19章 内装工事 8節 壁紙張り

19章内装工事
8節 壁紙張り
19.8.1 適用範囲
(a) この節はモルタル面、コンクリート面及びボード面に施す各種壁紙張りを対象としている。
(b) 作業の流れを図19.8.1に示す。
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表
② 製造所名及び施工業者名
③ 材質(ホルムアルデヒド放散量、防火性能)、色柄別に応じた施工箇所
④ 接着剤の材質(ホルムアルデヒド放散量)、配合割合
⑤ 工法(割付け、見切り部分の納まり等)
⑥ 施工時及び施工後の換気方法
⑦ 養生方法(材料の保管方法等)
⑧ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
図19.8.1_壁紙張り工事の作業の流れ.jpeg
図19.8.1 壁紙張り工事の作業の流れ
(d) 見本品を提出させ、色合、模様。性能等について設計担当者と打ち合わせて決定する。
なお、模様のある材料では、校様の大きさにもよるが一般的には 1m角程度の見本により確認するとよい。
(e) 養生等
(1)材料は整頓して保管するとともに、直射日光を受けないよう、また、塵あいその他による汚れを生じないようにポリエチレンフィルムを掛けるなど適切な養生を行う。
(2) 巻いた材料は、くせが付かないように立てて保管する。
(3) 施工済みの箇所で、その後の作業により汚染や損傷のおそれのある部分には適切な養生を行う必要がある。特に、柱や壁の出隅部や出入口回りは傷つけやすいため注意する。
(4) 施工中及び施工後の養生等については、19.10.7を参照されたい。
19.8.2 材 料
(a) JIS A 6921(壁紙)による壁紙の品質を表19.8.1に示す。
表19.8.1 壁紙の品質(JIS A 6921 : 2003)
表19.8.1_壁紙の品質(JIS A6921).jpeg
(b) 壁紙及び壁紙施工用でん粉系接着剤は、指定建築材料(19.10.3(b)参照)である。
なお、「標仕」ではホルムアルデヒド放散量を、特記がなければF☆☆☆☆としている。また、建築基準法による規制等については10節を参照されたい。
(c) 壁紙のホルムアルデヒド放散量に関する注意事項等には、次のようなものがある。
(1) 表19.8.1に示すように、JIS規格品は放散量がF☆☆☆☆のものである。
(2) JIS規格品以外で、大臣認定(19.10.5(a)参照)を受けている壁紙には、F☆☆☆☆(認定番号MFNー0000)のものとF☆☆☆(認定番号MF3-0000)のものとがあり、認定番号の頭の記号で区分されているので注意する。
(3) 複数の放散量の材料で構成する場合は、最も下位の放散量となるので、下地材、接着剤、壁紙等に、特記によりF☆☆☆☆以外の材料が指定されている場合には、特に注意が必要である。
なお、「標仕」では、下地材等を含めてすべてF☆☆☆☆のものを原則としている。
(d) 壁紙のホルムアルデヒド放散量だけでなく、TVOC放散量等にも配慮を求められる場合は、(-社)日本壁装協会がISM壁紙規格を定めているので、参考にするとよい。ISM壁紙規格の安全規定による基準を表19.8.2に示す。
(e) 内装制限を受けるときは、その場所に応じて品質及び必要な防火性能が定められている。
(f) 防火材料として必要な事項は、次のとおりである。
(1) 防火性能
(i) 防火材料は国土交通大臣の指定又は認定を受けたものとする。国土交通大臣の認定を受けた壁紙は認定番号によって防火性能の識別を行う。
なお、壁紙の防火材料の認定には、施工する下地材料の種類、防火性能及び施工上の条件等が当該認定番号ごとに定められているので、これを認定内の付属書類によって確かめる。
防火性能認定番号の付番方法は次のとおりである。
防火性能認定番号の付番方法.jpeg
表19.8.2 ISM壁紙の基準(ISM安全規定による)
表19.8.2_ISM壁紙の基準(ISM安全規定による).jpeg
(ii) 防火材料の壁紙を張る下地基材については、防火材料認定のための性能評価を行う指定性能評価機関が、「壁紙等の仕上げ材科で、施工現場で基材となる下地材に施工されるものの試験体作成方法について、施工現場での下地材が数種類ある場合は、以下の下地材を標準下地材とする。」として次の各種を定めている。
① 金量板を除く数種類の不燃材料を下地材に使用する場合
厚さ12.5mmのせっこうボード(不燃材料)
② 金属板(鋼板等を含む)及びせっこうボード(不燃材料)を除く数種類の不燃材料を下地材に使用する場合
厚さ10mm以下、比重約0.8の繊維混入けい酸カルシウム板(不燃材料)                                                
③ 金属板(銅板等を含む)を下地材に使用する場合
厚さ0.27mmの亜鉛めっき鋼板
④ 数種類の準不燃材料を基材に使用する場合
厚さ9.5mmのせっこうボード(準不燃材料)
⑤ 数種類の難燃材料を基材に使用する場合
厚さ5.5mmの難燃合板(難燃材料)
(iii) 防火材科に認定された壁紙の防火性能は、下地材と施工方法との組合せによって決められている。認定された各種壁紙の防火性能(認定番号の例)と下地材及び施工方法との組合せを表19.8.3に示す。
(iv) 張付け工法を「標仕」では、直張りとしている。
ただし、防火材料として認定された壁紙には、下張り工法として、繊維系壁紙で袋張りとべた張りが、塩化ビニル樹脂系整紙でべた張りが認められているものもある((k)参照)。
(v) 壁紙の防火認定は、大臣認定書と同付属書類の写しにより確認する。その際、張り合わせる下地材の防火性能も確認する必要がある。
なお、認定を受けた製品のこん包に、次のような防火製品表示ラベルが張り付けられている。防火製品表示ラベルの例を図19.8.2に示す。
図19.8.2_防火製品表示ラベルの例.jpeg
図19.8.2 防火製品表示ラベルの例
表19.8.3 認定された壁紙の防火性能(認定番号の例)と下地材及び施工方法との組合せ例
表19.8.3_認定された壁紙の防火性能と下地材及び施工方法との組み合わせ例.jpeg
(2) 施工後の表示
防火材料の認定を受けた壁紙には、施工後、施工責任を明確にし、当該壁紙による施工が認定された条件を遵守して行われた防火性能のある仕上げであることを表す施工管理ラベルを、1区分(1室)ごとに2枚以上張り付けて表示する(「標仕」19.8.3 (g))。
(g) JIS A 6922(壁紙施工用及び建具用でん粉系接着剤)による壁紙施工用でん粉系接着剤の品質を、表19.8.4に示す。
表中の1種はでん粉を主成分としたもの、2種1号は1種に合成樹脂エマルションを配合したもので、施工時に水で希釈して使用するもの、2種2号は2種1号と同じ配合のもので、施工時に希釈しないで使用するものをいう。
なお、かび抵抗性の性能欄の判定0とは、防かび性能があるということを示している。
表 19.8.4 壁紙施工用でん粉系接着剤の品質(JIS A 6922 : 2010)
表19.8.4_壁紙施工用でん粉系接着剤の品質(JIS A6922).jpeg
(h) 壁紙施工用でん粉系接着剤として通常市販されているものは、F☆☆☆☆のJIS規格品又はF☆☆☆☆として大臣認定を受けたものである。大臣認定品は、 F☆☆☆☆のものには MFN-0000の認定番号が付されている。
(i) 接着剤の用い方
(1) 接着剤の配合は、JIS A 6922で規定するでん粉系接着剤(ペースト状)を主体とし、これに酢酸ビニル樹脂エマルション、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション等を添加混合したもの( 2種1号)を、水で希釈して使用する((g)参照)。
接着剤の混合率及び水による希釈は、下地の材質、壁紙の材質、接着剤の塗布方法(手付け・のり付け機)及び作業環境(室温・湿度・風速)により相違があるので、製造所の指定する使用方法による。
(2)「標仕」19.8.2(b)では、接着剤使用量を固型換算量(乾燥質量)30g/m2以下と定めているので注意する。
(j) 下地調整材
パテやシーラー等の下地調整材には、防火性能に支障を来すことのないものを使用する。
(k) 下張り紙
防火壁張りに使用する下張り紙は、35g/m2程度のもので、JIS A 1322(建築用薄物材料の難燃性試験方法)に規定された試験方法により30秒加熱した場合、防炎2級以上の性能を有するものを用いる。
ただし、「標仕」19.8.3(e)では、壁紙を下地に直接張り付けることになっているので、下張り紙の使用は指定のある場合のみである。
19.8.3 施 工
(a) 「標仕」19.8.2に定められている壁紙は、すべて認定防火材料だけであり、下地に直接張り付けることが定められている。したがって、下地の凹凸、目違い等がそのまま表面の仕上りに影響を与えるので、下地の施工精度を高めておく必要がある。
(b) 下地の乾燥及び処置
(1) モルタル及びプラスタ一面の下地は、「標仕」18.2.5による。
(2) コンクリート及びALCパネル面の下地は、「標仕」表18.2.5により、B種を標準としている。
(3) せっこうボード面の下地は、「標仕」表18.2.7により,B種を標禅としている。
なお、下地がせっこうボードでせっこう系接着材による直張り工法の場合は、接着材の乾燥が遅いので十分な養生時間をとる必要がある(19.7.3(e)(5)参照)。
(4) 「標仕」19.8.3(c)では、下地にシーラーを塗るように定めている。シーラー塗るは、はけ・ローラー等を用いて全面にむらなく塗布する。
なお、シーラー塗るには次の目的がある。
(i) 接着性を向上させる。
(ii) 下地の吸水性の調節と、あく等が表面に浮き出るのを防止する。
(iii) 張起し等、張り作業が容易な下地面をつくる。
(iv) 下地の色違いを修正する。
(v) 張替えの際にはがしやすい下地をつくる。
(c) 模様のある壁紙では継目部分の模様にずれがないようにすることが重要である。また、色むらにより多少の濃淡がある場合は、色合せをして確認し目立たないように配置する。
(d) 壁紙のジョイントは、できるだけ突付け張りとし、やむを得ず重ね裁ちする場合は、下敷きを当てて行い、刃物で下地表面を傷つけることがないように施工する。
(e) ビニル壁紙等で硬いものには、収縮や反りが大きいものがあるため、継目等壁紙の周囲で、はく離を生じやすい。このような場合、壁紙の周囲の接着剤には接着カの強いものが必要である。
(f) 張り終わった箇所ごとに、表面に付いた接着剤や手あか等を直ちにふき取る。特に建具、枠回り、かもい、ジョイント部等は,放置しておくとしみの原因となるので注意する。
19.8.4 施工管理
(a) 施工環境
(1) 寒冷期に室温や下地面が 5℃以下又は接着剤の硬化前に 5℃以下となるおそれのある場合は、採暖等の措置を施す。乾燥不足になると壁紙類ははがれやすくなり、一方乾燥し過ぎると収縮による隙間の発生、ジョイントのはがれ等を生じるので、採暖に当たってはこの点に留意する。
(2) 室内の温度が高い場合には,通風・換気等を施す。
(b) 張上げ後の養生
張上げ後は急激な乾燥を避けるため、直射日光や通風等に対して適当な養生を行い、自然状態で接着剤を十分に乾燥させる。
(c) 張上げ後の検究
張上げ後に検査を行い、問題があれば適切にあと処理を行い仕上げる。注意点としては、下地精度による問題、張り忘れ、切り忘れ、ふき忘れ及び汚れ、ジョイント部のはがれ、隙間等が挙げられる。

