12章 木工事 4節 鉄筋コンクリート造等の内部間仕切軸組及び床組

第12章 木工事

4節 鉄筋コンクリート造等の内部間仕切軸組及び床組

12.4.1 木 材

(a) 「標仕」では、間仕切軸組に用いる木材の樹種は特記によるものとし、特記がなければ又はを標準としている。

(b) 「標仕」では、床組に用いる木材の樹種は特記によるものとし、特記がなければ又はを標準としている。ただし、土間スラブの類の場合の土台、転ばし大引及び転ばし根太は、ひのき又は保存処理木材を標準としている。

12.4.2 工 法

「標仕」に記載されている工法等の図解を、表12.4.1に示す。

表12.4.1 間仕切軸組及び床組の工法(その1)

 

表12.4.1 間仕切軸組及び床組の工法(その2)

 

表12.4.1 間仕切軸組及び床組の工法(その3)

 

表12.4.1 間仕切軸糾及び床組の工法(その4)

 

表12.4.1 間仕切軸組及び床組の工法(その5)

12章 木工事 5節 窓、出入口その他

第12章 木工事

5節 窓、出入口その他

12.5.1 木 材

「標仕」では、窓出入口その他に用いる木材の樹種は、特記によるものとし、特記がなければ、窓、出入口等の水掛り部で乾きにくい下枠や強度の必要な吊元枠及び敷居では、ひのきを標準とし、その他は、松又は杉を標準としている。

12.5.2 工 法

「標仕」に記載されている工法等の図解を、表12.5.1に示す。

表12.5.1 窓出入口その他の工法(その1)

表12.5.1 窓出人口その他の工法(その2)

表12.5.1 窓出人口その他の工法(その3)

 

表12.5.1 窓出人口その他の工法(その4)

12章 木工事 6節 床板張り

第12章 木工事
06節 床板張り
12.6.1 木 材
「標仕」では、縁甲板及び上がりがまちに用いる木材の樹種は特記によるものとし、特記がなければひのきを標準としている。
12.6.2 工 法
「標仕」に記載されている工法等の固解を表12.6.1に示す。
表12.6.1 床板張りの工法(その1)
表12.6.1_床板張りの工法(その1).jpeg
表12.6.1 床板張りの工法(その2)
表12.6.1_床板張りの工法(その2).jpeg
表12.6.1 床板張りの工法(その3)
表12.6.1_床板張りの工法(その3).jpeg

12章 木工事 7節 壁及び天井下地

第12章 木工事
07節 壁及び天井下地
12.7.1 木材
「標仕」では、壁及び天井下地に用いる木材の樹種は特記によるものとし、特記がなければ、杉又は松を標準としている。
12.7.2 工法
「標仕」に記載されている工法等の図解を.表12.7.1に示す。
表12.7.1 壁及び天井下地の工法(その1)
表12.7.1_壁及び天井下地の工法(その1).jpg
表12.7.1 壁及び天井下地の工法(その2)
表12.7.1_壁及び天井下地の工法(その2).jpg
表12.7.1 壁及び天井下地の工法(その3)
表12.7.1_壁及び天井下地の工法(その3).jpg

12章 木工事 8節 小屋組(「標仕」以外の工法)

第12章 木工事
08節 小 屋 組(「標仕」以外の工法)
12.8.1 木 材
小屋組に用いる木材の樹種は特記によるものとし、特記がなければ杉又は松を標準とする。
12.8.2 工 法
工法等の仕様を表12.8.1.工法等の図解を表12.8.2に示す。
表12.8.1 小屋組の工法(仕様)
表12.8.1_小屋組の工法(仕様).jpg
表12.8.2 小屋組の工法(図解 その1)
表12.8.2_小屋組の工法(図解その1).jpg
表12.8.2 小屋組の工法(図解 その2)
表12.8.2_小屋組の工法(図解その2).jpg
表12.8.2 小屋組の工法(図解 その3)
表12.8.2_小屋組の工法(図解その3).jpg

12章 木工事 9節 屋根野地、軒回りその他(「標仕」以外の工法)

第12章 木工事
09節 屋根野地、軒回りその他(「標仕」以外の工法)
12.9.1 木 材
屋根野地、軒回りその他の部位に用いる木材の樹種は特記によるものとし、特記がなければ、杉又はひのきを標準とする。
12.9.2 工 法
工法等の仕様を表12.9.1に、工法等の図解を表12.9.2に示す。
表12.9.1 屋根野地、軒回りその他の工法(仕様)
表12.9.1_屋根野地、軒廻りその他の工法(仕様).jpg
表12.9.2 屋根野地、軒回りその他の工法(図解 その1)
表12.9.2_屋根野地、軒廻りその他の工法(図解その1).jpg
表12.9.2 屋根野地、軒回りその他の工法(図解 その2)
表12.9.2_屋根野地、軒廻りその他の工法(図解その2).jpg
参考文献
参考文献.jpeg

13章 屋根及びとい工事 1節 一般事項

13章 屋根及びとい工事
01節 一般事項
13.1.1 適用範囲
この章は屋根の金属板葺、粘土瓦葺及びとい工事を対象としている。
なお、金属板葺は長尺金属板葺と折板葺とに分かれる。
13.1.2 基本要求品質
(a)「標仕」では、屋根及びとい工事に使用する材料のうち主要なものはそれぞれのJIS規格が指定されている。また、補助材料については、材質や表面処理等について必要とされる内容が具体的に規定されている。基本要求品質としては、これらの指定された種類の材料が工事に正しく使用されたことを容易に証明できるようにしておく必要がある。
(b) 屋根及びといは、「標仕」で示された以外にも使用する部材が多く、その形状・寸法も多種多様であり、工事現場において加工し取り付けられる部材もある。このため、「所定の形状及び寸法を有する」とは、設計図、施工図等で示された部材が、その仕様どおり取り付けられていることを求めたものである。したがって、部材の施工方法、精度、管理の方法について「品質計画」で提案させ、それにより施工し、管理したことを証明できるようにしておく。
「所要の仕上り状態」としては、使用する建物の重要度や使用箇所、所在地の環境等を考慮して、全体として有害な傷がないこと、特に見え掛り部分に使用上問題となる汚れ、ねじれ、反り、色むら、へこみ、欠け等がなく、また、耐久性上問題となる傷がないことである。具体的には、屋根の専門工事業者による施工管理記録を活用すればよいが、あらかじめ具体的に限度を定めておき、この限度内に納まっていることと考えればよい。これらの限度を定めるに当たっては、同時に限度を外れた楊合の処理方法についても明確にしておく。
とい工事にあっては、使用材料が適正であり、加工寸法の管理が適切であればおおむね所定の形状及び寸法を確保できると考えられることから、(a)による使用材料の確認と適切な施工図、加工製品の確認のほか、取付け状態の確認記録を整備するようにする。
といの仕上り状態としては、ルーフドレンとといの取合いだけでなく、仕上げの防露巻きも含めて、出来上りの状態の限度と確認方法を定めておき、この記録を整備する。
(c) 「標仕」13.1.2(c)でいう「漏水がない」とは、9章の防水工事と同様に水張り試験による確認を要求しているわけではなく、漏水のない品質をつくり込むという考えが重要である。具体的には、施工のプロセスとして下地から屋根材、とい材料の取付けに当たって、何をどのように管理するのかを「品質計画」として提案させ、これを実施させた結果として「漏水がない」ものと考えればよい。屋根材にあっては、この取合い部の検討において、特に耐風圧性及び施工後のきしみ等の有害な震動をなくするように検討を行うことが重要である。
(d) 屋根に加わる外力の主なものは、風と雪である。風については「屋根ふき材及び屋外に面する帳壁の風圧に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」(平成12年5月31日 建設省告示第1458号)に基づき算出した風圧力に対して、雪については建築基準法施行令第86条に基づき算出した積雪荷重に対して、それぞれ構造耐力上安全であることを確かめなければならない。
施工に当たっては、設計で考えられた構造耐力性能を実現するために必要な監理を行う。また、「有害な振動がない」ようにするためには、屋根材と下地材の取合い、下地材と構造体の取合いを適切なものとする必要がある。いずれも監督職員の承諾を受けた施工計画書どおり施工が行われたことを管理記録等により証明できるようにするとよい。
なお、風圧力については「Eの数値を算出する方法並びにV0及び風力係数の数値を定める件」(平成12年5月31日 建設省告示第1454号)に「局地的な地形や地物の影響により平均風速が割り増されるおそれのある場合においては、その影響を考慮しなければならない」とされており、想定される要因としては、地表面の状況(無障害物平坦地)、傾斜地(崖地、傾斜地等)、風の通路(運河、水路、谷あい等)、局地風.ビル風等がある。
とい工事にあっては、ルーフドレンとコンクリート躯体の取合いを含め、各部材の接続が確実に行われることが重要であり、施工記録により証明できるようにするとよい。
13.1.3 施工一般
(a) 「標仕」では、降雨・降雷、強風等屋根に悪影響を及ぼす自然条件の場合は、施工を行わないとされている。安全面から考えても施工は取りやめるべきである。また、下地(野地板)の乾燥が不十分な場合にも施工を行わない。下地が十分に乾燥していないと、施工後の結露の発生のほか、下地の種類によっては、留付け用部品の下地との保持力の低下が懸念されるからである。
(b) 下葺材施工の際に下葺材を折り曲げることがあり、気温が著しく低い気候条件下では下葺材が破断するおそれがある。また、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)は粘着層の十分な接着性が得られない場合があるので、気温が著しく低下した場合には施工を行わない。

