18章 塗装工事 4節 合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)

18章 塗装工事
4節 合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)
18.4.1 一般事項
この節は、建築物内外部の一般部、構造体、建具等の木部及び錆止め塗料を施した鉄鋼面や亜鉛めっき鋼面に対する汎用的な着色塗装仕上げを対象としている。
塗膜の耐アルカリ性が劣るため、コンクリート、モルタル、ボード類等の素地には適用できない。
本節で適用する材料の特徴は、以下のとおりである。
(1) 合成樹脂調合ペイント(JIS K 5516)
JIS K 5516に規定されており、隠ぺい力や耐候性に優れた着色顔料、体質顔料等と、耐水性や耐候性に優れる長油性フタル酸樹脂ワニスとを組み合わせて、空気中の酸素によって乾性油が酸化重合して硬化乾燥する塗料である。一般的に、鉄鋼面や亜鉛めっき鋼面に対する各種錆止めペイントを下塗りとする塗り仕様の中塗りと上塗りに、また、木部塗装における上塗りに用いられる。JISでは、1種は主に建築用、2種は大型鋼構造物用に分類されており、「標仕」では、1種を用いると規定している。
この塗料の特徴は、次のとおりである。
(a) はけ塗り作業に適しており、はけ目やだれが少なく、表面光沢をもつ平滑な仕上り塗膜が得られる。
(b) 酸化重合で硬化するため、乾燥時間は8~16時間程度と遅く、固形分が多く肉持ち感があり、硬くて汚れが付着しにくい塗膜を形成する。
(c) 硬化した塗膜は黄変しにくく、耐油性や80℃程度までの耐熱性をもつ。
(d) 塗膜の吸水性が比較的大きく、長期間に渡る耐水性は期待できない。
(e) 塗膜の耐アルカリ性が劣るため、コンクリート、モルタル等のアルカリ性を有する素地の塗装には使用できない。
(f) 暗い場所に塗装した場合、塗膜が黄味をおびて変色(黄変)する現象(暗所焼け)を生じることがあるため、白や淡彩色を暗い場所に塗装することは避けることが望ましい。
(2) 木部下塗り用調合ペイント
18.2.2(1)(ア) を参照する。木部合成樹脂調合ペイント塗りの下塗り工程に適用している。
(3) 合成樹脂エマルションパテ
18.2.2(1)(ウ) を参照する。
18.4.2 木部合成樹脂調合ペイント塗り
(1) 材 料
木部下塗り用調合ペイント及び合成樹脂エマルションパテについては、18.4.1(2)及び(3)を参照する。
(2) 塗 装
(ア) 「標仕」では、素地ごしらえ工程4「節止め」にも、「JASS 18 塗装工事」M-304(木部下塗り用調合ペイント)が規定されている。
(イ) 下塗りは、素地に対して塗料を十分なじませる目的で実施する。
(ウ) 合成樹脂エマルションパテは、耐水性が劣り、塗膜のふくれやはがれの原因になるため、浴室や洗面所等の水回りや外部には「耐水形」であっても用いない。
(エ) 塗装方法は、はけ塗り又は吹付け塗りとする。
(オ) 各塗装工程の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.4.1に示す。
表18.4.1 木部合成樹脂調合ペイント塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間
表18.4.1_木部合成樹脂調合ペイント塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間.jpeg
18.4.3 鉄鋼面の合成樹脂調合ペイント塗り
(1) 塗装方法は、はけ塗り又は吹付け塗りとする。
(2) 素地ごしらえ工程3「錆落し」の後は、発錆を防ぐため、標準工程間隔時間以内に次工程に移ることが重要であるが、標準工程間隔時間を超えて上に塗り重ねる場合は、適切な処理を行う。塗料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を表 18.4.2に示す。また、錆止め塗料塗りに用いる錆止め塗料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間は表18.3.1による。
表18.4.2 鉄鋼面合成樹脂調合ペイント塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間
表18.4.2_鉄鋼面合成樹脂調合ペイント塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間.jpeg
18.4.4 亜鉛めっき鋼面の合成樹脂調合ペイント塗り
(1) 塗装方法は、18.4.3(1)による。
(2) 塗料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間は、表18.4.2による。また、錆止め塗料塗りに用いる錆止め塗料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間は表18.3.2による。

18章 塗装工事 5節 クリヤラッカー塗り(CL)

