠間に変位が生じ、② から③の状態へと移って行く。③ の状態(建具の上下隙間の変位がδ2)が、窓ガラスの終局的な状態であり、建物の層間変位で建具がこのような状況にならなければ窓ガラスは安全であるといえる。

建物の層間変位は、建物の剛性によって決まるものであり、特記がない場合には、設計担当者に確認する必要がある。

一般に中層建物では、S造はRC造に比べ剛性が比較的小さいため層間変形角 1/150程度が妥当であるが、一般普及品の固定窓(FIX)部においては、サッシの細長比の関係により、ガラスエッジクリアランスが確保できない場合が起こり得るので配慮が必要である。


図16.1.9 窓ガラスの層間変位に対する安全性(ブーカムの提案式)

(b) 建具に関する関連知識

(1)屋上の外開き戸は、風にあおられるおそれがあり、また、内開き戸は雨仕舞が悪いのでなるべく引戸にするのがよい。

なお、やむを得ず外開き戸にする場合は、図16.1.10のように適切な位置に戸当り等を付け、戸の変形を防止するのがよい。戸当りの位置及び大きさは、取っ手(握り玉等)の大きさを考慮する。


図16.1.10 屋上の外開き戸の納まり

(2) 建具の下辺で防水層と取合う部分は、雨仕舞に十分注意する。

なお、屋上、屋根の仕上げ面から建具下端までの寸法は、200mm以上とするのがよい。

(3) 排煙窓

外倒し窓、内倒し窓等がある。機構は、手動式と電動式(手動併用)等があり、煙感知器と連動して自動開放することができる。手動式の開放操作は、ワンタッチで引手及びレバーを引くものと、オペレーターでプッシュボタンを押すものがある。閉鎖操作は、ハンドルを回す。手動開放装置の操作部分は、建築基準法施行令第126条の3に「壁に設ける場合においては床面から80cm以上1.5m以下の高さの位置に、天井から吊り下げて設ける場合においては床面からおおむね1.8mの高さの位置に設け、かつ、見やすい方法でその使用方法を表示すること。」と定められている。電動式の解放操作は、個別、プッシュボタン又は手動ハンドルによることもでき、集中制御にすることが可能である。引違い窓等を排煙設備とする場合は、クレセントの取付け高さに注意する。

(4) 防煙垂れ壁

固定方式と可動方式がある。可動方式には、回転降下方式、垂直降下方式とがあり、その機構は、煙感知器、熱感知器連動及び手動方式がある。

(5) 耐火クロス製防火/防煙スクリーン

性能規定化に伴い、ガラスクロス等を用いた巻取り式の防火設備は、特定防火設備等の国土交通大臣の認定が必要である。

(6) がらり

(i) 給排気のためのがらりの有効開口部(フリーエリア)は、図16.1.11のS又はS’寸法の小さい方に隙間の長さを掛けたものの和である。

(ii) がらりの羽根の形は、図16.1.11の(イ) が一般的である。風当たりの強いところでは雨、雪の吹込みに対する対策のために、(ロ) とするか又は羽根の重なりLを大きくする。また、強風時の雨、雪の吹込み対策として、羽根をたてに設置したたて形がらりも市販されている。

なお、がらりの面積や間口率については、設計担当者に確認しておく必要がある。

(iii) 廊下と部屋の間に設ける場合は、一般に図16.1.11の(ハ) の形にするか又は(イ) の形にして内部を部屋側にして廊下から足元が見えないようにする。(ハ) の形では、d寸法をあまり小さくすると製作誤差で、部屋の光が外に見えるおそれがあるので注意する。

図16.1.11 がらりの羽根

(c) 特別注文の建具に対する対応

本来、「標仕」の適用範囲外であるが、意匠性から特別注文の建具が設計図書に明示されることも多い。しかし、(a) に示したように、特別注文の建具の性能の確認手段は、その多くが新たな実験を伴うこととなる。更に、建具の詳細設計をする費用と期間を要し、大幅なコスト増は避けられない。

したがって、特別注文の建具を指示する場合には、必ずその旨が特記されてなければならない。

(d) 法令及びJIS

(1) 法令(耐力関連)

(i) 建築基準法施行令の関連部分の抜粋を次に示す。

建築基準法施行令

第39条(屋根ふき材等の緊結)

屋根ふき材、内装材、外装材、帳壁その他これらに類する建築物の部分及び広告塔、装飾塔その他建築物の屋外に取り付けるものは、風圧並びに地震その他の震動及び衝撃によって脱落しないようにしなければならない。
2 屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の構造は、構造耐力上安全なものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない。

第82条の4(屋根ふき材等の構造計算)

屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁については、国土交通大臣が定める基準に従った構造計算によって風圧に対して構造耐力上安全であることを確かめなければならない。(限界耐力計算)

第82条の5(第1項 第一号~第六号 省略)
七 極根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁が第三号二の規定によって計算した建築物の各階に生ずる水平方向の層間変位及び同号ロの規定によって計算した建築物の損傷限界固有周期に応じて建築物の各階に生ずる加速度を考慮して国土交通大臣が定める基準に従った構造計算によって風圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して構造耐力上安全であることを確かめること。

(ii) 建設省告示「屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の構造方法を定める件」の抜粋を次に示す。

屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の構造方法を定める件
(昭和46年1月29日 建設省告示第109号最終改正平成12年5月23日)建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第39条第2項の規定に基づき、屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の構造方法を次のように定める。第1
屋根ふき材は、次に定めるところによらなければならない。(第一号~第三号 省略)第2
外装材は次の各号に定めるところによらなければならない。(第一り及び第二号省略)第3
地階を除く階数が 3以上である建築物の屋外に面する帳壁は、次に定めるところによらなければならない。

一 帳壁及び支持構造部分は、荷重又は外力により脱落することがないように構造耐力上主要な部分に取り付けること。

ニ プレキャストコンクリート板を使用する板壁は、その上部又は下部の支持構造部分において可動すること。ただし、構造計算又は実験によってプレキャストコンクリート板を使用する帳壁及びその他の支持構造部分に著しい変形が生じないことを確かめた場合にあっては、この限りでない。

三 鉄網モルタル塗の帳壁に使用するラスシート、ワイヤラス又はメタルラスは、日本産業規格(以下「JIS」という。)A5524(ラスシート(角波亜鉛鉄板ラス))-1994、JIS A5504(ワイヤラス)ー1994又はJIS A5505(メタルラス)-1995にそれぞれ適合するか、又はこれらと同等以上の性能を有することとし、かつ、間柱又は胴縁その他の下地材に緊結すること。

四 帳壁としてガラス入りのはめごろし戸(網入ガラス入りのものを除く。)を設ける場合にあっては、硬化性のシーリング材を使用しないこと。ただし、ガラスの落下による危害を防止するための措置が講じられている場合にあっては、この限りでない。

五 高さ31メートルを超える建築物(高さ31メートル以下の部分で高さ31メートルを超える部分の構造耐力上の影響を受けない部分を除く。)の屋外に面する帳壁は、その高さの150分の1の層間変位に対して脱落しないこと。ただし、構造計算によって帳壁が脱落しないことを確かめた場合においては、この限りでない。

(ⅲ) 建設省告示「屋根ふき材及び屋外に面する帳壁の風圧に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」の抜粋を次に示す。
屋根ふき材及び屋外に面する帳壁の風圧に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件
(平成12年5月31日 建設省告示第1458号最終正平成19年9月27日)建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第82条の4の規定に基づき、屋根ふき材及び屋外に面する帳壁の風圧に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を次のように定める。1 建築基準法施行令(以下「令」という。)第82条の4に規定する屋根ふき材及び屋外に面する帳壁(高さ13メートルを超える建築物(高さ13メートル以下の部分で高さ 13メートルを超える部分の構造耐力上の影響を受けない部分及び1階の部分又はこれに類する屋外からの出入口(専ら避難に供するものを除く。)を有する階の部分を除く。)の帳壁に限る。)の風圧に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準は次のとおりとする。一 次の式によって計算した風圧力に対して安全上支障のないこと。

二 帳壁にガラスを使用する場合には、第一号の規定により計算した風圧力が、当該ガラスの種類、構成、板厚及び見付面積に応じて次の表により計算した許容耐力を超えないことを確かめること。

2 屋根ふき材に対するピーク風力係数は、次の各号に掲げる屋根の形式に応じ、それぞれ当該各号の定めるところにより計算した数値とする。(第一号〜第三号 省略)

3 屋外に面する帳壁に対するピーク風力係数は、第一号に規定するピーク外圧係数から第二号に規定するピーク内圧係数を減じた値とする。(第一号及び第二号 省略)

(iv) 建設省告示「Eの数値を算出する方法並びにV0及び風力係数の数値を定める件」の抜粋を次に示す。
Eの数値を算出する方法並びにVo及び風力係数の数値を定める件
(平成12年5月31日 建設省告示第1454号)建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第87条第2項及び第4項の規定に基づき、Eの数値を算出する方法並びにVo及び風力係数の数値を次のように定める。第1
(省略)

2 前項の式のErは、次の表に掲げる式によって算出するものとする。ただし、局地的な地形や地物の影響により平均風速が割り増されるおそれのある場合においては、その影響を考慮しなければならない。

(v) 建設省告示「損傷限界変位、Td、Bdi.、層間変位、安全限界変位、Ts、Bsi、.Fh 及び Gs を計算する方法並びに屋根ふき材等及び外壁等の構造耐力上の安全を確かめるための構造計算の基準を定める件」の抜粋を次に示す。
損傷限界変位、Td、Bdi、層間変位、安全限界変位、Ts、Bsi、Fh及びGsを計算する方法並びに屋根ふき材等及び外壁等の構造耐力上の安全を確かめるための構造計尊の基準を定める件
(平成12年5月31日 建設省告示第1457号 最終改正平成19年9月27日)建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第82条の5第三号イから二まで、第五号、第七号並びに第八りの規定に基づき、損傷限界変位、Td、Bd、層間変位、安全限界変位、Ts、Bsi、Fh及びGsを計算する方法並びに屋根ふき材等の構造耐力上の安全を確かめるための構造計算の基準を次のように定める。(第1~第10省略)第11
令第82条の5第七号に規定する屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の構造i計算の基準は、次のとおりとする。

ー 風圧力に対して、平成12年建設省告示第1458号に規定する構造計算を行うこと。

二 地震力に対して、次に定める方法により構造計算を行うこと。ただし、令第39条の規定に適合し、かつ、令第82条の6第三号の規定により求めた建築物の層間変位の当該各階の高さに対する割合が200分の1以下であることが確かめられた場合においては、この限りでない。

イ 屋根ふき材について、建築物の損傷限界時に屋根ふき材が取り付く階に生ずる加速度によって当該屋根ふき材の面内及び面外に作用する力を求め、当該力により緊結部分に生ずる応力度が短期に生ずる力に対する許容応力度を超えないことを確かめること。

ロ 外装材及び屋外に面する帳壁(以下「外装材等」という。)について、建築物の損傷限界時における外装材等が取り付く部分の上下の部分に生ずる加速度によって当該帳壁等の面内及び面外に作用する力を求め、当該力により緊結部分に生ずる応力度が短期に生ずる力に対する許容応力度を超えないことを確かめること。

ハ 外装材等について、建築物の損傷限界時における外装材等が取り付く階に生ずる層間変位を求め、当該変位により緊結部分に生ずる応力度が短期に生ずる力に対する許容応力度を超えないことを確かめること。 ただし、当該部分の脱落防止その他有効な手法を用いて、地震に対する安全性が同等以上であることが確かめられた場合においては、この限りでない。

(2) 法 令(防火設備関連)

(i) 建築基準法の関述部分の抜粋を次に示す。

建築基準法
(用語の定義)第2条
この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

九の二 耐火建築物
次に掲げる基準に適合する建築物をいう。

ロ その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能(通常の火災時における火災を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国上交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること。

第64条(外壁の開口部の防火戸)

防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が準遮炎性能(建築物の周囲において発生する通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を設けなければならない。

(ⅱ) 建築基準法施行令の関係部分の抜粋

建築基準法施行令

第109条(防火戸その他の防火設備)
法第2条第九号のニロ及び法第64条の政令で定める防火設備は、防火戸、ドレンチャーその他火災を遮る設備とする。

2 隣地桜界線、道路中心線又は同一敷地内の2以上の建築物(延べ面積の合計が500平方メートル以内の建築物は、1の建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線のあらゆる部分で、開口部から1階にあっては3メートル以下、2階以上にあっては5メートル以下の距離にあるものと当該開口部とを遮る外壁、そで壁、塀その他これらに類するものは、前項の防火設備とみなす。

第109条の2(遮炎性能に関する技術的基準)
法第2条第九号のニロの政令で定める技術的基準は、防火設備に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものであることとする。

第112条(防火区画)
主要構造部を耐火構造とした建築物又は法第2条第九号の三イ若しくは口のいずれかに該当する建築物で、延べ面積(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の2分の1に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)が1500平方メートルを超えるものは、床面積(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の2分の1に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)の合計1500平方メートル以内ごとに第115条の2の2第1項第一号に掲げる基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(第109条に規定する防火設備であって、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後1時間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国上交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。以下同じ。)で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分でその用途上やむを得ない場合においては、この限りでない。

一(省略)

二 階段当の部分又は昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む。)で第115条の2の2第1項第一号に掲げる基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画されたもの

2〜13(省略)

14 第1項から第5項まで、第8項又は前項の規定による区画に用いる特定防火設備及び第5項、第8項、第9項又は節12項の規定による区画に用いる法第2条第九号の二ロに規定する防火設備は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める構造のものとしなければならない。

ー 第1項本文、第2項若しくは第3項の規定による区画に用いる特定防火設備又は第5項の規定による区画に用いる法第2条第九号のニロに規定する防火設備 次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの

イ 常時閉鎖若しくは作動をした状態にあるか、又は随時閉鎖若しくは作動をできるものであること。

ロ 閉鎖又は作動をするに際して当該特定防火設備又は防火設備の周囲の人の安全を確保することができるものであること。

ハ 居室から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の通行の用に供する部分に設けるものにあっては、閉鎖又は作動をした状態において避難上支障がないものであること。

ニ 常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあつては、火災により煙が発生した場合又は火災により温度が急激に上昇した場合のいずれかの場合に自動的に閉鎖又は作動をするものであること。

二 第1項第二号、第4項、第8項芳しくは前項の規定による区画に用いる特定防火設備又は第8項、第9項若しくは第12項の規定による区画に用いる法第2条第九号のニロに規定する防火設備 次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの

イ 前号イからハまでに掲げる要件を満たしているものであること。

ロ 避難上及び防火上支障のない遮煙性能を有し、かつ、常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあっては火災により煙が発生した場合に自動的に閉鎖又は作動をするものであること。

第136条の2の3(準遮炎性能に関する技術的基準)
法第64条の政令で定める技術的基準は、防火設備に建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)に火炎を出さないものであることとする。
建築基準法施行令