19章 内装工事 9節 断熱・防露

19章内装工事
9節 断熱・防露
19.9.1 適用範囲
(a) 鉄筋コンクリート造等の建物に用いられる断熱工法には内断熱工法と外断熱工法がある。この節では「標仕」に基づき、主として断熱材打込み及び張付け工法並びに断熱材現場発泡工法について記述する。
(b) 建築物を断熱するのは次の3つの理由による。
(1) 表面結露を防ぐため(結露防止)。
(2) 燃料費・暖冷房費低減のため(省エネルギー)。
(3) 居住性を向上させるため(居住性向上)。
19.9.2 断熱材打込み工法
(a) 一般事項
ここでは、現場打ちコンクリート部位に型枠先付けで断熱材を打ち込む内断熱工法を対象としている。
なお、型枠に取り付けるうえで納まりが複雑な開口部回り等で断熱施工がしにくい部位や熱橋となりやすい部位には、19.9.3断熱材現場発泡工法又は断熱材張付け工法(「標仕」では.工法については規定していない。)により、適切な補修を施して所定の断熱性能を確保しなければならない。
(b) 作業の流れを図19.9.1に示す。
図19.9.1_断熱材打込み工法の作業の流れ.jpeg
図19.9.1 断熱材打込みt法の作業の流れ
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表
② 製造所名及び施工業者名
③ 材質及び厚さ(断熱材、現場発泡断熱材、ホルムアルデヒド放散量等)
④ 工法(割付け、見切り部分の納まり、留付け方法、接着方法、吹付け方法、補修方法等)
⑤ 養生方法等(材料保管方法、打込み前及び型枠脱型後の養生等)
⑥ 安全衛生(火気取扱い、換気方法等)
⑦ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(d) 材 料
(1) 断熱材は大別すると、発泡プラスチック系、無機質繊維系(グラスウール等)及び木質繊維系(インシュレーションボード等)に分類されるが、「標仕」19.9.2(a)に示される断熱材は、JIS A 9511(発泡プラスチック保温材)に規定される製品のうち、ビーズ法ポリスチレンフォーム保温材、押出法ポリスチレンフォーム保温材(スキンなし)、A種硬質ウレタンフォーム保温材及びフェノールフォーム保温材(3種2号を除く。)であり、種類及び厚さは特記によるとしている。硬質ウレタンフォーム保温材の発泡剤による種類をA種と定めているのは、発泡剤にフロン類を用いないためである。A種は発泡剤として炭化水素、二酸化炭素(CO2)等を用い、フロン類を用いないものを示す。打込みt法の断熱材に必要な性能は次のとおりである。
(i) コンクリート打込みによって断熱性能が変化しないこと
(ii) 吸水・吸湿が極めて少ないこと。
(iii) 軽量で加工性が高<、割れたり欠けたりしにくいこと。
(iv) 耐圧強度が高いこと。
(v) コンクリートとの付着性が良いこと。
(vi) 寸法等の変化を生じないこと。
(ⅶ) 耐アルカリ性に優れ、裏打ち材との接着が良いこと。
(2) 断熱材の種類と特徴
(i) ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板
ポリスチレンフォーム保温板は、製造法によりビーズ法と押出法の2種類がある。JIS A 9511によるビーズ法ポリスチレンフォーム保温板の特性並びに寸法を表19.9.1及び2に示す。
なお、特徴は次のとおりである。
1) 燃焼性:可燃性であるが、自己消火性を有する。
2) 耐候性:日射(紫外線)による劣化がある。
3) 吸水性・透湿性:独立気泡のため水の付着程度ではほとんど吸水しないが、長時間水中に浸しておくと若干吸水することがある。透湿性は極めて小さい。
4) 施工性:加工が容易であり、取付け方法は釘留め、接着付け、打込み等である。加工品としては片面又は両面にボード類等(せっこうボード ・GRC板・木毛セメント板・合板等)を複合した成形品もある。
表19.9.1 A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板の特性(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.1_A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板の特性(JIS A9511).jpeg
表19.9.2 A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板の寸法(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.2 A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板の寸法(JIS A9511).jpeg
(ii) 押出法ポリスチレンフォーム保温板
JIS A 9511による押出法ポリスチレンフォーム保温板の特性並びに寸法を表19.9.3及び4に示す。
なお、押出法ポリスチレンフォームの特徴は、(i)のビーズ法ポリスチレンフォーム保温板と同様である。
表19.9.3 A種押出法ポリスチレンフォーム保温板の特性(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.3_A種押出法ポリスチレンフォーム保温板の特性(JIS A 9511).jpeg
表19.9.4 A種押出法ポリスチレンフォーム保温板の寸法(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.4_A種押出法ポリスチレンフォーム保温板の寸法(JIS A9511).jpeg
(iii) 硬質ウレタンフォーム保温板
JIS A 9511による硬質ウレタンフォーム保温板の特性並びに寸法を表 19.9.5及び 6に示す。
なお、特徴は次のとおりである。
1) 燃焼性:可燃性であるが、自己消火性を有する。
2) 耐候性: 日射(紫外線)による劣化がある。
3) 吸水性・透湿性:独立気泡のため水や水蒸気の浸入に対して抵抗力は大きい。表面材に防水性、防湿性の大きいものをラミネー トした製品は、吸水性、透湿性をいっそう小さくできる。
4) 施工性:加工が容易であり、取付け方法は釘留め、接着付け、打込み等である。加工品としては、ボード類等を複合した成形品もある。
表19.9.5 A種硬質ウレタンフォーム保温板の特性(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.5_A種硬質ウレタンフォーム保温板の特性(JIS A9511).jpeg
表19.9.6 A種及びB種硬質ウレタンフォーム保温板の寸法(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.6_A種及びB種硬質ウレタンフォーム保温板の寸法.jpeg
(iv) フェノールフォーム保温板
JIS A 9511によるフェノールフォーム保温板の特性並びに寸法を表19.9.7及び8に示す。
「標仕」では、フェノールフォーム保温板のホルムアルデヒド放散量は、特記がなければF☆☆☆☆とするよう定められている(10節参照)。
なお、特徴は次のとおりである。
1) 燃焼性・耐熱性:炎を当てても炭化するだけで、煙や有害ガスはほとんど発生しない。
2) 耐候性:通常の使い方では経年による材質変化は少ないが、日射(紫外線)による劣化がある。
3) 吸水性・透湿性:独立気泡であるため、吸水性・透湿性は小さいが、発泡プラスチック保温材の中では吸水性が比較的高い。
4) 施工性・加工性:面材に金属板等を用いたもの以外は、カッター・ナイフ等で容易に切断できる。
なお、金属に対する腐食性があるので、直接接触する金物類には適切な防錆処理が施されたものを使用する。
5) 施工上の注意事項:型枠への固定は、専用の座付き釘を使用するなど脱型時の面材のはがれ等に配慮する。
表19.9.7 A種フェノールフォーム保温板の特性(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.7_A種フェノールフォーム保温板の特性(JIS A9511).jpeg
表19.9.8 A種フェノールフォーム保温板の寸法(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.8_A種フェノールフォーム保温板の寸法(JIS A9511).jpeg
(3) 材料の取扱い及び保管の留意事項
(i) 運搬に際し、欠け、割れ、つぶれ等がないよう取り扱う。
(ii) 長時間( 2〜3日以上)日射(紫外線)を受けると表面から徐々に劣化するので、原則として屋内に保管する。やむを得ず屋外に保管するときはシート等の覆いを掛ける。また、施工後も日射を受けるときは速やかに仕上げの施工(コンクリート打込み等)を行う。
なお、屋外に保管するときは、風で飛散しないようしつかり保持しておく。
(iii) 反りぐせ防止のため、平たんな敷台等の上に積み重ねる。
(iv) 独立気泡のため、吸水性・透湿性は小さいが、水や湿気にさらされると断熱性能が徐々に低下するので、(ii)に配慮する。
(v) 通行の多い場所は材料を破損するおそれがあるので保管場所としては避ける。
(vi) 溶接火花、バーナー等火気のある付近には保管しない。
(e) 工 法
(1)概要
打込み工法は、ボード状断熱材をあらかじめ型枠に取り付けるか、ボード状断熱材そのものか、又は複合成形板を型枠として用いてコンクリートを打ち込むことにより断熱材をコンクリート躯体の所定の位置に取り付ける工法である。
(2) 工法の特徴
(i) 断熱材と躯体が密着している場合は、内部結露やはがれが比較的少ない。
(ii) 工期の短縮、コストの節減が図れる。
(iii) 通常の型枠大工で施工できる。
(iv) 建込み時において精度が要求される。
(v) 打込み後のコンクリート面の確認が困難である。
(3) 施工上の注意事項
(i) 加工及び取付け
断熱層が連続しなかったり、断熱材を欠損しなければ納まらないような形状での使用は避け、事前に納まりを十分に検討する必要がある。
加工・取付け上の注意事項は次のとおりである。
1) 断熱材の切断が不整形であると、その部分からコンクリートが表面にはみ出して冷・熱橋となるので、切断は測定のうえ定規を当てて正確に行う。
2) 断熱材の継目は、目違い防止のため型枠の継目を避けるよう割り付ける。
3) 継目は、縦方向だけでも相継ぎ等とするのが理想的であるが、テープ張り等の処位を講じてコンクリートの流出を防止する(図19.9.2参照)。
図19.9.2_断熱材継目部のテープ処理例(JASS24より).jpeg
図19.9.2 断熱材継目部のテープ処理例(JASS 24より)
4) 入隅部・出隅部は、断熱材が連続するように納まりを考え、冷・熱橋とならないようにする。壁入隅部の処置例を図19.9.3に示す。
図19.9.3_壁入隅部の処置(JASS24より).jpeg
図19.9.3 壁入隅部の処置(JASS 24より)
5) 断熱材の取付けは、型枠の内面に釘で仮留めする。釘は、断熱材の端から30〜 50mm内側に打ち付ける。
釘は、座紙(ろうを含浸させたもの、アスファルトフェルト等)を取り付けたもの、又は断熱材専用の座付き釘とし、釘頭が断熱材内部にめり込まないように打ち込む。