13章 屋根及びとい工事 2節 長尺金属板葺

13章 屋根及びとい工事
02節 長尺金属板葺
13.2.1 適用範囲
(a) この節は、折板葺を除く長尺金属板による横葺、瓦棒葺、立平葺、ー文字葺等の屋根葺形式を対象としている。
なお、瓦棒葺は心木なしの場合を対象としている。
(b) 作業の流れを図13.2.1に示す。
図13.2.1_長尺金属板葺の作業の流れ.jpeg
図13.2.1 長尺金属板葺の作業の流れ
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
屋根葺形式ごとの具体的な品質管理項目は、表13.2.5を参照されたい。
① 専門工事業者名及び施工管理組織
② 工程表(着工及び完了の時期)
下葺(材料及び工法)
鋼板類(種類、厚さ)
谷、棟、軒先、けらば等の納まり
⑥ 折曲げ及び小はぜ掛け
壁との取合い等の工法
⑧ 付属材料
⑨ その他専門業者の工法の仕様
風圧力及び積雪荷重に対応した工法、作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(d) 金属屋根工事の計画立案から施工管理まで担当する専門技術者の一例として、(-社)日本金属屋根協会では、昭和61年度より「金属屋根工事技士」の育成・教育を行っている。
13.2.2 材 料
(a) 平成25年版「標仕」では、屋根葺材に使用する長尺金属板の種類、塗膜の耐久性の種類、めっき付着量、厚さ等は、耐久性や耐風圧性を考慮して、設計者がすべて特記することとされた。
長尺金属板葺の場合は、一般的に、従来「標仕」で標準とされていた JIS G 3322(塗装溶融 55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)による CGLCCR-20-AZ150が使用されることが多い。
なお、長尺金属板の表示記号の意味を図13.2.2に示す。
図13.2.2_長尺金属板.jpeg
図13.2.2 長尺金属板の表示記号
(b) 屋根葺材の厚さ
上記のように、屋根葺材の厚さは構造計算等の結果を踏まえて特記されるが、めっき鋼板及び塗装鋼板では、耐久性を考慮して、最低寸法を0.4mmとする。ただし、ポリ塩化ビニル被覆金属板及び耐酸被覆鋼板においては、金属板原板の厚さが示される。
(c) 表13.2.1に金属屋根材料の概要、表13.2.2に金属屋根材料と屋根葺形式の関係を示す。
表13.2.1 金属屋根材料の概要(その1)
表13.2.1_金属屋根材料の概要(その1).jpeg
表13.2.1 金属屋根材料の概要(その2)
表13.2.1_金属屋根材料の概要(その2).jpeg
表13.2.2 金属屋根材料と屋根葺形式の関係
表13.2.2_金属屋根材料と屋根葺形式の関係.jpeg
(d) 金属屋根材料とその特徴等を次に示す。
(1) 長尺めっき鋼板
(i) 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3302)
① 材質、用途により16種類に分けられる。屋根用には種類の記号の末尾に Rが付けられている(例:SGCCR)。現在では無塗装のまま使用されることは少ない。
② めっきの種類は非合金化めっき(亜鉛めっき)と合金(亜鉛と鉄の合金層)に分けられ、めっきの最小付着量(g/m2)は両面の合計で 60~600g/m2である。屋根用には非合金化 Z25、Z27が使用されることが多い。耐食性は亜鉛の付着量に比例する。
③酸、アルカリ溶液及びガスに侵されやすいので、使用環境に注意する。
(ii) 塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3312)
① 溶融亜鉛めっき鋼板の表面をりん酸化成処理をし、熱硬化性合成樹脂塗料を両面又は片面(裏面はサービスコート)に焼付け塗装したもので一般にカラー亜鉛鉄板等と呼ばれている。
② 原板は溶融亜鉛めっき鋼板の冷延原板を使用しており、材質は8種類に分類される。屋根用は種類の記号の末尾にRが付けられている(例:CGCCR)。
③ 屋根用の裏面の色はベージュである。
④ 塗膜の耐久性は表13.2.3に示すように3種類に分類されているが、屋根には2類及び5類(2コート、2ベーク)以上を使用する。塗膜はアルカリに弱いため(特に1類及び4類)モルタルが付着した場合、水洗い等により取り除いておく必要がある。また、釘、鋼板の切り粉(切削屑)等の鋼が塗膜の酸化を促進させるおそれがあるので、屋根面に残さないようにする。
表13.2.3 塗膜の耐久性(JIS G 3312 : 2013)
表13.2.3_塗膜の耐久性(JISG3312_2013).jpeg
(iii) 溶融アルミニウムめっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3314)
① 鋼板に溶融したアルミニウムをめっきしたもので、耐高温性、熱反射性、耐酸性に優れている。
② 耐熱用と耐候用の2種類に大別され、屋根用には耐候用を使用することが多い。耐候用は純アルミニウム液を用いアルミニウム層、合金層はともに耐熱用に比べて厚い。
③ 表面が軟らかく傷つきやすいので、運搬時等での取扱いに注意する。加工時にめっき層に亀裂が入った場合は、犠牲防食作用が期待できないので早目に補修する。
犠牲防食(ぎせいぼうしょく):
亜鉛めっきが施された鉄であれば、万が一キズが発生し素地の鉄が露出してしまった場合でも、イオンになりやすい亜鉛が鉄よりも先に溶け出して電気化学的にキズ周辺を保護し、鉄の腐食は進行しなくなる。この作用を犠牲防食という。
(iv) 溶融亜鉛–5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3317)
① 機械的性質は溶融亜鉛めっき鋼板と同等であるが、めっき層に約5%のアルミニウムを含むため、亜鉛、アルミニウムの複合酸化物被膜を形成し、亜鉛の溶出速度を抑制するため、より高い耐食性を有する。
② めっき層の加工性は溶融亜鉛めっき鋼板に比べて優れている。無塗装のまま屋根に使用されることは少ない。屋根用は種類の記号の末尾にRが付けられている(例:SZACCR)。
(v) 塗装溶融亜鉛ー5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3318)
① 塗装溶融亜鉛めっき鋼板よりも原板の耐食性が優れ.加工性も優れている。
② 塗膜の耐久性は塗装溶融亜鉛めっき鋼板と同じである。屋根用は種類の記号の末尾にRが付けられている(例:CZACCR)。
③ 屋根用の裏面の色はベージュである。
(vi) 溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3321)
① 鋼板の表面に質量比でアルミニウム55%、亜鉛43.4%、シリコン 1.6%の合金めっきを施している。通称ガルバリウム鋼板と呼ばれ無塗装のまま使用することが多い。
② アルミニウムの特性(耐食性、加工性、耐酸性、耐熱性、熱反射性)と亜鉛の特性(犠牲防食作用)を兼ね備えている。アルカリには弱いので、コンクリート、モルタル等との接触は避ける。
③ 異種金属との接触により接触腐食を起こすことがあるので、留付け金具にはステンレス製あるいは亜鉛めっき等により絶縁処理されたものを使用する。シーリング材は、シリコーン系、変成シリコーン系等を用いる。シリコーン系は汚染が生じることがあるので、使用部位に注意する。
(ⅶ) 塗装溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3322)
① 原板に前記鋼板を用いているため、JIS G 3312、JIS G 3318に比べ耐食性に優れる。
② 鋼板の塗膜の耐久性は、JIS G 3312と同じである。屋根用は種類の記号の末尾にRが付けられる(例:CGLCCR)。
③ 屋根用の裏面の色はベージュとグリーンの2種類がある。
(ⅷ) ポリ塩化ビニル被覆金属板(JIS K 6744)
溶融亜鉛めっき頒板や電気亜鉛めっき鋼板にポリ塩化ビニル(塩ビ樹脂)を積層又は塗り付けたもので、一般に塩ビ鋼板と呼ばれている。塗膜は、塗装溶融亜鉛めっき鋼板と比較すると厚く、より高い耐久性を有する。「標仕」では屋根用として、用途による種類がA種(高耐食耐候性外装用)で下地鋼板がSG(溶融亜鉛めっき鋼板)を使用することにしている。
(ix) 耐酸被覆鋼板
① 溶融亜鉛めっき鋼板等を原板として、その両面に無機繊維と合成樹脂とを数層厚膜に被覆するか、合成樹脂のみを膜厚に被覆したものである。
② 耐酸性、耐アルカリ性、耐塩水性に優れ、熱・電気等に対する絶縁性がある。
③ 被覆が厚いため、加工時の曲げ角度は鈍角にするほか、切断面は補修塗装する。保護フィルムが付いている場合はそのまま加工し、積置きする際にも、塗膜同士の接着を防ぐため、保護フィルムを挿入する。
(2) ステンレス鋼板
ステンレス鋼板はJIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)、JIS G 3320(塗装ステンレス鋼板)があるが、一般にコイルが使用されている。
① ステンレス鋼板は鉄にクロム、ニッケル等を配合した合金であり、多くの鋼種があるが、建材製品に使われる代表的な種類については、14.1.5(c)(1)を参照のこと。このうち屋根用には一般的にSUS 304、SUS 316が用いられる。
なお、最近は塩害等に対する耐食性を高めた製品(SUS445等)も屋根用として使われている。
② 特 性
1) 耐食性に優れ、錆びにくい。これは合金中のクロムが酸化保護被膜(不働態被膜)を形成するためである。
2) 衝撃に強い。鋼、銅、アルミニウム等に比べて強度が大きく衝撃に強い。
3) 耐熱性に優れ、溶融温度が高く、高温下での強度が大きく、高温耐火性に優れている。
4) 熱伝導率が比較的小さく、熱膨張率もアルミニウムより小さい。
③ 使用上の注意
1) 材料の貯蔵時等で鉄板やアルミ等の異種金属と直接接触させない。接触部分に水分が入ると接触腐食を起こすことがある。
2) 表面に鉄粉等を放置するともらい錆が発生するので、よく清掃する。
3) ステンレス構板にけがき線を入れる場合は、けがき釘等は錆を誘発するので赤鉛筆や筆や専用用具を用いる。
4) 普通鋼に比べてスプリングバックが強いので、折曲げ等加工時に注意する。
(3) 留付け用部材等
小ねじ、ドリルねじ及びボルト類は亜鉛めっき又はステンレス製品とする。留付け用部材等の長さ、太さ、形状等は屋根葺工法、野地板の種類等に合わせたものとする。
平成22年版の「標仕」より木下地に関する規定が削除されたことから、屋根葺材等を木下地に留め付けるために使用する釘に関する記述を削除した。しかし、役物の取付け等の特殊な部位で釘を使用することもあるので、表13.2.4に使用例を示してある。
表13.2.4に留付け用部材の例を示す。
表13.2.4 留付け用部材の例
表13.2.4_留付け用部材の例.jpeg
(4) 下葺材料
(i) 「標仕」では、下葺材料は、JIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)によるアスファルトルーフィング940、又は平成25年版から採用された改質アスファルトルーフィング下葺材を使用することとされている。改質アスファルトルーフィング下葺材の品質は、「標仕」表13.2.2に適合するものとされている。下葺材の種類は特記によるものとされているが、「標仕」では、コンクリート下地のように釘又はステープルが打てない下地に下葺材を直接施工する場合は、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)を使用することとされている。
