22章 舗装工事 6節カラー舗装

建築工事監理指針 22章 舗装工事
6節 カラー舗装
22.6.1 一般事項
(1) ここで対象とするカラー舗装は、加熱系カラー舗装又は常温系カラー舗装を表層に用いた舗装である。加熱系カラー舗装に用いる材料(混合物)には、アスファル卜混合物及び石油樹脂系混合物がある。常温系カラー舗装は、表層の上部にカラーの層を設けるもので、ニート工法及び塗布工法がある。
(2) カラー舗装工事の作業の流れは図22.4.1に準拠する。
22.6.2 舗装の構成仕上り
(1) カラー舗装の種類は、「標仕」では、特記によるとされているが先述したようにカラー舗装には、加熱系カラー舗装と常温系カラー舗装があり、その適用場所、施工規模、敷地形状、要求性能等を考慮して選定される。
(ア) 「標仕」22.6.2(3)において、常温系カラー舗装の下部はアスファルト舗装又はコンクリート舗装とされており、これらは特記仕様書等で特記される。
(イ) カラー舗装の施工に先立って、路盤面の浮石、その他有害物の除去と清掃を行う。
(2) カラー舗装の表層に用いるアスファルト舗装の締固め度、舗装厚さ及び平たん性は、「標仕」22.4.2による。
22.6.3 材 料
(1) カラー舗装に使用する材料は、「標仕」22.6.3によるものとする。
(2) 着色した加熱系混合物に使用する材料には、アスファルト、骨材及び石粉があり、それぞれ22.4.3 (1)、(3)及び(4)による。結合材としてアスファルトを使用しない場合は、石油樹脂が一般に用いられる。
(ア) 顔料には、無機系のものを使用する。
(イ) 「標仕」では、添加する着色骨材又は自然石は、特記によるとされている。着色骨材には、けい石等白色の骨材の表面を人工的に着色したものと、無機顔料を加えて人工的に焼成して発色させた骨材を粉砕したものがある。自然石としては、一般の骨材よりも明色性の高いけい石等がある。これらを表層用アスファルト混合物の骨材として使用する。舗設当初は骨材表面がアスファルト等で被覆されているが、表面のアスファルト等が摩耗すれば着色骨材又は自然石特有の色を呈するようになる。
(3) 常温系カラー舗装のニート工法及び塗布工法について「標仕」では、規定している。
ニート工法に使用する結合材は、エポキシ樹脂とされている。車道部で滑り止め機能をもたせる場合には、「標仕」表22.6.2に示されている硬質骨材(エメリー又は着色磁器質骨材)を使用する。
塗布工法に使用する材料は、アクリル系カラー塗布材と規定している。アクリル系塗布材は、軟質アクリルポリマーをメタクリル酸メチル(MMA)等のモノマーに溶融させた液状樹脂であり、触媒添加により重合を開始させることによって硬化する触媒硬化型の合成樹脂である。一般的に硬化速度が早いので、短時間施工に適している。
22.6.4 配合その他
(1) カラー舗装の配合その他は、「標仕」22.6.4によるものとする。
(2) 「標仕」では、着色した加熱系混合物の結合材としてアスファルトを使用する場合、顔料の添加量は混合物の質量比で5~7%程度とし、容積換算により同量の石粉(フィラー)を減ずると規定している。例えば、表層用アスファルト混合物に5~7%の酸化鉄(Ill)(ベンガラ)を添加すれば赤に、酸化クロムを5~10%添加すれば緑の舗装となる。
(ア) 着色した加熱系混合物の結合材に石油樹脂を使用する場合には、顔料の添加量は特記によるとされている。
(イ) 顔科の着色効果は、顔料の種類や質によって異なり、同一添加量であっても発色の程度が違ってくるため、施工に先立ち、試験練り等により見本を作製して色合を確認することになっている。ただし、軽易な場合は、監督職員の承諾を受けて見本の作製を省略できると規定している。
(ウ) 結合材に石油樹脂を使用する場合、混合物の製造温度が所定より高すぎると変色することがあるため、温度管理に留意する必要がある。
(3) 「標仕」では、ニート工法及び塗布工法の配合その他は、特記によるとされている。この場合も、施工に先立ち、見本を作製して色合を確認する必要があるが、軽易な場合は、監督職員の承諾を受けて省略できるとされている。
22.6.5 施 工
(1) カラー舗装の施工は、「標仕」22.6.5によるものとする。カラー舗装の施工方法の一例を表22.6.1に示す。
表22.6.1 カラー舗装の施工方法の一例
表22.6.1_カラー舗装の施工方法の一例.jpeg
(2) 着色した加熱系混合物の施工は、色むらが生じないよう材料を均ーに混合する。また、混合機械や敷均し機械・器具の汚れにより、色むらが生じる場合があるため、使用する機材類の掃除を十分に行う必要がある。
(ア) 不陸や段差があると水たまりが生じて黒変することがあるため、注意する。
(イ) 混合物の敷均し方法、転圧の方法により、肌目の違いが生じて色むらとなる場合があるため注意する。
(ウ) 「標仕」では、結合材に石油樹脂を使用する場合、アスファルト混合物の製造時の温度によっては変色する場合があるため、温度管理を適切に行うと規定している。
(3) 「標仕」では、ニート工法の施工に当たっては、下地と十分接着させるために、施工に先立ち、下地となる施工基盤面を清掃し、乾燥させると規定している。
(ア) ニート工法に使用するエポキシ樹脂は、車路で1.6kg/m2以上、歩行者用通路で1.4kg/m2以上を散布する。
(イ) 硬質骨材の散布は、エメリーで8kg/m2程度、着色磁器質骨材で6.5kg/m2程度を均ーに散布し、必要に応じて転圧する。
(ウ) エポキシ樹脂は、低温下では硬化不良を起こすことがあるため、気温が 5℃以下の場合は、保温対策、加温対策等適切な措置を講ずる。
(4) 「標仕」では、塗布工法の施工に当たっても、下地と十分接着させるために、施工に先立ち、下地となる施工基盤面を清掃し、乾燥させる必要があると規定している。
気温が高いほど硬化までの時間が早くなるため、施工時の基盤面の温度は40℃以下と規定している。夏期の日中の路面温度は60℃程度まで上昇することから、このような場合は、日中の施工を避けて、午前の早い時間や午後の遅い時間等、路面温度が40℃以下となるような時間帯に施工するとよい。
22.6.6 試 験
(1) カラー舗装の試験は、「標仕」22.6.6によるものとする。
(2) 着色した加熱系混合物の締固め度及び舗装厚さは、22.4.6(1)により、コア抜きをして試験を行う。舗装の平たん性は、22.4.6(2)により散水のうえ目視により確認する。アスファルト量確認のための抽出試験の適用は特記によるが、使用したアスファルトに異常が見られなかった場合には、アスファルト混合所における印字記録をもってアスファルトの使用量を確認するとよい。
(3) 樹脂系混合物、ニート工法及び塗布工法の材科使用量は、空袋により管理する。
(4) 樹脂系混合物、ニート工法及び塗布工法の平たん性は、22.4.6(2)による。
(5) 「標仕」22.4.6(1)(ア) では、「軽易な場合は、監督職員の承諾を受けて、試験を省略することができる。」と規定している。「軽易な場合」の定量的な判断基準はないが、面積的に小さく、供用開始後の人や車の通行量も少ない場合等が該当すると考えられる。

22章 舗装工事 7節 透水性アスファルト舗装

建築工事監理指針 22章 舗装工事
7節 透水性アスファルト舗装
22.7.1 一般事項
ここで対象とする透水性アスファルト舗装は、路盤の上に空隙率の高い多孔質なアスファルト混合物を舗設し、雨水を路床まで浸透させることによって、雨天時の滞水をなくしで快適な歩行性等を確保することを目的とした舗装で、歩行者用通路に適用される。透水性アスファルト舗装は、雨水の地下への還元とともに排水施設の負荷の軽減にも役立つ。
22.7.2 舗装の構成及び仕上り
(1) 透水性アスファルト舗装の構成は、特記によると規定しているが、一般的な構成と厚さの例を図22.7.1に示す。
図22.7.1_透水性アスファルト舗装の構成例.jpeg
図22.7.1 透水性アスファルト舗装の構成例
(2) 表層は、雨天においても適当な空隙により速やかな雨水等の排水とともに、すべり抵抗性と快適な歩行性を確保する層である。
(3) 路盤は、表層を支持するとともに荷重を分散し、かつ、透水能力を有する層である。
(4) フィルター層は、透水性の表層及び路盤を通過した雨水等を円滑に路床面まで浸透させるとともに、路床が軟弱化して舗装が破壊することを防ぐ層である。
22.7.3 材 料
(1) 表層に用いるアスファルト混合物は、開粒度アスファルト混合物とし、使用するスレートアスファルト、砕石及び石粉の品質は「標仕」22.4.3による。
(2) 路盤には、特記により透水性と施工性を考慮してクラッシャラン(C-40等)を使用するとよい。
(3) フィルター層に用いる材料は、特記によるが、「標仕」21.2.1(10)に準ずるものを用いる。
22.7.4 配合その他
配合設計は、マーシャル安定度試験によって行う。室内配合から現場配合の決定までは、22.4.4(4)と同様である。
22.7.5 施 工
(1) フィルター層の施工は、厚さが均等になるように敷き均し、軽いローラ、ブルドーザ又は小型ソイルコンパクタ等で転圧する。
(2) フィルター層の締固め度は、規定していない。
(3) プライムコートは、施工しない。ただし、施工時において雨水浸食等で路盤面の強度低下が懸念される場合には、施工基盤の保護等の観点から高浸透性の乳剤を使用することもある。
22.7.6 試 験
「標仕」では規定していないが、透水性試験を行う場合は、現場透水試験器により次の要領で行うとよい(図22.7.2参照)。
図22.7.2_現場透水量試験器(例).jpg
図22.7.2 現場透水量試験器(例)(舗装調査・試験法便覧より)
(ア) 測定路面の準備
測定に先立ち、測定する舗装路面のごみ等を除去する。
(イ) 測定器の設置
現場透水量試験器底板と舗装路面の隙聞からの漏水を防止するために、透水面積を確保しつつ、水漏れ防止材を底板下部又は外周に付着させる。
次に、現場透水量試験器を圧着させ、水漏れ防止材を隙間がないように整え安定させる。
(ウ) 測定開始位置と終了位置の確認
現場透水量の測定に先立ち、水頭600mmになる測定開始位置X1と、そこから400mLを流下させた測定終了位置 X2を確認しておく。
(エ) 注水
バルプを閉じて、水をシリンダ上端付近まで注入する。
(オ) 測定
バルプを一気に全開し、シリンダ内の水位がX1からX2まで低下する経過時間(秒)をストップウォッチで0.01秒単位まで測定し記録する(図22.7.3参照)。
(カ) (エ) (オ) の作業を合計4回繰り返す。
なお、各測定は1分間程度の間隔をあけて実施する。
図22.7.3_記録紙の例.jpeg
図22.7.3 記録紙の例

