20章 ユニット工事 3節 プレキャストコンクリート工事

20章 ユニット及びその他の工事

3節 プレキャストコンクリート工事

20.3.1 適用範囲

(a) 「標仕」20.3.1で定められているものは、簡易な製品だけであり、プレキャスト鉄筋コンクリート造等の製品については別に仕様を定める必要がある。

(b) 作業の流れを図20.3.1に示す。

図20.3.1 プレキャストコンクリート工事の作業の流れ

(c) 製作工場の決定

この種の製品の製作工場は、通常小規模なところが多いが、製品の量、難易度等に応じて、製作工場の規模等を考慮する必要がある。

(d) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(製作図の作成、製作、取付け、完了等の時期)
② コンクリートの所要強度、材料及び調合
③ 鉄筋、鉄線、溶接金網の規格等
④ 型枠の材料及び組み方
⑤ 養生方法(コンクリート、製品)
⑥ 工場現場での取付け工法
⑦ 構造計算書・その他

⑧ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

 

(e) 製作図には鉄筋、取付け金物等も記入し、コンクリートの充填、取付け等に無理のないようにする。

(f) 数多く製作する場合で、特に良い仕上り面を必要とするときは、コンクリートの試し練りを行い、試作をして仕上り面を検討する。

20.3.2 材 料

(a) 「標仕」20.3.2では、コンクリートは、「標仕」表6.2.1のI類又はⅡ類としている。また、コンクリートの材料は、「標仕」6章3節によることとしている。

(b) 「標仕」20.3.2では、鉄筋は、「標仕」5章2節によることとしている。また、補強鉄線は、該当するJISによることとしている。

20.3.3 製 作

(a) コンクリートの調合

コンクリートの調合は、「標仕」20.3.3(a)を満足するコンクリートの調合計画書を作成する。スランプは「標仕」20.3.3(a)(2)では12cm以下としている。

(b) 型枠の組立

型枠は、「標仕」20.3.3(b)及び(c)によるほか、形状寸法が正しく保持されて脱型が容易にでき、強度が十分なものとする。

(c) 鉄筋の組立

組立に当たっては、製作図を作成し正しく加工し組み立てる。

(d) コンクリートの打込み

(1) コンクリートの打込みに先立ち、型枠や取付け金物類についても位置、固定方法について確認を行う。

(2) コンクリートの打込みに先立ち、型枠の内部を清掃する。

(3) コンクリートは材料が分離しないよう運搬する。

(4) コンクリート打込みには振動機を適切に使う必要があるが、細部については手作業により確実に充填及び締固めを行う。

(e) 取付け金物

取付け金物は、鉄筋に結束するだけでは、コンクリート打込み中に位置がずれてしまうことがあるので、型枠に補助材等を取り付けて確実に固定する。

20.3.4 養生その他

(a) 打込み後の養生は、必要に応じて蒸気養生等とする。

(b) 製品の保管には支持台を用いるが、十分な強度の発現を確認するまでは、積み上げないようにする。

(c) 製品は、運搬中に損傷する例が多いので、適切な養生等により衝撃を避け、無理な積込み、積降ろしをしないようにする。

20章 ユニット工事 4節 間知石及びコンクリート間知ブロック積み

20章 ユニット及びその他の工事

4節 間知石及びコンクリート間知ブロック積み

20.4.1 適用範囲

(a) 「標仕」では、適用範囲を「比較的土圧等の小さい場合」の練積みとしており、次のような点に留意する必要がある。

(1) この節は、一般的な建築工事に伴う比較的小規模で土圧等が小さく、かつ、建築基準法や宅地造成等規制法(以下「宅造法」)の適用を受けない高さ2m以下の擁壁を対象としている。

なお、配置、断面寸法等については特記されていることが前提である。

(2) 高さ2mを超える擁壁(鉄筋コンクリート造、練積み造等)については、平成 12年建設省告示第1449号で宅地造成等規制法施行令と関連させ、構造計算等に関する技術基準が定められているので、設計者は、構造安全性について検討し、設計図書を作成(特記)しなければならない。

(3) 宅造法における擁壁の設置義務は、高さが2mを超える切土、1mを超える盛土及び2mを超える切・盛土の場合としている。ただし、切土で勾配が緩い場合等は除外されている。

(4) これらのことから、高さが2m以下の擁壁であっても、背面地盤が盛土の場合や地表面に大きな積載荷重が加わる場合等は、土圧が大きくなるので、必要に応じて安全性の検討を行い設計図書を作成する必要がある。

なお、安全性等の検討に関する参考文献としては,(-社)日本建築学会「建築基礎構造設計指針」等がある。

(b) 作業の流れを図20.4.1に示す。

図20.4.1 間知石及びコンクリート間知ブロック積み工事の作業の流れ

(c) 一般事項

(1) がけ崩れ又は土砂の流出を生じるおそれのある敷地は、災害防止のため法面の保護、擁壁、排水施設等が必要になる。敷地の造成に際しては、宅造法等の規制を受ける場合があり、擁壁についても同法に構造等が定められている((a)参照)。

(2) 擁壁各部の名称を図20.4.2に示す。


図20.4.2 擁壁各部名称

(3) 宅地造成等規制法施行令の抜粋を次に示す。

宅地造成等規制法施行令
(昭和37年1月30日 政令第16号 最終改正平成23年12月26日 )第6条 (擁壁の設置に関する技術的基準)
法第9条第1項の政令で定める技術的基準のうち擁壁の設置に関するものは、次のとおりとする。一 切土又は盛土(第3条第四号の切土又は盛土を除く。)をした土地の部分の生ずる崖面で次に掲げる崖面以外のものには擁壁を設置し、これらの崖面を覆うこと。イ.切土をした土地の部分に生ずる崖又は崖の部分であって、その土質が別表第1左欄に掲げるものに該当し、かつ、次のいずれかに該当するものの崖面(1) その土質に応じ勾配が別表第1中欄の角度以下のもの
(2) その土質に応じ勾配が別表第1中欄の角度を超え、同表右欄の角度以下のもの(その上端から下方に垂直距離5m以内の部分に限る。)ロ.土質試験その他の調査又は試験に基づき地盤の安定計算をした結果崖の安定を保っために擁壁の設置が必要でないことが確かめられた崖面二 前号の擁壁は、鉄筋コンクリート造、無筋コンクリート造又は間知石練積み造その他の練積み造のものとすること。2 前項第一号イ(1)に該当する崖の部分により上下に分離された崖の部分がある場合における同号イ(2)の規定の適用については、同号イ(1)に該当する粒の部分は存在せず、その上下の崖の部分は連続しているものとみなす。第8条 (練積み造の擁壁の構造)
第6条の規定による間知石練積み造その他の練積み造の擁整の構造は、次に定めるところによらなければならない。一 擁壁の勾配、高さ及び下端部分の厚さ(第1条第5項に規定する擁壁の前面の下端以下の擁壁の部分の厚さをいう。別表第4において同じ。)が、崖の土質に応じ別表第4に定める基準に適合し、かつ、擁壁の上端の厚さが、擁壁の設置される地盤の土質が、同表左欄の第一種又は第二種に該当するものであるときは40cm以上、その他のものであるときは70cm以上であること。二 石材その他の組積材は、控え長さを30cm以上とし、コンクリートを用いて一体の擁壁とし、かつ、その背面に栗石、砂利又は砂利混じり砂で有効に裏込めすること。

三 前2号に定めるところによっても、崖の状況等によりはらみ出しその他の破壊のおそれがあるときは、適当な間隔に鉄筋コンクリート造の控え堅を設ける等必要な措置を講ずること。

四 擁整を岩盤に接着して設置する場合を除き、擁壁の前面の根入れ深さは、擁壁の設置される地盤の土質が別表第4左欄の第一種又は第二種に該当するものであるときは擁壁の高さの15/100(その値が35cmに満たないときは、35cm)以上、その他のものであるときは擁壁の高さの20/100(その値が45cmに満たないときは、45cm)以上としかつ、擁壁には、一体の鉄筋コンクリート造又は無筋コンクリート造で、擁壁の滑り及び沈下に対して安全である基礎を設けること。(別表第4省略)

第10条(擁壁の水抜穴)
第6条の規定による擁壁には、その裏面の排水を良くするため、壁面の面積 3m2以内ごとに少なくとも1個の内径が7.5cm以上の陶管その他これに類する耐水性の材料を用いた水抜穴を設け、かつ、擁壁の裏面の水抜穴の周辺その他必要な場所には、砂利その他の資材を用いて透水層を設けなければならない。

別表第1 (第6条関係)
宅地造成等規制法施行令


20.4.2 材 料

(a) 間知石

(1) 間知石については、JIS A 5003(石材)でその品質が定められているが、市販品はこの規定に合わないものが多い。そのため「標仕」20.4.2 (a)では、JIS A 5003を適用しないで市販品を使用できるようにしている。両者の最も相違するのは控え長さで、JISでは面の最小辺の1.5倍としているのに対して「標仕」では1.2倍以上としている。

(2) 間知石の材質は、花こう岩が多く、凝灰岩、安山岩が使われることもある。また、面は割肌〈野面〉が一般的である。

(3) 合端の仕上げには、げんのう、こやすけ、グラインダー等を用いる。

(b) コンクリート間知ブロック

JIS A 5371(プレキャスト無筋コンクリート製品)推奨仕様D-1[積みブロック]の抜粋を次に示す。

なお、間知ブロックの寸法等については、製造所等によるばらつきが大きいため、JISでは推奨仕様としている。

JIS A 5371: 2010
推奨仕様D-1 積みブロックD-1.2 種 類
積みブロックの種類は、質量区分及び面の形状によって、推奨仕様D-1表1のとおり区分する。推奨仕様D-1 表1- 積みブロックの種類
D-1.3 性 能
積みブロックは、D-1.5に規定する圧縮強度試験を行い、性能の保証となる圧縮強度が所定の材齢において、18N/mm2以上でなければならない(D-1.5省略)。D-1.4 形状、寸法及び寸法の許容差積みブロックの形状、寸法及び寸法の許容差は、推奨仕様D-1 表2による。推奨仕様 D-1 表2-積みブロックの形状、寸法及び寸法の許容差

