配筋標準 11 壁

配筋検査のつぼ⑪ 壁の配筋


11° .壁

11-1 壁と柱・梁とのおさまり

①壁筋の継手は、壁内とし、柱・梁に設けない。

②壁筋の柱・梁内の定着方法は、図11-1-2~図11-1-4による。

③壁の第1ヨコ筋とタテ筋は、柱面・梁面から100mm以内かつ柱主筋・梁主筋から設計間隔以内に配置する。

④壁端部および開口部の小口補強要領は、図11-3による。

⑤最下階のおさまりは、地下外壁の図11-4による。






★ポイント
①壁筋の継手は、柱・梁に設けない。(壁内であれば位置は限定されない。地下外壁の継手位置は図11-4-5による)

②壁筋の柱・梁への定着は、柱・梁主筋の内側に、コンクリート面から定着長さL2とする。

③壁の第1鉄筋位置は柱面・梁面から100mm以内かつ柱主筋・梁主筋から設計間隔(壁筋ピッチ)以内に配置する。

④柱主筋・梁主筋の外側を通る壁筋の定着は、投影長さをL2かつD/2以上とし、90° フック定着(余長8d以上)または斜め折り曲げ定着とし、かつA部の条件(図11-1-5)に従う。

⑤A部の条件とは、壁筋の終端を8dかつ150mm以上、帯筋・あばら筋外面から内側に入れることである。

※先端90° フック定着の場合、A部の条件とともに、余長としての直線部分が8d以上必要となるので、注意する。

★梁鉄筋を落とし込み工法とする場合、梁と干渉する壁筋は梁手前で止めてしまうことがある。梁を落とし込んだ後に、添筋し、梁に定着しなけらばならないので注意する。


11-2 壁と壁・スラブのおさまり

①タテ筋補強は、D13以上かつ壁タテ筋最大径以上とする。

②ヨコ補強筋は、D13以上かつ壁ヨコ筋最大径以上とする。

③ダブル配筋で入隅部のタテ筋補強位置は、壁タテ筋と同一位置とする。

④定着長さL2は、折曲げ開始点からの長さとする。


★ポイント
★壁の直交部にはタテ筋補強、壁とスラブの接合部にはヨコ補強筋を配列する。

①ヨコ補強筋は、D13以上かつ壁ヨコ補強筋最大径以上とする。

②ダブル配筋で入隅部のタテ筋補強は、壁タテ筋と同一位置に配筋する。

③壁筋を壁またはスラブへ定着する場合、余長(曲げ開始点から)でL2確保する。

④ヨコ筋ピッチが異なる壁の隅角部のおさまりは、両側へ余長L2で定着する。

★壁の隅角部はかぶり厚さが不足しがちであるので、差し筋段階から注意を払って配筋する。


11-3 壁端部・開口部小口補強

★ポイント
①壁端部・開口部の小口にはコ形補強筋を配筋する。
・耐力壁の場合は、壁筋と同径・同ピッチとする。
・非耐力壁の場合は、壁筋と同径・倍ピッチとする。


11-4 地下外壁

①地下外壁壁筋の定着は、図11-4-1~図11-4-4による。

②地下外壁の壁筋の継手は、地下外壁内とし、柱・梁に設けない。(図11-4-5)

③e1、e2は構造図による。
e1は壁外面と柱外面のずれ、e2は壁外面と梁外面のずれとする。70mm以上の打ち増し部補強は、打ち増し補強要領による。

④土に接する側のタテ筋・ヨコ筋は原則として柱・梁主筋の外側を通す。





★ポイント

⑤地下外壁の壁筋の継手位置は、図11-3-5による。地下2階以上の場合は地下外壁リストを確認する。(継手の好ましくない位置に重ね継手を設ける場合は、継手長さをL1+5d以上とする)