(iii) 建設省告示「防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める件」の抜粋を次に示す。
防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める件
(昭和48年12月28日 建設省告示第2563号最終改正平成17年12月1日)建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第14項第一号、第129条の13の2〔平成12年4月政令第211号により改正〕及び第136条の2第一号の規定に基づき、防火区画に用いる防火設備等の構造方法を次のように定める。

第1
建築基準法施行令(以下「令」という。)第112条第14項第一号イから二までに掲げる要件(二に掲げる要件にあつては、火災により煙が発生した場合に、自動的に閉鎖又は作動をするものであることに限る。)を満たす防火設備の構造方法は、次の各号のいずれかに定めるものとする。

一 次に掲げる基準に適合する常時閉鎖状態を保持する構造の防火設備とすること。

イ 次の(1)又は(2)のいずれかに適合するものであること。

(1) 面積が3m2以内の防火戸で、直接手で開くことができ、かつ、自動的に閉鎖するもの(以下「常時閉鎖式防火戸」という。)であること。

(2) 面積が3m2以内の防火戸で、昇降路の出人口に設けられ、かつ、人の出入りの後20秒以内に閉鎖するものであること。

ロ 当該防火設備が開いた後に再び閉鎖するに際して、次に掲げる基準に適合するものであること。ただし、人の通行の用に供する部分以外の部分に設ける防火設備にあつては、この限りでない。

(1) 当該防火設伽の質量(単位 kg)に当該防火設備の閉鎖時の速度(単位 m/秒)の2乗を乗じて得た値が20以下となるものであること。

(2) 当該防火設備の質量が15kg以下であること。ただし、水平方向に閉鎖をするものであってその閉鎖する力が150N以ドであるもの又は周囲の人と接触することにより停止するもの(人との接触を検知してから停止するまでの移動距離が 5cm以下であり、かつ、接触した人が当該防火設備から離れた後に再び閉鎖又は作動をする構造であるものに限る。)にあつては、この限りでない。

二 次に掲げる基準に適合する随時閉鎖することができる構造の防火設備とすること。

イ 当該防火設備が閉鎖するに際して、前号ロ(1)及び(2)に掲げる基準に適合するものであること。ただし、人の通行の用に供する部分以外の部分に設ける防火設備にあつてはこの限りでない。
(以下省略)

(iv) 建設省告示「防火設備の構造方法を定める件」の抜粋を次に示す。
防火設備の構造方法を定める件
(平成12年5月24日 建設省告示第1360号)建築基準法(昭和25年法律第201号)節2条第九号のニロの規定に基づき、防火設備の構造方法を次のように定める。第1
建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第109条の2に定める技術的基準に適合する防火設備の構造方法は、次に定めるものとする。

ー 建築基準法施行令第114条第5項において準用する建築基準法施行令第112条第16項に規定する構造とすること。

二 次のイからホまでのいずれかに該当する構造とすること。

イ 鉄製で鉄板の厚さが0.8ミリメートル以上1.5ミリメートル未満のもの

ロ 鉄骨コンクリート製又は鉄筋コンクリート製で厚さが3.5センチメートル未満のもの

ハ 土蔵造の戸で厚さが15センチメートル未満のもの

二 鉄及び網入ガラスで造られたもの

ホ 骨組を防火塗料を塗布した木材製とし、屋内面に厚さが1.2センチメートル以上の木毛セメント板又は厚さが0.9センチメートル以上のせっこうポードを張り、屋外面に亜鉛鉄板を張ったもの

三 前号イ又は二に該当するものは、周囲の部分(防火戸から内側に15センチメートル以内の間に設けられた建具がある場合においては、その建具を含む。)が不燃材料で造られた開口部に取り付けなければならない。

四 開口面積が0.5平方メートル以内の開口部に設ける戸で、防火塗料を塗布した木材及び網入りガラスで造られたもの

第2
第1に定めるもののほか、防火戸が枠又は他の防火設備と接する部分は、相じゃくりとし、又は定規縁若しくは戸当りを設ける等閉鎖した際にすき間が生じない構造とし、かつ、防火設備の取付金物は、取付部分が閉鎖した際に露出しないように取り付けなければならない。

(v) 建設省告示「防火地域又は準防火地域内にある建築物の外壁の開口部の延焼のおそれのある部分に設ける防火設備の構造方法を定める件」の抜粋を次に示す。
防火地域又は準防火地域内にある建築物の外壁の開口部の延焼のおそれのある部分に設ける防火設備の構造方法を定める件
(平成12年5月25日 建設省告示第1366号)建築基準法(昭和25年法律第201号)第64条の規定に基づき、防火地域又は準防火地域内にある建築物の外壁の開口部の延焼のおそれのある部分に設ける防火設備の構造方法を次のように定める。

第1
建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第136条の2の3に定める技術的基準に適合する防火設備の構造方法は、建築基準法第2条第九号のニロに規定する構造とすることとする。

第2
第1に定めるもののほか、防火戸が枠又は他の防火設備と接する部分は、相じゃくりとし、又は定規縁若しくは戸当たりを設ける等閉鎖した際にすき間が生じない構造とし、かつ、防火設備の取付金物は取付部分が閉鎖した際に露出しないように取り付けなければならない。

(vi) 建設省告示「特定防火設備の構造方法を定める件」の抜粋を次に示す。
特定防火設備の構造方法を定める件
(平成12年5月25日 建設省告示第1369号)建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第1項の規定に基づき、特定防火設備の構造方法を次のように定める。

第1
通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後1時間加熱面以外の面に火炎を出さない防火設備の構造方法は、次に定めるものとする。

一 骨組を鉄製とし、両面にそれぞれ厚さが0.5ミリメートル以上の鉄板を張った防火戸とすること。

二 鉄製で鉄板の厚さが1.5ミリメートル以上の防火戸又は防火ダンパーとすること。

三 前二りに該当する防火設備は、周囲の部分(防火戸から内側に15センチメートル以内の間に設けられた建具がある場合においては、その建具を含む。)が不燃材料で造られた開口部に取り付けなければならない。

四 鉄骨コンクリート製又は鉄筋コンクリート製で厚さが3.5センチメートル以上の戸とすること。

五 土蔵造で厚さが15センチメートル以上の防火戸とすること。

六 建築基準法施行令第109条第2項に規定する防火設備とみなされる外壁、そで壁、塀その他これらに類するものにあっては、防火構造とすること。

七 開口面積が100平方センチメートル以内の換気孔に設ける鉄板、モルタル板その他これらに類する材料で造られた防火覆い又は地面から高さが1メートル以下の換気孔に設ける網目2ミリメートル以下の金網とすること。

第2
第1(第六号及び第七号を除く。)に定めるもののほか、防火戸が枠又は他の防火設備と接する部分は、相じゃくりとし、又は定規縁若しくは戸当りを設ける等閉鎖した際にすき間が生じない構造とし、かつ、防火設備の取付金物は、取付部分が閉鎖した際に露出しないように取り付けなければならない。

(3) JIS

(i) JIS A 1513(建具の性能試験方法通則)の抜粋を次に示す。

JIS A 1513: 1996

2. 性能項目 建具の基本性能項目を、表1に示す。

表1 性能項目

(ii) JIS A 4702 (ドアセット)の抜粋を次に示す。

JIS A 4702: 2012

1. 適用範囲
この規格は、主として建築物の外壁面及び屋内隔壁の出入口として用いる手動開閉操作を行うスイング及びスライデイングのドアセットについて規定する。ただし、回転ドアセットは除く。

4 種類記号及び等級
ドアセットの種類、記号及び等級は、次による。

a) 性能による種類及び記号
性能による種類及び記号は、表1及び表2による。

表1 スイングドアセットの性能による種類及び記号

表2 スライディングドアセットの性能による種類及び記号

b) 性能項目による等級
性能項目による等級は、表3による。表3 性能項目による等級

5. 性 能
性能は、9.によって試験を行い、表4の規定に適合しなければならない。(9.は省略)

表4 性 能

表4 性 能(続き)

b) 全周波数滞被において、次の式によって音響透過損失を換算し、その換算値(6点)が該当する遮音等級線を上回ることとする。

ただし、125Hzは160Hzと、4000Hzは3150Hzと、各々二つの音響透過損失によって換算する。なお、換算値は整数で丸めることとし、換算値の各周波数帯域で該当する遮音等級線を下回る値の合計が3dB以下の場合は、その遮音等級とする。


図1 気密等級線


図2_遮音等級線
JIS A 4702: 2012

(iii) JIS A 4706(サッシ)の抜粋を次に示す。
JIS A 4706: 2012

1. 適用範囲

この規格は、主として建築物の外壁の窓として使用するサッシについて規定する。ただし、天窓は除く。4. 種類、記号及び等級
サッシの種類、記号及び等級は、次による。

a) 性能による種類及び記号
性能による種類及び記号は、表1及び表2による。

表1 スイングサッシの性能による種類及び記号

注1)開き窓に適用
2)PVC製内窓には適用しない
備考:◎は必須性能

表2 スライディングサッシの性能による種類及び記号

注1)引違い窓・片引き窓に適用
2)PVC製内窓には適用しない
3)耐風圧性の等級S-5以上のものだけに適用
備考:◎は必須性能

b) 性能項目による等級性能項目による等級は、表3による。
表3 性能項目による等級
5. 性 能

性能は9.によって試験を行い、表4の規定に適合しなければならない。(9.は省略)表4 性 能
JIS A 4706 : 2012

16章 建具工事 4節 鋼製建具

16章 建具工事

4節 鋼製建具

16.4.1 適用範囲

「標仕」では、主として事務庁舎の出入口に使用する標準的な建具(幅950mm × 高さ2,400mm程度以内)で、戸は片面又は両面を平らな鋼板張りとしたフラッシュ戸又はかまち戸によるドアセット及び標準型鋼製建具を対象としている。したがって、標準と著しく相違する建具については金物を含めて、適切な補強等の処置が必要である。

建具の幅950mm程度と想定しているのは、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(以下「バリアフリー新法」という。)の誘導基準(有効幅で 900mm以上)を採用しているためである。また、高さ2,400mm程度と想定しているのは、最近の建物では解放的な空間づくりから、建具を2.400mm程度まで高くすることが多くなっているためである。

16.4.2 性能及び構造

(a) 外部に面する建具の耐風圧性は16.1.7(a)(1)及び16.2.2を参照する。

(b) 気密性、水密性が定められている簡易気密型ドアセットとは、気密材が装着してあり、「標仕」表16.4.1 による性能を満足するものをいう。

(c) がらり付きドアセットは、換気を主目的としたもので、一般に気密性、水密性との両立は構造上不可能である。

(d) 遮音性は、気密材を装着した枠にグラスウール等を充填した戸の場合、T-1(旧25等級)~T-2(旧30等級)等級程度である。

なお、T-2等級を超える遮音性を必要とする場合は、簡易気密型ドアセットでは対応できないので、グレモンハンドル等を使用したエアタイトドアセット(PAT)又は、最近、よく使われているマグネット気密ゴムを使ったドアセットを使用するとよい。

(e) 耐震性は、JIS A 1521(片開きドアセットの面内変形追随性試験方法)の規定があり、JIS A 4702 (ドアセット)に耐震ドアセットとしてD-1(1/300rad)、D-2 (1/150rad)、 D-3(1//120rad)の等級がある。また、耐震設計基準として国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「官庁施設の総合耐震計画基準及び同解説」に、耐震性を配慮したドアセットについて記載されているので参照するとよい。

(f) 鋼製建具には.「標仕」で要求する品質を満たすものとして (-社)公共建築協会の「建築材科・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.4.3 材 料

(a) 鋼板類

(1) 鋼板は、特記がなければ JIS G 3302(溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)により、めっきの付着量は標準でZ12又はF12とされていた。

最近、臨海地区の副都心化が急速に進んだことにより、内陸部の事務庁舎等を想定して「標仕」で規定していた溶融亜鉛めっき鋼板(JIS G 3302)では、耐食性が劣るために、錆が発生して問題になることが多くなっている。

平成25年版「標仕」では、これまでの溶融亜鉛めっき鋼板に比べて耐食性に優れた溶融亜鉛ー5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3317)が規定された。めっき付着量は標準でY08とされ、溶融亜鉛めっき鋼板より少ないが、約2倍の耐食性がある。また、市販されているものは、環境に配慮したクロムフリー化成処理が施されている。このほか、「標仕」では規定されていないが、耐食性に優れた溶融亜鉛ーアルミニウムーマグネシウム合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3323)のJISが新たに制定されている。

なお、JIS G 3321(溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)については、耐候性は良いが、曲げ加工や溶接性等が悪く、鋼製建具には不向きなため規定されていない。

(2) 出入口のくつずりはステンレス製(16.6.3参照)とし、くつずりにレールを取り付ける場合は、16.2.4(f)を参照する。

(3) 形鋼の類は、アングルドアを想定しているので、主として形鋼、平鋼及び厚い鋼板が含まれる。

(b) その他

(1) 上吊り引戸の下枠(ガイドレール等)は、頻繁に擦れ合うことにより傷みやすいため「標仕」16.4.3 (c)ではステンレスとしている。

(2) 気密材には種々なものがあり、クロロプレンゴム発泡体(表皮付き)もよく使用されるが、皮膜が弱く破れやすいものもあるので注意する。また、はがれやすいので取付け方法にも注意する。

(3) 戸に使用する構造用接合テープは、表16.4.1に示すJIS Z 1541(超強力両面粘着テープ)に適合したものを使用する。

なお、焼付け塗装の場合は断熱仕様の1号、常温塗装の場合は2号を使用する。

表16.4.1 超強力両面粘着テープの規格(JIS Z 1541 : 2009)

16.4.4 形状及び仕上げ

(a) 出入口の枠類で、戸1枚の有効開口幅が950mm、かつ、高さが2,400mm以下のものは、内部側・外部側ともに板厚1.6mmが必要である。また、同様にくつずりの板厚は1.5mm、戸の中骨の板厚は1.6mmが必要である。

なお、「標仕」では、一般的な建物を想定しているため、有効開口幅950mm、かつ、有効高さを2,400mm以下で板厚を規定している。これを超えるような建具は、本来設計図書に特記されることが前提であるが、特記がない場合には、建具製作所の仕様によることとなる。

(b) 製品の寸法許容差は、工場組立完了後の寸法に対するものとする。

(c) 外部に面する建具のガラス溝の寸法及び形状は「標仕」表16.14.1によるものとするが、一方、押縁等でガラスをやり返ししてはめ込まなければならない場合は、施工性を考慮して溝の深さを決める。ただし、防火戸の個別認定を受けた建具の場合は,この寸法も規定されているので注意する。

(d) 塗 装

(1) 下地量整

(i) 形鋼の場合は「標仕」表18.2.2により素地ごしらえを行う。

(ii) 亜鉛めっき鋼板の場合は、鋼板製造所で、「標仕」表18.2.3工程3のりん酸塩処理後水洗い乾燥又はクロム酸処理後乾燥の二つの処理のみが行われていた。

しかし、最近では、鋼板製造所でも環境に配慮して、有害化学物質の六価クロムを含有しないクロメートフリー処理が製品化されつつあるが、平成25年版「標仕」では、表18.2.3工程3にクロム酸処理とクロメートフリー処理が併記されている。地球環境を守る見地から六価クロムの排除が世界規模で進められており、クロム酸処理は廃止していく時期にきている。したがって、平成 28年版「標仕」では、更に一歩進んでクロメートフリー処理への一本化が必要とされている。