6) セパレーター・アンカーボルト・インサート・ドレン回り・パイプ等の金物類が、断熱材を貫通する部分は冷・熱橋となるので、極力その欠き取りを少なくして補修を容易にする。
7) 冷・熱防止を考慮したセパレーター、インサート等の例を図19.9.4及び5に示す。ただし、「標仕」14.4.2(d)ではインサートは鋼製、「標仕」 19.9.2(b)(5)ではコーンの撤去跡は断熱材張付け又は断熱材現楊発泡工法による断熱材の充填となっているので注意する。
なお、冷・熱橋とは、建築物を構成する部位において、熱貫抵抗が局部的に小さい部分をいう。このような部分では熱損失が生じ、結露が発生しやすい。
図19.9.4_冷・暖熱橋を考慮したセパレーターの例.jpeg
図19.9.4 冷・熱橋防止を考慮したセパレーターの例
図19.9.5_冷・熱橋防止を考慮したインサートの例.jpeg
図19.9.5 冷・熱橋防止を考慮したインサートの例
(ii) 養生等
① 断熱材に火気が触れると火災事故の原因となるので、断熱材集積場所や施エされた箇所等を工事関係者に周知徹底する。
② ガス圧接・溶接時等の炎や火花が断熱材に触れるおそれがあるときは、鋼板等の不燃材による保護を撤底し、消火器等も配置する。
③ 断熱材に局部的に大きな荷重がかかり破損のおそれがあるときは、合板等で養生する。
④ 断熱材は軽いため、その切りくずは風により型枠内部や現場外にも飛散しやすいので、切りくず等は発生の都度片付ける。
(iii) コンクリートの打込み
① フレキシブルホース又はシュートからのコンクリートを、断熱材の張りじまいに直接当てると、コンクリートが裏面に回り込むおそれがあるので留意する。
② 急速打込みや集中打込みを避ける。
③ バイプレーター等は、断熱材に触れないように垂直に上下させる。また、同一箇所に長時間かけてはならない。
④ 打込み時及び打込み後のコンクリート表面の確認は困難なため、豆板やコールドジョイント等の欠陥の発生防止には十分に注意する。
(iv) 型枠取外し後の補修
① 断熱材が欠落している箇所は、その部分のコンクリートをはつり取り、断熱材を張り付けるか、「標仕」19.9.3の断熱材現場発泡工法で隙間なく補修する。ただし、結露のおそれのある寒冷地域では断熱材現場発泡工法が一般的である。
② 継目の中にコンクリートがはみ出しているときは、断熱材現場発泡工法によりそのまま補修する。ただし、継目の隙間が大きい場合にはVカットしたうえで補修する。
③ セパレーターの頭部は、確実に補修しておかないと後日内壁仕上げ面に汚染が生じてくる(セパレーター頭部が冷・熱橋となり、その部分の内壁仕上げ面が結露し汚染される)。
④ 開口部の枠回りは、形状が複雑で断熱材打込み工法による施工が困難な場合が多い。そのような箇所は断熱材現楊発泡工法により施工する。
(4) 断熱材張付け工法(「標仕」以外の工法)
(i) 概 要
断熱材張付け工法は、ボード状断熱材を接着剤等により下地面に取り付ける工法、又は複合成形板を接着剤等により、直張りする工法である。
なお、「標仕」19.9.2(b)(5)では断熱材打込み工法での開口部等のモルタル詰めの部分及び型枠緊張用ボルト、コーンの撤去跡は、断熱材張付け又は断熱材現場発泡工法での断熱材充填によるとしているが、壁面全体に断熱材を張り付ける工法については規定していない。
(ii) 特 徴
① 仕上りがきれいで、表面材を補修する必要がない。
② 施工技術が要求される(接着剤を使用する場合、作業環境の温湿度や、下地の乾燥状況を正確に把握する必要があるため)。
③ 下地(躯体)の平滑度が要求される。
④ 打込み後のコンクリート面が確認できる。
⑤ 断熱材と下地との接着が不十分な場合には、断熱材とコンクリートの境界面に結露が生じやすくなる。
(iii) 材 料
① 断熱材
 (d)に示す断熱材を使用する。
② 張付け用接着剤
「標仕」では、接着剤は断熱材製造所の指定する製品でよいが、ホルムアルデヒド放散量については特記がなければF☆☆☆☆としているので、接着剤の放散量が設計図書で指定されたものであることを確認する必要がある
(10節参照)。
(iv) 施工上の注意事項
① 下地面の処理
1) 下地面の不陸が、数mm程度であれば接着剤を厚くして調整する。調整可能な不陸は、長さ2m当たり3mm程度以下である。
2) 不陸が大きいときは、はつり又はセメント系下地調整塗材で補修する。
3) 下地面の汚れ、油分及びほこりの付着は、はく離の原因となるので除去する。
② 張付け
1) 接着剤は、下地面の温度及び乾燥程度により、接着性に影響が生じるので性能表等を確認し適切に管理する。
2) 断熱材と躯体との境界面に隙間が生じると、その部分に結露が生じやすくなるため、接着は全面接着とし、密着させて張り付ける。
3) 溶剤形の接着剤を使用するときは、火気及び強制換気等安全上の処置を講ずる。
19.9.3 断熱材現場発泡工法
(a) 一般事項
(1) 断熱材現場発泡工法は、断熱施工現楊でポリイソシアネート成分及びポリオール成分の2原液を混合し、吹付け又は注入して発泡・硬化させ、所定の厚さの継目のない断熱層を形成させる工法である。
(2) 断熱材現場発泡工法は、一般的な外壁内面や屋根裏への施工に加え、断熱材打込み工法には適さない複雑な納まりとなる部位、開口部回りや断熱材補修部等冷・熱橋となりやすい部位への施工に適した工法である。
(b) 作業の流れを図19.9.6に示す。
図19.9.6_断熱材現場発泡工法の作業の流れ.jpeg
図19.9.6 断熱材現楊発泡工法の作業の流れ
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表
② 製造所名及び施工業者名
③ 有資格作業者による施工(1級又は2級熱絶縁施工技能士)
④ 品質、厚さ等(難燃性,施工厚さ等)
⑤ 工法(下地の確認及び処置方法吹付け方法補修方法等)
⑥ 養生方法(保管方法、吹付け作業時の周辺への養生方法、施工後の養生方法等)
⑦ 安全衛生(保護具の着用、火気に対する留意事項、換気方法等)
⑧ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(d) 材 料
(1) 吹付け硬質ウレタンフォーム
(i) 断熱材は、「標仕」19.9.3(a)により、JIS A 9526(建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォーム)の規格に適合する製品を使用することと定められている。種類は特記によるとしているが、特記がない場合、発泡剤の種類は、フロン類を用いず、二酸化炭素(CO2)等を用いたもので、壁、屋根裏等の用途に適するA種lとしている。
(ii) JIS A 9526に規定された吹付け硬質ウレタンフォームの種類を表19.9.9に、その品質を表19.9.10に示す。表19.9.10に規定されている熱伝淋率の値は、2006年のJISでは解説で設計値として推奨されていた数値が、2013年のJISでは規格値として採用された。
なお、(-社)公共建築協会では、「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4(e)参照)の一環として、「標仕」の規定に基づき「現場発泡断熱材」を評価しているので参考にするとよい。
表19.9.9 吹付け硬質ウレタンフォームの種類(JIS A 9526 : 2013)
表19.9.9_吹付け硬質ウレタンフォームの種類(JIS A9526).jpeg
表19.9.10 吹付け硬質ウレタンフォームの品質(JIS A 9526 : 2013)
表19.9.10_吹付け硬質ウレランフォームの品質(JIS A9526).jpeg
(iii) 吹付け硬質ウレタンフォーム断熱材の特徴は次のとおりである。
① 目地のない連続した断熱層が得られ、曲面や窓枠回り等複雑な形状にも施工が容易である。
② 現楊発泡断熱材の楊合は、接着性(自着性)があるので接着剤が不要である。
③ 吹付け層数を変えることにより、断熱層の厚さを調整できる。
④ 打込み後のコンクリート面の確認ができる。
⑤ 平滑な表面が得にくいため、断熱層厚さが不均ーになりやすい。
⑥ 施工技術が要求される(専門施工業者による施工管理が必要)。
(2) 原液の保管及び取扱い
「標仕」19.9.3(c)では、火気及び有害ガス等に対する安全衛生対策については、関係法令等に従い十分に行うよう定めている。原液は、危険物第四類第三又は四石袖類に該当するものがあるので、消防法等に従って保管し、取り扱う必要がある。保管等は.消防法労働安全衛生法その他の関係する法規に従って行う。
なお、原液の保管及び取扱いについての留意事項は、次のとおりである。
① 保管場所を決め、その周囲を鋼製パイプ等で区画し、火気厳禁、立入禁止等の表示を行い、消火器等を適切に配置する。
② 使用中の原液ドラム缶等は、水が混入すると発熱したり、ガスが発生することがあるので,雨水等が混入しないよう十分注意する。
③ ドラム缶等は、直射日光にさらされないようにシート等で覆うなどして、高温にならないように、また、冬期は材料が 0℃以下にならないように配慮する。
④ 原液が直接皮膚や目に触れないように、断熱材製造所の仕様に従って、保護具(保護メガネ、防毒マスク等)を着用する。
(e) 工 法
断熱材現場発泡工法の施工は、「標仕」19.9.3(c)により断熱材製造所の仕様によると定められている。ただし、作業者には一定レベル以上の技能と安全管理能力が求められるので熱絶縁施工技能検定合格者の活用が望ましい。ここでは一般的な工法の概要を示す。
(i) 下地処理
① 下地面の大きな不陸は、断熱層の厚さの確保及び仕上材の取付けに影響するので事前に補修する。
② 下地面の水分、油分、汚れ及びほこり等は、はく離の原因となるので除去する。
(ii) 吹付け作業前の養生・準備
① 建具枠等の化粧材回りの吹付けをするときは、ポリエチレンシート等により汚染がないよう養生する。
② 風があるときは、現場発泡断熱材が飛散するのでシート等で養生する。
③ 換気の少ない場所では、酸欠状態となりやすいので、強制換気等の対策を講ずる。
(iii) 吹付け
① 吹付け面の温度及び乾燥度は、発泡性及び付着性に大きな影響を及ぼすので性能表等により適切な条件で施工する(吹付け面の温度が5℃以上で施工すること)。
② 躯体からのボルト、パイプ等の金物類は、冷・熱橋となり結露しやすいので、金物回りは入念に施工する。
③ 施工面に、約5mm以下の厚さになるように下吹きする。総厚さが30mm以上の場合には多層吹きとし、各層の厚さは各々30mm以下とする。ただし、1日の総吹付け厚さは80mmを超えないものとする。
なお、吹付け厚さの許容誤差は、- 0から+10mmとすればよい。
④ 吹付け作業の困難な狭い場所では、ガンスプレーとしないで、簡易発泡ボンベ又は付塗りとする。
⑤ 作業者は吹付け作業中にワイヤゲージ等を用いて随時厚みを測定する。所定の厚さに達していない箇所は補修吹きを行い、逆に厚く付き過ぎて表面仕上げ上支障となる箇所は、カッターナイフ等により表層を除去する。
(iv) 安全管理
安全管理上のポイントは、吹付け作業中及び作業後において断熱材に火気が接触しないように、火気厳禁を遵守することにある。特に吹付け後、あと工程での鋼材の溶接・溶断作業は極力避けた工程管理を行う。どうしても避けられない場合でも断熱材に直接火気が接触しないように不燃材料で完全に養生する。また、間接的でも鉄骨等を伝わって断熱材に熱が伝わることがないよう万全の措置が必要である。