JISA 5371: 2010

20.4.3 工 法

(a) 間知石積み

(1) 遣方(ちょうはり)は、石積みの前面に法遣方を設け段割りをつける(図20.4.3参照)。


図20.4.3 ちょうはり(遣方)の概要

(2) 間知石及びかい石は使用前に泥土等を洗い落としておく。

(3) 根石は石積みの基準になるので、遣方に正しく合わせ、すわりよく加工して隣接石に合端を密着させ、かい石を確実に施工する。

(4) 谷積み(練積みの場合)は図20.4.4及び5並びに次の事項により行う。


図20.4.4 谷積み


図20.4.5 錬積み

(i) 遣方の段割りによって、水平水糸で石の先端を合わせ、谷の寸法をできるだけそろえるように配置する。その際、浮き石、崩壊のおそれのある部位は、事前に取り除く。

谷の不ぞろいは石の大小で調整し、高さの調整は3段以内で行うようにする。

(ii) 間知石はすわりをみて選定し、合端はげんのう払いを行い、げんのうでから打ちして隣接石に密着させ、面を正しく遣方に合わせ、法面がはみ出さないようにする。

(iii) かい石を堅固にかい込み,法面に直角に据える。

(iv) コンクリートの充填前に適宜散水して、1段ごとに胴込め及び裏込めコンクリートを充填する。その際、間知石等の間から、モルタル分が出てくるまで、バイブレーターで十分締め固める。また、コンクリートは、法肩側からシュートを用いて打ち込むことも多いが、生コン車を法肩一杯まで近寄せないよう、更にシュートを保持している作業員が法肩を乱さないよう留意する。

(v) 1日の積上げ高さは 1.2m以内とし、工事半ばの積終わりは段形とするよう「標仕」20.4.3(c)(7)に定められている。

(vi) 充填したコンクリートは、シート等で覆い、適宜散水して養生を行う。

(ⅶ) 水抜きは、設計図書に示す位置に、適宜勾配を付けて石積みを貫通し、前面は石面より30mm程度突き出し、裏込め側はコンクリート面に合わせて設ける。

また、水抜き管の元部に土砂流出防止マット200 × 200 (mm)や、流出防止キャップを設け、0.1 m2程度の砂利又は砕石をおく。

なお、「標仕」20.4.3(c)(11) の水抜きは、径50mm以上の硬質ポリ塩化ビニル管としているが、宅造法では内径7.5cm以上の陶管等としているので、宅造法の適用を受ける場合は注意が必要である。

(ⅷ) 天端均しコンクリートは、裏込めコンクリートと同時に施工して、間知石等の仕上げ面を天端コンクリートにたまった土砂や雨水等により汚さないように、適宜勾配を付ける。

(ix) 裏込め側の型枠を取り外し、埋戻しと併行して砂利等で透水層を設ける。

(x) 必要に応じて目塗りを見ばえよく行う。目塗りとは、間知石の合端に沿ってモルタルを太く塗り付けることをいう。

(5) 布積み

図20.4.6及び次により行う。


図20.4.6 布積み

(i) 間知石の加工及び組積の方法は、谷積みに準じて行う。

(ii) 横目地は、傾斜、湾曲等しないようにし、縦目地はいも目地にならないようにする。

(b) コンクリート間知ブロック積み

(1) 間知ブロック積みの組積方法は、間知石の練積みと同様に行う。

(2) ブロック位置を調整する場合、目地に合わせる場合等の目的で、げんのうでたたくとブロックが破損するので金てこ〈バール〉、鉄棒等を使用する。

20.4.4 養 生

(a) 夏期で直射日光がコンクリート面に当たるような場合等は、コンクリート面をシート等で覆い、適宜散水養生を行う。また、冬期で気温が 0℃以下になると予想される場合は、コンクリート露出面及び隙間を、 シート等で覆う。

(b) 硬化初期のコンクリートが、有害な振動や外力による悪影響を受けないようにする。特に、施工箇所付近での重機作業に伴う振動等に対しては、コンクリートに影響を与えないように十分配慮する。

20章 ユニット工事 5節 敷地境界石標

20章 ユニット及びその他の工事

5節 敷地境界石標

20.5.1 一般事項

(a) 「標仕」では規定されていないが、敷地境界の確認は重要事項であるため、敷地境界石標の設置について、次に示す。

(b) 石標を設置する場合には、境界がすべて確定しているかどうかを財産管理部局の管理責任者に確かめる必要がある。

境界が確定していない場合には、財産管理部局の管理責任者に、確定してもらわなければならない。

なお、土地の境界に対する主な法令には、次のようなものがある。

(1) 民法(第2編 物権 第3章 所有権)
(2) 国有財産法(第3章の2 立入り及び境界確定)
(3) 国有財産法施行令(第2章の2 立入り及び境界確定)

(4) 各省庁の所管国有財産取扱規則(例えば、国土交通省所管国有財産取扱規則第2章の2 境界の設定)

(c) 石標設置のための立会い

石標を設置する場合は、あらかじめ財産管理部局の管理責任者及び隣地所有者と十分打合せのうえ日時を定め、監督職員を含めて関係者の立会いを受けて、境界点の確認をしなければならない。

なお、立会いを受ける関係者とは、次の者をいう。

(i) 財産管理部局の管理責任者
(ii) 隣地所有者
(iii) 道路管理者
(iv) 監督職員

(v) 受注者等

隣地所有者は複数の場合もある。また、隣地が道路の場合は、道路管理者の立会いが必要であるので、連絡もれのないようにしなければならない。

立会いには、石標の位置、材質等を記載した図書を作成し、立会者の署名なつ印を受け、立会い状況の写真を写しておき、相互に保管して、将来のトラブルを防止する必要がある。

(d) 石標を設置するには、隣地に立ち入る必要があるので、あらかじめ了解を得ておかなければならない。隣地所有者の了解を得られない場合は、図20.5.1(ト) のように隣地に石標が食い込まないようにし、また、了解を得た場合は、図20.5.1(イ)のように設置する。

また、作業に当たっては、隣地所有者に障害を与え、賠償請求を受けることのないように十分に配慮する。

(e) 道路等で、石標が突出していて危険な場合には、路面等と平らにする。

20.5.2 材 料

(a) 境界石標には、花こう岩類の石材とコンクリートブロック製の既製品があるが、一般的には、コンクリートブロック製の既製品が用いられる。

(b) 花こう岩類の石材を用いる場合の形状・寸法の例を図20.5.1に示す。また、文字、記号等についても、図20.5.1を参考とする。石標の側面にある数字は、石標の番号であり、財産管理部局の責任者と打ち合わせ、必要がなければ省略してよい。

既製品を用いる場合は、なるべく図20.5.1に準じた記号のあるものを用いるようにする。


図20.5.1 石標配置及び詳細図の例

20.5.3 工 法

石標の設置は、根切り底を十分に突き締めたうえ、厚さ60mmの砂利地業を行い、コンクリートで根巻きして建て込み、移動・沈下等のないよう確実に施工する。

なお、コンクリートの調合は、容積比でセメント1 :砂 2:砂利 4 程度とする。

参考文献

21章 排水工事 1節 共通事項

21章 排水工事

1節 共通事項
21.1.1 一般事項

(1) この章は、構内の屋外雨水排水及び街きょ、縁石、側溝等を設置する工事を対象としており、原則として、汚水排水等をする工事は対象としていない。

なお、施工範囲は、車両の通行が少なく、切土等の通常の支持地盤に管路を敷設する場合を対象としている。軟弱地盤又は地下水位が高い場合で、排水施設の支持地盤に関して十分な支持力を得られない場合には、不同沈下や浮上がり等を生じる場合があるため、基礎形状等沈下を防止するために適切な設計がなされる必要があり、現場の状況により埋戻し部等に施工を行う場合は、設計者と打ち合わせ、支持力が得られる工法にする必要がある。

(2) 構内排水に関しては、国土交通省大臣官房官庁営繕部整備課監修「構内舗装・排水設計基準及び参考資料 平成31年版」(以下「構内舗装・排水設計基準」という。)がある。

(3) 作業の流れを図21.1.1に示す。


図21.1.1 排水工事の作業の流れ

(4) 設計図書の確認は、主として次の事項について行う。
 ① 工事範囲の確認
 ② 工事範囲内の埋設物及び障害物の確認
 ③ 既設排水管、接続桝の管底高さの設計図書との対比

 ④ 関連工事との取合いの検討

(5) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

 ① 工程表(着工、完成、通水試験等の時期)
 ② 使用材料の名称、規格、製造所名及び使用箇所
 ③ 排水管敷設の工法
 ④ コンクリートの調合及び打込み工法
 ⑤ 掘削の工法及び建設発生土の処分方法
 ⑥ 官公署への届出文書名及び提出予定日
 ⑦ 安全管理対策、公害対策
 ⑧ 作業のフロー、管理の項目、水準・方法、
  品質管理体制・管理責任者、

  品質記録文書の書式とその管理方法等

 

(6) 注意事項

(ア) 給水管と排水管が、平行して埋設される場合は、原則として両配管の間隔を、500mm以上とし、給水管は排水管の上方に埋設する。

(イ) 一般的に、上下水道工事では、土圧、荷重等の関係から埋設管の最小土かぶりを0.5〜1.0mとしているが、建築工事で行う外構工事程度のもので、大きな荷重を受けることのない箇所であれば、通常0.6mあればよい。

埋設管の最小土かぶりは、土圧、荷重による管の押しつぶし、その振動による継手の損傷の防止、温度変化による管の伸縮防止、凍結による劣化防止等のために必要である。

(ウ) 排水工事の施工に伴う関係官庁への申請及び届出書が遅滞すると、工程に影響がでるため注意する。

21.1.2 基本要求品質

(1) 排水工事に用いられる材料で、排水管や側塊等についてはJIS等が定められているので、これに適合する材料を使用することを要求している。

なお、その他の材料で、コンクリートについては、使用量も少なく強度等をあまり重視しない軽易な場合には、現場容積調合とすることができる。

(2) 配管、桝、街きょ、縁石、側溝等については、設計図書でその形状や寸法、排水勾配等が指示される。現場に敷設された配管や桝等が指定された形状や寸法のとおりに設置されていることを要求している。