(iii) 「標仕」表18.2.2及び表18.2.3の工程2油類除去では、B種、C種に溶剤ぶきを規定しているが、溶剤から発生する化学物質がもたらす健康や環境への悪影響や近くで溶接作業を行う場合の爆発事故の報告もあり、最近ではシンナー等の溶剤に代わる代替洗浄剤としてアルカリ系脱脂洗浄剤が開発され利用されている。

(2)錆止め塗料塗り

形鋼の場合は「標仕」表18.3.1の鉄鋼面錆止め塗料A種を塗る。ただし、つや有合成樹脂エマルションペイント塗りの場合は、B種を塗る。

16.4.5 工 法

(a) 枠等の組み方

(1) 枠等の組み方の例を図16.4.1から図16.4.4に示す。

上部の組み方は、図16.4.1の留め(イ) 又は胴付き(ロ) による溶接のほか、溶接研磨による損傷が少なく、塗装後の仕上りの美しい面落ち(ハ)でもよい。

(ロ) の組み方で吊り金具にピボットヒンジを使用する場合は、縦枠の上に上枠が伸びるいわゆる上枠伸ばし(ニ)となる。

(2) 「標仕」表16.4.3には、屋内での枠の加工及び組立が必要な場合は、溶接に代えて小ねじ留め(裏板厚さ2.3mm以上)によることができるとしている。この理由は、工場で加工し、現楊で組立しなければならない建具を想定しており、工場で加工及び組立できる建具は、溶接とするのがよい。

(3) 「標仕」表16.4.3の金物取合い補強板とは、ねじで固定する部分の強度を担保するために設ける補強材を指し、錠本体ケースカバー等は製作所の仕様による。

(4) 亜鉛めっき鋼板の場合は、特記がなければ、「標仕」表18.3.2のA種、JIS K 5629(鉛酸カルシウムさび止めペイント)を塗る。

なお、溶接部や損傷部等は、塗装に先立ち、錆止め塗料と同一の塗料で補修する。


図16.4.1 枠類の組み方

 


図16.4.2 くつずりの組み方

 


図16.4.3 方立の組み方

 


図16.4.4 無目の組み方

(b) 戸の組み方
フラッシュ戸では、中骨は間隔 300mm以下に配置する。外部に面する戸は、下部を除き三方の見込み部を表面板で包む(三方曲げ)。内部に面する戸は、上下部を除き二方の見込み部を表面板で包む(二方曲げ)。表面板と中骨の固定は、溶接又は構造用接合テープにより確実に接合する。

溶接痕は、表面を平滑に研磨仕上げし、塗装に先立ち、錆止め塗料と同一の塗料で補修する。

(c) 鋼板の曲げ寸法の限度は、表16.4.2のとおりである。

表16.4.2 端部曲げ寸法の限度

(d) 取付けは、16.2.5(b)に準ずる。

16.4.6 標準型鋼製建具

(a) 標準型鋼製建具と標準型鋼製軽量建具とは、公共工事のコスト縮減を図るために、官庁施設設計研究会(平成12年)が設定したものである。

寸法や金物の標準化により、打合せによる決定まで間接コストと建具の作図、加工等の直接コストを軽減し、更にバリアフリ一新法を考慮して幅が6種類、高さが 2,000mmと2,100mmの2種類が設定されている。戸の形状・寸法は表16.4.3のとおりであり、通常の事務庁舎等の大部分に適用が可能である。

(b) 錠、ドアクローザーは、主要製作所で「公共工事標準型」として、一般品と区別して取り扱っている。

表16.4.3 標準型鋼製建具と標準型鋼製軽量建具一覧表

16章 建具工事 5節 鋼製軽量建具

16章 建具工事

5節 鋼製軽量建具

16.5.1 適用範囲

「標仕」では、屋内の出入口に使用する標準的な建具(幅 950mm × 高さ2,400mm程度)を対象としている。なお、戸見込み寸法は 35mm以上である。

建具の幅 950mm程度及び高さ2,400mm程度と想定しているのは、16.4.1と同様である。

16.5.2 性能及び構造

(a) 「標仕」16.5.2 (b)で水密性が規定されていないのは、取付け場所を屋内に限定しているため、雨水等の影響を受けないからである。

(b) 遮音性は、気密材が装着されている枠を使用する場合で、透過損失15〜20dB(500Hz)程度である。

(c) 鋼製軽量建具には、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4(e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.5.3 材 料

(a) 鋼板類

(1) 鋼板は、亜鉛めっき鋼板でめっき付着量は、「標仕」16.5.3(a)(1)を満足すればよい。

(2) 出入口のくつずりはステンレス製(16.6.3参照)とし、くつずりにレールを取り付ける場合は、16.2.4 (f)を参照する。

(3) ビニル被覆鋼板及びカラー鋼板は、表面仕上げした材料であり、現場での塗装を必要とせず工期の短縮に寄与する。平成25年版「標仕」では、ビニル被覆鋼板及びカラー鋼板の下地鋼板のめっき付着量について、(1)の亜鉛めっき鋼板と整合させ、F04をF06に、E16をE24とされた。

(4) カラー鋼板は、PCM(プレコートメタル)とも呼ばれ、鋼板製作所で仕上げ塗装された材料である。品質が安定しており、ビニル被覆鋼板同様に工期の短縮と塗替え等のメンテナンスが不要であるなどの利点があるが、ロール発注のため、色調は建具製作所の標準色となる。

現在、内装材に適した電気亜鉛めっき鋼板を下地としたカラー鋼板のJISは制定されていない。そのため、「標仕」では下地の電気亜鉛めっき鋼板のめっき付着量を規定している。

また、平成25年版「標仕」では、耐食性に優れた JIS G 3317(溶融亜鉛ー5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯)及びJIS G 3321(溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)は、鋼製軽量建具が屋内の使用に限定されているため、高い耐食性は必要ないことから削除された。

(b) その他

水酸化アルミ無機シートコアとは、紙状無機質材料で作られたコアを水酸化アルミニウム溶解液に浸したのち、乾燥させ燃えにくくした製品である。

16.5.4 形状及び仕上げ

(a) 表面板の厚さは、標準では 0.6mmに統一されている。また、召合せ、縦小口包み板等も 0.6mm以上であるため、表面板との意匠合わせが可能である。

(b) 出入口の枠類で、丁番、ピボットヒンジ及びドアクローザー等が取り付く部分には、2.3mmの補強板が必要である。

(c) 接着剤を使用する表面板の裏面は、接着性が悪くなるので、錆止め塗料塗りは行わない。

(d) 内装建具であるため、ガラス溝の寸法及び形状は建具製作所の仕様でよい。

(e) くつずりの板厚は、鋼製建具と同様に1.5mmである。

16.5.5 工 法

{a) 枠等の組み方は、16.4.5 (a)による。

(b) 内装建具であるため、戸の組み方は、建具製作所の仕様でよい。

また、戸の順位調整器のローラー等が接する部分及び錠のハンドル部等へこみ防止の補強板は、厚さ1.6mm以上の鋼板を使用する。

(c) 取付けは.16.2.5(b)に準ずる。

16.5.6 標準型鋼製軽量建具

16.4.6 標準型鋼製建具により、以下の表16.4.3による。

表16.4.3 標準型鋼製建具と標準型鋼製軽量建具一覧表

16章 建具工事 8節 建具用金物

16章 建具工事

8節 建具用金物

16.8.1 適用範囲

(a) この節では、建具の戸、枠に付属し、戸の動作円滑、動作制御、位置制御、締まり、操作等の機能を分担するもののうち、2節から7節までの各種の既製建具又はこれに準ずる建具に使用する建具用金物(以下、この節では「金物」という。)を対象としている。

(b) 「標仕」では、金物の材質、形状、寸法、個数等が規定されている。しかし、既製建具にこれらの金物を取り付けるためには、改良を要するものもあり、「標仕」 16.8.1では、既製建具は、製作所の仕様で建具に見合った金物が取り付けてあればよいとしている。ただし、機能及び美観上疑問のある場合(腐食、損傷等)は、協議をして取り換えられるようにしている。

なお、金物の指定がない場合でも、建具の機能上必要なものは当然取り付けなければならない。

16.8.2 材質、形状及び寸法

(a) 金物の材質

金物に使用する主要な材料としては、表16.8.1に示すものがある。

なお、ステンレスとして使用されている材料には、SUS304やSUS430系でJIS規格品のSUS430J1Lのほか、SUS304と同等の耐食性を有するJIS規格品のSUS443J1もある。

「標仕」表16.8.1では、特記がない場合の金物の材質として、見え掛り部等の材質を金物の種類に応じて細かく規定している。

なお、見え掛り部の材質の指定は、防錆又は強度上必要なもの以外は、化粧として表面に現れる部分についてのみ適用される。例えば、ピボットヒンジの本体が鉄製でも、カバーがステンレスであれば、ステンレスの指定に合うことになる。

表16.8.1 金物に使用される主要な材料と製法(JASS 16より)

(b) 金物への名称又は略号の表示の目的は、メンテナンスや交換等の際の識別を容易にするためである。したがって、金物製造所又は建具製作所のいずれかの名称又は略号が表記されたものを使用する。

(c) アルミニウム製建具に使用する金物で、黄銅製のものにクロムめっきを行うのは、アルミニウムとの接触腐食を防止するためである。また、亜鉛合金製のものにクロムめっきを施すのは美観上の必要からである。

(d) 便所、洗面所、浴室、厨房等に使用するステンレス以外の金物にクロムめっき又はJIS H 8602(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)による協極酸化塗装複合皮膜(種類B)処理を行うのは、水分による腐食を防止するためである。陽極酸化旅装複合皮膜処理はアルミニウム合金の場合の表面処理である。

(e) 金物の種類

「標仕」表16.8.1では、金物が過度にならないように建具の形式に応じた金物の種類を規定している。

表中の*印の付いた金物の適用は、特記によって指定することとしている。

なお、表に示された金物は、建具に付属するすべての金物を網羅しているものではなく、この表以外で建具の機能上必要な金物は補足して付けなければならない。

また、表中でピボットヒンジの使用を屋内に限定しているのは、ガラス戸等で、ピボットヒンジをフロアヒンジと組み合わせて使用する場合の防犯性を考慮したものである。

(i) 開き戸の主な金物を図16.8.1に示す。


図16.8.1 開き戸の主な金物

(ii) 引戸の主な金物を図16.8.2に示す。


図16.8.2 引戸の主な金物

(iii) 「標仕」には規定されていないが、近年、鋼製建具や木製建具でよく使われるようになってきた折り戸の金物を次に示す。

① 防火戸に使われる折り戸の主な金物を図16.8.3に示す。 .


図16.8.3 折り戸の主な金物(防火戸)

②物入等に使われる折り戸の主な金物を図16.8.4に示す。


図16.8.4 折り戸の主な金物(物入等)

(f) 錠のグレード

平成25年版「標仕」では、「標仕」表16.8.1のシリンダー箱錠及び本締り錠について、JIS A 1541-2(建築金物-錠-第2部:実用性能項目に対するグレード及び表示方法)によるグレード3以上と規定されたが、これは、主に事務庁舎を想定したものであり、鋼製建具、鋼製軽量建具及びステンレス製建具を対象としている。

JIS A 1541-2では、
① 使用頻度による性能
② 外力に対する性能
③ 使用扉の質量による性能
④ かぎ(鍵)違い
⑤ デッドボルトの出寸法

⑥ 耐じん性能

の6項目について、それぞれグレードが定められており、「標仕」では、耐じん性能を除く5項目についてグレード3以上としている。耐じん性能は、使用する場所により要求性能が異なるため規定されていないが、ちりやほこりの多い場所では、グレード2の製品を使用するのが望ましい。

また、枠類の厚さが1.5mm以上のものの場合の外力に対する性能のストライクの仕様については、グレード3の規定を適用しないこととされている。

なお、本締り付きモノロック及びモノロックについては、耐じん性能を除く実用性能項目の5項目のすべてでは、グレード3を満足してはいない。

JIS A 1541-2については、16.8.5(b)(2)を参照されたい。

錠前類には、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4(e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

(g) 閉鎖金物のストップ装置

「標仕」表16.8.1では、フロアヒンジ、ヒンジクローザー(丁番形・ピボット形)、ドアクローザーについて、防火扉の場合ストップなしとされているが、これは防火区画に用いる防火戸を前提としたものである。

(h) 金物の寸法 個数(枚数)

「標仕」16.8.2(g)、(h)及び(i)では、金属製建具及び樹脂製建具に使用する丁番及び戸車並びに木製建具に使用する丁番、ビボットヒンジ,戸車及びレールについて、寸法、個数を細かく規定している。

なお、「標仕」表16.8.2の丁番の長さ127 (125)、152(150)は、それぞれ 5インチ、6インチをmmに換算した寸法なので、建具金物製造所によりばらつきがある。そのため、127 及び 152 は一般的な呼び寸法を表し、(  )内は最小呼び寸法を表している。

16.8.3 取付け施工

 

(a) 金物の取付け位置は、特記によるが、どこを基準とする寸法なのかを明記する。一般的な寸法は、次のようであり、図16.1.3に開き戸での錠、取っ手、丁番の位置、及び図16.1.4に引戸での引手、クレセントの位個の取り方を示す。

(1) 取っ手類の位置は、床上から高さ1.0m(押板類は1.1m)程度が一般的である。バックセットは「標仕」表16.8.1では、握り玉の場合 60mm以上、レバーハンドルの場合 50mm以上とされており、前者の場合 60~70mm、後者の場合50~60mmが一般的である。

(2)排煙窓に手動開放装置を設ける場合の位置は、16.1.7(b)(3)による。

(b) 金物の取付けは、水平垂直に留意して、建具が円滑に作動するように注意を払いながら、他部材との納まり具合(金物の作動時に他部材と接触しないなど)、戸と枠との適正な隙間、出入りを調整し、支持部材に堅固に取り付ける。

なお、取付けに際しては、戸や枠が正確に施工されていることを前提とするが、現実には、戸や枠に微妙な誤差が生じているため、両者を調整しながら取り付けることになる。

(c) 金物の取付けに使用するねじ類(小ねじ、タッピンねじ、木ねじ)は、所定の数量及び長さのものを使用する。「標仕」では、ねじ山が金属板に3山以上掛かるようにまた、ねじの先端が金属板の外に3山以上出るように規定している。