19章 内装工事 10節 内装材料から発生する室内空気汚染物質への対策

19章内装工事
10節 内装材料から発生する室内空気汚染物質への対策
19.10.1 一般事項
(a) シックハウス・シックビル問題が社会的に認識され、各省庁、各事業者団体等において対策が講じられている。ここでは、「標仕」に規定されている内装工事(内装の塗装工事、左官工事、木工事等を含む。)を監理するに当たって必要となるシックハウス対策の関連知識についてまとめている。
(b) ホルムアルデヒドの発散と放散
建築基準法等では「ホルムアルデヒド発散建築材料」、「ホルムアルデヒド発散速度」等と記しており、JISやJASでは「ホルムアルデヒド放散量」、「ホルムアルデヒド放散速度」等と記している。いずれも、告示等に関連して呼称が定められているが同じ意味と考えてよい。本指針においても、「発散」と「放散」を同じ意味で、適宜使用している。
19.10.2 厚生労慟省が定めた室内濃度の指針値
厚生労働省は1997年6月にホルムアルデヒドについての室内濃度の指針値を定めた。その後、表19.10.1に示すような化学物質について室内濃度の指針値を定めている。この濃度指針値は、現時点で入手可能な毒性にかかわる科学的知見から、ヒトがその濃度の空気を一生涯にわたって摂取しても、健康への有害な影響は受けないであろうと判断される値を算出したものである。国土交通省ではシックハウス対策を盛り込んだ改正建築基準法を平成15年7月に施行した。その改正建築基準法では、居室のホルムアルデヒド濃度を厚生労働省が定めた濃度指針値(100μg/m2)以下に抑制するために、通常必要な、建築材料、換気設備等に関する構造基準を定めている。
表19.10.1 厚生労働省が定めた室内濃度指針値
表19.10.1_厚生労働省が定めた室内濃度指針値.jpeg
19.10.3 建築基準法におけるシックハウス対策
(a) 対策の概要
平成15年7月1日にシックハウス対策を盛り込んだ「建築基準法等の一部を改正する法律」(以下、この節では「法」)が施行された。その概要は次のとおりである。
(i) 防蟻剤として用いられていたクロルピリホスの使用禁止
(ii) 「第一種、第二種及び第三種ホルムアルデヒド発散建築材料」を告示で指定し、これらのホルムアルデヒド発散建築材料については居室の種類及び換気回数に応じて、内装仕上材としての使用制限を行う。
(iii) 居室には一定の条件を満たす機械換気設備等の設置を義務付ける。
(iv) 天井裏等については、次のいずれかの対応を行う。
① 下地材、断熱材等への第一種及び第二種ホルムアルデヒド発散建築材料の使用禁止
② 気密層又は通気止めにより、居室内へのホルムアルデヒド流入の抑制
③ ①又は②の対策を講じていない天井裏等の部分について、居室の空気圧が当該天井裏等の部分の空気圧以上となるよう機械換気設備等により措置を講ずる。
(b) ホルムアルデヒド発散建築材料
(1) ホルムアルデヒド発散建築材料は、平成14年の国土交通省告示(以下「告示」)第1113〜1115号により指定されている(以下「指定建築材料」)。指定建築材料の一覧を表19.10.2に示す。
表19.10.2 指定建築材料の一覧
表19.10.2_指定建築材料の一覧.jpeg
(2) 法でホルムアルデヒド発散建築材料として規制を受けるのは、表19.10.2に示された材料が居室の仕上材や下地材に使用された場合である。
表19.10.2から分かるように、指定建築材料に該当しないものには、塗料で「合成樹脂エマルションペイント」、「つや有合成樹脂エマルションペイント」、「合成樹脂エマルション模様塗料」等、また、仕上塗材で「内装セメント系薄付け仕上塗材」、「内装消石灰・ドロマイトプラスター系薄付け仕上塗材」、「内装水溶性樹脂系薄付け仕上塗材」、「内装消石灰・ドロマイトプラスター系厚付け仕上塗材」、「内装せっこう系厚付け仕上塗材」等、更に、接着剤では「ポリ酢酸ビニルエマルション系接着剤」、「エポキシ樹脂系接着剤」等がある。
(3) 指定建築材料であっても、法の規制対象とならない場合がある。それは、面的に用いない柱等の軸材や回り縁、窓台、幅木、手すり、かもい、敷居、なげし等の造作部分、建具枠、部分的に用いる塗料や接着剤等は対象外である。ただし、これらの露出面積が室内に面する面積の1/10を超える場合は、面的な部分と見なして規制対象となる。
(c) ホルムアルデヒドの発散速度による指定建築材料の種別
(1) 指定建築材料は、ホルムアルデヒドの発散速度により表19.10.3のように、第一種ホルムアルデヒド発散建築材料(表示なし。ただし、一部のJASではF☆)、第二種ホルムアルデヒド発散建築材料(F☆☆)、第三種ホルムアルデヒド発散建築材料(F☆☆☆)に分類される。また、ホルムアルデヒドの発散速度が極めて低い(0.005mg /m2h以下)材料は、最上位規格の材料(F☆☆☆☆)として位置付けられ、ホルムアルデヒド発散建築材料としての規制を受けない。
表19.10.3 ホルムアルテヒドの発散速度による指定建築材科の種別等
表19.10.3_ホルムアルデヒドの発散速度による指定建築材料の種別等.jpeg
(2) 指定建築材料の種別による使用制限は、次のとおりである。
(i) 第一種ホルムアルデヒド発散建築材料は居室の内装仕上げに使用できない。
(ii) 第二種及び第三種ホルムアルデヒド発散建築材料を居室の仕上材に使用する場合は、換気回数に応じて、居室の床面積に対する内装材の露出面積が規制される。
19.10.4 「標仕」におけるホルムアルデヒドを放散する材料の扱い
(a) 「標仕」においては現場における工事管理上の簡明化等を図るため、法による規制にかかわらず、適用する材料規格でホルムアルデヒドに関する品質基準が定められているものについては、特記がなければホルムアルデヒド放散量F☆☆☆☆のものを使用することとしている。
(b) この要求は、法に基づくものではないため、材料の市場性、部位、使用環境等を考慮して特記によりF☆☆☆☆以外のものを使用する場合もある。この場合は特記されている内容を十分確認して工事監理をする必要がある。
なお、特記された内容に適合するものが入手困難な場合等は、「標仕」1.1.8[疑義に対する協議等]を適用して処理することになる。
19.10.5 指定建築材料及びその他の材料のホルムアルデヒド放散等級等の表示と確認
(a) ホルムアルデヒド放散等級の表示システム
建築材料のホルムアルデヒド放散等級の表示にかかわるシステムは、その対象製品数が多いこともあって複雑である。ここでは、建築材料を次の4つに区分して考えることとする。
(i) 指定建築材料であり、かつ、材料の品質が JISやJAS(以下「JIS等」)に適合するもの
① 材料がJIS等のマーク表示品の場合は、JIS等に規定されるホルムアルデヒド放散区分等の表示で確認する。
② JIS等があっても JIS等のマーク表示対象外の材料やJIS等に適合するものでもJIS等の認証を取得せずに製品を製造している場合がある。この場合は、ホルムアルデヒド発散等級に関して指定性能評価機関で評価を取得して国土交通大臣の認定を受けたものを認定に基づく表示で確認する。
(ii) 指定建築材料であり、その材料に関するJIS等が存在しないもの又はJIS等があってもホルムアルデヒド放散等級に関する品質規定がないもの
① ホルムアルデヒド放散等級に関して指定性能評価機関で評価を取得して国土交通大臣の認定を受けたものを認定に基づく表示で確認する。
② なお、このような材料を工事で使用する場合「標仕」では、ホルムアルデヒド放散量等を含めて材料の品質基準等を特記により指定しなければならない。
(iii) 指定建築材料ではないが、JIS等にホルムアルデヒド放散等級等が規定されているもの
なお、この場合も「標仕」では特記がなければF☆☆☆☆としている。
① 建築材料がJIS等のマーク表示品の場合は、JIS等に規定されるホルムアルデヒド放散区分等の表示を確認する。
② JIS等が存在しても、JIS等のマーク表示を行っていない材料や、JIS等の適合品であってもJIS等の認証を取得せずに製造している場合等は、事業者団体等でホルムアルデヒド放散等級等に関して自主表示制度を実施している場合がある。この場合は、その表示を確認する。
なお、指定建築材料以外のものは国土交通大臣の認定は行っていないが、指定性能評価機関がホルムアルデヒド発散等級を独自に評価する場合もある。この場合は、評価に基づく表示を確認する。
(iv) 指定建築材料以外で、JIS等にホルムアルデヒド放散等級が規定されていないもの
なお、JASS等「標仕」で指定した規格にホルムアルデヒド放散量が規定されている場合は、「標仕」では、特記がなければF☆☆☆☆のものとしている。
① 事業者団体等でホルムアルデヒド放散等級等に関して、自主表示制度を実施している場合があるので、その場合は自主表示制度に基づく表示を確認すればよい。
② (iii)②のなお書きと同様に、指定性能評価機関がホルムアルデヒド発散等級を評価する場合は、評価に基づく表示により確認する。
以上のように、ホルムアルデヒド放散等級の表示には
① JIS等に基づくもの.
② 国土交通大臣の認定によるもの、
③ 指定性能評価機関の評価によるもの及び
④ 事業者団体の自主表示によるもの
が存在することに留意する。
(b) 各表示システムにおけるホルムアルデヒド放散等級の表示等
(1) 建築材料関連のJIS及びJAS
(i) 法の改正を受けて、シックハウス対策のためのJIS及びJASが整備され、新たに接着剤、壁紙、塗料、断熱材についてもホルムアルデヒド放散量による等級区分が設けられた。
JIS及びJASでは個別材料のホルムアルデヒド放散量による等級区分及びその表示記号として統一的に、
F☆☆☆☆:放散量が小さく使用規制が必要ないもの
F☆☆☆  :放散量が比較的少なく、内装材として用いる場合は使用面積を一定割合にすることで使用でき、天井裏等では制限なく使用できるもの
F☆☆  :放散量はある程度あるが、内装材として用いる場合は使用面積を一定割合にすることで使用でき、天井裏等では換気設備や通気止めを設けることで使用できるもの
F☆   :内装の仕上げとして使用できないもの(一部のJASに設けられた等級)等が用いられる。
なお、JASでは「非ホルムアルデヒド系接着剤使用」等の表示が用いられるが、これらはF☆☆☆☆と同様に建築材料の使用規制対象とならないものである。
(ii) 個別指定建築材料のJAS(法による規制対象品)
① 合板、木質系フローリング、構造用パネル、集成材及び単板積層材についてホルムアルデヒド放散量による等級区分が設けられている。ただし、コンクリート型枠用合板についてはF☆☆☆☆のものはない。
② これらの材料の等級区分は、ホルムアルデヒド放散量によるもの、使用する接着剤及び塗料の規制によるものなど、個別の材料によって詳細に規定されている。
(iii) 個別指定建築材料のJIS(法による規制対象品)
① MDF、パーティクルボード、壁紙、接着剤、建築用仕上塗材、塗料等についてホルムアルデヒド放散量による等級区分が設けられている。
② これらの材料の等級区分は、ホルムアルデヒド放散量又は速度によるもの、材料の主成分によるものなど、個別の材料によって詳細に規定されている。
なお、具体的内容等は、国土交通省住宅局建築指導課他編「建築物のシックハウス対策マニュアル」(以下、この節では「対策マニュアル」という。)を参照されたい。
(2) 国土交通大臣による認定
指定建築材料で、JIS又はJASに基づく等級区分等の表示ができないもの(例えば、二次加工にホルムアルデヒド系接着剤を使用したものなど)は、原則として、国土交通大臣による認定が必要である。大臣認定は、法に基づく指定性能評価機関の評価を受け、その性能評価書を添えて大臣認定の申請をすることにより国土交通大臣の認定書が交付される。
(3) 指定性能評価機関の評価書による表示
国土交通大臣の認定は指定建築材科を対象に実施されるが、指定建築材料に該当しないものについても、一部の指定性能評価機関はホルムアルデヒド発散建築材料に関する評価書を独自に発行している。
(4) 事業者団体等による表示
指定建築材料の一次製品については、JIS若しくはJASによる表示又は大臣認定が行われ、それにより等級を確認できる。しかし、二次加工品等についても、告示に適合することを、分かりやすく表示する必要があり、事業者団体等による表示制度が設けられている。
なお、表示の例は、対策マニュアル、事業者団体等による資料等を参照されたい。
19.10.6 シックハウス問題に対応した建築材料
近年、ホルムアルデヒド等を材料の表面から吸着したり、分解したりして「室内化学物質濃度の低減が可能」とする材料がかなり見られるようになってきたが、その評価基準等については試験方法等が統一されておらず、供給者が独自の試験結果等を提示しているのが現状である。
十分な効果があるかどうか、また、その効果の持続性がどの程度あるのか、有害物質の副次的な放散はないか、などについてはまだ不明の部分も多いので、採用に当たっては製造所等のデータや試験条件等をよく検討する必要がある。
これらの材料について、現状では次のようなものがある。
(1) 多孔質塗壁材:珪藻土、ゼオライト、ホタテ貝殻粉末、シラス等を原料とする壁材。光触媒を加えたものもある。
(2) 壁材:多孔質セラミックタイル、天然ゼオライトボード、珪藻頁岩セラミックボード、化学薬剤含有せっこうボード等
(3) 天井材:化学薬剤含有ロックウール天井板等
