1級建築施工管理技士 ガラス工事 カーテンウォールの性能

建築品質 ガラス工事


064)カーテンウォールの性能

ガラスカーテンウォール(以降CWとする)の施工図では、設計で要求された耐風圧性能などの諸性能値を満足していることを確認する。メーカーの既製型材は性能試験値があるが、実際には階高や、マリオンの無目の割付けや位置、そしてガラス仕様、取付け方法などがそれぞれが異なるため、納まりや性能について確認する。特にCWの端部、及び他部材との接合部での性能確認が重要である。

性能上の確認事項

①CWの耐震強度
設計用震度は、特記がなければ水平方向は1.0、鉛直方向は0.5とするが、直下型地震を想定して、鉛直方向も1.0にしたい。

②CWの耐風圧
建築基準法または学会指針による耐風圧を確認する。その風圧に耐えるガラスの厚さを確認する。(強化ガラスは使用不可)

③ガラス荷重の受け方
ガラス荷重を受けるセッティングブロックの位置、ガラス溝の排水孔位置を確認する。ガラス面の位置決めを確実にし、面クリアランスを確保する。合わせガラスや複層ガラスは重く、その荷重位置によっては無目材(CWの横材)が回転や変更することもある。

④部材の強度と断面設計
固定荷重、風圧力、地震力などを受けた時の部材や取付け金物(ファスナー)の強度と変形量、変位追随機構及び施工性を確認する。部材の強度だけでなく、無目材とマリオン(方立)などの接合部強度も確認する。

⑤CWの水密性能
水密性能は可動窓部で風圧の1/5、FIX部は風圧の1/2以上の値を確保する。目地部のシール断裂による浸入水は排水する。

⑥CWの層間変形追随性能
大地震時の層間変形書く(一般的に1/100、構造設計による構造体の変形角)に対して主要部材の破壊や脱落がないことが最も重要である。また、強風時の変形や熱伸びによる異音が発生しないようにし、ガラスの層間変形追従性能ではエッジクリアランスを確保する。

⑦CWの防火区画
スパンドレル部分(層間区画部)の耐火ボードの支持、仕上げ、マリオンの耐火被覆、防火区画がCWに取り合う部分の仕様を確認する。

⑧その他
結露処理、遮音性、定型・不定型シール材、メンテナンス(ゴンドラ荷重など)、施工性、非常進入口、防火設備、避雷設備なども確認する。
また、ガラスの色あいを決定する場合、スパンドレル部分はバックボードの色あいの影響を受けるので注意する。

1級建築施工管理技士 ガラス工事 網入りガラスのひび割れ防止策

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065)網入りガラスのひび割れ防止策

網入りガラスは透明フロートガラスよりひび割れしやすい。一般の窓よりトップライトに多く発生する。特にプールのトップライトでは、外部の雨水の浸入とプール内部の塩素を含んだ結露水の浸入の両方が考えられる。ガラス溝に水が入ると、網入りガラスや複層ガラスに悪い影響が出る。

1.網入りガラスの鋼線の防錆対策

網入りガラスの小口(切り口)は鋼線が引っ込んでいたり、飛び出していたりしている。

網入りガラスのひび割れ

この小口の鋼線が錆びてガラス小口を傷め、ひび割れる。また、ガラス小口強度が低下した部分から熱割れすることもある。鋼線が錆びる原因の一つにガラスシールが切れてガラス溝に水が浸入することがある。この浸入水を速やかに排水するように、サッシのガラス溝には、直径8mmの水抜き孔を3ヶ所設ける。

網入りガラスの小口処理

もう一つの防錆対策として、浴室やプールの窓、トップライトではガラスの小口の鋼線を折り曲げ、ブチルゴムテープ(厚さ1mm)を全周に張り、その上を防錆テープで保護する。その他一般のサッシの網入りガラスでは専用の小口防錆塗料を塗るか、または防錆テープを張る。

2.複層ガラスには水を近づけない

窓の結露防止だけでなく、省エネルギー意識の高まりから、複層ガラスの採用が多くなっている。複層ガラスは2枚のガラスの間に乾燥材入りスペーサーを挟んで高性能シールで密閉されている。この状態を保つために、