⑥図中のe1、e2は、構造図による。

⑦壁上部のおさまりで、「L2かつあばら筋直下まで」の寸法の起点が梁面であることに注意する。

⑧A部の条件については、図11-1-15 による。


★地下外壁の壁筋と、山留めに設けたセパ受けアングル等のかぶり厚さを確保する。

配筋標準 12 開口補強

配筋検査のつぼ⑫ 開口補強


12° .スラブおよび非耐力壁の内壁の開口補強

①一辺の最大寸法が700mm以下の開口に対するスラブ補強は、図12-1-1による。

②開口が連続するスラブの場合および片持ちスラブに開口を設ける場合の補強は構造図による。

③スラブ開口の最大径が両方向の配筋間隔以下で、鉄筋を1/6以下の勾配で曲げること、または50mm以下でずらすことにより開口から設計かぶりを確保できる場合は、補強筋は省略することができる。

④一辺の最大寸法が700mm以下の開口に対する非耐力壁の内壁の壁開口補強は、図12-1-2による。

⑤耐力壁、非耐力壁の外壁および開口が連続する壁の場合の開口補強は構造図による。

⑥壁開口が柱または梁に接する場合、接する柱・梁の部分には補強筋は省略できる。

⑦壁開口の最大径が配筋間隔以下で鉄筋を1/6以下の勾配で曲げること、または50mm以下でずらすことにより開口から設計かぶりを確保できる場合は、補強筋は省略することができる。


図12-1-3 壁開口部が柱または梁に接する場合の配筋要領

★ポイント
①開口のために切断した鉄筋は、その両サイドに振り分けて配筋する。

②斜め補強筋は、コーナー部のかぶりを確保した上で、できるだけコーナー部へ寄せる。

③スラブの斜め補強筋は、スラブ配筋がダブルの時は上端筋のすぐ下に設置する。

④フェローデッキ、QLデッキの開口補強は異なるので、構造図による。

配筋標準 13 打増し補強要領

配筋検査のつぼ⑬ 打増し部配筋要領


13° .柱・梁・壁・スラブ打増し部配筋要領

①構造図に記載のない打増しを行う場合は事前に監理者と協議すること。

②柱・梁の打増し部に耐力壁が取り付く場合の打増し配筋要領は構造図による。

③打増し寸法 a、a1、a2が70mm未満の場合は補強筋不要とする。

打増し寸法 a、a1、a2が70mm≦ a ≦ 200mmの場合の打増し部補強要領は図13-1-1〜図13-3-2による。
打増し寸法 a、a1、a2が200mmを超える場合の打増し部詳細事項は構造図による。

④ハッチング部は打増しコンクリートを示す。

★ポイント


①打増し部に耐力壁が取り付く場合、200mmを超える打増しがある場合、その打増し要領は構造図による。

②打増し寸法 a、a1、a2が200mmを超える場合の打増し部詳細事項は構造図による。


13-1 柱

①梁、耐力壁およびスラブの鉄筋の定着長さは、柱躯体内で確保し、打増し部は定着長さに算定しない。

②柱の打増し部配筋要領は表13-1、図13-1-2による。



★ポイント


③梁および耐力壁の鉄筋の定着長さは、柱躯体内で確保し、打増し部は定着長さに算定しない。

④補強帯筋は、柱主筋内側ではなく、帯筋と同じ位置に配筋し、定着寸法は20dとする。

⑤柱打増し部補強主筋は、梁またはスラブに20d程度定着させる。


13-2 梁

①小梁・耐力壁およびスラブの鉄筋の定着長さは、梁躯体内で確保し、打増し部は定着長さに算定しない。

②梁の打増し部配筋要領は表13-2-1、表13-2-2、
図13-2-1による。

③打増し部腹筋は梁と同径・同本数とする。




★ポイント

 