(4) 床材:備長炭入り畳、化学薬剤含有カーペット等
(5) 設備系:空気清掃機能付き換気扇、空気清浄機能付きエアコン等
なお、(-財)日本建築センターでは「新建築技術認定事業」を設け、これらの材料に対して認定している。その一つに「室内空気中の揮発性有機化合物汚染低減建材」があり、数種の材料が認定技術を取得している。
19.10.7 ホルムアルデヒド及び他の揮発性有機化合物を対象とした工事上の配慮事項
(a) 一般事項
平成24年4月5日に「官庁営繕部におけるホルムアルデヒド等の室内空気中の化学物質の抑制に関する措置について」(1.5.9(b)参照)が、各地方整備局営繕部長等あてに通知されている。この中では、① 建築材料等の適正な選択による対策、② 施工中の安全管理、③ 施工終了時の測定、④ 施設引渡し時の保全指導等が示されていることに注意する必要がある。
ここでは、工事監理及び施工管理における一般的配慮事項について述べる。
(b) 材料の受入れ検査
ホルムアルデヒド放散区分の表示を有する材料(指定建築材料以外のものを含む。)についてはホルムアルデヒド放散等級の区分を確認する必要がある。
なお、「標仕」では、特記がなければ、最上位の規格であるF☆☆☆☆を使用することとしている。
(c) SDS(安全データシート)の活用
ホルムアルデヒドについては法に基づき、表示システムが整備されたのでそのシステムにより材料のチェックが可能である。しかし、ホルムアルデヒド以外の揮発性有機化合物(トルエン、キシレン、スチレン等)に関しては、JIS等による規格化が検討の途上であり、含有しているか否かや放散速度のデータ等の判定が難しいものも多い。しかし、接着剤、塗料等に関しては少なくとも製造業者等から SDSを入手しておくことが大切である。
なお、SDSとは、化学物質及びそれらを含有する製品の物理化学的性状、危険有害性、取扱い上の注意等についての情報を記載した安全データシート(Safety Data Sheet)のことである。
平成11年7月に公布された「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(以下「化管法」)のもと、PRTR制度(化学物質排出移動量届出制度)が導入され、化学品の性状や取扱いに関する情報の提供を規定する制度((M) SDS制度)が法制化され.平成13年1月から運用されている。
また、様々な化学品が世界各国で流通している近年、国際標準となる情報伝達方法の整備の必要性が高まっており、平成15年には、化学品の分類・表示方法の国際標準として「化学品の分類およぴ表示に関する世界調和システム(GHS)」が国連において採択された。GHSの導入は、欧米諸国やアジア各国においても進められてきているが、日本でも化管法に基づく情報伝逹等において、その導入が進められており、平成24年6月から、化管法に基づく情報伝達を行う際には、GHSに基づくJISに適合するSDS及びラベルの提供に努めることとなっている。
したがって、材料の購人者等はこのシートの提出を製造者に対して求めることができる。
なお、SDSでの表示が義務づけられない場合は各法律で異なっているため、注意が必要である。例えば、PRTR指定化学物質を含有する製品の場合では、次のような場合は対象とならない。
① 指定化学物質の含有率が指定の値より小さいもの
② 固形物であり、使用時にも同形物以外の形状(粉休や液体)とならないもの(管、板、組立部品等)
③ 密封された状態で使用されるもの(バッテリー、コンデンサー等)
④ 一般消費者用の製品(家庭用l洗剤、殺虫剤等)
⑤ 再生資源(空き缶、金属くず等)
ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン等の化学物質を一定量以上含有する材料は、このデータシートの中で、その種類、量、性状等に関する情報を記述することになっているので、SDSを入手して活用することが望ましい。
(d) 材料の保管
(1) 建築材料間での化学物質の移行を防ぐために、施工前の材料保管については、倉庫、搬送、施工現場それぞれの場所で適正な状態を保つことが重要である。
(2) 具体的には、次のようなことが挙げられる。
(i) こん包を開けたのちに放散等級が異なるものを同じ場所に置かない。
(ii) こん包を開けてむき出しの状態にしたら、放散等級が異なるものを重ねて保管しない。
(iii) 風通しに留意する。
(e) 材料の養生
(1) 化学物質を使用したものは、工場で生産されてから含有化学物質を放散し始める。その放散量は、時間の経過とともに減少するのが一般的である。
(2) したがって、搬入された材料で、可能なものは開封して風通しの良い場所に置き、化学物質の放散に努めるなどしてから使用することが望ましい。また、養生シートで覆う場合には、通気性のあるものを使用するとよい。
(f) 工事中の配慮事項
(1) (d)及び(e)に留意し、施工中の換気はもとより建築物が完成するまでの積極的な通風換気により放散を促し、少しでも室内濃度の低減に努めることが重要である。
(2) 施工段階や資材によって、室内環境は様々な影響を受けるが、一般的には、壁パネルやフローリングのような大きな面積の作業や最後の仕上げ工事・クリーニングを行うときに、室内の化学物質の濃度が上昇すると考えられる。
(3) 具体的には、戸や窓の開放による換気・通風のほか、家具やキッチンセットの扉もできる限り開放して内部に発生した化学物質を放散させることなどがある。
(4) 工程的には、工事完成から供用開始までに放散のための養生期間をできるだけ長く設けるように努める。
(5) 個別材料に対する配慮事項
(i)壁紙の場合
① 壁紙の施工は、一般的に下地材(せっこうボード等)にシーラー(水性アクリル系エマルション)を塗布し、でん粉系接着剤を使用して行われるため、ホルムアルデヒド等の放散は壁紙だけではなく、下地等からの影響もある。
② 壁紙には、紙や繊維製のように通気性が高いもの、塩化ビニル樹脂やプラスチック製のように通気性が低いものなどがある。また、汚れ防止を目的として表面にガスバリア性の高いフィルムを使用したものは極めて通気性が低い。
③ 通気性の高い壁紙を使用した場合、下地材や接着剤の影響が直接出てくるため注意が必要である。
④ 過去にはでん粉系接着剤の防腐剤としてホルマリンが使用されていたことがあるが、現在はノンホルマリンタイプと称する壁紙用接着剤が一般的になっている。
でん粉系接着剤及び樹脂系接着剤についてはJISでホルムアルデヒド放散量が規定されているので、設計図書で指定された放散等級のものを使用する。
なお、「標仕」では特記がなければF☆☆☆☆としている。
⑤ 下地調整に壁紙用のシーラーやパテが、また、端部の仕上げにコーキング材が一般的に用いられる。これらは水性のものが主流であるが、下地の状態等から有機溶剤を含むものを使用する場合がある。その場合は十分な乾燥期間をとり、換気を十分に行う必要がある。
⑥ 壁紙は、シーラーやパテが十分に乾燥したのちに施工する。施工に際しては壁紙だけではなく、下地に使用する材科についても十分に注意する必要がある。
壁紙の張替えでは、施工後すぐ供用開始する場合があるため、特に注意が必要である。また、供用開始直後の十分な換気に留意する。
(ii) 塗装の場合
① 工場塗装と現場塗装の違い
工場で塗装され、塗膜が十分硬化していれば、現場での化学物質の放散は非常に少ないと考えられる。しかし、塗料、下地、塗装条件、塗装工程.設備条件等により化学物質の放散が残る場合がある。例えば、アミノアルキド樹脂塗料では焼付け乾燥が不十分だったりすると、ホルムアルデヒドが放散する場合がある。
現場塗装の場合は、化学物質の放散が現場で起こるので、塗装後の換気に十分留意する。
② 新築工事と改修工事の迩い
新築の場合、現場施工の塗装工事は以前に比べ少なくなっている。また、工事完成から供用開始までに多少時間の余裕があることから、問題は比較的生じにくいと考えられる。
しかし、改修工事では、多くの場合建物を利用しながら塗装が行われるため問題が生じやすいので、施工及び養生時の換気に十分留意するとともに、工事完成後、施設の管理者に換気に対する留意事項等について十分な保全指導を行うことが重要である。
③ 塗料及び塗装工法の選択について
塗装は、その目的や下地の材質、使用環境等によって、塗料の組合せや工法等が変わる。従来は、品質やコスト等が材料や工法決定の要点であり、室内環境への配慮は少なかったが、現在は比較的低い濃度の化学物質による健康障害への防止が社会的な要請であることを十分に認識して、塗料を選定し施工を行うことが重要である。
④ 内装用塗料及び仕上塗材の場合
工程ごとの塗付け量又は所要量について施工要領書(工種別施工計画書)に明記し、施工工程の各段階及び施工完了後の換気を積極的に行い、化学物質の放散を促進させるように努める。
(iii) 接着剤の場合
① どのような接着剤を使用しても換気は必要であり、特に溶剤を含む場合は施工後も十分な換気を行うことが重要である。
② 冬期の施工では、気温が低いことから、接着剤中の成分が揮発しにくくなるので、注意を要する。特に居住系の部屋のように気密性の高い場合は、施工中の換気が重要である。雨期の工事でも同様の注意が必要である。
③ 溶剤形接着剤を使用する場合は、施工要領書等を十分周知させて、特にオープンタイム(工程間隔時間)は十分にとる必要がある。
④ 2液形の接着剤を使用する場合は、混合不良により、あとで接着剤が湿気等で溶け出し、思わぬトラプルを起こすことがあるので、混合比を正確に計量して、十分に混合する必要がある。
⑤ 水性形接着剤(特に合成ゴム系ラテックス形等)でも、少量の溶剤を含むものもあるので、施工中も換気を行うことが望ましい。
⑥ ビニル床シートやフローリングの重ね張りは、先に施工したものと下地との接着が不安定になるとともに溶剤等が残りやすく、数か月残存することもあるので、こうした重ね張りは避けるほうがよい。
⑦ 換気の方法については、施工時に使用した溶剤が隣接する建築物や部屋に流れてトラブルになる場合もあるので、十分注意する必要がある。改修の場合には、ビニルシートや板等で施工部と供用部分とを区分けする。
⑧ 粘着テープやフィルムを用いる場合でも、粘着剤の成分や溶剤のトルエンが残存している場合があるので、十分換気する必要がある。
⑨ 日本接着剤工業会では、接着剤の施工上の基準として、接着剤の種類に応じた換気の目安等の区分を表19.10.4に、また、区分ごとの有機溶剤含有量、換気の目安等を表19.10.5のようにまとめているので参考にするとよい。
表19.10.4 接着剤の種類による施工上の注意事項
表19.10.4_接着剤の種類による施工上の注意事項.jpeg
表19.10.5 有機溶剤含有量に応じた換気の目安等
表19.10.5_有機溶剤含有量に応じた換気の目安等.jpeg
(iv) 木材保存剤(現場施工用)の場合
木材の保存処理に使用する薬剤の成分は、一般に揮発性は極めて低いとされているが、現場で保存処理を行う場合には、薬剤の飛散による影響や子供の進入防止等に注意する必要がある。
なお、保存処理には、薬剤の取扱いについて専門的な知識・技能をもつ信頼できる者を選定することが重要である。
(v) 防蟻剤等の場合
① 法では、クロルビリホスに関する建築材料の規制として、居室を有する建築物にはクロルピリホスを添加した材料の使用が禁止された(建築物の部分として5年以上使用したものは除外)。
② しろあり防除の土穣処理等の施工に当たっては、信頼のおける者を選定することが重要である。
③ 床下の防蟻施工を行う場合は、施工部分の床下空気が室内に流入することのないよう、十分に遮断されている床構造であることを確認する。また、防蟻処理後に床下空気が開口部を通して室内に流入しないことを確認することも重要である。
④ 薬剤の種類、成分、人体への影響、完成後の管理方法等について.「保全に関する資料」(1.7.3参照)に記載し、「施設引渡し時の保全指導」の一環として施設管理者等に十分な情報を伝えることが重要である。
19.10.8 工事完成後の配慮事項
(a) 施設引渡しの配慮事項
(1) 施工直後は、材料の表面や塗装面から化学物質が大量に放散され、室内のホルムアルデヒドや揮発性有機化合物の濃度が,極めて高い状態になることも珍しくない。化学物質の濃度低減のためには通風・換気の時間を長くとることが有効であり、供用開始までに施設全体を養生させるために、できるだけ余裕のある工程管理を行うようにする。できれば換気システムを作動させ、昼間は窓を開けるなどして、3週間程度養生してから使用することが望ましい。
(2) また、引渡し前の最終クリーニングにおいても、使用するワックス剤、洗剤、薬剤等の成分を調査し、安全性を確認することが重要である。
(3) 供用開始前に化学物質の濃度測定を行う場合には、対象物質、測定箇所、測定方法、測定データの取扱いその他について、施設管理者等と十分な打合せを行い測定することが望ましい。
(b) 保全に関する資料
(1) 「標仕」1.7.3では、施工者は保全に関する資料を作成し、提出時に監督職員にその内容の説明を行うこととしているので、必要に応じて、この説明時に施設管理者等の出席を求めるとよい。
(2) 室内空気汚染物質への対策に関する資料には、次のような内容について記載するとよい。
(i) 換気に関する注意事項
(ii) 換気設備の維持管理に関する注意事項
(iii) 家具等の配置
(iv) その他.19.10.7(f)(5)(ⅴ)④の事項等
参考文献
参考文献.jpeg

