14章 金属工事 4節 軽量鉄骨天井下地

14章 金属工事
4節 軽量鉄骨天井下地
14.4.1 適用範囲
(a) この節は、一般的な天井仕上材の下地となる軽量鉄骨下地材を用いた屋内及ぴ屋外軒天井の下地工事に適用する。屋外の用途としては、外部に面するピロティ、ひさし等の天井である。ただし、天井材の単位面積当たりの質量が20kg /m2を超える天井、水平でない天井等の特殊な要求性能や不整形な形体の天井は,特記による。
また、システム天井は、材料、部材等や工法においても、「標仕」とは異なり、除くものとする。
なお、天井下地材を「標仕」に規定する軽量鉄骨下地材とし、天井仕上材をせっこうポード(厚さ9.5mm)とロックウール化粧吸音板(厚さ9.0mm)の2枚張り程度とした一般的な天井の場合、天井材の単位面積当たりの質量は約15kg /m2程度である。
(b) 作業の流れを図14.4.1に示す。
図14.4.1_軽量鉄骨天井下地工事の作業の流れ.jpeg
図14.4.1 軽量鉄骨天井下地工事の作業の流れ
(c) 施工計画書等
(1) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を作成する。
① 工程表(必要に応じて室別、場所別に工程表を作成)
② 製造所名,施工業者名及び作業の管理組織
使用材料の材質、種類,形状、寸法等
④ 加工、機器場所等(切断溶接等)
⑤ 加工,組立、又は取付け工法
⑥ 風圧力による検討(屋外の条件、場所等の検討)
⑦ 耐震性の検討(大規模空間の天井に関しては崩落対策の検討)
⑧ 養生方法
作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(2) 施工図の検討は、次について行う。
(i) 吊りボルトの割付け
(ii) 各部取合いの納まり及び補強方法(設備用機器類,改め口等)
(3) 野縁・野縁受の運搬・保管には、曲がりやねじれが生じないよう留意する。
(4) 施工箇所の点検項目としては次のような点がある。
(i) 前工事として天井内配管等の完了確認
(ii) 吊りボルト取付けのための天井インサート位置・割付けの確認
(iii) 天井周辺部の壁面の精度確認
以上のような点について確認を行い、天井下地材の施工に支障がある場合は、関係者による協議を行いその処置方法を決定する。
(5) 墨出し
基準墨をもとにして施工図に従い、周囲の壁面に天井下地材の下端の墨出しを行う。
14.4.2 材 料
(a) 天井下地材
(1) 天井下地材及び天井下地材付属金物は、JIS A 6517(建築用鋼製下地材(壁・天井))の規格を満たすものとする。図14.4.2に天井下地材の構成部材及び付属金物の名称を、表14.4.1に天井下地材の構成部材の種類及び組合せを示す。
図14.4.2_天井下地材の構成部材及び付属金物の名称.jpeg
図14.4.2 天井下地材の構成部材及び付属金物の名称
表14.4.1 天井下地材の構成部材の種類及び組合せ(JIS A 6517:2010を基に作成)
表14.4.1_天井下地材の構成部材の種類及び組合せ(JIS A 6517).jpeg
(2) 天井下地材に使用する材料の防錆処理は表14.4.2の亜鉛の付着量で示される。製品は、溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯をスリッターにより定尺幅に切断し、冷間ロールフォーミングにより成形されたものが用いられている。
(3) 天井下地材の性能は、JIS A 6517により定められており、亜鉛の付着量、部材の形状安定性試験及び載荷試験を行い、表14.4.2の規定に適合したものとなっている。
表14.4.2 天井下地材の性能(JIS A 6517 : 2010を基に作成)
表14.4.2_天井下地材の性能(JIS A 6517).jpeg
(4) 天井下地材の構成部材の寸法は、JIS A 6517により表14.4.3のように定められている。
表14.4.3 天井下地材の構成部材の寸法(JIS A 6517 : 2010)
表14.4.3_天井下地材の構成部材の寸法(JIS A 6517).jpeg
(5) 野縁受は、19形と25形で板の厚さが異なるので注意して使用する。
(b) インサート及び吊りボルト
インサートは鋼製とする。断熱材打込み等の場合で特殊インサートを用いる場合は設計図書の指定による。また、吊りボルトはJIS A 6517では転造ねじ、ねじ山径9.0mm(円筒部径8.1mm以上)としており、防錆処理としてはJIS H 8610 (電気亜鉛めっき)に規定する1級以上、JIS H 8625(電気亜鉛めっき及び電気カドミウムめっき上のクロメート皮膜)に規定する1級CM1A以上又はこれと同等以上としている。
14.4.3 形式及び寸法
(a) 天井下地の組み方の一例を図14.4.3に示す。
図14.4.3_天井下地の組み方.jpeg
図14.4.3 天井下地の組み方
(b) 屋内の野縁間隔は、「標仕」14.4.3 (b)で、図14.4.4のように定めている。
図14.4.4_屋内の野縁の間隔(イ).jpeg
図14.4.4_屋内の野縁の間隔(ロ).jpeg
図14.4.4 屋内の野緑の間隔
(c) 軒天井、ピロティ天井等屋外の野縁等の間隔は、地域性、個別性等の諸要件により風荷重が異なるので「標仕」では特記によるとしている。したがって、設計担当者等が構造計算等によって野縁等の間隔等を定めることになる。
なお、監督職員は、施工計画書で、実際に使用する部材の断面性能等を使った構造計算により確認された工法であることを確かめて、承諾することになる。
14.4.4 工 法
(a) 野縁は、一方向に配置するものであり、格子組みとすることはまずない。配置の方向は、照明器具締との関係を考慮し、なるべく野縁を切断しないようにする。
(b) コンクリート打込みのインサートを使用しないで、あと施エアンカー等を用いると、コンクリートに打ち込まれているパイプ等を損傷することがあるので避ける対応が望ましい。
(c) 野縁と野縁受の留付けクリップは、交互につめの向きを変えて留め付ける(図14.4.5 参照)。
なお、クリップのつめが野縁受の溝側にくる場合は、溝内に十分折り曲げる。特に屋外の場合は注意して行う。
図14.4.5_クリップの留付け.jpeg
図14.4.5 クリップの留付け
(d) 野縁受及び野縁同士のジョイントは、所定の付属金物を用い、それぞれ吊りボルト、野縁受の近くに設け、そのジョイント部の配置は、図14.4.6に示す千島状になるように施工することが望ましい。
図14.4.6_野縁受、野縁同士のジョイント.jpeg
図14.4.6 野緑受、野緑同士のジョイント
(e) 下地張りがなく野縁が壁等に突き付く場合の野縁端部のコ形又はL形の金物は、天井目地の目地底にするとともに野縁の通りをよくするためのものである。
下地張りがなく野縁が壁に平行する場合の端部には.ダプル野縁を用いる。
(f) 照明器具ダクトのための補強
(1) 「標仕」14.4.4 (e)には.設計図書に表示されたものについて行うことと定められているが、この表示とは、照明器具の位置、大きさ、個数が天井伏図、特記仕様書等に表示される場合のことをいう。工事との取合い等により必要となる開口部の補強が設計図書に明示されていない場合は、設計変更により処置する必要がある。
(2) 天井には,点検口,照明器具,ダクト等が設置されるので,器具類の大きさにより、野縁を切断する必要がでてくる。これらの箇所は、強度の不足を補うとともに、野縁の乱れを防止するために補強する必要がある。また、野縁等の切断には溶断は行わない。
開口部の補強は図14.4.7のように行う。
図14.4.7_開口部の補強(野縁を切断する方法).jpeg
図14.4.7 開口部の補強
(g) 下がり壁、間仕切壁を境として、天井に段違いがある場合は、補強を間隔 2.7m程度に図14.4.8の(イ)、(ロ)のように行う(「標仕」14.4.4 (g)参照)。ただし、(ハ)の場合で、床スラプ等に壁下地が固定されている場合は、補強を行わなくてもよい。
(h) 天井のふところが1.5m以上の場合は、補強用部材又は[ – 19 x 10x 1.2 (mm)以上を用いて、吊りボルトの水平補強、斜め補強を行う(「標仕」14.4.4 (h)参照)。ここでいう補強用部材とは、所定の強度を有する軽量鋼製形材である。
その補強方法は、「標仕」では特記によるとされているが、特記がない場合は、(i)及び(ii)による。
(i) 水平補強は、縦横方向に間隔1.8m程度に配置する。
(ii)斜め補強は、相対する斜め材を1組とし、縦横方向に間隔 3.6m程度に配置する(図14.4.8の(ニ)参照)。また、縦方向の相対する斜め材の接合部と横方向の相対する斜め材の接合部が同じ場所に重ならないように注意する。
天井のふところが、3.0mを超える場合の補強は、「標仕」では特記によるとされており、詳細に検討された所定の方法で行うことになる。
なお、ここでいう水平の補強及び斜めの補強は、耐震性を考慮することを意図したものではない。特別に耐梃性を考慮する必要がある天井の場合には、建物との共振の検討や周辺の構造体や墜とのクリアランスの確保等の検討をしたうえで、適切に補強材を設置するなどの対策を考える必要がある。参考として、「大規模空間を持つ建築物の天井の崩落対策について(技術的助言)」(平成15年10月15日 国住指第2402号)及び「地震時における天井の崩落対策の撤底について(技術的助言)」(平成17年8月26日 国住指第1427号)がある。
また、特定天井(脱落によって重大な危害を生ずるおそれがあるものとして国土交通大臣が定める天井をいう。)については、「特定天井及び特定天井の構造耐力上安全な構造方法を定める件」(平成25年8月5日国土交通省告示第771号)が公布された。
(i) ビル風の影響を受ける高層部分の軒天井、広いピロティの天井の端部等では、風圧による大きな力を受けるため、「標仕」14.4.4 (k)では特記により補強を行うこととしている。
具体的な補強方法は、作用する風圧力により設計されるが、一般的には耐風圧等を考慮した野縁受、野縁、吊りボルト、ハンガー及びクリップを使用する方法がある。
(j) 廊下等天井裏に通るダクト幅が広くて野縁受を吊れない場合に、ダクトフランジにアングル等を溶接して吊っている例があるが、ダクトの振動による悪影響があるので野縁受の部材断面を大きくするなどの処置をとり、必ずダクトと切り離して施工を行う。
また、ダクト等によって吊りボルトの間隔が900rnmを超える場合は、その吊りボルト間に水平つなぎ材を架構し、中間から吊りボルトを下げる2段吊りという方法で対応することができる。
図14.4.8_屋内の天井の補強(イ).jpeg
図14.4.8_屋内の天井の補強(ロ).jpeg
図14.4.8_屋内の天井の補強(ハ).jpeg
図14.4.8_屋内の天井の補強(ニ).jpeg
図14.4.8 屋内の天井の補強
(k) 現場での溶接を行った箇所には、「標仕」表18.3.2のA種の鋳止め塗料を途り付ける。
なお、高速カッター等による切断面には、亜鉛の犠牲防食作用が期待できるため、錯止め塗料塗りは行わなくてよい。
(l) 施工後の確認
仕上材取付け前の確認項目は、次のとおりである。
(i) 野縁の割付け、開口部、下がり壁等の位置及び寸法
(ii) 目違いや段差の有無
(iii) 天井の高さ
なお、天井高さの精度は測定器や水糸等を張り、±10mm以内とするのが望ましい。また、天井面にむくり(部屋の中央を若干高くすること)によって感覚的には平面に見えることが知られている。
(iv) 開口部補強の適否
(v) 溶接した箇所の錆止め塗装