22章 舗装工事 8節 ブロック系舗装

建築工事監理指針 22章 舗装工事
8節 ブロック系舗装
22.8.1 一般事項
(1) この節は、コンクリート平板舗装、インターロッキングブロック舗装、舗石舗装を対象としているが、これ以外のブロック舗装として、舗石の代わりに、れんがやタイルを使用した舗装、間伐材等を原料とした木塊舗装等がある。
(2) ブロックの材料には、着色したブロックや自然石の風合いを生かした舗石があり、これらは、特に景観に対する配慮が必要な場所に採用されている。
(3) ブロック系舗装の路盤は、クラッシャランなどの粒状材料を締め固めたものがほとんどであり、3節[路盤]による。
22.8.2 舗装の構成及び仕上り
(1) 舗装構成の例を図22.8.1に示す。
なお、(  )内は車路での厚さである。
図22.8.1_ブロック系舗装の舗装構成例(コンクリート平板舗装).jpg 図22.8.1_ブロック系舗装の舗装構成例(インターロッキングブロック舗装).jpg
図22.8.1_ブロック系舗装の舗装構成例(舗装石などの舗装).jpg
図22.8.1 ブロック系舗装の舗装構成例
(2) ブロック系舗装の構成及び厚さは、「標仕」表22.8.1による。
22.8.3 材 料
(1) コンクリート平板
JIS A 5371(プレキャスト無筋コンクリート製品)附属書B(規定)[舗装・境界ブロック類]の推奨仕様B-1に規定する、平板の形状及び寸法を、表22.8.1に示す。2016年の改正により、要求性能が曲げ強度ではなく、試験による曲げひび割れ荷重によって求める「曲げひび割れ耐力」に変更された。
(2) インターロッキングブロック
(ア) JIS A 5371附属書B(規定)の推奨仕様B-3に規定するインターロッキングブロックの種類、曲げ強度等を、表22.8.2に示す。2016年の改正により、インターロッキングブロックの性能は、コンクリートの曲げ強度又は圧縮強度を代用特性とし、圧縮強度の値が定められた。
(イ) インターロッキングブロックは、種々組合せ可能なブロックで、かみ合せ効果も備えたものを使用する。
(ウ) インターロッキングブロックには、形状が長方形、小正方形、正方形、六角形、八角形や多角形のものがあり、材質にはコンクリート製のほか、れんが製のものもある。
(エ) インターロッキングブロックの幅及び長さは、次の式を満足しなければならない。
As/At ≧ 0.65
As:ブロックの全側面積
At :ブロックの上面積
(オ) インターロッキングブロックには、厚さ60mmのものと80mmのものがあるが、「標仕」22.8.3(2)に示すとおり、特記がなければ、車路では、曲げ強度5.0N/mm2、厚さ80mmの普通ブロックを使用し、歩行者用通路では、曲げ強度3.0N/mm2、厚さ60mmの普通ブロックを使用する。
(カ) インターロッキングブロックは、ブロックが移動し目地間隔が小さくなると角欠けの原因となることから、車路では、目地キープ付きのブロックを使用するとよい。
表22.8.1 平板の種類及び性能(JIS A 5371 : 2016を基に作成)
表22.8.1_平板の種類及び性能(JIS A 5371).jpg
表22.8.2 インターロッキングブロックの種類及び性能(JIS A 5371 : 2016を基に作成)
表22.8.2_インターロッキングブロックの種類及び性能(JIS A 5371).jpg
(3) 舗石
「標仕」では、舗石に用いる石材は、寸法の不正確、そり、き裂、むら、くされ、欠け、へこみのほとんどないもので、荷口のそろったものとし、種類、形状、寸法及び厚さは特記によるとされているが、一般的には自然石を小割りにしたもので、1辺90mm程度の立方体のものや、厚さ20mm程度で1辺が100mm程度の正方形のものを使用する例が多い。
(4) クッション材
クッション材は、最近では、多くの場合に天然砂が使用され、「敷砂」とも呼ばれる。舗装材にかかる荷重を路盤に伝達する重要な役割を担い、均ーに敷均しや転圧ができ、排水性が良く、水の浸透による性能が変化しない性能が求められるため、良質で微粒分の少ない天然砂を用いる。空練りモルタルを用いる場合も、砂は天然砂を用い、その配合は容積比でセメント1:砂 3とする。「標仕」表22.8.2に示される品質(最大粒径.粗粒率等)は、天然砂で「荒目砂」とよばれているものに相当すると考えても良い。
(5) 目地材
目地材は、かみ合わせ効果を発揮させる砂が用いられる場合と、固定することを目的としてモルタルを用いられる場合がある。コンクリート平板舗装の場合には、状況に合わせていずれかが用いられるが、インターロッキングブロック舗装では砂を、舗石舗装ではモルタルを用いることが原則である。砂を用いる場合には、目地への充填性を考慮して、良質の天然砂を乾燥状態で用いる。「標仕」表22.8.3に示される品質の乾燥天然砂が入手しにくい場合は、乾燥珪砂を使用する場合もある。モルタルを用いる場合の配合は、容積比でセメント1:砂 2とする。
22.8.4 施 工
ブロック系舗装では、仕上げ材がコンクリート平板、インターロッキングブロック、舗石等と違う場合でも、施工手順の中で留意しなければならない共通項目も多く、次のような事項が重要である。
(ア) 施工共通留意項目
(a) 不同沈下などによる舗装材間の段差が生じないように、路盤の転圧や仕上がり状態(浮石や小石の除去も含め)、付帯設備等の位置や高さ、横断勾配等を確認する。
(b) クッション材は、転圧による沈下を見込んだ量の厚さで、均ーな敷均しが極めて重要である。クッション材の厚さを変えることで路面勾配を設けてはならない。
(c) 縁石等を基準にして水糸を張り、割付け図に基づき、目地ラインや舗装材間の段差等に注意して敷き並べる。付帯設備や縁石との端部に専用ブロックを用いない場合は、形状に合わせて正確な切断加工を行い、見え掛かりよく敷き込むか、現場打ちコンクリートで仕上げる。
(d) 舗装材を敷き込んだ後に、コンパクタ等の適切な機具を用いて転圧を行い平たん性を確保する。
(e) 砂目地で施工する場合は、転圧や砂の不足により不具合が発生することがあるため、目地砂を密実に充填し、再度転圧を行い、目地砂が不足している個所があれば再充填を行う。余分な砂は、ほうきなどを用いて取り除く。
(f) モルタル目地で施工する場合は、目地にモルタルを確実に充填した後、目地ごてにより仕上げを行う。モルタルを充填した後の転圧は行わない。
(g) 基礎コンクリート上に舗設する場合には、基礎を十分清掃し、散水して基礎コンクリートとクッション層モルタルのなじみをよくする。
(h) 付帯設備や縁石回りにおける納まりで、エンドブロックを使用できない場合には、寸法精度が高く、正確で、丁寧なカッティング処理を行うか、現場打ちコンクリートを打ち込む。
(イ) コンクリート平板舗装
(a) クッション材に砂を用いる場合は、3 ~5mmの目地幅を設け、コンクリート平板を定着させた後に砂を散布し、目地に充填する。
(b) クッション材に空練りモルタルを用い、目地にモルタルを使用する場合は、 5 ~10mmの目地幅を設け、コンクリート平板を定着させた後にモルタルを目地に充填し目地ごてで押さえる。
(c) 端部は、縁石の形状に合わせて、コンクリート平板の切り落としや、モルタルを充填するなどの処理を行い、見え掛かり良く仕上げる。
(ウ) インターロッキングブロック舗装
(a) クッション材及び目地材に砂を使用するインターロッキングブロック舗装では、荷重伝達の観点からも舗装面端部の拘束が重要であり、端部にはコンクリート製の縁石や境界ブロック等を設ける。
(b) インターロッキングブロックの割付けは、歩行者用通路の場合にはストレッチャボンドが望ましく、車路の場合にはヘリンボンボンドを原則とする(図22.8.2参照)。
図22.8.2_インターロッキングブロックの割付けの例.jpg
図22.8.2 インターロッキングブロックの割付けの例
(c) 端部に専用ブロックを用いない場合の工法は、(イ)(c) に準じて行う。
(d) 「標仕」では、砂の流出が懸念される急勾配の箇所や化粧桝の蓋などにインターロッキングブロックを敷設する場合は、空練りモルタルやモルタルを使用すると規定している。
(e) インターロッキングブロックの敷設後、一次転圧で平たん性を確保のうえ、目地詰めを行い、二次転圧でブロックの表面までさらに密実に目地砂を充填させる。
(エ) 舗石舗装
(a) 基層のアスファルト混合物層の施工は、4節[アスファルト舗装]、コンクリート版の施工は、5節[コンクリート舗装]による。
(b) 基層のアスファルト混合物層やコンクリート版と、空練りモルタルで造るクッション層とのなじみを良くするため、基層上部をよく清掃し、散水を行った後にクッション層を施工する。
22.8.5 試 験
「標仕」では、ブロック系舗装の平たん性は目視により確認すると規定している。特記がなければ歩行に支障となる段差がないものとし、コンクリート平板間、インターロッキングブロック間及び舗石間の段差は3mm以内と規定している。