(d) フロアヒンジ等金物をコンクリートに埋設するものは、主要な構造躯体を損傷しないように配置する。やむを得ず梁等と取り合う場合は、主筋とぶつからないようにあらかじめ梁を下げるなどの処置が必要となる。また、フロアヒンジの内部に水が入らないよう、水掛りでは多少高目に取り付ける必要がある。周囲がカーペット敷きの場合は、鋭いカバープレートの角が靴に当たるので、角がとがらない特殊なカパープレートを用いたり、フロアヒンジを低く取り付け、戸を上げてカーペットに擦らないようにする。ただしその場合は特注品となる。

(e) 金物の取付け後、金物のきしみ、緩み、がたつき、建具の異常な応力、たわみ変形等が生じず、円滑に作動するように調整及び確認を行う。

16.8.4 鍵

(a) マスターキー

鍵(キー)は、各錠ごとに異なっているが、建物管理上は多くの鍵を持ち歩くことになり、極めて不便である。そのため多数の錠を一つの鍵で操作できる鍵(マスターキー)を作ることになる。「標仕」では、マスターキーの扱いについては、特記によるとしている。錠と鍵の関係を組織的に管理する方式をキーシステムといい、表16.8.2に示すような方式がある。

なお、一つの建物に2以上の製作所の錠を使用する場合や施錠システムが異なる錠を混用する場合は、マスターキーを1つにすることは難しい。

表16.8.2 キーシステムの種類

(b) 製作者、施工者及び監督職員、場合によっては施設管理担当者の立会いのうえ、錠と鍵を照合し、確認する。特に操作が複雑と思われる金物は、操作取扱説明書を提出させ、必要に応じ施設管理担当者立会いのもとで操作実習を行う。

(c) 鍵は、整理し、鍵箱に収納して提出させる。「標仕」では、鍵箱は、鍵の個数に応じた鋼製の既製品としている。また、フック棒等の金物の付属部品もそろえて引き取る。

なお、コンストラクションキーシステムを用いた場合は、工事用シリンダーから本設シリンダーに切り替えたのち、不用になった工事用の鍵を提出させて、その確認を行う。

(d) 「特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律」(平成15年法律第65号)に基づき、「指定建物錠の防犯性能の表示に関する基準」が平成16年4月より施行されている。

(-社)日本サッシ協会、(-社)日本シャッター・ドア協会及び (-社)カーテンウォール・防火開口部協会では、 日本ロック工業会の協力を得て、子鍵の袋の中に同法第7条に規定された表示カードを入れることで正確な情報が建物の発注者、使用者に間違いなく届くように指導している。

16.8.5 JIS、資料他

(a) 錠を構成する部品の名称等を表16.8.3及び図16.8.5に示す。

表16.8.3 錠を構成する部品の名称及び機能

図16.8.5 錠を鋼製する部品の形状例及び名称

(b) 建具用金物関係のJIS

(1) JIS A 1541-1(建築金物一錠ー第1部:試験方法)

JIS A 1510-1は廃止となり、2006年にJIS A 1541-1が制定されている。この規格では、錠に対する試験条件、試験装置及び試験方法が規定されている。試験項目としては、耐久性試験、強度試験、耐食性試験、安定性試験、電気的試験、シリンダの耐じん性試験、表面仕上げ試験が規定されている。

(2) JIS A 1541-2(建築金物 – 錠 – 第2部:実用性能項目に対するグレード及び表示方法)

この規格では、建築物の開口部の戸に用いる錠の実用性能項目、

① 使用頻度による性能
② 外力に対する性能
③ 使用扉の質量による性能
④ かぎ(鍵)違い.
⑤ デッドボルトの出寸法

⑥ 耐じん性能

の6項目について、それぞれのグレード及び表示方法について規定されている。

JIS A 1541-2で規定されている6項目の性能について、表16.8.4から表 16.8.9に示す。

表16.8.4 使用頻度による性能(JIS A 1541-2 : 2006)

表16.8.5 外力に対する性能(JIS A 1541-2 : 2006)
表16.8.6 使用扉の質量に対する性能(JIS A 1541-2: 2006)

表16.8.7 かぎ(鍵)違い(JIS A 1541-2 : 2006)

表16.8.8 デッドボルトの出寸法(JIS A 1541-2 : 2006)

表16.8.9 耐じん性能(JIS A 1541-2: 2006)

(3) JIS A 1510-2(建築用ドア金物の試験方法ー第2部:ドア用金物)

建築物の開口部の戸に使用する金物のうち、丁番、グラビティヒンジ(トイレブース等に使用するせり上り丁番をいい、閉戸は戸の自重によって行われるもの)、戸当り、上げ落し、用心鎖及びガードアーム(鎖の代わりに棒状ループ状又は板状の部品を用いて開戸を制限するドア用金物)の試験方法について規定されている。

(4) JIS A 1510-3(建築用ドア金物の試験方法ー第3部:フロアヒンジ、ドアクローザ及びヒンジクローザ)

(5) JIS A 5545(サッシ用金物)

JIS A 4706(サッシ)に規定するスライデイングサッシに使用する金物のうち、戸車及びクレセントについて規定されている。

(c) 錠及び吊り金物類の用語の解説を表16.8.10及び表16.8.11に示す。

表16.8.10 錠(その1)

表16.8.10 錠(その2)

表16.8.11 吊り金物類(その1)

表16.8.11 吊り金物類(その2)

16章 建具工事 9節 自動ドア開閉装置

16章 建具工事

9節 自動ドア開閉装置

16.9.1 適用範囲

(a) この節では、建築物の出入口に使用する標準的なスライデイング及びスイングタイプの自動ドア開閉装置(以下、この節では「開閉装置」という。)を対象としている。

開閉装置とは、JIS A 4702 (ドアセット)に規定するドアセットに開閉のための制御部及び駆動部(懸架部を含む。)を取り付け、歩行者等を検出する検出装置(以下「センサー」という。)の信号でドアが開閉する装置のことである。

(b) 施工計画書の作成は,16.1.1(c)を参照する。

(c) 開閉装置の施工範囲は、関連工事との区分を明確にすることが必要である。

16.9.2 性 能

標準的な開閉装置の性能値は、「標仕」表16.9.1及び2に示されているが、ドアの質量,面積がこれを超える場合は.設計図書に性能が特記される。

また、自動ドアの安全対策については、全国自動ドア協会から「自動ドア安全ガイドライン(スライド式自動ドア編)」及び「多機能トイレ用自動ドア安全ガイドライン」が発行されているので参考にされたい。

16.9.3 機 構

(a) 開閉装置は、駆動装置、制御装置及びセンサーより構成される。図16.9.1はスライデイングドア用の納まりの例で各部の名称を示す。


図16.9.1 引分け開閉装置の納まりの概略図

(1) 駆動装置
動力部、作動部、ドア懸架部よりなり、制御装置から指令を受けてドアを開閉する。駆動方式には、表16.9.1に示すものがある。

なお、ドア懸架部とは、吊り戸車及びハンガーレールをいう。

表16.9.1 駆動方式の種類
(2) 制御装置

センサーから開閉信号を受けて駆動装置を制御する装置をいう。

(3) センサー

人体の自動検出又は人為操作によって制御装置へ制御を送る装置をいう。センサーには、表16.9.2に示すものがある。また「標仕」16.9.3(e)はドア走行部の安全を考慮して、すべてに補助センサーを併用することとしている。補助センサーには、図16.9.1にある補助光電スイッチのように、センサーと分かれている「分離型」と、センサーの中に補助センサー機能が含まれる「一体型」がある。

表16.9.2 センサーの種類

(4) ドアの開閉方式

表16.9.3に示すものがある。

表16.9.3 ドアの開閉方式の種類

(5) 自動扉機構については、「標仕」で要求する品質を満たすものとして(-社)公共建築協会の「建槃材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

(b) 停電及び電源を切った場合に、ドアは手動で開閉できるものとする。

(c) 開閉装置を床又は屋外に設置する場合は、絶縁低下を起こさず、また、支障なく使用できるなど、常に正常な機能を維持するため、開閉装置内部に水が浸入しても直ちに排水できる構造とする。

16.9.4 工 法

(a) 施工の注意事項は、次のとおりである。

(1) 建具枠及びドア等の取付けに十分耐え得る構造であることを確認する。

(2) 開閉装置を取り付ける前に、ドア回りの関連工事が、開閉装置の取付けやドアの作動に支障のないように施工されていることを確認する。

(3) 床又は屋外に設置する開閉装置の埋込み部分及びマットスイッチのマット敷込み部分には、呼び径65mm程度の排水管が設けられていることを確認する。

また、高齢者、障害者等の通過が予想される場合は、国土交通省大臣官房官庁営繕部整備課監修「建築設計基準及び同解説」3.5.3(4)[スライド式自動扉]による。

(4) マットスイッチのリード線の接続部は、自己融着テープ等で防水処理を行う。なお、多雪寒冷地で凍結のおそれがある場合は、電熱ヒーターを敷設するなどマットスイッチやガイドレール部分の凍結を防止する装置が必要である。

(5) 引戸は、全閉時での戸先隙間が一定で、また、ドアとガイドレール、無目及び中間方立との隙間が一定であることを確認する。

(6) 開き戸は、ピボット軸と駆動軸との同心、無目及び床埋込みケースの水平を確認し、また、ドア全周とサッシ及び床との隙間、全閉時での戸先隙間が一定であることを確認する。

(b) 取付け及び調整完了後に、表16.9.4に示す項目を確認する。

表16.9.4 取付け及び調整完了後の確認項目

表16.9.5 ドア質量とドア開速度・閉速度

(c) 「建築設計基準及び同解説」の自動ドアに関する項の抜粋を次に示す。

建築設計基準及び同解説

3.5.3 扉

(4) スライド式自動扉

高齢者、障害者等の通行を考慮し、開閉速度、センサー等を設定する。


図3.5.13 自動ドア感知域と留意事項

16章 建具工事 11節 重量シャッター

16章 建具工事

11節 重量シャッター

16.11.1 適用範囲

(a) この節では、主として建築物の屋内・外に使用する重量シャッターを対象としている。

(b) 重量シャッターのうち、防火シャッター及び防煙シャッターでは、「標仕」に定められている以外の事項は、JIS A 4705(重量シャッター構成部材)による。

(c) 外部に取り付けるシャッターは、耐風圧性に対する安全性を計算書等により確認する。

(d) 用語は、JIS A 4705の参考付図による(16.11.5(c)参照)。

16.11.2 形式及び機構

(a) 防火シャッターの大きさの制限は、一般的にはJIS A 4705による。また、防煙シャッターの内法幅は、昭和48年建設省告示第2564号で5m以下となっている。

ただし、平成10年の建築基準法改正に伴う性能規定化により、内法幅 5mを超える防煙シャッターも大臣認定によって認められることとなった。

(b) 新しい防火設備として、耐火クロス製防火/防煙スクリーンが、屋内用防火シャッターに代わって使用されることが多くなっている。これは、カーテン部を耐火クロスで構成した大臣認定品の防火設備又は特定防火設備である。鋼製シャッターに比べて軽量ではあるが、カーテン部の強度が劣るため、設置場所、用途等には注意が必要である。(-社)日本シャッター・ドア協会が作成した同製品の技術標準があるので、使用する場合には参考にするとよい。

(c) シャッター類は、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位に設置される場合が多いため、(-社)日本シャッター・ドア協会では、実績に基づき旧建築基準法施行令第87条に規定されていた計算式を採用した「シャッター・オーバーヘッドドア耐風圧強度計算基準」を使用している。

(d) 防煙シャッターのまぐさには、一般にシャッターが閉じた時、漏煙を抑制する遮煙装置を付ける。その例を図16.11.1に示す。


図16.11.1 まぐさ部の遮煙装置の例

(e) 開閉操作方法を大別すれば、表16.11.1及び図16.11.2のようになる。

上部電動式の手動時の操作は、鎖による巻上げ(クラッチ付き)又はハンドルによる巻上げがある。クラッチ付きとは、鎖をプーリーからはずさずに、電動作動させても鎖が巻き込まない装置である。

表16.11.1 重量シャッターの開閉操作方法の種類

図16.11.2 開閉操作方式

(f) リミットスイッチ、保護スイッチ

(1) リミットスイッチとは、シャッターが全開した場合又は全閉した場合に作動し、シャッターを停止させるスイッチである。

(2) 保護スイッチとは、リミットスイッチが故障した場合に作動し、シャッターを停止させるスイッチである。

なお、まぐさに取り付ける場合や二重リミットスイッチにする場合がある。まぐさに取り付けた例を図16.11.3に示す。


図16.11.3 まぐさに取り付けた保護スイッチの例

(g) スラットの不測の事故による急激な落下を防止する装置には、二重チェーン、急降下制動装置、急降下停止装置等がある。

なお、二重チェーンとは複列チェーン方式のことをいう。

(h) 障害物感知装置

(1) 人がシャッターに挟まれた場合、重大な障害を受けないようにする装置である。シャッターの降下時に、シャッターのほぼ開閉ライン内に障害となるものがあると、これを感知してシャッターを停止又は一旦停止後直ちに反転上昇させる装置で、大別して次の2種類がある。

(i) 接触型

座板等に感知部を設け、障害物に直接接触して停止又は停止後直ちに反転上昇するもの。

(ii) 非接触型

蹄害物にシャッターが接触しないで障害物を感知して停止するもの(光電センサー等)。

(2) 「標仕」では、電動式で日常使用される管理用シャッター及び一斉操作や遠隔操作等見えない場所から操作するシャッターには障害物感知装置を設けることとしている。

(i) 危害防止装置

(1) 煙感知器の非火災報により降下した防火シャッターに人が挟まれる事故が発生したために追加された機構で、建築基準法施行令第112条第14項第一号の改正により、平成17年12月1日から防火設備に設置が義務付けられた。「防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める件」(昭和48年12月28日 建設省告示第2563号、最終改正 平成17年12月1日 同土交通省告示第1392号)に基準が定められている(16.1.3 (d)参照)。これらにより、従米の二段降下方式は不適合となった。また、手動閉鎖装置により降下させた場合にも、危害防止装置が作動する構造とされた。

「標仕」16.11.2(d)(4)では、危害防止機構の条件として、(i)、かつ、(ii)とされているが、(ii)は法的根拠を明記したもので、現在は法に適合した装置は、(i) の障害物感知装置のみとなっている。

(2) 障害物感知装置(自動閉鎖形)

接触形の障害物感知装置で危害防止を図る方式。障害物が取り除かれたのちにシャッターが再降下して完全に閉鎖し、防火又は防煙シャッターの機能が果たされる。

(j) スラットの形状

(1) インターロッキング形のスラットを図16.11.4に示す。


図16.11.4 インターロッキング形スラット

(2) オーバーラッピング形(防煙シャッター)のスラットを図16.11.5に示す。

図16.11.5 オーバーラッピング形スラット

(k) 耐風圧性を高めるスラットのはずれ止め機構の例を図16.11.6に示す。製造所は、要求される耐風圧性能によりはずれ止め機構の例を設けている。一般に、耐風フックの数や強度により耐風圧性能を高めている。


図16.11.6 はずれ止め機構の例

(l) 重量シャッターについては、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4(e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.11.3 材 料