14章 金属工事 5節 軽量鉄骨壁下地

14章 金属工事
5節 軽量鉄骨壁下地
14.5.1 適用範囲
(a) この節は、一般的な壁仕上材の下地となる軽量鉄骨壁下地工事に適用する。天井の場合とは異なり、壁の場合は外部に面する部分や外壁等の使用は対象外としている。
(b) 作業の流れを図14.5.1に示す。
図14.5.1_軽量鉄骨壁下地工事の作業の流れ.jpeg
図14.5.1 軽量鉄骨壁下地工事の作業の流れ
(c) 施工計画書等
(1) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を作成する。
① 工程表(必要に応じて室別、場所別の工程表の作成)
② 製造所名、施工業者名及び作業の管理組織
使用材料の材質、種類、形状、寸法等
④ ランナー取付工具
⑤ 開口部等の補強方法
⑥ 養生方法
作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(2) 施工図の検討は、各部取合いの納まりのほか、開口部補強方法等について行う。
(3) ランナー・スタッド等の運搬・保管に当たっては、曲りやねじれが生じないよう留意する。
(4) 施工箇所の点検
床・梁下・スラブ下面・壁面の位置、平たんさ(凹凸)を確認し、躯体の面精度が下地材の建込みの支障となる場合には、事前に修正する。
(5) 墨出し
基準墨や地墨等により、施工図に基づき間仕切、壁下地材、ランナー両面等の墨出しを行う。墨出しが直接下地材の取付け位置に出せない場合は、適切な場所に逃げ墨を出す。開口部については、開口枠の取付け方法やクリアランス等を考慮し、補強材位置の墨を正確に出す。
14.5.2 材 料
(a) 壁下地材
(1) 壁下地材及び壁下地材付属金物は、JIS A 6517(建築用鋼製下地材(壁・天井))の規格を満たすものとする。図14.5.2に壁下地材の構成部材及び付属金物の名称を、表14.5.1に壁下地材の構成部材の種類及び組合せを示す。
図14.5.2_壁下地材の構成部材及び付属金物の名称.jpeg
図14.5.2 壁下地材の構成部材及び付属金物の名称
表14.5.1 壁下地材の構成部材の種類及び組合せ(JIS A 6517:2010を基に作成)
表14.5.1_壁下地材の構成部材の種類及び組合せ.jpeg
(2) 壁下地材に使用する材料の防錆処理は表14.5.2の亜鉛の付着量で示される。製品は、溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯をスリッターにより定尺幅に切断し、冷間ロールフォーミングにより成形されたものが用いられている。
(3) 壁下地材の性能は、JIS A 6517により定められており、亜鉛の付着量、部材の形状安定性試験及び載荷試験を行い、表14.5.2の規定に適合したものとなっている。
(4) 壁下地材の構成部材の寸法は、JIS A 6517により、表14.5.3のように定められている。
表14.5.2 壁下地材の性能(JlS A 6517: 2010を基に作成)
表14.5.2_壁下地材の性能(JIS A6517).jpeg
表14.5.3 壁下地材の構成部材の寸法(JJS A 6517: 2010)
表14.5.3_壁下地材の構成部材の寸法(JIS A6517).jpg
(b) スペーサー等
スペーサーの板厚は、0.7mm以上(板厚の許容差は、JIS G 3302(溶融亜鉛めっ き鋼板及び鋼帯)又はJIS G 3321(溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板 及び鋼帯)による。)とする。また、防錆処理は、JIS G 3302表示記号のZl2以上、JIS G 3321表示記号のAZ90以上と同等のものとする。スペーサーの形状は製造所によって多少異なるが、その目的はスタッドの強度を高め、ねじれを防止し、また、振れ止めを固定するためのものである。
打込みピン・タッピンねじ・ボルト等については、JIS H 8610(電気亜鉛めっき)に規定する1級以上、JIS H 8625(電気亜鉛めっき及び電気カドミウムめっき上のクロメート皮膜)に規定する1級CM1A以上又はこれと同等以上の防錆処理を施したものとする。
14.5.3 形式及び寸法
壁下地材に用いる鋼材は、JIS A 6517(建築用鋼製下地材(壁・天井))の規定に適合するものとする。「標仕」表14.5.1では、50形、65形、90形、100形を示しているが、同JISにはこの他に75形があり、スタッドの高さによって使い分けられている。また、「標仕」では50形は、RC壁等への片面張りの下地を想定しており、自立壁の下地は適用外としている。
表14.5.3にJIS A 6517に規定されている壁下地材の構成部材の寸法を、表14.5.2に壁下地材の性能を示す。
なお、「標仕」表14.5.1でスタッドの高さにより種類を変えているのは、壁の剛性を確保するためである。同一壁面でスタッドの高さが異なる場合は、高い方のスタッドに合わせる。
14.5.4 工法
(a) ランナーの取付け
ランナー両端部の固定位置は、端部から50mm内側とする。継手は突付け継ぎとし、端部より約50mm内側に固定する。ランナーの固定間隔は、ランナーの形状や断面性能及ぴ軽量鉄骨壁の構成等から900mm程度を限度としている。コンクリートスラブヘの固定には、低速式びょう打ち機による発射打込みびょう(JIS A 5529)等を用いるが、使用に当たっては、安全管理に十分注意する。上部梁が鉄骨の場合は、耐火被覆等の終了後、あらかじめ取り付けられた先付け金物にスタッドボルト、タッピンねじの類又は溶接で固定する。
(b) スタッド・スペーサーの取付け
(1) スタッドの切断
スタッドは、ねじれのないものを使用し、上部ランナーの高さに合わせて切断する。上部ランナーの上端とスタッド天端の隙間は、10mm以下とする。また、振れ止めが水平に通るように、スタッドに設けられた振れ止め用の貫通孔の位置を調節する。
(2) スペーサーの取付け
スタッドの両端のスペーサーは、スタッドの建込みを容易にするため、端部よりずらして取り付け、建込み後に上下のランナーの近くにセットする。また、振れ止め位置のスペーサーについても振れ止めを取り付けたのち、振れ止め固定を兼ねてスペーサーを固定する。いずれも、緩み・がたつきのないようスペーサーの間隔は、600mm程度に固定する。
(3) スタッドの建込み
スタッドを上下ランナーに差し込み、半回転させて取り付ける。仕上げのボード類はスタッドに直接タッピンねじの類で取り付けられるため、間隔を精度良く建て込む。また、スタッドにねじれや倒れがあると、仕上げボードに目違いを生じるので、建入れ、通りに十分注意する。
スタッドがコンクリート壁等に添え付く場合は、ランナーと同様に、振れ止め上部(間隔 約1.2m程度)を打込みピン等で固定する。
(c) 振れ止めの取付け
振れ止めは、床ランナー下端より間隔 約1.2mごとに設ける。ただし、上部ランナー上端から400mm以内に振れ止めが位置する場合には、その振れ止めは省略することができる。
振れ止めは、フランジ側を上向きにしてスタッドに引き通し、振れ止めに浮きが生じないようスペーサーで固定する。設備配管や埋込みボックス等で振れ止めを切断する場合は、振れ止めと同材又は吊りボルト(ねじ山径9.0mm)で補強する。
(d) 開口部の補強
(1) 出入口等
(i) 垂直方向補強材
垂直方向補強材は、建具が留め付けられるため、戸の開閉による振動や衝撃荷重に耐えられるように、「標仕」では、上は梁又はスラブ下に達するものとし、上下ともあと施エアンカー等で固定した取付け用金物に溶接又はボルトの類で取り付けることとしている。65形で補強材の長さが4.0mを超える場合は、同材の補強材を2本抱き合せ、上下端部及び間隔 600mm程度に溶接したものを用いる。
垂直方向の補強材は、上部ランナーが鋼製天井下地材に取り付けられる場合でも、上部は梁下・スラブ下に固定する必要がある。階高が大きく補強材が長くなり過ぎる場合は、補強材を支持するための鉄骨梁等を設け、これに固定する場合もあるが、十分な支持強度を確保する必要がある。
なお、補強材とスタッドは直接接触させず、戸の開閉に伴う振動がなるべくスタッドに伝わらないようにすることを原則とするが、開口部の形状等により、剛性が求められる場合や補強材の変形が大きくなるおそれのある場合はスタッ ドと溶接するなどの方法で剛性を確保する。
(ii) 水平方向補強材
開口部の補強材は、補強材の断面性能等から開口幅は2m程度、取り付く建具等の質量も一般的な物を対象に選定されているため、開口幅が大きい場合や重量物が取り付く場合等は、別途強度計算等によって補強材を選定する必要がある。
(2) そで壁端部の補強
そで壁端部の補強は、開口部の垂面方向の補強材と同材を用いて行う。
(3) ダクト等
ダクト類の小規模な開口部の垂直方向の補強材は、水平方向の補強材と組み合わせ、溶接等により固定する。分電盤等の重量物が取り付く場合には、出入口等の開口部補強材取付け用金物と同様の取付け用金物を添えて、溶接又はタッピンねじの類で取り付ける。
ダクト類の四周については、下地材・補強材等がダクトに接触して、振動が伝わらないように注意する。また、設備の配管等がスタッドを貫通して設けられる場合、貫通孔が1箇所に媒中しないように配慮し、必要に応じて補強等の処置を行う。
(e) 緩止め
下地相互のボルト・小ねじによる固定箇所が繰返し外力や振動を受ける場合、ばね座金等を用いるか、又は緩止めの溶接を行う。
(f) 施工後の確認
仕上材料取付け前の確認項目は、次のとおりである。
(i) 開口部補強の適否
(ii) スタッドの建込み間隔の精度(通常の天井高では ±5mm以下とする。また、スタッドの垂直の精度 約 ±2mmとする。)
(iii) 溶接した箇所の鋳止め塗装
錆止め塗料塗りは、14.4.4 (k)を参照する。
(g) 軽量鉄骨壁下地の解説図を図14.5.3に示す。
図14.5.3_軽量鉄骨壁下地(イ)展開図(65形).jpg
図14.5.3_軽量鉄骨壁下地(ロ)a部詳細.jpeg図14.5.3_軽量鉄骨壁下地(ハ)a部詳細.jpeg
図14.5.3_軽量鉄骨壁下地(ニ)b部詳細.jpeg図14.5.3_軽量鉄骨壁下地(ホ)c部詳細.jpeg
   図14.5.3_軽量鉄骨壁下地(ヘ)d部詳細.jpeg
図14.5.3 軽量鉄骨壁下地
14.5.5 「標仕」以外の工法
変位追従性を有する壁下地工法は、耐震性を考慮してRC壁、ALC壁等ヘボードを片面張りしたもので、地震時の挙動に有効な工法である。施工する躯体壁に鋼製下地材(スタッド)を所定の間隔に特殊弾性接着剤で固定し、その後にボード片面張りを行う。高い安全性と変形追従性を有する工法である。

14章 金属工事 6節 金属成形板張り

14章 金属工事
6節 金属成形板張り
14.6.1 適用範囲
(a) この節は,建築物の天井の金属成形板張りを対象としている。
(b) 作業の流れを図14.6.1に示す。
図14.6.1_金属成形板張り工事の作業の流れ.jpeg
図14.6.1 金属成形板張り工事の作業の流れ
(c) 施工計画書等
(1) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を作成する。
① 工程表(必要に応じて場所別の工程表の作成)
② 製造所名、施工業者及び管理組織
使用材料の材質(あと施工アンカーも含む)、寸法
④ 施工手順及び養生方法
作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(2) 施工図の検討は、次について行う。
(i) 場所別割付け図
(ii) 各部取合いの納まり
(3) 見本品又はカタログを提出させ、設計担当者と打ち合わせて決定する。
14.6.2 材料
(a) 金属の成形板〈モールディングスパンドレル〉には、通常、鋼板製、ステンレス板製、アルミニウム板製があるが、最も一般的なものは、アルミニウム板製である。
ステンレス板、アルミニウム板の場合の表面処理は、2節に示されたようなもののうちから選定することになるが、鋼板製の場合は、各種の仕上げを施したものが、既製品として市販されている。
(b) 小ねじは特記なき場合、「標仕」14.6.2(b)で使用材料に適したものと定められている。成形板が材質、着色仕上げ等多様化されているため取付け方法、化粧として適切なものを選択する。
14.6.3 工 法
(a) 取付け下地は、一般に軽量鉄骨下地材である。下地材の材料・工法は.設計図書に指示されるものであるが、指示のない場合、「標仕」14.4.2及び4では屋内と屋外に分けて、野縁の材料及び工法を定めている。
なお、野縁の間隔は、屋内では360mm程度と定められている。しかし、屋外については、建築基準法で風圧力に対して安全であることを構造計算により確認することが義務付けられており、野縁の間隔は、設計図書で指定することとしている。
(b) 成形板は、定尺の既製品であるから、必ず割付けを行い、途中に半端な材料が入らないように配置する。
(c) 現場で成形板を切断することが多いが、切り粉が材料に付約したままにしておくと、そこから腐食を起こすことがあるので、切り粉はすべて除去しなければならない。
(d) 成形板の留付けは、目地底で目立たないように小ねじ留めとする。
(e) 納まりの関係で、板継ぎ部分から雨水が浸入して腐食を起こすおそれのある部分は、シーリングの必要があり、設計図書で指示するのがよい。
(f) 金属は伸縮が大きいので、製品の長さに応じて伸縮調整継手が必要になる。しかし、伸縮調整継手からは漏水のおそれがあり、意匠にも関係するので「標仕」 14.6.3(e)には納まりも含めて設計図書で指定するように定められている。
(g) タイル張りあるいは石張りに隣接して取り付けられている金属面では、タイルや石張りの清掃に用いられる塩酸等が付着し、仕上げ面が汚染、あるいは腐食するおそれがあるので、十分注意する必要がある。