22章 舗装工事 9節 砂利敷き

建築工事監理指針 22章 舗装工事
9節 砂利敷き
22.9.1 一般事項
ここで対象とする砂利敷きは、構内に砂利や砕石を敷き詰めたもので、非常に簡易な舗装構造である。したがって、人の通行が可能な程度の支持力しかないため、車両の通行が予想される場所には適さない。また、路面の変形や石の飛散等の破損が始まると、加速的に破損が進行するので、異常があった場合には、迅速に補修しなければならない。
22.9.2 材 料
(1) 材料は、「標仕」表22.9.1に規定されている砕石等又は砂利を使用する。種別は特記によるが、特記がなければ、通路はA種、建物周囲その他はB種と規定している。
(2) 特に景観を重視する場合には、表面を覆う石の色や形状を吟味して特記により指定する場合もある。
22.9.3 施 工
「標仕」に定められている砂利敷きの種別の概要を、次に示す。
(ア) A種の場合
(a) 路床の障害物及び不良土の処理は、「標仕」22.2.4によって行い、転圧機器を用いて十分に締め固める。
(b) 砂利敷きの構成を図22.9.1に示す。
図22.9.1_A種の砂利敷き.jpeg
図22.9.1 A種の砂利敷き
(c) 砕石ダストとは、砕石をつくる場合に生じる粒径2.36mm以下の細かいものをいう。
(イ) B種の場合
(a) 下地の不良土等の処理は、「標仕」22.2.4によって行う。
(b) 砂利敷きの構成を図22.9.2に示す。
図22.9.2_B種の砂利敷き.jpeg
図22.9.2 B種の砂利敷き

22章 舗装工事 10節 補修

建築工事監理指針 22章 舗装工事
10節 補 修
22.10.1 補 修
補修に関しては、「標仕」では特に規定していないが、参考までに留意点等を次に記述する。
(ア) 構内舗装は、一般の車道舗装に比較して薄い舗装構造となっているので、破損が始まると進行が速い。したがって、舗装の状態について定期的に調査を行うとともに、異常が発見されたら迅述な対策をとる必要がある。
(イ) 構内舗装の主な補修工法は次のとおりである。
(a) パッチング
舗装路面に生じたポットホール、局部的なひび割れ破損部分等にアスファル卜混合物等を充填する工法である。施工に先立ち、舗装の破損が及んでいる範囲を特定し、影響範囲のアスファルト混合物層あるいはセメントコンクリート版を撤去してから、アスファルト混合物を充填する。パッチング用の材料として、常温アスファルト混合物及び加熱アスファルト混合物がある。パッチングはあくまでも応急的な措置であり、将来的には、加熱アスファルト混合物による補修や、打換え等による補修を検討する必要がある。
(b) クラックシール
舗装にひび割れが発生すると、そこから雨水が浸入し、路盤に悪影響を与える。それを防ぐためには、ひび割れが発生したら迅速に、アスファルト系の材料等をひび割れに充填して、ひび割れをふさぐ必要がある。
(c) 局部打換え
破損が生じている部分について、表層、基層又は路盤から局部的に打ち換える工法である。
(d) オーバーレイ
既設舗装の上に、厚さ30~50mm程度のアスファルト混合物層を施工する工法である。路面の高さが上がるので、隣接区間との取付けや、排水に支障を来さないよう注意する必要がある。
(e) 表層打換え
破損が広い範囲に広がっている場合で、基層又は路盤以下に問題を生じていないときに、表層のアスファルト混合物層又はセメントコンクリート版のみの打換えを行う工法である。
(f) 打換え
破損が広い範囲に広がっている場合で、路盤にも問題が生じている場合に、路床から上側を全て又は路盤の一部までを打ち換える工法である。
(g) 段差修正
舗装の下を構造物が横断している場合等に、舗装路面が不同沈下を起こし路面に段差を生じることがある。段差が小さい場合には、加熱あるいは常温アスファルト混合物で段差のすり付けを行う。段差が著しい場合には、局部的あるいは全面的に路盤から舗装の打換えを行う。

22章 舗装工事 11節 「標仕」以外の舗装

建築工事監理指針 22章 舗装工事
11節 「標仕」以外の舗装
この節では、国土交通省大臣官房官庁営繕部整備課監修「構内舗装・排水設計基準及び参考資料 平成31年版」表2.2.1で示された舗装の種類で、「標仕」に規定していない、いくつかの舗装について概説する。
22.11.1 半たわみ性舗装
(1) 半たわみ性舗装は、空隙率の大きな開粒度タイプの半たわみ性舗装用アスファル卜混合物に、浸透用セメントミルクを浸透させたもので、アスファルト舗装のたわみ性とコンクリート舗装の剛性をあわせもった、耐流動性や明色性、耐油性等に優れた舗装である。半たわみ性舗装の舗装構成例を、図22.11.1に示す。
図22.11.1_半たわみ性舗装の舗装構成例.jpeg
図22.11.1 半たわみ性舗装の舗装構成例
(2) 半たわみ性舗装は、一般的には、大型車の駐車場や停車帯、油類などを扱う箇所の舗装等で用いられている。
(3) 半たわみ性舗装用アスファルト混合物の粒度範囲の例を表22.11.1に、マーシャル安定度試験に対する性状の例を、表22.11.2に示す。
表22.11.1 半たわみ性舗装用アスファルト混合物の粒度範囲の例(舗装施工便覧より)
表22.11.1_半たわみ性舗装用アスファルト混合物の粒度範囲の例.jpg
表22.11.2 マーシャル安定度試験に対する性状の例(舗装施工便覧より)
表22.11.2_マーシャル安定度試験に対する性状の例.jpg
(4) 浸透用セメントミルクは、施工時の流動性と硬化後に所定の強度が得られるものとする。浸透用セメントミルクの性状の例を、表22.11.3に示す。
表22.11.3 セメントミルクの性状の例(舗装施工便覧より)
表22.11.3_セメントミルクの性状の例.jpg
(5) 半たわみ性舗装の詳細は、(公社)日本道路協会「舗装施工便屁(平成18年版)」を参照するとよい。
22.11.2 保水性舗装
(1) 保水性舗装は、保水機能を有する表層に、保水された水分が蒸発する際の気化熱により路面温度の上昇と密熱を抑制するもので、アスファルト舗装系保水性舗装やブロック舗装系保水性舗装などの種類がある。
(2) 保水性舗装は、ヒートアイランド対策や夏期の快適な歩行空間の確保などを目的に、車路や駐車場、歩行者用通路の舗装に用いられている。
(3) アスファルト舗装系保水性舗装は、開粒度タイプのアスファルト混合物の空隙に保水・吸水性能を有する保水材を充填したものである。アスファルト舗装系保水性舗装の舗装構成例を、図22.11.2に示す。
図22.11.2_アスファルト舗装系保水性舗装の舗装構成例.jpeg
図22.11.2 アスファルト舗装系保水性舗装の舗装構成例(舗装施工便覧より)
(4) ブロック舗装系保水性舗装は、保水・吸水性能を備えたインターロッキングブロックなどの舗装用ブロックを用いたもので、歩行者用通路の舗装に適用されていることが多い。
22.11.3 遮熱性舗装
(1) 遮熱性舗装は、舗装表面に到達する日射エネルギーのうち、近赤外線を再帰性を考慮し、高効率で反射、舗装への蓄熱を防ぐことによって路面温度の上昇を抑制する舗装である。
(2) 遮熱性舗装も保水性舗装同様、ヒートアイランド対策や夏期の快適な歩行空間の確保などを目的に、車路や駐車場、歩行者用通路の舗装に用いられている。
(3) 遮熱性舗装には、舗装表面に遮熱性塗料を吹きつける、あるいは塗布する。遮熱性舗装の舗装構成例を、図22.11.3に示す。
図22.11.3_遮熱性舗装の舗装構成例.jpeg
図22.11.3 遮熱性舗装の舗装構成例(路面温度上昇抑制舗装研究会ホームベージより)
22.11.4 弾性舗装
(1) 弾性舗装は、アスファルト舗装の表面に弾力性のある弾性舗装材料を15~20mmの厚さで舗設するもので、主に衝撃吸収性を期待する歩行者系通路の舗装に用いられる。図22.11.4に弾性舗装の舗装構成例を示す。
図22.11.4_弾性舗装の舗装構成例.jpeg
図22.11.4 弾性舗装の舗装構成例
(2) 弾性舗装材料には、樹脂バインダーとゴムチップを混合したものが用いられ、ゴムチップにはファイバータイプとチップタイプがある。樹脂バインダーには、一般的にウレタン樹脂が用いられている。
(3) 弾性舗装材料には、ゴムチップをウレタン樹脂などで固めたブロック製品もある。