(a) 重量シャッターに使用する鋼板は、JIS G 3302(溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)又はJIS G 3312(塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)に基づき、鋼板の種類及びめっきの付着量は特記によるとされている。ただし、めっきの付着量は、特記がない場合、Z12又はF12を満足するものとされている。

一般的には、鋼板はJIS G 3302が使用されている。

(b) 主にまぐさ部の遮煙装置に使用する「遮煙材」は、JIS A 4705に示されており、スチール、クロロプレンゴム、ガラスクロス等がある。

16.11.4 形状及び仕上げ

(a) 「標仕」表16.11.2における「実厚表示」は特定防火設備(旧甲種防火戸)を想定しており、設計図書により防火シャッターを指定された場合、スラット等の鋼板の厚さは、平成12年建設省告示第1369号第1第四号により1.5mm以上としなければならない。

一般に製作所では、表示厚さ1.6mmで厚さの許容差の範囲を含めた実厚内で1.5 mm以上となる鋼板を使用している。

なお、防火性能を要しないステンレスのカバー等は、「標仕」表16.11.2の厚さを表示厚さとしてよい。

(b) 外部に取り付ける場合は、耐風圧性の強度計算によりスラットの厚さが1.6mmを超えるものを使用しなければならない場合もある。

16.11.5 工 法

(a) スラット相互のずれ止めは、スラット端部を折曲げ加工するか又は端金物を付ける。その例を図16.11.7に示す。


図16.11.7 スラット相互のずれ止めの例(JIS A 4705 : 2003)

(b) シャッターの室内側に近接して開き戸を設ける場合は、図16.11.8のような取合いに注意が必要である。


図16.11.8 シャッターと室内側の開き戸との関係

(c) JIS A 4705(重量シャッター構成部材)の抜粋を次に示す。

JIS A 4705 : 2003

1.適用範囲

この規格は、建築物及び工作物に使用するスラットの板厚が1.2mm以上でスラットに貫通部のない、内のり幅8.0m以下、内のり高さ4.0m以下の重量シャッター構成部材(1)(以下、(構成部材という。)について規定する。ただし、横引き又は水平引きのものには適用しない。

注(1) まだ組み立てていない状態のもの。なお、組み立てた重量シャッターを以下、シャッターという。

3. 構成部材の名称

構成部材の名称は、次による(付図4参照)。

付図4 構成部材の名称(一例)

4. 種 類

4.1 シャッターの種類
シャッターの種類は、表1による。
表1 シャッターの種類

4.2 構造による区分

構造による区分は、表2による。

表2 構造による区分

5. 品質及び機能

5.1 外 観

外観は、次による。

a) シャッターの外観は、使用上有害な曲がり又はさびなどの欠点があってはならない。

b) 防火シャッター及び防煙シャッターは、防火上有害な穴及びすき間があってはならない。

c) 防火シャッター及び防煙シャッターで座板にアルミニウムを使用する場合には、鋼板で覆う。

5.2 スラット曲げ強さ

外壁開口部に設置する重量シャッターのスラットは、次の規定に適合しなければならない。

なお、外壁開口部に設置する重量シャッターの耐風圧強度は、受渡当事者間の協議による。

a) 11.3に規定する試験を行い、レールからの脱落があってはならない。また、残留わたみ量は、スラット長さの1/200以下で、かつ使用上有害な変形が残ってはならない。 (11.3省略)

b) 載荷荷重は500N/m2以上とする。

5.3 巻取りシャフト

巻取りシャフトは、シャッターカーテンの荷重に耐える強度をもち、スラットを円滑に巻き取るものでなければならない。

5.4 軸受部

軸受部は、巻取りシャフト、シャッターカーテンの荷重に十分耐え、かつ、円滑な回転を保持するものでなければならない。

5.5 手動閉鎖装置

防火シャッター及び防煙シャッターに使用する手動閉鎖装置は、11.4h)によって試験を行い、シャッターが任意の位置で停止し、更に、確実に全閉できなければならない。(11.4h)省略)

5.6 連動閉鎖機構

防火シャッター及び防煙シャッターに使用する連動閉鎖機構は、11.4のi)、 j)によって試験を行い、シャッターが確実に全閉しなければならない。その自重降下における平均速度は、表3による。(11.4i及びj)省略)

表3 平均速度

5.7 温度ヒューズ装置

防火シャッターに使用する温度ヒューズ装置は、表4による。

表4 温度ヒューズ

5.8 障害物感知装置の種類

障害物感知装置の種類は、表5による。

表5 障害物感知装置の種類

5.9 シャッターの性能

5.9.1 遮炎性能
防火シャッター及び防煙シャッターは、1時間又は20分の遮炎性能をもつものとする。

5.9.2 遮煙性能
防煙シャッターは、11.1によって試験を行い、圧力差19.6Paのときの通気量が0.2m3/min・m2以下でなければならない。(11.1省略)

5.9.3 電動式シャッターの開閉機能
電動式シャッターの開閉機能は、11.4a)によって試験を行い、次の規定に適合しなければならない。(11.4a)省略)

a) シャッターの開閉は、円滑に作動する。

b) シャッターの開閉時の平均速度は、表3による。

c) シャッターの開閉の際、上限及び下限において自動的に停止する。

d) シャッターは、降下中に任意の位置で確実に停止できる。

e) 障害物感知装置付きのシャッターは、押しボタンスイッチなどの信号による降下中には、障害物感知装置が作動した際に、自動的に停止するか、又はいったん停止した後に反転上昇して停止する。

f) 障害物感知装置が障害物を感知するために要する力は、11.4e)によって試験を行い200N以下である。(11.4e)省略)

g) 障害物感知装置付きシャッターは11.4f)によって試験を行い、荷重計に伝わる荷重が 1.4kN以下である。ただし、衝撃荷重は除く。(11. 4f)省略)

h) 障害物感知装置(一般型)が作動した状態のままで停止した場合には、押しボタンスイッチなどによる再降下の信号を受けてもシャッターは降下してはならない。

i) 障害物感知装置(一般型)が作動したままの状態で停止した場合には、押しボタンスイッチなどによる開信号を受けたとき、シャッターは開動作する。

j) 障害物感知装置(一般型)が作動し、シャッターがいったん停止した後に反転上昇して停止した場合には、押しボタンスイッチなどによる再降下の信号を受けて閉動作したとき、障害物感知装置(一般型)は作動する。

k) 煙又は熱感知器連動機構による降下中には、障害物感知装置(一般型)が作動しても、シャッターは停止しない。

l) 煙又は熱感知器連動機構による降下中には、障害物感知装置(自動閉鎖型)が作動した際に、シャッターは自動的に停止する。

m) 煙又は熱感知器連動機構による降下中に障害物感知装置(自動閉鎖型)が作動し、自動的に停止した後、障害物除去後再降下する。

5.9.4 手動式シャッターの開閉機能

手動式シャッターの開閉機能は、11.4g)によって試験を行い、次の規定に適合しなければならない。(11.4g)省略)

a) シャッターの開閉は、円滑に作動する。

b) 開閉機のハンドル回転に要する力は80N以下、鎖などによる引き下げに要する力は 150N以下である。

c) シャッター自重降下時の平均速度は、表3による。

d) シャッターは、降下中に任意の位置で確実に停止できる。

e) 煙又は熱感知器連動機構による降下中には、障害物感知装置(自動閉鎖型)が作動した際に、シャッターは自動的に停止する。

f) 煙又は熱感知器連動機構による降下中に障害物感知装置(自動閉鎖型)が作動し、自動的に停止した後、障害物除去後再降下する。

6. 構 造

6.1 スラット

スラットのつづり方はインターロッキング形又はオーバーラッピング形とする(付図5参照)。(図16.11.4及び5参照)

スラット相互のずれ止めは、スラット端部を折り曲げ加工するか、又は端金物を付ける(付図6参照)。(図16.11.7参照)

6.2 軸受部
軸受部のアンカーボルトの断面積は、表6による。

表6 断面積

6.3 ガイドレール及びまぐさ

ガイドレール及びまぐさは、次による。

a) ガイドレールとスラットのかみ合わせ長さは、表7による。

表7 かみ合わせ長さ

b) 防煙シャッターのまぐさの遮煙機構は、シャッターが閉鎖したとき、漏煙を抑制する構造で、その材料は不燃材料、準不燃材料、又は難燃材料とする。

c) ガイドレール及びまぐさのアンカーボルト、又は棒銅の収付けは現場施工とし、その固定ピッチは600mm以下とする。

d) ガイドレールのアンカーボルト又は棒鋼の断面積は、0.63cm2以上とする。ただし、一般重量シャッター又は構造区分におけるB種では、0.5cm2以上とする。

6.4 ケース

防火シャッター及ぴ防煙シャッターに使用するケースは、スラットの巻き込み口及び建物の耐火構造のはり、壁、又は床などに防火上有効に覆われる部分を除いてその全周を鋼板で囲むものとする。

JIS A 4705 : 2003

16章 建具工事 12節 軽量シャッター

16章 建具工事

12節 軽量シャッター

16.12.1 適用範囲

(a) この節では主として建築物の屋内・外に使用するスラットの板厚が1.0mm以下で、スプリング式及び電動式の鋼製の軽量シャッターを対象としている。

(b) 軽量シャッターは、一般にスラットの厚さが 0.5、0.6、0.8、1.0mmのものがある。「標仕」表16.12.2では、0.5mmとしているが、強度上必要な場合には板厚を増すこと、防火設備の場合には実厚で 0.8mm以上とすることとされている。

(c) (b)以外については、11節を参照する。

16.12.2 形式及び機構

(a) 手動式の場合、スプリングによるバランス式であるため、電動式よりも開口寸法が制約されるので注意が必要である。

(b) シャッター類は、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位に設置される場合が多いが、この場合の風圧力については、16.11.2(c)を参照されたい。

(c) 手動式で開口幅が大きく、中柱を設けなければならない場合、中柱の風圧力に対する安全性に注意する。

(d) 電動式の場合の保護スイッチ及び障害物感知装置については、16.11.2(f)及び(h)を参照する。

(e) 軽量シャッターについては、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、 (-社)公共建築協会の「建築材医療・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.12.3 材 料

軽量シャッターに使用するスラットの材質は、JIS G 3312(塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)又はJIS G 3322(塗装溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)により、めっきの付着量は特記によるとされている。ただし、めっきの付着量は、特記がない場合、JIS G 3312はZ06又はF06、JIS G 3322はAZ90を満足するものとされている。

一般的には、スラットの材質はJIS G 3312が使用されている。

16.12.4 形状及び仕上げ

軽量シャッターを防火設備(旧乙種防火戸)とする場合は、平成12年建設省告示第1360号第1第二号イに実厚0.8mm以上と規定されている。

16.12.5 工 法

(a) 電動シャッターを他に出入口のない建物(車庫等)に取り付ける場合、シャッター本体を建物屋内に納めるとシャッターが全閉したまま故障した際、屋外から手動で開放できなくなるので、本体を屋外側に納めるか又はくぐり戸を設けるなどの注意が必要である。

(b) JIS A 4704 (軽量シャッター構成部材)の抜粋を次に示す。

JIS A 4704 : 2003

1. 適用範囲

この規格は、建築物及び工作物に使用するスラットの板厚 が1.0mm以下で、スプリング式及び電動式の鋼製の軽量シャッター構成部材(1)(以下、構成部材という。)について規定する。

注(1) まだ組み立てていない状態のもの。
なお、組み立てた軽量シャッターを、以下、シャッターという。

4. 種 類

シャッターの種類は.表1による。

表1 シャッターの種類


5. 品質及び機能

5.1 外 観

シャッターの外観は、使用上有害なねじれ、曲がり、さびなどの欠点があってはならない。

5.2 曲げ強さ

スラット、中柱及ぴ上げ落としの曲げ強さは、次による。
なお、外壁開口部に設置するシャッターの耐風圧強度は、受渡当事者間の協議による。
a) スラットは、11.1に規定する方法で曲げ試験を行い、レールからの脱落があってはならない。また、残留たわみ量は、スラット長さの1/200以下で、かつ、使用上有害な変形が残ってはならない。(11.1省略)

b) 中柱は、11.2に規定する方法で曲げ試験を行い、支持台からの脱洛があってはならない。また、残留たわみ量は、中柱長さの1/200以下で、かつ、使用上有忠な変形があってはならない。(11.2省略)

c)上げ落としは、11.3に規定する方法で曲げ試験を行い、使用上有忠な変形が残ってはならない。(11.3省略)

d) 載荷荷重は、500N/m2以上とする。

5.3 開閉機能

5.3.1 スプリング式

スプリング式は、11.4.1に規定する方法によって開閉試験を行い、表2の規定に適合しなければならない。(11.4.1省略)

表2 開閉力

5.3.2 電動式

電動式は、11.4.2に規定する方法によって開閉試験を行い、次の規定に適合しなければならない。(11.4.2省略)

a) 定格電圧による開閉
1) 開閉は、円滑に作動する。
2) 開閉時の平均速度は、毎分 3〜7mとする。
3) 開閉中に、任意の位置で確実に停止できる。
4) 開閉の際、上限及び下限において、自動的に停止する。
5) 開閉中、押しボタンスイッチを逆方向に操作しても、逆方向に作動しない。
6) 温度過昇防止器の作動によって、自動的に電源が遮断する。
7) 障害物感知装置(一般型)付きのシャッターは、押しボタンスイッチなどの信号による降下中、障害物感知装置が(一般型)作動した際に自動的に停止するか、又は停止後反転上昇して停止する。
8) 障害物感知装置(一般型)が障害物を感知するために要する力は、11.4.2 a)10) に規定する方法で試験を行い、200N以下とする。(11.4.2 a) 10)省略)
9) 障害物感知装置(一般型)付きのシャッターは、11.4.2 a) 11)に規定する方法で試験を行い、荷重計に伝わる荷重が1.4kN以下である。ただし、衝撃荷重は除く。 (11.4.2 a) 11)省略)
10) 障害物感知装置(一般型)が作動したままの状態でシャッターが停止している場合には、押しボタンスイッチなどによる再降下の信号を受けても、シャッターは降下しない。
11) 障害物感知装置(一般型)が作動したままの状態でシャッターが停止している場合には、押しボタンスイッチなどによる上昇の信号を受けたときシャッターは上昇する。
12) 障害物感知装置(一般型)が作動し、シャッターが反転上昇して障害物感知装置(一般型)の作動が解除した状態で停止した場合には、押しボタンスイッチなどによる再降下の信号を受けてシャッターが降下したとき、再度障害物感知装置(一般型)が作動する。

b) 電圧変動による開閉
1) 支障なく、円滑に作動する。
2) シャッターの位置に関係なく始動する。

c) 電源遮断時の開閉
手動によって、開閉できる。

6. 構 造

6.1 スラットのつづり方

インターロッキング形又はオーバーラッピング形とする(付図4参照)。スラット相互のずれ止めは、スラット端部を折り曲げ加工するか又は端金物を付ける(付図5参照)。(付図4及び5省略)