14章 金属工事 7節 アルミニウム製笠木

14章 金属工事
7節 アルミニウム製笠木
14.7.1 適用範囲
(a) 「標仕」ではアルミニウム製笠木は、通常の鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の屋上パラペットに使用するオープン形式(国土交通省大臣官房官庁営繕部整備課「建築工事標準詳細図」の屋上パラペット(アルミニウム製笠木)参照)を想定している。
(b) 作業の流れを図14.7.1に示す。
図14.7.1_.アルミニウム製笠木工事の作業の流れjpeg.jpg
図14.7.1 アルミニウム製笠木工事の作業の流れ
(c) 施工計画書等
(1) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字は品質計画に関する事項を示す。
① 工程表(必要に応じて場所別の工程表の作成)
② 製造所名、施工業者及び管理組織
使用材料の材質(表面処理方法も含む)、寸法
風圧力及び積雪荷重に対応した固定金具の間隔、固定方法、管理の方法等
⑤ 施工手順及び養生方法
(2) 施工図の検討は、次の事項について行う。
(i) 場所別割付け図
(ii) 各部取合いの納まり
(3) 見本品又はカタログを提出させ、設計担当者と打ち合わせて決定する。
14.7.2 材 料
(a) 「標仕」14.7.2では、アルミニウム製笠木の構成部材による種類を、250・300・350形の3種類とし、その適用は特記によるとしている。材質等については、JIS H 4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)に規定する種類及び等級がA6063S(普通級)のものとしている。
なお、断面寸法の許容差の普通級とは、建材に使用する押出形材の通常の精度を示したものである。
(b) また、「標仕」表14.7.1の最小呼称肉厚は、経済性を考慮し、かつ、耐久性、剛性等についての必要な性能を満たす寸法とし、表に示された寸法を上回るものは同等以上の材料と見なされている。
なお、部材の断面寸法に対する耐積雪耐力や耐風圧力等の安全性については、製品や設置条件等により異なるため、「標仕」14.7.3(a)の規定により、検討されることになる(14.7.3(c)(1)参照)。
(c) 笠木を受雷部システム(棟上げ導体)として利用する場合については、JIS A 4201(建築物等の雷保護)に断面寸法の最小値等が規定されているので注意する。
(d) 表面処理については、「標仕」14.7.2(c)では、特記によるとされている。一般的には、「標仕」表14.2.1のB-1種又はB-2種が適用されている(14.2.2参照)。
14.7.3 工 法
(a) アルミニウム製笠木の構成部材の概要及び取付け状態(図14.7.2及び3参照)製造所により細部で違いがあるが、構成部材の概要、取付けについて次に示す。
図14.7.2_部材の構成例.jpeg
図14.7.2 部材の構成例
図14.7.3_笠木の取付状態の例.jpeg
図14.7.3 笠木の取付け状態の例
(b) 笠木本体は固定金具に対し、はめあい方式により固定される断面形状のものである。
直線部材及びコーナ一部材(入隅、出隅)が用意されている。
(c) 笠木と笠木との継手部(ジョイント部)は、ジョイント金具とはめあい方式によりはめあい、取付けを行うものとする。ジョイント部はオープンジョイントを原則とし、温度変化による部材の伸縮への対応のため、5〜10mmのクリアランス(目地)を設ける(定尺が4m程度の場合)。
(1) 固定金具
(i) 固定金具は、通常1.3m程度の間隔で取り付けられるが、「標仕」14.7.3(a) (1)では、建築基準法に基づき定まる風圧力及び積雪荷重に対応した固定金具の間隔、固定方法等は特記によることとしている。
(ii) 固定金具は、パラペット天端にあと施エアンカー等により所定の位置に堅固に取り付ける。
(iii) コンクリート下地モルタル塗りの上に取り付ける場合は、コンクリート部分へのアンカー長さを確保する。
(2) ジョイント金具
笠木と笠木の各ジョイント部に取り付けられるジョイント金具は、笠木のジョイントでの雨水に対して排水機構の溝形断面形状をもつものとする。
(d) 施工上の注意
(1) 固定金具は笠木が通りよく、かつ、天端の水勾配が正しく保持されるように、あらかじめレベルを調整して取り付ける。
(2) あと施エアンカーによる固定金具、ジョイント金具の取付けに際して、特に強い風圧の予想される箇所に使用する場合は、風荷重に対して十分な引抜き耐力を有するようアンカーの径・長さ・取付け間隔を検討し、施工に注意する。
(3) 笠木部材の割付け
施工図により、割付け、各部の納まり(端部、壁付き、ほかとの取合い)及び取付け手顛を事前に検討する。
取付けは、コーナ一部分笠木(通常 l = 500mm程度)を先に取り付け、直線部材については、パラペット全体の形状を勘案し、定尺を中心に割り付ける。調整部分を中心部にもってくる方法、両端に割り振る方法、片端にもってくる方法がある。
(e) コーナー、その他の役物の笠木は、パラペットの形状によりあらかじめ用意するが、直角コーナー以外は特注となる場合が多い。各種コーナー笠木の例を図14.7.4に示す。
図14.7.4_入角・出隅コーナー.jpg
(イ) 入隅・出隅コーナー
図14.7.4_T字形ジョイント.jpg
(ロ) T字形ジョイント
図14.7.4_Z形コーナー.jpg
(ハ) Z形コーナー
図14.7.4_角度違いコーナー.jpg
(ニ) 角違いコーナー
図14.7.4_下り勾配.jpg
(ホ) 下り勾配
図14.7.4_上がり勾配.jpg
(ヘ) 上がり勾配
図14.7.4_幅違いコーナー.jpg
(ト) 幅違いコーナー
図14.7.4_Rコーナー.jpeg
(チ) Rコーナー
図14.7.4 各種コーナー笠木の例

14章 金属工事 8節 手すり及びタラップ

14章 金属工事
8節 手すり及びタラップ
14.8.1 適用範囲
(a) この節は,建物内外部の手すり及びタラップを対象としている。
(b) 作業の流れ(手すり(アンカー先付け)の場合)を図14.8.1に示す。
図14.8.1_手すり工事の作業の流れ.jpeg
図14.8.1 手すり工事の作業の流れ
(c) 施工計画書等
(1) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を作成する。
① 工程表(必要に応じて場所別の工程表の作成)
② 製造所名、施工業者及び管理組織
使用材料の材質(あと施工アンカーも含む)、寸法
工法管理の方法等
⑤ 施工手順及び養生方法
(2) 施工図の検討は、次の事項について行う。
(i) 場所別割付け図
(ii) 各部取合いの納まり
(3) 見本品又はカタログを提出させ、設計担当者と打ち合わせて決定する。
14.8.2 手すり
(a)材料・仕上げ
(1) 手すりに用いる金属材料は、多くの場合、鋼、ステンレスあるいはアルミニウム合金である。
(2) アルミニウム合金の表面処理は、通常2節に記述したとおりであり、設計図書に指定される。
(3) 鋼製品の塗装
鋼製品の錆止め塗装は、工場で行われることが多いが、「標仕」表18.3.1により、屋外の手すりの類の塗装についてはA種とし、屋内についてはB種を標準としている。
(4) BL認定部品
(-社)ベターリビングでは、住宅の廊下・バルコニー・窓等に使用する手すりについて基準を設け、強度等各種の試験に合格したものをBL認定部品としている。
(b) 工 法
(1) 手すりと手すり支柱又は手すり子との取合いは、鋼製以外は通常小ねじ留めにする。安全のため小ねじは、手すりの中に入れて留めるものが多い(図14.8.2参照)。ステンレスは溶接する場合もあるが、溶接部の取合いの仕上げには注意する必要がある。
一般的な手すりの例を図14.8.3に示す。
図14.8.2_手すりと手すり支柱又は手すり子との取合い(イ).jpeg図14.8.2_手すりと手すり支柱又は手すり子との取合い(ロ).jpeg
図14.8.2 手すりと手すり支柱又は手すり子との取合い
図14.8.3_一般的な手すりの例(手すり子タイプ).jpeg
図14.8.3_一般的な手すりの例(パネルタイプ).jpeg
図14.8.3 一般的な手すりの例
(2) 溶接は3節による。
(3) 手すりが長くなる場合には金属の温度変化による部材の伸縮を考慮して、伸縮調整部を設けるのがよい(通常 5~10m間隔程度)。伸縮調整部を設ける間隔及び伸縮調整幅は、使用する金属の膨張係数を考慮して決めるのが望ましい。
部材伸縮の目安(温度差40℃の場合)は、鋼は1m当たり0.5mm程度、アルミニウム合金は1m当たり1.0mm程度である。
伸縮調整部の例を図14.8.4に示す。
図14.8.4_伸縮調整部(壁付けの場合).jpeg
図14.8.4_伸縮調整部(一般の場合).jpeg
図14.8.4 伸縮調整部
(4) 手すりの小口は、安全性,美観等を考慮して、「標仕」では同材でふたをする ことにしているが、共色(ともいろ)の樹脂製キャップが用いられることもある。その場合は、取換えが可能な納まり及び形状とする。
(5) 手すり支柱はコンクリートあるいはモルタルの中に入る部分であっても、錆止めの処置を行うことが望ましい。
なお、モルタル充填に際して、こて押え等が不十分になりがちなため、充填を確実に行う。
取付け例を図14.8.5に示す。
図14.8.5_手すりの取付け(あと施工アンカー).jpeg図14.8.5_手すりの取付け(スリーブ抜き).jpeg
図14.8.5 手すりの取付け
14.8.3 タラップ
(a) 材料・仕上げ
(1) タラップに用いる金属材料は、通常鋼及びステンレスが用いられる。
(2) タラップに用いられる金属材料の表面処理の種別は、2節による。
(3) 塗装については18章による。
(b) 工 法
(1) 取付けに際して、ボルト及びナットを使用する場合は、手足に当らないように取り付ける。
(2) タラップを屋外に取り付ける場合は、関係者以外に使用できないようにし、特に、子供の使用による不測の事故を防止する対策が必要であり、一般的には最下段の踏子(足掛り)高さを床から2.0m程度とするのがよい。また、足掛り部は、スリップ止め加工とするのがよい。
なお、落下防止対策のための背もたれ付きのものもある。

15章 左官工事 1節一般事項

15章 左官工事
01節一般事項
15.1.1 適用範囲
この章は、塗装、仕上塗材仕上げ、壁紙張り等の各種仕上げ工事の下地となるモルタル塗り及びせっこうプラスター塗り、床コンクリートの仕上げ又は下地調整を行う床コンクリート直均し仕上げ及びセルフレベリング材塗り、建築用仕上塗材を用いる仕上塗材仕上げ、マスチック塗材を用いるマスチック塗材塗り、半乾式工法及び乾式工法によるロックウール吹付け等を対象としている。
15.1.2 基本要求品質
(a) 左官工事に使用する材料は、各種仕上材の下地となる場合とそれ自体が仕上げとなる場合があるが、下地の平たんさ、平滑さの確保や美装を施すだけでなく、長期にわたって建築物を保護するものとなる。このため、設計図書ではこれまでの実績に基づいて、必要な品質性能を有する材料としている。これらの材料のうち、JIS規格が定められているものは、一般的な材料と同様に扱えばよい。JISの定められていない材料のうち(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」により評価がなされたものは、この結果を活用するとよい。また、これら以外の材料で、主材料製造所の指定する製品にあっては、その指定によるものとする。
使用材料のうち、モルタル塗り等に使用する細骨材は、粒度等について「標仕」に具体的な数値が規定されているため、工事現場においてふるい分け試験により確認するとよい。
なお、防火材料として内壁下塗り用軽量モルタル、仕上塗材及びロックウールを用いる場合は建築基準法に基づき認定又は指定を受けた材料を使用しなければならない。
(b) 左官工事による仕上げ層は、躯体を外的な劣化要因から保護することによって建築物の耐久性を向上させることが重要な目的の一つであり、そのために「所定の塗厚」が確保されている必要がある。この左官工事による仕上げは、通常下塗り、中塗り、上塗りといった複数の塗り層によって構成されており、その各層ごとに所定の塗厚を確保できるようにする必要がある。具体的には「標仕」に規定されている各塗り層ごとの厚さをどのように確保するか、施工の許容誤差をどの程度とするかなどを含めて品質計画として提案させ、実施させることと考えればよい。
また、仕上り面が「所要の状態である」とは、各塗り層ごとにその上層となる材料との接着性を確保できる状態と考えればよく、最上層にあっては仕上りとして適切である状態と考えればよい。
なお、左官工事による塗り層の仕上り状態を適切なものとするためには、単にその塗り仕上げだけで実現できるものではなく、下地の仕上り精度から総合的に考慮する必要がある。
(c) 左官工事の施工に当たっては、塗付け層の表面状態が適切であり、各層ごとに浮き部分がないように補修を行っていけば、完成状態として仕上げ層に必要な接着性や耐久性は確保される。したがって、「標仕」15.1.2(c)でいう「有害な浮きがないこと」とは、下地の処理を含めて施工のプロセスをいかに管理するかを具体的に「品質計画」で提案させ、これを実施させることと考えればよい。
なお、屋外のタイル張りや届内吹抜け部分等のタイル下地の場合には「標仕」11.1.5によりタイルの打診による確認や接着力試験がモルタル下地を含めて行われることになる。この場合にあっては11.1.2を参照する。
また、同様な部位のモルタル塗りでは、「標仕」11.1.5に準じて打診等による「浮きのないことの確認方法」、「有害量の浮きの判断基準」、「浮きがあった場合の補修方法」等を品質計画として提案させ,これによって管理させるようにする。
15.1.3 見 本
色合、模様等の確認は、事前に設計担当者と打合せを行ったうえで、見本帳又は見本板を提出させて行う。この場合、取り合うほかの材料の見本を一緒に提出させて確認するとよい。
15.1.4 養 生
(a) モルタルは硬化後、各種材質に付着して取り除くことが困難であるだけでなく、アルミサッシに付着した場合等は、セメントのアルカリによってアルミが腐食するおそれがあるので、適切な養生を行う。
(b) 夏期における施工や風の強い場合等、モルタル塗付け後に急激な乾燥が起こると、硬化に必要な水分が失われてセメントが十分に水和せず、強度が発現しないので、適切な措置を講ずる。
(c) 気温が低い場合には、モルタルの硬化時間が長くなり、強度の発現も遅れるため、作業終了後、夜間の気温低下により凍害を受けるおそれがある。寒冷期の施工における注意点を次に示す。
(1) 寒冷期には、暖かい日を選んで施工するか、昼間の比較的気温の高い時期に施工し、早めに作業を切り上げる。塗付け後は適切な養生を行い、凍結防止に努める。
(2) 月間平均気温が5℃以下で、かつ、最低気温が2℃以下となる期間にやむを得ず施工する場合は、工事箇所の周辺を板囲い、帆布シート、ビニルシート等の防寒・防風設備で囲い、その内部をヒーター等の加熱器を用いて保温する。
なお、全国月別平均気温は参考資料の資料3を参照されたい。
(3) 熱源に灯油熱風器を用いる場合は、塗付けモルタルの品質、仕上材との付着性、仕上材の品質等に悪影響を及ぼすことがないような適切な対策を講ずる。
(4) 塗付け作業終了後も所要の硬化状態が確認されるまでは、適切な養生を継続する。
15.1.5 ひび割れ防止
(a) コンクリートの打継ぎ部、せっこうラスボード類の継目等は、熱冷や乾湿の繰返しにより伸縮するために、塗り付けたモルタルは、この部分でひび割れを生じやすく、「標仕」で示されているように適切なひび割れ防止対策を行うことが重要である。
(b) 下地が異なる材料の取合いとなる部分や躯体のひび割れ誘発目地部分は動きが大きく、「標仕」15.1.5 (a)で規定するひび割れ防止措置でもこれを防止することはできない。このため、「標仕」15.1.5(b)では、原則として、目地や見切り縁等を設けることにしている。