22章 舗装工事 12節 用語の説明

建築工事監理指針 22章 舗装工事
12節 用語の説明
22.12.1 用語の説明
・設計CBR
アスファルトの舗装の厚さを決定する場合に用いる路床の支持力をいう。路床土の状態が延長方向にほぼ一様な区間で、いくつかの地点の路床の深さ1mの合成 CBR(地点のCBR)から、それらを代表するように決めたもの。
・修正CBR
路盤材料の強さを表すもので、JIS A 1211(CBR試験方法)に示す方法に準じて、 3層に分けて各層92回突き固めたときの最大乾燥密度に対する所要の締固め度(通常は最大乾燥密度の95%)に相当するCBR。
・合成CBR
路床が、深さ方向に巽なるいくつかの層をなしている場合に、各層のCBRを用いて算術式から求まる値。
・締固め試験
土や路盤材料等の締固め特性を調べる試験。含水比を変化させて締固めを行うと、乾燥密度の最も高い含水比が特定される。この含水比を最適含水比といい、このときの密度を最大乾燥密度という。
・理論最大凍結深さ
凍上を起こしにくい均ーな粗粒材料からなる地盤の、最近10年間に生じた最大の凍結深さをいう。凍上対策工法を検討する場合の基準となる。
・凍結指数
0℃以下の気温と日数との積を年間を通じて累計した値。
・等値換算係数
舗装を構成するある層の厚さ1cmが表層、基層用加熱アスファルト混合物の何cmに相当するかを示す値。
・プルーフローリング
路床、路盤の締固めが適切かどうか、不良箇所がないかどうかを調べるため、施工時に用いた転圧構成と同等以上の締固め効果をもっローラやトラック等で締固め終了面を数回走行し、たわみ量をチェックする試験。
・瀝青材料
瀝青を主成分とする材料。瀝青とは、二硫化炭素に溶ける炭化水素の混合物で、常温で固体又は半固体のものである。道路用瀝青材料としては、アスファルトやアスファルト乳剤等がある。
・石油アスファルト
原油を蒸留して軽質分を除去して得られる瀝青物質であり、製造の方法によってストレートアスファルトとブローンアスファルトに分けられる。舗装用にはJIS K 2207(石油アスファルト)に規定するストレートアスファルトが用いられる。
・石油アスファルト乳剤
石油アスファルトを乳化剤、安定剤を含む水中に微粒子として分散させて液状としたもの。これにはカチオン系乳剤とアニオン系乳剤とがあり、前者のアスファル卜粒子はプラスに、後者のアスファルト粒子はマイナスに帯電している。
・ポリマー改質アスファルト
ポリマー改質アスファルトは、ゴムや熱可製性エラストマーを添加し、石油アスファルトの性状を改善したもの。
・フィラー(石粉)
75μmふるいを通過する鉱物質粉末。通常、石灰岩や火成岩を粉末にした石粉等がこれに相当する。
・セメント安定処理工法
クラッシャラン又は現地材料に、必要に応じて補足材料を加え、数%のセメントを添加混合し、最適含水比付近で締め固めて安定処理する工法。セメント量は一軸圧縮試験によって決めるが、一般的に、アスファルト舗装の上層路盤で一軸圧縮強さ2.9MPaの場合、セメント量は3~5%程度である。
・石灰安定処理工法
路床土等に消石灰又は生石灰を加えて、スタビライザ等を用いて混合する安定処理工法。軟弱な路床土の安定処理に用いるほか、粘土分を含む砂利、山砂等を骨材に用いて中央プラントで混合したものは路盤にも用いる。
・瀝青安定処理工法
現地産材料又はこれに補足材料を加えたものに、アスファルト等を混合して路盤を築造する工法。常温混合式と加熱混合式、現場混合式とプラント混合式があるが、現在では、表層及び基層用アスファルト混合物と同様の材料、方法による、加熱のプラント混合式がほとんどである。
・プライムコート
粒状材料等による路盤等の防水性を高め、その上に舗設するアスファルト混合物層とのなじみを良くするために、路盤上に瀝青材料を散布すること。
・密粒度アスファルト混合物
粗骨材、細骨材、フィラー及びアスファルトの加熱混合物で、合成粒度における 2.36mmふるい通過分が35~50%のもの。
・細粒度アスファルト混合物
粗骨材、細骨材、フィラー及びアスファルトの加熱混合物で、合成粒度における 2.36mmふるい通過分が50~80%のもの。
・細粒度ギャップアスファルト混合物
粗骨材、細骨材、フィラー及びアスファルトの加熱混合物で、合成粒度における 2.36mmふるい通過分が45~65%のもので、かつ、600μmふるい通過分を40~60%としてギャップ性をもたせたもの。
・開粒度アスファルト混合物
粗骨材、細骨材、フィラー及びアスファルトからなる加熱アスファルト混合物で、空隙率の大きな混合物の総称。狭義では、合成粒度における2.36mmふるい通過分 が15~30%の範囲で、マーシャル安定度試験により配合設計を行ったものを指す。この混合物の路面は極めて粗く、すべり止め舗装や歩行者用通路の透水性舗装などに用いられる。
・室内配合
仕様配合に基づき、使用予定の材料を用いて室内試験等によって求めた配合。
・現場配合
室内配合に基づき、使用材料及び機械等を考慮して最終的に決定した実際に用いる配合。実施配合ともいう。
・混合温度
アスファルトプラントで混合するとき、ミキサより排出されたときの混合物の温度。
・締固め回数(転圧回数)
ある点をローラが通過した回数。
・初期養生
表面仕上げ終了に引き続き、コンクリート版の表面を荒らさないで、養生作業ができる程度にコンクリートが硬化するまでの間に実施する養生。
・後期養生
初期養生に引き続き、コンクリートの硬化を十分行わせるために、水分の蒸発を防ぐ養生若しくは水の補給をする養生。
・粗面仕上げ
ほうきやはけ等でコンクリート表面を粗面にする仕上げ。
・注入目地材
雨水、小石等が目地に入るのを防ぐために、目地の上部に注入して詰める材料。
・透水性舗装
表層、路盤等に透水性を有した材料を用いて、雨水を路盤以下へ浸透させる機能をもつ舗装。
参考文献
参考文献.jpeg

23章 植栽及び屋上緑化工事 1節 共通事項

23章 植栽及び屋上緑化工事

1節 共通事項
23.1.1 一般事項
(1) 本章では、植栽工事の主要材料となる樹木を中心に、芝や地被等の植物材料の植付け及び移植と、それを養生管理していくために十分な植栽基盤の整備を対象としている。
(2) 作業の流れを図23.1.1に示す。
図23.1.1_植栽工事の作業の流れ.jpeg
図23.1.1 植栽工事の作業の流れ
(3) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工事概要
② 計画工程表
③ 現場組織表
④ 安全管理
主要資材(生産地等)
施工方法(主要機械、仮設、運搬、養生、工事用地等を含む)
作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
⑧ 緊急時の体制及び対応
⑨ 交通管理
⑩ 環境対策
⑪ 現場作業環境の整備
⑫ 再生資源の利用の促進と建設副産物の適正処理方法
23.1.2 基本要求品質
(1) 植栽工事に用いる材料には、植込み用土、樹木、地被植物、切芝や種子、肥料等があるが、大部分が植物等の天然素材であり、また、地域的な条件もあり、一律に品質基準を設定することが困難な場合が多い。
「標仕」では、「植込み用土は、客土又は現場発生土の良質土」としているが、良質土の基準は、樹木の活着と正常な生育に適しているか否かを総合的に判断すればよく、特記されている場合を除き、土壌試験等により確認することを求めているものではない。
また、現場発生土が植物の生育等に適さない場合は、「標仕」1.1.8による協議を行い、設計変更等により適切に処置する必要がある。
なお、土壌が植物の生育等に適するか否かの判断に当たっては、(-社)日本造園建設業協会認定「植栽基盤診断士」に相談するとよい。
(2) 樹木、支柱等については、「標仕」23.3.2で品質基準が定められているため、これに適合するものを使用する。
「形姿が良い」とは、客観的な基準を設けることが困難であるが、建物との調和を考慮し、必要に応じて設計担当者と打合せを行い、形状等を定めるとよい。また、「有害な傷がないこと」とは、枯死又は枝損傷の原因となるような病害虫による被害や傷がないことを求めているものである。自然に治癒する程度の傷であれば、要求品質を満たしていると見なすことができる。
なお、樹木の品質寸法規格基準等については、(-財)日本緑化センター「公共用緑化樹木等品質寸法規格基準(案)の解説」を参考にするとよい。
(3) 「標仕」の規定にある「新植の樹木等は、活着するよう育成したものであること」とは、工事が完成した状態における樹木等の生育状態についての要求事項であり、生育良好で、病虫害のない樹木等を、適切な工法で植栽した場合には、この要求を満たしているものと判断してよい。
23.1.3 植栽地の確認等
(1) 植栽基盤の確認
「標仕」では、枯死又は生育不良の第一に挙げられる排水性(透水性)と土壌硬度については、必須確認事項としている。同一敷地内でも土壌条件が異なることがあるため、異なる条件毎に調査が必要である。特に、樹木の有効土層及びその下層地盤が、地山の切土であるか、盛土で重機による転圧をしているか、地耐力向上のための地盤改良を行っている場合には、透水性不良や土壌の高硬度がみられることがあるため、調査が必要である。加えて、コンクリート又は鋼製の植え桝や人工地盤上など、下層に不透水の構造物がある場合は、透水性不良がみられることがあるため、調査が必要である。
下層地盤の排水性が悪い場合は、暗きょ排水を行うものとし、流末処理の方法については、現地の状況を十分把握し、先行の排水工事と調整を行う。暗きょ排水の設置が困難な場合は、植栽地部分を盛り上げた地盤とする場合もある。
土壌が硬い場合は、深耕(粗起し)や普通耕等によって土層を改良する。
土性については、必須確認事項ではないが、指頭法(表23.2.4参照)により容易に判定ができ、透水性や保水性を判定するうえでの参考になることから、確認したほうがよい。
土壌の水素イオン濃度指数(pH)の試験については、「標仕」では、特記によると規定している。強アルカリ土壌の出現が懸念される建染物の解体跡地や強酸性土壌が懸念される土丹や酸性硫酸塩土壌が出現する地域では、確認を行ったほうがよい。
また、電気伝導度(EC)試験についても「標仕」では、特記によると規定している。塩類障害が懸念される海浜埋立地では、電気伝導度(EC)を指標とした塩分濃度の調査.確認を行ったほうがよい。
試験の結果が不良の場合は、監督職員と協議する。
(2) その他の確認事項
生き物である植物を取り扱う植栽工事は、植栽基盤の確認のほか、植栽の時期や植栽地の気象・日照条件と植物との適合性等について確認する必要がある。植物の生育に支障となるおそれがある場合は、「標仕」1.1.8による協議を行う。
なお、植栽工事は、全体工程の終盤に施工することが多く、協議は設計変更のタイミングを失しないよう、できる限り早い時期に行う。
協議又は検討事項としては、次のようなものがある。
(a) 植栽時期の配慮
植物は適期に植栽することが望ましいが、工程上、不適期となる場合や他工事の影響で適期に植栽できない場合は、受注者等と工程調整や養生対策の方法等について協議する。
なお、植栽(移植)の適期については、表23.1.1に示す。
(b) 環境圧に対する配慮
植栽地の環境圧としては、植栽基盤条件のほか、立地・気象・日照・生育空問条件等に由来するものがある。
1) 立地・気象条件が不適合の場合
計画樹種が立地条件(潮風害、強いビル風等)や気象条件(気温、降雨量等)に合わない場合は、工法の見直しや樹種の変更について受注者等と協議する。
2) 日照・生育空間等の局地的な不適合の場合
景観上の設計意図を考慮したうえで、植付け位置の変更等について設計担当者と打合せを行う。
(c) 地下埋設物等による制約
地下埋設物や、地下構造物が支障となる場合は、設計変更の必要性等について協艤を行う。
いずれも植付け位置の若干の変更で済む軽微な場合から、植栽そのものの可否を検討しなければならない場合まで様々である。特に地下埋設物の場合は、樹木の生長への障害だけではなく、樹木の生長に伴う構造物自体への影響も考慮しなければならない。
表23.1.1 造園樹木、芝等の移植適期概見表(東京地方)
表23.1.1_造園樹木,芝等の移植適期概見表(東京地方).jpeg
(d) 都市緑化で出現する主な土壌の不良要因と植栽上の間題点を、表23.1.2に示す。
表23.1.2 都市緑化で出現する主な土壌の不良要因と植栽上の問題点
(公布と対策 1986年12月臨時増刊 長谷川秀三「土壌改良材」より:一部改編)
表23.1.2_ 都市緑化で出現する主な土壌の不良要因と植栽土の問題点.jpg