(3) 「標仕」で要求している「排水に支障となる沈下や漏水」をなくすためには、次のような事項に留意して工事監理を行うことが必要である。

(ア) 埋戻し、盛土等を行った箇所に、排水桝、埋設管等を設けることは極力避けるべきである。

やむを得ず設ける場合は、建物本体等から支持材を出して受けるか又は最初の桝を建物の近くに設けるなどして管が不同沈下により破断しないように考慮する。

(イ) 本章は、雨水排水工事を対象としているが、排水計画によっては雨水と汚水の合流排水となる現場もある。このような場合には、特に、排水勾配が適切であることが重要である。

急勾配の場合は、水だけ先に流れ、汚物が停滞していて次第に管を閉塞してしまう。また、緩勾配にし過ぎると、汚水を流す能力が不足することになる。下水道法施行令第8条では、管きょ(管及び掘割り)の勾配、マンホールの設置について次のように定めている。

(a) 管きょの勾配は、やむを得ない場合を除き、1/100以上とすること。

(b) 暗きょである構造の部分の次に掲げる箇所には、桝又はマンホールを設けること。

① もっぱら雨水を排除すべき管きょの始まる箇所。

② 下水の流路の方向又は勾配が変化する箇所。ただし、管きょの清掃に支障がないときは、この限りでない。

③ 管きょの長さがその内径又は内法幅の120倍を超えない範囲内において管きょの清掃上適切な筒所。

21章 排水工事 2節 屋外雨水排水

21章 排水工事

2節 屋外雨水排水

21.2.1 材 料

(1) 排水管用材料は、「標仕」表21.2.1により、材種、種類・記号、呼び径等は特記によるが、構内舗装・排水設計基準では、車路・駐車場の下部に埋設する場合、材種は硬質ポリ塩化ビニル(VP)を基本としている。また、最小管径は、150mmとしている。

(2) 遠心力鉄筋コンクリート管(JIS A 5372推奨仕様C-2)

(ア) JISでは、管の種類を外圧管及び内圧管に区分し、さらに形状によってA形、B形、NB形及びNC形に区分している。

外圧管の種類は、表21.2.1のとおりである。

表21.2.1 暗きょ類 Ⅰ 類の遠心力鉄筋コンクリート管(外圧管)の種類(JIS A 5372 : 2016)

(イ) 「標仕」21.2.1では、外圧管(1種)を用いると規定しているが、これは自然流下の排水では内圧が生じないためである。

(ウ) 管の形状及び寸法は、表21.2.2 (B形のみ)のとおりである。

(エ) ゴム輪

B形、NB形及びNC形の継手に用いるゴム輪は、JIS K 6353(水道用ゴム)の規格に適合したものを用いる。ゴム輪の種類はⅣ類とする。

(オ) 表 示

暗きょ類には、JIS A 5361(プレキャストコンクリート製品 – 種類、製品の呼び方及び表示の通則)によって、次の事項を表示する。

(a) 種類又はその略号
(b) 製造業社名又はその略号
(c) 製造年月日又はその略号

(d) リサイクル材を用いている場合には、その旨を表示

表21.2.2 管の形状及び寸法(B形)(JIS A 5372 : 2016)

表21.2.3 ゴム輪の品質(JIS K 6353 : 2011)

(3) 硬質ポリ塩化ビニル管(JIS K 6741)

(ア) この規格は、一般流体輸送配管に用いる硬質ポリ塩化ビニル管について規定している。ただし、JIS K 6742(水道用硬質ポリ塩化ビニル管)に規定する水道用硬質ポリ塩化ビニル管を除く。

(イ) JISでは、管の種類はVP、VU及びVMの3種類があるが、「標仕」21.2.1 (1)では、VP及びVUを用いると規定している。VP及びVUの呼び径を表21.2.4に示す。

表21.2.4 管の種類及び呼び径(JIS K 6741 : 2016)
(ウ) ゴム輪

ゴム輪は、JIS K 6353の規格に適合したものを用いる。

ゴム輸の品質は、表21.2.5による。

表21.2.5 ゴム輪の品質(JIS K 6353 : 2011)

(エ) 「構内舗装・排水設計基準」に管きょの種類の選定について示されているので参考にするとよい。

(オ) 表 示

管の外側には、容易に消えない方法で、次の事項を表示しなければならないこととされている。

 ① 日本産業規格の番号
 ② 種類又はその記号
 ③ 呼び径
 ④ 製造年月又はその略号

 ⑤ 製造業者名又はその略号

(4) リサイクル硬質ポリ塩化ビニル三層管(JIS K 9797)

(ア) この規格は、外層及び内層は未使用ポリ塩化ビニルを主体とし、中間層に硬質ポリ塩化ビニル管・継手類から作られた再利用ポリ塩化ビニルを主体とした、埋設部で無圧の一般流体輸送配管に用いるリサイクル硬質ポリ塩化ビニル三層管について規定している。

(イ) JISでは、管の種類はRS-VUのみである。RS-VUの呼び径を表21.2.6に示す。

表21.2.6 RS-VUの呼び径(JIS K 9797 : 2006)
(ウ) 表 示

管の外側には、容易に消えない方法で、次の事項を表示しなければならないとされている。

 ① 種類又は記号
 ② 呼び径
 ③ 製造年月又はその略号

 ④ 製造業者名又はその略号

(5) 排水用硬質ポリ塩化ビニル管継手(JIS K 6739)

(ア) この規格は、JIS K 6741に規定するVPを使用する排水配管の接着接合に用いる硬質ポリ塩化ビニル管継手について規定している。

(イ) 硬質ポリ塩化ビニル管継手の形状による種類は、表21.2.7による。

表21.2.7 形状による種類
(ウ) 表 示
(a) 継手の外側には、容易に消えない方法で、次の事項を表示しなければならないとされている。
 ① 呼び径

 ② 製造業者名又はその略号

(b) 継手又は包装の外側に、容易に消えない方法で、次の事項を表示しなければならないとされている。
 ① 日本産業規格の番号
 ② 種類又はその略号

 ③ 製造年月又はその略号

(6) 屋外排水設備用硬烈塩化ビニル管継手(塩化ビニル管・継手協会規格)

(ア) 「標仕」では、屋外排水設価用硬質塩化ビニル管継手は、塩化ビニル管・継手協会規格で規格番号はAS 38、種類・記号はVU継手と規定している。

(イ) 硬質塩化ビニル管継手の形状による種類は、表21.2.8による。

表21.2.8 形状による種類
(ウ) 表 示

継手の外側には、容易に消えない方法で、次の事項を表示しなければならないとされている。

 ① 継手の略号又はVU
 ② 呼び径
 ③ 製造業者名又はその略号
 ④ 製造年又はその略号(注)

※(注)ー製品ごと又は一包装ごとに表示するものとする。

(7) 配管用炭素鋼鋼管(JIS G 3452)

(ア) 「標仕」の排水工事では規定していないが、雨水排水(「標仕」13章5節[とい])等で使用する排水管用材料として、配管用炭素鋼鋼管がある。種類及び記号は表21.2.7のとおりとし、亜鉛めっきの有無により黒管、白管に区分されているが、「標仕」表13.5.1では白管としている。

表21.2.9 種類の記号及び亜鉛めっきの区分 (JIS G 3452 : 2019)

(イ) 管の寸法は表21.2.10のとおりである。

(ウ) 表 示

検査に合格した管には、管ごとに、次の事項が表示されている。ただし、外径が小さい管の場合又は注文者の要求がある場合は、これを結束して、1束ごとに適切な方法で表示してもよいとされている。また、注文者の承認を得た場合は、その一部を省略することができるとされている。

 ① 種類の記号
 ② 製造方法を表す記号
 ③ 寸法

 ④ 製造業者名又はその略号

表21.2.10 配管用炭素鎖鋼管の寸法(JIS G 3452 : 2019)

(8) 排水用ねじ込み式鋳鉄製管継手(JPF DF 001:日本金属継手協会規格)

(ア) この規格は、主に使用圧力 0.35MPa以下で鋼管を用いた排水配管の接合に用いる排水用ねじ込み式鋳鉄製管継手(以下「継手」という。)について規定している。

(イ) 継手の種類は、次による。

(a) 材料による種類は、ねずみ鋳鉄製及び可鍛鋳鉄製の2種類とする。
(b) 形状による種類及びその記号は、表21.2.11による。

(c) 表面の状態による種類は、鋳放し、めっき及びコーティングとする。

表21.2.11 形状による種類(JPF DF 001 : 2010)

(ウ) 継手の形状は、表21.2.12による。

表21.2.12 継手端部の形状・寸法(JPF DF 001 : 2010)

(エ) 継手の寸法許容差は、表21.2.13による。

表21.2.13 継手の中心から端面までの距離、及び端面から端面までの距離の許容差

(オ) 継手の材料は、表21.2.14による。

表21.2.14 継手の材科(JPF DF 001 : 2010)

(カ) 製品の表示

(a) 継手には、継手の大きさの呼び、製造業者又はその記号を表示する。Uトラップには、流れ方向を明示する矢印を付ける。

(b) 包装には、次の事項を表示する。
 ① 製品名称、規格番号又は規格名称
 ② 種類
 ③ 継手の大きさの呼び
 ④ 数量

 ⑤ 製造業社名又はその略号

(9) プレキャスト鉄筋コンクリート製品のマンホール側塊(JIS A 5372 推奨仕様 D-1)

(ア) JISにおける側塊の形状及び寸法は、表21.2.15のとおりである。形状及び寸法は、特記によるが、接続する排水路の高さ、雨水の流出量等に注意する。

(イ) 足掛け金物の材料については、「標仕」21.2.2 (6)(オ) で、現場打ちの場合と既製品の場合を規定しており、既製品の場合、マンホール側塊の製造所の仕様によるとしている。