18章 塗装工事
5節 クリヤラッカー塗り(CL)
18.5.1 一般事項
この節は、建築物内部の造作材、建具、造付け家具等の木部の透明塗装仕上げを対象としている。
18.5.2 クリヤラッカー塗り
(1) 材 料
(ア) 合成樹脂目止め剤
との粉、炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウムなどの体質顔料を合成樹脂ワニス、溶剤・添加剤などと練り合わせたものである。
(イ) 溶剤形着色剤
溶剤形染料着色剤と溶剤形顔料着色剤があり、前者は染料、後者は顔料を有機溶剤に溶解したものである。
(ウ) 油性染料着色剤
一般的にはオイルステインと呼称される着色剤であり、染料を芳香族系炭化水素・脂肪族系炭化水素と少量の油ワニスあるいは合成樹脂ワニスなどに溶解したものである。
なお、オイルステイン(油性染料着色剤)のみを利用した建築物内部の木部仕上げについては、18.11.2にオイルステイン塗りとして示している。
(エ) ウッドシーラー
JIS K 5533(ラッカー系シーラー)に規定されており、ニトロセルロースを主要な塗膜形成要素とした透明の揮発乾燥性の塗料で、木材表面に一部浸透して、自然乾燥で短時間に塗膜を形成する。
素地への吸込止め、素地押え、着色押えをする目的で下塗りに用いる。
(オ) サンジングシーラー
JIS K 5533に規定されており、ニトロセルロースを主要な塗膜形成要素とした半透明の揮発乾燥性の塗料で、自然乾燥で短時間に塗膜を形成する。
膜厚を確保して肉持ち感を与えるとともに、研磨がしやすく平滑に仕上げる目的で中塗りに用いる。
(カ) 木材用クリヤラッカー
JIS K 5531(ニトロセルロースラッカー)に規定されており、工業用ニトロセルロースとアルキド樹脂を主要な塗膜形成要素とした、液状の揮発乾燥性の塗料である。
自然乾燥で短時間に塗膜を形成する塗料であるため、吹付け塗りとするのが一般的である。比較的小面積の場合又は吹付け塗りで、塗料のロスが多く不経済となる場合等は、はけ塗りも適用される。
塗膜が薄く肉持ちが悪いため、平滑な塗膜表面を得るには塗重ねが必要となる。
湿度が高い場合には、空気中の水蒸気が塗膜面に凝縮吸着されて、白化〈かぶり〉を生じやすい。
(2) 塗 装
(ア)「標仕」では、塗装種別をA種とB種としており、種別の選定は特記により、特記がなければ B種と規定している。A種は目止めの工程が含まれ上塗り2回の工程であるため、B種と比較すると平滑で肉持ち感のある仕上がりとなる。A種は美観性を要求される場合に適用する。
(イ) 目止めは素地である木材の導管、仮導管、細胞間隙などの穴を埋めて、平滑な塗装素地面を得るための工程であり、一般的に目止め剤が使用される。A種では、目止め剤として合成樹脂目止め剤を使用することとしている。また、「標仕」表 18.5.1の(注)2に示すようにA種で着色する場合、着色に用いる塗料の種類は特記による。着色剤は、溶剤形着色剤又は油性染料着色剤(オイルステイン)としている。いずれの着色剤も使用できるが、下塗りであるウッドシーラーとの接着性を考慮すると溶剤形着色剤を使用することが望ましい。また、溶剤形着色剤には溶剤形染料着色剤と溶剤形顔料着色剤があるが、後者の方が、前者と比較して退色しない。
着色を行わない場合は、素地の色調を活かした木地(生地)仕上げとなる。
(ウ) 下塗りはウッドシーラー、中塗りはサンジングシーラーを用いる。
(エ) 下塗り、中塗り、上塗りは、はけ塗り又は吹付け塗りとする。はけ塗りの場合は、ワニスはけを用いて、できる限り木目に沿って軽く塗り付ける。中塗り、上塗りは、前工程の塗膜が十分に乾燥していることを確認した後に施工する。
(オ) クリヤラッカーは、高湿度環境で塗装すると白化を生じやすいため、相対湿度 80%以上の時は作業を中止する。
(カ) 研磨は、所定の研磨紙を用いて、塗膜が十分に乾燥していることを確認してから、目止めや着色等の素地ごしらえ面まで研ぎ出さないように注意して、平滑になるように空研ぎする。研磨が終了したら、研ぎかすを十分に除去してから次の工程に移る。
(キ) 各塗装工程の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.5.1に示す。
表18.5.1 クリヤラッカー塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間
表18.5.1_クリヤラッカー塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間.jpeg

18章 塗装工事 6節 アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り(NAD:Non-Aqueous-Dispersion)

18章 塗装工事
6節 アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り(NAD:Non-Aqueous-Dispersion)
18.6.1 一般事項
この節は、コンクリート、モルタル等で構成される建築物内部の平滑な着色仕上げを対象としている。
18.6.2 アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り
(1) 材 料
JIS K 5670(アクリル樹脂系非水分散形塗料)に規定されており、アクリル樹脂系非水分散形ワニスを主要な塗膜形成要素とする、分散粒子融着乾燥形の塗料である。一般的に、水を媒体として樹脂を分散安定化させたものなどをエマルションと呼ぶが、有機溶剤を媒体として樹脂を分散させたものが非水分散形ワニスで、通‘常 NAD (Non Aqueous Dispersion)等と略称されている。塗料は溶剤系塗料に比べ溶剤臭が少なく、常温で比較的短時間で硬化し、耐水性や耐アルカリ性に優れた塗膜が得られる。アクリル樹脂系非水分散形ワニスには、有機溶剤中毒予防規則の第三種有機溶剤等が用いられており、関係法令等に基づいた保管や塗装作業等に十分な配慮が必要である。
なお、有機溶剤中毒予防規則については、18.1.4を参照されたい。
(2) 塗 装
(ア) 下塗り、中塗り、上塗りには同一材料を使用する。
(イ) 使用するシンナーが不適切であると、塗装作業性が低下して、仕上りに欠陥を生じるため、塗料の製造所が指定するシンナーを使用する。
(ウ) 塗装方法は、はけ塗り、ローラーブラシ塗り又は吹付け塗りとし、吹付け塗りの場合は、塗料に適したノズルの径や種類を選定する。
(エ) 各塗装工程の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.6.1に示す。
表18.6.1 アクリル樹脂系非水分散形塗料塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間
表18.6.1_アクリル樹脂系非水分散形塗料塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間.jpeg

18章 塗装工事 7節 耐候性塗料塗り(DP)