23章 植栽及び屋上緑化工事 2節 植栽基盤

23章 植栽及び屋上緑化工事
2節 植栽基盤
23.2.1 一般事項
植栽基盤の概念を次に示す。
(ア) 建築物においては、上部構造物の安全性確保のため、基礎工事が必須の条件であると同様に、植栽工事においても植物が正常に生育するための土層の整備が必要不可欠な条件となる。
(イ) 植栽基盤とは、植物の根が支障なく伸長して、水分や養分を吸収することのできる、ある程度以上の広がりと厚さがある土層(有効土層)及び余剰水を排水できる下層地盤(排水層)のことをいう。
なお、「ある程度以上の広がり」を規定することは難しいが、理論的な目安としては、植栽された植物が目標とする大きさまで生長するのに支障のない広さということである。
また、植栽基盤は自然土壌に限定されず、人工土壌によって造成される場合もありうる。
(ウ) 植物が正常に育つために、必要な植栽基盤の条件を次に示す(図23.2.1参照)。
(a) 物理的条件
 ① 透水性が良好であり水が滞水しないこと。
 ② 適度な硬度であること。
 ③ 適度の保水性があること。
 ④ 余剰水を排水できること。
(b) 化学的条件
 ① 植物の生育に障害を及ぼす有害物質を含まないこと。
 ② 水素イオン濃度指数(pH)が適当であること。
 ③ 適度の養分を含んでいること。
図23.2.1_植物が正常に育つために必要な植栽基盤の条件.jpg
図23.2.1 植物が正常に育つために必要な植栽基盤の条件
23.2.2 植栽基盤一般
(1) 土壌には、黒土、真砂土、山砂等の多くの種類がある。植栽地の地盤は、土壌の種類、立地条件、造成による土壌構造の変化等によって、それぞれに物理性や化学性が異なることから、対象地ごとに整備工法を決定する必要がある。このため、「標仕」では、植栽基盤整備工法の適用は特記によるとされている。「芝及び地被類の植栽の場合は、植栽基盤整備を行う」とされているのは、特別な理由がない限り、「地ごしらえ」の一環として表土の耕うんを行うためである。
樹木植栽においては、特記の有無にかかわらず、「標仕」23.1.3(1)に従って植栽地の確認を行い、(3)に示す物理性及び化学性の判断基準によって植栽基盤としての適合性を判断し、問題がある場合は、「標仕」23.1.3(3)に従って処理するものとする。
(2) 有効土層として整備する面積及び厚さは、特記による。一般的には樹木等に応じた有効土層厚は、「標仕」表23.2.1のとおりであり、計画時の目標樹高により決定する。
なお、有効土層の厚さの基準は、設計で指示された地盤高からの深さで示す。設計地盤高と現地盤高が大きく異なる場合については、設計変更の必要性等について協議を行う。
植栽基盤の整備を行ううえで、有効土層の全てを、森林の上層土壌のように有機物や養分に富む膨軟な土壌とすることが望ましいが、有効土層の上部は植物の根が効率よく水分や養分を吸収できるように、下部は透水性が良く根の伸長に支障をきたさない土層に整備するのがよい。どちらも実用性、経済性から物理性の改良に重点を置く。
すなわち、有効土層の上部は細土で養分や腐植を十分含んだ軟らかい土層で、植物が効率良く水分や養分を吸収するための根(吸収根)の発達が盛んになるように、下部は、透水性が良く根(支持根)の伸長に支障を来さない土層に整備するのがよい (図23.2.2参照)。
図23.2.2_植栽基盤の構成.jpeg
      図23.2.2 植栽基盤の構成
植栽基盤の面積は、生育目標樹高に生長するだけの広がりを確保するということになるが、植栽地の条件に大きく左右されることから、一概に規定することはできない。独立して植栽する場合の1本当たりの植栽基盤の基準面積の目安を、表23.2.1に示す。
なお、埋設物等の障害物があり作業上整備することが困難な場合は、施工面積から除く。
表23.2.1 植栽基盤の整備基準の目安
表23.2.1_植栽基盤の整備基準の目安.jpeg
(3) 「標仕」では、雨水を排水するための暗きょや縦穴排水等を設置する場合は、特記によると規定している。
(ア) 排水工法
透水性試験において、透水性の悪いことが確認された場合は、有効土層の底部まで排水できるよう対策を講じる必要がある。
排水工法には、次のような工法がある。
① 暗きょ排水
暗きょ排水は、透水管及び透水材等を用い、地表面及び地中の雨水を排水できる場所まで導くことにより排水処理を行うものである。
図23.2.3_暗きょ排水概念図.jpg
図23.2.3 暗きょ排水概念図
図23.2.4_暗きょ管敷設平面図.jpeg
図23.2.4 暗きょ管敷設平面図
②開きょ排水
開きょ排水は、プレキャストU型側溝の使用を原則とするが、景観に考慮した側溝として、石張り側溝や芝張り側溝等がある。
図23.2.5_プレキャストU型側溝.jpeg
図23.2.5 プレキャストU型側溝
③ 排水層
排水層は、下部に部分的な不透水層を有する地盤に対して砕石又は黒曜石パーライト等にて排水層を設け、雨水を分散させ透水性のある部分から下層地盤に浸透させることにより排水させるものである。
図23.2.6_排水層概念図.jpeg
図23.2.6 排水層概念図
④ 縦穴排水
縦穴排水は、不透水層を有する地盤に対して透水材等を用いて透水孔を設け、雨水を浸透させることにより、排水処理を行うものである。下層に浸透の容易な土層があることが望ましい。
図23.2.7_縦穴排水概念図.jpeg
※縦穴を掘ってその中に水を落とす方法や、
大きな穴を掘って数本分の水をそこにまとめて導入する方法もある。
図23.2.7 縦穴排水概念図
(イ) 植栽基盤に起因する樹木の枯死や生育不良の原因で、最も多いのは、排水性(透水性)と硬度の不良である。透水性調査の結果、不良と判断された場合は、有効土層の底部に暗きょ排水又は縦穴排水を設ける必要がある。その判断基準は、表 23.2.2を適用する。
なお、縦穴排水とは、下層地盤の不透水層に縦穴をあけ、その下部の排水層に停滞水を導くものである。
これら物理性のほか、化学性を含めた植栽基盤調査方法と判断基準は、次のとおりである。
(a) 物理性
① 透水性
(ア) 透水性が悪い、つまり水が上の中にしみ込みにくいと、多量の雨が降った時に植穴に水がたまって根腐れという現象が起こる。文字どおり根が腐ってしまい、そのため植物が枯死してしまう現象である。
これは、透水性不良であると地中に水がたまっていて空気が入らないため、酸素がなくなり、根が呼吸できなくなるために起こるとされている。
透水性が良いということは植物を植える地盤の条件としては、第一に満 たされなければならない最も重要な条件である。また、実際の植栽の現場において、透水不良の地盤が極めて多いことからなおさらである。
(イ) 透水性の程度を示す単位としては、専門分野では透水係数(m/s)が使われる。しかし、これは実用的には分かりにくい単位であることから、通常1時間に何mmの水が浸透するかという単位(mm/h)を用いる。これを減水速度という。
この測定は、植穴に直接水を張り減水述度を計る方法と、「長谷川式簡易現場透水試験器」を用いる方法がある。「長谷川式簡易現場透水試験器」を用いる場合は、次の要領で行う(図23.2.8参照)。
1) 測定したい箇所に直径15cm内外の穴を掘る。穴を掘る道具は、ダブルスコップを使うと便利である。深さは植穴と同じ深さで、通常は40~60cm程度とする。
2) この中に穴底の土を水の勢いで乱さないよう板きれを入れるなどして、静かに水を入れる。石袖ストープ用の注油ポンプを用いる場合は、現場透水試験器のフロートで注水を受けるようにする。
3) 水の深さが約10cmになったら、いったん注入を止める。約1時間(最低30分以上)そのままにしておいて、周辺の土にしみ込むのを待っ。
4) もう一度水を入れて水深10cmにし、この時の時間を計る。そして20分後と40分後に水深を測る。
5) 20分後と40分後の水位の差(20分間に減少した量)を3層にしたのが1時間に減少する量で、mm/hで表す。その判断基準を表23.2.2に示す。
6) 40分後に穴に水が残っていない場合には、再注水時と20分後の水位の差(20分間に減少した量)を3層にして1時間に減少する量を求める。
7) 20分後に穴に水が残っていない場合には、1時間に減少する量を300 mm/h以上とする。
図23.2.8_長谷川式簡易現場透水試験器(状況).jpeg図23.2.8_長谷川式簡易現場透水試験器.jpeg
図23.2.8 長谷川式簡易現場透水試験器
表23.2.2 長谷川式簡易現楊透水試験器による透水性の判断基準
表23.2.2_長谷川式簡易現場透水試験器による透水性の判断基準.jpeg
(b) 硬 度
① 地盤が硬いと根が伸びられないため、生育不良又は枯死となる。
一般的に造成地盤はこの傾向が強く、切土においては心土の固結層である砂岩層や砂礫層等が地表に出てくると、つるはしも役に立たないほど硬い場合もある。また、盛土層や建物回りは、工事の施工に伴い建設機械により締め固められていることが多いため、植栽に先立ち、十分に調査する必要がある。
② 土の硬さの測定は、以前は山中式土壌硬度計(図23.2.9)という器具を用いて行っていたが、この器具を使うためには地盤を掘削し垂直な面をつくる必要があり(図23.2.10)、多大の労力を要することから、現在は長谷川式土壌貫入計(図23.2.11)で、穴を掘らずに硬度を測定する方法が一般的に行われている。
これは鉄の重り(重さ2kg)を50cmの高さから落下させることによって地中に打ち込み、1回にどれくらい打ち込めるかによって土の硬さを測定するものである。その判断基準を表23.2.3に示す。
図23.2.9_山中式土壌硬度計.jpeg
図23.2.9 山中式土壌硬度計
図23.2.10_山中式土壌硬度計による検測方法.jpeg
図23.2.10 山中式土壌硬度計による検測方法
図23.2.11_長谷川式土壌貫入計.jpeg
図23.2.11 長谷川式土壌貫入計
表23.2.3 長谷川式土壌貫入計による土壌硬度の判断基準
表23.2.3_長谷川式土壌貫入計による土壌硬度の判断基準.jpeg
(c) 土 性
土性は、土壌を粒径組成に基づき、一定の区分に分類したものである。土性は、検土杖(地中土壌の採取器具)等により採取した試料を、指頭法による簡易な方法で判定することができる(表23.2.4参照)。植栽基盤としては、砂壌土又は壊土が望ましい。砂土は、保水力、保肥力に乏しく、乾燥害、肥料不足が生じやすい。また、埴壌土、埴土は、透水性に問題がある。
表23.2.4 指頭法による簡易な土性判定
表23.2.4_指頭法による簡易な土性判定.jpeg
(イ) 化学性
植物に対する土壌の化学的な阻害要因としては、水素イオン濃度指数(pH)の不良、塩類過剰、養分不足等がある。水素イオン濃度指数(pH)及び塩類過剰障害が懸念される主な土壌としては、臨海地域の土壌並びに土丹及び海成堆積土がある。これらの土壌の場合は、水素イオン濃度指数(pH)、水溶性塩類(電気伝導度(EC))等の調査を行う必要がある。また、必要に応じて腐植含有量の調査を行うものとする。
水素イオン濃度指数(pH)、電気伝導度(EC)及び腐植含有量の基本的な考え方並びに数値の目安は、次のとおりである。
① 水素イオン濃度指数(pH)