20章 ユニット及びその他の工事 1節 共通事項

20章 ユニット及びその他の工事
01節 共通事項
20.1.1 一般事項
この章は、一般的な建築工事において現場で取付けを行うユニット、プレキャストコンクリート、間知石及びコンクリート間知ブロック積み並びに敷地境界石標を対象としている。
20.1.2 基本要求品質
(1) ユニット及びその他の工事に用いる材料は、「所定のもの」としているが、ここで使用する材料にはJIS等の公的品質規格の定められていないものが多い。この場合には、施工計画書(「標仕」1.2.2)で品質計画を定めて使用する材料の品質を明確にし、これを監督職員が検討し承諾することにより材料の品質が確定される。これらの材料が正しく使われていることが分かるような資料を整理しておくことを求めている。
(2) この章では、建物の仕上げ面に、製造工場等で製作された製品等をそのまま取り付ける場合が多く、設計図書又は施工図等で指定された位置に正確に取り付けることを要求している。
また、「所要の仕上り状態」とは、出来ばえとして認められないような傷や汚れ等のない状態に仕上げられていることを求めたものであるが、これらについては、客観的・定量的な品質基準を設定するのが困難な場合も多いため、できるだけ品質計画で明確にしておき、これによって品質管理を行う。
(3) (2)で述べたように、この章では特記された製造所で製作された既製品等を現場で取り付ける場合が多い。しかし、特記された製品といえども、設置場所や利用者の使い勝手等を考慮し、使用性、耐久性等に対して有害な欠陥のないものを選定するよう要求している。
なお、特記された製造所等の製品の中に適切なものがない場合は、「標仕」1.1.8による協議を行い処置する。
(4) ホルムアルデヒド放散量について、「標仕」では基本要求性能の事項として概括的規定を設けていない。しかし、「可動間仕切」「トイレブース」のパネル材料など、JIS等の材料規格において放散量が規定されているものは、「標仕」においてF☆☆☆☆と定められている。したがって、市場性、部位、使用環境等を考慮して、その他の放散量のものを使用する場合は、設計図書に特記されている内容を十分に確認し、要求品質を確保する必要がある。
なお、ホルムアルデヒド放散量に関する工事監理上の注意事項は、19章10節を参照されたい。