(ii) アスファルトルーフィング940の構成及び改質アスファルトルーフィング下葺材(一般タイプ、複層基材タイプ、粘着層付タイプ)の代表的な構成を図 13.2.3に示す。
① アスファルトルーフィング940の表面は、着色塗料を塗布したものと塗布しないものがある。
② 改質アスファルトルーフィング下葺材は、アスファルトに合成ゴムや合成樹脂を添加した改質アスファルトを使用したルーフィングで、アスファルトルーフィング940に比べて、ステープルや釘打ち部の水密性に優れており、また、低温性状や高温性状が改良されている。用途によって様々な材料構成があり、アスファルトルーフィング940と同様な基材に、改質アスファルトを被覆し、表裏面に鉱物質粉粒を付着させた一般タイプのほか、鉱物質粉粒の代わりに、表裏面に合成繊維、プラスチックフィルム、紙等を用いて、軽量化を図るとともに高温時の施工での表面のべたつきを改善した複層基材タイプ、裏面に粘着材層を配置し、下葺材施工時の仮止めにステープルや釘等が不要で、ステープルや釘打ち部の水密性が更に優れた粘着層付タイプがある。
図13.2.3_代表的な下葺き材料の構成(Asルーフィング940).jpeg
(イ)アスファルトルーフィング940
図13.2.3_代表的な下葺き材料の構成(一般改質Asルーフィング).jpeg
(ロ)改質アスファルトルーフィング下葺材(一般タイプ)
図13.2.3_代表的な下葺き材料の構成(複層基材タイプ).jpeg
(ハ)改質アスファルトルーフィング下葺材(複層基材タイプ)
図13.2.3_代表的な下葺き材料の構成(粘着層付改質Asルーフィング).jpeg
(ニ)改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)
  図13.2.3 代表的な下葺き材料の構成
(5) その他の材料
(i) 付属材料:面戸、唐草、けらば包み、棟包み等
(ii) 留め金具:ステープル、アンカーボルト等
13.2.3 工 法
(a) 屋根葺形式は、建物の意匠等にかかわるため、「標仕」では特記とされている。心木なし瓦棒葺、立平葺及び横葺の例を図13.2.4~6に示す。
なお、横葺については建設省の「建設技術評価制度」による「中層建築物における耐風型勾配屋根の開発」に基づき、評価書を受けている製品がある。
図13.2.4_心木なし瓦棒葺.jpeg
図13.2.4 心木なし瓦棒葺
図13.2.5_立平葺.jpeg
図13.2.5 立平葺
図13.2.6_横葺.jpg
図13.2.6 横葺
(b) 屋根葺工法は、構造耐力上の性能にかかわるため「標仕」では特記とされている。具体的には、葺板の寸法・厚さ、下地(野地板の種類、形状、強度)、留付け方法(吊子の種類・取付け方法、留付け用釘等の種類・強度)等である。
(c) 長尺金属板葺の耐風性能確保、施工方法等については、(独)建築研究所監修「鋼板製屋根構法標準」、(-社)日本金属屋根協会「金属屋根の施工と管理」、同「風と金属屋根 – 改訂版」、同「金属屋根の性能確認」が参考になる。表13.2.5に主な屋根葺形式の設計・施工上の要点を示す。
表13.2.5 屋根葺形式の設計・施工上の要点(風と金属屋根 – 改訂版より)
表13.2.5_屋根葺形式の設計・施工上の要点(風と金属屋根-改訂版より).jpeg
(d) 長尺金属板葺の工法
(1) 下葺材
(i) 防水を主な目的とする下葺材の施工は、水下側の下葺材が水上側の下葺材の上に重ならないように行う。軒先からこれに平行に張付けを開始し、隣接する下葺材を上下(流れ方向)は100mm以上、左右(長手方向)は200mm以上重ね合わせる。
下葺材の左右(長手方向)の継目は、図13.2.7に示すように、継目(◯印)相互が接近しないようにする。
図13.2.7_下葺材の施工例.jpeg
図13.2.7 下鋼材の施工例
(ii) アスファルトルーフィングの仮留めは、作業効率と安全性の面から必要に応じて行うものでむやみにステープルを打ち込むことは、下葺材を貫通する孔が増えるだけで防水機能面では好ましくない。仮留めを行う場合は、図13.2.7に示すように、下葺材の重ね部分で300mm程度の間隔、その他の部分は必要に応じて900mm以内の間隔とするのが通例である。
一方、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)の場合は、裏面のはく離紙等をはがしながら施工することで、粘着層による下地への仮止めができるため、ステープルを用いないで施工する(図13.2.8参照)。
図13.2.8_下葺材の施工例(粘着層による仮留め例).jpeg
図13.2.8 下葺材の施工例(粘着層による仮留め例)
(iii) 棟部はその形状から破断を起こしやすい部位であるため、図13.2.9に示すように棟の両側に250mm以上折掛けとしたのち.棟頂部から一枚もので左右 300mm以上の増張りを行う。増張りは下葺材と同材を用いる。
(iv) 谷部は水が集まる箇所であり、比較的漏水を起こしやすい部位であるため、図13.2.10に示すように左右300mm以上の下止材の一枚ものを先張りし.その上に下葺材を左右に重ね合わせ,谷底から250mm以上延ばす。
谷部に下葺を行うとき、下葺材が下地に密着するようにする。下葺材が下地から浮いた状態で張り付けられると破断しやすくなる。更に、谷底にはステープルによる仮止めは行わない。
図13.2.9_棟部の下葺材施工例.jpeg
図13.2.9 棟部の下葺材施工例
図13.2.10_谷部の下葺材施工例.jpeg
図13.2.10 谷部の下葺材施工例
(v) 壁面との取合いは、屋根面から下葺材を張り進め、壁に250mm以上、かつ、雨押え上端部より50mm以上立ち上げる。仮留めは屋根面と同様に下葺材の種類に応じてステープルや改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)の場合は粘着層にて行う。また、この部位は谷部同様下葺材が下地から浮いた状態で張り付けられると破断しやすくなるので下地に密着するよう張り付ける。
また、施工後躯体の動きによって当該部位の下葺材の破断も起きやすい。したがって建物の構造や気象条件によって柊113.2.11に示すように増張りを行う場合もある。
図13.2.11_壁面との取合い部の下葺材施工例.jpeg
図13.2.11 壁面との取合い部の下葺材施工例
(vi) 棟板(あおり板)、瓦棒・桟木等及びけらば部の水切り金物を取り付ける前に下葺を行う。これらを取り付けてしまうと、下葺材を留め付ける下地の不陸が大きくなり破断するおそれがある。
(vii) 両面粘着防水テープを使用する場合又は改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)を使用する場合は、しわ又はたるみが生じないように張り上げる。
(ⅷ) 軒先は、図13.2.12に示すように、下葺材を軒先水切り金物の上に重ね、両面粘着防水テープで密着させる。
なお、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付きタイプ)を用いる場合は、両面粘着防水テープを使用しなくてもよい。
図13.2.12_軒先部防水テープ施工例.jpeg
図13.2.12 軒先部防水テープ施工例
(ix) 鉄骨造の場合、屋根の軒及びけらばの槌当たり箇所は.図13.2.13に示すように下葺材をあらかじめ屋根下地材(垂木等)と壁の間に先張りする。先張りした下葺材に重ねる下葺材の重ね顛は,水下から水上へ張り上げる。
RC造等の場合で、当該部位に隙間がない場合は当該処置は必要ない。
図13.2.13_軒先壁当たり部施工例.jpeg
図13.2.13 軒先壁当たり部施工例
(x) 下葺材が破損した場合は.図13.2.14に示すように、破損した部分の上側部の下葺材の下端から新しい下葺材を差し込み補修する。ただし、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)の場合は、破損した部分の上に同材で増張り補修する。
図13.2.14_下葺材補修方法例.jpeg
図13.2.14 下葺材補修方法例
(2) 加 工
(i) 長尺金属板のロール成形機等による機械加工が多くなっているが、現場等での折曲げは十分曲げ半径を取り、切れ目を入れずに塗装、めっき、地肌に亀裂が生じないように行う。箱形の隅等は特に注意し、形に合わせて加工する。
ポリ塩化ビニル被覆金属板及び耐酸被覆鋼板を冬期に加工する時は、塗膜に亀裂が生じやすいので、材料を加温してから加工する。
(ii) 小はぜ掛け
① はぜ組みには、巻きはぜ(二重はぜ.ダブルはぜ)とこはぜ(一重はぜ、シングルはぜ)がある。巻きはぜはダクト等で用いられることが多く、屋根では銅板葺での屋根本体の板と板とのはぎ合せ、防水上特殊な部位に用いられる。図13.2.15に示す2種類がある。
図13.2.15_巻きはぜ.jpeg
図13.2.15 巻きはぜ
② 小はぜは主として屋根本体の板と板及び軒先、けらば部分のはぎ合せに使用される。小はぜは、図13.2.16のように加工し 3〜6mm程度の隙間をつくり、防水上の毛細管現象を防ぐ(図13.2.17参照)。ただし、隙間のない方が風による吹上げに強いので、隙間が大きくならないように注意する。
図13.2.16_小はぜ.jpeg
図13.2.16 小はぜ
図13.2.17_小はぜの折返し幅の例.jpeg
図13.2.17 小はぜの折返し幅の例
(3) 取付け
葺板の取付け方法は、屋根葺形式ごとに異なるため、ここでは心木なし瓦棒葺(通し吊子)の例を示す。
① 溝板を下葺材上の所定の位置に並べ、各溝板の間に通し吊子を入れる。
② 通し吊子は、母屋に留め付ける。
③ キャップは、構板になじみよくはめ込ませ、均一、十分に締め付ける。
(4) 棟、軒先、けらば、壁との取合い部及び谷の納まり
屋根の各部の納まりについて、心木なし瓦棒葺(通り吊子)の例を示す。
①棟(図13.2.18参照)
1) 棟納めは、溝板の水上端部に水返しを付け納めたのち、キャップ掛けを行う。
2) 棟包み固定金具をキャップに取り付けたのち、棟包みを棟包み固定金具に留め付ける。両端は、瓦棒の形状寸法に切りそろえて溝板底部まで折り下げる。
3) 継手は、棟板両端を各々折り返し、重ね継ぎとする。継手内には定形シーリング材をはさみ込み、間隔30mm以内に留め付ける。継手の位置は、瓦棒に可能な限り近い位置とする。
図13.2.18_棟の納まりの例.jpeg
図13.2.18 棟の納まりの例
② 斬先(図13.2.19参照)
唐草は、各通し吊子の底部にドリルねじ留めとし、唐草の継手は、通し吊子の位置で重ね継ぎとする。
図13.2.19_軒先の納まりの例.jpeg
図13.2.19 軒先の納まりの例
③ けらば(図13.2.20参照)
1) けらば納めは、溝板端部を唐草に十分つかみ込む。
2) けらば端部の長さは、働き幅の1/2以下とする。
図13.2.20_けらばの収まりの例.jpeg
図13.2.20 けらばの納まりの例
④水上壁との取合い部(図13.2.21参照)
1) 水上部分の雨押えの一方の端は棟納めに準じ、他方の端は 120mm程度立ち上げて胴縁に留め付ける。
2) 継手の施工は棟納めの継手に準ずる。
図13.2.21_水上壁取合い納まりの例.jpeg
図13.2.21 水上壁取合い納まりの例
⑤ 壁との取合い部(13.2.22参照)
雨押えの一方の端は溝板の底まで折り下げ、他方の端は120mm以上立ち上げて胴緑に留め付ける。
図13.2.22_壁取合い納まりの例.jpeg
図13.2.22 壁取合い納まりの例
⑥ 谷(図13.2.23参照)
谷板は稲妻谷とし、原則として、継手を設けない。葺板の溝板を谷板につかみ込んで納める。
図13.2.23_谷の納まりの例.jpeg
図13.2.23 谷の納まりの例