⑥小梁・耐力壁およびスラブの鉄筋の定着長さは、梁躯体内で確保し、打増し部は定着長さに算定しない。

⑦梁打増し部補強主筋は、柱または梁に20d程度定着させる。

⑧補強あばら筋は梁主筋内側ではなく、あばら筋と同じ位置に配筋し、定着寸法20d程度とする。

⑨スラブが取付く場合の配筋要領は異なるので注意する。

13-3 壁・スラブ

①壁およびスラブの打ち増し部配筋要領は図13-3-1、図13-3-2による。


実践2 鉄筋工事1

1級建築施工管理技士 実践 鉄筋工事1

配筋施工図はいかに大切か

最近の施工図では、施工担当者と鉄筋工の職長が加工図を作成することが多い。
しかし、昨今では建物がより複雑になって、高度な設計が行われるため、構造設計図とコンクリート施工図を基に配筋施工図が作成されるようになってきている。

配筋施工図の目的は、
①鉄筋の種別・サイズ
②配筋の間隔
③継ぎ手の位置・長さ
④鉄筋の組立て順序
などを図面に書き出すことによって、その配筋施工図作成中に、前もって問題点をあぶり出し、解決できるところにある。

また、配筋施工図は、加工・現場組立て・検査のためのバイブルとなる。

それは各工事の鉄筋職長が作成し、鉄筋加工のための加工帳作成にも利用される。
しかし、配筋施工図を作成しない現場もある。職長が簡単な加工帳しか作成しないので、ミスが起きることがある。

例えば、サイズや間隔の見間違いなど。

配筋施工図の間違いは重大な品質ミスになりやすいので、設計者との間で相互チェックなどを行い、駄目出しをしておくことが大切である。

いかにして図面の読み間違いをなくすか

経験的に、鉄筋工事の間違いを防ぐ手段の中で「周知徹底会」がもっとも効果がある。

構造設計者・建築施工管理者・施工業者にて、工事が始まる前に設計者の意図するところ、注意する点などに対して構造設計担当者に立会いを依頼して、
説明を受ける「周知徹底会」を実施し、関係者の意思統一を図ることが望ましい。

どのようにして鋼種の間違いをなくすか

建物の高層化に伴い、RCの設計技術も進歩し、30階や50階建ての高層集合住宅でもRCで設計することが増えている。そこではコンクリート強度だけでなく、鉄筋においても高強度の鉄筋が使用され、一つの工事現場の中に、さまざまな鋼材種別の鉄筋が使用されるようになってきいる。

鋼材種別を間違わないで施工管理するにはどうしたらよいか?
それらは、超高層RC集合住宅の現場で新たな課題となっている。

鉄筋施工を専門業者に任せて管理していたのでは、加工場や現場で鋼種のとり違いミスを完全には防げない。

対策として重要なものを上げてみる。

①鋼材の種類の色分け図面を作成し、鉄筋設計の見える化を図り、関係者に徹底する。

②発注段階での鋼種間違いを防ぐには、職長の作成する注文リストのダブルチェックを行う。

③加工場ではほかの工事の鉄筋と材料が混じる心配がある。見た目ではほとんどわからない鉄筋構種の判別の間違いは、加工、積込み段階でまれに起こる可能性がある。
したがって、最初の関門は加工場での送出し検査である。

④更に現場では、加工した材料が入ってくるので、疑うこともなくそのまま組み立ててしまう。配筋検査はコンクリート打設前に検査するが、ミスを発見できない場合もある。
また、その時点での発見ではすでに遅い。
したがって、現場での材料受入れ検査が次の関門となる。

鋼種間違いはあってはならない間違いである。

鋼種が異なると、建物の強度や品質に直接影響するため、再施工の選択肢しか残らない。
したがって、最後の関門はコンクリート打設前の配筋検査となるので、余裕をもった検査時間を確保する必要がある。

建築設計施工管理者は着工前に設計者とよく打ち合わせを行い、構造的にどのような特徴をもった設計であるかをよく理解して、使用材料の鋼材種類の変わり目を確認してから、工事を進めることがきわめて大切である。