(ウ) 表 示

側塊には、次の事項が表示されている。
 ① 種類又はその略号
 ② 製造業者名又はその略号
 ③ 製造年月日又はその略号

 ④ リサイクル材を用いている場合には、その旨の表示

表21.2.15 マンホール側塊の呼び及び寸法(JIS A 5372 : 2016)
(10) 雨水マンホール(組立て)

国土交通省大臣官房官庁営繕部整備課監修「建築工事標準詳細図(令和4年版)」9-15[雨水マンホール]を参照するとよい。

(11) 鋳鉄製ふた
(ア) 「標仕」では、空気調和・衛生工学会規格 SHASE-S 209(鋳鉄製マンホールふた)に基づき、名称、種類及び適用荷重は、特記によるとされている。

なお、車路等においては、消防車など重量のある車両を考慮した適用荷重が特記されているか確認する。

(イ) 鋳鉄製ふたには、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4(5)(ア) 参照)で評価された製品があるので参考にするとよい。

(ウ) SHASE-S 209(鋳鉄製マンホールふた)の抜粋を次に示す。

SHASE-S 209
マンホールふた3. 種類及び大きさの呼びマンホールふたの種類及び大きさの呼びは、表1による。表1 – マンホールふたの種類及び大きさの呼び
加重体の大きさの換算について
4. 要求事項4.3 性能
マンホールふたは、5.の規定によって試験し、表2に適合しなければならない。表2 – マンホールふたの性能
5. 荷重試験方法5.1 たわみ試験の試験方法
たわみ試験の試験方法は、図9に示すように試験体の枠を全面で支え、ふた(試験体)の中央に表3に示す加重体を載せ、たわみ試験荷重に達するまで徐々に荷重を加えたときのたわみ量及び荷重除去後のたわみ量(残留たわみ)を測定する。ただし、試験体はパッキンを外したものとする。5.2 破壊試験の試験方法
破壊試験の試験方法は、5.1を終了後、さらに表3に示すたわみ試験荷重の4倍に相当する破壊試験荷重に達するまで徐々に荷重を加え試験を行う。
図9 – マンホールふたの試験要領表3 – 加重体の大きさと試験荷重
化粧マンホールふた3. 種類および大きさの呼び
化粧マンホールふたの種類及び大きさの呼びは.表1による。表1 – 化粧マンホールふたの種類及び大きさの呼び
4. 要求事項
4.3 性 能(マンホールふたに同じため省略)5. 荷重試験方法
5.1 たわみ試験の試験方法 (マンホールふたに同じため省略)5.2 破壊試験の試験方法 (マンホールふたに同じため省略)
図7 – 化粧マンホールふたの試験要領表3 – 加重体の大きさと試験荷重
3. 種類及び大きさの呼び格子ふたの種類及び大きさの呼びは、表1による。表1 – 格子ふたの種類及び大きさの呼び
4. 要求事項
4.3 性 能 (マンホールふたに同じため省略)

5. 荷重試験方法

5.1 たわみ試験の試験方法 (マンホールふたに同じため省略)

5.2 破壊試験の試験方法 (マンホールふたに同じため省略)


図3 – 格子ふたの試験要領

表3 – 加重体の大きさと試験荷重

SHASE-S 209-2009
(12) グレーチング

(ア) グレーチングの材質、適用荷重、メインバービッチ、ボルト固定の有無等は、特記によるとされているが、次のことを確認するとよい。

(a) 車路等において、消防車などの特殊な自動車の種類を考慮し、十分な耐荷重性能を有するものとしているか。

(b) メインバービッチは、歩行者の通路ではハイヒールを考慮しているか。

(c) 自動車等の通過時のずれ、がたつき又は跳ね上がりが生じないように、ボルトで固定されているか。

(13) 材料の保管

(ア) 現場内に材料を保管する場合は、倒壊が生じないようにするとともに、部外者が保管場所に立ち入らないように柵等を設け、十分な安全対策を講じなければならない。

(イ) 管の保管に当たっては、管の高積みを避け、ロープ掛け等を施し管の転がりや転落を防止する。

(ウ) 塩化ビニル管の接合に用いる接着剤は、揮発性で、かつ、引火性の溶剤を多量に含んでいるため、接着剤の機能が失われないように必ずふたをし、冷暗場所に保管する。また、接着剤の保管については、関係法令を遵守する。

(14) 排水桝及び配管を据え付ける部分の地業用材料は次のとおりである。

(ア) 砂地業に使用する砂は、シルト、有機物等の混入しない締固めに適した山砂、川砂又は砕砂とし、適用は特記による。

(イ) 砂利地業に使用する砂利は、再生クラッシャラン、切込砂利又は切込砕石とし、適用は特記による。

なお、粒度は、JIS A 5001(道路用砕石)に基づく C-40、C-30又はC-20程度のものとする。

(15) 排水工事に用いる現場打ちの場合の、コンクリートの種類、設計基準強度及びスランプは特記による。特記がなければ、排水工事に用いるコンクリートは大きな荷重を受けることがないため、普通コンクリートで設計基準強度18N/mm2、スランプは15cm又は18cmとする。

なお、使用量が少なく、レディーミクストコンクリートを購入することが現実的でない場合、コンクリートの調合容積比セメント1:砂2:砂利4 程度の現場練りとすることができる。

(16) 寒冷地に適用される凍上抑制層に用いる材料

「構内舗装・排水設計基準」では、寒冷地における雨水排水設備は、地盤の凍結融解の影響による破損を避けるため、凍結深さから求めた必要な置換深さと、雨水排水設備の基礎の下端の深さを比較し、置換深さの方が大きい場合は、雨水排水設備の基礎の下にその厚さの差だけ、凍上の生じにくい材料の層を設けるとされている。凍上抑制層に用いる材料は、砂、砂利、クラッシャラン、再生クラッシャラン、礫、スラグ等があり、「標仕」では、ゴミ、泥等の有機物を含まないものとし、種類は、特記によると規定している。

砂は「標仕」表21.2.2による。粒度分布を求めて、各種骨材として適当かどうかを判定するための粒度試験は JIS A 1102(骨材のふるい分け試験方法)に基づき、適用は特記によると規定している。

(17) 「標仕」では、埋戻しに用いる材料は特記による。特記がなければ、表3.2.1のB種(根切り土の中の良質土)と規定している。根切土を使用するのが一般的であるが、締固めが十分に行えない土の場合は、良質な土や山砂等で置き替える必要がある。

21.2.2 施 工

(1) 寒冷期等の施工及び養生

降雨・降雪が予想される場合又は打込み中のコンクリート温度が 2℃を下回るおそれのある場合で、適切な養生を行うことが出来ない場合は、コンクリートの打込みを行わない。ただし、やむを得ず打ち込む場合は、保温及び養生方法に関して具体的な方法を受注者等に提案させたうえで検討する。

なお、保温及び養生方法の例を、22.5.5[養生](3) に示しているので、参考にされたい。

(2) 根切り

(ア) 根切りに当たっては、「標仕」3章を参照し、安全に注意する。特に、山留めの構造及び点検等の管理には注意が必要である。

(イ) 遣方を適切な間隔に設け、高低を実測のうえ、所定の深さに根切りする。

また、遣方に水糸を張り、根切りの確認をする。

(ウ) 遣方を設けない場合は、あらかじめ深さを計算しておき、レベルにより確認する。

(エ) 根切りは、根切り底をかく乱しないように掘削する。

(オ) 根切り底の深さと管路の勾配に注意し、掘り過ぎた場合は、山砂の類で埋め戻す。また、根切り底が緩んでいる場合は、締め固める。

(カ) 根切り範囲は、根切りだけを先行させないで、できるだけ管の敷設と埋戻しとが継続してできる程度に抑えておく。

根切りのままで長期間放置すると、降雨等により崩壊したり、根切り底が緩んだりする。地下水位の高い地盤では、ますます軟弱化するおそれがある。

(3) 地 業

(ア) 排水施設を設ける地盤が、排水施設を支持するのに適した砂、ローム、粘土質等の場合は、根切り面を割り石や砂等の地業の施工がしやすいようにソイルコンパクタ等で締め固める。

(イ) 遠心力鉄筋コンクリート管の地業は、管の埋設方式、土質の状態、活荷重の条件等によって地業形式が異なるため、その選定に当たっては、十分注意を払う必要がある。

(ウ) 遠心力鉄筋コンクリート管を敷設する箇所が、管を支持するのに適している場合は砂地業とすることができるが、軟弱地盤等では、その地盤に適したコンクリート地業、杭打ち地業等の地業形式をとらなければならない。この場合は、設計担当者と打ち合わせ、設計変更等について検討する。

(エ) 砂地業では、ごみや有機不純物締を含まない遮断層用の砂を300mmごとに締め固め、空隙が生じないように仕上げる。

(オ) 割り石地業では、地業に用いる砕石等を所定の厚さにむらなく敷き均し、タンパ等の締固め機械によって十分に締め固める。

(カ) 捨コンクリート地業では、砕石等を所定の厚さに仕上げた後、所定の寸法のコンクリートを打ち込み、締め固めて空隙のないように仕上げる。

(4) 側塊、排水桝

(ア) 排水桝、マンホールは、管きょ内の点検、清掃等のために必要なものであるため、管きょの方向、勾配、管径の変化する箇所、段差の生じる箇所及び合流する箇所に設ける。

(イ) 汚水の混入する排水桝及び排水溝には、インバート(図21.2.1参照)を設ける。インバートは、流れやすくして汚物等が詰まるのを防ぐためのものであるため、モルタルは滑らかに仕上げ、肩上は汚物が残らないように、勾配を付ける。


図21.2.1 インバート

(ウ) 雨水用排水桝及びマンホールの底部には、排水管等に泥が詰まらないように、深さ150mm以上の泥だめを設ける。

(エ) 排水桝、マンホールについては、プレキャスト製品と現場打ちコンクリートがあるが、施工性・品質等からプレキャスト製品が一般的に使われている。

(オ) 合流式下水道の場合、雨水系統と汚水系統が合流する合流桝を設けるが、臭気対策としてトラップ桝とすることが望ましい。

(5) 排水管

(ア) 遠心力鉄筋コンクリート管

(a) 管の敷設は下流部より始め、順次上流部に向けて行うのがよい。

(b) 管の吊降ろしは、必要に応じてロープ、チェーンブロック等を用いて、管に損傷を与えないようにする。

(c) 砂地業とした場合は、管を勾配に合わせて移動しないように固定し、継手作業が終わった後、良質土で管の中心線程度まで両側から埋め戻して締め固める。埋戻しの一層の仕上り厚さは20cm以下とし、適切な含水状態の土等で十分締固めながら埋め戻す。