18章 塗装工事
7節 耐候性塗料塗り(DP)
18.7.1 一般事項
この節は、長期間にわたる耐候性や美装性を要求される建築物外部の鉄骨、亜鉛めっきを施された鉄骨、鋼製建具及びコンクリート外壁等に対する着色塗装仕上げをする場合に適用する。
塗装の仕様には、海岸や工業地帯等の厳しい腐食環境における重防食仕様といわれるものと、一般的な腐食環境におけるものとがあり、この節では後者の一般的な腐食環境を前提としたものである。
平成25年版の「標仕」の耐候性塗料塗りでは、溶剤系塗料が適用されていた。しかし昨今では、環境保全や健康安全への配慮から、建築現場における塗装では、光化学オキシダントの低減、有機溶剤中毒の抑制や防止などを目的として、光化学活性の少ない弱溶剤系塗料が使用されている。このため平成28年版「標仕」から、耐候性塗料塗りに弱溶剤系塗料が採用された。
使用する材料の規格番号が、鉄鋼面及び亜鉛めっき鋼面の金属系素地とコンクリート面及び押出成形セメント板面のセメント系素地で異なっているため、注意が必要である。
なお、令和4年版「標仕」から、鉄鋼面及び亜鉛めっき面の錆止め塗料の記載を3節に移行した。
18.7.2 鉄鋼面の耐候性塗料塗り
(1) 材 料
(ア) ジンクリッチプライマー(JIS K 5552)
 18.3.2(2)(エ)を参照する。
(イ) 構造物用さび止めペイント(JIS K 5551)
 18.3.2(2)(オ)を参照する。
(ウ) 鋼構造物用耐候性塗料(JIS K 5659)
JIS K 5659に規定されているもので、種類はA種(溶剤形塗料)とB種(水性塗料)の2種類あり、各種類の中には各々、上塗り塗料と中塗り塗料がある。上塗り塗料は耐候性により等級が規定されており、品質が最も高いものを1級とし、順に2級、3級としている。「標仕」では、上塗り塗料の等級は特記されることになっている。上塗り塗料と中塗り塗料は、主剤と硬化剤からなる常温乾燥形の塗料である。使用に当たり、中塗り塗料の標準工程間隔時間が7日以内と制限があることに注意する必要がある。
JIS K 5659 A種は、旧規格JIS K 5657(鋼構造物用ポリウレタン樹脂塗料)と旧規格JIS K 5659(鋼構造物用ふっ素樹脂塗料)を統合し、両塗料の中間のグレードとして、アクリルシリコン樹脂系の耐候性区分を取り込んで制定された規格である。したがって、当該規格の1級の品質は旧規格JIS K 5659の品質に相当し、3級の品質は旧規格JIS K 5657の品質に相当するとしていた。最近では、ふっ素樹脂塗料は1級、シリコーン樹脂塗料は 1~2級、ポリウレタン樹脂塗料 は 2~3級に該当している。
2018年JIS K 5659の改定に伴い、水系塗料が規定に加わった。種類が、有機溶剤を主要な揮発成分としたA種と、水を主要な抑発成分としたB種に分類されたが、B種に関しては、2022年1月時点では JISマーク表示の認証を受けている製品がない。このため(-社)日本塗料工業会では、水系塗料を用いる建築物の鉄部仕様に対する適用性の検討及び現行の溶剤系仕様と性能を比較することを目的とし、「鉄部建築工事における高耐久水性仕様検証ワーキング」を立ち上げ実証実験を行っている。その成果については、2020年9月から日本建築学会大会学術講演会及び日本建築仕上学会大会学術講演会で発表を行っている。
弱溶剤系の鋼構造物用耐候性塗料に用いる材料は、労働安全衛生法に定めている第3種有機溶剤(ミネラルスピリットなど)を用いた塗料である。溶解力の強いトルエンやキシレンなどと比べて、溶解力の弱い第3種有機溶剤を用いた塗料で、弱溶剤系塗料と呼ばれている。弱溶剤系塗料は従来の溶剤系塗料に比べ、溶解力や臭気が低く、塗装時に既存塗膜をリフティングさせることが少なく、新設工事に用いるほか途替工事にも用いられている。
(2) 塗 装
(ア) 「標仕」の鉄鋼面は、屋外の鉄骨を主な対象としている。
(イ) 構造物用さび止めペイントA種及び鋼構造物用耐候性塗料中塗り塗料は、その上に塗装されるまでの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間に十分注意する。
(ウ) 下塗りとして弱溶剤系塗料を使用した場合、その後の工程の中塗り、上塗りも弱溶剤系塗料を使用する。
(エ) 使用する塗料、シンナー、調合割合、可使時間等は、塗料の製造所の指定によるものとする。
(オ) 塗装方法は、はけ塗り、ローラーブラシ塗り若しくは吹付け塗りとする。
(カ) 各塗装工程の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を表18.7.1に示す。
(キ) 下塗りとして用いる反応硬化形エポキシ樹脂系塗料の標準工程間隔時間には、 7日以内と制限があるため、「標仕」表18.7.1では、「錆止め塗料塗り」の次に、工程1「研磨紙ずり」を設けている。
表18.7.1 鉄鋼面の耐候性塗料塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間
表18.7.1_鉄鋼面の耐候性塗料塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間.jpeg
18.7.3 亜鉛めっき鋼面の耐候性塗料塗り
(1) 材 料
(ア) 鋼構造物用耐候性塗料(JIS K 5659)
 18.7.2(1)を参照する。
(イ) 変性エポキシ樹脂プライマー
 18.3.2(2)(イ)を参照する。
(2) 塗 装
(ア) 全ての塗装工程を鋼製建具等の製造工場で行う場合は、現場に搬入して組立後の補修方法等について事前に検討及び協議をしておく必要がある。
(イ) 下塗りとして弱溶剤系塗料を使用した場合、その後の工程の中塗り、上塗りも弱溶剤系塗料を使用する。
(ウ) 使用する塗料、シンナー、調合割合、可使時間等は、塗料の製造所の指定によるものとする。
(エ) 塗装方法は、はけ塗り、ローラーブラシ塗り若しくは吹付け塗りとする。
(オ) 各塗装工程の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.7.2に示す。
表18.7.2 亜鉛めっき鋼面の耐候性塗料塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間
表18.7.2_亜鉛めっき鋼面の耐候性塗料塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間.jpeg
18.7.4 コンクリート面及び押出成形セメント板面の耐候性塗料塗り
(1) 材 料
(ア) 反応形合成樹脂シーラーおよび弱溶剤系反応形合成樹脂シーラー
JASS 18 M-201に規定されているエポキシ樹脂を主成分とする反応硬化形塗料であり、セメント系素地との接着性に優れている。
塗料はその溶媒の種類により、溶剤系塗料と弱溶剤系塗料に区分される。
(イ) 常温乾燥形ふっ素樹脂塗料用中塗り(常温乾燥形ふっ素樹脂塗料用中塗りおよび弱溶剤系常温乾燥形ふっ素樹脂塗料用中塗り)
JASS 18 M-405に規定されている反応硬化形塗料で、エポキシ樹脂系やポリウレタン系のものがある。塗料はその溶媒の種類により、溶剤系塗料と弱溶剤系塗料に区分される。
(ウ) アクリルシリコン樹脂塗料用中塗り(アクリルシリコン樹脂塗料用中塗りおよび弱溶剤系アクリルシリコン樹脂塗料用中塗り)
JASS 18 M-404 に規定されている反応硬化形塗料で、エポキシ樹脂系やポリウレタン系のものがある。塗料はその溶媒の種類により、溶剤系塗料と弱溶剤系塗料に区分される。
(エ) 2液形ポリウレタンエナメル用中塗り(2液形ポリウレタンエナメル用中塗りおよび弱溶剤系2液形ポリウレタンエナメル用中塗り)
JASS 18 M-403に規定されている反応硬化形塗料で、エポキシ樹脂系やポリウレタン系のものがある。塗料はその溶媒の種類により、溶剤系塗料と弱溶剤系塗料に区分される。
(オ) 建築用耐候性上塗り塗料
JIS K 5658(建築用耐候性上塗り塗料)は、旧規格JIS K 5656(建築用ポリウレタン樹脂塗料)と旧規格JIS K 5658(建築用ふっ素樹脂塗料)を統合したうえで、両塗料の中間となる耐候性グレードとしてアクリルシリコン樹脂系を取り込み、主要原料として、ふっ素樹脂、シリコーン樹脂又はポリウレタン樹脂を用いるもので、主剤と硬化剤を混合して使用する塗料としている。
耐候性による等級区分が設定されており、品質が最も高いものを 1級とし、順に2級、3級とされ、1級の品質は旧規格JIS K 5658の品質に相当し、3級の品質は旧規格 JIS K 5656の品質に相当するとしていた。「標仕」では、A種が主要 原料ふっ素樹脂(1級)、B種が主要原料シリコーン樹脂(2級)、C種が主要原 科ポリウレタン樹脂(3級)のように、等級が主要原料 により限定されているが、 JIS K 5658では樹脂系と各級を一致させないとしている。最近では、ふっ素樹脂 は1級、シリコーン樹脂は1~2級、ポリウレタン樹脂は2~3級に該当している。
弱溶剤系の建築用耐候性塗料塗りには、労働安全衛生法に定めている第3種有機溶剤(ミネラルスピリットなど)を用いた材料を使用する。溶解力の強いトルエンやキシレンなどと比べて、溶解力の弱い第3種有機溶剤を用いた塗料で、弱溶剤系塗料と呼ばれている。弱溶剤系塗料は従来の溶剤系塗料に比べ、溶解力や臭気が低く、塗装時に既存塗膜をリフティングさせることが少なく、新設工事に用いるほか塗替工事にも用いられている。
容器には規格番号と名称に加えて、等級及び主要樹脂成分の一般名称(ふっ素樹脂、シリコーン樹脂又はポリウレタン樹脂のいずれか)を表示することが規定されている。
(2) 塗 装
(ア)「標仕」のコンクリート面及び押出成形セメント板面は、外壁等を主な対象としている。
(イ) 全ての塗装工程を製造工場で行う場合は、現場に搬入して組立後の補修方法等について事前に検討及び協議をしておく必要がある。
(ウ) コンクリート面に耐候性塗料塗りを適用する場合の素地ごしらえは、「標仕」表18.2.6を適用する。
(エ) 下塗りとして弱溶剤系液料を使用した場合、その後の工程の中塗り、上塗りも弱溶剤系塗料を使用する。
(オ) 使用する塗料、シンナー、;調合割合、可使時間等は、塗料の製造所の指定によるものとする。
(カ) 塗装方法は、はけ塗り、ローラーブラシ塗り若しくは吹付け塗りとする。
(キ) 各塗装工程の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.7.3に示す。
表18.7.3 コンクリート面及び押出成形セメント板面の耐候性塗料塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間
表18.7.3_Con面及びEPC面の耐候性塗料塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間.jpeg

