1級建築施工管理技士 内装仕上 仕上げのひび割れの原因

建築品質 内装仕上工事


78)仕上げのひび割れの原因

内装は仕上げも下地も重要である。ボードのひび割れ、タイルの剥落や塗装の剥離など仕上げの不具合の多くは下地に原因がある。仕上げの品質は下地によって決まる。

1.下地が変わる部分には化粧目地を設ける
壁ボード張りがコンクリート下地と軽鉄下地にまたがると、コンクリート下地と軽鉄下地の境でボードにひび割れが入る。コンクリート下地と軽鉄下地の動きが違うためで、ボードのひび割れは下地の違いを正直に表す。したがって、異種下地の境界には伸縮目地を設ける。目地を設けたくない場合は、コンクリート面にも軽鉄下地を通してボードで仕上げる。


異種下地の壁ボードのひび割れ

2.床の異種下地の境界には床見切り(目地棒)を設ける

床の場合も同様で、床暖房をする部分をしない部分、防水をする部分としない部分、木下地とコンクリート下地など下地の違いを無視して、タイルや石で仕上げると、必ず異種下地取合い部でひびわれが入る。したがって、その取合い部分はあらかじめ伸縮調整目地または見切りを設けなければならない。その目地位置は躯体施工前に、タイルや石の割付け寸法に合わせて決めることが重要である。


異種下地の床のひび割れ

3.軽鉄間仕切り壁のひび割れを少なくする

ボード壁のドア枠上部にひび割れが入るケースがある。軽鉄下地のボード壁はボードで軽鉄下地が固められていると言ってよい。開口部まわりは、下地補強をして、ボードをL形にカットして張るか、あらかじめ化粧目地を設ける。ひび割れさせたくなければ、まず二重張することが基本となる。
軽鉄下地材はJIS規格品とする。50型の時、
・スタッド(縦骨)50 × 45 ×0.8mm
・ランナー(上下の支持材)52 × 40 × 0.8mm
・振れ止め(スタッド繋ぎのC型材)19 × 10 × 2.3mm
・開口補強材、スタッドと同じ幅 50 × 30 × 10 × 2.3mm
とする。

ボード壁のひび割れ

1級建築施工管理技士 内装仕上 システム天井の落下防止策

建築品質 内装仕上工事


79)システム天井の落下防止策

事務所ビルなどに採用される岩綿吸音板のシステム天井は、設備も含めてすっきりと納まる。点検口も天井パネルと同じで目立たないものが多い。しかし、そのバネルが地震時の落下するケースがある。特に壁際のパネルや防火シャッター取合い部などのパネルに落下するケースが見られる。

1.システム天井の基本

システム天井は次の事項を守れば標準部分の落下はおおよそふせぐことができる。

①天井が地震時に大きくゆれないようにブレースを適正に配置する
②天井ボードが偏っても、掛り寸法に5mm以上の余裕を持たせる
③野縁受けと壁との隙間が天井ふところ高さの1/100 × 2以上あること
④ボードどおしのジョイントのHバーはHバー受けに2ヶ所以上固定すること
⑤Tバーに載せ掛ける設備機器は落下防止のワイヤーを掛ける


システム天井

2.システム天井は壁際の天井パネルが落下しやすい

壁際の天井パネルは壁に固定された廻縁に載っている。システム天井の標準では廻縁と天井パネル、廻縁とTバーの掛かりやクリアランスが少なく、地震時に天井が動くと壁に当たったり、外れたり、必ずどこかが破損し落下することもある。同様のことは、窓際のブライドボックス、防火シャッターや防煙垂れ壁などの取合い部でも生じる。したがって、地震時の天井の動きに十分対応できる廻縁を設けたり、落下防止のワイヤーを取り付けたりすることが必要である。


壁際の納まり

3.壁際ルーバー天井、天井吊りの機器は落下防止策を施す

一般の天井でも、天井が動いて壁際のルーバーが落下することがある。ルーバーの枠が壁側と天井側で別々になっているのが原因である。


壁際のルーバー

また、天井に吊る機器は必ず2ヶ所以上の吊りボルトで固定し、2方向のブレースを設けて地震時に振れないようにすることが重要である。


天井吊りの機器

1級建築施工管理技士 内装仕上 天井の耐震性を確保する

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80)天井の耐震性を確保する

東日本大震災では、ショッピングやシアターなど2000件以上の天井が落下し、多くの人命も失われた。これを受けて、天井落下対策(エレベーター、エスカレーター等の脱落防止対策を含む)に関して建築基準法施工令の一部が改正され(2013年7月)、天井脱落対策関連の告示が同年8月に公布された。告示では日常立ち入る場所で、天井高さが6m以上、天井面積が200m2以上、質量が2kg/m2以上のすべてを満たす天井を特定天井として、その構造方法の基準を定めている。