(d) 継手部分は、漏水の原因となるため、特に入念に施工する。継手部分にゴムリングを用いるB形管は、接合前にゴムリングの傷、老化、寸法等を確認し、正常であれば、あらかじめ作っておいた引込み目安線まで確実に引き込む(図 21.2.2参照)。


図21.2.2 管のゴム接合

(イ) 硬質ポリ塩化ビニル管

(a) 管の取扱いについては、落下したり、ぶつかり合ったりしないように慎重に取り扱い、特に、管端部にはクッション材等を挟むなどし、破損及び傷がつかないようにする。

(b) 桝との接合には、砂付きの桝取付け短管を用いる。

(c) 「標仕」で継手は、硬質ポリ塩化ビニル管継手による冷間工法とし、継手には、材料自体が博いため、直接ねじを切れないので、接着剤又はゴム輪を用いるものとしている。適用は特記によるが、特記がなければ、接着剤としている。

(d) マンホールなどの構造物と管きょとの接続部分において、不同沈下等による偏荷重により継手の使用を検討する必要がある。

検討事項としては、
 ① 耐震性を特に必要とするかどうか
 ② 宅地造成等における盛土区域の地盤の安定性
 ③ 軟弱地盤等におけるマンホールと管きょとの不同沈下
 ④ 管きょの重要性

などがあげられる。

対応策としては、可とう性管きょ、マンホール用可とう継手単管の使用等がある。

なお、採用に当たっては可とう性、水密性、耐久性、経済性等を十分検討しなければならない。

(6) 凍上抑制層は、1層の仕上がりを20cm以下として、各層ごとにタンパ等小型締固め機械を使用し均ーになるように仕上なければならない。

(7) 埋戻し
(ア) 埋戻しは、原則として、根切土の良質土とする。

ただし、車両等の通行する部分は、コンクリートで保護するか、川砂又は透水性の良い山砂の類とする。砂類の場合は、水締めとするのが望ましい。

(イ) 土かぶりまでの埋戻しは、管の耐力の範囲内でタンパ、ランマ等で締め固め、重機械を用いてはならない。

(ウ) その他の埋戻しについては、3章を参照する。

21.2.3 試 験

通水試験は、排水管の継手モルタルの硬化程度を見計らい、全系統にわたり、埋戻しに先立って通水し、漏水の有無の確認を行う。

試験方法は、排水管の端末を適切な方法で閉じ、管径の1/2程度まで注水し、継手部分の漏水及び勾配の検査を行う方法とする。しかし、重要部分及び一般部分でも事情が許す場合は、管を満水にする満水試験を行う。

21.2.4 浸透施設

雨水の浸透式排水は、特定都市河川浸水被害対策法や各地方自治体の条例等の規制によって、近年の急激な都市化の進展とともに多発している「都市型水害」、さらには最近増加している「局地的豪雨」等の対策措置として、雨水排水が直接公共施設の下水道、河川、湖沼、海等に放流できない地域又は植栽等のために地下に浸透させた方が望ましいなどの目的で設けられるものである。適用に当たっては、浸透排水能力及び施設の設置場所の地質、地形、地下水等の条件や周辺の施設、構造物への影響を十分検討する。

「標仕」には、規定はないが、浸透施設を参考に示す。

(1) 浸透施設の例としては、図21.2.3のような浸透桝、浸透トレンチ、浸透側溝がある。


図21.2.3 浸透施設

(2) 浸透施設の施工に当たっては、次の点に注意する。

(ア) 施工時に地盤の浸透機能を、低下させないことが重要であるため、浸透面を締め固めないものとし、掘削後は床付けを行わず、直ちに敷砂を行い充填材を投入する。ただし、地盤が砂礫、砂の場合は敷砂を省略してよい。

(イ) 透水性舗装を浸透施設とする場合には、地盤面は小型ローラ等で締め固めるが、こね返しや過転圧によって強度が低下しないよう注意する。

(ウ) 充填材の投入に当たっては、施設内に土砂が混入しないように注意する。また、投入時に透水シートを引き込まないように注意する。

(エ) 工事中の排水は、原則として、浸透施設を使用しない。また、浸透面にネットを被覆するなどの土砂流入防止の措置をとる。

(オ) 工事完了後、浸透施設に対して、浸透能力確認のための注水試験を行う。

21章 排水工事 3節 街きょ、縁石及び側溝

21章 排水工事

3節 街きょ、縁石及び側溝

21.3.1 材 料

(1) 「標仕」では、縁石及び側溝は、表21.3.1により種類、形状及び寸法は特記によると規定している。主な材料の規格を以下に示す。

(ア) 道路用境界ブロックに関するJIS A 5371(プレキャスト無筋コンクリート製品)の抜粋を次に示す。

JIS A 5371 : 2016

推奨仕様B-2 境界ブロック

B-2.4 形状,寸法及び寸法の許容差

ブロックの形状、寸法及び寸法の許容差は、推奨仕様 B-2 図1、推奨仕様 B-2 図2、推奨仕様B-2 図3 及び推奨仕様 B-2 表3による。


推奨仕様 B-2 図1 – 片面歩車道境界ブロックの形状及び寸法


推奨仕様 B-2 図2 – 両面歩車追境界ブロックの形状及び寸法


推奨仕様 B-2 図3 – 地先境界ブロックの形状及び寸法

推奨仕様 B-2 表3 – ブロックの寸法及び寸法の許容差

JIS A 5371: 2016
(イ) 道路用コンクリートL形側溝に関するJIS A 5371(プレキャスト無筋コンクリート製品)及びJIS A 5372(プレキャスト鉄筋コンクリート製品)の抜枠を次に示す。

JIS A 5371 : 2016

推奨仕様 C-1 L形側溝

C-1.4 形状、寸法及び寸法の許容差
L形の形状寸法及び寸法の許容産は、推奨仕様 C-1 表3による。

推奨仕様 C-1 表3 – L形の形状,寸法及び寸法の許容差

JIS A 5372 : 2016

推奨仕様 E-4 L形側溝

E-4.2 種 類
L形の種類は、用途によって推奨仕様 E-4 表1のとおり区分する。

推奨仕様 E-4 表1 – L形の種類

E-4.4 形状,寸法及び寸法の許容差

L形の形状、寸法及び寸法の許容差は、推奨仕様 E-4 図1及び推奨仕様 E-4 表3による。


推奨仕様 E-4 図1 – L形の形状、寸法及び配筋

推奨仕様 E-4 表3 – L形の形状、寸法配筋及び寸法の許容差

JIS A 5372 : 2016
(ウ) 道路用上ぶた式U形側溝に関する JIS A 5372(プレキャスト鉄筋コンクリート製品)の抜粋を次に示す。

JIS A 5372 : 2016

推奨仕様 E-2 上ぶた式U形側溝

E-2.2 種類

側溝の種類は、用途によって、推奨仕様 E-2 表1のとおり区分する。

推奨仕様 E-2 表1 – 側溝の種類

E-2.4 形状、寸法及び寸法の許容差

側溝の形状、寸法及び寸法の許容差は、推奨仕様 E-2 表4 又は推奨仕様 E-2 表5による。

推奨仕様 E-2 表4 – 側溝(本体)の形状、寸法、配筋及び寸法の許容差

推奨仕様 E-2 表4 – 側溝(本体)の形状、寸法、配筋及び寸法の許容差(続き)

推奨仕様 E-2 表5 – 側溝(ふた)の形状、寸法、配筋及び寸法の許容産

推奨仕様 E-2 表5 – 側構(ふた)の形状、寸法、配筋及び寸法の許容差(続き)

JIS A 5372 : 2016

21.3.2 施 工
 

(1) 工法

街きょ等を通りよく排水勾配を確保して仕上げるには、基礎となる砂利や砕石の層及びモルタルについて、平たんに仕上げなければならない。それらの施工については、4.6.3[ 砂利及び砂地業 ]及び 4.6.4[捨コンクリート地業]を、コンクリートについては「標仕」6章14節を参照する。

なお、「標仕」21.3.2 (1)では、砂利地業の厚さは、特記による。特記がなければ、厚さは100mmとしているが、軟弱地盤等で地盤改良が必要な場合は、設計担当者等と協議する。

(2) 現場打ちの場合、寒冷期等の施工及び養生は、21.2.2 (1)による。

(3) 凍上抑制層の敷均しは、21.2.2 (6)による。

(4) 街きょ、縁石及び側溝の設置例を図21.3.1に示す。


図21.3.1 街きょ等の設置例

22章 舗装工事 1節 共通事項

建築工事監理指針 22章 舗装工事

1節 共通事項
22.1.1 一般事項

(1) 「標仕」に定められている舗装は、建築物の周囲等に施工される、いわゆる構内舗装を対象としており、一般道路のような舗装は対象としていない。したがって、舗装厚、材質、締固めの程度等は、一般道路の仕様とは異なり構内舗装に適したものとなっている。

(2) 構内舗装に関しては、国土交通省大臣官房官庁営繕部整備課監修「構内舗装・排水設計基準及び参考質料 平成31年版」がある。

(3) 通常用いられる舗装の種類は次のとおりである。

(ア) アスファルト舗装

路盤及び加熱アスファルト舗装の表層又は表層と基層で構成されるたわみ性舗装で、交通荷重を路床土の有する許容応力以下に分散する。加熱式アスファルト混合物の代わりに、石油アスファルト乳剤やカットバックアスファルトをバインダとした常温式アスファルト混合物もあるが、耐久性の点で加熱式より劣るため、通常は加熱式アスファルト混合物を使用する。