13章 屋根及びとい工事 3節 折板葺

13章 屋根及びとい工事
03節 折板葺
13.3.1 一般事項
(1) この節は、JIS A 6514(金属製折板屋根構成材)を使用する屋根を対象としている。
(2) 作業の流れを図13.3.1に示す。
図13.3.1_折板葺の作業の流れ.jpg
図13.3.1 折板葺の作業の流れ
(3) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
具体的な品質管理項目は、表13.3.1を参照されたい。
① 専門業者名及び施工管理組織
② 工程表(着工及び完了の時期)
折板(種類、厚さ、構成部品)
各部の納まり工法(棟、けらば、軒先、壁との取合いの各部)
タイトフレームの取付け方法
⑥ その他専門工事業者の工法の仕様
⑦ 付属材料
風圧力及び積雪荷重に対応した工法、作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(4) 金属屋根工事技士については、13.2.1(4)を参照する。
13.3.2 材 料
(1) 折板は、「標仕」13.3.2 (1)で、JIS A 6514に基づくものと定められており、形式、山高・山ピッチ、耐力及び材料による区分並びに厚さは特記される。JISでは所定の性能を確保するため、折板と主要な構成部品を一体にしているので、受人れの際に注意する。
(2) 折板葺用に用いる材料は、「標仕」13.3.2(2)及び(3)によって特記によるとされている。
(3) タイトフレームの材料は、JIS A 6514に基づき、原則として、JIS G 3302(溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)とされている。
(4) パッキンは、「標仕」13.3.2(4)で厚さ5mm以上のブチルゴム製又はクロロプレンゴム製、厚さ6mm以上のアスファルト製又はポリプロビレン樹脂含浸ポリエステル繊維フェルト製と定められている。ただし、耐火構造とする場合は、構造認定により、使用できるパッキンの材質に制限があるため注意する。
(5) 軒先面戸板の使用は、特記される。使用する場合は、折板と同じ種類の材料とする。面戸板には軒先面戸板のほかに止面戸(棟面戸)、エプロン、換気面戸、はぜ面戸等がある。
(6) 折板に裏張りする断熱材の種別等は特記される。断熱材には、ポリエチレンフォーム、難燃化ポリエチレンフォーム、無機質高充填フォームプラスチック、ガラス繊維シート、ロックウールフェルト、セラミックファイバーフェルト等があり、厚さは2.0~10.0mm程度のものが多い。
(7) 折板屋根は、折板のほかに結合用部品、補強用部品、その他の付属部品等によって構成されるが、折板は製作所によって各部に微妙な相異があるため、構成部品は折板の製造所が指定したものを使用する。ただし、ボルト・ナット、固定金具及びタイトフレームはJIS A 6514に規定されたものとする。
(8) JIS A 6514(金属製折板屋根梢成材)の抜粋を次に示す。
JIS A 6514: 1995
1. 適用範囲
この規格は、金属製折板屋根を構成する折板及び構成部品について規定する。
備考1.
折板は、金属板と裏打材で構成されたもの及び金属板だけのものとする。
2. 用語の定義
この規格で用いる主な用語の定義は.次のとおりとする。
(1) 折板
金属板をV字、U字又はこれに近い形に折り曲げて,屋根材として使用する部材。
(2) 構成部品
折板屋根を構成するための部品。
3. 各部の名称
各部の名称は、次による。
(1) 折板屋根
折板屋根の各部の名称は、図1、図2及び図3の例による。
JIS A 6514_図1_重ね形折板屋根の例.jpg
図1 重ね形折板屋根の例
JIS A 6514_図2_はぜ締め形折板屋根の例.jpg
図2 はぜ締め形折板屋根の例
JIS A 6514_図3_かん合形折板屋根の例.jpg
図3 かん(嵌)合形折板屋根の例
(2) 折板
折板の各部の名称は、図4、図5及び図6の例による。
JIS A 6514_図4_重ね形の例.jpg
図4 重ね形の例
JIS A 6514_図5_はぜ締め形の例.jpg
図5 はぜ締め形の例
JIS A 6514_図6_かん合形の例.jpg
図6 かん合形の例
(3) 構成部品
構成部品は、次のとおりとする。
(a) タイトフレーム
はりと折板との同定に使用し、ボルト付きタイトフレームとタイトフレームだけのもの及び端部用タイトフレームとする。
(b) ボルト及びナット
折板又は固定金具とタイトフレームとの固定に使用する。
(c) 固定金具
はぜ締め形又はかん合形折板とタイトフレームとの固定に使用する。
JIS A 6514_図7_構成部品の例.jpg
図7 構成部品の例
(4) タイトフレームの各部の名称
タイトフレームの各部の名称は、図8の例による。
JIS A 6514_図8_タイトフレームの例.jpeg
図8 タイトフレームの例
4.種類及び記号
折板の種類及び記号は形式、山高・山ピッチ、耐力及び材科によって次のとおり区分し、( )内に記号を示す。
(1) 形式による区分
形式による区分は、次のとおりとする。
(a) 重ね形(K)折板の重ねをボルトで結合する形。
(b) はぜ締め形(H)折板をはぜで結合する形。
(c) かん合形(G)折板をかん合で結合する形。
(2) 山高・山ピッチによる区分
山高・山ピッチによる区分は、表1のとおりとする。
表1 山高・山ビッチによる区分
JIS A 6514_表1_山高・山ピッチによる区分.jpg
(3) 耐力による区分
耐力による区分は、表2のとおりとする。
表2 耐力による区分
JIS A 6514_表2_耐力による区分.jpg
(4) 材料による区分
材科による区分は,次のとおりとする。
(a) 鋼板製(S)
(b) アルミニウム合金板製(A)
8. 材 料
8.1 折板に使用する材料
折板に使用する材料は、表9に規定するもの又は使用上これと同等以上の性能をもつものとする。
表9 材 料
JIS A 6514_表9_材料.jpg
8.2 構成部品に使用する材料及び表面処理
構成部品に使用する材科及び表面処理は.表10に規定するもの又は使用上これと同等以上の性能をもつものとする。
表10 材 料
JIS A 6514_表10_材料.jpg
8.3 裏打材
折板に裏打板を使用する場合は、受渡当事者間の協定による。
11. 製品の呼び方
製品の呼び方は、次の例による。ただし耐力、長さ及び厚さについては受渡当時者間の協定によって省略することができる。
JIS A 6514_11.製品の呼び方.jpg
12. 表 示
折板及び構成部品の包装には、次の事項を表示しなければならない。
 (1) 折板の包装表示
  (a) 種類の記号(製品の呼び方の例による。)
  (b) 製造業者名
  (c) 製造年月
 (2) 構成部品の包装表示
  (a) 名称
  (b) 寸法及び使用材料
  (c) 製造業者名
  (d) 製造年月
JIS A 6514: 1995
13.3.3 工 法
(1) 折板葺の耐風性能確保、施工方法等については、13.2.3(3)で示した図書が参考になる。表13.3.1に折板葺の設計・施工上の要点を示す。
表13.3.1 折板葺の設計・施工上の要点(風と金属屋根ー改訂版より)
表13.3.1_折板葺の設計・施工上の要点.jpeg
(2) 折板は、屋根の棟から軒先までを一枚の板で韮くことを前提に開発されたものなので、長さ方向には、原則として、継手を設けない。折板は長尺材であるため、道路交通法上の運搬制限や道路事情等により、工事現場での加工(現場成型)を行うことがある。この際、加工スペース等の制約から所定の長さの製品を加工できないことがある。このような場合にやむを得ず、流れ方向に継ぎ目を設けることが考えられるが、本来避けるべきことであり、計画段階から対応を考えておくべきである。
(3) タイトフレームの取付け
(ア) タイトフレームは、取付け位置の心に合わせ通り良く下地に接合する。台風時の折板屋根の被害には、タイトフレームの接合不備に起因するものが多いため、接合は入念に行わなければならない。
(イ) 「標仕」では、風による紐返し荷重による緩みを防ぐため、ボルト接合でなく、隅肉溶接と規定しているが、接合不備とならないよう溶接接合は入念に行う。
(ウ) 隅肉溶接に際しては、必要な溶接の隅肉サイズ、有効溶接長さ等の確認を行うとともに、ショートビードやアンダーカット等の溶接不良が発生することがあるため、溶接状態についても注意を払う。
なお、タイトフレームの有効溶接強度の確認方法については、(-社)日本金属屋根協会「風と金属屋根ー改訂版」が参考になる。
(エ) 溶接後は、スラグを除去し溶接部分及びその周辺に「標仕」表18.3.2[亜鉛めっき鋼板の錆止め塗料の種別]のA種の錆止め塗料を途る。
(4) 折板の取付け
(ア) 重ね形折板の施工
(a) 折板は、各山ごとにタイトフレームに同定し、折板の流れ方向の重ね部に使用する緊結ボルトの間隔は600mm程度とする。
(b) 折板の端部の端空き寸法は、50mm以上とする。
(イ) はぜ締め形折板の施工
はぜ締め形折板は、タイトフレームにボルト締めされた固定金具を介してはぜ締めする。固定金具の位置及び固定金具間は、手動はぜ締め機を用いて1mm間隔程度で部分締めする。
本締めは、専用の電動シーマー等で完全にはぜ締めする。
(ウ) かん合形折板の施工
かん合形には、片側を引掛けかん合する片かん合形と、キャップを上部よりはめ込みかん合する両かん合形とがある。
(5) 各部の納まり
(ア) けらばの納まり
(a) けらばの納めは、特記による。特記がなければ、けらば包みによる方法とされている(図13.3.2参照)。この方法は、けらば包み及び端部の折板を固定するための下地が必要である。間隔 1m程度とするこの下地は、鉄骨工事の段階で取り付けられる必要があるので、屋根葺作業に入る前に所定のものが取り付けられているか確認する。また、けらば包みの継手の位置には端部用のタイトフレーム等の下地を設ける必要がある。
なお、けらば包みを用いた場合は、変形防止材を用いないのが一般的である。
(b) 重ね形折板では、最端部の折板の上底で留める方法もある。この場合、最端部の折板には、図13.3.3に示す変形防止材を付けなければならない。
図13.3.2_けらば包みによるけらばの納まりの例(けらば断面).jpg
図13.3.2_けらば包みによるけらばの納まりの例(重ね部分).jpg
図13.3.2_けらば包みによるけらばの納まりの例.jpg
図13.3.2 けらば包みによるけらばの納まりの例
図13.3.3_変形防止材によるけらばの納まりの例.jpg
図13.3.3 変形防止材によるけらばの納まりの例
(イ) 棟の納まり
(a) 棟の納まりは、棟包みによる納まりを原則とする。
なお、図13.3.4に示す重ね形のほか、折板を棟位置で折り曲げる加工(ラジアル加工)もある。
(b) 棟包みは、折板の各山間にエプロンをなじみよく切り合わせ水漏れのないように留め付ける。
(c) はぜ締め形では、折板上部にはぜがあるため、ドリルねじ等による棟包みの固定が困難である。このため、棟取付け用のねじ受け金具等を用いる方法が一般的である。
図13.3.4_棟包みによる棟の納まりの例.jpg
図13.3.4 棟包みによる棟の納まりの例
(ウ) 軒先の納まり
折板の軒先は、先端部分下底に尾垂れを付ける。尾垂れはウェブと下底のりょう線部分を切らずに「つかみ」で曲げる(図13.3.5参照)。
図13.3.5_軒先の尾垂れ.jpg
図13.3.5 軒先の尾垂れ
(エ) 壁取合い部の納まり
雨押えは、150mm以上立ち上げる。水上部分の納まりの例を図13.3.6に示す。
図13.3.6_水上壁取合い部の納まりの例.jpg
図13.3.6 水上壁取合い部の納まりの例

