16章 建具工事 4節 鋼製建具

16章 建具工事

4節 鋼製建具

16.4.1 適用範囲

「標仕」では、主として事務庁舎の出入口に使用する標準的な建具(幅950mm × 高さ2,400mm程度以内)で、戸は片面又は両面を平らな鋼板張りとしたフラッシュ戸又はかまち戸によるドアセット及び標準型鋼製建具を対象としている。したがって、標準と著しく相違する建具については金物を含めて、適切な補強等の処置が必要である。

建具の幅950mm程度と想定しているのは、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(以下「バリアフリー新法」という。)の誘導基準(有効幅で 900mm以上)を採用しているためである。また、高さ2,400mm程度と想定しているのは、最近の建物では解放的な空間づくりから、建具を2.400mm程度まで高くすることが多くなっているためである。

16.4.2 性能及び構造

(a) 外部に面する建具の耐風圧性は16.1.7(a)(1)及び16.2.2を参照する。

(b) 気密性、水密性が定められている簡易気密型ドアセットとは、気密材が装着してあり、「標仕」表16.4.1 による性能を満足するものをいう。

(c) がらり付きドアセットは、換気を主目的としたもので、一般に気密性、水密性との両立は構造上不可能である。

(d) 遮音性は、気密材を装着した枠にグラスウール等を充填した戸の場合、T-1(旧25等級)~T-2(旧30等級)等級程度である。

なお、T-2等級を超える遮音性を必要とする場合は、簡易気密型ドアセットでは対応できないので、グレモンハンドル等を使用したエアタイトドアセット(PAT)又は、最近、よく使われているマグネット気密ゴムを使ったドアセットを使用するとよい。

(e) 耐震性は、JIS A 1521(片開きドアセットの面内変形追随性試験方法)の規定があり、JIS A 4702 (ドアセット)に耐震ドアセットとしてD-1(1/300rad)、D-2 (1/150rad)、 D-3(1//120rad)の等級がある。また、耐震設計基準として国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「官庁施設の総合耐震計画基準及び同解説」に、耐震性を配慮したドアセットについて記載されているので参照するとよい。

(f) 鋼製建具には.「標仕」で要求する品質を満たすものとして (-社)公共建築協会の「建築材科・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.4.3 材 料

(a) 鋼板類

(1) 鋼板は、特記がなければ JIS G 3302(溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)により、めっきの付着量は標準でZ12又はF12とされていた。

最近、臨海地区の副都心化が急速に進んだことにより、内陸部の事務庁舎等を想定して「標仕」で規定していた溶融亜鉛めっき鋼板(JIS G 3302)では、耐食性が劣るために、錆が発生して問題になることが多くなっている。

平成25年版「標仕」では、これまでの溶融亜鉛めっき鋼板に比べて耐食性に優れた溶融亜鉛ー5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3317)が規定された。めっき付着量は標準でY08とされ、溶融亜鉛めっき鋼板より少ないが、約2倍の耐食性がある。また、市販されているものは、環境に配慮したクロムフリー化成処理が施されている。このほか、「標仕」では規定されていないが、耐食性に優れた溶融亜鉛ーアルミニウムーマグネシウム合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3323)のJISが新たに制定されている。

なお、JIS G 3321(溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)については、耐候性は良いが、曲げ加工や溶接性等が悪く、鋼製建具には不向きなため規定されていない。

(2) 出入口のくつずりはステンレス製(16.6.3参照)とし、くつずりにレールを取り付ける場合は、16.2.4(f)を参照する。

(3) 形鋼の類は、アングルドアを想定しているので、主として形鋼、平鋼及び厚い鋼板が含まれる。

(b) その他

(1) 上吊り引戸の下枠(ガイドレール等)は、頻繁に擦れ合うことにより傷みやすいため「標仕」16.4.3 (c)ではステンレスとしている。

(2) 気密材には種々なものがあり、クロロプレンゴム発泡体(表皮付き)もよく使用されるが、皮膜が弱く破れやすいものもあるので注意する。また、はがれやすいので取付け方法にも注意する。

(3) 戸に使用する構造用接合テープは、表16.4.1に示すJIS Z 1541(超強力両面粘着テープ)に適合したものを使用する。

なお、焼付け塗装の場合は断熱仕様の1号、常温塗装の場合は2号を使用する。

表16.4.1 超強力両面粘着テープの規格(JIS Z 1541 : 2009)

16.4.4 形状及び仕上げ

(a) 出入口の枠類で、戸1枚の有効開口幅が950mm、かつ、高さが2,400mm以下のものは、内部側・外部側ともに板厚1.6mmが必要である。また、同様にくつずりの板厚は1.5mm、戸の中骨の板厚は1.6mmが必要である。

なお、「標仕」では、一般的な建物を想定しているため、有効開口幅950mm、かつ、有効高さを2,400mm以下で板厚を規定している。これを超えるような建具は、本来設計図書に特記されることが前提であるが、特記がない場合には、建具製作所の仕様によることとなる。

(b) 製品の寸法許容差は、工場組立完了後の寸法に対するものとする。

(c) 外部に面する建具のガラス溝の寸法及び形状は「標仕」表16.14.1によるものとするが、一方、押縁等でガラスをやり返ししてはめ込まなければならない場合は、施工性を考慮して溝の深さを決める。ただし、防火戸の個別認定を受けた建具の場合は,この寸法も規定されているので注意する。

(d) 塗 装

(1) 下地量整

(i) 形鋼の場合は「標仕」表18.2.2により素地ごしらえを行う。

(ii) 亜鉛めっき鋼板の場合は、鋼板製造所で、「標仕」表18.2.3工程3のりん酸塩処理後水洗い乾燥又はクロム酸処理後乾燥の二つの処理のみが行われていた。

しかし、最近では、鋼板製造所でも環境に配慮して、有害化学物質の六価クロムを含有しないクロメートフリー処理が製品化されつつあるが、平成25年版「標仕」では、表18.2.3工程3にクロム酸処理とクロメートフリー処理が併記されている。地球環境を守る見地から六価クロムの排除が世界規模で進められており、クロム酸処理は廃止していく時期にきている。したがって、平成 28年版「標仕」では、更に一歩進んでクロメートフリー処理への一本化が必要とされている。

(iii) 「標仕」表18.2.2及び表18.2.3の工程2油類除去では、B種、C種に溶剤ぶきを規定しているが、溶剤から発生する化学物質がもたらす健康や環境への悪影響や近くで溶接作業を行う場合の爆発事故の報告もあり、最近ではシンナー等の溶剤に代わる代替洗浄剤としてアルカリ系脱脂洗浄剤が開発され利用されている。

(2)錆止め塗料塗り

形鋼の場合は「標仕」表18.3.1の鉄鋼面錆止め塗料A種を塗る。ただし、つや有合成樹脂エマルションペイント塗りの場合は、B種を塗る。

16.4.5 工 法

(a) 枠等の組み方

(1) 枠等の組み方の例を図16.4.1から図16.4.4に示す。

上部の組み方は、図16.4.1の留め(イ) 又は胴付き(ロ) による溶接のほか、溶接研磨による損傷が少なく、塗装後の仕上りの美しい面落ち(ハ)でもよい。

(ロ) の組み方で吊り金具にピボットヒンジを使用する場合は、縦枠の上に上枠が伸びるいわゆる上枠伸ばし(ニ)となる。

(2) 「標仕」表16.4.3には、屋内での枠の加工及び組立が必要な場合は、溶接に代えて小ねじ留め(裏板厚さ2.3mm以上)によることができるとしている。この理由は、工場で加工し、現楊で組立しなければならない建具を想定しており、工場で加工及び組立できる建具は、溶接とするのがよい。

(3) 「標仕」表16.4.3の金物取合い補強板とは、ねじで固定する部分の強度を担保するために設ける補強材を指し、錠本体ケースカバー等は製作所の仕様による。

(4) 亜鉛めっき鋼板の場合は、特記がなければ、「標仕」表18.3.2のA種、JIS K 5629(鉛酸カルシウムさび止めペイント)を塗る。

なお、溶接部や損傷部等は、塗装に先立ち、錆止め塗料と同一の塗料で補修する。


図16.4.1 枠類の組み方

 


図16.4.2 くつずりの組み方

 


図16.4.3 方立の組み方

 


図16.4.4 無目の組み方

(b) 戸の組み方
フラッシュ戸では、中骨は間隔 300mm以下に配置する。外部に面する戸は、下部を除き三方の見込み部を表面板で包む(三方曲げ)。内部に面する戸は、上下部を除き二方の見込み部を表面板で包む(二方曲げ)。表面板と中骨の固定は、溶接又は構造用接合テープにより確実に接合する。

溶接痕は、表面を平滑に研磨仕上げし、塗装に先立ち、錆止め塗料と同一の塗料で補修する。

(c) 鋼板の曲げ寸法の限度は、表16.4.2のとおりである。

表16.4.2 端部曲げ寸法の限度

(d) 取付けは、16.2.5(b)に準ずる。

16.4.6 標準型鋼製建具

(a) 標準型鋼製建具と標準型鋼製軽量建具とは、公共工事のコスト縮減を図るために、官庁施設設計研究会(平成12年)が設定したものである。

寸法や金物の標準化により、打合せによる決定まで間接コストと建具の作図、加工等の直接コストを軽減し、更にバリアフリ一新法を考慮して幅が6種類、高さが 2,000mmと2,100mmの2種類が設定されている。戸の形状・寸法は表16.4.3のとおりであり、通常の事務庁舎等の大部分に適用が可能である。