(イ) コンクリート舗装

路盤及びコンクリート版により構成される剛性舗装で、交通荷重をコンクリート版の曲げ強度で支える構造となっている。

(ウ) その他の舗装

舗装の表面の材料が異なるものとして、ブロック系舗装がある。また、(ア) 及び(イ) に特別な機能を付加したものとしてカラー舗装、透水性アスファルト舗装及び排水性アスファルト舗装があり、材料と施工方法を変えたものとして転圧コンクリート舗装がある。

(4) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(着工、他工事との関連、完成、試験の時期)
② 施工業者名及び作業の管理組織
舗装の構造
使用材料の品質、製造所名及び使用箇所
配合計画書
⑥ 目地割り及び目地の構造
⑦ 路床の不良土及び障害物の処置
⑧ 建設発生土の処分方法
締固めの方法、管理の方法
舗設の工法
⑪ 養生の方法
試験の要領

作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

22.1.2 基本要求品質

(1) アスファルト舗装の場合は、通常路床上に路盤・表層の順で構成され、コンクリー卜舗装の場合は、路床上に路盤・コンクリート版の順で構成される。

なお、路床が軟弱な場合には、路床の改良を施すことがある。また、寒冷地では凍上による舗装の破損を防ぐため、水はけの良い材料で凍上抑制層を設ける場合もある(図22.1.1参照)。

これらに用いる材料については、「標仕」の各節で、JIS等による品質規格が定められているので、この規格に適合する材料を用いる。

基本要求品質としては、定められた材料が正しく使用されていることを求めているため、そのことを完成時にJIS等に基づく試験成績書等で証明できるようにしておく必要がある。


図22.1.1 舗装構成と各層の名称( () は必要に応じて採択する)

(2) 「標仕」では、仕上りの状態は、形状及び寸法を「所定」のものとし、仕上り面の状態を「所要」のものとしている。

形状及び寸法については、設計図書で指定され、その許容差は「標仕」の各節で規定している。また、仕上り面については、設計高さとの許容差を定めるとともに、平たん性を定性的に規定している。

舗装の平たん性については、目視により歩行に支障がなく、段差や著しい不陸がないことや、通行の支障となるような水たまりがないことを散水や降雨時を利用して、確認する。また、ブロック系舗装の場合については、22.8.5を参考に、品質計画で平たん性の管理方法等を明確にしておくとよい。

(3)「標仕」では、舗装各層の性能については、定められた材料を用いて「所定のとおり締め固められ、耐荷重性を有すること」と規定している。また、路床や路盤の締固めについては、土質や路盤材料並びに締固め機械の種類等に対応して、締固めに適した含水状態で施工するよう定めている。

アスファルト舗装については、アスファルト混合物等の配合設計を行い、原則として、使用するアスファルト混合物の製造所において試験練りや試験施工を行って現場配合を決定するとしており、石油アスファルト乳剤の使用量や、アスファルト混合物の敷均し時の温度等についても規定されている。さらに、路盤や舗装等について、施工後の締固め度の試験についても規定している。

これらに関して、当該現場での具体的な施工の方法並びに管理の方法等について施工計画書(品質計画)で定め、これに基づき品質管理を行わせるとともに、その記録等により、施工が適切に行われ、品質管理の結果が適正であることが分かれば、その工事は「耐荷重性」を有すると見なすことができる。

ただし、現場の地盤の状況等が設計時の想定と異なり、設計図書のとおりに施工すると「耐荷重性」の確保が困難であると予想される場合には、設計担当者と打ち合わせ、「標仕」1.1.8の規定による協議を行う必要がある。

22.1.3 再生材

(1) 再生材は、コンクリート構造物の解体工事や舗装の補修工事からの発生材をリサイクルして利用するものであり、大別して再生加熱アスファルト混合物と再生路盤材に分かれる。いずれの再生材も適切な品質管理のもとで製造されることにより、新規材料と同等の性能を有するので、資源の有効利用や環境保全の観点から積極的な利用が望まれる。

(2) 「標仕」22.1.3では、各節に規定されている材料中に再生材が含まれている場合には、再生材を使用すると規定している。ただし、再生材の供給状況等により、再生材の使用が困難な場合には、監督職員との協議により、再生材以外の材料を使用することができる。

22章 舗装工事 2節 路床

建築工事監理指針 22章 舗装工事

2節 路 床

22.2.1 一般事項

(1) この節は、路床と現地の土質条件、気象条件及び舗装構造によって必要となる凍上抑制層、フィルター層を対象としている。

(2) 路床は、アスファルト混合物層又はセメントコンクリート版及び路盤を通じて分散された交通荷直を最終的に支える部分である。

(3) 路床は、通常は現地盤の土をそのまま利用するが、地盤が軟弱な場合には、路床の改良が必要となる。改良工法としては、置換え工法と安定処理工法がある。

(4) 路床土は、地域によって粘土から礫質土に至るまで多くの種類のものがあるが、通常の土の分類に応じた設計CBRとの関係を、表22.2.1に示す。

表22.2.1 路床土の性質による設計CBRの設定

22.2.2 路床の構成及び仕上り

(1) 路床は、路床土及びその上に設ける凍上抑制層又はフィルター層から構成され、各層の役割は次のとおりである。

(ア) 凍上とは、路床や路盤内の水分が凍結して体積が膨張し、舗装を持ち上げることで舗装が破損する現象をいう。寒冷地域や凍結融解を受けるおそれのある地域では、凍結深さから求めた必要な置換え深さと舗装厚さを比較して、置換え厚さが大きい場合、路盤の下にその厚さの差だけ凍上の生じにくい材料の凍上抑制層を設ける。特に、建物等により一日中日陰となる箇所においては凍上について十分留意する必要がある。

(イ) フィルター層は、透水性舗装の施工で設けられる層であり、透水性の表層及び路盤を通過した雨水を円滑に路床に浸透させるとともに、軟弱な路床土や地下水が浸入し路床が軟弱化して舗装が破壊することを防ぐために設ける層である。

(ウ) 路床の設計CBRが3未満の軟弱な場合には、安定処理工法の適用を検討する。安定処理工法に用いる添加材料(安定材)には、セメントや石灰等がある。

(2) 路床の仕上り面と設計高さとの差が、+20mm、-30mm以内であることを確認する。

(3) 路床の締固め完了後に現場密度を測定し、室内試験で求めた最大乾燥密度の90%以上の締固め度が得られていることを確認する。

22.2.3 材 料

(1) 盛土用材料の種別は、特記による。特記がなければ、「標仕」表3.2.1による。

(2) 凍上抑制層に用いる材料
凍上抑制層に用いる材料は、凍上を起こしにくく、入手しやすい材料を使用することが望ましい。

材料別の判定基準の例は次のとおりである。

(a) 砂:75μmふるい通過量が6%以下
(b) 火山灰、火山礫:粗粒で風化の兆候がなく、排水性が良好で75μmふるい通過量が20%以下で強熱減量が4%以下

(c) 切込砂利:4.75mmふるい通過分のうち、75μmふるい通過量が9%以下

(3) フィルター層用材料

(ア) 材料は、路床の粘性士が侵入しにくく、高含水比になっても軟弱化することなく、適度の透水性を有するものが望ましい。

(イ) 透水性舗装のフィルター層は、川砂、海砂、良質な山砂等で75μmふるい通過量が6%以下のものとする。

(4) 路床安定処理用材料(安定材)

(ア) 路床の安定処理を目的として添加する安定材として、「標仕」表22.2.1にセメント及び石灰が示されている。このほか、有機質土等の特殊な土の安定処理を目的とした、セメント系安定材や石灰系安定材が市販されているので、セメントや石灰では安定処理の効果が十分に得られない場合には、これらの採用を検討するとよい。

(イ) 一般的に、砂質土に対してはセメント系の安定材がよく、シルト質土及び粘性土には石灰系の安定材が効果的である。

(ウ) 安定材の混合時の粉じん発生を抑制するため、防じん処理を施した安定材も市販されている。

(エ) セメント及びセメント系固化材を地盤改良に使用する場合には、条件によっては六価クロムが土壌環境基準を超える濃度で溶出するおそれがあるため、国土交通省では、平成12年3月24日付で「セメント及びセメント系固化材の地盤改良への使用及び改良土の再利用に関する当面の措置について」が発出され、所管の建設工事の施工に当たっては六価クロム溶出試験を実施して六価クロムの溶出量が土壌環境基準以下であることを確認するとされている。

22.2.4 施 工

(1) 置換え工法とは、軟弱な路床土を撤去し、砂や砕石等の支持力の大きい材料で置き換える工法をいう。

(2) 路床土が部分的に悪い場合、「標仕」22.2.4(1)では、その部分を取り除き周囲の良質土で埋め戻すことになっているが、適切な土がない場合は、「標仕」1.1.8の協議により良質な砂、山砂、砕石、切込砂利等で置き換えることを検討する。

(3) 粘性土や高含水比の土では、こね返しや過転圧により強度が極度に低下する場合があるため、強度の低下が予想される場合は、できるだけ路床を乱さないように、十分注意をして施工しなければならない。

(4) 路床土が、降雨等により著しく水を含み締固め作業が困難な場合には、適切な排水溝を施工すると同時に晴天を待って乾燥させ、十分な締固めを行う。

(5) 安定処理工法は、路床土にセメントや石灰等の安定材を混合して、固化させることにより、軟弱な路床土の支持力を向上させる工法である。添加量は路床土の乾燥質量に対し、一般的にセメント・石灰とも2〜10%である。安定処理層のCBRは、安定処理層を含めた深さ約1mの路床の合成CBRが設計CBRを満足するように設定する。

路床安定処理に際しての留意事項は次のとおりである。

(ア) 路床の安定処理用の混合機械としては、混合専用のスタビライザやバックホウが用いられる。均ーな混合性を確保するためにスタビライザの使用が望ましいが、スタビライザの入手が困難な場合及び施工が小規模な場合には、バックホウを使用する。

(イ) スタビライザは、構造物の近傍では使用できないので、そのような場合にはバックホウを併用する。

(ウ) 安定処理の施工に当たっては、室内配合試験で決定された安定材の量に対し、施工のばらつきを考慮して割増しを行う。スタビライザを用いた施工では割増し率を20%程度とするが、バックホウの場合は、必要な支持力を確保するためには割増し率を50%程度とする。