1.大面積の天井は壁に衝突させない

石膏ボードなどの重い天井は地震時の水平力(入力水平加速度1G)が大きい。しかも大面積の天井ほど大きな水平力を受ける。地震で天井が揺れて壁に当たった時には大きな水平力を衝撃的に受け、その力で天井面が座屈するように剥がれて落ちる。特定天井では質量を20kg/m2以下とし、壁や柱などとの隙間を6㎝以上確保して、壁や柱に衝突させないようにする。天井に取り付ける防煙垂壁の端部も壁や柱との隙間を6㎝以上確保し、かつ不燃干渉材などで遮煙できる納まりにする必要がある。

2.天井の吊り材(吊りボルト)は天井質量により決定する

天井を支える吊りボルトは天井の質量に対して適切な本数でなければならない。質量が 2~20kg/m2以下の特定天井では、吊りボルトの本数は 1m2当たりの平均本数を1本以上とし、釣合い良く配置する。質量が 20kg/m2を超える天井は耐震性を構造計算によって確認する必要がある。

3.天井はV字形状の振れ止めを設ける

天井の吊り長さが長いと短いとでは振れの大きさが違う。特定天井では吊り長さを 3m以下とし、おおむね均一とする。さらに、振止めとして2本の斜め部材の下端を近接してV字状に配置したものを一組として告示式により算定し、吊り合い良く配置する。吊り長さが 1.5m以上では吊りボルトと同材で水平補強も行う。吊り長さが 3mを超す場合は、構造耐力上主要な部分と同等の天井下地鉄骨を設ける必要がある。

4.斜め天井は下地の滑り止め対策をする

斜め天井の下地は、下地金物のC型材にクリップ金物で留めるだけでは、重力で滑って下へズレ落ちる方向に動く。斜め天井では下地や天井材が滑って落ちないようにビス固定することが必要である。

5.天井内設備は天井材と縁を切って吊り、振れ止めを設ける

天井内設備で荷重が大きいものは地震で振れると大きな水平力となるので、設備機器は振れ止めをしっかりと設けて、天井とは縁を切って、天井に影響を与えないようにすることが重要である。

1級建築施工管理技士 内装仕上 結露しやすい箇所

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81)結露しやすい箇所

居住環境が高断熱、高気密になると、室内で発生した水蒸気が外部に排出されにくくなるため結露が発生しやすくなる。また、建物完成後に建築主が設計条件とは異なった使い方をすると、結露が発生しトラブルにつながるケースがある。

1.表面結露

室内の換気をせずに、ガスや灯油を燃料とした暖房器具を長時間使用し、外壁の室内側の窓ガラスの表面温度が室内の露点温度より低くなった時に表面結露が発生する。表面結露は拭き取るか、換気をすれば大事には至らない。

.内部結露

室内の高温多湿の空気が天井や壁の内装仕上げ材を通り抜け、低温低湿側の小屋裏や壁体内に侵入した時に内部結露が発生する。通常目に付かないところなので、湿って内装材を汚し、カビが発生してトラブルにつながる。
外壁の断熱工法で、鉄筋コンクリートの外壁に直接、GL工法で複合パネルを施工すると、冬期に内部結露が発生し湿気でボードが剥がれ落ちる原因となるので厳禁である。また、断熱ボードを打込む場合はジャンカや空隙ができても発見できない。外壁内断熱は、発泡ウレタンを適正な厚さ管理の下で、吹き付けて断熱した後、GL工法または軽鉄下地ボード張りで仕上げる。


外壁の断熱仕様

3.夏型結露

結露が起きるのは冬期だけとは限らない。鉄骨造の工場や倉庫は、夏期には折板屋根から小屋裏に高温多湿な外気が入りこみ、小屋裏部材に結露が発生する場合がある。地域によっては夏場、特に梅雨時に小屋裏換気をすると、高温多湿な外気が流入してかえって天井裏に結露を発生させることがあるので要注意である。
冷房された作業場でシャッターを解放すると、室内よりも高温多湿な外気が一気に流入し、床表面や天井面に表面結露が発生する。外部の荷捌き場と室内の間に前室を設け、室内より外気の温湿度が高い場合は、換気運転を停止する。