(b) 錠、ドアクローザーは、主要製作所で「公共工事標準型」として、一般品と区別して取り扱っている。

表16.4.3 標準型鋼製建具と標準型鋼製軽量建具一覧表

16章 建具工事 5節 鋼製軽量建具

16章 建具工事

5節 鋼製軽量建具

16.5.1 適用範囲

「標仕」では、屋内の出入口に使用する標準的な建具(幅 950mm × 高さ2,400mm程度)を対象としている。なお、戸見込み寸法は 35mm以上である。

建具の幅 950mm程度及び高さ2,400mm程度と想定しているのは、16.4.1と同様である。

16.5.2 性能及び構造

(a) 「標仕」16.5.2 (b)で水密性が規定されていないのは、取付け場所を屋内に限定しているため、雨水等の影響を受けないからである。

(b) 遮音性は、気密材が装着されている枠を使用する場合で、透過損失15〜20dB(500Hz)程度である。

(c) 鋼製軽量建具には、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4(e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.5.3 材 料

(a) 鋼板類

(1) 鋼板は、亜鉛めっき鋼板でめっき付着量は、「標仕」16.5.3(a)(1)を満足すればよい。

(2) 出入口のくつずりはステンレス製(16.6.3参照)とし、くつずりにレールを取り付ける場合は、16.2.4 (f)を参照する。

(3) ビニル被覆鋼板及びカラー鋼板は、表面仕上げした材料であり、現場での塗装を必要とせず工期の短縮に寄与する。平成25年版「標仕」では、ビニル被覆鋼板及びカラー鋼板の下地鋼板のめっき付着量について、(1)の亜鉛めっき鋼板と整合させ、F04をF06に、E16をE24とされた。

(4) カラー鋼板は、PCM(プレコートメタル)とも呼ばれ、鋼板製作所で仕上げ塗装された材料である。品質が安定しており、ビニル被覆鋼板同様に工期の短縮と塗替え等のメンテナンスが不要であるなどの利点があるが、ロール発注のため、色調は建具製作所の標準色となる。

現在、内装材に適した電気亜鉛めっき鋼板を下地としたカラー鋼板のJISは制定されていない。そのため、「標仕」では下地の電気亜鉛めっき鋼板のめっき付着量を規定している。

また、平成25年版「標仕」では、耐食性に優れた JIS G 3317(溶融亜鉛ー5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯)及びJIS G 3321(溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)は、鋼製軽量建具が屋内の使用に限定されているため、高い耐食性は必要ないことから削除された。

(b) その他

水酸化アルミ無機シートコアとは、紙状無機質材料で作られたコアを水酸化アルミニウム溶解液に浸したのち、乾燥させ燃えにくくした製品である。

16.5.4 形状及び仕上げ

(a) 表面板の厚さは、標準では 0.6mmに統一されている。また、召合せ、縦小口包み板等も 0.6mm以上であるため、表面板との意匠合わせが可能である。

(b) 出入口の枠類で、丁番、ピボットヒンジ及びドアクローザー等が取り付く部分には、2.3mmの補強板が必要である。

(c) 接着剤を使用する表面板の裏面は、接着性が悪くなるので、錆止め塗料塗りは行わない。

(d) 内装建具であるため、ガラス溝の寸法及び形状は建具製作所の仕様でよい。

(e) くつずりの板厚は、鋼製建具と同様に1.5mmである。

16.5.5 工 法

{a) 枠等の組み方は、16.4.5 (a)による。

(b) 内装建具であるため、戸の組み方は、建具製作所の仕様でよい。

また、戸の順位調整器のローラー等が接する部分及び錠のハンドル部等へこみ防止の補強板は、厚さ1.6mm以上の鋼板を使用する。

(c) 取付けは.16.2.5(b)に準ずる。

16.5.6 標準型鋼製軽量建具

16.4.6 標準型鋼製建具により、以下の表16.4.3による。

表16.4.3 標準型鋼製建具と標準型鋼製軽量建具一覧表

16章 建具工事 6節 ステンレス製建具

16章 建具工事

6節 ステンレス製建具

16.6.1 適用範囲

この節では、事務庁舎等の主な出入口等に使用する建具を対象としている。

16.6.2 性能及び構造

性能については、16章 1節及び 16.4.2を参照する。

なお、ステンレス製建具には、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.6.3 材 料

「標仕」では、ステンレス鋼板はニッケルを含むオーステナイト系のSUS304を標準としていたが、これは、SUS304が加工性、耐食性及び経済性の均衡の取れた材料であったからである。しかし、最近では、世界的にニッケルを始め希少金属(レアメタル)が激減し入手に支障も出てきたため、平成22年版「標仕」に、JIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)に規定されているフェライト系(ニッケルを含まない。)のSUS430J1L及びSUS430の2種類が標準として追加された。

更に、平成22年5月には、SUS304と同等の耐食性を有するフェライト系のSUS443J1がJIS G 4035に追加されたことにより、平成25年版「標仕」にSUS443J1が規定された。

SUS430J1L及びSUS443J1は、SUS304に近い耐食性を有するため、外部や水回りに使用し、SUS430は高い耐食性を必要としない屋内の建具等に使用するというように使い分けをするとよい。

なお、更に耐食性を要求される塩害地向けには、SUS316が使われる場合がある。

16.6.4 形状及び仕上げ

(a) 裏板の板原は1.6mm以上、補強板の類の板厚は2.3mm以上である。

ステンレスに接触する鋼材は、ステンレスの腐食の原因となることがあるので、裏板、補強板等の重要な補強材は、錆止め塗装を行う必要がある。

なお、両面フラッシュ戸の中骨、力骨の類は、「標仕」18.3.3(f)(4)より塗装されない。また、超強力両面粘着テープが張り付けられる部分も、接着強度が低下するため塗装されない。

(b) 表面仕上げをHL以外とする場合は、表14.2.1[ステンレス板の表面仕上げ]を参照されたい。

(c) ガラス溝の寸法及び形状は.16.4.4(c)による。

16.6.5 工 法

(a) 普通曲げとは、特に処置しない普通の曲げ方である。角出し曲げとは、図16.6.1に示す方法で曲げるので、角が鋭くなり意匠的にはよいが、強度を著しく弱めるので、裏板を用いて補強するため高価である。その他、一部にはロール成形により曲げる方法も行われている。

なお、角出し曲げ加工ができる板厚は、1.5mm以上であり、一般に表16.6.1による3種類の加工方法が行われている。

ただし、a角については割れが生じやすいので注意を要する。一般的にはb角・c角を用いる方がよい。

また、板厚の異なる組合せの場合は、出来ばえをそろえるため、切込み後の残り寸法を1.5mmの板に合わせる場合が多い。


図16.6.1 角出し曲げの方法

表16.6.1 角出し曲げ加工の種類

(b) 取付けは、16.2.5 (b)に準じる。

16章 建具工事 7節 木製建具

16章 建具工事

7節 木製建具

16.7.1 適用範囲

(a) この節では、事務庁舎等での屋内の出入口に使用する木製建具を対象としている。

また、物入、書棚等の戸に木製フラッシュ戸を使用する場合は、これを準用できる。

(b) 近年の事務庁舎等では、防火性能を必要としない部位で、木製建具の使用が増加している。木製建具にはフラッシュ戸、かまち戸、ふすま、障子等があり、種類が多いため、「標仕」では一般的に重要な項目のみを規定し、その他は建具製作所の仕様によることとしている。

製作所の決定は、工事経歴、受注能力(作業人員、機械設備、管理体制)等により、その能力を調査することが必要である。

(c) 木製建具は、フラッシュ戸・ふすま・戸ぶすまのように内部材が外から見えない 建具と、かまち戸・ 障子のようにすべて化粧材からなる建具とに大別される。外周部材は、垂直方向の「かまち(縦かまち)」と水平方向の「かまち(上かまち、下かまち)」又は「桟(上桟、下桟)」とからなり、補強のために中間に入れる部材は、内部材が見えない建具では「中骨」といい、すべて化粧材からなる建具では「中桟」という(図16.7.1参照)。


図16.7.1 木製建具の部品名称

16.7.2 材 料

(a) 含水率

(1) 建具材は反り、ねじれ、狂い等寸法に変化が生じると、その機能が著しく損なわれるおそれがあることから、一般の木工事材料より厳しくしている。

(2) 人工乾燥と天然乾燥を区分しているのは、使用樹種と使用部位によって使い分けるためである。

(3) 天然乾燥による木材の乾燥期間は、平衡含水率は12~19%程度で、初期の含水率、気象条件、板厚、樹種等によって異なるが厚さ25~ 30mmのもので2~6箇月以上が必要である。

(4) 人工乾燥による木材は、平衡含水率より2~3%低めに乾燥した方が狂いは少ない。屋内における木材の平衡含水率は、10~15%程度と考えられる。

(5) 集成材、単板積層材、合板、パーティクルボードは、製造工程上十分乾燥しているのでA種と見なすことができる。

(b) フラッシュ戸

(1) かまち及び桟は、近年木材の集成技術やフラッシュ戸の表面材の接着技術が向上していること及びむく材のコストが高騰していることから、集成材を使用することが一般的である。ただし、使用している集成材は同一樹種を集成したものとは限らない。近年、杉の間伐材も加工・集成技術の向上に伴い使用されている。

また、単板積層材(LVLともいい、厚さ3mm程度の薄板を繊維方向を合わせて積層した材料)も使用されている。

造作用集成材及び造作用単板積層材の品質は、建具製作所の仕様によることとなっているが、ホルムアルデヒドの放散量等は、JASで品質基準が定められており、表面材の合板に準じてF☆☆☆☆のもの、非ホルムアルデヒド系接着剤使用のもの、非ホルムアルデヒド系接着剤及びホルムアルデヒドを放散しない塗料使用のものとすることが望ましい。

(2) 定規縁、化粧縁、額縁及びがらり等には、狂いの少ない十分乾燥したむく材を使用する。樹種は、かまち等の集成材等と同じものとしている。

(3) 表面材の合板で、水掛りの箇所(便所、洗面所、浴室、厨房等)は、耐水性のある1類とする。

また、普通合板の板面の品質は、「合板の日本農林規格」の「普通合板の規格」に表16.7.1の3種が規定されている。「標仕」のC-Dとは、表面材の品質がC、裏面材の品質がDであることを示している。これらは、針築樹を表面材としている普通合板の中で、市場性があるもののうちでより品質が良いものである。