水素イオン濃度指数(pH)は、土壌が示す酸性又はアルカリ性の反応の程度を表すものであり、養分の吸収能を左右し、化学的生育阻害の要因となりうる異状の有無を判断するものである。
なお、海成堆積土による造成地で出現する酸性硫酸塩土壌は、空気に触れることで怠速に酸化し強酸性を示すことがある。海成堆梢土による造成地では、造成後の時間経過によりpHが変化するため、継統して測定し酸化の進行状況を確認のうえ、対策を検討する必要がある。また、土壌の深さによってpH変化の時間が異なるので注意する。
② 水溶性塩類(電気伝導度(EC))
電気伝導度は、植物生育に支障を来す可能性のある土壌中の塩基分の大まかな程度を判定するためのものであり、市販の電気伝導度計(ECメーター)により容易に測定できる。しかし、塩基の種類・量の測定は不可能であり、塩基の種類(物質)・量の判定には詳細な分析が必要となる。したがって、予想される物質を絞り込み外部機関に依頼して分析する必要がある。
電気伝導度計(ECメーター)による測定値が1.0dS/m以上の場合は、植物生育阻害要因となる多量の塩基を含んでいる可能性が高いため、詳細分析が必要である。
③脱植含有量
腐植の存在は、植栽土壌としての絶対条件ではないが、腐植は、養分の供給、団粒の形成、陽イオン交換容量や緩衝能を高める効果があり、植栽土壌の適性を判断する指標となる。腐植含有量は火山灰土壌の表土で 5~20%、下層土の赤土や真砂土では通常 0.5%以下である。腐植は多い方が望ましいが、経済性を考慮して決定する必要がある。腐植含有量の指標として、強熱減量のほか炭素含有量を用いることもある。炭索含有量に1.724を乗じることで腐植含有量を求められる。
④ 数値の目安
表23.2.5に各数値の目安を示す。
表23.2.5 数値の目安
表23.2.5_数値の目安.jpeg
(4) 「標仕」表23.2.2に示す植栽基盤の整備工法は、地盤が硬い場合の改良方法で あるが、土壌の種類によっては再び固結する場合がある。特に、粘性土壌の場合は、再固結を防止するため、黒曜石パーライト又は粗目の砂質土を混入するとよい。
また、透水性や化学性に問題がある場合は、深耕(粗起し)や普通耕時に、それぞれの阻害要因に対して、適切な土壌改良材を混入する。土壌改良材の適用は、特記による。
23.2.3 材 料
(1) 植込み用土
植込み用土には、客土(購入土)と現場発生土がある。
客土は、地域により土質が異なることから、現場周辺で比較的入手が容易で、経済性に優れ、植物の生育に適した土壌が望ましい。
(a) 客土の種類
一般に用いられている客土の種類は、次のようなものがある。
1) 黒土:黒色の膨軟な火山灰表土
2) 真砂(まさ)土:関西や九州地方等に産する花こう岩質岩石の風化土
3) その他:山砂、赤土(火山灰心土)等
(b) 客土の選択
火山灰の表土である黒土は、物理性、化学性のいずれの点からも優れており、客土として最も適した土壌といえる。しかし、黒土の産出する地域は限られており、黒土の入手できない地域では、真砂土、山砂、赤土等を使用するのが一般的である。
(2) 土壌改良材
(ア) 土壌改良材の種類
土壌改良材の種類は、特記による。土壌改良材の効果は、硬度、透水性、保水性等の物理性の改良、従分、水素イオン濃度指数(pH)等の化学性の改良及びミミズや微生物による生物性の改良に大きく分けられ、単体で使用する場合と数種の土壌改良材を混合して使用する場合とがある。土壌改良材の主な種類と一般的な改良効果を表23.2.6に示す。
表23.2.6 主な土壌改良材の種類と効果の目安
表23.2.6_主な土壌改良材の種類と効果の目安.jpeg
(イ) 土壌改良材の選択
植栽地の土壌条件は、千差万別であり、表23.2.6に示す土壌改良材の効果は、全ての土壌条に対応したものではなく、使い方によっては支障を来す場合もある。
例えば、代表的な土壌改良材である堆肥は、硬度、透水性及び保肥力の改良に効果があるとされているが、粘性土壌に混入すると逆に還元状態を招くことがある。
土壌改良材の選択に当たっては、土壌条件を十分に考慮し、より効果的で経済的な資材を選ばなければならない。土壌改良材を使用する場合は、土壌との適合性を確認のうえ、品質証明資料を監督職員に提出し、承諾を受ける。
なお、土壌改良材の選択は、高い専門性が要求されることから、「植栽基盤診断士」に相談するとよい。
(ウ) 土壌改良材の品質
土壌改良材は、肥料取締法又は地力増進法で定められたものとそれ以外のものとに分けられる。表23.2.6に示す土壌改良材のうち、下水汚泥コンポストは肥料取締法に基づき普通肥料として登録されたものを使用する。
地力増進法で定める土壌改良材は、法令に基づき届け出されたものを使用する。
法令の規定を受けない資材は、製造者の品質証明書にて判断するとよい。
(3) 土壌との適合性
「標仕」23.2.3(3)で示す受注者等が行う土壌との適合性の確認とは、改良目標を数値で示すことではなく、土壌改良材の品質を証明する資料及び阻害要因に対する効果の妥当性に関する資料により適合性を確認することである。
なお、植栽基盤の調査・診断及び土壌との適合性の確認については、「植栽基盤診断士」に相談するとよい。
23.2.4 工 法
(1) 植栽基盤の整備工法の種類と「標仕」の種別を、表23.2.7に示す。
表23.2.7 植栽基盤の整備工法の種類
表23.2.7_植栽基盤の整備工法の種類.jpeg
(2) A種の工法(混層耕)
硬過ぎて植栽に適さない地盤の場合に、混層耕(深耕+普通耕)により土層を改良するもので、必要に応じて土壌改良材の使用や施肥を行う。
図23.2.12_混層耕概念図.jpeg
図23.2.12 混層耕概念図
(a) 作業手順
図23.2.13_作業手順.jpeg
図23.2.13 作業手顛
(b) 作業内容
① 深耕(粗起し)
一般的にバックホウで行われる。施工品質については土壌が容易に細砕化 するものと、そうでないものとがあるので一概に規定することはできないが、一応の目安としては、土塊径20cm以下とする。
② 不陸整正・軽転圧
深耕後、小型ブルドーザー等にて不陸を整正しながら、締固め過ぎないように軽く転圧する。
③ 土壌改良材等の混入
設計量の土壌改良材や肥料を均ーに混入する。
④ 普通耕
乗用トラクタ又はハンドトラクタにて耕うんする。耕うんの深さは20cm程度とする。
⑤ 軽転圧工・整地工
不陸を整正し、雨水が浸透する程度(S値1.5~4.0cm)の適度な硬さに転圧する。
なお、不陸整正と転圧を同時に行う場合もある。
(3) B種の工法(普通耕)
芝・地被類の植栽において物理性の改良が必要な場合に、耕うんによって改善を図る工法であり、必要に応じて土壌改良材の使用や施肥を行う。
図23.2.14_普通耕概念図..jpeg
図23.2.14 普通耕概念図
(a) 作業手順
図23.2.15_作業手順.jpeg
図23.2.15 作業手顛
(b) 作業の内容については、(2)(b)のそれぞれの同種工種に準ずる。
(4) C種の工法(植込み用土置換)
植栽地の土壌が不良で改良することが困難な場合に、良好な土壌と置き換える工法である。樹木、芝、地被類に適用され、植物に応じて置き換える深さを変える。
図23.2.16_植込み用土置換概念図.jpeg
図23.2.16 植込み用土置換概念図
(a) 作業手順
図23.2.17_作業手順.jpeg
図23.2.17 作業手順
(b) 作業内容
① すき取り工
有効土層厚相当分をすき取る。
② すき取り地盤不陸整正
すき取り後、地盤の不陸整正を行う。
③ 植込み用土敷均し工
植込み用土の敷均しに当たっては、極力土壌を固めない配慮が必要である。万一締め固まった場合(S値1.5cm未満)は、深耕(粗起し)や普通耕を行う。
④ 整地工
不陸を整正し、設計地盤高に仕上げる。
⑤ 建設発生土処分
特記に基づき建設発生士の処分を行う。特記による処分が出来ない場合は、「標仕」1.1.8により協議を行う。
(5) D種の工法(植込み用土盛土)
植栽地の土壌が不良で、良質土を盛土しても、地盤の仕上り高さが他の施設物に影響しない場合や地盤を盛る必要がある場合に用いられる工法で、有効土層として必要な厚みの植込み用土を盛土する。
図23.2.18_植込み用土盛土概念図.jpeg
図23.2.18 植込み用土盛土概念図
(a) 作業手順
図23.2.19_作業手順.jpeg
図23.2.19 作業手順
(b) 作業の内容については、(4)(b)のそれぞれの同種工種に準ずる。
(c) 敷均しに当たっては、土壌が固結し過ぎないように、施工規模や施工条件等を勘案のうえ、可能な場合はバックホウにて施工することが望ましい。
(6) 土壌改良材を使用する場合の工法
(ア) 表層部分に土壌改良材を混入する場合は、特記された指定量を均ーに散布し、トラクタ等にて耕うんを行う。その際の混合の深さは、土質によっても異なるが、概ね20cm程度である。
A種の工法にて、透水性の改良を目的として、黒曜石パーライト等を混入する場合は、水の抜ける層の形成を図るため、やや粗くかくはんする方がよい。
(イ) 化学性の改良について次に示す。
(a) 水素イオン濃度指数(pH)の改良
① 水素イオン濃度指数(pH)4.5未満の強酸性の場合は、炭酸カルシウム等にて矯正を行う。ただし、酸化過程にある酸性硫酸塩土壌の場合は、酸化剤にて強制的に酸化させた後に、矯正する必要がある。
炭酸カルシウムの適正施用量は、pH値のほか、土性、腐植含有量等により異なるため、個々の土壌について緩衝曲線を求め、適正屈を定めることが望ましいが、簡易な方法としては、表23.2.8を参考にするとよい。
表23.2.8 炭酸カルシウム施用量(アーレニウス氏表)
表23.2.8_炭酸カルシウム施用量(アーレニウス氏表).jpeg
② pH値が7.5~8.0程度の弱アルカリの場合は、ピートモス等(pHを矯正していないもの)の酸性有機物を施用し、矯正するのが一般的である。
③ pH値が8.0を大きく超える場合は、酸性有機物では施用量が多くなることから、中和剤を用いることが多い。硫酸第一鉄等の硫酸系を用いる場合は、 pH値のリバウンド(元の値に近づくこと)や電気伝導度(EC)の上昇に留意しなければならない。電気伝導度(EC)の上昇を抑制する中和剤として アルカリ土壌中和剤がある。
(b) 有害物質の改良
電気伝導度(EC)が1.0dS/mを上回る場合は、有害な濃度の塩類が含まれている場合が多いので詳細な分析を行う。塩類が多い場合は、散水等による除塩若しくは良質土による置換え等の対策が必要である。
(7) 施肥
植物の特性等を考慮し、必要に応じて施肥を行う。
(a) 肥料の分類
肥料には、多くの種類があり、形態等も様々である。肥料の生産手段、化学的組成、反応、肥効、成分、形態等、種々な見地から分類されている。
(b) 肥料の3大要素
植物の種類、土壌条件、植栽地の育成管理方針等に基づき、適切な肥料を用いる。窒素、りん酸、カリを肥料の3大要素といい、植物にとって大切な成分である。その効用は次のとおりである。
なお、樹木に施す肥料は、低度化成肥料といわれるN・P2O5 ・ K2Oの成分合計量30%未満のものが主に用いられている。
1) 窒素肥料(N):葉肥ともいわれ茎や葉を育てる。
2) りん酸肥料(P2O5):花や果実、種子を育てる。
3) カリ肥料 (K2O):根肥ともいい根を強くし、根や葉をしまらせ植物の同化作用と繊維を強くする。

