1級建築施工管理技士 地下躯体工事 地下水対策

建築品質 地下躯体


023)地下躯体は地下水対策を

地下外壁は施工時の止水セパレーターまわりや打継ぎ部などから侵入する。地下のオープンカット工法などで掘削する場合は外防水が可能であるが、市街地では外防水は困難な場合が多い。半地下の建物で常水面が低くても、梅雨時など雨が続くと雨水が侵入する。地下は水の中と考えて、対策する必要がある。

1.地下外壁周囲に排水側溝と二重壁を設ける

地下外壁から地下水が入ることを前提に、排水側溝を設け、二重壁とする。側溝の排水口は柱間(スパン)に2ヶ所設け、地下ピットへ排水する。排水口は室内側から点検できるように点検口を設ける。
地下外壁だけでなく柱からも侵入することがあるため、柱まわりも二重壁とする。地下水位が低く、駐車場用途などの場合は側溝だけを設けて、二重壁の省略を検討してもよい。

2.底盤からも湧水が侵入する。

地下外壁と同じように底盤から湧水が侵入することもある。地下ピットを設け、湧水を集水ピットに集め、ポンプアップで排水する。基礎梁には連結管と通気管を設ける。底盤に勾配を設けたり、側溝を設けると躯体量が大幅に増えるため、通常はフラットとし、押し水でピットに集めることが多い。

3.湧水処理層は居室以外で計画する

底盤の上部に湧水処理層を設けて、二重床にし、湧水対策とすることもできる。湧水処理層を設ける時は、底盤に水勾配を設け、集水ピットに水を集めて排水する。集水ピットは点検口を設けていつでも点検ができるようにしたい。
地下水位より低いと常時湧水が流れ、エフロレッセンスなどで将来詰まったり、上部床に染み出すことも想定されるので、湧水処理層を採用するのは駐車場用途など居室以外とするほうが望ましい。

1級建築施工管理技士 地下躯体工事 地下ピット水槽の防水と点検

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024) 地下ピット水槽の防水と点検

地下ピット(基礎梁で囲われた床下の空間)は湧水槽だけでなく、雨水貯留槽、消火水槽、汚水槽、雑排水槽、中水処理槽などに利用される。火災発生時に消火水槽に水が無かったら一大事である。汚水が漏れても困る。汚水槽や雑排水槽では、槽の中で発生する硫化水素ガスなどによって、ピットの天井面のコンクリート躯体が侵される。これらを防ぐために適切な防水が必要である。

1.各水槽にとって最適な防水仕様を採用する

消火水槽、雨水貯留槽はポリマーセメント系塗膜防水(水反応閉鎖型)とする。汚水槽はエポキシ系塗膜防水を床、壁、天井の6面に施す。雑排水槽は排水する水質を確認し、防水仕様を決定する必要がある。蓄熱槽は断熱性を確保するため、アスファルト防水 + 断熱材 + 押えコンが必要である。

2.地下ピットの点検口は多めに設ける

地下階がある建物では全面がピットになっていることが多い。このピットの点検に入れるように床点検口を設ける。床点検口はメンテナンスのしやすさとピット内で迷わないために最低3スパンに1ヶ所は設けたい。床点検口から降りるタラップと基礎梁には人が通る人通孔(通常は径 600mm:構造設計者と協議)を設ける。タラップは後付けのはしごではなく、SUS製のものを躯体に打ち込まなければならない。人通孔も基礎梁の幅が広くて通りにくい時はつかみ金物を打ち込んでおくなどの配慮も必要である。
床点検口は化粧床タイプ、防臭タイプ、耐荷重タイプ、防犯施錠タイプなどがあり、用途に適したものを採用する。

3.地下ピットがなくても配管のメンテナンスを可能にしておく

地下のない建物でも便所や厨房などの配管のための地下ピットまたはトレンチが必要であり、メンテナンスのため床点検口を設ける。よく配管後に土を埋め戻して、床を施工する設計を見かけるが、配管の改修などの場合に土間を壊すことになる。少なくとも建物内の土間下は、配管の取替えができるように配管ピットを設けたい。

1級建築施工管理技士 地下躯体 EVピットの湧水対策

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025)エレベーターピットの湧水対策

エレベーターピットに湧水(地下水)が溜まって、頻繁に点検しなければならなくなる事例がある。地下水位を確認し、ピットの方が深い場合は湧水対策を考慮しなければならない。地下水位が年間で上下する場合は、上位でみる必要がある。

1.エレベーターピットの湧水対策

エレベーターピット(EVピット)内部には排水口を設けることができないため、EVピットの湧水はエレベーターの定期点検時に手で汲み出すことになっている。湧水が多いところでは定期点検では間に合わず、頻繁に点検しなければならない場合もあり、EV管理に支障をきたしている。一般にはEVピット内部は塗膜防水をしているが、外側からの水圧に対して防水効果は少なく、湧水対策は計画段階で考慮しておく必要がある。
対策は次のことが考えられる。

①地下水位が高いEVピットの地下外壁側は二重壁とする。
②EVピットの底盤は湧水処理層を挟んだ二重床とすると安心である。地下外壁の水もここへ導く。
③EVピットの周囲の底盤をEVピットより深くして、湧水ピットを設ける。

2.エレベーターピットと他の水槽は空ピットを介して

湧水対策だけでなく、隣接した水槽からの湧水がないようにしなければならない。消火水槽や汚水槽などの水槽類をEVピットと隣接させないように配置を検討する。どうしても近接して配置する必要がある場合はEVピットと水槽の間に空ピットを設ける。
これに関連して、汚水槽の周囲も空ピットにして、点検できるようにするのが衛生上望ましい。