普通合板のホルムアルデヒドの放散量等は、JASで品質基準が定められており、「標仕」では、特記がなければF☆☆☆☆のもの及び非ホルムアルデヒド系接着剤使用のものとすることとしている。

なお、放散量の表示や確認方法等については、19章10節を参照されたい。

表16.7.1 普通合板の板面品質(JAS)

(4) 「標仕」では、心材に使用するペーパーコアは樹脂浸透のものとしているが、市販品には、ペーパーコアに樹脂を浸透していないものもあるので注意する。

(5) ガラス押縁に使用するねじ、釘の材質は、黄銅製では強度不足のため、ステンレス製としている。

(c) かまち戸

近年は、木目を見せるクリヤラッカー(CL)仕上げ、又はオイルステイン塗りクリャラッカー(OSCL)仕上げのかまち戸が一般的である。樹種は、チーク材とかオーク材のほか、種類が多いため、「標仕」では特記としている。鏡板も、かまちと同種の板を用いた合板(厚さ9mm程度)を使用することが多いため特記となる。

なお、「標仕」でいうかまち戸とは、むく材又は練付け材のかまちや桟に鏡板(額縁付きガラスも含む。)を取り付けたものを想定しており、フラッシュ戸の中央を抜き、鏡板(額縁付きガラスも含む。)を付ける戸はフラッシュ戸に含める。
(d) ふすま

(1) ふすまの種別は、 I型とII型の2種類がある。

(2) 周囲骨、中骨にスプルースが使われることがあるが、やにに注意する。

(3) 近年、 I型では、下張り工程の合理化のため、骨しばり用の茶ちり紙と、べた張り用の黒紙又は紫紙とを製紙工程ですき合わせた紙も多く使用されている。

(4) 上張りの種類は、価格に大きく影響するので特記することとしている。

なお、新鳥の子は、茶うらとか上新鳥と呼ぶこともある。また、雲花(うんか)紙とは、ダークグリーン地に真綿を散らしたような模様のある洋紙である。

(5) 防虫処理は、減圧容器に木材を入れ、ほう砂・ほう酸を木材に含浸(含浸量 木材1m3当たり1.2kg)する方法であるが、現在、南洋材の防虫処理は産出国で行い、国内での処理は行っていないのが実状である。

(e) 戸ぶすま

(1) 戸ぶすまは、フラッシュ戸の表面と周囲とをふすまと同様に仕上げたものであり、フラッシュ戸及びふすまに使用する材料と同じとしている。

(2) 表面の合板は、普通合板が一般的であり、厚さ2.5mm以上としている。

(f) 紙張り障子

(1) 障子紙の代名詞として美濃紙と特記されることがあるが、手すき和紙に限定して解釈しなくてよい。

(2) レーヨンパルプ紙とは、一般にビニル紙と呼ばれるものである。

(3) 引手の材質には、桑等の木製と真鍮(黄銅)等の金属製、合成樹脂製のものがある。

(4) 腰板付き障子は、腰板が高価なため近年は少ない。

(g) 接着剤

「標仕」では、接着剤はJIS A 5549(造作用接着剤)又はJIS A 6922(壁紙施工用及び建具用でん粉系接着剤)で接着する材料に適したものとされており、ホルムアルデヒドの放散量は、特記がなければF☆☆☆☆のものを使用することとしている。

なお、放散量の表示や確認方法等については、19章10節 を参照されたい。

16.7.3 形状及び仕上げ

(a) フラッシュ戸

(1) 「標仕」表16.7.5の見込み寸法30mmのフラッシュ戸は、物入、書棚等の戸を想定している。

(2) 表面材の厚さは、圧着技術が進歩しているため「標仕」表16.7.6が一般的である。ただし、大きな荷重がかかることが予想される場合は、特記で合板を厚くする必要がある。

(3) 表裏で表面材の種類を変えると温湿度の差で反りや狂いが生じやすいので注意する。

(4) 特殊加工化粧合板は、ポリエステル化粧合板等が製造されている。メラミン系は化粧板と称する厚さ1.2mmのメラミン板のみが製造されており、メラミン化粧合板は近年製造されていない。

(b) その他の建具

「標仕」に示すその他の建具の見込み寸法は、一般的な値である。

なお、ふすまの見込み寸法は、どぶ縁(引手側の縦かまち)の寸法による。

16.7.4 工 法

(a) フラッシュ戸

(1) 標誰的なものとしては、主に幅950mm × 高さ2,100mm程度のものを想定している。

(2) 工法は、心材別に中骨式とペーパーコア式に分類される。現在製造されているフラッシュ戸は、中骨式の方がペーパーコア式より多い。それぞれの工法の特長は次のとおりである。

(i) 中骨式の工法(図16.7.2(イ))

従来工法を機械化製作しやすく改良し、中骨を横方向のみとして、かつ、中間2箇所の中骨を分増し(見付け幅を太くすること)しない方法である。

(ii) ペーパーコア式の工法(図16.7.2(ロ))

中骨の数を減じ、その代わりにペーパーコアを挟み込む工法である。


図16.7.2 フラッシュ戸の工法

(3) 圧着技術が進歩しているため、いずれの工法でも、上下かまちと縦かまち及びかまちと中骨の取合い部のステープル留めは組立時の仮固定の意味合いが強く、戸としての剛性は接着剤により確保している。したがって、中骨とかまちとの取合い部の欠き込みは行わない。

(4) いずれの工法でも、錠前当たりの部分には高さ300mm以上の補強を施す。

また、ドアクローザーの取付けねじが,上かまちを外れるおそれがある場合は、上かまちに増し骨する。

(5) 化粧縁は、フラッシュ戸の側面を保護するためのものであり、表面材を接着したのち、幅、高さ、曲がり具合等を修正し、縦かまちに接着剤で取り付ける。

上・下かまちには、化粧縁を取り付けないのが一般的である。化粧縁の隅の納まりを図16.7.3に示す。


図16.7.3 化粧縁の隅の納まり

(6) 開き戸の定規縁は、通称「とんぼ」と呼んでいるT形部材あるいは合じゃくり形部材を図16.7.4のように接着剤で取り付ける。


図16.7.4 定規縁の例

(7) 空気穴は、近年コールドプレス機の採用によって不要となり設けないフラッシュ戸も多い。しかし、ホットプレス機を使用する場合は、フラッシュ戸内の空気の膨張による膨らみを防止するため、すべての水平部材(上・下かまち及び横骨)に図16.7.5のように3mm角程度の穴をあける。


図16.7.5 空気穴の詳細

(8) 引戸の召合せかまちの定規縁で、いんろう付きとする場合は特記による。その例を図16.7.6に示す。


図16.7.6 召合せかまちのいんろう付きの例

(b) かまち戸

(1) ほぞの形式の例を、図16.7.7に示す。


図16.7.7 ほぞの形式の例

(2) かまち及び桟の取合いの例を図16.7.8に示す。



図16.7.8 かまち及び桟の取合いの例

(3) レールは、V形、U形又は甲丸レールを使用するのが一般的である。

(c) ふすま

(1) 通常使用されている標準的な大きさのものについて示している。

なお、「標仕」表16.7.9中の周囲骨と中骨の寸法は、見付け幅 × 見込み幅で表示している。

(2) 工法は、 Ⅰ 型とⅡ型とに分類される。それぞれの工法の特長は次のとおりである。

(i) Ⅰ 型工法
従来から行われている工法であり、周囲骨の隅をえり輪入れし、周囲骨間及び周囲骨と中骨との取合いは、釘打ちとなっている。そのほか、図16.7.9(イ)のように縦骨と横骨の取合いを相欠き、両組みとしている。
紙張りは、下張り3工程(骨しばり、べた張り、袋張り)と上張りの計4工程となっている。しかし、近年茶ちり紙(骨しばり用)と黒紙又は紫紙(べた張り用)を製紙工場ですき合わせた紙を使用して、3工程とすることも行われている。

Ⅰ型工法での下張り紙の概略は、次のとおりである。

① 茶ちり紙(骨しばり用):主として、やや厚手のダンボール又はクラフト紙(上質)を再生したもの
② 黒紙又は紫紙(べた張り用):茶ちり紙を染めたもの

③ 袋紙(袋張り用):薄手のやや良質な茶ちり紙

(ii) II型工法

機械化製作のために開発された工法であり、一般にはチップボード型と呼ばれている。周囲骨の隅は火打ちを入れ接着剤とステープルで固定し、中骨と周囲骨の取合いはステープルで固定する。その他、図16.7.9(ロ) のように縦骨と横骨の組み方は、 I型工法と同じである。

紙張りは、下張り2工程(下張り、袋張り)と上張りの計3工程となっている。

II型工法での下張り紙の概略は、次のとおりである。

① 耐水高圧紙(下張り用):厚手の再生紙(専用紙)

②袋紙(袋張り用): I 型工法に同じ。


図16.7.9 ふすまの工法

(3) 上張り紙は、四周の周囲骨より10mm程度はみ出す大きさとし、周辺10mm部分にのり付けし、周囲骨の側面に折り込んで張り付ける。

(4) 縦縁は、スクリュー釘又は折合い釘を用いて、下方から滑らせて縦周囲骨に固着する。 上下縁は上下周囲骨に釘打ち留めとする。

縁の仕上げとしては、うるし塗りは高価なため、近年極めてまれである。現在は、カシュ一樹脂塗料の2回途りが一般的である。このほか、近年白木仕上げも多く見られる。

(5) 召合せ部の重ね縁と出会い縁の例を図16.7.10に示す。


図16.7.10 召合せ部の例

(d) 戸ぶすま

両面で異なる材質の上張り(片面が洋室用のビニルクロスで、他面が和室用の紙張りの場合等)とした場合は、上張り施工時の吸水による伸びとその後の乾燥による収縮及び室内温湿度の影響等で反りが生じやすい。一般的には、ビニルクロスを張った側が凸になる傾向がある。

(e) 紙張り障子

最近の建物は、高気密、高断熱が進み木製品の含水率が大きく変化し、反りやすい環境となっている。反り対策として「標仕」表16.7.10のかまちの寸法(見込み寸法30mm、見付け寸法27mm)が主流である。高さが2,000mmを超える場合は、見付け寸法も30mmとすることが多い。