14章 金属工事 1節 一般事項

14章 金属工事
01節 一般事項

14.1.1 適用範囲
(a) 金属工事で取り扱う材料・工法は、非常に広範なものであり、一般的な基準は定めにくい。したがって、この章では表面処理、溶接、ろう付けその他について、一般的な標準となる事項を挙げている。
(b) 「標仕」14章では、主として工場で製品化されたものを現場で取り付けることを想定しているので、「標仕」の2節及び3節は、工場製作に対する規定と考えてよい。
(c) 工場地帯、海岸等の金属の腐食の激しい場所にタラップ、丸環等を設ける場合は、人身事故を防ぐために耐食性及び強度の優れたステンレス等を用いることが望ましい。また、丸環については、誤用を避けるため、耐力限度等の使用上の注意事項を明示するとよい。
14.1.2 基本要求品質
(a) 金属工事に使用する材料としては、一般に素材としてのJISが定められているものから、軽量鉄骨下地材のように製品としてのJISが定められているものまで多種多様である。このうち製品としてのJISが定められたものは、一般的な材料と同様に扱えばよい。素材としてのJISが定められた材料を加工して使用する場合にあっては、素材製造工場から製品加工工程を経て.工事現場に搬入されるまでの流れを管理することによって、所定の品質であることを証明できるようにするとよい。
金属工事の表面処理では、素材の規格でなく加工技術の規格としてアルミニウムの表面処理や鋼材の亜鉛めっき等のJISが定められている。これらの指定がされた材料にあっては、表面処理を行った材料が所定の品質であることが要求される。具体的には、表面処理後の材料に対して試験を行い確認することが考えられるが、表面処理工場の実績等を勘案して工場の品質管理記録によって、個々の試験に代えることも考えられる。
なお、表面処理のJISのうち、アルミニウムの陽極酸化皮膜、陽極酸化塗膜複合皮膜及び溶融亜鉛めっきにあっては、「加工技術」に指定されているため、JISの認証加工業者の工場で加工された材料にあっては、改めて材料試験を行う必要はない。
(b) 金属工事の製品は、一般に工場において加工され現場で取り付けられるため、現場で造込みがされる建築工事種目と比べて寸法精度は良いが、設計図書に基づき加工形状や加工寸法を定めるに当たっては、地震時の挙動や日射による熱伸縮の影響等に注意し、下地やその他の材料との取合いを含め、全体の仕上りのバランスを考慮して適切に行わなければならない。
また、金属工事のうち手すりやタラップ等は、使用安全性に直接影響を及ぼすため、堅固に取り付けられている必要がある。製品の取付けに当たっては、事前の取付け方法の検討だけでなく、施工途中の取付け状態の確認等により、完成後の使用安全性を確保できるようにする。
(c) 製品仕上り状態としては、有害な傷や見え掛り部の使用上問題となる傷、汚れ、ねじれ、反り、へこみ等について、あらかじめ限度を定めておき、この限度内に収まっていることと考えればよい。
14.1.3 工 法
(a) 受材の取付け
製品や部材を下地のコンクリート等に金属系アンカーボルト等を用いて留め付ける工法には、「先付け工法」(躯体の施工時にあらかじめアンカーボルト等を設置してコンクリートを打ち込む方法)と「あと施工アンカー工法」(硬化後のコンクリートを穿孔して、この孔にアンカーボルトを固着させる方法)とがある。
(i) 先付け工法
①「標仕」14.1.3(a)では、製品等の受材は、原則として、構造体に損傷を与えるおそれの少ない先付け工法で取り付けることとし、やむを得ない場合にあと施工アンカー工法の類とするとしている。
② 先付け工法に使用するアンカーボルト等には、頭付きアンカーボルト、鉄筋アンカーボルト、基礎ボルト、インサート類等がある。
③ コンクリート打込みに際しては、あらかじめアンカーの位置や方向等の精度を確保するように注意する。
(ii) あと施工アンカー工法
① あと施工アンカーは、次の金属系アンカーと接着系アンカーとに大別される。
1) 金属系アンカー
躯体コンクリート面にドリル等で所定の孔をあけて金属拡張アンカーを挿入し、打撃又は回転締付けにより下部を機械的に拡張させてコンクリートに固着させる方式であり、「おねじ形」(本体とボルトが一体のもの)と「めねじ形」(本体とボルトが分離しているもの)があり、種類により工法及び耐力特性が著しく異なるので注意が必要である。
その形状の例を図14.1.1に、施工の例を図14.1.2に示す。
図14.1.1_金属系アンカーの形状の例(おねじ形-本体打込み式).jpeg図14.1.1_金属系アンカーの形状の例(おねじ形-ウェッジ式).jpeg図14.1.1_金属系アンカーの形状の例(めねじ形-本体打込み式).jpeg図14.1.1_金属系アンカーの形状の例(めねじ形内部コーン打込み式).jpeg
図14.1.1 金属系アンカーの形状の例
図14.1.2_金属系アンカーの施工の例(本体打ち込み式).jpeg
図14.1.2_金属系アンカーの施工の例(ウェッジ式).jpeg
図14.1.2 金属系アンカーの施工の例
2) 接着系アンカー
躯体コンクリート面にドリル等で所定の孔をあけ、その内に接着剤を注入してアンカーボルトを埋め込む方法(注入型)と、孔内に樹脂及び硬化促進剤・骨材等を充填したガラス管のカプセルを挿入し、アンカーボルトをその上からハンマードリル等の回転打撃によって打ち込むことにより、接着剤の主成分(主剤)、硬化剤、骨材、粉砕されたガラス管等が混合されて硬化し、接着力によって固定される方法(カプセル型)がある。
接着系アンカーの留意事項等は、次のようなものである。
・接着材料には、ポリエステル系、エポキシアクリレート系(ビニルエステル系とも呼ぶ。)、ビニルウレタン系.エポキシ系樹脂等の有機系とセメント類の無機系とがある。
・金属拡張アンカーに比べ、一般に埋込み深さが確保されているので、引張耐力が大きい。
・耐熱性、耐火性又は耐薬品性が要求される部位に使用する場合には十分注意する。
・ 耐力の経年変化の有無については、製造所等のデータ等により十分検討する。
接着系アンカーの形状の例を図14.1.3に、その施工の例を図14.1.4に示す。
図14.1.3_接着系アンカーの形状の例(注入型).jpeg
図14.1.3_接着系アンカーの形状の例(カプセル型).jpeg
図14.1.3 接着系アンカーの形状の例
図14.1.4_接着系アンカーの施工の例(注入型).jpg
図14.1.4_接着系アンカーの施工の例(カプセル型).jpg
図14.1.4 接着系アンカーの施工の例
② 施工方法等
1) あと施工アンカー工法の開発・普及が進んできたことや必要な位置に正確に設置できることなどにより、近年、製品や内外装材の取付けのみでなく、重量物や既存建築物等における耐震補強部材の取付け等にも広く使用されるようになってきた。
「標仕」14.1.3(b)では、「あと施工アンカーの類とする場合は、十分耐カのあるものとする。」と規定している。通常、引抜き荷重の1/3 程度が設計用引張強度とされているが、躯体コンクリートの強度や施工品質等も踏まえて検討する必要がある。
2) あと施工アンカーの種類、耐力、断面寸法、間隔等の検討に当たっては、荷重条件等を整理し、設計用引張強度以下となるようにする。
なお、耐力は、コンクリート等の下地の状態、へりあき寸法、アンカーピッチ(間隔)、埋込み深さ等も重要な要素であり、適用部位や用途により異なるが、一般に、へりあき及び間隔は埋込み深さの2倍以上としている。また、コンクリートブロック等に設置する場合は、所要の耐力が期待できないこともあるので注意する。
3) アンカーに曲げが加わる場合や繰返し荷重や長時間にわたり振動を受ける場合等は、耐力が著しく低下することがあるので、必要に応じて設計担当者と打ち合わせて検討する。
4) あと施工アンカー工法とする場合は、防水層の貫通、埋込み配管等への損傷を与えないよう事前に対策を講ずる必要がある。
5) 「標仕」では、構造耐力又は安全上重要な部分に使用する場合には、特記により引抜き耐力の確認試験を行うこととしている。
試験箇所数は、1ロット当たり3本以上とする。