20章 ユニット工事 2節ユニット工事 2.フリーアクセスフロア

20章 ユニット及びその他の工事
02節ユニット工事等
20.2.1 一般事項
この節は、現場において取付けを行うユニット製品類を対象としている。
20.2.2 フリーアクセスフロア
(1) この項は、事務室、電子計算機室等に用いるフリーアクセスフロアを対象としている。
(2) 材料等
(ア) フリーアクセスフロアに関する JIS A 1450(フリーアクセスフロア試験方法)には、試験方法のみで製品規格は規定されていない。フリーアクセスフロアのパネルの材料を表20.2.1に、また、JIS A 1450で定義されている用語を次に示す。
(a) フリーアクセスフロア
建築における二重床システムのうち、床天端のパネル等を簡易に取り外して床下空間の設備等のメンテナンスができる構造のフロア。
(b) パネル
フロアの部材のうち、上面を形成する部材(表面仕上げ材が製造工程で張られたものも含む。)。
(c) 支柱
フロア部材のうち、パネルを支持するもので緩衝材を含む。
(d) シート
下地床上に敷き、フロアのずれなどを防止する部材。
(e) ユニット
繰返し配列されるパネルと支柱とを組み合わせたもので、緩衝材及びシートを含む。
表20.2.1 フリーアクセスフロアのパネルの材料
表20.2.1_フリーアクセスフロアのパネルの材料.jpeg
(イ) 表面材
(a) 表面仕上材は、タイルカーペット又はビニル床タイルが一般的である。
パネルに張り付けられたものと置敷きのものがある。
(b) 表面材は、OA機器、コンビューター等の誤動作の原因にならないように、帯電防止性能のあるものを使用するのが望ましい。
(ウ) 品質・性能
品質、性能を確認する試験方法(  )内は、基本的に JIS A 1450による。
(a) 耐震性能(振動試験)
地震による変形及び損傷に関する性能。
床高さ300mm以下の場合、振動台試験を定めている。
載荷荷重 3,000N、5,000Nそれぞれの場合について、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「(平成25年制定)官庁施設の総合耐震・対津波計画基準及び同解説(令和3年版)」に示される建築非構造部材の設計用標準水平震度(Ks)0.6及び1.0をそれぞれ適用して性能区分しており、合計で4区分としている。
(b) 帯電防止性能(帯電性試験)
人体やOA機器に影響を与える帯電に関する性能。
評価方法は、JIS A 1455(床材及び床の帯電防止性能 - 測定・評価方法)に制定されており、フリーアクセスフロア工業会では、帯電防止性能評価値(U値)を、事務室は 0.6以上、電子計算機室は 1.2以上で評価している。
(c) 漏えい抵抗(漏えい抵抗試験)
感電に関する性能。
「フリーアクセスフロアの仕上げ面とアース端子との間の電気抵抗」を規定したもので、漏えい抵抗(R)が1× 106 Ωより大きいこととしている。
(d) 耐荷重性能(静電荷重試験)
静的荷重による荷重及び変形に関する性能。
一般事務室を想定した 3.000N、重量機器設置を想定した5,000Nの二つの性能区分としている。荷諏試験は、パネル及び支柱要素を含めた実際の施工状態に近い試験であり、3.000N又は5,000N 載荷時の変形量を5.0mm以下、残留変形量を3.0mm以下としている。
(e) 耐衝撃性能(衝撃試験)
衝撃による変形及び損傷に関する性能。
砂袋20kgを400mmの高さから落下加撃後の残留変形量を、3.0mm以下で損傷がないこととしている。
(f) ローリングロード性能(ローリングロード試験)
台車走行による変形及び損傷に関する性能。
1車輪に所定荷重を加え、5,000往復走行後の残留変形量を3.0mm以下で損傷がないこととしている。
(g) 耐燃焼性能(燃焼試験)
ケーブル火災等の残炎時間に関する性能。
建築基準法に基づく不燃材料の指定又は認定を受けたもの、若しくは残炎時間が0秒であることとしている。
(h) 寸法精度(寸法測定)
パネルの長さ、高さ、厚さ、平面形状及び平たん度の寸法精度。
JIS A 1450では、製品の構成上必要ない寸法(水平方向に可とう性や調整代をもつ場合のパネル要素の長さの寸法精度等)には寸法測定を適用しないことが規定されているが、施工性及び部分的な配置換えを考慮した寸法精度としている。
「標仕」20.2.2(2)(オ) では、寸法精度は、特記による。特記がなければ、次によると規定されている。
1) パネルの長さの精度は、各辺の長さが500mmを超える場合は、± 0.1%以内、500mm以下の場合は、± 0.5mm以内とする。
2) パネルの平面角度は、各辺の長さが500mmを超える場合は、± 0.1%以内、500mm以下の場合は、± 0.5mm以内とする。
3) フリーアクセスフロア高さは、± 0.5mm以内とする。ただし、高さ調節機能のあるものは、この限りでない。
(i) フリーアクセスフロアについては、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (5)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。
(3) 工 法
フリーアクセスフロアの工法は、種類により敷設方法が異なる。支柱等をスラブに固定するタイプと固定しないタイプの2種類がある。また、仕上げレベルの調整が可能な支柱調整式と調整の必要のない置敷式に分類される。
フリーアクセスフロアの種類について、表20.2.2に示す。
施工手順としては、墨出し後、支柱分離型はパネル下部の支柱等を敷設し、その上にパネルを配置し、表面材で仕上げる。支柱一体型は、パネルを直接配置し表面材で仕上げる。ただし、製品により取付け工法が異なるため、「標仕」では、工法は、フリーアクセスフロアの製造所の仕様によると規定している。
表20.2.2_フリーアクセスフロアの種類.jpeg
表20.2.2 フリーアクセスフロアの種類

20章 ユニット工事 2節ユニット工事 3.可動間仕切

20章 ユニット及びその他の工事
02節ユニット工事等
20.2.3 可動間仕切
(1) 材料等
「標仕」では、可動間仕切はJIS A 6512(可動間仕切)に基づき、構造形式による種類、構成基材の種類及び遮音性は、特記によると規定している。
可動間仕切の種類は、構造形式による種類と構成材の種類に大別される。
構造形式による種類には、構造と空間の仕切り方とがある。構造はスタッド式(内蔵・露出)、パネル式及びスタッドパネル式に区分され、空間の仕切り方として密閉形、開放形及び自立形に区分されている(表20.2.3及び表20.2.4参照)。
表20.2.3 構造形式による種類及び記号(JIS A 6512 : 2007)
表20.2.3_構造形式による種類及び記号(JIS A 6512).jpeg
表20.2.4 空間の仕切り方及びパネルの種類(JIS A 6512 : 2007)
表20.2.4_空間の仕切り方及びパネルの種類.jpeg
構成材の種類は、パネル、主な構成基材で区分されている。一般的に、アルミバーティションとかスチールパーティションと呼称する場合があるが、これはスタッドの材質を示していることが多い。パネル部には木質系、スチール系、ガラス系、アルミニウム合金系等がある(表20.2.5参照)。
表20.2.5 主な構成基材による種類及び記号(JIS A 6512 : 2007)
表20.2.5_主な構成基材による種類及び記号(JIS A 6512).jpg
(2) 性能等
(ア) JIS A 6512(可動間仕切)に規定されている品質の試験項目、記号及び性能を表20.2.6に、一般的な遮音性の目安を表20.2.7に示す。
表20.2.6 試験項目.記号及び性能(JIS A 6512 : 2007)
表20.2.6_試験項目,記号及び性能(JIS A 6512).jpg
表20.2.7 一般的な遮音性能の目安
表20.2.7_一般的な遮音性能の目安.jpg
(イ) パネルの裏打ち材、心材、充填材等の必要性や種類、程度は、遮音性、衝撃性、断熱性等の要求性能及び構造形式の種類や構成材の種類により異なる。「標仕」では、パネルの裏打ち材、心材、充填材等は、可動間仕切の製造所の仕様によると規定している。
(ウ) 一般的に、建具の寸法、形状は、可動間仕切のモジュール寸法に対応している。
(エ) 可動間仕切の製品については、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (5)参照)において、「標仕」20.2.3の規定に基づき評価基準を定めて評価を行っているので参考にするとよい。
(3) 工 法
(ア) あと施エアンカーは、金属系アンカーと接着系アンカーとに大別される。可動間仕切に用いられるあと施エアンカーは、主に金属系アンカーである。あと施工アンカーの材料及び工法の詳細は、14.1.3 (1)(b)による。
(イ) 下地の不陸等により、可動間仕切と床、壁及び天井の取合い部分に隙間が生じると、空気の流入や光の漏れが生じたり、遮音性の低下や空調機器等による振動音の発生等の不具合が生じるため、「標仕」20.2.3(3)(イ) では必要に応じてパッキン材を設けるよう規定している。
(ウ) 天井に間仕切を固定する場合は、間仕切の位置に天井下地の野縁を設けて固定する方法が一般的であるが、天井下地の補強の要否、取付け方法、取付け間隔等については、不具合が生じないよう十分に配慮する。