18章 塗装工事 8節 つや有合成樹脂エマルションペイント塗り(EP-G)

18章 塗装工事
8節 つや有合成樹脂エマルションペイント塗り(EP-G)
18.8.1 一般事項
この節は、建築物の内外壁面、天井等のコンクリート面、モルタル面、せっこうプラスター面、せっこうボード面及びその他のボード面等並びに屋内の木部、鉄鋼面及び亜鉛めっき鋼面に用いる、つや有合成樹脂エマルションペイント塗り仕上げを対象としている。
つや有合成樹脂エマルションペイント塗りは、ホルムアルデヒド発散建築材料に指定されていない塗料を利用した塗装仕様である。屋内の木部、鉄鋼面、亜鉛めっき鋼面に対して、本塗り仕様と同様の用途に適用できる塗装仕様として、4節の合成樹脂調合ペイント塗り及びフタル酸樹脂エナメル塗りがある。しかし、合成樹脂調合ペイント(JIS K 5516)及びフタル酸樹脂エナメル(JIS K 5572)はホルムアルデヒド発散建築材料に指定されており、特記によりF☆☆☆☆以外の材料が指定されている場合には、内装としての使用面積が制限されることになる。つや有合成樹脂エマルションペイント塗りは、ホルムアルデヒド発散建築材料に指定されている塗料を使用していないため、建築基準法のシックハウス症候群対策による規制を受けない。
つや有合成樹脂エマルションペイントは水系塗料であり、合成樹脂調合ペイントやフタル酸樹脂エナメルと比較して、揮発性有機化合物(VOC)の発生が少なく、ホルムアルデヒドの発散等級はF☆☆☆☆である。
18.8.2 コンクリート面、モルタル面、せっこうプラスタ一面、せっこうボード面、その他ボード面等のつや有合成樹脂エマルションペイント塗り
(1) 材 料
(ア) 合成樹脂エマルションシーラー
JIS K 5663(合成樹脂エマルションペイント及びシーラー)に規定される品質のものとする。
(イ) つや有合成樹脂エマルションペイント(JIS K 5660)
JIS K 5660に規定されており、合成樹脂エマルションと着色顔料、体質顔料、補助剤、添加剤等から構成される水系塗料である。
水による希釈が可能で、水を加えて登料に流動性をもたせることができ、臭気が少なく溶剤の揮散による大気汚染や中毒の危険性が少ない塗料である。そのため、従来のアクリル樹脂エナメルを使用していた部位に使われるようになってきている。
塗布された塗料は、水分が蒸発するとともに樹脂粒子が接近融着して連続塗膜を形成する。気温 –5℃以下では凍結するため、低温保管を避ける。また、気温 5℃以下では施工を避ける。
塗装用具や塗膜硬化機構は、9節に述べる「合成樹脂エマルションペイント」と同様であり、一度硬化乾燥すると表面光沢のある耐水性を有する塗膜になる。
(2) 塗 装
(ア) 「標仕」では、天井面等の見上げの部分においては、外観上特に問題がないため、工程3「研磨紙ずり」を省略することとしている。
(イ) コンクリート面に、つや有合成樹脂エマルションペイント塗りを適用する場合の素地ごしらえは、「標仕」表18.2.5を適用する。
(ウ) 塗装方法は、はけ塗り、ローラーブラシ塗り、吹付け塗りのいずれかとする。
(エ) 塗料の塗付けは、同じ方向にそろえ、1日の工程終了は区切りのよい所まで塗装する。途中で終了したり塗り残したりすると、色むらや光沢むら等の仕上り外観に異常を生じることがある。
(オ) 希釈に使用する水は、水道水を標準として、水道水以外の水を使用する場合は、事前に各材料との適合性を確認する必要がある。
(カ) つや有合成樹脂エマルションペイントは水系塗料であるが、塗料の飛散、粉じんの吸入、皮膚や目への付着等、安全衛生に注意する。
(キ) 塗料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.8.1に示す。
(ク) 各工程の工程間隔時間及び最終養生時間は、十分確保する。工程間隔時間及び最終養生時間が短いと研磨紙ずりの時に目詰りしたり、研磨目が出たりして、仕上り外観を損ねる場合がある。
(ケ) 下塗りに用いる合成樹脂エマルションシーラーは、上塗塗料の製造所の指定する水系塗料とする。
表18.8.1 つや有合成樹脂エマルションペイント渡りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間
表18.8.1_つや有合成樹脂EP塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間.jpeg
18.8.3 木部のつや有合成樹脂エマルションペイント塗り
(1) 材 料
(ア) 合成樹脂エマルションシーラー
 18.8.2(1)(ア)を参照する。
(イ) 合成樹脂エマルションパテ(JIS K 5669)
 JIS K 5669に規定される耐水形薄付け用とする。
(ウ) つや有合成樹脂エマルションペイント
 18.8.2(1)(イ)を参照する。
(2) 塗 装
(ア) 上塗りとの適合性を確保するため、合成樹脂エマルションシーラーはつや有合成樹脂エマルションペイントの製造所が指定する水系塗料とする。
(イ) 合成樹脂エマルションパテの耐水性は、エポキシ樹脂パテのような反応硬化形樹脂パテと比較すると、十分ではない。したがって、塗膜のふくれやはがれを防止するために、浴室や洗面所等の水回り部分への適用は避ける。
(ウ) 塗料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を表18.8.2に示す。
表18.8.2 木部のつや有合成樹脂エマルションペイント塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間
表18.8.2_木部のつや有合成樹脂EP塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間.jpeg
18.8.4 鉄鋼面のつや有合成樹脂エマルションペイント塗り
(1) 材 料
(ア) 鉛・クロムフリーさび止めペイント2種
 18.3.2(2)(ア)を参照する。
(イ) 水系さび止めペイント
 18.3.2(2)(ウ)を参照する。
(ウ) つや有合成樹脂エマルションペイント
 18.8.2(1)(イ)を参照する。
(2) 塗 装
(ア) 水系さび止めペイント又は鉛・クロムフリーさび止めペイント2種の性能を発揮させるためには、素地ごしらえを十分に行い、鉄鋼面に良くなじませるように塗装する。
(イ) 塗料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.8.3に示す。
表18.8.3 鉄鋼面のつや有合成樹脂エマルションペイント塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間
表18.8.3_鉄鋼面のつや有合成樹脂EP塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間.jpeg
18.8.5 亜鉛めっき鋼面のつや有合成樹脂エマルションペイント塗り
(1) 材 料
(ア) 水系さび止めペイント
 18.3.2(2)(ウ)を参照する。
(イ) つや有合成樹脂エマルションペイント
 18.8.2(1)(イ)を参照する。
(2) 塗 装
塗料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.8.4に示す。
表18.8.4 亜鉛めっき鋼面のつや有合成樹脂エマルションペイント塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間
表18.8.4_亜鉛めっき鋼面のつや有合成樹脂EP塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間.jpeg