23章 植栽及び屋上緑化工事 3節 植樹

23章 植栽及び屋上緑化工事
3節 植 樹
23.3.1 一般事項
この節は、樹木の新植並びに樹木の移植工事を対象としている。
23.3.2 材 料
(1) 樹木の品質
樹木は、掘取り・出荷に耐え得るように、あらかじめ根回し若しくは床替えをしたもの又はコンテナにて栽培したものとする。「標仕」23.3.2 (1)では、原則として、栽培品を用いることにしている。ただし、栽培品が得られない場合には、植栽計画 に使用可能で、樹姿、樹勢等が優良な栽培品以外のもの(山採り樹木:山野に自生している樹木を根回し、あるいは移植養生したもの)を用いてもよい。
掘取り後、運搬に先立ち根鉢の崩れを防止するために、こも、わら縄その他有機質根巻き材料等で根鉢を堅固に根巻きをする。根の回りの土をふるい落としても植樹が可能な樹木や苗木では、種類によって根巻きを行わなくてもよい場合もある。
(ふるい堀り:休眠期間中の落葉樹を移植する場合、堀り上げてから根巻きせずに、そのまま根付け位置に運んで植付ける方法)
(2) 樹木寸法の測定方法
樹木は、原則として搬入時に確認する。ただし、特殊樹、主木等については事前に写真を提出させ又は必要に応じて圃楊(栽培地)において確認する。
株立物で、幹周の指定がない場合は、樹高(樹冠頂までの寸法)及び枝張(葉張)に重点をおくようにする。
なお、寸法には、一部の突出している枝(徒長枝:とちょうし)は含まないものとする。
「公共用緑化樹木等品質寸法規格基準(案)」による各部の寸法等の表示名称は図23.3.1のとおりであり、「標仕」もこれに準拠している。
図23.3.1_樹木の寸法表示名称.jpeg
図23.3.1 樹木の寸法表示名称
((-財)日本緑化センター:公共用緑化樹木等品質寸法規格基準(案)の解説より)
(3) 支柱材
「標仕」では、支柱材の種類は、特記による。特記がなければ、丸太とすると規定している。
(a) 丸太
「標仕」では、防腐処理方法は特記による。特記がなければ、JIS K 1570(木材保存剤)に定める加圧注入用木材保存剤を用いた加圧式防腐処理丸太材を使用すると規定している。加圧処理方法は、JIS A 9002(木質材料の加圧式保存処理方法)による。以前に用いられていたCCA(クロム・銅・ヒ素系木材防腐剤)は、環境汚染物質が含まれていることから使用してはならない。
なお、焼丸太については、衣服を汚すことが懸念されるため、鑑賞を目的とした日本庭園等の人の立ち入らない場所にて使用する。
(b)真竹
真竹は、腐れのない、真っ直ぐな2年生以上の良質なもので、適期に切り出したものとする。
(4) 幹巻き用材
幹巻き用材料、天然繊維(ジュート)製の幹巻き用テープ又はわら及びわらを粗く編んだこもが使われる。「標仕」では特記がなければ、幹巻き用テープを使用する。
23.3.3 新植の工法
植栽に当たっては、必要に応じ施工図(配植図)の提出を求め、照明灯等関連設備 との関係、樹木特性と植栽地条件との適合性、景観上の納まり等について確認を行う。
(ア) 搬 入
樹木は搬入時に、一部の樹種で用いられているふるい掘りや根巻きを必要としない低木を除き、こも、わら縄、その他有機質根巻き材料で堅固に根巻きされ、根鉢の崩れがないものとする。
(イ) 保護養生
樹木は、搬入後、速やかに植え付けることが原則であるが、やむを得ず直ちに植付けができない場合は、根鉢の保護を行ったうえ、寒冷紗やこも等による蒸散抑制及び養生期間中の散水を行う。
なお、植付けまでに長期間を要する場合は仮植えを行う。
(ウ) 植付け
(a) 植穴の位置の決定から掘削までの手順は、次のとおりである。
① 植付けは、植栽平面図又は施工図に基づいて行うが、初めに景観の主要な部分となる高木等の位置を現場で決める。引き続き残った樹木の位置を、樹種、樹高、間隔、幹ぐせ、幹ぞりを考慮し、周囲との調和を図りながら決める。
② 高木の群植等の場合は、搬入された樹木の性質や形状等を見極め、将来の生長も考慮し、植付け間隔を調整するのが望ましい。
③ 植穴の径は、通常根鉢に十分余裕のあるように掘り、穴底のきょう雑物を取り除いて底部を柔らかにほぐし、植込み用土を中高に盛り上げる。
(b) 立込みの手順は、次のとおりである。
① 樹木は、植付けに先立ち、適切に枝抜きせん定及び必要に応じ幹巻きを行う。
② 樹木の裏・表を見極め、立込みを行う。根鉢の根巻きが厚い場合や二重巻きになっている場合は、細根と植込み用土が密着するよう根巻き材を取り除く。
③ 立込み後は、必要に応じ仮支柱を取り付ける。
(c) 鉢を植込み用土で埋め戻す方法には、次の方法がある。
① 水ぎめは、鉢を埋めながら水を注ぎ、鉢の周辺に植込み用土が密着するように細い棒で土をよく突きながら埋め戻し、これを数回繰り返して鉢を埋めていく方法で、一般的に多く使われる方法である。
② 土ぎめは、水を使わずに細い棒等で植込み用土を鉢回りに密着するように突き入れる植え方で、松類等を植え込む場合に用いられる。
(d) 水鉢の設置
立込み後、鉢を完全に埋め戻してから、樹木の根元を平らに均す。水鉢は、鉢の外周に土を盛り上げ、この中にかん水を行う(図23.3.2参照)。
図23.3.2_水鉢.jpeg
図23.3.2 水鉢
(エ) 支柱の取付け
支柱の形式は、特記による。
支柱は、風による樹木の倒れや傾きの防止とともに、振動によって新しい根が切られることのないよう保護のために取り付けられる。根部が正常に活着するまで(通常 3~ 4年程度)取り付けておくが、街路や屋上庭園等で風が強く当たる空間や、根が十分に張れない場所は保持を統ける。
① 支柱の取付けは、「標仕」23.3.3(4)並びに図23.3.3から図23.3.5のように行う。支柱の基部は、地中に埋め込み、根杭を設け、釘留め、鉄線掛け等で容易にぐらつかないよう堅固に組み立てる。ただし、島居形は打込みとする。樹幹(主枝)と支柱との取付け部分は杉皮等を当て、しゅろ縄掛け結束とし、丸太相互が接合する箇所は、釘打ちのうえ鉄線掛け又はボルト締めとする。真竹は先端を節止めにして使用する。
支柱(控木、ワイヤ掛け形、地下埋設形等)と樹木の幹周との関係の目安を、表23.3.1に示す。
なお、表はあくまでも目安であり、必要に応じて風荷重を考慮して支柱の形式・形状を決定するものとする。
② ワイヤ掛けには鋼線、被覆鉄線があるが、三~五方に緩みが出ないように張り、活着後は次第に緩める。ワイヤは目に付きにくいため接触事故を起こしやすいため、危険性がある場合は塩ビ管等をかぶせて事故を防止する。ワイヤの太さ及びアンカーは樹木転倒の風荷重計算を行い、風荷重に耐えうる力が得られる形状・寸法のものとする。
③ 地下埋設型
地下埋設型支柱には、大別して支持アンカーを横向きにして打ち込むタイプと鉛直に打ち込むタイプがあり、植栽箇所周辺の構造物、埋設物を調査し、樹木寸法を考慮のうえ、その機能が十分働くものを使用し、樹木の生長に合わせて調整する。
④ 維持管理
支柱設置後は、幹や根鉢を締め付けることのないよう、樹木の生長に合わせて調整又は撤去する必要がある。
表23.3.1 支柱形式と使用区分の目安