このことはコンクリートについても同様である。

コンクリートをハツらなければならない場合

鉄筋工事のミスでもっとも多いのが、差し筋にかかわるものである。

以前では、設計者の了解のもとで、比較的容易に、ケミカルアンカーや
樹脂モルタルグラウト鉄筋で対応できたが、2005年の法改正以後はこのようなミスも厳格に取り扱われるようになって、容易な処理ができなくなった。
なので、コンクリート打設前の配筋検査は今まで以上に重要になってきている。

一方で、どんなに検査を厳しくしても、うっかりミスは発生する。

差し筋忘れや差し筋のずれなどを未然に防止する対策は、差し筋図を作成することが有効である。配筋検査野帳とは別に、差し筋の必要な箇所を洗い出して作成し、その差し筋図により重点的にチェックを行う。

その他、施工時に見落としそうなミスについては、それを予想して、設計者や監理者を交えて「周知徹底会」により、注意喚起を行うことが必要である。

実践3 鉄筋工事2

1級建築施工管理技士 実戦 鉄筋工事2

新規入場教育でヒューマンエラーの予知能力の再教育

鉄筋工事でヒューマンエラーを防ぐには、仕組みと手順を決めて、それを守ることが大切である。
現場で最初に行うことは、現場マンによる職長と作業員の入場教育である。現場で準備作成した資料を活用する。
例えば、

①鋼材の色分け図
②配筋施工図
③配筋検査の仕組み
④スペーサー一覧表

などの鉄筋工事の基本的事項やルールの導入教育を実施して、目線合わせをすることは大いに役立つ。
鉄筋工によっては、経験者の慣れや若手作業員の知識不足などがミスにつながる。
したがって、新規入場者教育でヒューマンエラーの予知能力を再教育することは
大きな効果が期待できる。
次に重要なのは材料の受入れ検査である。
多くの建設現場ではこの材料の受け入れ検査を実施せず、下請け任せにしている傾向が強い。
しかし、市街地での建設工事の多くは、郊外の加工センターで鉄筋の切断加工をすることが多いが、その加工場でミスが起きる可能性が高い。
加工場では、材料がほかの作業所のものと混ざったり、鋼種をとり違えたりすることがある。
その間違いを発見できる最初の検査が、現場での受入れ検査なのである。
加工場が作成した加工明細書と入荷材料が、現場で作成した鋼材の色分け図と
同じであるかどうかを、現場での材料の受け入れ検査で必ず確認するようにしたい。
この検査を省いては現場搬入までに起きるミスは防げない。

差し筋施工図の必要性

配筋のミスは、チェックリストを使用した配筋検査で防ぐのが一般的である。
そのチェックは、以下に示すように
現場では配筋検査は何度も行われている。

①職長による検査
②現場監督による検査
③本社の品質管理部門による指定検査
④設計者や建築主の監理部門による検査
⑤建築主の代行者による指定検査

など
しかし、これらの何重もの検査があっても、なおそれらをすり抜けて発生するミスがある。
その中でもっとも多いのが差し筋である。それを防ぐために有効なのは、差し筋施工図の作成とそれを利用した管理と検査である。

現場施工管理者による差し筋施工図の作成は多くの効果があるので、実践していきたい。
①設計図齟齬の発見
②後打ち躯体の確認
③スラブ段差と勾配の確認
④差し筋材料の手配
⑤差し筋作業時間の確保
など

配筋施工図のミス防止と構造アンカーの開発と設計図への記載

鉄筋専門業者で作成される配筋施工図は、きわめて大切になってきているが、また、今まで建築現場で便利に採用されていた機械式構造アンカーの使用が難しくなってきている。

今後は設計変更に対する策として、機械式構造アンカー工法を設計図に記載しておくべきである。

機械式鉄筋定着工法は、鉄筋が密集した部分には有効であるが、構造認定取得のものとなるので、認定番号を確認することは極めて重要である。