なお、バックホウのバケット内に特別な混合装置を付けた改良型バックホウが実用化されているが、これを用いるとスタビライザと同等な混合性を確保できる。

(エ) 添加材の散布時及び混合時に粉じんが発生する場合があるので、周辺への影響が懸念される場合には、防じん型の安定材を使用する。

(6) 路床の仕上り高さは、水準測量によるか、丁張りに水糸を張りそこからの高さ(下がり)を測定して管理する。

(7) 構造物周辺等の埋戻し部では、舗装完成後に段差やくぼみ等の異常が生じないよう、また、給排水管等に損傷を与えないように入念な施工を行わなければならない。埋戻しは、良質な材料を用いて十分締め固めることを原則とするが、現状土にセメントあるいは石灰を混合したものを用いると効果的な場合がある。

(8) 路床の部分的な締固め不足あるいは不良箇所を確かめるためには、プルーフローリングを行うとよい。プルーフローリングとは、施工に用いた締固め機械と同等以上の締固め効果をもつタイヤローラ、鉄輪ローラあるいはトラックを路床仕上り面上を走行させ、変位の度合いによって支持力の均一性を調査することである。

異常を発見した場合には、速やかに再締固めや置換、安定処理等の処置をとらなければならない。

(9) 凍上抑制層の敷均しは、モーターグレーダ、プルドーザ又は人力で行い、路床を不必要に乱さないように注意して、1層の仕上り厚さ200mmを超えないように均一に行う。敷均し後、適切な転圧機で十分に転圧する。

(10) 締固め機械の種類、重量及び締固め回数は、路床の性質及び含水益を考慮して定めなければならない。締固め機械の例を図22.2.1に示す。


図22.2.1 締固め機械の例

22.2.5 試 験

「標仕」には、路床に関する試験として、路床土の支持力を評価するCBR試験と、締固めの密度を管理するための砂置換法による土の密度試験方法が示されている。 CBR試験は、現場の路床土や盛士に用いる材料が対象であり、施工に先立ち室内で実施する。密度試験は、仕上り路面の締固め状態の良否を確認するために締固め作業完了後に現場で実施する。具体的な試験手順は、それぞれJIS A 1211(CBR試験方法)及びJIS A 1214(砂置換法による土の密度試験方法)又は(公社)日本道路協会「舗装 調査・試験法便覧」を参照する。

現場CBR試験は、JIS A 1222(現場CBR試験)を参照する。

22章 舗装工事 3節 路盤

建築工事監理指針 22章 舗装工事

3節 路 盤

22.3.1 一般事項

この節は、路床の上に施工する路盤のうち、砕石等を用いて築造する粒状路盤を対象としている。

路盤は、舗装路面に作用する荷重を分散させて、路床に伝える役割を果たす部分であり、その施工に当たっては規定の締固め度と厚さを確保しなければならない。

22.3.2 路盤の厚さ及び仕上り

「標仕」22.3.2では、路盤の厚さは特記によるとしている。路盤の締固め度については、路盤の締固め完了後に現場密度を測定し、室内試験で求めた最大乾燥密度の 93%以上の締固め度が得られていることを確認する。

22.3.3 材 料

一般の道路舗装では、上層路盤には粒度調整砕石のような支持力の高い材料を、下層路盤にはクラッシャランのように安価で比較的支持力の低い材料を使用することが一般的である。「標仕」では、路盤材料は「標仕」表22.3.1により、種別は特記によるとされている。

(ア) 路盤材料の一般的性質と留意事項

(a) 路撒材料は、舗装の特性により性質が異なるが、通常用いられる材料は「標仕」表22.3.1のとおりである。

(b) 修正CBRとは、路盤材料の強さを表す値で、(公社)日本道路協会「舗装設計施工指針」に材料の品質が規定されており、JIS A 1210(突固めによる土の締固め試験方法)の呼び名E-b によって求めた最大乾燥密度の95%の締固め度に相当するCBRが、一般的に用いられている。

(c) 塑性指数〈 Ip、PI 〉とは、土の粘着性を表す値で、砂は0、シルト質土で10程度となる。

(d) 路盤に使用する材料は、有害な量の粘土塊、有機物、ごみ等を含んではならない。また、施工時の含水比は締固め度に影響するので、室内の突固め試験で求められている最適含水比になるよう加水等により調整する。

(イ) 砕石

(a) JIS A 5001(道路用砕石)の粒度範囲は、表22.3.1及び表22.3.2のとおりである。
(b) 粒度調整砕石とは、2種以上の砕石、砂等を混合して、所要の粒度範囲をもつように調整した砕石である。
(c) クラッシャランとは、岩石をクラッシャで割り砕いたままのものである。

(d) 再生クラッシャランとは、路盤発生材、アスファルトコンクリート発生材又はセメントコンクリート発生材などから製造された再生骨材などを、単独若しくはこれらを混合したもの及び必要に応じて新規骨材を加えたものである。

表22.3.1 粒度調整砕石の粒度範囲(JIS A 5001 : 2008)
表22.3.2 単粒度砕石及びクラッシャランの粒度範囲(JIS A 5001 : 2008)
(ウ) スラグ

鉄鋼スラグは、高炉スラグと製鋼スラグを破砕したものを、単独又は組み合わせて製造したもので、単位容積質量は1.5kg/L以上とし、高炉スラグを用いた鉄鋼スラグは、呈色判定試験により水浸の際に黄濁色が検出されないことを確認したもの、製鋼スラグを用いた鉄鋼スラグは、膨張する性質があるため、水浸膨張試験で目標値以下になったものを使用する。また、水硬性粒度調整鉄鋼スラグは、一軸圧縮強度(14 日) 1.2MPa以上のものとする。路盤用鉄鋼スラグの粒度範囲を表22.3.3に示す。

表22.3.3 路盤用鉄鋼スラグ砕石の粒度範囲(JIS A 5015 : 2018)

22.3.4 施 工

(1) 路盤の一層の仕上り厚さは200mm以内を標準として、それを超える場合は、2層に分けて施工する。

(2) 路盤は、表層からの荷重を支持し、分散して路床に伝える役目をもつものであるため、荷重を均等に分散するためには一様な支持力が得られるように施工する。

(3) 路盤の施工は、路床施工後仕上り面が荒らされない時期に行うことが望ましい。やむを得ず路床仕上り後、工事車両等の交通に供した場合には、路床面が荒らされたり、不良材料等が混入したりする場合がある。路盤の施工に先立ってこれらを除去し、改めて整形して締め固めなければならない。

(4) 路盤材料は、貯蔵、積込み、運搬、敷均し等の取扱いに際して、分離を生じさせないよう十分注意して行う。

材料の敷均しには、ブルドーザ、モーターグレーダ等を用いる。このとき切返し回数が多いと材料の分離が生じるので注意して行う。

(5) 敷均し、締固め作業の途中で路盤材料が乾燥し過ぎた場合は、適時散水し、最適含水比付近の状態で締め固めることが望ましい。

(6) 路盤の締固めは、8t以上のマカダムローラ、8〜20tのタイヤローラ又はこれらと同等以上の効果のある締固め機械2種以上を併用して十分に締め固め、所定の形状に平らに仕上げる。ただし、施工困難な箇所は、ほかの締固め機械を使用することができる。

なお、狭小部はランマ等を用いて行う。

(7) 歩道部又は軽易な場合の締固めは、振動ローラ、ソイルコンパクタ又は同等以上の能力のある機械を用いて十分に締め固める。

22.3.5 試 験

路盤の締固め完了後の試験は、JIS A 1214(砂置換法による土の密度試験方法)に碁づく現場密度を測定し、JIS A 1210(突固めによる土の締固め試験方法)に基づく最大乾燥密度と比較し、所定の締固め度が得られているか確認する。

22章 舗装工事 4節 アスファルト舗装

建築工事監理指針 22章 舗装工事


4節 アスファルト舗装
22.4.1 一般事項

(1) この節は、路盤の上に設けるアスファルト舗装に適用する。また、カラー舗装については、6節に示している。

(2) アスファルト舗装工事の作業の流れを図22.4.1に示す。

図22.4.1 アスファルト舗装工事の作業の流れ

22.4.2 舗装の構成及び仕上り

(1) アスファルト舗装の標準構成は、図22.1.1(イ) に示したとおりである。


図22.1.1_舗装構成と各層の名称

舗装の種類は、その適用場所(一般地域と寒冷地域)、施工規模(面積)、敷地形状、要求性能等を考慮して選定される。

アスファルト舗装の施工に先立って、路盤面の浮石、その他有害物の除去と清掃を行う。

(2) 「標仕」22.4.2 (1)では、アスファルト舗装の構成及び厚さは、特記によるとされている。また、(2)では、締固め度は、測定した現場密度が基準密度の94%以上とされており、表層の厚さは、設計厚さを下回らないことと規定している。

(3) 「標仕」では、舗装表面の平たん性は特記によるとし、特記がない場合は、通行の支障となる水たまりを生じない程度とすると規定している。その確認方法は、散水して目視で確認すればよい。

22.4.3 材 料

(1) アスファルト

アスファルトとしては、舗装用ストレートアスファルト、再生アスファルト等がある。

(a) JIS K 2207(石油アスファルト)には、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、防水工事用アスファルトが規定されているが、これらのうち舗装用に用いられるのは、ストレートアスファルトの中の、その硬さを示す針入度 40〜60、60〜80、80〜100、100〜120 の4種類である。これらのうち 40〜60 及び100〜120 は特殊な場所に用いるもので、一般的には 60〜80又は 80〜100 が用いられる。その規格値はJIS K 2207(石油アスファルト)によるものとする。

(b) 再生アスファルトは、品質試験のため、再生骨材からアブソン法等によって回収した旧アスファルトに再生用添加剤や新アスファルトを加え、室内で混合調整したアスファルトのことであり、再生アスファルトの品質規格は、「標仕」表22.4.1に示すとおりである。