15章 左官工事 2節モルタル塗り

15章 左官工事
02節モルタル塗り
15.2.1 適用範囲
(a) セメントモルタル塗りは現場打ちコンクリート下地、コンクリートブロック下地等の内外壁及び床等の面に、セメント・細骨材・水を主成分とし、これに混和材料等を加えて作ったセメントモルタルを、主として次の部位に塗る工事を適用の対象とする。
(1) 鉄筋コンクリート造の内外壁,床等のモルタル仕上げ及びタイル張り下地
(2) ブロック、れんが積み下地の壁モルタル仕上げ
(3) ラスシート、ワイヤラス下地等のモルタル仕上げ
(b) 作業の流れを図15.2.1に示す。
図15.2.1_モルタル塗り工事の作業の流れ.jpg
図15.2.1 モルタル塗り工事の作業の流れ
(c) 施工計画書の記載事項は,おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表(施工箇所別の着工及び完了の時期)
② 施工業者名及び作業の管理組織
③ 使用材料及び保管方法
④ 練混ぜ場所及び練混ぜ方法
⑤ 調合
⑥ 下地処置の工法(屋外、屋内、下地材の吸水の著しい箇所等の別)
⑦ 工法(施工箇所別)
⑧ モルタル仕上げの種類(施工箇所別)
⑨ 各工程の工程間隔時間(養生期間)及びその確認方法
⑩ ひび割れ防止の方法
⑪ 浮きの確認方法及び補修方法
⑫ 養生方法(夏期の直射日光、通風、寒冷、施工後)
⑬ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者.品質記録文書の書式とその管理方法等
(d) 「標仕」では、セメント、砂、細骨材、混和材料等を建築現場で調合して使用するモルタルを対象としている。しかし、近年においては良質な天然骨材の入手が困難な状況もあり、天然骨材の品質低下やモルタルの品質確保の観点から、あらかじめこれらの原料を工場で調合した既調合モルタルが普及してきている。
なお、既調合モルタルのうち、10mm程度以下の塗厚を前提としたものは、JIS A 6916(建築用下地調塗材)に品質が規定されているので、特記等により既調合モルタルが採用された場合は参考にするとよい。
15.2.2 材 料
(a) セメントは、作業性が良く、塗り上げた面が良好で、収縮の少ないものがよい(6.3.1(a)参照)。一般に左官用としては、普通ポルトランドセメントを用いる。モルタルとして骨材を多く配合すれば収縮は小さくなるが、作業をしやすくするため富配合で使用されることが多い。このため収縮が大きくなりひび割れを生じやすく、外部では吸水膨張、温度変化による膨張収縮等によってひび割れ、はく離等を生じやすい。したがって、骨材を多く配合し、作業性改善のための各種の混和材料を配合して用いることが望ましい。また、長期間の保存又は湿気等により風化し始めて塊りのあるようなセメントは、強度が発現せず、強度不足等の原因となるので使用してはならない。
(b) 細骨材
(1) 砂
(i) 左官に用いる砂の粒度は、コンクリートの場合と同様に、重要な役割をもっており作業性、仕上り、硬化後のひび割れ等に大きく影響する。
原則として、川砂を用いることが望ましいが、山砂を用いる場合は、泥分・有機物の含有量に注意し、粒度は表15.2.1に示すようなものであることが望ましい。
表15.2.1 砂の標準粒度
表15.2.1_砂の標準粒度.jpg
(ⅱ) 砂の泥分、有機不純物等については 6.3.1(b)を参照する。
(2) 内壁下塗り用軽量モルタル(サンドモルタル)の細骨材
(ⅰ) 内壁下塗り用軽量モルタルの細骨材には、セメント混和用軽量発泡骨材が用いられる。(-社)日本建築学会「JASS 15 左官工事」では左官用軽量発泡骨材と称されているものであるが、発泡粒状の軽量骨材、混和剤及び繊維があらかじめ工場で調合されており、建築現場でセメントと混合し、水を加えて使用される。
セメント混和用軽量発泡骨材には、一般に内部用、外部用と称するものがあり、スチレン樹脂発泡粒は内部用でその他の軽量骨材は外部用として使い分けられていた時期もあったが、外部用のスチレン樹脂発泡粒も十分な実績があることから、単純に軽量骨材の種類によって内部用と外部用とを区分することは困難とされている。
参考として、セメント混和用軽量発泡骨材の組成例を表15.2.2に示す。
表15.2.2 セメント混和用軽量発泡骨材の組成例
表15.2.2_セメント混和用軽量発砲骨材の組成例.jpg
(ⅱ) 内壁下塗り用軽量モルタル塗りの施工フロー図を図15.2.2に示す。
図15.2.2_内壁下塗り用軽量モルタル塗りの施工フロー図.jpg
図15.2.2 内壁下塗り用軽量モルタル塗りの施工フロー図
(iii) 内壁下塗り用軽量モルタルの適用に当って防火材料の指定がある場合は、国土交通大臣認定を受けた軽量モルタルを使用しなくてはならない。参考として、NPO法人湿式仕上技術センターが認定を受けている不燃材料の条件を表15.2.3に示す。
表15.2 3 軽量セメントモルタルの認定条件
表15.2.3_軽量セメントモルタルの認定条件.jpg
(iv) セメント混和用軽量発泡骨材を用いた軽量モルタルは、民間工事において外壁の下地調整にも使用されているが、公共工事での実績が不十分なことから「標仕」では適用外としている。ただし、JASS 15及び(-社)日本建築学会「JASS 19 陶磁器質タイル張り工事」では、特記により適用可とされており、日本建築学会品質基準 JASS 15 M-104(下地調整用軽量セメントモルタルの品質規準)にその品質が示されている。
なお、JASS 15 M-104は、日本建築仕上学会の外部用軽量モルタル性能評価委貝会で、平成6年度から9年度にわたって実施された研究の成果「外部用軽量モルタルの性能評価試験および品質基準(案)」並びに製造所の団体である日本建築仕上材工業会の団体規格「NSKS-009 セメント混和用軽量発泡骨材」を参考として、2007年のJASS 15改定に当たって新たに定められたものである。
セメント混和用軽量発泡骨材を用いた下地調整用モルタルは、通常のセメントモルタル(砂モルタルともいう。)に比べると、軽くて施工性が良いため広く普及している。容積吸水率はほぼ等しいかむしろ小さい傾向にある。また、コンクリートの圧縮ひずみに対する追従性が高い特性から、壁面の中で拘束がなく自由に伸縮する部位への適用が好ましいとされている。
しかし、内部用の骨材を外部に使用したり、製造所の指定する量のポリマーディスバージョンを混入しないで使用するなど、使用方法が間違っていると所要の性能が得られず、はく落の一因ともなるため、JASSでは仕様書に基づいて正しく使用することが前提とされている。
(c) 水は、水道水又はJIS A 5308(レディーミクストコンクリート)附属書C(規定)[レディーミクストコンクリートの練混ぜに用いる水]による水の品質規定に適合するものを用いる。表15.2.4に水の品質規定を示す。
表15.2.4 上水道水以外の水の品質(JIS A 5308 : 2011)
表15.2.4_上水道水以外の水の品質(JISA5308).jpg
(d) 混和材料
(1) 「標仕」15.2.2(e)(1)に記載されている混和材は、「標仕」表15.2.3の上塗りに入れる混和材で内壁用の材料である。その混入量は一般的にセメントに対する容積比で左官用消石灰及びドロマイトプラスターの場合10%程度以下までとされている。ドロマイトプラスターは上塗り用を用いる。
(2) 混和材料を使用する主な目的は、次のとおりであるが、効果を上げるには調合等の管理が重要である。
(i) 作業性の改善
(ii) 性質の改良(ひび割れ、はく離等の防止)
(iii) 保水性の向上
(iv) 仕上り面の改善
(v) 使用水量の減少
(vi) 凍害の防止
(3) 寒冷時に施工する場合は、気象と養生条件を考慮し、混和剤を使用する必要がある。
(i) 使用水量を減少させるためには、AE剤、AE減水剤等を使用する。
(ii) 凍害の防止には、塩化物を含まない凍結防止剤等の使用を検討する。
安易に凍結防止剤を使用すると、モルタルの収縮が大きくなり、ひび割れや浮きの発生につながるので十分に注意する必要がある。
(4) 保水剤
(i) 保水剤は混和剤の一種で、モルタルの初期乾燥収縮によるひび割れの防止、接着力の安定化、作業性の向上を目的として使用されるもので、メチルセルロース(MC)等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール(PVA)等があるが、メチルセルロースが一般的に使用されている。図15.2.3に、保水剤入りモルタルの保水性の一例を示す。
図15.2.3_保水剤入りモルタルの保水性.jpg
図15.2.3 保水剤入りモルタルの保水性
(ii) 混入量は、一般的にセメント質量に対して0.1~0.15%程度で、夏期には 0.2%程度である。
(5) ポリマーセメントモルタル、ポリマーセメントペースト用の混和剤は、JIS A 6203(セメント混和用ポリマーディスパージョン及び再乳化形粉末樹脂)の規格に適合するものを用いる。信頼できる試験成績書及び製造所の仕様を確認して承諾する。
JIS A 6203の抜粋を次に示す。
JIS A 6203 : 2008
3. 定 義
この規格で用いる主な用語の定義は、次による。
a) セメント混和用ポリマー
セメントモルタル及びコンクリートの改質を目的にそれらに混和して用いるセメント混和用ポリマーディスバージョン及び再乳化形粉末樹脂の総称。
b) ポリマーセメントモルタル
結合材にセメントとセメント混和用ポリマーを用いたモルタル。
c) ポリマーセメントコンクリート
結合材にセメントとセメント混和用ポリマーを用いたコンクリート。
d) ポリマーセメント比
ポリマーセメントモルタル及びコンクリートにおけるセメントに対するセメント混和用ポリマーディスパージョン及び再乳化形粉末樹脂の全固形分の質量比。
e) 全固形分
セメント混和用ポリマーディスパージョンにおいては不揮発分、セメント混和用再乳化形粉末樹脂においては揮発分以外の成分。
4. 種 類
セメント混和用ポリマーの種類は、その形態及び主な化学組成によって、次のように区分する。
a) セメント混和用ポリマーディスパージョン
セメント混利用ポリマーディスパージョン(以下、ディスパージョンという。)は、水の中にポリマーの微粒子が分散している系。次の2種類に区分する。
1) セメント混和用ゴムラテックス
セメント混和用ゴムラテックスは、合成ゴム系、天然ゴム系、ゴムアスファルト系などのゴムラテックスに安定剤、消泡剤などを加えて、よく分散させ均質にしたもの。以下、ゴムラテックスという。
2) セメント混和用樹脂エマルション
セメント混和用樹脂エマルションは、エチレン酢酸ビニル系、アクリル酸エステル系、樹脂アスファルト系などの樹脂エマルションに安定剤、消泡剤などを加えて、よく分散させ均質にしたもの。以下、樹脂エマルションという。
b) セメント混和用再乳化形粉末樹脂
セメント混利用再乳化形粉末樹脂(以下、粉末樹脂という。)は、ゴムラテックス及び樹脂エマルションに安定剤などを加えたものを乾燥して得られる、再乳化可能な粉末状樹脂。
5. 品 質
ディスパージョン及び粉末樹脂の品質は、表1による。
表1 品 質
表1_品質.jpg
JIS A 6203 : 2008
(6) 内壁下塗り用軽量モルタル及び既調合モルタルに用いる混和剤は、製造所の指定するものを用いることとし、品質及び仕様を確認して承諾する。
(7) 顔料は、耐アルカリ性のある無機質のものを主材料とし、太陽の直射や100℃程度の温度にあっても著しく変色せず、金物を錆びさせないものでなければならない。顔料は、無機顔料と有機顔料に分類され、無機顔料は発色成分が無機質で、一般に熱・光・アルカリ等に対して化学的に安定であり、隠ぺい力(下地や骨材の色を見えなくする能力)が大きいが、その色調は有機顔料に比べれば鮮明でない。有機顔料は色調が鮮明で着色力も大きいが、熱や光に対して耐久性がないものが多く、色あせしやすい。一般的に無機顔料が望ましいが、色によっては有機顔料を使わなければならない場合もあるので、製品の性能を確認のうえ選定する必要がある。
セメント、プラスター等の着色に使用できる顔料を表15.2.5に示す。
表15.2.5 使用できる顔料とその発色成分
表15.2.5_使用できる顔料とその発色成分.jpg