①ガラス溝に水が溜まらないようにすること
②高性能シールを紫外線から守ること
が重要である。

このためみ公共建築工事標準仕様書では、面クリアランス5mm以上や、ガラスの下部エッジクリアランス7mm以上、ガラスの掛り代15mm以上、ガラス溝の水抜き孔は直径6mmを3ヶ所以上設けるなど詳細に規定している。水抜き孔は直径8mm以上が望ましい。


複層ガラスの下部納まり

1級建築施工管理技士 ガラス工事 ガラスで怪我をしないために

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066)ガラスで怪我をしないために

ガラスは割れるものである。ついうっかりガラススクリーンに衝突したり、つまづいてガラススクリーンに当たったり、浴室で滑ってガラス戸で怪我をするなどの事故のケースがある。

1.ガラスを用いた開口部の安全設計指針

特に出入口まわりの事故が多く、これを防止するため、ガラスを用いた開口部の安全設計指針(建設省昭和61年5月31日付通達、平成3年4月4日付改定)が定められている。出入口とその近傍ではガラスが割れても怪我をしないように安全ガラスを使わなければならない。また、床面の近くにまでガラスが入った窓も安全ガラスにする。安全ガラスとは、割れても怪我をしにくいガラス、割れないガラスなどで、強化ガラス、飛散防止フィルム張りのガラス、合わせガラス、ポリカーボネート板などの樹脂ガラスをいう。


安全ガラスの範囲

2.人や物が当たる危険性がある場合は、衝突防止策

ガラスとわかり難いケースや、うっかり物を当てる可能性がある場合には、衝突防止のシールや安全柵の設置などが必要である。鉢植えの設置やディスプレイなどで、設置しないように運用上の配慮もできるが、これは次の対策である。

3.鏡は枠で固定する

壁や扉に鏡を張るとき、下地(合板や金属パネルなど)に接着材だけで取り付けるのはNGである。突然剥がれ落ち、怪我につながる。原因は接着材の経年劣化により接着力が無くなるため、或いは下地不良による接着力不足などのためであると考えられる。したがって、鏡の取付けは、接着力が無くなった時にも剥離、剥落しないように支持金物で機械的に固定することが重要である。また、鏡は湿気で裏面の銀引きが腐食する。湿気の多いところでは防湿性を有する鏡を使用する。鏡厚は5mm以上とする。


鏡の支持金物

1級建築施工管理技士 ガラス工事 自然破損する強化ガラス

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067)自然破損する強化ガラス

ガラスは人や物が当たらなくても割れることがある。網入りガラスも割れるが、他に熱線吸収ガラスなどの熱割れや強化ガラスの自然破壊もある。高所や高層ビル外壁でのガラスの破損は非常に危険である。

1.強化ガラスは自然破損する

強化ガラスは普通ガラスを700℃近くまでに熱したあと急冷してガラスの表面に圧縮応力を発生させて強くしたガラスである。この強化ガラスは自然破損することがある。
一つは表面の微細な傷が圧縮応力層に徐々に進行して、あるとき突然破損する場合である。これは強化ガラスドアなどで生じやすい。もう一つは強化ガラスの製造段階で不純物などが混じっていると、その部分から自然破損する場合である。この自然破損を少しでも無くすために、ヒートソーク処理(再加熱処理)を行ってから受け入れることが重要である。しかしこれでも自然破損が全くなくなるとは言えない。そこで強化ガラスが万が一割れて落下しても、人を傷つけない高さで使用する。学校では学校用強化ガラス( t=4、5など)を用いるが、この場合は床面から12m以下で使用する。その他の建物の強化ガラスは3m以下で使用し、それ以上の場合は飛散防止フィルムを張るか、合わせガラスを使用する。飛散防止フィルムは劣化するので、定期的な点検やメンテナンスが必要である。

高層ビルで使用する倍強化ガラスや耐火ガラス、防火ガラスも強化ガラスであり、自然破損して落下する可能性があるので、ビル外壁に強化ガラスは使用しない。強化ガラスを使う場合は合わせガラスを使う。強化ガラスの日本のメーカー保証は、一般に10年である。しかし、施工費や仮設足場などの費用は別途発生するので、予め建築主への説明が必要である。