また、ほぞ組みは、かまち見付け寸法の1/2以上とする。

16章 建具工事 8節 建具用金物

16章 建具工事

8節 建具用金物

16.8.1 適用範囲

(a) この節では、建具の戸、枠に付属し、戸の動作円滑、動作制御、位置制御、締まり、操作等の機能を分担するもののうち、2節から7節までの各種の既製建具又はこれに準ずる建具に使用する建具用金物(以下、この節では「金物」という。)を対象としている。

(b) 「標仕」では、金物の材質、形状、寸法、個数等が規定されている。しかし、既製建具にこれらの金物を取り付けるためには、改良を要するものもあり、「標仕」 16.8.1では、既製建具は、製作所の仕様で建具に見合った金物が取り付けてあればよいとしている。ただし、機能及び美観上疑問のある場合(腐食、損傷等)は、協議をして取り換えられるようにしている。

なお、金物の指定がない場合でも、建具の機能上必要なものは当然取り付けなければならない。

16.8.2 材質、形状及び寸法

(a) 金物の材質

金物に使用する主要な材料としては、表16.8.1に示すものがある。

なお、ステンレスとして使用されている材料には、SUS304やSUS430系でJIS規格品のSUS430J1Lのほか、SUS304と同等の耐食性を有するJIS規格品のSUS443J1もある。

「標仕」表16.8.1では、特記がない場合の金物の材質として、見え掛り部等の材質を金物の種類に応じて細かく規定している。

なお、見え掛り部の材質の指定は、防錆又は強度上必要なもの以外は、化粧として表面に現れる部分についてのみ適用される。例えば、ピボットヒンジの本体が鉄製でも、カバーがステンレスであれば、ステンレスの指定に合うことになる。

表16.8.1 金物に使用される主要な材料と製法(JASS 16より)

(b) 金物への名称又は略号の表示の目的は、メンテナンスや交換等の際の識別を容易にするためである。したがって、金物製造所又は建具製作所のいずれかの名称又は略号が表記されたものを使用する。

(c) アルミニウム製建具に使用する金物で、黄銅製のものにクロムめっきを行うのは、アルミニウムとの接触腐食を防止するためである。また、亜鉛合金製のものにクロムめっきを施すのは美観上の必要からである。

(d) 便所、洗面所、浴室、厨房等に使用するステンレス以外の金物にクロムめっき又はJIS H 8602(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)による協極酸化塗装複合皮膜(種類B)処理を行うのは、水分による腐食を防止するためである。陽極酸化旅装複合皮膜処理はアルミニウム合金の場合の表面処理である。

(e) 金物の種類

「標仕」表16.8.1では、金物が過度にならないように建具の形式に応じた金物の種類を規定している。

表中の*印の付いた金物の適用は、特記によって指定することとしている。

なお、表に示された金物は、建具に付属するすべての金物を網羅しているものではなく、この表以外で建具の機能上必要な金物は補足して付けなければならない。

また、表中でピボットヒンジの使用を屋内に限定しているのは、ガラス戸等で、ピボットヒンジをフロアヒンジと組み合わせて使用する場合の防犯性を考慮したものである。

(i) 開き戸の主な金物を図16.8.1に示す。


図16.8.1 開き戸の主な金物

(ii) 引戸の主な金物を図16.8.2に示す。


図16.8.2 引戸の主な金物

(iii) 「標仕」には規定されていないが、近年、鋼製建具や木製建具でよく使われるようになってきた折り戸の金物を次に示す。

① 防火戸に使われる折り戸の主な金物を図16.8.3に示す。 .


図16.8.3 折り戸の主な金物(防火戸)

②物入等に使われる折り戸の主な金物を図16.8.4に示す。


図16.8.4 折り戸の主な金物(物入等)

(f) 錠のグレード

平成25年版「標仕」では、「標仕」表16.8.1のシリンダー箱錠及び本締り錠について、JIS A 1541-2(建築金物-錠-第2部:実用性能項目に対するグレード及び表示方法)によるグレード3以上と規定されたが、これは、主に事務庁舎を想定したものであり、鋼製建具、鋼製軽量建具及びステンレス製建具を対象としている。

JIS A 1541-2では、
① 使用頻度による性能
② 外力に対する性能
③ 使用扉の質量による性能
④ かぎ(鍵)違い
⑤ デッドボルトの出寸法

⑥ 耐じん性能

の6項目について、それぞれグレードが定められており、「標仕」では、耐じん性能を除く5項目についてグレード3以上としている。耐じん性能は、使用する場所により要求性能が異なるため規定されていないが、ちりやほこりの多い場所では、グレード2の製品を使用するのが望ましい。

また、枠類の厚さが1.5mm以上のものの場合の外力に対する性能のストライクの仕様については、グレード3の規定を適用しないこととされている。

なお、本締り付きモノロック及びモノロックについては、耐じん性能を除く実用性能項目の5項目のすべてでは、グレード3を満足してはいない。

JIS A 1541-2については、16.8.5(b)(2)を参照されたい。

錠前類には、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4(e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

(g) 閉鎖金物のストップ装置

「標仕」表16.8.1では、フロアヒンジ、ヒンジクローザー(丁番形・ピボット形)、ドアクローザーについて、防火扉の場合ストップなしとされているが、これは防火区画に用いる防火戸を前提としたものである。

(h) 金物の寸法 個数(枚数)

「標仕」16.8.2(g)、(h)及び(i)では、金属製建具及び樹脂製建具に使用する丁番及び戸車並びに木製建具に使用する丁番、ビボットヒンジ,戸車及びレールについて、寸法、個数を細かく規定している。

なお、「標仕」表16.8.2の丁番の長さ127 (125)、152(150)は、それぞれ 5インチ、6インチをmmに換算した寸法なので、建具金物製造所によりばらつきがある。そのため、127 及び 152 は一般的な呼び寸法を表し、(  )内は最小呼び寸法を表している。

16.8.3 取付け施工

 

(a) 金物の取付け位置は、特記によるが、どこを基準とする寸法なのかを明記する。一般的な寸法は、次のようであり、図16.1.3に開き戸での錠、取っ手、丁番の位置、及び図16.1.4に引戸での引手、クレセントの位個の取り方を示す。

(1) 取っ手類の位置は、床上から高さ1.0m(押板類は1.1m)程度が一般的である。バックセットは「標仕」表16.8.1では、握り玉の場合 60mm以上、レバーハンドルの場合 50mm以上とされており、前者の場合 60~70mm、後者の場合50~60mmが一般的である。

(2)排煙窓に手動開放装置を設ける場合の位置は、16.1.7(b)(3)による。

(b) 金物の取付けは、水平垂直に留意して、建具が円滑に作動するように注意を払いながら、他部材との納まり具合(金物の作動時に他部材と接触しないなど)、戸と枠との適正な隙間、出入りを調整し、支持部材に堅固に取り付ける。

なお、取付けに際しては、戸や枠が正確に施工されていることを前提とするが、現実には、戸や枠に微妙な誤差が生じているため、両者を調整しながら取り付けることになる。

(c) 金物の取付けに使用するねじ類(小ねじ、タッピンねじ、木ねじ)は、所定の数量及び長さのものを使用する。「標仕」では、ねじ山が金属板に3山以上掛かるようにまた、ねじの先端が金属板の外に3山以上出るように規定している。

(d) フロアヒンジ等金物をコンクリートに埋設するものは、主要な構造躯体を損傷しないように配置する。やむを得ず梁等と取り合う場合は、主筋とぶつからないようにあらかじめ梁を下げるなどの処置が必要となる。また、フロアヒンジの内部に水が入らないよう、水掛りでは多少高目に取り付ける必要がある。周囲がカーペット敷きの場合は、鋭いカバープレートの角が靴に当たるので、角がとがらない特殊なカパープレートを用いたり、フロアヒンジを低く取り付け、戸を上げてカーペットに擦らないようにする。ただしその場合は特注品となる。

(e) 金物の取付け後、金物のきしみ、緩み、がたつき、建具の異常な応力、たわみ変形等が生じず、円滑に作動するように調整及び確認を行う。

16.8.4 鍵

(a) マスターキー

鍵(キー)は、各錠ごとに異なっているが、建物管理上は多くの鍵を持ち歩くことになり、極めて不便である。そのため多数の錠を一つの鍵で操作できる鍵(マスターキー)を作ることになる。「標仕」では、マスターキーの扱いについては、特記によるとしている。錠と鍵の関係を組織的に管理する方式をキーシステムといい、表16.8.2に示すような方式がある。

なお、一つの建物に2以上の製作所の錠を使用する場合や施錠システムが異なる錠を混用する場合は、マスターキーを1つにすることは難しい。

表16.8.2 キーシステムの種類

(b) 製作者、施工者及び監督職員、場合によっては施設管理担当者の立会いのうえ、錠と鍵を照合し、確認する。特に操作が複雑と思われる金物は、操作取扱説明書を提出させ、必要に応じ施設管理担当者立会いのもとで操作実習を行う。

(c) 鍵は、整理し、鍵箱に収納して提出させる。「標仕」では、鍵箱は、鍵の個数に応じた鋼製の既製品としている。また、フック棒等の金物の付属部品もそろえて引き取る。

なお、コンストラクションキーシステムを用いた場合は、工事用シリンダーから本設シリンダーに切り替えたのち、不用になった工事用の鍵を提出させて、その確認を行う。

(d) 「特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律」(平成15年法律第65号)に基づき、「指定建物錠の防犯性能の表示に関する基準」が平成16年4月より施行されている。

(-社)日本サッシ協会、(-社)日本シャッター・ドア協会及び (-社)カーテンウォール・防火開口部協会では、 日本ロック工業会の協力を得て、子鍵の袋の中に同法第7条に規定された表示カードを入れることで正確な情報が建物の発注者、使用者に間違いなく届くように指導している。