6.2 ガイドレール
ガイドレールは次による。
a) スラットとガイドレール(中柱)とのかみ合わせはスラットをどちらかに寄せたときにも、他端の有効かみ合わせの長さが20mm以上(端金物がある場合には、端金物の寸法を含む。)になるようにする。
b) 中柱を取り付けたとき、中柱が回転又はねじれを生じない構造とする。
c) 上げ落としは、中柱に堅ろうに収り付ける。

6.3 電装品
電動式のシャッターにおける電装品(電動開閉l機を除く。)は、関係法規に適合する。
参考 関係法規には、電気用品安全法に基づく、電気用品の技術上の基準を定める省令がある。

6.4 障害物感知装置(一般型)
電動式のシャッターに使用する障害物感知装置(一般型)の構造は.次による。
a) シャッターの電動降下中に障害物を感知し、シャッターを自動的に停止できるものとする。

7. 寸 法
7.1 シャッターの内のり幅及び内のり高さ
シャッターの内のり幅及び内のり高さは、付図6による。


シャッターの内法幅


付図6 シャッターの内のり幅、内法高さ

16章 建具工事 13節 オーバーヘッドドア

16章 建具工事

13節 オーバーヘッドドア

16.13.1 適用範囲

この節では、主として建築物の屋外に面して設置する標準的なオーバーヘッドドアを対象としている。

16.13.2 形式及び機構

(a) セクション材料の種類を表16.13.1に示す。「標仕」では特記がなければ、スチールタイプとしている。

なお、その他アルミニウムタイプとファイバーグラスタイプのセクション材を組み合わせたコンビネーションタイプもある。


表16.13.1 セクション材料による区分(JIS A 4715 : 2008)

(b) オーバーヘッドドアは、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位に設置される場合が多い。したがって、耐風圧性能は、一般にJIS A 4715(オーバーヘッドドア構成部材)による強さの区分により特記される。強さによる区分を超える風圧力の場合は16.1.7(a)(1)を参照されたい。

なお、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位に対する風圧力について、(-社) 日本シャッター・ドア協会では、「シャッター・オーバーヘッドドア耐風圧強度計算基準」を使用している。

(c) 開閉方式による区分を表16.13.2に示す。「標仕」では、特記がなければ、バランス式としている。

なお、開口高さが 4mを超えると、バランス式では手動での操作が困難になるのでチェーン式が望ましい。

表16.13.2 開閉方式による区分(JIS A 4715 : 2008)

(d) 収納形式による区分を表16.13.3及び図16.13.1に示す。「標仕」では適用を特記としている。

表16.13.3 収納方式による区分(JIS A 4715 : 2008)


図16.13.1 収納方式による区分(JIS A 4715 : 2008)

(e) 「標仕」では、電動式の場合では16.11.2(h)と同様に、見えない場所から操作するオーバーヘッドドアには、障害物感知装置を設けることとしている。

なお、電動式オーバーヘッドドアは、シャッターより降下速度が速いので、障害物に直接接触する前に停止する光電センサー等を用いた非接触形障害物感知装置とするのが望ましい。

(f) 一般的な各部の名称を図16.13.2に示す。


図16.13.2 各部の名称(JIS A 4715 : 2008)

(g) 開口の幅と高さ

セクション材料及び収納形式により開口の最大幅と最大高さは異なる。「標仕」で想定している数値を表16.13.4及び5に示す。表16.13.4に示すセクション材料別の最大開口幅での耐風圧性は、750Paである。したがって、要求される耐風圧性が大きくなれば、最大開口幅が表16.13.4より小さくなる。

表16.13.4 セクション材料による最大開口幅

表16.13.5 収納形式による最大開口高さ

(h) オーバーヘッドドアについては、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.13.3 材 料

(a) セクション材料による区分は、特記がなければスチールタイプとされている。この場合の鋼板は、JIS A 4715に規定されているJIS G 3302 (溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)又はJIS G 3312(塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)とされており、めっき付着量は、一般的にZ06又はF06を満足するものが使用されている。

(b) セクションに使用するアルミ板は、JIS H 4001(アルミニウム及びアルミニウム合金の焼付け塗装板及び条)とされている。

(c) セクションに使用するアルミニウム形材は、JIS H 4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)とされている。

(d) セクションに使用するファイバーグラス板は、JIS A 5701(ガラス繊維強化ポリエステル波板)とされている。

ファイパーグラス(ガラス繊維強化プラスチック:FRP (Fiberglass Reinforced Plastics))は、強度のあるガラス繊維を強化材とし、不飽和ポリエステル樹脂を用いて成形加工した複合材料である。

(e) ガイドレールは、「標仕」では、特記がない場合、JIS G 3302による溶融亜鉛めっき鋼板で、めっきの付着量Z27を満足するものとされている。

なお、海岸部等の環境下で腐食のおそれがある場合は、ステンレスの使用を検討する。

(f) ワイヤロープは、JIS G 3525(ワイヤロープ)又はJIS G 3535(航空機用ワイヤロープ)とされている。

(g) アルミニウム形材の表面は、JIS H 8602(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)に規定される複合皮膜の性能の種類B以上のものとされている。

16.13.4 形状及び仕上げ

ガイドレール及び支持金物は、溶接部分の補修を除いて塗装は行われていない。また、意匠を考慮した場合でも、ガイドレールの内側はローラーが走行するので、塗装は行われていない。

図16.13.3に一般的な断面を示す。


図16.13.3 ガイドレールの断面の例

16.13.5 工 法

(a) 加工、組立及び取付けは形状、寸法、取合い等を正確に行い、耐風圧性が低下しないように注意する。

(b) JIS A 4715(オーバーヘッドドア構成部材)の抜粋を次に示す。

JIS A 4715:2008

1.適用範囲

この規格は、建物及び工作物に使用するオーバーヘッドドア構成部材(1)(以下、構成部材という。)について規定する。

(1) まだ組み立てていない状態のもの。

なお、組み立てたオーバーヘッドドアを、以下、ドアという。

備考
オーバーヘッドドアとは開口部に対して上下に組み立てられた複数のセクションを天井又は壁に沿ってほぽ水平又は垂直に送り込んで収納するドアをいう。

3. 構成部材の名称(図16.13.2参照)

4. 種 類
4.1 セクション材料による区分(表16.13.1参照)
4.2 強さによる区分 強さによる区分は、次による。
50 風圧力 500Paに耐えるもの。
75 風圧力 750Paに耐えるもの。
100 風圧力 1,000Paに耐えるもの。
125 風圧力 1,250Paに耐えるもの。
4.3 開閉方式による区分(表16.13.2参照)
4.4 収納形式による区分(表16.13.3及び図16.13.1参照)

5. 品質及び機能
5.1 外観
外観は、使用上有害なねじれ、曲がり、さびなどの欠点があってはならない。

5.2 構成部材の品質

5.2.1 セクション
セクションの強度は、9.2に規定する方法で試験を行い、残留たわみは、セクション長さの1/100以下でなければならない。(9.2省略)

5.2.2 ワイヤロープ
ワイヤロープの引張強度は、ワイヤロープ1本にかかるドア重量の1/2に対して、安全率を5以上とする。また、ワイヤロープには変形、ほつれがあってはならない。

5.2.3 シャフト
シャフトは次による。
a) シャフトは、円滑な回転を保持する伸直な形状のものとする。
b) シャフトは、ドア重量を支え、かつ、スプリングによるねじりモーメントに対し十分な強度をもつものとする。

5.2.4 スプリング
スプリングは. ドアの重量及び収納形式に対応した良好なバランスを与える適切なものとする。

5.3 開閉機能
5.3.1 バランス式・チェーン式
バランス式及びチェーン式の開閉機能は、9.3に規定する開閉操作力試験を行い、表1の規定に適合しなければならない。(9.3省略)

表1 開閉方式による操作力

5.3.2 電動式

電動式の開閉機能は、9.3に規定する方法によって開閉試験を行い、次の規定に適合しなければならない。(9.3省略)

a) 開閉は、円滑に作動するものとする。
b) 開閉時の平均速度は、毎分5~20mとする。
c) 開閉中に、任意の位置で停止できるものとする。
d) 開閉の際、上限及び下限において自動的に停止するものとする。
e) 開閉中、押しボタンスイッチを逆方向に操作しても、逆方向に作動しないものとする。
f) 閉動作中、障害物感知装置が作動した場合、ドアは自動的に停止し、又は停止後開動作に転じて自動停止すること。
g) 障害物感知装置が作動したままの状態で停止した場合、又は作動不良の状態になったとき、再度閉信号を受けてもドアは閉動作をしてはならない。ただし、停止後自動的に開動作に転じる機構のものを除く。
h) 障害物感知装置が作動したままの状態で停止し、開信号を受けた場合は、ドアは開動作をしなければならない。
i) 電源遮断時においては、手動による開閉が可能でなければならない。

6. 構 造

6.1 セクション
セクションは、ヒンジによって屈曲可能に結合でき、セクションの上下には相じゃくり部をもつ機構とする。

6.2 スプリング
ねじりコイルばねを使用する。

6.3 ワイヤドラム
ワイヤロープの径に応じた溝付ドラムとする。

6.4 ワイヤロープ
JIS G 3525又はJIS G 3535による。

6.5 ガイドレール
ガイドレールの断面はほぼ溝形で、その内側をローラの回転部が滑らかに移動し、かつ、容易に逸脱しない形状のものとする。

6.6 電動開閉機 電動機の容量及び電源は、表2による。

表2 電動機の容量及び電源

6.7 電装品

電動式ドアにおける電装品は、次による。

a) 制御盤は、押しボタンスイッチ又はリミットスイッチからの信号によってドアの開・閉・停の動作を制御できるものとし、開閉動作中に逆動の押しボタンが押されても、逆動作しない回路とする。

b) 押しボタンスイッチは、押しボタン操作によって制御盤に信号を送り、開・閉・停の動作を操作できるものとする。

c) リミットスイッチは、ドアの開放又は閉鎖の動作を、その上限又は下限の位置で自動的に停止できるものとする。

d) 障害物感知装置は、光電センサなどの非接触形のものが望ましい。

e) 開口部の用途、環境などによって光電センサ以外の障害物感知装置を使用する場合の機能・構造・試験方法については、受渡当事者間の協議による。
f) 押し切り形(2)の押しボタンを使用し、かつ、押しボタン操作をする人がドアの開閉状態の安全を確認できる場合は障害物感知装置の設置を省略してもよい。

(2) 押しボタンを押している間だけドアが作動し、ボタンから手を離すとドアが停止する機構のスイッチ。

18章 塗装工事 1節 共通事項

18章 塗装工事

1節 共通事項
18.1.1 一般事項

(1) この章は、美装及び防食を目的とした建築物の内外部の塗装工事を対象としている。

対象とする素地は、木部、鉄鋼面・亜鉛めっき鋼面及びモルタル面・プラスター面等の左官塗り面、コンクリート面・ALCパネル面・押出成形セメント板面、せっこうボード・その他のボード面等である。

「標仕」での塗装工事は、一般的な工事現場(一部工場等)で行う常温での塗装を想定しており、工場等で行う焼付け塗装については対象外である。

なお、「標仕」各節名称(    )内の略号は、原則的には「JASS 18 塗装工事」に準拠したものである。

(2) 作業の流れを図18.1.1に示す。


図18.1.1 塗装工事の作業の流れ

(3) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(色見本の決定、施工(全体、部屋別、階別等)等の時期)
② 製造所名、施工業者名及び作業の管理組織
③ 塗装箇所及び素地若しくは下地の材料の種類による塗料の種別(防火材料の指定がある場合には認定品)並びに工程
④ 色調別による塗装範囲
⑤ 工場及び現場塗装の区分
⑥ 工法(はけ、吹付け、ローラー等)
⑦ 養生方法(施工中及び完了後)
⑧ 塗料の保管方法、安全管理の方法等

⑨ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

18.1.2 基本要求品質

(1) 塗装は建築物の内外部に施され、仕上げとしての美装の目的のみでなく、各種劣化外力(雨水、結露水、飛散・浮遊物質、二酸化炭素ガス、紫外線等)から塗装された材料を保護することによって、建築物の耐久性を向上させることを目的としている。

塗膜の性能に影響を及ぼす要因の一つとして、使用する塗料の耐久性があげられる。これは上塗り塗料だけでなく、中塗り、下塗り及び素地ごしらえに用いる材料についても同様である。これらの材料によって総合的な塗膜が構成され、硬化塗膜としての性能を発揮する。

したがって、塗装に使用する塗料その他の材料は、定められた品質及び性能を有するものとし、そのことが分かるように整理しておかなければならない。

(2) 塗装仕上り面の出来ばえとしての要求は、各塗り工程の種別であるA種、B種等としてグレードを指定される。実際の工事に際しては、要求に合わせて塗装部位ごとに、どの程度の出来ばえとするかをあらかじめ品質計画で定めておくことが必要である。

この仕上り面は、最終の上塗りだけではなく、各塗り工程ごとで考えるようにする。例えば、下塗りであれば次に塗る中塗りとの付着性を確保できるような面の状態となるように仕上げるとともに、所定の表面状態とする。

塗料の種類と塗装工程の組合せによっても、塗装の仕上りが異なることに注意することが重要である。

「標仕」では、一般的な塗装工程を考慮して、指定する標準的な工法、塗付け量、工程間隔時間及び最終養生時間等を守れば、所要の表面状態を確保できるようになっている。

(3) 硬化塗膜に対する要求性能としては、使用する塗料だけではなく適正な塗装工程との組合せで示されている。

塗膜は、所定の材料を所定の塗付け量、塗り工程で施工することによって要求される耐久性を有し、素地の耐火性等の性能を損なうものであってはならない。そのためには、これらの性能を阻害するような欠陥がない塗膜にすることは当然である。

塗膜の構成は耐久性に及ぼす影響が大きく、例えば、素地や塗膜の表面を調整するために使用するパテ材料の介在が著しい場合には耐久性が劣ってくる。このようなことを避けるためには、塗り工程の前に施す素地ごしらえの段階で、適切な処理を十分に行うことが重要である。

塗料に対する防火材料の認定は、所定の塗膜厚さで基材と同等の防火性能をもっものとして認められているものである。出来ばえを重視して、いたずらに厚く塗り過ぎることは防火性能に悪影響を及ぽすため、避けなければならない。

18.1.3 材 料

(1)「標仕」では、屋内で使用する材料の選定に当たっては、揮発性有機化合物の放散による健康への影響に配慮することにしている。

本章では、シックハウス症候群の原因物質の一つであると考えられているホルムアルデヒドに関して、屋内で使用する塗料からの放散量は、JIS等の材料規格において放散等級の規定がある場合には特記によることとし、特記がなければ、F☆☆☆☆の塗料を用いることにしている。

建築基準法に関連するシックハウス症候群対策及びホルムアルデヒド放散量等の詳細、また、告示対象及び告示対象外でJIS等に放散等級等が規定されている塗料の表示とその確認方法等は、19章10節を参照されたい。