2.ガラスは熱割れすることがある

熱線吸収ガラスや熱線反射ガラスは熱割れすることがある。これは日射熱による熱応力によって破損を起こす現象である。透明ガラスでもまれに熱割れする。ガラスのエッジ強度が弱かったり、ガラス裏面の空間が少なく熱がこもったり、裏面の色が熱吸収しやすい濃色であったり、ガラス裏面にフィルムを張ったり、ガラス面の一部が影になったりする場合は熱割れする可能性がある。

対策は熱割れしにくい状態にするか、強化合わせガラスにするなどが必要である。ガラスブロックも裏面を塞ぐと熱割れしやすいのは同じである。カーテンウォールのスパンドレル部分など熱割れが予想される場合は、ガラスメーカーに確認する。

1級建築施工管理技士 ガラス工事 ガラスブロックの弱点

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068)ガラスブロックの弱点

ガラスブロック(JIS A5212)は遮音性が良く、光を通しながらプライバシーを守るなどの機能を持っている。しかし、ガラスブロックは目地から水が入りやすく、ガラスブロックの熱膨張や地震の変位によってガラスブロックが割れることがある。

1.ガラスブロック専用アルミ枠を用いる

ガラスブロックを採用するときは、まずガラスブロック専用アルミ枠を用いる。この専用枠は上枠・縦枠に緩衝材を入れることができ、ガラスブロックの地震時の変位や熱膨張を吸収してくれる。ガラスブロックの緩衝材は地震時の変位に対応できる厚さとする。また、下枠は目地に入った水を排水する水抜き孔(径8mm以上、ピッチ1m)を設ける。


ガラスブロックのおさまり

2.目地部はすべてシール材にする

ガラスブロックが雨がかりにあるときは全ての目地をシールし、目地部からの雨水の浸入を止める。シールはガラスブロックや外壁を汚しにくいポリイソブチレン系のシールが望ましい。

3.力骨などはステンレス材とする

ガラスブロックにかかる耐風圧や地震力(面内・面外)などの力に対して、縦横600mm間隔の目地部に力骨(補強材)を入れる。力骨の繋ぎ筋や補強筋はステンレスのSUS304を使用する。

4.大断面のガラスブロック壁には伸縮目地を設ける

ガラスブロックのユニットの高さは6m以内とし、荷重はユニットごとに受ける。大断面のガラスブロックは5m以内ごとに伸縮目地を設ける。高さ方法はユニットごとに伸縮目地を設ける。

1級建築施工管理技士 ガラス工事 高窓の清掃方法

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069)高窓の清掃方法

窓は建物のデザイン要素として重要である。高い位置に設けるハイサイドライトや枠をシンプルにした外壁同面のFIX窓、景色を額縁に納めたような窓、連窓でパノラマのような窓、大きな片開き窓など、どれも意匠を考えた窓である。しかし、窓ガラスの清掃について考慮されていないケースも見受けられるので注意したい。

1.清掃しやすい窓にする

最も清掃しやすいのは引き違い窓で、網戸の清掃やガラスの取替えも容易である。軸回転窓、滑り出し窓も清掃しやすい。大型の窓ではドレーキャップ窓のような、換気時内倒し、清掃時内開きにできる機構が付いた窓もある。一方片引き窓は、障子が外動でも内動でも、室内側からガラスの外面を清掃することができない。片開きの窓も清掃しにくい。FIX窓はもちろん不可能である。特に住宅では清掃のしやすが重要である。


清掃しやすい窓、しにくい窓

2.清掃方法は設計時に確認する

室内から安全に清掃できるのが望ましい。もちろん1階であれば、外部から清掃できれば良い。3階までは高所清掃具を用いれば清掃は可能である。


高所清掃具による清掃

屋上からぶらさがって清掃する場合は、屋上に吊環(メンテナンス用金物)を計画することも必要である。高層ビルでは自走式清掃ゴンドラが必要になる。屋上に自走式ゴンドラを設置するときは走行振動音が下階に伝わらないように防振機構を設けたり、速度制限を設けるなども考慮する。低層部の高い吹抜けや軒天井の下のガラス面は、天井吊りのチェアーゴンドラなどを検討する。


高所の清掃

設計段階で建築主に窓ガラスのメンテナンスに対する考えや方法を説明し確認する。施工者も工事の早い段階で確認すれば対応が可能である。