(e) 吸水調整材
(1) 吸水調整材とは、モルタル塗りの下地となるコンクリート面等に直接塗布することで下地とモルタル界面に非常に薄い膜を形成して、モルタル中の水分の下地への吸水(ドライアウト)による付着力の低下を防ぐものである。
従来は、モルタル接着増強剤、あるいはモルタル接着剤と呼ばれていたため、たくさん塗れば付着力が増大するという誤った使い方をされていた。これは、塗り過ぎることにより下地とモルタルの界面の膜が厚くなり、塗り付けたモルタルがずれやすくなりモルタルの付着力を低下するおそれがある。
(2) 吸水調整材は、「標仕」表15.2.2の品質に適合するものを用いる。信頼できる試験の試験成績書及び製造所の仕様を確認して承諾する。
なお、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)において、「標仕」の規定に基づき吸水調整材の評価基準を定め、評価を行っているので参考にするとよい。
(f) 下地調整塗材
(1) 下地調整塗材とは、壁タイル接着剤張りの求める下地精度を確保するため、躯体コンクリートの不陸の調整に用いるものである。
(2) 下地調整塗材は、JIS A 6916(建築用下地調整塗材)によるセメント系下地調整厚塗材2種(下地調整材CM-2)の規格適合品を用いることとし、製造所の仕様を確認して総塗厚10~15mm程度を2回に分けて塗り付けることができるものを用いる。
JIS A 6916の抜粋を次に示す。
JIS A 6916: 2006
4. 種類及び呼び名
下地調整塗材の種類及び呼び名は、表1による
表1 種類及び呼び名
表1_種類及び呼び名.jpg
5. 品 質
下地調整塗材の品質は、7.によって試験し、表2の規定に適合しなければならない。(7.は省略)
表2 品 質
表2_品質.jpg
15.2.3 調合及び塗厚
(a) ポリマーセメントモルタルは、一般的に、内・外壁の下塗りに用いられる。混和剤(セメント混和用ポリマー)の混入量は、安定した接着性が得られるように、セメント質量の5%(全固形分換算)程度とする。ポリマーセメントモルタルの調合例を表15.2.6に示す。
表15.2.6 ポリマーセメントモルタルの調合例
表15.2.6_ポリマーセメントモルタルの調合例.jpg
(b) 平成2年建設省の「外壁タイル等落下物対策専門委貝会」で、外壁の診断及びタイル張り・モルタル仕上げ工法の問題点を洗い出すとともに、正しい診断方法やはく落事故の生じにくい適正な施工方法についての検討がなされた。1回のモルタル塗厚及び全塗厚についても「タイル外壁およびモルタル塗り外壁の剥落防止のための設計・施工上の留意事項」の中に規定されており「標仕」ではこの値を採用している。
塗厚が厚くなると、こて押えが効かなくなり、壁でははく落、ひび割れ等の発生の危険性が大きくなるので、通常床を除き1回の塗厚は、原則として7mm以下としている。
1回ごとの塗付け層の表面形状は、次に塗る材料の種類によって平滑さの要求度合が異なる。一般に、粗面度が大きいほど接着性が向上することから、平滑さの要求度合に応じて、できるだけ粗面になるような表面形状にするのがよい。
(c) 仕上げ厚又は全塗厚は、あまり厚くするとはく離するおそれがあるので、床を除き 25mm以下としている。
(d) 内壁下塗り用軽量セメントモルタル(サンドモルタル)の調合はセメント混和用軽量発泡骨材の製造所の仕様によるが、一般的な調合例と標準塗厚を表15.2.7に示す。
表15.2.7 軽量セメントモルタルの調合例・標準塗厚
表15.2.7_軽量セメントモルタルの調合例・標準塗厚.jpg
内壁下塗り用軽量セメントモルタル塗りは、こて圧が十分にかかり、ポリマーセメントののろが接着界面に十分に回り接着性を確保し、表面がくし目を引く代わりに、凹凸状になるように、標準塗厚を 5mmとしているので注意する必要がある。
なお、普通モルタルの下塗りでは金ぐし類で荒らし目をつけるが、軽量モルタルの場合は荒らし目をつけないので注意する。
(e) モルタルの練混ぜは、機械練りを原則とし、所要量のセメント・砂をミキサーで空練りし、これに無機質系の粉末混和材料等計量したものを加え空練りし、水を加えて均ーなモルタルとする。液状の混和材は、あらかじめ所要量を水で希釈して用いる。
(f) 水を加え練り混ぜたモルタルは、気温・水温及び混和材料の種類により凝結時間が異なるが、品質確保のため練混ぜ量は60分以内に使い切れる量とする。
(g) 建具枠回り、ガラスブロックの金属枠回りの充填モルタルに用いる防水剤、凍結防止剤は、塩化カルシウム系等のように金属の腐食を促進するものでないものを用いる。雨掛りの部分の防水性能を付与するために使用するものであり、成分、性能、実績等を考慮して検討する。凍結防止剤を使用すると、モルタルの収縮が大きくなり、ひび割れや浮きを生じやすくなるので十分に注意する必要がある。やむを得ず凍結防止剤を使用する場合は、防水剤を練り水に加えてモルタルを十分に固練りしたのちに、凍結防止剤を添加して再度混練りし、充填モルタルとする。
15.2.4 下地処理
(a) 補修をポリマーセメントペースト又はポリマーセメントモルタルで行う場合には、ポリマーの種類によって混入量、可使時間が異なるので、工事監理に当たっては製造所の工事仕様や施工容量書を確認しておくことが肝要である。
(b) 塗り面の下地コンクリートからの浮きの原因のうち、下地に関する原因には次のようなものがあるが、(1)及び(2)は、モルタル塗りを行う前に下地の清掃を行うことにより十分防止可能なものであるので、デッキブラシ等を用いて十分水を掛けながら洗い落とす。屋内のように十分な水洗いができない場合には、水湿しのうえデッキブラシ等を用いて清掃する方法も検討する。
(1) 下地表層の強度不足による表層破壊(硬化不良、レイタンス等)
(2) 下地の清掃不足による接着不良
(3) 下地面への吸水によるモルタルの硬化不良
(4) 施工時の養生不足による硬化不良(直射日光等による急速な乾燥、寒冷期の保湿、加熱等の不良)
(5) モルタルの塗厚の過大による収縮
(6) 長期にわたる下地の変形(躯体膨張、収縮、ひび割れ)
(c) 「標仕」では、目荒し工法として、高圧水洗処理を採用している。
(1) 高圧水洗処理は、一般には高圧水洗浄や超高圧水洗浄と呼ばれ、コンクリートの強度に応じて、用いられる水圧が異なる(図15.2.4参照)。Fc = 100N/mm2を超える高強度コンクリートには、100~200Mpsの水圧が用いられている。
(2) 高圧水洗処理は、接着性の阻害要因を除去するとともに、コンクリート表面を粗面化してモルタルの接着面積を増加したり、投びょう効果を向上させたりすることが期待できる。(-社)建築研究新興協会の研究によって、コンクリート表面を高圧水で洗浄及び目荒しした場合の処理程度やコンクリートとモルタルとの接着性改善に関する定量的な成果が得られている。これらの研究成果を活用して、全国ビルリフォーム工事業協同組合では、高圧水洗によるコンクリート面の処理限度見本(図15.2.5参照)を作製したり、作業員の資格者制度を設けたりしている。また、高圧水の取扱いは危険を伴うため、安全な作業をするには上記のような有資格者を活用することが望ましい。
(3) 高圧水洗処理では、ノズルの形状等の違いにより目荒しの程度にばらつきがでること、コンクリート強度により用いる水圧が異なることから、必ず試験施工を行わせて目荒しの限度見本を作製させ、それを承諾したうえで、実施工を行わせることが、品質管理上重要である。
  図15.2.4_高圧水洗処理による目荒し後のコンクリート表面状態(イ).jpg
  図15.2.4_高圧水洗処理による目荒し後のコンクリート表面状態(ロ).jpg
  図15.2.4_高圧水洗処理による目荒し後のコンクリート表面状態(ハ).jpg
図15.2.4 高圧水洗処理による目荒し後のコンクリート表面状態(JASS 19より)
図15.2.5_コンクリート表面の処理限度見本(合板型枠).jpg
図15.2.5_コンクリート表面の処理限度見本(表面処理合板型枠).jpg
図15.2.5_コンクリート表面の処理限度見本(鋼板型枠).jpg
     ①下限見本              ②上限見本
図15.2.5 コンクリート表面の処理限度見本
(d) コンクリート床面の場合、コンクリート打込み後なるべく早い時期に仕上げ工事を行うことが望ましいが、一般的には木工事、壁等の工程上の都合から長期間放置することが多い。モルタルの浮きを防止するために、粉塵等十分に清掃し、水洗いのうえ、ポリマーセメントペースト又は吸水調整材を塗布し、モルタル塗りを行う。
清掃が不十分な場合、ポリマーセメントペースト又は吸水調整材を塗布しても、モルタルの浮きの防止に効果がないので注意が必要である。
(e) 総塗厚が25mm以上になる場合は、ステンレス製アンカーピンを打ち込み、ステンレス製ラスを張るか、溶接金網、ネット等を取り付け、安全性を確保したうえでモルタルを塗り付ける。はく落防止工法の例を図15.2.6に示す。
最近、既存建築物の外壁改修工事において、ピンとネットを複合して用い、仕上げ層のはく落に対する安全性を確保できる改修構工法が数多く実施されている。
建設省では、平成7年度建設技術評価制度公募課題「外壁複合改修構工法の開発」で外壁複合改修構工法の評価を実施した。評価された工法の中には改修工事だけでなく、安全性を確保する工法として、新築工事に利用できる工法もあるので参考にするとよい。
図15.2.6_はく落防止工法の例(イ).jpg
        図15.2.6_はく落防止工法の例(ロ).jpg
     図15.2.6 はく落防止工法の例
(f) 塗装合板、金属製型枠を用いたコンクリート下地は、平滑過ぎるため、モルタルとの有効な付着性能が得られにくいのでポリマーセメントペースト又は吸水調整材を塗布し、モルタル塗りを行う。
15.2.5工 法
(a) 下塗り前の注意事項
(1) 吸水調整材使用時の注意事項
(i) 吸水調整材は、製造所の指定する希釈倍率及び塗布量を厳守して使用する。
(ii) 吸水調整材塗布後、下塗りまでの間隔時間は施工時の気象条件によって異なるが、一般的には1時間以上とする。長時間放置するとほこり等が付着し、接着を阻害することがあるので、1日程度で下塗りをすることが望ましい。
(2) ポリマーセメントペースト使用時の注意事項
(i) ポリマーセメントペーストは、一度乾くとはく離しやすくなるので、塗ったのち直ちに下塗りモルタルを塗る必要がある。
(ii) ポリマーセメントペーストの塗厚が厚いことは好ましくない。一般的には1mm程度とされている。
(iii) ポリマーセメントペーストに保水剤を混入すると、保水性、作業性が向上する。混入量は15.2.2 (d)(4)を参考にし、粉体の保水剤を使用する場合は十分に空練りして用いる。
(b) 内壁下塗り用軽量セメントモルタル(サンドモルタル)施工の注意事項
(1) セメント混和用軽量発泡骨材製造所指定の吸水調整材を指定の仕様で全面塗ることを標準とする。
(2) 特に、内壁下塗り用軽量セメントモルタル施工後は、硬化乾燥状態に注意し、原則として施工日又は翌日に散水養生を行う。
(c) タイル張り下地モルタル等の均しモルタル施工の注意事項
(1) 下地調整塗材は、材料の組合せ及び吸水調整材の製造所の仕様を、確認して使用する。
(2) 有機系接着剤張りでは、金ごて1回押えとし、梨目程度の仕上りとすることが望ましい。
(3) 近年、タイルのはく離は、下地モルタルとコンクリート下地の間のはく離が多いため、平成25年版「標仕」ではモルタルの硬化後、全面にわたり打診を行うこととされている。モルタル工事完了後に接着力試験を行う場合は特記されるが、この場合はあらかじめ接着力試験を想定した施工計画を行う。
(d) 下塗りモルタル施工後の注意事項
下塗りモルタル施工後は、硬化乾燥状態により、原則として施工日又は翌日に水湿しを行い下塗りモルタルを十分に硬化させる。
(e) 既製目地材
目地は、モルタルの収縮によるひび割れ、部分的なはく離及び外壁では雨水の浸透による湿潤・乾燥の繰返し、温度変化に伴う膨張収縮等によるひび割れ防止.異種下地の接合部のひび割れ防止のために設けるものであるが、既製目地材はその形状等から意匠的に用いられるもので、ひび割れ防止を目的としたものではない。