なお、確認試験を行うと特記された場合でも、構造耐力及び安全上から軽易と見なせるロットでは、試験を省略できるとしている。したがって、監督職員は、あと施工アンカーの取付け状況等を考慮して、安全性に問題がなければ試験を省略させてもよい。
6) 現場において引抜き耐力の確認試験を行い合格したものは、そのまま工事で採用されるため、試験荷重は設計用引張強度までとし、破壊に至るまでの加力は行わないこととしている。
7) 常時、引張力が作用する部位(例えば見上げ面等に施工する場合)において、引抜き方向にあと施工アンカーを適用することは避ける。ただし、引抜き方向に適用しなければならない場合は、フェールセーフを含めて安全性を十分に検討する。
8) 施工上の主な留意事項
あと施工アンカーの耐力は、躯体コンクリートの強度や施工品質に大きく左右されるため、次の事項に留意し、確実な施工管理を行わせる必要がある。
・ 所定のドリル径の選定及び穿孔深さの確保(ドリルにマーキングを施すなど)。
なお、モルタル等仕上材の厚さは,有効埋込み深さに含めない。
・穿孔内の清掃、異物の除去を確実に行う。
・躯体品質により、豆板等を有する場合は、その部位を避けて施工する。
・施工完了後全数について、目視による打込み代の確認、打撃音(手ごたえ)、締付けトルクによる確認等のほか、製造所等の指定する確認事項等を行う。
・接着系アンカーの場合は、施工中、接着材料の流動性、ボルトのマーキング、かくはん状態、接着材料の充填状態、ボルトの埋設状態等について確認する。
また、施工完了後自主検査を行う。自主検査項目は、目視、接触及び打音検査とする。
・あと施工アンカーの品質・性能を確保するためには、施工する技術者の技量等が重要である。これを維持・向上させるための一例として、(-社)日本建築あと施工アンカー協会では、平成8年から「あと施工アンカー技術者資格認定試験」を実施している。
(iii) 発射打込みびょう
「標仕」以外の工法として、発射打込みびょうがある。この工法はコンクリートや鋼材等に適応するびょう打ち機を用いて、空包(びょう打ち機用空包)の火薬の燃焼ガスにより打ち込むもので、びょう打ち機は「銃砲刀剣類所持等取締法」の適用を受け、空包は「火薬類取締法」による規制を受けており、所持及び使用に当たっては法令等に定められた手続きが必要である。
しかし、最近では、これら法令等に抵触しないガス式のびょう打ち機も使用されている。
1) びょう打ち機はその機構により、「高速式」(火薬のガスを直接びょうに作用させるもの)と「低速式」(銃口内にピストン等の中間機構を有するもので、下地に貫入する際の速度が比較的遅いもの)とがあるが、一般に建築の現場では「低速式」が用いられている。また、ガス式のびょう打ち機の機構も「低速式」である(図14.1.5参照)。
図14.1.5_びょう打ち機の機構(高速式-火薬式).jpeg
図14.1.5_びょう打ち機の機構(低速式-火薬式).jpeg
図14.1.5_びょう打ち機の機構(低速式-ガス式).jpeg
図14.1.5 びょう打ち機の機構
2) びょう打ち機の空包は、びょう打ち機の製造所が指定するものとする。
また、びょう打ち機には、各種防止装置や安全装置等が設けられているが、取扱いには注意する。
なお、空包の強さにより、弱・中・強等に分けられ、色で識別されている。
3) コンクリートに対する適正な貫入深さは、びょう軸径 27mm ±5mmで、それ以上深く貫入させてもびょうの固着力は大きくならない。
4) 施工上の主な留意事項
・下地の状況を確認する。特に材質と厚さに注意する。
・びょうが下地を貫通するおそれがある場合には、使用しない。
・改修工事等で既存のコンクリート、間仕切、スラブ等に施工する場合は下地の状態及び背後の状況を確認し、十分に安全性を確保する。
・コンクリートに打ち込む場合、端部の端空きは70mm以上、打込み間隔は80mm以上、母材厚100mm以上が原則とされている。
なお、同じ箇所に2度打ちしてはならない。
・取付け物ごとに群(複数本)による留付けを原則としている。
・びょう打ち機の取扱いについては、(公社) 全国火薬類保安協会「建設用びょう打ち銃、同空包の安全な取扱い」に、その要領が示されているので参考にするとよい。
(b) 金属の腐食と接触腐食防止方法
(1) 金属の腐食を大別すると次のようになる。
腐 食
湿食:接する環境に液体がある場合の腐食であり、200℃以下で起こる腐食はこれに属する。塩、亜硫酸ガス等は腐食を促進する。
乾食:接する環境に液体がなくても生じる腐食で、200℃以上でなければ生じない。
(2) 通常の腐食は、電解質の水溶液を電解液とする局部電池構成により電気分解を起こし、陽極側の金属が消耗する湿食である。
局部電池構成の原因は種々あるが、主なものは次のとおりである。
(i) 金属面の組成、組織その他の不均一性
(ii) 異種金属の接触(接触腐食という。)。異種金属には電極電位の相異があり、電位の差が大きければ腐食の進み方は早くなる。電極電位については表14.1.1に示す。
(iii) 水に溶解する酸素濃度の差。水面付近は、腐食が発生しやすい(通気差腐食 という。)がこれは酸素濃度の差が影響している。同様に、隙間あるいは深い傷等があると、隙間の底との濃度差により腐食が進行する(隙間腐食という。)。
表14.1.1 海水中における金属の電極電位(飽和廿しょう基準)
表14.1.1_海水中における金属の電極電位.jpeg
(3) 金属の接触腐食の防止のための処置
(i) 電極電位の差の小さい材料を選んで用いること。電極電位は環境条件等により変化するが表14.1.1を参考にするとよい。
(ii) 材料と材料の間に絶縁材を挿入する。
① 軟鋼とアルミニウムの場合
1) 軟鋼を塗装等により絶縁する。
2) ポリサルファイド系のシーリング材を接合部にこて塗りすれば非常に効果がある。
② ステンレスと鋼又は銅合金の場合
塩化ビニル材等の絶縁材で一方を被覆するか、間に挟む、あるいは合わせ目の全周にわたってシーリング材で完全にシールする。
③ アルミニウムと銅の場合
エポキシ系の塗料又はタールエポキシ系の塗料を塗り付ける。
(iii) アルミニウムとモルタルあるいは木材との接触腐食の防止
① モルタルに使用する砂は塩分の少ないもの(NaCl換算で0.04%以下)を使用する。
② 木材は塩分や水分(含水率20%以下)の少ないものを使用する。
(c) 表面処理の下地処理
鋼及び亜鉛めっきの下地処理は、18章2節によるものとし、アルミニウムの下地処理は、14.2.2(b)(5)による。
14.1.4 養生その他
(a) 製品のほとんどの部分が工場で仕上げられているので、現場搬入に先立ち養生する必要がある。
「標仕」14.1.4(a)では、比較的使用頻度の高いポリエチレンフィルム及びはく離ペイントを挙げているが、その他の材料でも金物に適したものならばよい。
はく離ペイントはビニル系のものが多く、仕上げ面に塗り付けることにより薄い被覆で保護するが、不要になれば簡単にはがすことのできる塗料である。
(b) 現場に取り付けた製品には、それぞれに相応した養生が必要であるが、出隅等の損傷のおそれのある部分は、当て板、ダンボール紙等の適切な保護材を取り付けて養生するのがよい。
(c) 養生の必要がなくなったときには養生材は速かに取り除き、汚染等があれば清掃除去する。
(d) 装飾等の目的で、鏡面仕上げ等をしたものは、必要に応じてワックス等でふき上げてつや出しをする。
この場合、材種、仕上げ等によっては損傷を起こすこともあるので、専門業者に任せるのがよい。
(e) 部品類は、破損しないようにダンポール箱等に入れ、紛失するおそれのない場所に保管するのがよい。
14.1.5 金属材料の概要
(a) 一般事項
金属の形状、構成による分類を図14.1.6に示す。
図14.1.6_金属の形状、構成による分類.jpeg
図14.1.6 金属の形状、構成による分類
(b) 鋼
(1) 金属工事に用いられる鉄は、ほとんど炭素鋼であり、炭素鋼は鉄を主とし、炭素の量によって主要な性質が支配される。
含まれる炭素量は、0.04~2.1%であり、その他に少量のけい素(Si)、マンガン(Mn)、りん(P)、硫黄(S)を含んでいる。
