1級建築施工管理技士 外壁工事 その他 EXP.J

建築品質 外壁その他の工事


070)エキスパンション・ジョイント

二つの構造体を接続する部分をエキスパンション・ジョイント(EXP.J)と呼ぶ。二つの構造体は、地震などで別々の変位をする。地震時にEXP.J部が壊れたり、雨水が浸入しないようにしなければならない。

1.躯体クリアランスを確保する

二つの構造体が大地震時に変位しても衝突しないように、それぞれの最大変位の和をEXP.Jのクリアランス(あき寸法)として確保する。各階におけるEXP.Jも同様である。


EXP.Jのクリアランス

2.変位角に対しての部材設計の考え方

どんな大地震が来ても何も損傷しない設計は現実的ではない。そこで、次のように地震による層間変形角に対してどの程度の仕様にするか目安としたい。層間変形角は構造形式によって変わるので、あくまで目安である。この部材設計の考え方は部位や重要度によっても判断が異なるので、建築主に確認する。

①小地震時の層間変形角(1/800)に対してはシールの打替えも必要ないこと。

②中地震時の層間変形角(1/400)に対してはシールの部分補修程度で済むこと。

③大地震時の層間変形角(1/100)には金物など二次部材は壊れてもやむを得ないが、脱落しないこと。

3.外部のEXP.Jの留意点

①変位量と動きにスムーズに対応できる納まりとする。EXP.Jは主にスライド型、蛇腹型、同面扉型の3タイプがある。


EXP.Jのタイプ

②法的な防火構造や防火区画を確実に遵守する。EXP.J部に耐火区画が必要な場合は耐火帯を設ける。

③雨水を内部にいれない。万が一雨水が入ってもそれを受けて外部へ排水する仕組みにする。笠木を片側固定とし、笠木とパラペットの隙間は止水ゴムなどで二重に雨水が入らないようにする。万が一入った水はその下の止水・排水シートで集めて排水する。


EXP.Jの例

1級建築施工管理技士 外壁工事 その他 外壁の汚れを少なくする方法

建築品質 外壁その他の工事


073)外壁の汚れを少なくする方法

外装の汚れは、立地条件、建物形状や壁面形態、外装材やシール材の選定等の要因が複合されて発生する。外壁は汚れても清掃やメンテナンスを頻繁に行うことは困難で、設計段階で建物形状や外装材の選定に配慮すれば、汚れにくく、いつまでも美しい建物を実現することが可能である。

1.立地条件に起因する汚れ

交通量の多い道路沿いや工業地域では亜硫酸ガス等の腐食性ガスが金属材料を腐食させ、排気ガスの親油性物質は外装材表面に固着する。亜鉛めっきは素地のまま使用せずに亜硫酸ガスに対する防食塗装などの対策が必要である。
沿岸地域では塩害対策として、外装に金属を使用する場合は、ステンレス、アルミニウム等の錆びにくい材料の選定や、溶融亜鉛めっき、塗装、ライニング等で表面を防錆被覆する。コンクリートの場合は、ひび割れに追従できる壁面塗膜防水等で被覆する。

2.外装の汚れやすい部位

①パラペットは天端の塵埃が雨で外壁を汚さないように、天端の勾配を屋上の内側に向けて1/10以上にするか、先端に水返しの立上がり金物などを設ける。

②塀もパラペットと同様に汚れやすい。塀の内側も外側も汚したくないので、天端をV溝にして排水機構を備える。

③開口部の面台部分からの汚れは、水切りをできるだけ大きく出すこと。面台のジョイント部のシールのへこみが水みちとなるので、シールの上にカバーを付ける。両端部は立上がりを設け、壁に伝わないようにする。

④斜め壁は汚れがひどくなるので、親水性塗料や光触媒塗料などの採用を検討する。屋根扱いにする方が望ましい。その場合、勾配屋根と同様に斜め壁の下部壁面を汚さないように、庇のような水切りまたは樋を設けたい。

⑤逆勾配の斜め壁は上部の外壁の雨水が伝って汚れる。また、雨に洗われにくく汚れやすい。上部に水切りを設け、壁面の清掃方法も検討する。

⑥外壁の縦目地を途中で止めるとをの下部が汚れる。縦目地下端に、流れ落ちる雨水を下部へ伝わないように水切りを設けるか、目地を下まで通す。

⑦建物のコーナー部は一般部に比べ、風の気流が乱れ塵埃が付着しやすくなる。鋭角なコーナー部をもつ建物は、汚れにくい外装材を検討する。

⑧調理室に設けられたガラリやフードの直下の壁面は、油の粒子が付着して著しく汚れる。油系の汚れの付きにくい親水撥油性の仕上げとする。ベントキャップ(換気口)の下部も同様である。水切りがしっかりついたものを選択する。

⑨シール材の選定を誤ると外装材を汚し、外装材の劣化を誘発する。塗装などの外装材とシール材には相性があるので注意する。

>(012) 防水工事・目地シール 参照

⑩熱線反射ガラスの反射膜面は室内側とする。反射膜面を屋外側で使用するとタイル目地から溶出したシリカがガラス面に固着して通常のガラス清掃では除去できない汚れとなる。


外装材が汚れやすい部位