15章 左官工事 3節 床コンクリート直均し仕上げ

15章 左官工事
03節 床コンクリート直均し仕上げ
15.3.1 適用範囲
(a) 床コンクリート直均し仕上げの適用の対象となるものは、次のように直均し仕上げのまま使用される場合と、張物・敷物等の下地がある。
なお、直均しのまま使用される工場・倉庫等の耐摩耗性を要求される床では、表面仕上げ材を散布して仕上げることもあり、「モノリシック仕上げ」とも呼ばれている。
(1) 一般室内床の張物・敷物等の下地
(2) 工場、倉庫、駐車場、建物外構等で耐摩耗性・ノンスリップ効果を要求される床仕上げ
(b) 「標仕」では、木ごて等によるタンピング仕上げまでを「標仕」6.6.6で規定し、木ごてによる中むら取り以降の工程について、この節で規定している。
15.3.2 床面の仕上り
仕上げの精度としては、一般室内床の場合で張物等の下地となるときも仕上げの精度が、そのまま張物仕上げ面に表れるので注意を要する。合成高分子系ルーフィングシート防水・塗膜防水の露出工法の場合も防水層の厚さが 1~2mm程度であるため、下地の精度がそのまま仕上げ面に表れ、防水層の耐久性にも影響する。したがって、仕上げの程度については、それぞれ要求される精度が異なるので各部分の使用目的、用途等を十分に考えて仕上げを行う。
床コンクリート直均し仕上げの程度として、「標仕」表6.2.5では床コンクリート直均し仕上げの程度として平たんさの程度を 3mにつき 7mm以下としている。
なお、平たんさの測定方法については、(-社)日本建築学会「JASS 5 鉄筋コンクリート工事」に、日本建築学会規格としてJASS 5 T-604(コンクリートの仕上がりの平たんさの試験方法)が定められているので、参考にするとよい。
また、床の材料・施工に関連する団体、研究者、技術者等で構成される日本床施工技術研究協議会では、コンクリート床下地表面の凹凸や不陸の簡易測定方法を団体規格「コンクリート床下地表層部の諸品質の測定方法、グレード」(2006年4月)に定めているので、併せて参考にするとよい。
15.3.3 工 法
(a) コンクリートを打ち込む前に、床仕上げに必要な造り方定規やレーザーレベルの設置を行う。仕上げ精度が要求される場合にはガイドレール(鉄骨鉄筋コンクリートの場合はピアノ線等を張ることもある。)等を3.5~4.0m間隔に設置し、基準となる造り方定規は鉄骨その他狂いの生じない箇所に設け、常に点検して正確に水平又は所要の勾配を保持するようにする。
(b) コンクリート打込み後、所定の高さに荒均しを行い、タンパ等で粗骨材が表面より沈むまでタンピングし同時に造り方定規にならい、定規ずりして平たんに敷き均す。
ガイドレール等の造り方定規は、定規均し後取り外し、その跡はコンクリートを充填し、木ごてで平らに均す。
壁や柱際等で均し定規等を使用できない部分は、特に不陸の生じないよう、十分に木ごて等でタンピングして平たんに均す。
定規均しをむらなく行ったのち、中むら取りを木ごてを用いて行う。
木ごてずりは、コンクリート面を指で押しても少ししか入らない程度になった時機に行う。
(c) 金ごて仕上げの初回は跨板の上に乗ってもほとんど沈まなくなったときに行い、セメントペースト類を十分に表面に浮き出させる。屋内の作業や多湿又はブリーデイングが多い場合、中ずりを木ごてで行うとよい。
金ごて中ずりは、こてむらと凹凸をなくして、表面が十分に平滑になるように行う。この場合、表面にペーストがあまり浮き出るほどこそをかけ過ぎてはならない。
(d) 金ごて仕上げの最終回は、コンクリートの硬さがとそのかかる最終段階の時機に、締まり具合を見ながら適切な力で押さえる。この最終の押さえは、コンクリートの調合、気温、スラブ厚さ等により、その時機の判断が難しく、真夜中になることもあるのでおろそかにならないように注意する。
(e) 粗面仕上げとする場合は(c)の工程ののち定規を当てがいデッキブラシ等で目通りよく粗面に仕上げる。
(f) こて仕上げに際しては移動歩み板等を使用し、直接コンクリート面上を歩行してはならない。
(g) 金ごて仕上げの段階で、コンクリートが締まり過ぎ、不陸・こてむらがとれなくなったりしたとき、セメントや水等を表面に散布したりすると、耐摩耗性がなくなったり、その部分がはく離するなどの支障を来す。部分的にモルタルを散布して押さえたときもタイミングが悪いとはく離し、モルタルの乾燥収縮等の影響によるひび割れ・はく離等の故照が生じやすいので注意する。
(h) 最近、機械ごて(トロウェル)が使用されることが多いが、夏季にスラブ硬化の速度が急激で人力では仕上げ作業が間に合わない場合や仕上げ作業の省力化目的で使用されている。しかし、比較的差し筋の多いスラブ、小さな間口部やだめ穴が多いスラブ等には、機械ごてを使用できない場合もある。
(i) 最終金ごて押えに機械ごてを用いる場合、押え過ぎに注意する。機械ごてを何度も強くかけ過ぎると故障が生じやすい。また、機械ごてを用いても、必ず最終仕上げは金ごてで行う。
15.3.4 養 生
表面仕上げ後はコンクリートが急激に乾燥しないように適切な養生を行う。一般には金ごて仕上げのまま、張物下地等では最終こて押え後、12時間程度を経てから 2~3日間散水養生を行い、また、ポリエチレンシート等を敷き詰めるか、砂・おがくず等を敷き詰める。このようにしておけば上階のコンクリートのこぼれ、セメントペースト等も付着しにくくなる。防水下地等では散水養生を3日間以上続ける。特に夏期等急激な乾燥のないように注意する。

15章 左官工事 4節 セルフレベリング材塗り

15章 左官工事
04節 セルフレベリング材塗り
15.4.1 適用範囲
(a) この節は、内装仕上げの張物下地として、セルフレベリング材を用いる場合を対象としている。
(b) 作業の流れを図15.4.1に示す。
図15.4.1_セルフレベリング材塗りの作業の流れ.jpg
図15.4.1 セルフレベリング材塗りの作業の流れ
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表
② 施工業者名及び作業の管理組織
③ 材料製造業者名、使用材料(セルフレベリング材、骨材、下地処理材等)
④ 使用機材
⑤ 材料置場及び保管方法
⑥ 材料計量、練混ぜ方法
⑦ 水比管理方法(計量責任者名)
⑧ 1日の流し込み量と流し込み予定時間
⑨ 流し込み順序、流し込み区間及び作業者数(施工管理責任者)
⑩ 圧送途中における事故対策
⑪ 養生(養生方法、期間等)
⑫ 補修方法
⑬ 試験
15.4.2 材 料
(a) セルフレベリング材には、結合材の種類によってせっこう系とセメント系とがあり、結合材のほかに高流動化剤、硬化遅延剤等が混合されている。セルフレベリング材の品例は、「標仕」表15.4.1に適合するもので、信頼できる機関の試験成績書で確認する。
(b) セルフレベリング材を浴室等の水掛りがある床や地下室等で水が浸入するおそれのある床に適用すると、浮き等の不具合を生じることもあるので、水の影響を受けやすい部分への施工は避けたほうがよい。
(c) セメント系セルフレベリング材は、現場で施工時に水を加えて練混ぜを行い施工するものと、製造所で練り混ぜられたものをミキサー車等で施工現場に搬送し施工するものがある。後者を使用する場合、可使時間内に製造所より施工現場に搬送し施工を行わなければならないため、交通事情を考慮したうえで、あらかじめ搬送時間を検討する。
(d) セルフレベリング材は、製造所の定める有効期間を経過したものを使用させてはならない。一般的には、製造後3箇月から6箇月と定めているものが多い。
(e) 施工時に現場で水を加えて練混ぜを行い施工するセルフレベリング材の貯蔵及び保管は、雨露や直射日光を避け湿気の少ない場所で行う。
(f) 吸水調整材は、耐アルカリ性、耐水性が良好な合成樹脂エマルションで、下地に対する吸込みを抑え、付着性を高めるとともに気泡の発生を防止する目的で用いられる。
15.4.3 調合及び塗厚
(a) 水量過多は強度低下や材料分離の原因となるので、製造所の規定する加水量を厳守する。
(b) 塗厚が大きくなると、ひび割れや浮きが発生しやすくなるので、標準塗厚を10mmとしている。また、塗厚が均ーでない場合には、硬化時の体積変化(やせ)により塗厚の大きい部分にひび割れが生じるおそれがあるので、塗厚の大きくなる部分は、あらかじめモルタルで補修を行っておく。
15.4.4 下地処理
(a) セルフレベリング材は、それ自体で平滑な床下地面を得ることができるものであるが、下地となるコンクリートの精度が悪いと塗厚の不均等により不陸となるおそれがある。そのため、下地コンクリートの仕上りは「標仕」15.3.3(a)(6)を行った状態とする。また、コンクリートの仕上りの平たんさは、「標仕」表6.2.5に示す 3mにつき10mm以下を標準とする。
(b) セルフレベリング材を施工する場合には、下地コンクリートの乾燥収縮に起因するひび割れや浮きを防止するため、下地コンクリートの乾燥状態を確認する。製造所の仕様では、下地コンクリートの乾燥期間は、打込み後1箇月以上とされている。
(c) 吸水調整材は、製造所の仕様により所定量の水で均ーに希釈し、デッキブラシ等で十分すり込むように塗り付ける。最終の吸水調整材塗りを行ったのち、セルフレベリング材塗り前までに吸水調整材を十分乾燥させておく。
15.4.5 工 法
(a) 材料の練混ぜ不足は、流動性低下の原因となるので、製造所の指定する方法で十分に練り混ぜる。
(b) セルフレベリング材が硬化する前に風が当たると、表層部分だけが動いて硬化後にしわが発生する場合がある。したがって、流し込み作業中はできる限り通風をなくし、施工後もセルフレベリング材が硬化するまでは、甚だしい通風を避ける。
(c) 5℃以下での施工は、硬化遅延、硬化不良を引き起こすおそれがある。また、夜間の気温低下により凍害を受けるおそれがある。
(d) 養生は、セルフレベリング材中の余剰水分を乾燥させ、所定の強度を発現させるのに必要で、標準的な塗厚であれば7日以上が目安となるが、低温で乾燥が遅い冬期は14日以上を必要とする。また、特にセメント系のセルフレベリング材では、打設後から床仕上げまでの登生期間を必要以上に長くした場合、収縮による浮きやひび割れが発生しやすくなる。
なお、標準塗厚での施工条件においては、乾燥が促進される高温期は養生期間を短縮することができる。