18章 塗装工事 9節 合成樹脂エマルションペイント塗り(EP)

18章 塗装工事
9節 合成樹脂エマルションペイント塗り(EP)
18.9.1 一般事項
この節は、建築物の内外壁面や天井等のコンクリート面、モルタル面、せっこうプラスター面、せっこうボード面、その他ボード面等に対する合成樹脂エマルションペイント塗りに適用する。平滑で汎用的な着色仕上げを対象としている。
18.9.2 合成樹脂エマルションペイント塗り
「標仕」18.9.2では、合成樹脂エマルションペイント塗りは、表18.9.1により種別は特記による。特記がなければB種と規定している。美粧性が求められる場合には、中塗りの1回目のあとに研磨紙ずりを行い、2回目の中塗りを行うことで平滑性と塗膜の原みを持たせた仕上げとなるA種を適用する。
(1)材 料
(ア) 合成樹脂エマルションシーラー
 18.8.2(1)(ア)を参照する。
(イ) 合成樹脂エマルションペイント
 JIS K 5663(合成樹脂エマルションペイント及びシーラー)に規定されており、合成樹脂エマルションをベースとして、着色顔料や体質顔料、補助剤、添加剤等 を加えた水系のつや消し塗料である。
水による希釈が可能で加水して塗料に流動性をもたせることができ、臭気が少なく溶剤揮散による大気汚染や中毒の危険性が少ない塗料である。
塗付された塗料は、水分が蒸発するとともに樹脂粒子が接近融着して、連続塗膜を形成する。気温 −5℃以下では凍結するため、低温保管を避ける。また、気温5℃以下では施工を避ける。
JISでは1種(主として外部用)及び2種(内部用)が規定されているが、「標仕」では1種のみをコンクリート面、モルタル面、せっこうプラスタ一面、せっこうボード面、その他ボード面等に適用している。その他木部の着色仕上げには使用可能であるが、金属面には使用できない。
(2) 塗 装
(ア) 飲料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.9.1に示す。
(イ) (ア) 以外は、18.8.2(2)に準ずる。
表18.9.1 合成樹脂エマルションペイント塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間
表18.9.1_合成樹脂EP塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間.jpeg

18章 塗装工事 10節 ウレタン樹脂ワニス塗り(UC)