20章 ユニット工事 2節ユニット工事 4.移動間仕切

20章 ユニット及びその他の工事
02節ユニット工事等
20.2.4 移動間仕切
(1) 材料等
移動間仕切は、移動を容易にするため吊り下げられた構造が一般的であるが、床部分に回転体を有し上部がガイドとなって下部で荷重を受けるもの、あるいは振れを防ぐためにハンガーレールで吊ってはいるが床にガイドを有するものなどもある。
「標仕」の適用範囲は、移動・格納のできる標準的な上吊りパネル式間仕切に適用するとしている。
現状では、移動間仕切に関する標準化された規格類はなく、製造所ごとのシステムにより構成された製品になっている。
移動間仕切は、一般的に間仕切の走行方法と操作方法により区分できる。各区分の内容と各部の名称を次に示す。
(a) 走行方向による区分
① 平行方向移動式
カーブを含みレールの方向のみ移動するもの。
② 二方向移動式
交差する二方向のレールに乗り換えて移動が可能なもの。乗換え移動については、ランナーの機構によるものがある。
(b) 操作方法による区分
① 手動式
パネルの移動を人力で行うもの。
② 電動式
パネルの移動が電力で行われ、自走するもの。
③ 部分電動式
パネル移動の一部のみ電力で行うもの。
(c) 各部名称
① ハンガーレール
パネルを移動するためのレールで、カーブ・交差・分岐・格納を含む。
② ランナー
間仕切パネルを吊り下げ、レールを走行する部分。
③ 間仕切パネル
ランナーより吊り下げられ、走行のできる分割された間仕切のパネル。
④ ドア兼用パネル
間仕切パネル自体が走行できるだけでなく、丁番・軸吊りによって他のパネル又は躯体側の他部位により支持され、ドアとしての開閉が可能なもの。
⑤ ドア付きパネル
間仕切パネル内に出入口を有するもの。
⑥ 密閉機構
間仕切として固定する場合に、床、天井、隣接する間仕切パネル及び躯体側の壁.柱との間を密着させ、遮音性を確保するための機構。
⑦ レール切換え部
ハンガーレールの一部で、ランナーの走行方向を切り換える部分で、ポイント・ターンテーブル・ロータリー等と称され、パネルの移動方法で切り換える手動式と、遠隔操作により切り換える電動式のものとがある。
⑧ 間仕切パネル格納部
間仕切パネルを不使用時に格納する部分で、引込みレール、格納ドア等を含む。
⑨ 壁付きガイド材
耐力壁、非耐力壁等の他の部位に設ける見切り材で、間仕切との取合いとなる部分。
⑩ ハンガーレール取付け下地
ハンガーレールを躯体若しくは躯体側の部分に取り付けるための構造材。
(2) 性能等
(ア) パネル圧接装置
パネルの圧接装置は、製造所により異なり、その操作方法も種々である。一般的に、パネル圧接装置の耐久性は、固定・解除の繰返し耐久試験等により評価されている。
(イ) 遮音性
移動間仕切の遮音性能は、JIS A 6512(可動間仕切)の遮音性試験に準拠し、試験方法は、JIS A 1416(実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法)により、中心周波数500Hzの音の透過損失で評価している。移動間仕切の遮音性の目安を表20.2.8に示す。
表20.2.8 遮音性能の目安
表20.2.8_遮音性能の目安.jpg
(ウ) 移動間仕切の製品については、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (5)参照)において、「標仕」20.2.4の規定に基づき評価基準を定めて評価を行っているので参考にするとよい。
(3) 工 法
(ア) 下地補強材は、所要の性能を満足するよう堅固な取付けが求められる。下地補強材を取り付けるときの所要の性能は特記によるが、特記がなければ、取付け全重量の5倍以上の荷重に対して、耐力及び変形量が使用上支障のないように補強する。
(イ) ハンガーレールを躯体又は下地補強材へ固定するときにあと施エアンカー類を用いる場合は、「標仕」では、14.1.3(1)の工法により、施工後の確認は、機械的簡易引抜試験機による引張試験により、設計用引張強度に等しい荷重に対して、過大な変位を起こさず耐えることを確認することとされているので注意する。

20章 その他の工事 5.トイレブース

20章 ユニット及びその他の工事
02節ユニット工事等
20.2.5 トイレブース
(1) 材料
(ア) パネルの主要構成基材は、JIS A 6512(可動間仕切)に基づく材料とすることが定められている(20.2.3 (1)参照)。
(イ) 笠木、脚部、壁見切り金物、頭つなぎ等の構造金物は、耐食性のあるものとし、ステンレス材(SUS304程度)又はアルミニウム材が一般的であるが、脚部は耐衝撃性を考慮して、ステンレス材と規定している。
(ウ) ドアエッジの材質は、特記による。特記がなければ、トイレブースの製造所の仕様によると規定している。
(エ) ヒンジ等の付属金物は、 トイレブースの製造所の仕様による。丁番式や中心吊り式、自閉するものなどがある。
(2) 性能等
JIS A 4702 (ドアセット)による開閉繰返し試験の合格基準は、開閉回数10万回で開閉に異常がなく、緩みがない等使用上支障がないこととされている。
(3) 加工及び組立
小口ヘの防水処理は、 トイレ清掃時の水掛りに対してパネル小口からの吸水を防止するための防水塗装や防水テープ処理等が挙げられる。
(4) トイレブースの製品については、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (5)参照)において、「標仕」20.2.5の規定に基づき評価基準を定めて評価を行っているので参考にするとよい。

20章 その他の工事 6.手すり

20章 ユニット及びその他の工事
02節ユニット工事等
20.2.6 手すり
(1) 材料・仕上げ
(ア) 手すりに用いる金属材料は、多くの場合、鋼、ステンレスあるいはアルミニウム合金である。
(イ) アルミニウム合金の表面処理の種別は、「標仕」14.2.1 (1)により、設計図書に特記される。
(ウ) 鋼製品の塗装
鋼製品の錆止め塗装は、工場で行われることが多いが、塗料の種別及び適用箇所は、「標仕」表18.3.1による。
(エ) BL認定部品
(-財)ベターリビングでは、住宅の廊下・バルコニー・窓等に使用する手すりについて基準を設け、強度等各種の試験に合格したものをBL認定部品としている。
(2) 工法
(ア) 手すりと手すり支柱又は手すり子との取合いは、鋼製以外は通常小ねじ留めにする。安全のため、小ねじは、手すりの中に入れて留めるものが多い(図20.2.1参照)。ステンレスは溶接する場合もあるが、溶接部の取合いの仕上げには注意する必要がある。
図20.2.1_手すりと手すり支柱又は手すり子との取合い.jpg
図20.2.1 手すりと手すり支柱又は手すり子との取合い
(イ) 外部に設置する手すりで、風による微振動や熱伸縮などの影響を受ける部位にボルトや小ねじを使用する場合は、緩まない方法にて取り付けるよう注意する。
一般的な手すりの例を図20.2.2に示す。
 図20.2.2_一般的な手すりの例(手すり子タイプ).jpeg
 図20.2.2_一般的な手すりの例(パネルタイプ).jpeg
図20.2.2 一般的な手すりの例
(ウ) 溶接は14章3節による。
(エ) 手すりが長くなる場合には、金属の温度変化による部材の伸縮を考慮して、伸縮調整部を設けるのがよい(通常5~10m間隔程度)。伸縮調整部を設ける間隔及び伸縮調整幅は、使用する金属の膨張係数を考慮して決めるのが望ましい。
部材伸縮の目安(温度差40℃の場合)は、鋼は 1m当たり0.5mm程度、アルミニウム合金は 1m当たり1.0mm程度である。
伸縮調整部の例を図20.2.3に示す。
図20.2.3_伸縮調整部(壁付きの場合).jpeg
図20.2.3_伸縮調整部(一般の場合).jpeg
図20.2.3 伸縮調整部
(オ) 手すりの小口は、安全性、美観等を考慮して、同材でふたをしたりするが、共色(ともいろ)の樹脂製キャップが用いられることもある。その場合は、取換えが可能な納まり及び形状とする。
(カ) 手すり支柱は、コンクリートあるいはモルタルの中に入る部分であっても、錆止めの処置を行うことが望ましい。
なお、モルタル充填に際して、こて押え等が不十分になりがちなため、充填を確実に行う。
取付け例を図20.2.4に示す。
図20.2.4_手すりの取付け.jpg
図20.2.4 手すりの取付け

20章 その他の工事 7.階段滑り止め

20章 ユニット及びその他の工事
02節ユニット工事等
20.2.7 階段滑り止め
(1) 材料
(ア) 階段滑り止めには、金属と合成樹脂又は合成ゴムを組み合わせたもの、タイルあるいは金属を主体としたものがある。
(イ) 金属の種類は、通常ステンレス、黄錆、アルミニウム、鉄である。その踏面には溝があり、溝にはめ込む滑り止め材の形状はタイヤ形等があり、材質はゴム、合成樹脂、カーボランダム等がある。
金属部分は、押出し成形材と板材を曲げ加工したものがある。また、足付き形のものと接着形のものとがあり、それぞれ取付け工法が異なる。
(ウ) タイヤ形の滑り止め材は、取付け後収縮しやすいため、図20.2.5のような収縮を防止する突起等があるものを使用するのがよい。
図20.2.5_収縮防止の例.jpg
図20.2.5 収縮防止の例
(エ) 階段滑り止めの例を、表20.2.9に示す。
表20.2.9 階段滑り止めの例
表20.2.9_階段滑り止めの例.jpg
(オ) 取付け長さは、階段と手すりの取合い等によるが、通常は階段の全幅とする。
(2) 取付け
(ア) 接着工法
(a) 接着剤のみで取り付ける場合には、はく離する例が多いため、「標仕」20.2.7(2)(ア) では、接着剤及び小ねじを用いて取り付けることとされている。
(b) 取付け方法の例を、図20.2.6に示す。
図20.2.6_階段滑り止め取付けの例(接着工法)(モルタルに直付け).jpg
図20.2.6_階段滑り止め取付けの例(接着工法)(鋼板に直付け).jpg
図20.2.6_階段滑り止め取付けの例(接着工法)(埋込み式).jpg
図20.2.6_階段滑り止め取付けの例(接着工法)(.jpg
図20.2.6 階段滑り止め取付けの例(接着工法)
(c) 取付けに際しては次の事項に注意する。
① 接着面は、十分平滑にし、下地乾燥後、油、レイタンス、ほこり等接着の妨げとなるものを除去する。
② 接着剤は、原則としてエポキシ樹脂系のものを用いる。
③ 接着の際は、すり合わせるようにしながら押し付け、小ねじを用いて取り付け、取付け後は、接着剤が硬化するまで押さえておく。
④ 施工場所が、施工中及び施工後、気温が 5℃以下になると予想される場合は、施工を行わない。ただし、採暖等の養生を行う場合は、この限りでない。
(イ) 埋込み工法
アンカーを用い、両端を押さえて間隔 300mm程度に堅固に取り付ける。
取付け方法の例を、図20.2.7に示す。
図20.2.7_階段滑り止め取付けの例(埋込み工法)(イ).jpg
    図20.2.7_階段滑り止め取付けの例(埋込み工法)(イ)アンカー取付け方法.jpg
図20.2.7_階段滑り止め取付けの例(埋込み工法)(ロ).jpg
    図20.2.7_階段滑り止め取付けの例(埋込み工法)アンカー取付け方法.jpg
図20.2.7 階段滑り止め取付けの例(埋込み工法)
(3) 取付け中は、他の作業のための通路を確保するとともに、取付け後の養生を確実に行うため、接着工法では一時通行を禁止する場合もある。