15章 左官工事 5節 仕上塗材仕上げ

15章 左官工事
05節 仕上塗材仕上げ
15.5.1 適用範囲
(a) この節は、JIS A 6909(建築用仕上塗材)に規定されている仕上塗材を用いる内外装工事を対象としている。
(b) 仕上塗材仕上げの中で、最も工程数の多い複層仕上塗材仕上げを例として、作業の流れを図15.5.1に示す。
図15.5.1_複層仕上塗材仕上げ工事の作業の流れ.jpg
図15.5.1 複層仕上塗材仕上げ工事の作業の流れ
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表(色見本の決定、施工箇所別の着工及び完了等の時期)
② 製造所名、施工業者名及び管理組織
③ 下地の処理と仕上材の種別
④ 工法(塗り工程と使用する機器・工具類)及びその管理方法等
⑤ 工程ごとの所要量等の確認方法
⑥ 養生方法(施工中(特に飛散防止)及び完了後)
⑦ 足場つなぎ跡の補修方法
⑧ 材料保管の方法(温湿度の管理、消防法)及び作業の安全管理対策
⑨ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
15.5.2 材 料
(a) 仕上塗材
(1) 仕上塗材は、JIS A 6909(建築用仕上塗材)の規定に適合するものを用い、その確認・検査は、1.4.4を参照されたい。仕上塗材の有効期間は一般的に 6~12か月のものが多い。
JISマーク表示品は、その包装又は容器に製造年月日若しくはその略号と有効期間の表示が義務づけられており、それによって確認する。
仕上塗材は、指定された銘柄、色及びつや等に基づいて製造所により調合・出荷されるので、現場で顔料又は添加剤等を加えてこれらを調整してはならない。
また、仕上塗材は、下塗材、主材又は上塗材の組合せにより総合塗膜として品質が規定されているので、それぞれの材料は同一製造所のものを使用しなければならない。
(2) ホルムアルデヒド放散量に関して「標仕」では、内装仕上げに用いる塗材が指定建築材料(表19.10.2参照)であるか否かにかかわらず、特記がなければ F☆☆☆☆のものを使用することとしている(表15.5.1参照)。したがって、市場性、部位、使用環境等を考慮してその他の放散量のものを使用する場合は、設計図書に特記されている内容を十分確認する必要がある。
表15.5.1 JIS A 6909:2010におけるホルムアルデヒド関連の規定
表15.5.1_JISA6909(2010)におけるホルムアルデヒド関連の規定.jpg
なお、特記された内容に適合する製品等が人手困難な場合は、「標仕」1.1.8による協議事項とすればよい。また、ホルムアルデヒド放散量に関する建築基準法上の扱いや現場における確認方法等については、19章10節を参照されたい。
(3) 「標仕」表15.5.1は、仕上塗材ごとに仕上げの形状、工法、所要量、塗り回数の標準を示したものである。
参考として、JIS A 6909における仕上塗材の種類及び呼び名を表15.5.2に、仕上塗材の種類と仕上げの形状の例を表15.5.3に示す。
表15.5.2 仕上塗材の種類及び呼び名(JIS A 6909 : 2010)(その1)
表15.5.2_仕上塗材の種類及び呼び名(JISA6909)(その1)2.jpg
表15.5.2 仕上塗材の種類及び呼び名(JIS A 6909 : 2010)(その2)
表15.5.2_仕上塗材の種類及び呼び名(JISA6909)(その2)2.jpg
表15.5.3 仕上塗材の種類と仕上げの形状
表15.5.3_仕上塗材の種類と仕上げの形状.jpg
また、塗材や塗料の単位面積当たりの使用量等を示す数値は、JASSに倣い「標仕」表15.5.1では「所要量」で示し、18章では「塗付け量」で示している。これらの用語の定義は次のとおりである。
(i) 所要量:
被仕上塗材仕上面の単位面積に対する仕上塗材(希釈する前)の使用質量(JASS 23 吹付け工事)
被塗装面単位面積当たりの塗装材料(希釈する前)の使用質量(JASS 18 塗装工事)
(ii) 塗付け量:
被塗装面単位面積当たりの塗装材料(希釈する前)の付着質量(JASS 18)
(4) 内装薄塗材及び内装厚塗材には、気密性が高くなった住宅での結露防止や湿度変化の抑制を期待して吸放湿性を付加したものがある。吸放湿性は厚さ9.5mmのせっこうボードに仕上塗材を塗り付けたものを試験板として用いて測定している。JIS A 6909の調湿形の品質を表15.5.4に示す。この品質を満たすものは「調湿形」の表示があるので、吸放湿性を有する塗材を用いる場合はこれを用いる。
表15.5.4 薄付け仕上塗材(内装)及び厚付け仕上塗材(内装)の調湿形の品質(JIS A 6909 : 2010)
表15.5.4_薄付け仕上塗材(内装)及び厚付け仕上塗材(内装)の調湿形の品質(JISA6909).jpg
(5) 結合材として水溶性樹脂又はこれに合成樹脂エマルションを混合したものを用いている内装膊塗材Wには、耐湿性、耐アルカリ性、かび抵抗性を付加したものがある。「標仕」では、コンクリート、セメントモルタル等のアルカリ性の下地に内装薄塗材Wを適用する場合は、JIS A 6909の「耐アルカリ性試験合格」の表示のあるものを用いることとしている。
(6) 合成樹脂溶液系複層仕上塗材(複層塗材RS)は、セメント系複層塗材に対抗した有機質系の複層塗材として、昭和40年初期に開発され多くの建物に採用されてきた。反応硬化形の溶剤系合成樹脂を結合材として用いており、付着性、耐水性、耐アルカリ性等の塗膜性能が良く、また、仕上りも他の複層仕上塗材に比べてきめ細かい上品な肌触りの模様が得られるなどの特長を有していた。しかし、近年は、環境配慮の観点から各種水系の仕上塗材が開発されたために、複層塗材 RSの使用量が減少し、製造されなくなっている。今後、JISからも削除予定であるために、平成25年版「標仕」では,複層塗材RSが削除された。
(7) JIS A 6909における複層仕上塗材の耐候性の品質は、耐候性A法及び耐候性B法の試験方法によって規定されている。耐候性A法については、すべての複層仕上塗材に適用されるもので、必ずその品質を有するものでなければならない。しかし、耐候性B法は,より耐候性のグレードが高い複層塗材に適用されるもので、この規定に適合すれば耐候形1種、耐候形2種又は耐候形3種の表示がで きるものである。これらの概要を表15.5.5に示す。
なお、そのいずれを適用するかは特記によることとなるが、特記がなければ、耐候形3種の複層塗材を用いることとしている。
表15.5.5 複層仕上塗材の耐候性の品質(JIS A 6909 : 2010)
表15.5.5_複層仕上塗材の耐候性の品質(JISA6909).jpg
(8) 複層仕上塗材の上塗材は、その溶媒の違いによって溶剤系、弱溶剤系、水系に区分され、溶剤系はトルエンやキシレン等の比較的溶解力の強い溶剤が、弱溶剤系はミネラルスピリット等の比較的溶解力の弱い溶剤が、また、水系は水が用いられている。それぞれの溶媒の違いによる上塗材の特徴を表15.5.6に示す。
上塗材の適用に当たっては、省資源や環境保全対策の一環として水系の上塗材を用いることが望ましいが、水系の上塗材は溶剤系に比べると低温や高湿度において硬化乾燥が遅いため、施工においてはミストの飛散による周辺への汚染対策や、施工後の降雨・結露等への配慮が必要である。また、気温が低い場合にセメント系の主材に適用すると、エフロレッセンスを生じ色むらの原因となることもあるので注意を要する。
なお、「標仕」表15.5.2 でつやなし及びメタリック仕上げについては、上塗り塗膜の伸長性が小さいことから可とう形及び防水形の複層塗材には適用しないこととしている。
表15.5.6 溶媒の違いによる上塗材の特徴
表15.5.6_溶媒の違いによる上塗材の特徴.jpg
(9) 防火材料の指定がある場合は、建築基準法に基づき認定を受けた仕上塗材を用いなければならないが、その概要を表15.5.7に示す。
表15.5.7 防火材料認定番号と仕上塗材の呼び名との関連
表15.5.7_防火材料認定番号と仕上塗材の呼び名との関連.jpg
(b) 下地調整塗材は、仕上塗材の付着性の確保や素地の気泡穴、目違い等の調整を主な目的として用いられる材料で、その品質はJIS A 6916(建築用下地調整塗材)に規定されている。その種類及び呼び名を表15.5.8に示す。
下地調整塗材は、指定された銘柄や品質等に基づいて製造所により調合・出荷されるので、現場で砂や添加剤等を加えてこれらを調整してはならない。
表15.5.8 建築用下地調整塗材の種類及び呼び名(JIS A 6916 : 2006)
表15.5.8_建築用下地調整塗材の種類及び呼び名(JISA6916).jpg
(c) 上水道以外の水は、錆、塩分、硫質分、有機物等を含むことがあり、これらの量や種類によってはセメントの凝結時間、合成樹脂エマルションのゲル化、外観の異状等、塗材や塗膜の品質・性能及び外観に影響を及ぼすことがあるので、一般には飲料に適した水を使用するとよい。
(d) 合成樹脂溶液形の塗材を希釈する場合に用いる専用うすめ液(シンナー)は、個別の塗材との組合せによっては、塗材がゲル化したり色別れの原因となったりするので、仕上塗材製造所の指定するものを使用しなければならない。
(e) 下地調整塗材以外の下地調整材には、合成樹脂系シーラー及び合成樹脂パテがある。合成樹脂系シーラーは、耐アルカリ性、造膜性及び耐水性が良い合成樹脂エマルション又は合成樹脂溶液で、仕上塗材の下地に対する吸込みを抑え、付着性を高めるために用いる。また、合成樹脂パテは、気泡穴やパネル接合部の隙間の充填等に用いるもので、合成樹脂エマルションパテ、塩化ビニル樹脂パテ、エポキシ樹脂パテ等がある。
なお、合成樹脂系シーラーは、仕上塗材の下塗材で代用できる場合は省略することができたり、合成樹脂エマルションパテは外部に使用できないなどの適用条件があるほか、仕上塗材との付着性において個別の材料ごとに適性があるので「標仕」では仕上塗材製造所の指定する製品を用いることとしている。
15.5.3 施工一般
(a) 仕上塗材の模様、色、つや等は、製造所により相異があるので工程ごとの所要量又は塗厚が分かる見本塗板をなるべく早めに提出させ、設計担当者と打合せのうえ決定する。
なお、施工に先立ち所定の仕上り状態を確認するために、試し塗りをする場合は、見本塗板より大型の板に行うか又は施工予定の下地に行い、見本塗板と照合し仕上り状態を決定する。また、多数の人が塗る場合は、これを周知させる。
(b) 放置時間は、用いる塗材の乾燥硬化機構によって決まる。したがって、塗材の種類や気象条件を踏まえ、次の工程に移る放置時間及び最終工程後の放置時間を適切に定める必要がある。
なお、ここでの放置時間は、「標仕」18.1.4(h)の工程間隔時間及び最終養生時間と同じ意味である(18.1.6 (c)(3)参照)。
(c) 気温が5℃以下になるような場合は、原則として、施工を中止する。やむを得ず施工を行う場合は、15.1.4(c)を参照し、採暖.換気等の養生を行う。
なお、夏期に直射日光を受ける壁面に施工する場合は、シート等で囲って養生し、急激な乾燥を防ぐようにする。
また、セメント系仕上塗材を著しく乾燥した下地に施工する場合は、塗材の水分が下地に急激に吸収され付着力が低下するので水湿しを行う。
(d) 強風時(一般に風速5m/s以上)又は施工後放置時間以内に降雨・降雪や結露のおそれがある場合は、適切な措置が講じられていない限り、施工を行わないようにする。強風時には周辺に材料が飛散するばかりでなく、塗膜の付着性、造膜性等に不具合が生じることがある。また、塗膜の乾燥が不十分な状態で水分が作用した場合には、塗材の付着性、造膜性、色調、模様等に欠陥が生じやすい。
(e) 仕上塗材には溶液系の下塗材(シーラー)、上塗材及びその薄め液(シンナー)があり、それらの材料は、トルエン、キシレン、ケトン類等の可燃性溶液が用いられているものが多く、その材料の容器に消防法による危険物表示や労働安全衛生法による注意事項が個々に表示されている。
また、これらの溶剤は皮膚のかぶれ、中毒等健康を害するおそれがあるので.作業は関係法令(18.1.4 (a)参照)に従い十分注意する。
(f) 所要量等の確認は、工程ごとに行うが「標仕」15.5.7では仕上り状態の目視判断を基本としている。しかし、防水形の仕上塗材及び軽量骨材仕上塗材については、塗厚によって塗膜の性能が左右されるため、塗厚の代替特性値として単位面積当たりの使用量も併せて確認することとしている。
(g) 目地のシーリング
(1) 目地部及び建具回り等のシーリングは、界面を少なくして防水上の効果を得るため、仕上塗材塗りに先立ち施工するのがよい。
なお、シーリング材の表面は、仕上塗材塗り施工時にある程度乾燥しているよう前もって施工する。