(2) 鋼製品については、それぞれ次のJISに規定されている。
形鋼:JIS G 3101(一般構造用圧延錮材)、
   JIS G 3350(7.11.2 (a)参照)
鋼板:JIS G 3101、JIS G 3141(冷間圧延鋼板及び鋼帯)
鋼管:JIS G 3444(一般構造用炭素鋼鋼管)、
   JIS G 3466(一般構造用角形鋼管)
鉄筋:JIS G 3112(5.2.1参照)
溶融亜鉛めっき鋼板:JIS G 3302(溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)
溶融亜鉛アルミニウム合金めっき鋼板:
   JIS G 3317(溶融亜鉛-5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯)
溶融アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板:
   JIS G 3321(溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)
(c) ステンレス
(1) ステンレスの種類
(i) 鉄(Fe)と11%以上のクロム(Cr)の合金をつくると外気中における耐食性が増すが、更にニッケルが添加されるといっそう耐食性を妍す。このような合金をステンレスという。
(ii) ステンレス製品については、それぞれ次のJISに規定されている。
ステンレス鋼管:JIS G 3446、JIS G 3448、JIS G 3459
ステンレス鋼板・帯:JIS G 3320、JIS G 4304、JIS G 4305
ステンレス条鋼:JIS G 4303、JIS G 4309、JIS G 4317、
        JIS G 4318、JIS G 4320、JIS G 4321
代表的な冷間ステンレス鋼板及びステンレス鋼線材の化学成分等を表14.1.2に示す。
表14.1.2 冷間ステンレス鋼板及びステンレス鋼線材の化学成分等
表14.1.2_冷間ステンレス鋼板及びステンレス鋼線材の化学成分等.jpeg
(iii) 各系の代表例を次に示す。
① SUS 410〈13Cr〉:マルテンサイト系
やや焦味を帯びた感じで、ステンレス鋼としては比較的錆びやすい。加工性はやや良好であるが、溶接性は良くない。磁性があり磁石につく。
② SUS 430〈18Cr〉:フェライト系
建築関係でSUS 304についで使用されるステンレスである。マルテンサイト系よりやや白く、耐酸性が不十分で、大気中でも少しずつ錆びるので、海岸地方での外装には不向きである。溶接性は良いが、溶接部の耐食性が母材より著しく劣る。また、加工性はオーステナイト系より劣り、焼人れしても硬化しない。熱膨張係数が小である。新品ではオーステナイト系と見分けにくいが、磁性があるので磁石につくことで見分けられる。
③ SUS 304〈18Cr-8Ni〉:オーステナイト系
建築関係で最もよく使用されるステンレスである。①及び②より銀白色である。Ni含有のため耐食性、耐熱性に優れている。加工性、溶接性とも良好で、高温時でも強度は大であり、焼入れしても硬化しない。原則として磁性はないが、加工法によっては結品構造が変わる(加工誘起変態を起こし、面心立方格子から体心立方格子に変化する。)場合もある。
④ SUS 316〈18Cr-12Ni-2Mo〉:オーステナイト系
SUS 304とほとんど類似した特性をもつが、組成分としてモリブテンを加えている。海岸地方や工業地帯のように腐食要因の多い環境の建築物の外装や屋根材として、SUS 304より、やや耐食性のあるものとして使用する場合がある。
⑤ SUS 305〈18Cr-12Ni-0.1C〉:オーステナイト系
SUS 304に比べ、加工硬化性が低い。へら絞り、特殊引抜き、冷間圧延に用いられる。
⑥ SUS X M7〈18Cr-9Ni-3Cu〉:オーステナイト系
建築関係で小ねじ等によく使用されるステンレス鋼線材である。
SUS 304に銅(Cu)を添加して冷間加工性の向上を図ったものである。
(2) ステンレスの取扱い上の注意事項
(i) ステンレスは、比較的耐食性の高い金属ではあるが、必ずしも錆びないものではない。したがって、不適当な使い方をすれば、錆びることもあり次の事項には注意する必要がある。
① 炭素鋼と接触させると、初めは炭素鋼が侵されるが、赤錆が発錆するとステンレスも侵される。
② 水のたまるような狭い隙間があると腐食が進む。これは、酸素が十分に行きわたらず、酸化皮膜が形成できないため、腐食しやすくなることによる。
③ 銅合金と接触して腐食が始まると進み方が急速になる。
④ 空気中の亜硫酸ガス、ばい煙の粒子、塩分等によっても腐食する。
(ii) ステンレスの汚れや鋳は、ほとんどの場合、鉄粉、塩分その他の異物の付着に起因するもらい錆である。したがって、鉄粉等が付着しそれが湿気を含んで赤錆状に広がらないうちに除去する。このため、特に錆びやすい環境で使用するステンレスの場合は、材質を考慮するとともにその納まりについても清掃しやすいよう配慮する必要がある。
(d) アルミニウム及びアルミニウム合金
(1) アルミニウム及びアルミニウム合金(以下、この章では「アルミニウム」という。)は、比重が2.7で鉄に比べ約1/3の軽い金属である。
表面は、銀白色で自然生成の酸化皮膜に保護されて美観を保つが、更にその性能を高め意匠性を付加させるために、陽極酸化処理や塗装等の表面処理が行われる。
アルミニウムの種類、化学成分、機械的性質(引張強さ、耐力、伸び等)について、板材はJIS H 4000(アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条)、形材はJIS H 4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)に定められている。
建築で用いる主なアルミニウムを表14.1.3に示す。
表14.1.3 建築で用いる主なアルミニウム及びアルミニウム合金
表14.1.3_建築で用いる主なアルミニウム及びアルミニウム合金.jpeg
(2) アルミニウムは、熱処理、加工硬化により材質の機械的性質を調整(調質)し、使用目的に合わせることができる。JIS H 0001(アルミニウム、マグネシウム及びそれらの合金ー質別記号)では、これによる分類を定めている。
建材においては、板材類ではHタイプ、押出形材ではTタイプが多く使われる。アルミニウムの材質表示として板材ではA 1100 P-H14、押出形材ではA 6063 S-T5が代表的なものである。
ここでAに続く番号は、表14.1.3 の合金種類の呼称、Pは板材、Sは普通級精度の押出形材を示し、H14、T5 はJIS H 0001による細分記号を示しており、H14は加工硬化だけで1/2 硬質にしたもの、T5 は押出し後空冷し、その後人工時効硬化処理を施したものである。
(3) アルミニウムは、比較的耐食性に優れているが、酸、アルカリ及び塩素分の介在によって腐食しやすくなる。このため、アルミニウム建材には各種の表面処理が施される(2節参照)。
(4) アルミニウムは湿潤環境で異種金属と接触すると電気化学的な腐食を生じることがある。乾燥状態では通常の仕様により防止できるが、アルミニウム周囲のモルタルや木材が漏水や結露水等により湿潤状態が持続されると腐食を生じることがある。このとき含有する塩素が多いと腐食は促進する。
(5) アルミニウムは大気中の汚染物質により汚れ、そのまま放置すると外観が損なわれるとともに点食等の腐食を生じることがある。美観を維持し使用するためには定期的なメンテナンスを行うことが必要である。
(6) 製品の仕上り及び劣化状態を診断する場合、有害な傷や見え掛り部の使用上問題となる傷、汚れ、反り、へこみ等についてあらかじめ限度を定めておき、この限度内に収まっていることを考えればよい。これらの限度を定めるに当たり判断基準として建設大臣官房技術調査室監修「外装仕上げの耐久性向上技術」の診断方法を抜枠して次に示す。
外装仕上げの耐久性向上技術
第4編 アルミニウム合金製外装および開口部材
2.2 診断手法