18章 塗装工事
10節 ウレタン樹脂ワニス塗り(UC)
18.10.1 一般事項
この節は、建築物内部の建具、手すり、床等の木質系部材に対する仕上げを対象としている。
18.10.2 ウレタン樹脂ワニス塗り
(1) 材 料
(ア) 油性顔料着色剤
一般的にはピグメントステインと呼称される着色剤であり、顔料をボイル油や合成樹脂などで練り合わせて添加剤や溶剤を加えたものである。その品質は JASS 18 M-306に規定されている。油性顔料済色剤は1液形油変性ポリウレタンワニス塗りの場合に特記により適用する。
なお、ピグメントステイン(油性顔料着色剤)のみを利用した建築物外部及び内部の木部仕上げについては、18.11.2(1)に[ピグメントステイン塗り]として示している。
(イ) 溶剤形顔料着色剤
18.5.2(1)(イ)を参照する。
なお、溶剤形顔料着色剤は2液形ポリウレタンワニス塗りの場合に特記により適用する。
(ウ) 1液形油変性ポリウレタンワニス(JASS 18 M-301)
イソシアネートと乾性油との反応により得られる、ウレタン結合を有する樹脂を主要な塗膜形成要素とした透明の酸化重合形塗料である。その品質は「JASS 18 塗装工事」M-301に規定されている。
(エ) 2液形ポリウレタンワニス(JASS 18 M-502)
ポリオールとイソシアネート化合物を、主要な塗膜形成要索とした透明の2液反応硬化形塗料で、その品質はJASS 18 M-502に規定されている。
常温で硬化乾燥して溶剤が蒸発すると、ポリオールとイソシアネート樹脂が反応してウレタン結合を有する透明塗膜を形成する。
(2) 塗 装
(ア) 「標仕」では、塗装種別をA種(3回塗り)とB種(2回塗り)としており、特記がなければB種としている。
(イ) 「標仕」表18.10.1の (注)3に示すように着色は特記により行う。また、(注)4に示すように、下塗りとの相性を考慮して、1液形湘変性ポリウレタンワニスの場合は油性顔料着色剤(JASS 18 M-306(ピグメントステイン))とし、2液形ポリウレタンワニスの場合は溶剤形顔料着色剤を使用する。
着色を行わない場合は、素地の色調を活かした木地(生地)仕上げとなる。
(ウ) 下塗り、中塗り及び上塗りの工程には、同一材料を使用する。
「標仕」には規定されていないが、上塗りに 2液形ポリウレタンワニスを使用する場合は、下塗りに2液形ポリウレタンシーラー、中塗りには 2液形ポリウレタンサンディングシーラーを使用する塗装工程も一般的である。2液形ポリウレタンシーラー及び2液形ポリウレタンサンデイングシーラーの品質はJASS 18 M-302に規定されている。
(エ) 下塗りは、素地に塗料を十分に浸透させることにより、吸込みが均ーになり、むらを防止するとともに登股の付着性を向上させる。
(オ) 1液形油変性ポリウレタンワニスは、油性成分の酸化重合により硬化するため、最短でも24時間程度の硬化時間を必要とする。したがって、乾燥硬化の不良による縮みやしわの発生に注意する。余裕をもった工程間隔時間及び最終養生時間が必要であり、特に、厚膜になると縮みやしわが発生しやすいため、厚塗りを避ける。
なお、ワニスの乾燥塗膜には、塗重ね時間の制約があり、長時間放置してから塗り重ねると層間はく離を生じやすくなるため注意する。
(カ) シンナーは、塗装方法や乾燥条件に応じて使い分けるのが一般的である。肌あれや発泡等の仕上り塗膜の欠陥を生じるため、塗料の製造所が指定するシンナーを用いる。
(キ) 塗装方法は、はけ塗り又はローラーブラシ塗りとする。
(ク) 2液形ポリウレタンワニスに使用しているイソシアネート化合物は反応性が強く、粘膜や皮膚に触れるとかぶれることがあるため、使用の際は安全衛生上十分な措置を講ずる。
(ケ) 各塗装工程の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.10.1に示す。
表18.10.1 ウレタン樹脂ワニス塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間
表18.10.1_ウレタン樹脂ワニス塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間.jpeg

18章 塗装工事 11節 ステイン塗り

18章 塗装工事
11節 ステイン塗り
18.11.1 一般事項
この節は、建築物の屋内における木部のオイルステイン塗り並びに建築物の屋外及び屋内における木部のピグメントステイン塗り仕上げを対象としている。
18.11.2 ステイン塗り
(1) ピグメントステイン塗り
(ア) ピグメントステイン(油性顔料着色剤)は18.10.2(1)(ア) で解説したように、顔料をボイル油や合成樹脂などで練り合わせて添加剤や溶剤を加えたものである。ビグメントステインは染料でなく顔料を使用しているため、オイルステインより耐候性は良好であり、屋外にも使用される。ピグメントステインは既調合製品であり、品質はJASS 18 M-306に規定されている。
(イ) 塗装は、着色むらが生じないように、はけ塗り又は吹付け塗りとする。塗付け後は、材料が乾き切らないうちに全面をふき、むらが生じないように余分な材料を軽くふき取る。
(ウ) 有機溶剤を用いるため、塗装作業時には換気に注意する。また、作業に使用した紙や布片等は自然発火する可能性があるため、水を入れた容器中に入れた後、乾かしてから処分する。
(エ) ピグメントステインの気温20℃における標準工程間隔時間及び標準最終養生時間は、24時間以上である。
(2) オイルステイン塗り
(ア) オイルステイン(油性染料着色剤)は、18.5.2(1)(ウ)に示したように、油溶性染料を芳香族、脂肪族炭化水素系溶剤(ミネラルターペン等)と少量の油ワニスあるいは合成樹脂ワニスに溶解した着色剤である。品質はJISや日本建築学会材料規格等で規定されていないため、製造所の技術資料や公的試験結果等を参考に適切なものを選定して特記する必要がある。
オイルステインには海外からの輸入品も多い。また、原料として石油由来の溶剤やワニスではなく、自然素材由来の溶剤やワニスを使用することにより安全性に配慮するという製品がある。しかし、自然素材由来であってもホルムアルデヒドが放散する可能性があるため、屋内に使用するオイルステインではホルムアルデヒド放散量の確認が必要である。
(イ) 塗装は、着色むらが生じないように、はけ塗り又は吹付け渡りとする。塗付け後は、材料が乾き切らないうちに全面をふき、むらが生じないように余分な材料を軽くふき取る。
(ウ) 有機溶剤を用いるため、塗装作業時には換気に注泣?:する。また、作業に使用した紙や布片等は自然発火する可能性があるため、水を入れた容器中に入れた後、乾かしてから処分する。
(エ) オイルステインの気温20℃における標準工程間隔時間及び標準最終養生時間は、24時間以上である。

18章 塗装工事 12節 木材保護塗料塗り(WP)