(2) 「標仕」15.5.3 (g)ではシーリング材の施工面に仕上げを行う場合は、塗重ね適合性を確認し、必要な処理を行うこととしている。
シーリング材と仕上塗材の組合せは、一般的な組合せとして「標仕」表9.7.1 の中の「仕上げあり」の欄にポリウレタン系が示されているが、仕上塗材が溶剤系又は水系を問わず、また、JIS表示品のシーリング材とJIS表示品の仕上塗材の同系統の組合せであっても、相互の付着や仕上りの美観に大差が生じやすく、付着改善や油分の移行を防止するため、バリアプライマー等で対応する例が多い。事前にシーリング材又は仕上塗材製造所の技術資料等で確認しておく必要がある。
(h) 足場に対する注意
(1) 足場の横架材の部分は作業姿勢が不自然となり、また、壁面とノズルの角度が変わり、色、模様にむらが生じやすいので注意が必要である。
(2) 足場のつなぎ跡の補修は、仕上塗材の仕上げが終了したのちに行うため、かなり入念に行っても補修跡が目立つ。組み立てるときに、つなぎ跡を考慮してできるだけつなぎ跡の補修ができやすいように位置を決めるようにする。
(i) 施工技術に関して指導を行っている団体としては、 (-社)日本左官業組合連合会、(-社)日本塗装工業会、日本外壁仕上業協同組合連合会、全国マスチック事業協同組合連合会等がある。
15.5.4 下地処理
(a) U形にはつり、モルタルで充填する場合の仕上塗材に支節のないモルタルには、表15.5.8に示すセメント系下地調整厚塗材2種等がある。
(b) 「標仕」でシーリング材は仕上げに支障のないものとしているのは、シーリング材の種類と仕上塗材の組合せで付着力に大差があり、また、シーリング材の可塑剤や低分子の油分が仕上塗材に移行して外観を著しく汚染するものがあることによる。
(c) 「標仕」表15.5.3では、仕上塗材の種類に応じたモルタル下地の仕上げをはけ引き、金ごて及び木ごて仕上げと定めている。ただし、セメント系厚付け仕上塗材の下地はタイル張り下地と同じく均しモルタル塗りの考えであり、モルタルは中塗りまでとし、中塗りの仕上げをはけ引き又は木ごて仕上げとしている。複層塗材 REを金ごて仕上げにしているのは、塗材の硬化状態と付着力の関係を考慮したことによる。また、可とう形と防水形塗材を金ごて仕上げにしているのは、下地を平滑にして塗膜の厚みを確保しやすく、下地の凸凹で塗膜の薄い部分が切れることを考慮したことによる。
(d) ALCパネル、押出成形セメント板の補修材料は、パネル製造所の指定する補修材料を使用することになっている。「標仕」15.5.5に示すALCパネルの下地調整又は押出成形セメント板の下地調整の方法に準じて行うとよい。
(e) 下地に金物類がある場合は、仕上塗材製造所の仕様により十分な錆止め処理をし、また、不要なものは除去する。
15.5.5 下地調整
(a) コンクリート
(1) 「標仕」では下地調整塗材を全面に塗り付けて.平滑にするとしているが、これは仕上塗材の良好な仕上り及び耐久性を確保するためである。
表15.5.8に示すように、下地調整塗材C-1は0.5〜1mm程度、下地調整塗材 C-2は1~3mm程度、下地調整塗材CM-2は、3~10mm程度の範囲で下地の不陸に応じて使い分けるとよい。
ただし、表15.5.8の参考に記されているように下地調整塗材C-2及び下地調整塗材CM-2は、その上にすべての仕上塗材の塗付けが適用可能であるが、下地調整塗材C-1及びCM-1に適用する仕上塗材は、すべての仕上塗材ではないことに留意する。
下地調整塗材C-1及び下地調整塗材CM-1は、原則として防水形複層塗材RSのように特に耐溶剤性を必要とする材料や複層塗材REのように凝集力の強い材料による仕上げは対象としておらず、仕上塗材の中でももっとも汎用的に使用されている複層塗材E、薄塗材E等の仕上げを前提として品質が定められている。
一方、下地調整塗材C-2は通称セメントフィラーと呼ばれる JIS A 6916(建築用下地調整塗材)制定時の性能を跨襲したもので、すべての仕上塗材に適応することを前提として品質が定められており、下地調整塗材CM-2も同様である。
(2) コンクリートの下地調整のうち、「標仕」15.5.5 (a)(3)ではスラブ下等の見上げ面及び厚付け仕上塗材仕上げ等の場合は、次の理由で下地調整塗材塗付けを省略することとしている。
(i) スラブ下等の見上げ面は一般的に砂壁状仕上げの薄塗材仕上げが多く、目違いはサンダー掛け程度の下地調整で十分である。
(ii) 厚付け仕上塗材仕上げの塗厚は、一般的に 4〜10mmであり、コンクリート壁の目違いはサンダー掛けで取り除く程度の下地調整で十分である。
(3) 下地の不陸調整厚さが3mmを超えて10mm以下の場合は、スラブ下等の見上げ面及び厚付け仕上塗材仕上げであっても、下地調整塗材CM-2を平滑に塗り付ける。
(b) モルタル、プラスター及びPCパネル面の下地調整において、仕上塗材の下塗材が合成樹脂エマルションシーラーと同様な目的で使用される場合は、合成樹脂エマルションシーラーを省略し下塗材を塗り付けることとなる。
(c) ALCパネル
(1) ALCパネルの表面は強度が小さく粗面であるため、目つぶしや表面強度の確保を目的として下地調整塗材を塗り付ける。
(2) 「標仕」で外装薄塗材S及び防水形複層塗材RS仕上げの場合の下地調整塗材を、特に下地調整塗材C-2としているのは、仕上塗材が溶剤系であるため、下地調整材の溶剤による強度低下や付着不良を防ぐためである。また、下地調整塗材を塗り付ける前に合成樹脂エマルションシーラーを塗り付けるのは、ALCパネルの吸水性及び表面に付着している粉状物を考慮し、下地調整塗材の付着性を確保することや塗付けの作業性を良くすることを目的としている。
ただし、昭和50年代後半から特にALCパネル表面の下地調整用として実用化された下地調整塗材Eの中には、合成樹脂エマルションシーラーの機能を兼ね備えた下地調整塗材Eも開発され、シーラーレスフィラー等と称される製品も流通しているが、民間工事における長年の実績も踏まえて、このような下地調整塗材Eを用いる場合は、合成樹脂エマルションシーラーを省略することができる。
(d) 押出成形セメント板の下地処理を 2液形エポキシ樹脂ワニスとしているのは、特に耐アルカリ性や下地と仕上塗材の付着力に留意し、耐久性を確保するためである。
なお、使用する仕上塗材製造所の仕様により指定されている下塗材が、2液形エポキシ樹脂ワニスと同等の効力を有するものであれば、2液形エポキシ樹脂ワニスに代えて、当該下塗材とすることができる。
(e) 塗り面は下地調整後十分乾燥させ、仕上塗材が塗られるまで付着を妨げるごみ、汚れ等のないように留意する必要がある。
15.5.6 工 法
(a) 材料の練滉ぜ
(1) 各仕上塗材の下塗材・主材・上塗材は、セット品として水系・溶剤系、溶液系・エマルション系・粉体、1液形・2液形等様々なものがあり、その材料の練混ぜ方法は、仕上塗材の製造所の使用方法として包装又は容器等に表示されている。
(2) 「標仕」15.5.6(a)から(s)で各仕上塗材の練混ぜについで規定している。
JIS表示品の各仕上塗材は、その包装、容器又は添え付ける印刷物に次の事項に示す表示が義務付けられており、それによって材料の練混ぜ方法を確認する。
(i) 使用方法
① 調合
② 水を必要とする仕上塗材については標進加水量、薄め液を必要とする仕上塗材については簿め液の標準量
③ 標準所要量
④ 可使時間
⑤ 施工方法
(ii) 注意事項
① 粉体及び混和液、又は基剤及び硬化剤がセットされているものは、同一銘柄のものを使用すること。
② 複層塗材で、下塗材、主材及び上塗材がセットされているものは、同一銘柄のものを使用すること。
(b) 材料の塗付け
(1) 下塗材塗り
下塗材は、主として下地に対する主材の吸込み調整及び付着性を高める目的で使用される。したがって、だれ,塗残しがないように均ーに塗り付けることが肝要である。
なお、仕上塗材製造所の仕様では、下地の種類や状態によって下塗材の吸込みが異なるので、所要量は一般に 0.1〜0.3kg/m2 の範囲で記載されていることが多い。したがって、適用に当たっては 15.5.3(a)の試し塗りを行って、当該現場での所要量を確認しておくとよい。
(2) 主材塗り
主材は、主として什上り面に立体的な模様を形成する目的で使用される。施工は「標仕」表15.5.1により吹付け、ローラー塗り又はこて塗りによるが、事前に提出された見本帳又は見本塗板と同様の模様で 、しかも塗残しや足場むらがないように塗り付けることが肝要である。
なお、吹付けの厚付け仕上塗材及び複層仕上塗材並びに防水形の仕上塗材は、主材層の連続性を確保するために、基層塗りと模様塗りを区分しているので特に注意が必要である。基層塗りを省略する工法は、一般に「玉吹き」等と称されているが、部分的に下塗材と上塗材だけの仕上げ部分ができ、塗膜の耐久性が低下するばかりでなく、下地に対する保護効果も低減する。
(3) 上塗材塗り
(i) 厚付け仕上塗材
①JIS A 6909(建築用仕上塗材)では、原則として、単層としているが「標仕」表15.5.1では、セメントスタッコは上塗材を0.3kg/m2以上の所要量で 2回塗りとし、その他の外装厚塗材については、特記により上塗材の適用ができることとしている。
これは外装用にあっては、下塗材、主材、上塗材の総合塗膜で性能を確保するということが重要であり、(ii) の複層仕上塗材を参考に特記するとよい。
② 上塗材を用いる場合は、複塗仕上塗材と同様に水系のアクリル系上塗材が使われることが多い。この場合、セメント系の主材である厚塗材Cは、施工時の気温が低い場合にセメントに起因するエフロレッセンス(主因はセメント中の水酸化カルシウムで、その水への溶解性は約5℃の時最大の溶解度を示す。)等で色むらや白化等が生じやすい。その対策として15.1.4(c)により十分に温度管理を行うか、「標仕」表15.5.2に示す弱溶剤系か溶剤系の上塗材を使用する方法がある。
(ii) 複形仕上塗材
①上塗材は、紫外線、風、雨(酸性雨)、雪等の外力から主材層を保護し、同時に色、光沢等によりデザイン性を高めるためであり、0.25kg/m2以上の所要量で2回塗りを標準としている。
② メタリック仕上げの場合は、0.4kg/m2以上の所要量で3回塗り以上としている。メタリックの主な顔科であるアルミ粉等の金属粉がアルカリ(下地のセメント)や酸(大気中の酸性雨等)での劣化を抑制するためと、金属粉の比重差による色むらを防止するため、上塗り工程を3回以上とし、第1回目はクリヤー又はメタリックと同系色のエナメルを塗り付け、最上層はクリヤーを塗り付けることとしている。
③ 上塗材の種類は、「標仕」15.5.2(a)(9)により、特記がなければ「水系アクリルのつやあり」が使われる。水系の上塗材は、溶剤系の上塗材に比べ低温時や高湿条件では乾燥が遅いため、塗料ミストの風下への飛散防止として、より細やかな養生対策や、塗料ミストの少ない工法としてのローラー塗りの採用等の配慮が必要である。
また、仕上塗材の種類がセメント系の場合は、(i) ②と同様の対策が必要である。
15.5.7 所要量等の確認
(a) 仕上塗材仕上げの所要量等の確認は、一般的には「標仕」表15.5.4により、見本帳や見本塗板と比較して色合、模様、つや等が同じように仕上がっており、かつ、塗り面にむら、はじき等がない状態であればよい。
(b) 防水形の仕上塗材及び軽量骨材仕上塗材の場合は、塗厚の確保が防水等の性能に影響するため、単位面積当たりの使用量によって、「標仕」表15.5.1に規定する「所要量」の確認を、(a) の確認と併せて行うこととしている。
なお、所要量の定義については15.5.2(a)(3)を参照する。
15.5.8 「標仕」以外の材料
「標仕」では規定されていないが、この節の仕上塗材に関連する材料として、JIS A 6021(建築用塗膜防水材)に規定されている外壁用塗膜防水材がある。外壁用塗膜防水材は、ゴム状弾性、防水性、ひび割れ追従性等を特徴とする材料で、特に中性化や塩害を抑制する機能を有しており、従来から9章[防水工事]の「標仕」以外の工法で紹介していたが、この節の防水形複層仕上塗材と同様な材料として扱われることから、平成25年版では15章5節の「標仕」以外の材料に掲載することとした。JIS A 6021の外壁用塗膜防水材には、主要原料の違いによってアクリルゴム系、ウレタンゴム系、クロロプレンゴム系及びシリコーンゴム系の4種類が規定されているが、最も多く用いられているアクリルゴム系外壁用塗膜防水材工法の工程例を表15.5.9に示す。
表15.5.9 アクリルゴム系外壁用塗膜防水工法の工程例(JASS8 L-AW準拠)
表15.5.9_アクリルゴム系外壁用塗膜防水工法の工程例(JASS8).jpg