夏型結露と放射冷却の例

4.解放された外部空間でも結露は起きる(放射冷却)

冬期の夜間には外気と同じ環境であっても、放射冷却が発生して外気温度が0℃以下になると、工場や配送センターの荷捌場の金属折板庇の上下で水蒸気が凍結する。日の出とともに外気温が上昇し、直射日光が庇に当たると、溶けて水滴となって落下する。荷捌場に置いてある製品を濡らす原因となるので、庇下に無機質系断熱材の吹き付けが有効であるが、その要否は建築主と協議して防露対策について検討する必要がある。

1級建築施工管理技士 内装仕上 熱橋となるところ

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082)熱橋(ヒートブリッジ)となるところ

鉄骨の柱や梁が断熱材を貫通している部分や断熱工法における断熱材の欠損部位は熱橋(熱の通り道:ヒートブリッジ)となる。断熱材を隙間なく施工し断熱欠損の部位をなくすことができれば、結露のトラブルをなくすことができる。

1.外壁の入隅部や外壁と床の取合い部の熱橋

外壁と直交する住戸間界壁の折返し部分や床は熱橋となる。


外壁取合い部の熱橋

外壁側から室内側へ600mm程度までは発泡ウレタンを吹き付け、断熱する。断熱材の厚さ及び施工範囲は地域区分により異なる。例えば、北海道等寒冷地では900mm程度となる。
詳細は「省エネルギー基準」に準拠した「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計・施工及び維持保全の指針」(国土交通相告示第378号)を参照

2.打込み断熱材の継ぎ目の断熱欠損部は熱橋

屋根スラブや外壁に打込まれた断熱材の継ぎ目にコンクリートが流れると熱橋となる。断熱材の継ぎ目にコンクリートが流れ込まないように施工する。


打込み断熱材の継ぎ目

3.屋根スラブ打込みルーフドレンや吊りボルト

①屋根スラブに打込むルーフドレンは、雨水を集水するために周囲よりスラブ天端を下げて施工する。外断熱防水の場合はその周囲に断熱材を敷き込むことができないので、その部分が熱橋となる。スラブ裏面に断熱補強が必要となる。


打込みルーフドレン部のスラブ下断熱

②屋根スラブに打込む吊りボルト用インサートも熱橋となる。断熱用プラスチックインサートを採用する。

4.外壁に打込まれた設備ボックスも熱橋

外壁に設備配管や電気ボックスを打ち込んだ場合、外壁に断面欠損が生じ、配管やボックスが熱橋となる。設備配管や電気ボックス等は外壁に打ち込んではならない。

5.断熱した外壁に面した押入れの壁が結露することがある

外壁に面した押入れは、床にすのこを敷き、中段の棚と奥の壁との間に30mm程度の隙間を設け、空気を流れを作り押入れ壁面の表面温度が下がらないようにする。
押入れの壁に布団が接して収納されると、壁面の表面温度が押入れ空気の露店温度以下になり、結露を起こしカビが発生する。


外壁に面した押入れ

1級建築施工管理技士 内装仕上 内断熱と外断熱

建築品質 内装仕上工事


83)内断熱と外断熱

従来の建築の考え方は内断熱であったが、近年外断熱が話題に上がることが多くなっている。内断熱でも外断熱でも、断熱が途切れたところ熱橋(ヒートブリッジ)が発生する。熱橋部分が断熱効果を下げ、そこが結露する。内断熱と外断熱の特徴を理解し、熱橋を少なくするのが、省エネルギー計画上、重要なポイントである。

1.外断熱の特徴

外断熱は躯体が外部の熱環境の影響を受けにくいので、内部熱環境を一定に保ちやすい。躯体は断熱材で保護され、温度変化が少なく、躯体が長持ちする。ただし、躯体の熱容量がある場合(鉄筋コンクリート造等)は冷暖房の立上りが遅くなる。外断熱は躯体の外側を断熱層で包むという考え方であるが、バルコニーや屋上パラペット、基礎まわりは断熱材を完全に連続させることは困難で、熱橋が発生し結露する可能性がある。これらの熱橋での結露防止策は内断熱とする。
外断熱の外装は、断熱材がそのまま外装仕上となる材料がほとんど無いため、断熱材の上に、雨風をしのぐ耐久性のある外壁としての仕上が必要となり、一般的には内断熱に比べて建設コストが多くなる。