アブソン法:
アスファルト混合物から溶剤を用いてアスファルトを抽出し、さらにそのアスファルト溶液より溶剤を除去し、性状を変化させずにアスファルトを回収する方法。
(c) 使用するアスファルトの種類は、ストレートアスファルトも再生アスファルトも同じであり、一般地域では主として60〜80、寒冷地域では80〜100を用いる。

(d) 再生アスファルトの品質については、(公社)日本道路協会「舗装再生便覧(平成22年版)」に圧裂係数による管理方法も提案されているので、適宜参考にするとよい。

(e) 再生加熱アスファルト混合物を使用する場合、プラントで使用する再生用添加剤の品質は、労働安全衛生法施行令に規定されている特定化学物質を含まないもので、表22.4.1に示す標準的性状を目安とする。

表22.4.1 再生用添加剤の品質(舗装設計施工指針(平成18年版)より)

(f) 工事に使用するアスファルトの品質を、受注者等が行った試験結果又は材料製造者が発行する品質証明書によって確認する。

(2) プライムコート

(a) プライムコート用の石油アスファルト乳剤は、JIS K 2208(石油アスファル卜乳剤)に規定されるPK-3を使用する。また、タックコート用の乳剤は、同規格のPK-4を使用する。それぞれの規格値を表22.4.2に示す。

表22.4.2 石油アスファルト乳剤の品質規格(JIS K 2208 : 2009)

(舗装設計施工指針(平成18年版)より)

(b) 工事に使用する石油アスファルト乳剤の品質を、受注者等が行った試験結果又は材料製造者が発行する品質証明書によって確認する。

(3) 骨材等

骨材の種類は、①砕石、②玉砕、③砂利、④鉄鋼スラグ、⑤砂、⑥再生骨材等がある。

(a) 砕石は、JIS A 5001(道路用砕石)によるとともに、用途に応じて清浄、堅硬で耐久性があり、細長い又は偏平石片、ごみ、泥、有機物等を有害量含まないものとする。

(b) 砂利の品質は、砕石に準じるものとし、その目標値は表22.4.3から表22.4.5 による。また、鉄鋼スラグと製鋼スラグの品質は表22.4.6及び表22.4.7による。

表22.4.3 砕石の品質の目標値(舗装設計施工指針(平成18年版)より)
表22.4.4 耐久性の目標値(舗装設計施工指針(平成18年版)より)
表22.4.5 有害物含有量の目標値
(舗装設計施工指針(平成18年版)より)
表22.4.6 鉄鋼スラグ(主として路盤材料)の品質規格(JIS A 5015 : 2018)
表22.4.7 製鋼スラグ(主として加熱混合用)の規格(舗装設計施工指針(平成18年版)より)

(c) アスファルトコンクリート再生骨材の品質規格は、「標仕」表22.4.2に示すとおりである。

(d) 工事に使用する骨材の品質を受注者等が行った試験結果又は材料製造者が発行する品質証明書で確認する。

(4) 石 粉

石粉は、石灰岩又は火成岩を粉砕したものを用いる。その品質規格は「標仕」22.4.3 (4)に示すとおりである。

(a) 消石灰及びセメントを、はく離防止のために石粉の一部と置き換えて使用することがあるが、その品質については、消石灰は JIS R 9001(工業用石灰)の消石灰特号又は1号、セメントは JIS R 5210〜JIS R 5213によるものとする。

(b) フライアッシュを石粉として用いる場合、JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)の規格に適合していないものであるときは、「標仕」表22.4.3に適合するとともに、表22.4.8にも適合するものであることを確認する。

表22.4.8 フライアッシュ、石灰岩以外の岩石を粉砕した石粉を使用する場合の目標値
(舗装設計施工指針(平成18年版)より)

(c) 石灰岩以外の岩石を粉砕したものを石粉として用いる場合は、(b)と同様とする。

(d) 工事に使用する石粉の品質を受注者等が行った試験結果又は材料製造者が発行する品質証明書で確認する。

22.4.4 配合その他

(1) 表層に使用する加熱アスファルト混合物(再生加熱アスファルト混合物も含む。)の種類と骨材粒度等は、「標仕」表22.4.4による。寒冷地域で用いるアスファルト混合物は、一般地域用のアスファルト混合物より細粒分とアスファルト量が多くなっており、摩耗や低温ひび割れに対する耐久性が高くなっている。

なお、寒冷地域とは、タイヤチェーン等による摩耗が問題となる地域をいい、その他の地域を一般地域という。

(2) 加熱アスファルト混合物は、「標仕」表22.4.4及び表22.4.5を満足するもので、(公社)日本道路協会「舗装調査・試験法便覧」のマーシャル安定度試験方法によって配合設計を行い室内配合を設定する。

(3) 再生加熱アスファルト混合物のマーシャル安定度試験基準値は、「標仕」表22.4.5と同様である。配合設計に当たっては、再生骨材に含まれる旧アスファルト量と旧アスファルトの針入度、新アスファルト量と新アスファルトの針入度、再生添加剤量を考慮して適切に設定する。詳細は、(公社)日本道路協会「舗装再生便覧」による。

(4) アスファルト混合物の配合は、室内配合試験で配合を設定し、アスファルト混合物の製造所における試験練りと試験施工で現場配合を決定する。ただし、同じ配合の試験結果がある場合、軽易な場合及び事前審査制度に基づいて認定を受けたアスファル卜混合物の場合は、監督職員の承諾を受けて、これらの手順を省略することができる。

なお、ここでいう「事前審査制度」とは、製造所から出荷するアスファルト混合物を、第三者機関が事前に審査・認定することにより、従来、工事ごとに行ってい た品質管理に関する試験や試験練り等を省略できるようにしたもので、国土交通省、地方自治体等で採用されている制度である。

(5) 混合物の最初の1日の舗設状況を観察し、必要な場合には配合を修正して、現場配合を決定する。

22.4.5 施 工

(1) アスファルト混合物の施工性は、その温度に大きく左右されるので、寒冷期に施工せざるをえない場合は、運搬時に保温措置を取り、敷均し後は温度が低下しないうちに速やかに締め固める。また、雨水は供用後のアスファルト舗装の性状に悪影響を与えるため、降雨時の施工は避けなければならない。

(2) 路盤の仕上げ後、プライムコートとして石油アスファルト乳剤を 1.5L/m2程度を散布する。これは、路盤の仕上り面を保護し、その上のアスファルト混合物層との接着をよくするために行うものである。

石油アスファルト乳剤は、散布温度に注意し、縁石等の構造物は汚さないようにして均ーに散布する。乳剤による汚れを避けたい場合は、その部分にあらかじめ水を含ませた石粉を塗布しておくとよい。

(3) アスファルト混合物は、転圧による厚さの減少(転圧減)を見込んだ厚さになるようアスファルトフィニッシャを用いて敷き均す。ただし、フィニッシャが入らない狭い場所や施工面積が小さい場合は、レーキを使って人力で敷き均す。フィニッシャは、アスファルト混合物を均ーに敷き均すのに適した機械であるが、走行開始後 5 〜10mは敷均し厚が安定しない。したがって、施工延長が10mに達しないような場合には、人力で注意深く敷き均す。

(4) 締固め作業は、一般的に継目転圧、初転圧、二次転圧、仕上げ転圧の順序で行う。継目転圧は、既設の舗装との継目部分を密着させるために行う。初転圧には、一般的に10〜12tのロードローラを用いる。二次転圧には、8〜20tのタイヤローラか、6〜10tの振動ローラを用いる。仕上げ転圧は、不陸の修正やローラマークの消去のために行うもので、タイヤローラ又はロードローラを用いて行う。

なお、転圧直後のアスファルト混合物は軟らかいので、転圧終了後は速やかにローラを施工場所から移動させる。

(5) 寒冷地の施工で、温度低下を想定してアスファルト混合物の出荷温度を高めに設定することがあるが、その上限値は185℃としている。これは、アスファルト混合物製造時のアスファルトの劣化を防ぐために設けられたものである。

(6) 施工に伴う継目としては、前日以前の施工の終端である横継目と、施工の側面にできる縦継目がある。施工終端に角材を置き、十分な締固め度の直立面ができている場合には、接触面に石油アスファルト乳剤(PK-4)を塗布してから施工を行うが、締固めが十分でない場合にはカッターを入れ、不良部分を取り除いてから石油アスファルト乳剤を塗布して施工を開始する。縦継目も同様に石油アスファルト乳剤を塗布してから施工を始めるが、目地は、施工上の欠陥となりやすいのでアスファル卜混合物が冷却しないうちに隣接部の施工を行うホットジョイントが望ましい。

(7) 交通開放は、舗装表面温度が概ね50℃以下になってから行う。交通開放時の舗装温度は、初期のわだち掘れに大きく影響し、50℃以下にすることにより初期の変形を小さく抑えることができる。

22.4.6 試 験

(1) 「標仕」22.4.6では、締固め度及び表層の厚さは、次により切取り試験を行うと規定している。

(ア) 切取り試験のコア抜きの個数は、2,000m2までは3個、それを超えた分は、さらに2,000m2ごと及びその端数につき1個のコアを追加して採取する。

(イ) コア抜きを行う場合は、その工事全体を代表するような位置から採取するようにし、平面的な位置の偏りが生じないように注意する。また、ローラによる転圧が難しい部分については、一般的に十分な締固めが困難であるが、車両が走行しない場所については、工事全体を代表するとはいえないのでコア抜きの対象としなくてよい。

(2) アスファルト量の確認は、通常アスファルト混合所におけるアスファルト投入量の印字記録で行うが、使用したアスファルト混合物に異常(アスファルト過多のときの混合物のぎらつき、過小のときのぱさつき)が見られた場合には、抽出試験によってアスファルト量を確認するとともに、骨材の粒度も確認する。

(3) 平たん性の確認は、「標仕」22.4.6(2)で、「散水のうえ、目視により確認する。」と規定している。

(4) 「標仕」22.4.6(1)(ア) では、「軽易な場合は、監督職員の承諾を受けて試験を省略することができる。」と規定している。軽易な場合の定量的な判断基準はないが、面積的に小さく、供用開始後の人や車の通行量も少ない場合等が考えられる。