16.8.5 JIS、資料他

(a) 錠を構成する部品の名称等を表16.8.3及び図16.8.5に示す。

表16.8.3 錠を構成する部品の名称及び機能

図16.8.5 錠を鋼製する部品の形状例及び名称

(b) 建具用金物関係のJIS

(1) JIS A 1541-1(建築金物一錠ー第1部:試験方法)

JIS A 1510-1は廃止となり、2006年にJIS A 1541-1が制定されている。この規格では、錠に対する試験条件、試験装置及び試験方法が規定されている。試験項目としては、耐久性試験、強度試験、耐食性試験、安定性試験、電気的試験、シリンダの耐じん性試験、表面仕上げ試験が規定されている。

(2) JIS A 1541-2(建築金物 – 錠 – 第2部:実用性能項目に対するグレード及び表示方法)

この規格では、建築物の開口部の戸に用いる錠の実用性能項目、

① 使用頻度による性能
② 外力に対する性能
③ 使用扉の質量による性能
④ かぎ(鍵)違い.
⑤ デッドボルトの出寸法

⑥ 耐じん性能

の6項目について、それぞれのグレード及び表示方法について規定されている。

JIS A 1541-2で規定されている6項目の性能について、表16.8.4から表 16.8.9に示す。

表16.8.4 使用頻度による性能(JIS A 1541-2 : 2006)

表16.8.5 外力に対する性能(JIS A 1541-2 : 2006)
表16.8.6 使用扉の質量に対する性能(JIS A 1541-2: 2006)

表16.8.7 かぎ(鍵)違い(JIS A 1541-2 : 2006)

表16.8.8 デッドボルトの出寸法(JIS A 1541-2 : 2006)

表16.8.9 耐じん性能(JIS A 1541-2: 2006)

(3) JIS A 1510-2(建築用ドア金物の試験方法ー第2部:ドア用金物)

建築物の開口部の戸に使用する金物のうち、丁番、グラビティヒンジ(トイレブース等に使用するせり上り丁番をいい、閉戸は戸の自重によって行われるもの)、戸当り、上げ落し、用心鎖及びガードアーム(鎖の代わりに棒状ループ状又は板状の部品を用いて開戸を制限するドア用金物)の試験方法について規定されている。

(4) JIS A 1510-3(建築用ドア金物の試験方法ー第3部:フロアヒンジ、ドアクローザ及びヒンジクローザ)

(5) JIS A 5545(サッシ用金物)

JIS A 4706(サッシ)に規定するスライデイングサッシに使用する金物のうち、戸車及びクレセントについて規定されている。

(c) 錠及び吊り金物類の用語の解説を表16.8.10及び表16.8.11に示す。

表16.8.10 錠(その1)

表16.8.10 錠(その2)

表16.8.11 吊り金物類(その1)

表16.8.11 吊り金物類(その2)

16章 建具工事 9節 自動ドア開閉装置

16章 建具工事

9節 自動ドア開閉装置

16.9.1 適用範囲

(a) この節では、建築物の出入口に使用する標準的なスライデイング及びスイングタイプの自動ドア開閉装置(以下、この節では「開閉装置」という。)を対象としている。

開閉装置とは、JIS A 4702 (ドアセット)に規定するドアセットに開閉のための制御部及び駆動部(懸架部を含む。)を取り付け、歩行者等を検出する検出装置(以下「センサー」という。)の信号でドアが開閉する装置のことである。

(b) 施工計画書の作成は,16.1.1(c)を参照する。

(c) 開閉装置の施工範囲は、関連工事との区分を明確にすることが必要である。

16.9.2 性 能

標準的な開閉装置の性能値は、「標仕」表16.9.1及び2に示されているが、ドアの質量,面積がこれを超える場合は.設計図書に性能が特記される。

また、自動ドアの安全対策については、全国自動ドア協会から「自動ドア安全ガイドライン(スライド式自動ドア編)」及び「多機能トイレ用自動ドア安全ガイドライン」が発行されているので参考にされたい。

16.9.3 機 構

(a) 開閉装置は、駆動装置、制御装置及びセンサーより構成される。図16.9.1はスライデイングドア用の納まりの例で各部の名称を示す。


図16.9.1 引分け開閉装置の納まりの概略図

(1) 駆動装置
動力部、作動部、ドア懸架部よりなり、制御装置から指令を受けてドアを開閉する。駆動方式には、表16.9.1に示すものがある。

なお、ドア懸架部とは、吊り戸車及びハンガーレールをいう。

表16.9.1 駆動方式の種類
(2) 制御装置

センサーから開閉信号を受けて駆動装置を制御する装置をいう。

(3) センサー

人体の自動検出又は人為操作によって制御装置へ制御を送る装置をいう。センサーには、表16.9.2に示すものがある。また「標仕」16.9.3(e)はドア走行部の安全を考慮して、すべてに補助センサーを併用することとしている。補助センサーには、図16.9.1にある補助光電スイッチのように、センサーと分かれている「分離型」と、センサーの中に補助センサー機能が含まれる「一体型」がある。

表16.9.2 センサーの種類

(4) ドアの開閉方式

表16.9.3に示すものがある。

表16.9.3 ドアの開閉方式の種類

(5) 自動扉機構については、「標仕」で要求する品質を満たすものとして(-社)公共建築協会の「建槃材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

(b) 停電及び電源を切った場合に、ドアは手動で開閉できるものとする。

(c) 開閉装置を床又は屋外に設置する場合は、絶縁低下を起こさず、また、支障なく使用できるなど、常に正常な機能を維持するため、開閉装置内部に水が浸入しても直ちに排水できる構造とする。

16.9.4 工 法

(a) 施工の注意事項は、次のとおりである。

(1) 建具枠及びドア等の取付けに十分耐え得る構造であることを確認する。

(2) 開閉装置を取り付ける前に、ドア回りの関連工事が、開閉装置の取付けやドアの作動に支障のないように施工されていることを確認する。

(3) 床又は屋外に設置する開閉装置の埋込み部分及びマットスイッチのマット敷込み部分には、呼び径65mm程度の排水管が設けられていることを確認する。

また、高齢者、障害者等の通過が予想される場合は、国土交通省大臣官房官庁営繕部整備課監修「建築設計基準及び同解説」3.5.3(4)[スライド式自動扉]による。

(4) マットスイッチのリード線の接続部は、自己融着テープ等で防水処理を行う。なお、多雪寒冷地で凍結のおそれがある場合は、電熱ヒーターを敷設するなどマットスイッチやガイドレール部分の凍結を防止する装置が必要である。

(5) 引戸は、全閉時での戸先隙間が一定で、また、ドアとガイドレール、無目及び中間方立との隙間が一定であることを確認する。

(6) 開き戸は、ピボット軸と駆動軸との同心、無目及び床埋込みケースの水平を確認し、また、ドア全周とサッシ及び床との隙間、全閉時での戸先隙間が一定であることを確認する。

(b) 取付け及び調整完了後に、表16.9.4に示す項目を確認する。

表16.9.4 取付け及び調整完了後の確認項目

表16.9.5 ドア質量とドア開速度・閉速度

(c) 「建築設計基準及び同解説」の自動ドアに関する項の抜粋を次に示す。

建築設計基準及び同解説

3.5.3 扉

(4) スライド式自動扉

高齢者、障害者等の通行を考慮し、開閉速度、センサー等を設定する。


図3.5.13 自動ドア感知域と留意事項

16章 建具工事 10節 自閉式上吊り引戸装置

16章 建具工事

10節 自閉式上吊り引戸装置

16.10.1 適用範囲

主に高齢者、障害者等の利用を配慮した出入口に使用する標準的な自閉式上吊り引戸(手動で開放し、自動で閉鎖する戸、有効開口幅 900mm、高さ2,000mm程度)の開閉装置を対象としている。

開閉方式には、片引きと引分けがあり、引分けの場合、左右の戸が連動せずに個別に動くのが一般的である。

16.10.2 材 料

屋外に使用する上吊り引戸装置の材料は「標仕」によるが、引戸本体の材料についても雨水の浸入や防錆性能を考慮する必要がある。

16.10.3 性能等

(a) 開閉繰返し性能については、標準的な使用状態を想定して20万回を設定している。(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4(e)参照)では、「標仕」表16.10.1の規定に基づいた評価を行っている。「標仕」表16.10.1で規定されている手動閉じ力とは、ストップ装置を働かせた状態を手動で解除するのに要する力を指している。

(b) 自閉式上吊り引戸装置は、上吊り機構、自閉装置、制御装置により構成される。

図16.10.1に一例を示す。


図16.10.1 自閉式上吊り引戸装置の一例

16.10.4 工 法

上吊り引戸装置の上吊り機構は、建具枠の取付け誤差や床の不陸等を調整できるものとする。

16.10.5 高齢者、障害者等の利用に対する配慮

高齢者、障害者等の利用に対する配慮としては、開閉しやすいこと及び車椅子が通過できる幅があり、通過を妨げる段差がないことなどが挙げられる。

16章 建具工事 11節 重量シャッター

16章 建具工事

11節 重量シャッター

16.11.1 適用範囲

(a) この節では、主として建築物の屋内・外に使用する重量シャッターを対象としている。

(b) 重量シャッターのうち、防火シャッター及び防煙シャッターでは、「標仕」に定められている以外の事項は、JIS A 4705(重量シャッター構成部材)による。

(c) 外部に取り付けるシャッターは、耐風圧性に対する安全性を計算書等により確認する。

(d) 用語は、JIS A 4705の参考付図による(16.11.5(c)参照)。

16.11.2 形式及び機構

(a) 防火シャッターの大きさの制限は、一般的にはJIS A 4705による。また、防煙シャッターの内法幅は、昭和48年建設省告示第2564号で5m以下となっている。