外断熱工法

2.内断熱の特徴

内断熱は躯体内側に断熱層を設ける一般的な工法である。躯体と断熱材の間に隙間を作らないことが重要である。内部環境はほぼ一定であるが、外断熱とケースとは逆に、躯体が外環境の影響を受けるので、躯体の寿命は設計時の計画年数の級になると考えられる。
外壁仕上は通常通り施工できるので、従来からのノウハウをそのまま適用でき、外断熱に比べると建築コストは抑えされる。外壁に交わる間仕切りや床の外壁際が熱橋となるので、そういう部分は熱橋対策として、断熱材を折り返して300〜900mm程度まで引き延ばす必要がある。
最上階も内断熱にすると、日射や寒暖により躯体への影響が大きくなるので、外壁内断熱工法を採用した場合でも、最上階スラブは外断熱とするケースが多い。その場合、防水層との順番に注意する。

露出防水の場合、
内側より、躯体 → 断熱材 → 防水層

歩行用の場合、
内側より、躯体 → 防水層 → 断熱材 → 保護層

よって、歩行用の場合は、外断熱にすると、躯体と共に防水層も断熱材に護られるので長持ちする。
外断熱と内断熱を利点を考慮しつつ、部位によって使い分け、その際に断熱層の切り替わり部分の熱橋対策をとることが重要である。


内断熱工法

1級建築施工管理技士 内装仕上 断熱材は適材適所に

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84)断熱材は適材適所に

建築用断熱材は布団状のグラスウールや板状の断熱ボード、現場発泡の吹付け断熱材などがある。それぞれの部位に最適な断熱材を使用する。

1.陸屋根の外断熱

屋上の露出断熱アスファルト防水では、断熱材の上に露出防水するため、断熱材はA種硬質ウレタンフォーム両面スキン付きを使用する。
保護断熱アスファルト防水では、防水の上に断熱材を敷いて保護コンクリートを打つため、断熱材は押出法ポリスチレンフォーム3種bのスキン層付きを使用する。

2.陸屋根、外壁の内断熱

躯体打込みの時は押出法ポリスチレンフォームとする。後施工では建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームを利用する。

3.土に接する床、最下階の床

躯体打込みの時に押出法ポリスチレンフォームを使用する。

4.天井面の断熱

天井面での断熱は施工性の面からグラスウール(24kg/m3)敷込みとすることが多い。この場合、照明器具や空調用吹出口等により、完全な敷込みができない部分が生じやすい。入念な施工が求められる。

5.木造の断熱

木造壁の断熱はグラスウールが多いが、内部結露の可能性があり、通気層を設けなければならない。グラスウールに比べて現場発泡の建築物断熱用吹付けウレタンフォームは壁面に密着し、狭小隙間部分にも確実に施工でき、性能も良いので使われるケースが多くなってきている。

6.建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォーム(JIS A9526)

建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームはA種、B種、難燃2級、難燃3級などがあり、特記仕様書に示される。特記がなければ、ノンフロンのA種1の難燃性を有するものとする。この発泡ウレタンフォームは現場での吹付け厚さで性能を確保するためその吹付け厚さ管理が重要である。この吹付け厚さの管理は4m2当たり1ヶ所吹付け厚さ管理用ピンを張り付け、均一に厚さを確保するように管理する。また、難燃であるが、火源によっては燃焼することもあるので、防火コートを吹き付けことを勧める。特にテナントビルなどではテナントの改修工事中の溶接の火などによる燃焼の危険性があるため防火コートは必要である。

※断熱材の種類によって熱伝導率λの値が異なり、熱貫流率の計算に関わるので、断熱材の変更を行う場合は注意する。

1級建築施工管理技士 内装仕上 環境にやさしい材料とは?

建築品質 内装仕上工事


85)環境にやさしい材料とは?