(2)「標仕」では、防火材料の指定がある場合は、建築基準法に基づき、指定又は認定を受けたものとしている。防火材科の確認は、(-社)日本塗料工業会の防火材料等証明書又は製品容器の表示マークによればよい。図18.1.2に表示マークの例を示す。


図18.1.2 製品容器の表示マークの例

(3) 塗料の色は、繊細なものであり、大量の塗料を現場において混合して同じ色調とすることは不可能に近い。このため、上塗塗料は指定した色の色彩や品質にばらつきが生じないよう、製造所において調合を行う。

製造所での調合には、所定の期間が必要であるため、工程に適合する時期に設計担当者と色彩計画を打ち合わせて決定する。

なお、一度に調色することが可能な少量の場合に限って、標仕では、同一の上塗登料の製造所の塗料を用いて現場調色することを認めている。

(4) 「標仕」では、塗装に用いる副資材は上塗塗料の製造所が指定する製品とすることを規定している。

(5) 「標仕」で規定された塗付け量は被塗物に塗り付けた量を示し、ロスを含まない。塗付け量を測定する場合は平らな面で行う。また、施工時に調整用として加えたシンナー等は含まないものとする。

(6) 塗料の種類と適用素地

(ア)「標仕」で規定している塗料の種類と適用素地との組合せを、表18.1.1に示す。

(イ)「標仕」では規定していないその他の主な塗料の種類と特徴を、表18.1.2に示す。

表18.1.1 塗料の種類と適用素地
表18.1.2 「標仕」に規定されていない主な塗料の種類と特徴

18.1.4 施工一般

(1) 塗装準備
(ア) 塗料の状態

(a) 搬入された塗料及び溶剤(シンナー)は、消防法等による危険物に指定されているものが多く、保管、貯蔵に当たっては、これら法令等を厳守しなければならない。

(b) 消防法関連法令とその略称を表18.1.3に示す。

表18.1.3 消防法関連法令とその略称

(c) 危険物と指定された塗料容器には、危険物の類別、危険物の等級について図18.1.3の例に示すような表示をすることが義務付けられており、この内容に応じた対応をしなければならない。


図18.1.3 危険物の種別、等級の表示の例

なお、消防法で定められる第四類(引火性液体)となる危険物の等級区分は、次のとおりである。

① 危険等級 Ⅰ :特殊引火物(発火点が100℃以下のもの又は引火点が−20℃以下で沸点が40℃以下のもの)

② 危険等級Ⅱ:第一石油類(引火点21℃未満のもの)とアルコール類(炭素の原子数が1~3個までの飽和一価アルコール)

③ 危険等級Ⅲ:第二石油類(引火点が21℃以上70℃未満のもの)、
第三石油類(引火点が70℃以上200℃未満のもの)、
第四石油類(引火点が200℃以上250℃未満のもの)、
動植物油類(引火点が 250℃未満のもの)

(d) 現場で使用する塗料関係の危険物の指定、貯蔵等についての消防法及び関連法令の関連部分の抜粋を次に示す。

危険物の指定及び貯蔵に関する法令

消防法(昭和23年法律第186号、最終改正令和3年5月19日法律第36号)

第2条(用語の定義)
この法律の用語は左の例による。

⑦ 危険物とは、別表第1の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。

第9条の4(危険物等の貯蔵等の基準設定の市町村条例への委任)
危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量(以下「指定数量」という。)未満の危険物及びわら製品、木毛その他の物品で火災が発生した場合にその拡大が速やかであり、又は消火の活動が著しく困難となるものとして政令で定めるもの(以下「指定可燃物」という。)その他指定可燃物に類する物品の貯蔵及び取扱いの技術上の基準は、市町村条例でこれを定める。

② 指定数量未満の危険物及び指定可燃物その他指定可燃物に類する物品を貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の技術上の基準(第十七条第一項の消防用設備等の技術上の基準を除く。)は、市町村条例で定める。

第10条(危険物の貯蔵及び取扱いの制限等)
指定数量以上の危険物は、貯蔵所(車両に固定されたタンクにおいて危険物を貯蔵し、又は取り扱う貯蔵所(以下「移動タンク貯蔵所」という。)を含む。以下同じ。)以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱ってはならない。ただし、所轄消防長又は消防署長の承認を受けて指定数量以上の危険物を、10日以内の期間、仮に貯蔵し、又は取り扱う場合は、この限りでない。

② 別表第1に掲げる品名(第11条の4第1項において単に「品名」という。)又は指定数量を異にする2以上の危険物を同一の場所で貯蔵し、又は取り扱う場合において、当該貯蔵又は取扱いに係るそれぞれの危険物の数量を当該危険物の指定数量で除し、その商の和が1以上となるときは、当該場所は、指定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱つているものとみなす。

③ 製造所、貯蔵所又は取扱所においてする危険物の貯蔵又は取扱いは、政令で定める技術上の基準に従つてこれをしなければならない。

④ 製造所、貯蔵所及び取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準は、政令でこれを定める。

第13条(危険物取扱者)
政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、甲種危険物取扱者(甲種危険物取扱者免状の交付を受けている者をいう。以下同じ。)又は乙種危険物取扱者(乙種危険物取扱者免状の交付を受けている者をいう。以下同じ。)で、 6月以上危険物取扱いの実務経験を有するもののうちから危険物保安監督者を定め、総務省令で定めるところにより、その者が取り扱うことができる危険物の取扱作業に関して保安の監督をさせなければならない。

② 製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、前項の規定により危険物保安監督者を定めたときは、遅滞なくその旨を市町村長等に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。

③ 製造所、貯蔵所及び取扱所においては、危険物取扱者(危険物取扱者免状の交付を受けている者をいう。以下同じ。)以外の者は、甲種危険物取扱者又は乙種危険物取扱者が立ち会わなければ、危険物を取り扱ってはならない。

別表第1 (第2条、第10条、第11条の4関係)第四類抜粋

備 考

引火性液体とは、液体(第三石油類、第四石油類及び動植物油類にあっては、1気圧において、温度20度で液状であるものに限る。)であって、引火の危険性を判断するための政令で定める試験において引火性を示すものであることをいう。

十一
特殊引火物とは、ジエチルエーテル、二硫化炭素その他1気圧において、発火点が100度以下のもの又は引火点が零下20度以下で沸点が40度以下のものをいう。

十二
第一石油類とは、アセトン、ガソリンその他1気圧において引火点が21度未満のものをいう。

十三
アルコール類とは、1分子を構成する炭素の原子の数が1個から3個までの飽和一価アルコール(変性アルコールを含む。)をいい、組成等を勘案して総務省令で定めるものを除く。

十四
第二石油類とは、灯油、軽油その他1気圧において引火点が21度以上70度未満のものをいい、塗料類その他の物品であって、組成等を勘案して総務省令で定めるものを除く。

十五
第三石油類とは、重油、クレオソート油その他1気圧において引火点が70度以上200度未満のものをいい、塗料類その他の物品であって、組成を勘案して総務省令で定めるものを除く。

十六
第四石油類とは、ギヤー油、シリンダー油その他1気圧において引火点が200度以上250度未満のものをいい、塗料類その他の物品であって、組成を勘案して総務省令で定めるものを除く。

十七
動植物油類とは、動物の脂肉等又は植物の種子若しくは果肉から抽出したものであつて、1気圧において引火点が250度未満のものをいい、総務省令で定めるところにより貯蔵保管されているものを除く。

危険物の規制に関する政令
(昭利34年政令第306号、最終改正令和元年12月13日 政令第183号)

第1条の11(危険物の指定数量)
法第9条の4の政令で定める数量(以下「指定数量」という。)は、別表第三の類別欄に掲げる類、同表の品名欄に掲げる品名及び同表の性質欄に掲げる性状に応じ、それぞれ同表の指定数量欄に定める数量とする。

第1条の12(指定可燃物)
法第9条の4の物品で政令で定めるものは、別表第4の品名欄に掲げる物品で、同表の数量欄に定める数量以上のものとする。

第2条(貯蔵所の区分)
法第10条の貯蔵所は、次のとおり区分する。
1 屋内の場所において危険物を貯蔵し、又は取り扱う貯蔵所(以下「屋内貯蔵所」という。)

第10条 (屋内貯蔵所の基準)
屋内貯蔵所(次項及び妨3項に定めるものを除く。)の位置、構造及び設備の技術上の基準は、次のとおりとする。(省略)

別表第3 (第1条の11 関係)第四類 抜粋

別表第4 (第1条の12関係)

備 考

可燃性液体類とは、法別表第1備考第十四号の総務省令で定める物品で液体であるもの、同表備考第十五号及び第十六号の総務省令で定める物品で1気圧において温度20度で液状であるもの、同表備考第十七号の総務省令で定めるところにより貯蔵保管されている動植物油で1気圧において温度20度で液状であるもの並びに引火性液体の性状を有する物品(1気圧において、温度20度で液状であるものに限る。)で1気圧において引火点が250度以上のものをいう。

危険物の規制に関する規則
(昭和34年総理府令第55号、最終改正令和3年7月21日総務省令第71号)

第1条の3(品名から除外されるもの)
5 法別表第1 備考第十四号の組成等を勘案して総務省令で定めるものは、可燃性液体品が40パーセント以下であって、引火点が40度以上のもの(燃焼点が60度未満のものを除く。)とする。

6 法別表第1 備考第十五号及び十六号の組成を勘案して総務省令で定めるものは、可燃性液体量が40パーセント以下のものとする。

(e) 危険物貯蔵所の構造等に関して関係法令等には、主として次のような事項が定められている。

① 不燃材料で造った独立した平屋建てとし、周囲の建物から規定どおり離す。
② 屋根は軽量な不燃材料で葺き、天井は設けない。
③ 建物内の置場は、耐火構造の室を選ぶ。
④ 床には不浸透性の材料を敷く。
⑤ 消火に有効な消火器、消火砂等を備える。
⑥ 十分な換気を図る。
⑦ 窓及び出入口には防火設備を設ける。

⑧ 戸には戸締りを設け、「塗料置場」「火気厳禁」等の表示を行う。

(イ) 塗料の取扱い

(a) 塗料、シンナー等、化学物質を用いて施工する場合には、労慟安全衛生、環境対応への処置を行わなければならない。

(b) 有機溶剤中毒予防について

有機溶剤を使用して作業する場合の労働者の健康障害を防止するための措置については、労働安全衛生法、有機溶剤中毒予防規則等で、作業主任者の選任や取扱い上の注意事項等の掲示等が定められている。

① 有機溶剤作業主任者を選任しなければならない作業場所は、有機溶剤中毒予防規則第1条に次のように定められている。
 1)船舶の内部
 2)車両の内部
 3)タンクの内部
 4)ピットの内部
 5)坑の内部
 6)ずい道の内部
 7)暗きょ又はマンホールの内部
 8)箱桁の内部
 9)ダクトの内部
 10)水管の内部
 11)屋内作業場及び前各号に掲げる場所のほか、通風が不十分な場所
「通風が不十分な場所」とは、天井、床及び周壁の総表面積に対する窓その他の直接外気に向かって解放しうる開口部の面積の比率が3%以下の屋内作業場をいう。

通風が不十分な船舶の内部及び車両の内部については上記同様に取り扱う。

② 有機溶剤作業主任者の職務は、有機溶剤中毒予防規則第19条の2に次のように定められている。

事業者は、有機溶剤作業主任者に次の事項を行わせなければならない。

1) 作業に従事する労働者が、有機溶剤により汚染され又はこれを吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮すること。

2) 局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置を1箇月を超えない期間ごとに点検すること。

3) 保護具の使用状況を監視すること。

4) タンクの内部において有機溶剤業務に労働者が従事するときは、第26条各号に定める措置が講じられていることを確認すること。

(c) 安全データシート(SDS)

塗料は、複数の化学物質から構成されており、その有害物による労働者の労働災害を防止したり環境への影響を考慮して、製造業者はSDS (Safety Data Sheet:安全データシート)の交付を労働安全衛生法等で義務付けられている。

その内容には、次のようなことが記載されており、施工に当たっては、これらを十分に確認し、安全・衛生対策を講じて作業を進めるとともに、廃棄物の取扱いにおいても、(g)に示すような廃棄上の注意事項に基づき処理しなければならない。

1) 安全データシートを作業場所の見やすい場所に常時掲示し、又は備え付けるなどの方法により、労働者の利用に供すること。

2) 安全データシートを活用して、安全衛生教育を行うこと。

3) 安全データシートを確認して、化学物質に関わる労働災害を防止するために必要な処置を講ずること。

4) 廃棄物処理に際して安全データシートの「廃棄上の注意」に基づいた処理を行うこと。

5) 安全データシート「環境影響情報」等に基づき、第三者等への現境管理を行うこと。

6) 安全衛生委貝会において、取り扱う化学物質の有害性、その他の性質について関係者の理解を深めるとともに、その適切な取扱い方法について調査を行うこと。

(d) 製造物責任法(PL法)への対応

製造業者は、取扱い説明書、技術資料、警告ラベル、安全データシート(SDS)等を完備し、「製造物責任法(PL法)」(平成6年法律第85号)に基づいて対応し、施工業者への情報提供を徹底し、施工業者はこれら情報に従った作業及び廃棄物処理等をしなければならない。

(e) 化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)

① 職場で化学物質を取り扱う際に、その危険性又は有害性、適切な取扱方法等を知らなかったことによる爆発、中毒等の労働災害が発生している。このような労働災害を未然に防止するには、その化学物質の危険性又は有害性の情報が確実に伝達され、伝達を得た事業場は、その情報を活用して適切な化学物質管理を推進することが重要である。

国際的には、平成15年に引火性や発がん性等の危険有害性の各項目にかかわる分類を行い、その分類に基づいて絵表示や注意喚起語等を含むラベル及び安全データシート(SDS)を作成・交付することなどを内容とする「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」が、国際連合から勧告として公表された。このGHS国連勧告を踏まえ、表示・文書交付制度を改普した改正労働安全衛生法が、平成18年12月1日に施行された。容器にはGHSに対応するラベル表示をして、文書としてはGHSに対応する情報を含む安全データシート(SDS)を提供しなければならない。

国内では平成23年まで、MSDS(化学物質等安全データシート)と呼ばれていたが、国際整合の観点からGHSで定義されているSDSに統一された。

(参考GHS : Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)

② GHSに対応するラベルの例を図18.1.4に示す。ラベルには、「製品の名称」、「注意喚起語」、「絵表示(標章)」、「危険有害性情報」、「注意書き」、「供給者の特定」の情報が盛り込まれる。これらの概要を次に示す。

1) 「製品の名称」は、該当品の名称が記載される。

「成分」は、表示義務対象物質に該当するものが記載される。

2) 「注意喚起語」は、GHS付属書3又はJIS Z 7253 (GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法 – ラベル、作業場内の表示及び安全データシート(SDS))附属書Aに割り当てられた「注意喚起語」の欄に示されている文言(「危険」又は「警告」)が記載される。