18章 塗装工事
12節 木材保護塗料塗り(WP)
18.12.1 一般事項
この節は、建築物の屋外における木部の木材保護塗料塗りを対象としている。木材保護塗料塗りは、外壁、門柱、バルコニー等の屋外で使用される木質系素地に対する半透明塗装仕上げに用いられる。仕上り面は木質系素地の木目が見えるため、木材の質感を生かした着色仕上げとなる。
18.12.2 木材保護塗料塗り
(1) 材 料
木材保護塗料は、樹脂(アルキッド樹脂、亜麻仁油等)及び新色顔料のほかに、防腐、防かび、防虫効果を有する薬剤を含むことを特徴とする既調合の半透明塗料である。しかし、木材保護塗料に含まれる木材保存剤成分は、主として塗膜の耐久性を向上させるために配合されているもので、いわゆる木材保存剤と比較すると防腐、防かび、防虫効果は低いことに注意する必要がある。
木材保護塗料の品質は、「JASS 18 塗装工事」M-307に規定されている。
なお、JASS 18 M-307は、2013年の「JASS 18」改定(第7次)時より「かび抵抗性」に関する試験項目が追加されている。
「標仕」においてJASS 18 M-307への適合は、「かび抵抗性」を含む最新の規格への適合を要求している。したがって、「かび抵抗性」が確認されていない旧 JASS 18 M-307への適合のみでは不十分である。
(2) 塗 装
(ア) 「標仕」では、塗装種別をA種(3回塗り)とB種(2回塗り)としており、種別の選定は特記により、特記がなければB種としている。
(イ) 木材保護塗料塗りは、素地の状態がそのまま仕上りに影響するため、表18.2.1にしたがった適切な素地ごしらえが必要である。
(ウ) 木材保護塗料は、木材内部に十分浸み込ませることが重要である。また、木材保護塗料は原液で使用することを基本とし、希釈はしない。木材保護塗料は、塗り回数が多くなるにしたがって、木質系素地への浸透性が低下するので、A種の上塗り(2回目)では塗付け量を0.04kg/m2としている。
(エ) 木材保護塗料塗りは、屋外で使用される木質系素地に対して適用される。11節に示したピグメントステイン塗りは屋内及び屋外における木部に適用できる。屋外での耐候性を比較すると、一般に、ピグメントステイン塗りより木材保護塗料塗りの方が優れている。
(オ) 各塗装工程での標準工程間隔時間及び最終養生時間を、表18.12.1に示す。
表18.12.1 木材保護塗料塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間
表18.12.1_木材保護塗料塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間.jpeg