ただし、平成10年の建築基準法改正に伴う性能規定化により、内法幅 5mを超える防煙シャッターも大臣認定によって認められることとなった。

(b) 新しい防火設備として、耐火クロス製防火/防煙スクリーンが、屋内用防火シャッターに代わって使用されることが多くなっている。これは、カーテン部を耐火クロスで構成した大臣認定品の防火設備又は特定防火設備である。鋼製シャッターに比べて軽量ではあるが、カーテン部の強度が劣るため、設置場所、用途等には注意が必要である。(-社)日本シャッター・ドア協会が作成した同製品の技術標準があるので、使用する場合には参考にするとよい。

(c) シャッター類は、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位に設置される場合が多いため、(-社)日本シャッター・ドア協会では、実績に基づき旧建築基準法施行令第87条に規定されていた計算式を採用した「シャッター・オーバーヘッドドア耐風圧強度計算基準」を使用している。

(d) 防煙シャッターのまぐさには、一般にシャッターが閉じた時、漏煙を抑制する遮煙装置を付ける。その例を図16.11.1に示す。


図16.11.1 まぐさ部の遮煙装置の例

(e) 開閉操作方法を大別すれば、表16.11.1及び図16.11.2のようになる。

上部電動式の手動時の操作は、鎖による巻上げ(クラッチ付き)又はハンドルによる巻上げがある。クラッチ付きとは、鎖をプーリーからはずさずに、電動作動させても鎖が巻き込まない装置である。

表16.11.1 重量シャッターの開閉操作方法の種類

図16.11.2 開閉操作方式

(f) リミットスイッチ、保護スイッチ

(1) リミットスイッチとは、シャッターが全開した場合又は全閉した場合に作動し、シャッターを停止させるスイッチである。

(2) 保護スイッチとは、リミットスイッチが故障した場合に作動し、シャッターを停止させるスイッチである。

なお、まぐさに取り付ける場合や二重リミットスイッチにする場合がある。まぐさに取り付けた例を図16.11.3に示す。


図16.11.3 まぐさに取り付けた保護スイッチの例

(g) スラットの不測の事故による急激な落下を防止する装置には、二重チェーン、急降下制動装置、急降下停止装置等がある。

なお、二重チェーンとは複列チェーン方式のことをいう。

(h) 障害物感知装置

(1) 人がシャッターに挟まれた場合、重大な障害を受けないようにする装置である。シャッターの降下時に、シャッターのほぼ開閉ライン内に障害となるものがあると、これを感知してシャッターを停止又は一旦停止後直ちに反転上昇させる装置で、大別して次の2種類がある。

(i) 接触型

座板等に感知部を設け、障害物に直接接触して停止又は停止後直ちに反転上昇するもの。

(ii) 非接触型

蹄害物にシャッターが接触しないで障害物を感知して停止するもの(光電センサー等)。

(2) 「標仕」では、電動式で日常使用される管理用シャッター及び一斉操作や遠隔操作等見えない場所から操作するシャッターには障害物感知装置を設けることとしている。

(i) 危害防止装置

(1) 煙感知器の非火災報により降下した防火シャッターに人が挟まれる事故が発生したために追加された機構で、建築基準法施行令第112条第14項第一号の改正により、平成17年12月1日から防火設備に設置が義務付けられた。「防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める件」(昭和48年12月28日 建設省告示第2563号、最終改正 平成17年12月1日 同土交通省告示第1392号)に基準が定められている(16.1.3 (d)参照)。これらにより、従米の二段降下方式は不適合となった。また、手動閉鎖装置により降下させた場合にも、危害防止装置が作動する構造とされた。

「標仕」16.11.2(d)(4)では、危害防止機構の条件として、(i)、かつ、(ii)とされているが、(ii)は法的根拠を明記したもので、現在は法に適合した装置は、(i) の障害物感知装置のみとなっている。

(2) 障害物感知装置(自動閉鎖形)

接触形の障害物感知装置で危害防止を図る方式。障害物が取り除かれたのちにシャッターが再降下して完全に閉鎖し、防火又は防煙シャッターの機能が果たされる。

(j) スラットの形状

(1) インターロッキング形のスラットを図16.11.4に示す。


図16.11.4 インターロッキング形スラット

(2) オーバーラッピング形(防煙シャッター)のスラットを図16.11.5に示す。

図16.11.5 オーバーラッピング形スラット

(k) 耐風圧性を高めるスラットのはずれ止め機構の例を図16.11.6に示す。製造所は、要求される耐風圧性能によりはずれ止め機構の例を設けている。一般に、耐風フックの数や強度により耐風圧性能を高めている。


図16.11.6 はずれ止め機構の例

(l) 重量シャッターについては、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4(e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.11.3 材 料

(a) 重量シャッターに使用する鋼板は、JIS G 3302(溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)又はJIS G 3312(塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)に基づき、鋼板の種類及びめっきの付着量は特記によるとされている。ただし、めっきの付着量は、特記がない場合、Z12又はF12を満足するものとされている。

一般的には、鋼板はJIS G 3302が使用されている。

(b) 主にまぐさ部の遮煙装置に使用する「遮煙材」は、JIS A 4705に示されており、スチール、クロロプレンゴム、ガラスクロス等がある。

16.11.4 形状及び仕上げ

(a) 「標仕」表16.11.2における「実厚表示」は特定防火設備(旧甲種防火戸)を想定しており、設計図書により防火シャッターを指定された場合、スラット等の鋼板の厚さは、平成12年建設省告示第1369号第1第四号により1.5mm以上としなければならない。

一般に製作所では、表示厚さ1.6mmで厚さの許容差の範囲を含めた実厚内で1.5 mm以上となる鋼板を使用している。

なお、防火性能を要しないステンレスのカバー等は、「標仕」表16.11.2の厚さを表示厚さとしてよい。

(b) 外部に取り付ける場合は、耐風圧性の強度計算によりスラットの厚さが1.6mmを超えるものを使用しなければならない場合もある。

16.11.5 工 法

(a) スラット相互のずれ止めは、スラット端部を折曲げ加工するか又は端金物を付ける。その例を図16.11.7に示す。


図16.11.7 スラット相互のずれ止めの例(JIS A 4705 : 2003)

(b) シャッターの室内側に近接して開き戸を設ける場合は、図16.11.8のような取合いに注意が必要である。


図16.11.8 シャッターと室内側の開き戸との関係

(c) JIS A 4705(重量シャッター構成部材)の抜粋を次に示す。

JIS A 4705 : 2003

1.適用範囲

この規格は、建築物及び工作物に使用するスラットの板厚が1.2mm以上でスラットに貫通部のない、内のり幅8.0m以下、内のり高さ4.0m以下の重量シャッター構成部材(1)(以下、(構成部材という。)について規定する。ただし、横引き又は水平引きのものには適用しない。

注(1) まだ組み立てていない状態のもの。なお、組み立てた重量シャッターを以下、シャッターという。

3. 構成部材の名称

構成部材の名称は、次による(付図4参照)。

付図4 構成部材の名称(一例)

4. 種 類

4.1 シャッターの種類
シャッターの種類は、表1による。
表1 シャッターの種類

4.2 構造による区分

構造による区分は、表2による。

表2 構造による区分

5. 品質及び機能

5.1 外 観

外観は、次による。

a) シャッターの外観は、使用上有害な曲がり又はさびなどの欠点があってはならない。

b) 防火シャッター及び防煙シャッターは、防火上有害な穴及びすき間があってはならない。

c) 防火シャッター及び防煙シャッターで座板にアルミニウムを使用する場合には、鋼板で覆う。

5.2 スラット曲げ強さ

外壁開口部に設置する重量シャッターのスラットは、次の規定に適合しなければならない。

なお、外壁開口部に設置する重量シャッターの耐風圧強度は、受渡当事者間の協議による。

a) 11.3に規定する試験を行い、レールからの脱落があってはならない。また、残留わたみ量は、スラット長さの1/200以下で、かつ使用上有害な変形が残ってはならない。 (11.3省略)

b) 載荷荷重は500N/m2以上とする。

5.3 巻取りシャフト

巻取りシャフトは、シャッターカーテンの荷重に耐える強度をもち、スラットを円滑に巻き取るものでなければならない。

5.4 軸受部

軸受部は、巻取りシャフト、シャッターカーテンの荷重に十分耐え、かつ、円滑な回転を保持するものでなければならない。

5.5 手動閉鎖装置

防火シャッター及び防煙シャッターに使用する手動閉鎖装置は、11.4h)によって試験を行い、シャッターが任意の位置で停止し、更に、確実に全閉できなければならない。(11.4h)省略)

5.6 連動閉鎖機構

防火シャッター及び防煙シャッターに使用する連動閉鎖機構は、11.4のi)、 j)によって試験を行い、シャッターが確実に全閉しなければならない。その自重降下における平均速度は、表3による。(11.4i及びj)省略)

表3 平均速度

5.7 温度ヒューズ装置

防火シャッターに使用する温度ヒューズ装置は、表4による。

表4 温度ヒューズ

5.8 障害物感知装置の種類

障害物感知装置の種類は、表5による。

表5 障害物感知装置の種類

5.9 シャッターの性能

5.9.1 遮炎性能
防火シャッター及び防煙シャッターは、1時間又は20分の遮炎性能をもつものとする。

5.9.2 遮煙性能
防煙シャッターは、11.1によって試験を行い、圧力差19.6Paのときの通気量が0.2m3/min・m2以下でなければならない。(11.1省略)