なお、危険有害性クラス及び危険有害性区分等が決定されない場合は、注意喚起語の記載を要しない。

3) 「絵表示(標章)」は、GHS付属書3又はJIS Z 7253附属書Aに割り当てられた「絵表示」の欄に記載されている標章が記載される。

なお、危険有害性クラス及び危険有害性区分等が決定されない場合は、絵表示(標章)の記載を要しない。

4) 「危険有害性情報」は、GHS付属書3又はJIS Z 7253付属書Aに割り当てられた「危険有害性情報」の欄に示されている文言が記載される。なお、危険有害性クラス及び危険有害性区分等が決定されない場合は、記載を要しない。

5) 「注意書き」は、貯蔵又は取扱い上の注意等が記載される。

6) 「供給者の特定」は、表示する者の氏名(法人の場合は法人名)、住所及び地話番号等が記載される。


図18.1.4 GHSに基づくラベル表示の例

(f)化学物質に関するリスクアセスメント実施義務化への対応

労働者の安全を確保するため、化学物質の管理が非営に重要な事項である。 2012年、胆管がんが発症した事例が相次いだことから、2014年6月、労働安全衛生法が改正され、SDSが交付義務の対象となっている化学物質についてリスクアセスメント実施が義務付けられることとなり、2016年6月1日に施行された。

1) リスクアセスメント実施が義務付けられるのは、塗料を扱う全ての事業者である。

2) 化学物質を取り扱う際に生じるおそれのある負傷・疾病の重篤度と発生の可能性を調査し、労働災害が発生するリスクの大きさを評価するものである。

(g) 廃棄物処理への対応

塗料をはじめ各種の産業廃棄物は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(昭和45年法律第137号)等によって規制されているが、特に留意すべき事項は次のとおりである。

1) 廃棄物の減量化とリサイクルの推進
2) 廃棄物処理に関する信頼性と安全性の確保

3) 不法投棄対策等

工事に当たっては、これら法律に従って産業廃棄物を適正に処理することになるが、特に不法投棄防止のため、産業廃棄物管理票(マニフェスト)(1.3.11参照)が全ての産業廃棄物に適用されている。

したがって、産業廃棄物の発生時には、施工者が産業廃棄物の運搬又は処分の資格を有する業者との委託基準に準じて委託契約した業者に「マニフェスト」を交付し、明確な指示を与えて、処理しなければならない。

(ウ) 塗装作業への塗料の調整
(a) 希釈(粘度調整)

原則として、調合された塗料をそのまま使用する。しかし、貯蔵中に均ーな品質を保持するため施工時の条件に適した粘度より若干高い粘度の製品になっている場合、施工時の素地の状態により粘度を下げる必要がある場合、気温が低い場合等には、所定のシンナーや水等により希釈し塗装に適した状態に粘度を調整することができる。

(b) こし分け

塗料は貯蔵中に分離、沈殿、皮ばり、凝集等の現象を生じている場合があり、使用直前によく混合し、均ーな状態とする。

この場合、かくはん等で再分散しない沈殿物、皮ばり、凝集等は、必要に応じてこし分けする。これらの操作が不十分な場合には、塗装後の膜厚に色の分離や光沢低下等の欠陥を生じる場合がある。

(2) 塗装工法
(ア) 研 磨

塗装面を研磨する目的は、次に示すとおりであり、目的に応じた施工をする。なお、研磨紙等は、JIS R 6251(研磨布)及びJIS R 6252 (研磨紙)による。

① 下地表面に付着している汚れ等を除去し、付着性向上のために行う場合で、鉄鋼面、亜鉛めっき鋼面の塗装によく用いられる。鋳止めを工場で塗装し、現場に搬入後、次の工程を塗装する場合等に行う研磨がこれに当たる。この場合、塗装された下塗りの塗膜厚を減少させないように行う必要がある。

② パテ処理面等を平滑にし、仕上げの平滑度を上げる場合に用いるもので、パテを厚付けした場合には、先に粗目の研磨紙で荒研ぎし、次に細かい目の研磨紙で目的の平滑度を得る。

(イ)パテの塗付け工法

被塗物の不陸、凹凸、穴等を処理して塗装仕上げの精度を高めるために用いる工法で、素地面に直接施工する場合と、各工程間に行う場合がある。

パテは、硬化後研磨を行うため、厚塗りを行う必要がある。このためひび割れが 生じないように、顔料や充填材の配合が多くなっている。また、一般の塗料と比べて塗膜性能の向上を期待するものではないため、塗付け量は必要最小限とする。

パテ処理の工法には、パテかい、パテしごき、パテ付けの3種類がある。

① パテかい

局部的にパテ処理するもので、素地とパテ面との肌違いが仕上げに影響するため、注意しなければならない。

② パテしごき

素地とパテ面との肌がそろう程度に平滑になるようパテを残し、過剰なパテをしごき取る。

③ パテ付け

パテで全面を平滑にするもので、特に美装性を要求される仕上げの場合に行う。パテが厚塗りされるため、耐久性能を要求される仕上げの場合は不適当である。

(ウ)塗料の塗装工法
(a) はけ塗り

はけの毛間に塗料をよく含ませて、はけ目を均ーに塗り広げる伝統的な塗装手段である。

はけ塗りの特徴は、はけの材質、形状、寸法等を、塗料の種類、素地の種類、被塗物の形状等に応じて選択して用いることによって、いかなる素地や部位においても、均ーな塗膜厚さに仕上げることができる。

はけ塗りのチェックポイントは、次のとおりである。

1) 指定の塗料に適合した毛の種類、長さ、形状を用いているか。
2) はけは、よく洗浄され、ぬけ毛の生じないものを用いているか。
3) はけ塗りは、むらきり、はけ目通し等の操作をしながら、均ーに塗装しているか。

4) 仕上り面に、だれ、すけ、むら等が生じておらず、均ーに塗られているか。

(b) 吹付け塗り

吹付け塗りは、塗料を霧化状態にして被塗物に吹きむらのないように吹き付け、均ーな塗膜を形成する。

吹付け塗りは、エアスプレ一方式とエアレススプレ一方式がある。

① エアスプレ一方式

塗料を圧縮空気によって霧化させながら、その空気圧力でスプレーガンにより吹付け塗装する方法である。適用できる塗料の種類に限界があり、高い粘度では均ーに霧化せず、低粘度に希釈するため一般的に膜厚は薄い。また、塗装時の飛散が多く風の影響を受けやすいなどの欠点がある。

エアスプレ一方式の場合のチェックポイントは、次のとおりである。

1) 塗装開始前に周辺部分は十分に養生されており、また、適切な施工条件となっているか。
2) 塗料が所定の粘度に調整されているか。
3) スプレー塗装時の所定空気圧力に設定されているか。
4) 塗装作業の被塗物とスプレーガンとの距離が一定に保たれているか。
5) スプレーガンの運行速度は一定であるか。

6) スプレーパターンの形状は膜厚が均ーで、だれ、すけ、むら等の発生はないか。

② エアレススプレ一方式

塗料自体にポンプで10 ~ 20MPa程度の圧力を加え、スプレーガンのノズルチップから霧化して吹き付ける方法である。塗料自体に圧力を加えることができるため、高粘度や高濃度の塗料が塗装可能で、厚膜に仕上げられ、エアスプレ一方式に比べ飛散ロスも少なく効率的な施工ができる。

エアレススプレ一方式の場合のチェックポイントは、次のとおりである。

1) 塗料が所定の状態になっているか。
2) 塗料に適合したノズルチップが選定されているか。
3) 塗料が所定の圧力に加圧され、均ーに霧化し、スプレーパターンにテールが発生していないか。
4) 被塗物とスプレーガンとの距離及び運行速度は一定か。

5) 仕上り塗膜は厚さが均一で、だれ、すけ、むら等の発生はないか。

(c) ローラーブラシ塗り

ローラーブラシ塗りは、昭和30年代にアメリカから導入された塗装工法で、現在では、建築工事における塗装工法の主流となっている。ローラーブラシを構成しているアクリル又はポリエステル繊維等による塗料の含みがはけより多く、1回で広い面積に対して能率よく塗装できることが特徴である。隅角部、ちり回り等は、小ばけや専用ローラーを用いて均ーに塗る。

ローラーブラシ塗りのチェックポイントは、次のとおりである。

1) 塗料に適合した大きさ、毛の種類のローラーブラシを使用しているか。
2) 塗付け量に適合した毛の長さのローラーブラシを使用しているか。
3) 塗装時におけるローラーの回転は適切な速度で均ーに塗られているか。
4) 塗装作業はローラーマークをそろえて塗られているか。
5) 隅角部、ちり回り等は専用ローラー、小ばけ等で先行して塗られているか。

6) 仕上り面に、だれ、すけ、むら等が生じていないか。

(エ)各塗装工程の工程間隔時間及び最終養生時間

各塗装工程の工程間隔時間及び最終養生時間は、用いる塗料の乾燥硬化機構によって決まる。したがって、乾燥硬化の違いにより、次の工程に移る間隔時間を定める必要があり、また、最終工程には塗膜の使用可能までの時間を定める必要もある。

なお、工程間隔時間及び最終養生時間には、良好な塗膜形成と塗膜層間の付着性を得るために、塗料の種類によって次の工程に入るまでに一定時間以上必要な場合と、ある時間から定められた一定時間以内に次の工程に移らなければならない場合とがある。特に、水系塗料(水を主要な揮発成分とする塗料)では、気温が低く湿度が高いときに乾燥硬化が遅くなる。図18.1.5に示すように塗装・乾燥として最適な温度は20℃であるが、気温がそれよりも低くなるほど乾燥硬化が遅くなるため、良好な塗膜形成を確保するには、20℃施工時の標準工程間隔時間及び最終養生時間よりもそれぞれ長い時間が必要である。湿度についても高くなるほど乾燥硬化が遅くなることから、同様な注意を要する。

18.1.5 見 本

(1) 見本の作製

施工に先立ち、色彩計画によって決定された色、光沢、模様等の仕上げの状態について、見本塗板を作製する。

この場合、各工程が確認できるような工程塗りの見本とすることが望ましい。

(2) 見本の保管

設計担当者の確認を受けた標準見本は、最終検査時まで直射日光の当たらない場所で保管する必要がある。しかし、合成樹脂調合ペイント等の油変性塗膜は直接日光の当たらない場所に保管してあっても、徐々に反応が進行して色が変わるため、初期とは異なった色調になる場合もある。これらの見本については、事前に協議して合意を得て保管する。

18.1.6 施工管理

(1) 建築物の塗装は、内外装に施され、仕上げとしての美装のためだけでなく、各種劣化外力から被塗物を保護することによって、建築物の耐久性を向上させることを目的としている。

このため、各種の素地に塗装された塗膜が所定の品質を確保できるように施工管理を行う必要がある。

塗装工事にかかわる具体的な施工管理の項目は、概ね次のとおりである。

(ア) 塗装工程
 (a) 塗装前の素地の状態
 (b) 使用材料
 (c) 塗装方法
 (d) 下塗り、中塗りの工程後の下地の状態
(塗り工程の間隔時間、養生)
(イ) 塗付け量等

下塗り、中塗りの工程ごとに見本塗板との比較を行い、最終工程完了後「標仕」18.1.7により塗装面の確認を行う(18.1.7参照)。

(2) 施工時の条件
(ア) 乾燥硬化機構の種類

建設現場で用いられる塗料は、一般的に自然乾燥形塗料といわれ、その乾燥硬化機構には次の4種類がある。

① 揮発乾燥
塗料中の溶剤が蒸発するだけで塗膜を形成するもの。

(代表例:ラッカーエナメル)

② 揮発酸化乾燥
塗料中の溶剤が蒸発しながら樹脂が空気中の酸素と反応することで、塗膜を形成するもの。

(代表例:合成樹脂調合ペイント、油性系さび止めペイント)

③ 分散粒子融着乾燥
水又は溶剤中に分散している樹脂粒子が、水又は溶剤が蒸発することで融着し塗膜を形成するもの。

(代表例:合成樹脂エマルションペイント、非水分散形塗料)

④ 反応硬化乾燥(重合乾燥)
塗膜形成要素である樹脂と副要素である硬化剤を混合することによって反応が起こり、塗膜を形成するもの。

(代表例:2液形エポキシ樹脂エナメル、常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル)

(イ) 乾燥硬化の条件
塗料は含有成分を蒸発させたり、化学反応を生じさせて、乾燥硬化するため、施工時の温湿度に関する条件が重要となる。

図18.1.5は、一般的な塗装と養生に適する温湿度条件を示す。


図18.1.5 塗装作業と養生に適する温湿度条件

(ウ) 養 生

塗装工事における養生には、塗装しない部分に塗料が付着して汚れないようにする方法と、塗装した後の乾燥硬化過程で塗膜を正常に形成するため塗膜面に汚れが付着しないようにし、降雨、強風、直射日光等が当たるのを防いだり、温湿度を調節する方法がある。

18.1.7 塗装面の確認等

(1) 塗料及び塗膜の欠陥

塗装工事における欠陥の種類は、塗料状態における塗料の欠陥、塗装作業中における塗料の欠陥、塗装作業後における塗膜の欠陥及び塗装終了後の時間経過における塗膜の欠陥に分類でき、これらの欠陥の多くの場合は適切な予防処置を施すことにより避けることができる。これらの原因と対策を表18.1.4に示す。

(2) 塗装面の確認

塗装面の確認は、「標仕」表18.1.1による目視を標準としている。しかし、錆止め塗料塗りの場合は、塗付け量又は膜厚が防錆性能に大きく影響するため、次の方法により、これらの量又は厚さを確認することとしている。

(a) 現場における錆止め塗料塗りの場合は、膜厚測定が困難な場合が多いため、使用量から単位面積当たりの塗付け量を推定することを標準としている。

(b) 工場における鋳止め塗料塗りの場合は、電磁膜厚計等による膜厚測定の確認を標準とし、試験ロットの構成等は、施工者が品質計画で定めることとしている。

鋼製建具の工場錆止め塗装の膜厚に対する確認方法の例を以下に示す。

① 枠及び戸はそれぞれ別なロットとし、1組の作業班が1日に塗装した枠又は戸の全てについて、30個又はその端数を1ロットとする。

② 1ロットから1枠又は1枚を無作為に抽出し、膜厚を以下のように測定する。

1) 枠については、縦枠2箇所(左・右)及び上枠の中央部付近各1箇所、計3箇所を1回の試験とする。
2) 戸の両面について、上段、中段及び下段の中央部付近各1箇所、計6箇所を1回の試験とする。

3) 1箇所について3点測定し、その平均値をその箇所の膜厚とする。

③ 1回の試験の平均値が、規定された膜厚以上、かつ、全ての箇所の膜厚が規定された膜厚の85%以上の場合をロットの合格とし、これ以外を不合格とする。

④ 不合格となったロットは、全てについて再塗装し、上記に準じて再度確認を行う。

表18.1.4 塗料及び塗膜の欠陥に対する原因とその対策(その1)
表18.1.4 塗料及び塗膜の欠陥に対する原因とその対策(その2)
表18.1.4 塗料及び塗膜の欠陥に対する原因とその対策(その3)