建築工事では建築計画や設計段階での取り組みに加えて、実施設計や施工段階でも環境に配慮した持続可能な社会や低炭素社会などの実現に向けた取り組みが求められている。

1.環境破壊や健康被害を起こす材料

環境破壊や健康被害を起こす次の材料は建築基準法で使用を禁止または制限されている。

①中皮腫やがんなどを引き起こす恐れのあるアスベストPCB
②シックハウスを引き起こす揮発性化合物(VOC)
③低温燃焼時にダイオキシンを発生する塩化ビニル樹脂
④オゾン層破壊物質であるフロン

VOCの発散が少ない建材、ノンフロン断熱材やCO2排出の少ない環境に配慮した材料を使用しなければならない。

2.室内空気環境では換気を基本

シックハウス対策の材料を使用しても、気密性が高い室内にすると健康に良くはない。

①CO2の濃度が1000ppmを超える居室は換気が不十分であり、さらに空気環境が悪化すれば、頭痛・めまい・倦怠感・吐き気など人体に悪影響を及ぼす。

②ガス燃焼器具(ガスコンロ・給湯器等)を使用する調理室には機械換気設備が義務付けられている。換気設備の能力が十分に発揮できずに、COの濃度が10ppmを超える居室は換気不足で不完全燃焼による一酸化炭素中毒を引き起こす恐れがある。

「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(略称:ビル管法)」や「建築物環境衛生管理基準(建築基準法・施行令第129条の2)」では24時間換気と適切な換気が行われているか、風量の測定等の定期測定並びにその報告の提出が義務付けられている。
注)延べ3,000m2以上の事務所、百貨店、興業場が対象で、住宅、学校及び病院は除外されている。

3.「F☆☆☆☆」仕様の建材の採用(シックハウス対策)

シックハウスやシックビル症候群の原因となる揮発性有機化合物(VOC)、特にホルムアルデヒドは内装材である壁紙の接着剤やフローリング、キッチンキャビネット、クロゼットなどに使用される合板やパーティクルボードに含まれるもので、喉や目の痛み、吐き気や頭痛などを引き起こす。木製(合板やパーティクルボード製)の造付け家具などは製作工場での品質管理まで徹底しなければならない。

建築基準法では、建築材料を第1種~第3種のホルムアルデヒド発散建材に区分し内装仕上げとして使用可能面積の制限や使用禁止等の規制がなされ、ホルムアルデヒドの発散量を最も抑えた「F☆☆☆☆」仕様の建材の採用を推奨している。
接着剤及び塗料は、ホルマリン不検出のものとし、トルエンやキシレンの発生の原因となる有機溶剤の含有の少ないものを使用し、壁紙、木工用接着剤等に含まれる可塑剤は、難揮発性のものを使用する。木材保存剤(木材の防腐・防蟻処理剤)は、非有機リン系とし、工場において加圧式防腐・防蟻処理等を行い、十分に乾燥した後に搬入し、現場における塗布または吹付けは、現場において加工した箇所のみとするなどが重要である。


建築基準法におけるホルムアルデヒド規制

1級建築施工管理技士 内装仕上 集合住宅の騒音・振動対策

建築品質 内装仕上工事


86)集合住宅の騒音・振動対策

集合住宅の生活音には、建物の床や壁など躯体の振動で伝わる個体伝搬音と話し声や音楽など空気の振動によって伝わる空気伝搬音がある。この二つの音が複合的に混在し伝わって、集合住宅の騒音、振動のクレームにつながる。空気伝搬音は住戸間界壁や床、天井の下地材や仕上げ材の他、外装サッシの遮音性能などの影響を受ける。

設計条件として要求遮音性能値を明確にしても、反射や共鳴・共振・施工誤差等の不確定な要因のために竣工時の遮音性能を正確に予測することは困難である。住宅性能評価を受ける場合は、設計者、施工者は事業主と協議し、住戸の遮音性能を確認するための測定調査費用の予算を見込んでおくことが必要である。

1.外部からの騒音を軽減する

外部騒音を軽減するには、防音サッシが給気口からの音の伝搬を軽減させる消音ボックスを採用する。騒音が大きな道路に面した集合住宅では、T-3等級以上の防音合わせガラスのサッシを採用するのが望ましい。

> 049 建具に必要な性能

2.隣戸とのプライバシーに配慮した住戸間界壁

日本建築学会では住戸間界壁の遮音等級(室間平均音圧レベル差)はD-50を推奨している。乾式間仕切りを採用する場合は、各種取合い部分で遮音が低下するため、カタログデータの1ランク良いものを採用するほうが望ましい。

3.上下階の床の衝撃音と振動

集合住宅で最も厄介であるのが、家具などを動かす音などの軽量床衝撃音(LL)と子どもが走る音などの重量床衝撃音(LH)である。LLは床仕上げ材をクッション性の材料にしれば解決するが、LHは床版が振動して下階に伝わるため、振動を伝えにくい仕上げ材の使用、防振二重床の採用、躯体床の剛性確保(梁に囲われた面積(拘束面積という)を小さくするか、床スラブを厚くする)、下階の天井を防振吊りにし、天井裏に吸音材を敷設するなどが必要である。日本建築学会では床衝撃音の性能基準をして、LHはL-50、LLはL-45を推奨している。