5.9.3 電動式シャッターの開閉機能
電動式シャッターの開閉機能は、11.4a)によって試験を行い、次の規定に適合しなければならない。(11.4a)省略)

a) シャッターの開閉は、円滑に作動する。

b) シャッターの開閉時の平均速度は、表3による。

c) シャッターの開閉の際、上限及び下限において自動的に停止する。

d) シャッターは、降下中に任意の位置で確実に停止できる。

e) 障害物感知装置付きのシャッターは、押しボタンスイッチなどの信号による降下中には、障害物感知装置が作動した際に、自動的に停止するか、又はいったん停止した後に反転上昇して停止する。

f) 障害物感知装置が障害物を感知するために要する力は、11.4e)によって試験を行い200N以下である。(11.4e)省略)

g) 障害物感知装置付きシャッターは11.4f)によって試験を行い、荷重計に伝わる荷重が 1.4kN以下である。ただし、衝撃荷重は除く。(11. 4f)省略)

h) 障害物感知装置(一般型)が作動した状態のままで停止した場合には、押しボタンスイッチなどによる再降下の信号を受けてもシャッターは降下してはならない。

i) 障害物感知装置(一般型)が作動したままの状態で停止した場合には、押しボタンスイッチなどによる開信号を受けたとき、シャッターは開動作する。

j) 障害物感知装置(一般型)が作動し、シャッターがいったん停止した後に反転上昇して停止した場合には、押しボタンスイッチなどによる再降下の信号を受けて閉動作したとき、障害物感知装置(一般型)は作動する。

k) 煙又は熱感知器連動機構による降下中には、障害物感知装置(一般型)が作動しても、シャッターは停止しない。

l) 煙又は熱感知器連動機構による降下中には、障害物感知装置(自動閉鎖型)が作動した際に、シャッターは自動的に停止する。

m) 煙又は熱感知器連動機構による降下中に障害物感知装置(自動閉鎖型)が作動し、自動的に停止した後、障害物除去後再降下する。

5.9.4 手動式シャッターの開閉機能

手動式シャッターの開閉機能は、11.4g)によって試験を行い、次の規定に適合しなければならない。(11.4g)省略)

a) シャッターの開閉は、円滑に作動する。

b) 開閉機のハンドル回転に要する力は80N以下、鎖などによる引き下げに要する力は 150N以下である。

c) シャッター自重降下時の平均速度は、表3による。

d) シャッターは、降下中に任意の位置で確実に停止できる。

e) 煙又は熱感知器連動機構による降下中には、障害物感知装置(自動閉鎖型)が作動した際に、シャッターは自動的に停止する。

f) 煙又は熱感知器連動機構による降下中に障害物感知装置(自動閉鎖型)が作動し、自動的に停止した後、障害物除去後再降下する。

6. 構 造

6.1 スラット

スラットのつづり方はインターロッキング形又はオーバーラッピング形とする(付図5参照)。(図16.11.4及び5参照)

スラット相互のずれ止めは、スラット端部を折り曲げ加工するか、又は端金物を付ける(付図6参照)。(図16.11.7参照)

6.2 軸受部
軸受部のアンカーボルトの断面積は、表6による。

表6 断面積

6.3 ガイドレール及びまぐさ

ガイドレール及びまぐさは、次による。

a) ガイドレールとスラットのかみ合わせ長さは、表7による。

表7 かみ合わせ長さ

b) 防煙シャッターのまぐさの遮煙機構は、シャッターが閉鎖したとき、漏煙を抑制する構造で、その材料は不燃材料、準不燃材料、又は難燃材料とする。

c) ガイドレール及びまぐさのアンカーボルト、又は棒銅の収付けは現場施工とし、その固定ピッチは600mm以下とする。

d) ガイドレールのアンカーボルト又は棒鋼の断面積は、0.63cm2以上とする。ただし、一般重量シャッター又は構造区分におけるB種では、0.5cm2以上とする。

6.4 ケース

防火シャッター及ぴ防煙シャッターに使用するケースは、スラットの巻き込み口及び建物の耐火構造のはり、壁、又は床などに防火上有効に覆われる部分を除いてその全周を鋼板で囲むものとする。

JIS A 4705 : 2003

16章 建具工事 12節 軽量シャッター

16章 建具工事

12節 軽量シャッター

16.12.1 適用範囲

(a) この節では主として建築物の屋内・外に使用するスラットの板厚が1.0mm以下で、スプリング式及び電動式の鋼製の軽量シャッターを対象としている。

(b) 軽量シャッターは、一般にスラットの厚さが 0.5、0.6、0.8、1.0mmのものがある。「標仕」表16.12.2では、0.5mmとしているが、強度上必要な場合には板厚を増すこと、防火設備の場合には実厚で 0.8mm以上とすることとされている。

(c) (b)以外については、11節を参照する。

16.12.2 形式及び機構

(a) 手動式の場合、スプリングによるバランス式であるため、電動式よりも開口寸法が制約されるので注意が必要である。

(b) シャッター類は、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位に設置される場合が多いが、この場合の風圧力については、16.11.2(c)を参照されたい。

(c) 手動式で開口幅が大きく、中柱を設けなければならない場合、中柱の風圧力に対する安全性に注意する。

(d) 電動式の場合の保護スイッチ及び障害物感知装置については、16.11.2(f)及び(h)を参照する。

(e) 軽量シャッターについては、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、 (-社)公共建築協会の「建築材医療・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.12.3 材 料

軽量シャッターに使用するスラットの材質は、JIS G 3312(塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)又はJIS G 3322(塗装溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)により、めっきの付着量は特記によるとされている。ただし、めっきの付着量は、特記がない場合、JIS G 3312はZ06又はF06、JIS G 3322はAZ90を満足するものとされている。

一般的には、スラットの材質はJIS G 3312が使用されている。

16.12.4 形状及び仕上げ

軽量シャッターを防火設備(旧乙種防火戸)とする場合は、平成12年建設省告示第1360号第1第二号イに実厚0.8mm以上と規定されている。

16.12.5 工 法

(a) 電動シャッターを他に出入口のない建物(車庫等)に取り付ける場合、シャッター本体を建物屋内に納めるとシャッターが全閉したまま故障した際、屋外から手動で開放できなくなるので、本体を屋外側に納めるか又はくぐり戸を設けるなどの注意が必要である。

(b) JIS A 4704 (軽量シャッター構成部材)の抜粋を次に示す。

JIS A 4704 : 2003

1. 適用範囲

この規格は、建築物及び工作物に使用するスラットの板厚 が1.0mm以下で、スプリング式及び電動式の鋼製の軽量シャッター構成部材(1)(以下、構成部材という。)について規定する。

注(1) まだ組み立てていない状態のもの。
なお、組み立てた軽量シャッターを、以下、シャッターという。

4. 種 類

シャッターの種類は.表1による。

表1 シャッターの種類


5. 品質及び機能

5.1 外 観

シャッターの外観は、使用上有害なねじれ、曲がり、さびなどの欠点があってはならない。

5.2 曲げ強さ

スラット、中柱及ぴ上げ落としの曲げ強さは、次による。
なお、外壁開口部に設置するシャッターの耐風圧強度は、受渡当事者間の協議による。
a) スラットは、11.1に規定する方法で曲げ試験を行い、レールからの脱落があってはならない。また、残留たわみ量は、スラット長さの1/200以下で、かつ、使用上有害な変形が残ってはならない。(11.1省略)

b) 中柱は、11.2に規定する方法で曲げ試験を行い、支持台からの脱洛があってはならない。また、残留たわみ量は、中柱長さの1/200以下で、かつ、使用上有忠な変形があってはならない。(11.2省略)

c)上げ落としは、11.3に規定する方法で曲げ試験を行い、使用上有忠な変形が残ってはならない。(11.3省略)

d) 載荷荷重は、500N/m2以上とする。

5.3 開閉機能

5.3.1 スプリング式

スプリング式は、11.4.1に規定する方法によって開閉試験を行い、表2の規定に適合しなければならない。(11.4.1省略)

表2 開閉力

5.3.2 電動式

電動式は、11.4.2に規定する方法によって開閉試験を行い、次の規定に適合しなければならない。(11.4.2省略)

a) 定格電圧による開閉
1) 開閉は、円滑に作動する。
2) 開閉時の平均速度は、毎分 3〜7mとする。
3) 開閉中に、任意の位置で確実に停止できる。
4) 開閉の際、上限及び下限において、自動的に停止する。
5) 開閉中、押しボタンスイッチを逆方向に操作しても、逆方向に作動しない。
6) 温度過昇防止器の作動によって、自動的に電源が遮断する。
7) 障害物感知装置(一般型)付きのシャッターは、押しボタンスイッチなどの信号による降下中、障害物感知装置が(一般型)作動した際に自動的に停止するか、又は停止後反転上昇して停止する。
8) 障害物感知装置(一般型)が障害物を感知するために要する力は、11.4.2 a)10) に規定する方法で試験を行い、200N以下とする。(11.4.2 a) 10)省略)
9) 障害物感知装置(一般型)付きのシャッターは、11.4.2 a) 11)に規定する方法で試験を行い、荷重計に伝わる荷重が1.4kN以下である。ただし、衝撃荷重は除く。 (11.4.2 a) 11)省略)
10) 障害物感知装置(一般型)が作動したままの状態でシャッターが停止している場合には、押しボタンスイッチなどによる再降下の信号を受けても、シャッターは降下しない。
11) 障害物感知装置(一般型)が作動したままの状態でシャッターが停止している場合には、押しボタンスイッチなどによる上昇の信号を受けたときシャッターは上昇する。
12) 障害物感知装置(一般型)が作動し、シャッターが反転上昇して障害物感知装置(一般型)の作動が解除した状態で停止した場合には、押しボタンスイッチなどによる再降下の信号を受けてシャッターが降下したとき、再度障害物感知装置(一般型)が作動する。

b) 電圧変動による開閉
1) 支障なく、円滑に作動する。
2) シャッターの位置に関係なく始動する。

c) 電源遮断時の開閉
手動によって、開閉できる。

6. 構 造

6.1 スラットのつづり方

インターロッキング形又はオーバーラッピング形とする(付図4参照)。スラット相互のずれ止めは、スラット端部を折り曲げ加工するか又は端金物を付ける(付図5参照)。(付図4及び5省略)

6.2 ガイドレール
ガイドレールは次による。
a) スラットとガイドレール(中柱)とのかみ合わせはスラットをどちらかに寄せたときにも、他端の有効かみ合わせの長さが20mm以上(端金物がある場合には、端金物の寸法を含む。)になるようにする。
b) 中柱を取り付けたとき、中柱が回転又はねじれを生じない構造とする。
c) 上げ落としは、中柱に堅ろうに収り付ける。

6.3 電装品
電動式のシャッターにおける電装品(電動開閉l機を除く。)は、関係法規に適合する。
参考 関係法規には、電気用品安全法に基づく、電気用品の技術上の基準を定める省令がある。