18章 塗装工事 13節 「標仕」以外の塗装仕様

18章 塗装工事
13節 「標仕」以外の塗装仕様
18.13.1 「標仕」以外の塗装仕様の位置付け
「標仕」に規定されている塗料以外にも新しい塗料が開発されているが、まだ塗装の標準化がされていないこと、また、使用実績も少ないことから一般的な仕様とはなっていない。
しかし、塗装に要求される性能が高まりつつある中で、特記による適用も考えられることから、本節では参考としてこれらの塗料に対する仕様の例を示す。
また、従来の「標仕」には規定されていたが、諸般の事情により平成25年版以降の改定において「標仕」では規定されていない仕様についても、特記による適用の可能性があるので、参考として示している。
18.13.2 合成樹脂エマルション模様塗料塗り(EP-T)
合成樹脂エマルション模様塗料塗りは、建築物の内壁面や天井等のコンクリート面、モルタル面、せっこうプラスター面、せっこうボード面、その他ボード面等に対するスチップル等の模様仕上げに用いられる塗装である。
(1) 材 料
(ア) 合成樹脂エマルションシーラー
 18.8.2(1)(ア)を参照する。
(イ) 合成樹脂エマルションペイント
 18.9.2(1)(イ)を参照する。
(ウ) 合成樹脂エマルション模様塗料(JIS K 5668)
JIS K 5668に規定されており、合成樹脂エマルション、顔料、充填材、添加剤等を配合した高粘度形塗料で、吹付けやローラー塗りでスチップル模様やゆず肌模様等の表面テスクチャーがあり、表面光沢がほとんどない硬化塗膜を形成する。
平成31年版「標仕」のA種では、色調の調整や色替えにJIS K 5663(合成樹脂エマルションペイント及びシーラー)の合成樹脂エマルションペイント1種を仕上げ塗りとして用いていた。
JISでは1種(屋外用)、2種(屋内用)、3種(屋内の天井用)等が規定されているが、平成31年版「標仕」では、上塗りに2種を用い、下塗りと仕上げ塗りには合成樹脂エマルションペイントの1種を用いていた。
(2) 塗 装
(ア) 色調の調整は、一部可能であるが、涙彩色になると粘性が変化して仕上り模様が異なることもあるため、適切な粘度で塗装する必要がある。
(イ) 各材料の希釈割合は、塗料の製造所の指定とする。
合成樹脂エマルション模様塗料は、希釈割合や吹付け塗装ガンの種類、ノズル口径、吹付け圧力、ローラーブラシの種類等によって、表面模様の仕上りや外観が変化するので十分注意する。また、現場においては、あらかじめ塗り見本により仕上りの状態を確認しておく。
(ウ) 材料の保管、調合(水希釈乱、かくはん等)、使用有効期限等は、各材料の製造所の仕様を遥守する
(エ) 合成樹脂エマルション校様塗料塗りは、一般的には次のような塗装方法を適用する。
(a) 下塗りは、はけ塗り、吹付け塗り又はローラーブラシ塗り
(b) 仕上げ塗りと上塗りは、ローラーブラシ塗り又は吹付け塗り
(オ) 希釈に使用する水は、水道水を標準とする。
(カ) 各工程間の工程間隔時間及び最終養生時間が不十分であると、仕上り模様が変化することがあるため注意する。
18.13.3 コンクリート系素地に対する透明塗装
打放しコンクリートの外観を生かした透明塗装である。コンクリートの外観が濡れ色になるのを防止するため、下塗りの段階で、濡れ色にならないタイプの浸透性吸水防止材を塗付する場合が多い。透明塗装用の塗料としては、常温乾燥形ふっ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、ポリウレタン樹脂等をビヒクルとしたクリヤ塗料が使用されている。
表18.13.1に塗装仕様の例を示す。この塗装仕様はコンクリート系素地のみではなく、石材等にも適用されている例がある。また、簡易な仕上げとして塗装種別B種のように、浸透性吸水防止材のみを塗り付ける仕様もある。
表18.13.1 コンクリート系素地面に対するクリヤ塗装の工程例
表18.13.1_コンクリート系素地に対するクリヤ塗装の工程例.jpg
18.13.4 抗菌塗料
MRSA(メチシリン耐性黄色プドウ球菌)による院内感染や0-157対策のため、部位によっては抗菌塗料を用いた塗装が実施されている。よく知られているように、ペニシリン等の抗生物質は多くの細菌性疾息の治療に役立つが、一方では、抗生物質に耐性を有する細菌が病院等の施設にはびこり、各種感染症の原因となることが問題となっている。このような院内感染の原因となる細菌の約1割がMRSAである。この細菌はペニシリン系の抗生物質であるメチシリンに耐性を有しており、通常、健康な人であればほとんど感染の心配はないといわれているが、抵抗力の弱い新生児、老人、入院患者等には感染する場合があり、問題となっている。
抗菌塗料は、このような背景から開発された塗料であり、簡単に説明すれば塗料中に抗菌作用のある薬剤(溶出タイプ)や銀イオン(接触タイプ)等を混人した塗料である。
抗菌塗料の性能は、抗菌性の他に、効果の持続性や安全性により評価される。表18.13.2には、溶出タイプと接触タイプの塗料の特徴を示す。溶出タイプ抗菌塗料は各種抗菌剤が利用されるため抗菌性は高いが、抗菌剤の特徴により細菌に対する効果が異なったり、耐性菌を生じる可能性も否定できない。また、安全性に関しても接触タイプより低い。
一方、接触タイプの抗菌塗料としては銀イオンを混入した製品が多い。銀イオンの抗菌メカニズムについてはまだ完全に解明されていないようであるが、細菌の基本代謝経路の酵素阻害や、細胞膜の物質移動阻害を起こすと考えられている。接触タイプ抗菌塗料は、表18.13.2に示すように適応できる菌種が広く、持統性も高いが、塗膜の汚れ等によって接触が阻害され効果が低下する。したがって、必要最小限の抗菌剤を混入している場合も多い。
さらに、抗菌塗料には、以下のような性能が要求される。
(ア) 消毒剤や塗膜の洗浄に耐える塗膜を形成すること。
(イ) 水性のエマルション塗料で臭気も少ない塗料であること。
(ウ) 乾燥が早く、塗装の工期が短期間で済むこと。
(エ) 特殊な工法や工具を利用するのでなく、一般的な塗装技能で施工可能であること。
(オ) 各種素地や旧塗膜に対して付着性が良好であること。
このような要求性能を満足するため、現状ではアクリル樹脂エマルションを中心とした合成樹脂エマルション塗料を利用した抗菌塗料が多い。
表18.13.2 抗菌塗料のタイプ別比較
表18.13.2_抗菌塗料のタイプ別比較.jpg
18.13.5 粉体塗料
従来から、建築用塗料としては「溶剤系塗料」が一般的であり、これは塗膜形成成分である樹脂に顔料を加えて、作業性の向上を図る目的から有機溶剤で希釈されたものであり、大気中へ放出される揮発性成分が全量の1/2程度含まれている。昨今では、環境保全や健康安全への配慮から、非溶剤系塗料への変換が世界的な規模で強く求められており、建築施工の現場における塗装では、有機溶剤を含まない「水系塗料」あるいはトルエンやキシレン、ベンゼンのような有機溶剤ではなく、光化学反応性が低い溶剤を用いた「弱溶剤系塗料」の適用が推進されている。
「溶剤系塗料」に対して、塗料中に有機溶剤や水等の溶媒を全く用いず、塗膜形成成分を粉末化して、塗装工場で静電塗装によって吹付けた後に加熱して、塗膜を形成させるのが「粉体塗料」である。従来の建築分野では、住宅用の門扉やフェンス等ごく限れられた工場製の既製部材 部品についてのみに適用されていたが、VOCを100%削減して、塗装対象の素地に付着しなかった塗料の回収及び再使用が可能で廃棄物も低減できるため、環境保全の観点からは工場塗装において大きな注目を集めている。
既に、民間建築工事の一部ではあるが、アルミニウム合金製サッシ、カーテンウォール及び鋼製建具等に対する工場塗装において「粉体塗料」が適用されている。従来の「溶剤系塗料」に対する塗装仕様とは異なり、下塗りは不要であり、塗膜の付着性確保や素地に対する防食性の観点から、適切な素地ごしらえ(陽極酸化皮膜処理や化成皮膜処理)との組合せが重要となる。現在の建築分野で適用されている「粉体塗料」は海外製品のポリエステル系が主流であるが、硬化形式による塗膜性能の差が顕著であり、製品による性能のばらつきも見られる。特に、日本国内では建築外装に対して、耐候性に優れるふっ素樹脂を含む複合樹脂粉体塗料が採用されている。
2018年10月には、日本建築仕上学会編「建築用アルミニウム合金材料 粉体塗装仕様標準指針・同解説」が発行され、塗装仕様の標準化と使用材料の品質規格及び使用上の留意事項が示されている。採用に当たっては、参考にすることが望ましい。
18.13.6 高日射反射率塗料
高日射反射率塗料は、JIS K 5675(屋根用高日射反射率塗料)に規定されており、太陽光のうち、熱に関与するといわれている近赤外領域を塗膜表面で反射させるという高機能性塗料で、近年開発された技術である。都市部のヒートアイランド現象の緩和や省エネルギー対策を目的として実用化され、特に改修工事における採用が増加している。原理としては、日射熱、特に熱に関与する近赤外線を選択的に反射する、濃色(特に黒や茶色系)の特殊顔料を使用することにより効果を出している。また、平成22年2月5日の閣議決定に基づき、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」の特定調達品目に指定されたことから、大きな注目を集めている。環境省の「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」(令和4年2月25日変更閣議決定)では、高日射反射率塗料とは、日射反射率の高い顔料を含有する塗料であり、建物の屋上・屋根等において、金属面等に塗装を施す工事に使用されるものとしている。その判断の基準としては、次の(ア) 及び(イ) が規定されている。
(ア) 近赤外波長域日射反射率が表18.13.3に示す数値以上であること。
(イ) 近赤外波長域の日射反射率保持率の平均が80%以上であること。
表18.13.3 近赤外波長城日射反射率
表18.13.3_近赤外波長域日射反射率.jpg
なお、近赤外波長域日射反射率、明度L*値、日射反射率保持率の測定及び算出方法は、JIS K 5675によるとしている。
JIS K 5675に適合する資材は、本基準を満たすものとしている。
参考文献
参考資料.jpeg