4.機械室からの躯体の伝搬音と振動

機械式立体駐車場やエレベーター、ポンプ室、電気室などの機械が発する騒音や振動は躯体伝播で伝わるため、騒音を防ぐのは困難である。これらの設備室は別棟にすることが原則であるが、どうしても同じ棟に設けなければならない場合は、防振浮き床や浮き基礎にし、配管も防振吊りにする等、躯体と縁を切る、機械室内を吸音するなど徹底した防振防音対策が必要である。

5.その他の騒音源と振動

①玄関エンジンドアの駆動音や振動が上階居室に伝播する。エンジンドアは防振低騒音タイプをし、設置部分には防振装置を設置する。

②深夜には共用廊下や階段の歩行音がクレームになるケースもある。階段が鉄骨造の場合は段床にPCa版を採用するなどとし、床にはビニルシート等を張る。

③金属折板でできた庇や屋根で、断熱材が施工されていない場合は雨音に対する防音対策が必要となる。

集合住宅の騒音・振動対策

1級建築施工管理技士 外構 外構床のトラブル予防策

建築品質 外構工事


87)外構床のトラブル予防策

建物周囲のタイルや石で舗装された外構の床にまつわるトラブは意外と多い。

①雨の時、水たまりが発生する。
②人が滑って転倒する。
③タイルや石が割れる
④建物入口際で段差ができる(土間が沈下)

などなど、基本的な抑えをすれば発生しないものが多いが、軽視されることによるものと思われる。

1.外構の床や屋上と同様に水勾配が必要

道路の高さと建物1階の床の高さの関係は非常に重要であり、設計の初期段階で決めることである。建物をフラットにすることに注意が行き、雨水排水勾配を考慮していないケースがある。雨水勾配は1/50は確保したい。そうすれば排水もスムーズで、水たまりもできず、風で押し水が寄せされることもない。

2.外構仕上げ材は防滑性を確保

磨き石の床は雨の日、特に滑りやすい。床の防滑性に関して「JASS9 張り石工事」では滑り抵抗係数(C.S.R 値)の許容範囲を0.4〜0.8としている。「東京都福祉のまちづくり条例」では床材の滑り抵抗係数を0.4以上と規定している。本磨きや水磨きの石は使用してはならない。スロープは特に滑りには注意が必要である。ゆるい勾配だからといってジェット仕上げで大丈夫とは言えない。また、滑り止めの溝を切ったからといっても効果は少ない。溝部分にカーボランダムを埋め込むなど、確実な滑り止めを設けたい。


スロープの滑り止め

3.石やタイルの目地と土間コンクリートの目地を合わせる

外部土間にタイルや石を張るときは、下地の土間コンクリート(以下土間コン)がしっかりしていることが重要である。下地の土間コンが割れるとタイルや石が浮いたり割れたりする。土間コンの厚さは100mm程度以上とし、溶接金網(鉄筋径6mm、網目寸法150mm程度)を入れる。土間コンにはは3m内外の間隔で伸縮調整目地、或いはカッター目地を設ける。カッター目地の場合はメッシュ筋はかぶり確保のため切断する。その土間コンの伸縮調整目地とタイルや石の伸縮調整目地の位置は合わせなければならない。タイルや石の目地位置に合わせて、土間コンの目地位置を決めることになる。
建物との取合い部は伸縮調整目地を設ける。伸縮調整目地にはアスファルト目地板を入れる。その部分のタイル目地材はPS-2とする。


土間のタイル張り

尚、舗石やタイルの等の仕上材の厚さと土間コンクリートの厚さ、路床の厚さは、歩行者用と車両用で異なるので注意が必要である。

4.建物際の土間は沈下する

建物周囲は地下工事は基礎工事で掘り返されいるので、土間コン打設前に十分に転圧していたとしても、必ずといってよいほど土間コンは沈下し、建物側と段差が発生する。この沈下防止として、建物本体側から土間コンの下り止めを設けて、土間を乗せかけるおさまりとするするか、少なくともずれ止めの差筋で土間コンと建物側をつなぐ。これにより、土間の沈下は防げるが、建物本体を土間の境は必ずひび割れるので、タイルや石張りの目地位置に合わせて、土間の伸縮調整目地を設けなければならない。


土間コンの下り止め