表23.3.1_支柱形式と使用区分の目安.jpeg
図23.3.3_支柱形式(添え柱形).jpeg
図23.3.3_支柱形式(二脚鳥居形).jpeg
図23.3.3_支柱形式(三脚鳥居形).jpeg
図23.3.3_支柱形式(十字鳥居形).jpeg
図23.3.3_支柱形式(二脚鳥居組合せ形).jpeg
図23.3.3_支柱形式(八ッ掛け形).jpeg
図23.3.3_支柱形式(布掛け形).jpeg
図23.3.3_支柱形式(生垣).jpeg
図23.3.3_支柱形式(ワイヤ掛け形).jpeg
図23.3.3 支柱形式(建築工事標準詳細図より)
図23.3.4_地下埋設型.jpeg
図23.3.4 地下埋設型(参考図)
図23.3.5_根鉢固定方式型(単管式).jpg
図23.3.5_根鉢固定方式型(モーメント式).jpg
図23.3.5 根鉢固定方式型(参考図)
(オ) 樹幹の保護矯正
樹幹の保護や向き、曲がりを矯正する場合は、取付け部分にしゅろ縄などを巻き、こずえ丸太や竹の添え木等を結束する。設置後は、幹を締め付けることのないよう樹木の生長に合わせて調整又は撤去する必要がある。
(カ) 幹巻き
幹巻きは、移植後の樹木の幹から水分の蒸散と幹焼け(樹皮組織が破壊されて死滅すること)防止と防寒のため、わら、こもや緑化テープを樹幹、主要枝に、巻き付けることである。
(キ) 防寒対策
厳寒期に常緑広葉樹を植栽せざるを得ない場合は、寒冷紗等による防寒対策を行う。
(ク) 花木植栽の留意点
多彩な花色を有する花木は、設計意図を把握し各樹種のもつ特色と開花期、花色、さらには周囲の景観に十分調和するよう考慮し、より美的効果が発揮できる配植とする。
(ケ) 植付け後の養生
植付け後、完成引渡しまでの期間は、定期的に樹木の状態を観察し、必要に応じて、かん水、病害虫防除、整姿せん定(枯死枝の除去)を行う。
23.3.4 新植樹木の枯補償
(1) 枯補償の期間
「標仕」23.3.4 (1)では、新植樹木の枯補償の期間は、特記がなければ引渡しの日から1年としている。
(2) 枯補償の判定
(ア) 「標仕」23.3.4 (2)の「枯死、枝損傷、形姿不良等となった場合」とは、図23.3.6に示すように、植栽した時の状態で、枯枝が樹冠部の概ね2/3以上となった場合又は真っ直ぐな主幹をもつ樹木については、樹高の概ね1/3以上の主幹が枯れた場合をいい、今後、同様の状態となることが予想されるものも含む。
図23.3.6_枯補償の判断.jpeg
図23.3.6 枯補償の判断(造園施工管理(技術編)より)
(イ) 「標仕」において、枯補償の対象から除外されている「天災その他やむを得ないと認められる場合」とは、異常気象による干ばつ、土砂災害、盗難や人為的な損傷による枯死等を想定したものである。
(ウ) 維持管理
(a) 一般的に、植栽については、施設の管理者により通常の管理が行われることを前提としている。
(b) かん水等、管理者による通常の管理が明らかに困難な場合は、管理官署、受注者等、設計担当者(国土交通省の場合は計画担当者を含む。)、監督職員等の関係者間で協議し、適切な処置を定めておくとよい。
23.3.5 樹木の移植
(1) 樹木の移植は、樹木を掘り取って直接目的地に植え付ける場合と、根回し(細根の発生を促す処理)後一定期間養生した後、目的地に植え付ける方法がある。大径木や貴重な樹木を移植する場合は、事前に根回しを行うことが望ましい。
工期や現場条件等の関係から根回しができない場合は、移植の時期、枝抜きの程度等について、よりきめ細かい検討が必要である。
なお、移植時期が極めて悪い場合は、移植時期や樹種変更等について検討する。移植の適期は、概ね次のとおりである。
(ア) 暖地(暖温帯に位置する北陸・関東地方以西)では、常緑針葉樹は10月から
4月上旬、落葉樹は11月から3月までが適期であるが、厳寒期は避ける。
常緑広葉樹は、3月末から入梅頃まで及び9月中旬から11月上旬までが適期である。
(イ) 寒地(冷温帯に位層する北海道・東北地方)では、暖地よりも春期は1~2箇月遅くし、秋期は早くするように調整する。
(ウ) 主な樹木の移植の難易度について、表23.3.2に示す。
表23.3.2 移植難易度の例(造園施工管理(技術編)より)
表23.3.2_移植難易度の例.jpeg
(2) 整姿せん定
移植は地下(根)部を大きく減少させることから、地下部と地上(枝葉)部の水バランスをとるため、樹種特性や樹木の状態に応じて適切に枝抜きを行う必要がある。枝抜きの程度は、移植の時期、根の状態、運搬等を考慮して決定する。
太枝の切断面は、殺歯剤を塗布するなどの腐朽歯の侵入防止対策が必要である。
(3) 根回しには、次のような方法がある。
(ア) 溝掘り式は、幹の根元(接地部)径の3~5層程度の鉢径を定め、支持根となるべき太根を残して掘り下げる。支持根は三~四方にとり、他の根は、根鉢に着って鋭利な刃物で切断する。残した支持根は10~15cmの巾で環状はく皮し、鉢底にも直根があれば断根する。
太根の処理が終わった後、粗めに根巻きを行い、掘り上げた良土で埋め戻す方法である(図23.3.7参照)。
(イ) 断根式は、溝掘り式と同様に鉢径を定め、鉢回りを掘り同して側根だけを切断し切り離すだけの方法で、モッコク、キンモクセイ、サザンカ、ハナミズキ等の比較的浅根性又は非直根性の樹種と幼木に行う方法である。
図23.3.7_溝掘り式根回し(断面図).jpeg図23.3.7_溝掘り式根回し(平面図).jpeg
図23.3.7 溝掘り式根回し
(4) 掘取り、根巻き
根鉢の大きさは、根回しを行った樹木は元鉢径よりやや大きめに、直接に移植する樹木は、根元幹径の3~5層程度の鉢径を定め、幹を中心に円形に掘り回す。根鉢の側面に現れた根は、鉢に着って鋭利なガ物で切断する。
根巻きの方法には、鉢に平行に素縄をたたき込みながら巻いていく「樽巻き」と、樽巻きを行った後、さらに、縦横に鉢をかがるように巻き上げていく「揚巻き」がある。大径木や貴重な樹木を掘り取る場合は、鉢土にじかに縄で樽巻き又は揚巻きを行った後、さらに、わら、こも、緑化テープ等で二重に根巻きを行う(図23.3.8参照)。
図23.3.8_根巻き.jpeg
図23.3.8 根巻き
(5) 運搬時の保護養生
運搬は枝葉、幹を痛めないように積み込み、夏期に乾燥のおそれがある場合は、根鉢にこもをかけるか散水をするなどの手当をし、枝葉、根鉢をこも、シート等で覆い乾燥防止や蒸散抑制を図る。場合によっては蒸散抑制剤を散布するなどの処理を行う。
(6) 植付けについては、23.3.3(3)を参照する。
23.3.6 移植樹木の枯損処置
移植は、発注者が指定する樹木を根回し又は直接目的地に植栽する一連の作業である。
したがって、引渡し後(特記がなければ1年以内)に移植樹木が枯れた場合でも、その原因が不適切な移植作業にあるといえないため、全ての責任を受注者等のみに求めるのは適切でない。このため、「標仕」では樹木の枯補償は求めず、枯損処置としての伐採・抜根及び良質土による埋戻し並びに整地としている。
なお、発生した残材は速やかに搬出し処分する。