6.4 障害物感知装置(一般型)
電動式のシャッターに使用する障害物感知装置(一般型)の構造は.次による。
a) シャッターの電動降下中に障害物を感知し、シャッターを自動的に停止できるものとする。

7. 寸 法
7.1 シャッターの内のり幅及び内のり高さ
シャッターの内のり幅及び内のり高さは、付図6による。


シャッターの内法幅


付図6 シャッターの内のり幅、内法高さ

16章 建具工事 13節 オーバーヘッドドア

16章 建具工事

13節 オーバーヘッドドア

16.13.1 適用範囲

この節では、主として建築物の屋外に面して設置する標準的なオーバーヘッドドアを対象としている。

16.13.2 形式及び機構

(a) セクション材料の種類を表16.13.1に示す。「標仕」では特記がなければ、スチールタイプとしている。

なお、その他アルミニウムタイプとファイバーグラスタイプのセクション材を組み合わせたコンビネーションタイプもある。


表16.13.1 セクション材料による区分(JIS A 4715 : 2008)

(b) オーバーヘッドドアは、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位に設置される場合が多い。したがって、耐風圧性能は、一般にJIS A 4715(オーバーヘッドドア構成部材)による強さの区分により特記される。強さによる区分を超える風圧力の場合は16.1.7(a)(1)を参照されたい。

なお、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位に対する風圧力について、(-社) 日本シャッター・ドア協会では、「シャッター・オーバーヘッドドア耐風圧強度計算基準」を使用している。

(c) 開閉方式による区分を表16.13.2に示す。「標仕」では、特記がなければ、バランス式としている。

なお、開口高さが 4mを超えると、バランス式では手動での操作が困難になるのでチェーン式が望ましい。

表16.13.2 開閉方式による区分(JIS A 4715 : 2008)

(d) 収納形式による区分を表16.13.3及び図16.13.1に示す。「標仕」では適用を特記としている。

表16.13.3 収納方式による区分(JIS A 4715 : 2008)


図16.13.1 収納方式による区分(JIS A 4715 : 2008)

(e) 「標仕」では、電動式の場合では16.11.2(h)と同様に、見えない場所から操作するオーバーヘッドドアには、障害物感知装置を設けることとしている。

なお、電動式オーバーヘッドドアは、シャッターより降下速度が速いので、障害物に直接接触する前に停止する光電センサー等を用いた非接触形障害物感知装置とするのが望ましい。

(f) 一般的な各部の名称を図16.13.2に示す。


図16.13.2 各部の名称(JIS A 4715 : 2008)

(g) 開口の幅と高さ

セクション材料及び収納形式により開口の最大幅と最大高さは異なる。「標仕」で想定している数値を表16.13.4及び5に示す。表16.13.4に示すセクション材料別の最大開口幅での耐風圧性は、750Paである。したがって、要求される耐風圧性が大きくなれば、最大開口幅が表16.13.4より小さくなる。

表16.13.4 セクション材料による最大開口幅

表16.13.5 収納形式による最大開口高さ

(h) オーバーヘッドドアについては、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.13.3 材 料

(a) セクション材料による区分は、特記がなければスチールタイプとされている。この場合の鋼板は、JIS A 4715に規定されているJIS G 3302 (溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)又はJIS G 3312(塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)とされており、めっき付着量は、一般的にZ06又はF06を満足するものが使用されている。

(b) セクションに使用するアルミ板は、JIS H 4001(アルミニウム及びアルミニウム合金の焼付け塗装板及び条)とされている。

(c) セクションに使用するアルミニウム形材は、JIS H 4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)とされている。

(d) セクションに使用するファイバーグラス板は、JIS A 5701(ガラス繊維強化ポリエステル波板)とされている。

ファイパーグラス(ガラス繊維強化プラスチック:FRP (Fiberglass Reinforced Plastics))は、強度のあるガラス繊維を強化材とし、不飽和ポリエステル樹脂を用いて成形加工した複合材料である。

(e) ガイドレールは、「標仕」では、特記がない場合、JIS G 3302による溶融亜鉛めっき鋼板で、めっきの付着量Z27を満足するものとされている。

なお、海岸部等の環境下で腐食のおそれがある場合は、ステンレスの使用を検討する。

(f) ワイヤロープは、JIS G 3525(ワイヤロープ)又はJIS G 3535(航空機用ワイヤロープ)とされている。

(g) アルミニウム形材の表面は、JIS H 8602(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)に規定される複合皮膜の性能の種類B以上のものとされている。

16.13.4 形状及び仕上げ

ガイドレール及び支持金物は、溶接部分の補修を除いて塗装は行われていない。また、意匠を考慮した場合でも、ガイドレールの内側はローラーが走行するので、塗装は行われていない。

図16.13.3に一般的な断面を示す。


図16.13.3 ガイドレールの断面の例

16.13.5 工 法

(a) 加工、組立及び取付けは形状、寸法、取合い等を正確に行い、耐風圧性が低下しないように注意する。

(b) JIS A 4715(オーバーヘッドドア構成部材)の抜粋を次に示す。

JIS A 4715:2008

1.適用範囲

この規格は、建物及び工作物に使用するオーバーヘッドドア構成部材(1)(以下、構成部材という。)について規定する。

(1) まだ組み立てていない状態のもの。

なお、組み立てたオーバーヘッドドアを、以下、ドアという。

備考
オーバーヘッドドアとは開口部に対して上下に組み立てられた複数のセクションを天井又は壁に沿ってほぽ水平又は垂直に送り込んで収納するドアをいう。

3. 構成部材の名称(図16.13.2参照)

4. 種 類
4.1 セクション材料による区分(表16.13.1参照)
4.2 強さによる区分 強さによる区分は、次による。
50 風圧力 500Paに耐えるもの。
75 風圧力 750Paに耐えるもの。
100 風圧力 1,000Paに耐えるもの。
125 風圧力 1,250Paに耐えるもの。
4.3 開閉方式による区分(表16.13.2参照)
4.4 収納形式による区分(表16.13.3及び図16.13.1参照)

5. 品質及び機能
5.1 外観
外観は、使用上有害なねじれ、曲がり、さびなどの欠点があってはならない。

5.2 構成部材の品質

5.2.1 セクション
セクションの強度は、9.2に規定する方法で試験を行い、残留たわみは、セクション長さの1/100以下でなければならない。(9.2省略)

5.2.2 ワイヤロープ
ワイヤロープの引張強度は、ワイヤロープ1本にかかるドア重量の1/2に対して、安全率を5以上とする。また、ワイヤロープには変形、ほつれがあってはならない。

5.2.3 シャフト
シャフトは次による。
a) シャフトは、円滑な回転を保持する伸直な形状のものとする。
b) シャフトは、ドア重量を支え、かつ、スプリングによるねじりモーメントに対し十分な強度をもつものとする。

5.2.4 スプリング
スプリングは. ドアの重量及び収納形式に対応した良好なバランスを与える適切なものとする。

5.3 開閉機能
5.3.1 バランス式・チェーン式
バランス式及びチェーン式の開閉機能は、9.3に規定する開閉操作力試験を行い、表1の規定に適合しなければならない。(9.3省略)

表1 開閉方式による操作力

5.3.2 電動式

電動式の開閉機能は、9.3に規定する方法によって開閉試験を行い、次の規定に適合しなければならない。(9.3省略)

a) 開閉は、円滑に作動するものとする。
b) 開閉時の平均速度は、毎分5~20mとする。
c) 開閉中に、任意の位置で停止できるものとする。
d) 開閉の際、上限及び下限において自動的に停止するものとする。
e) 開閉中、押しボタンスイッチを逆方向に操作しても、逆方向に作動しないものとする。
f) 閉動作中、障害物感知装置が作動した場合、ドアは自動的に停止し、又は停止後開動作に転じて自動停止すること。
g) 障害物感知装置が作動したままの状態で停止した場合、又は作動不良の状態になったとき、再度閉信号を受けてもドアは閉動作をしてはならない。ただし、停止後自動的に開動作に転じる機構のものを除く。
h) 障害物感知装置が作動したままの状態で停止し、開信号を受けた場合は、ドアは開動作をしなければならない。
i) 電源遮断時においては、手動による開閉が可能でなければならない。

6. 構 造

6.1 セクション
セクションは、ヒンジによって屈曲可能に結合でき、セクションの上下には相じゃくり部をもつ機構とする。

6.2 スプリング
ねじりコイルばねを使用する。

6.3 ワイヤドラム
ワイヤロープの径に応じた溝付ドラムとする。

6.4 ワイヤロープ
JIS G 3525又はJIS G 3535による。

6.5 ガイドレール
ガイドレールの断面はほぼ溝形で、その内側をローラの回転部が滑らかに移動し、かつ、容易に逸脱しない形状のものとする。

6.6 電動開閉機 電動機の容量及び電源は、表2による。

表2 電動機の容量及び電源

6.7 電装品

電動式ドアにおける電装品は、次による。

a) 制御盤は、押しボタンスイッチ又はリミットスイッチからの信号によってドアの開・閉・停の動作を制御できるものとし、開閉動作中に逆動の押しボタンが押されても、逆動作しない回路とする。

b) 押しボタンスイッチは、押しボタン操作によって制御盤に信号を送り、開・閉・停の動作を操作できるものとする。

c) リミットスイッチは、ドアの開放又は閉鎖の動作を、その上限又は下限の位置で自動的に停止できるものとする。

d) 障害物感知装置は、光電センサなどの非接触形のものが望ましい。

e) 開口部の用途、環境などによって光電センサ以外の障害物感知装置を使用する場合の機能・構造・試験方法については、受渡当事者間の協議による。
f) 押し切り形(2)の押しボタンを使用し、かつ、押しボタン操作をする人がドアの開閉状態の安全を確認できる場合は障害物感知装置の設置を省略してもよい。

(2) 押しボタンを押している間だけドアが作動し、ボタンから手を離すとドアが停止する機構のスイッチ。