劣化現象ごとの診断と判定は、2.2.1~2.2.5によるものとし、原則として目視による診断とする。診断は同一部位または同一部材について最低3箇所以上行い、劣化の進行程度(デグリー)に基づいて他との相対比較によって劣化度(グレード)を判定する。なお、診断においては診断箇所は、必ず乾燥面とし、できるだけ均ーな明るさのもとで行うものとする。

i) 診断は、非専門家が判断しやすいように原則として「なし」「目立つ」の2段階評価とし、汚れのうちのしみ、きず、腐食のうちの点食、その他の腐食および塗膜劣化については「目立つ」「やや目立つ」および「なし」の3段階評価とし、視力1.0程度の者が目視で5mの距離から認められる程度を「目立つ」とし、1mの距離から認められる程度を「やや目立つ」とする。
ii) 劣化の評価は評価者の知識、目的意識など主観に依存しやすいが、これをなるべく客観的、定量的な評価を行えるようにした。

(e) 銅及び銅合金
(1) 銅は淡赤色であり、亜鉛、すず、アルミニウム等と合金を作ると黄色から金色になり、ニッケルとの合金は白色になる。
(2) 一般に建築で用いられている銅合金には、次のようなものがある。
(i) 丹銀
銅に 5~20%の亜鉛を加えたものを丹銅という。
丹銅は、JIS H 3100(銅及び銅合金の板並びに条)のC 2100 ~ C 2400に定められている。このうち建築用としては C 2200、通称 9:1(くいち)丹銅が用いられる。プロンズ板というのは、ほとんどがこの丹銅板である。
(ii) 黄銅
銅に 30~40%の亜鉛を加えたものを黄銅という。
通常、黄銅には亜鉛の含有量により7:3黄銅、65:35黄銅、6:4黄銅に区分されている。色は亜鉛が少ないものほど黄色が強い。亜鉛が増すに従って強度は高くなるが、加工性は劣る。用途として建築用では階段の手すり、建具金物、目地棒、内外装材及び建築装飾に用いられる。
なお、銅、丹銅及び黄銅の組成と色調との関係を図14.1.7に示す。
図14.1.7_洞、鉛銅及び黄銅の組織と色調.jpeg
図14.1.7 銅、丹銅及び黄銅の組成と色調
(iii) 青銅
一般には、銅を主としてすずを加えたものを青銅という。
通常は、銅にすず 2~11%と亜鉛及び鉛を加えたもので、給排水金具、建築用金具として用いられている。特殊な建築金物にりん青銅が用いられることもある。
一方、建築金物の業界では、(i) の丹銅、(ii)の黄銅を含めて「プロンズ」ということが多いので注意する必要がある。
(iv) 洋白〈ニッケルシルバー〉
銅にニッケルと亜鉛を加えた合金で、ニッケルの多いものは銀白色、少ないものは黄色を帯ぴた灰色になる。
「洋銀」とは洋白の別名で銀白色である。
(3) 銅合金の仕上げの種類及び方法について表14.1.4に示す。
表14.1.4 銅合金の仕上げ
表14.1.4_銅合金の仕上げ.jpeg