12章 木工事 8節 小屋組(「標仕」以外の工法)

第12章 木工事
08節 小 屋 組(「標仕」以外の工法)
12.8.1 木 材
小屋組に用いる木材の樹種は特記によるものとし、特記がなければ杉又は松を標準とする。
12.8.2 工 法
工法等の仕様を表12.8.1.工法等の図解を表12.8.2に示す。
表12.8.1 小屋組の工法(仕様)
表12.8.1_小屋組の工法(仕様).jpg
表12.8.2 小屋組の工法(図解 その1)
表12.8.2_小屋組の工法(図解その1).jpg
表12.8.2 小屋組の工法(図解 その2)
表12.8.2_小屋組の工法(図解その2).jpg
表12.8.2 小屋組の工法(図解 その3)
表12.8.2_小屋組の工法(図解その3).jpg

12章 木工事 9節 屋根野地、軒回りその他(「標仕」以外の工法)

第12章 木工事
09節 屋根野地、軒回りその他(「標仕」以外の工法)
12.9.1 木 材
屋根野地、軒回りその他の部位に用いる木材の樹種は特記によるものとし、特記がなければ、杉又はひのきを標準とする。
12.9.2 工 法
工法等の仕様を表12.9.1に、工法等の図解を表12.9.2に示す。
表12.9.1 屋根野地、軒回りその他の工法(仕様)
表12.9.1_屋根野地、軒廻りその他の工法(仕様).jpg
表12.9.2 屋根野地、軒回りその他の工法(図解 その1)
表12.9.2_屋根野地、軒廻りその他の工法(図解その1).jpg
表12.9.2 屋根野地、軒回りその他の工法(図解 その2)
表12.9.2_屋根野地、軒廻りその他の工法(図解その2).jpg
参考文献
参考文献.jpeg

13章 屋根及びとい工事 1節 一般事項

13章 屋根及びとい工事
01節 一般事項
13.1.1 適用範囲
この章は屋根の金属板葺、粘土瓦葺及びとい工事を対象としている。
なお、金属板葺は長尺金属板葺と折板葺とに分かれる。
13.1.2 基本要求品質
(a)「標仕」では、屋根及びとい工事に使用する材料のうち主要なものはそれぞれのJIS規格が指定されている。また、補助材料については、材質や表面処理等について必要とされる内容が具体的に規定されている。基本要求品質としては、これらの指定された種類の材料が工事に正しく使用されたことを容易に証明できるようにしておく必要がある。
(b) 屋根及びといは、「標仕」で示された以外にも使用する部材が多く、その形状・寸法も多種多様であり、工事現場において加工し取り付けられる部材もある。このため、「所定の形状及び寸法を有する」とは、設計図、施工図等で示された部材が、その仕様どおり取り付けられていることを求めたものである。したがって、部材の施工方法、精度、管理の方法について「品質計画」で提案させ、それにより施工し、管理したことを証明できるようにしておく。
「所要の仕上り状態」としては、使用する建物の重要度や使用箇所、所在地の環境等を考慮して、全体として有害な傷がないこと、特に見え掛り部分に使用上問題となる汚れ、ねじれ、反り、色むら、へこみ、欠け等がなく、また、耐久性上問題となる傷がないことである。具体的には、屋根の専門工事業者による施工管理記録を活用すればよいが、あらかじめ具体的に限度を定めておき、この限度内に納まっていることと考えればよい。これらの限度を定めるに当たっては、同時に限度を外れた楊合の処理方法についても明確にしておく。
とい工事にあっては、使用材料が適正であり、加工寸法の管理が適切であればおおむね所定の形状及び寸法を確保できると考えられることから、(a)による使用材料の確認と適切な施工図、加工製品の確認のほか、取付け状態の確認記録を整備するようにする。
といの仕上り状態としては、ルーフドレンとといの取合いだけでなく、仕上げの防露巻きも含めて、出来上りの状態の限度と確認方法を定めておき、この記録を整備する。
(c) 「標仕」13.1.2(c)でいう「漏水がない」とは、9章の防水工事と同様に水張り試験による確認を要求しているわけではなく、漏水のない品質をつくり込むという考えが重要である。具体的には、施工のプロセスとして下地から屋根材、とい材料の取付けに当たって、何をどのように管理するのかを「品質計画」として提案させ、これを実施させた結果として「漏水がない」ものと考えればよい。屋根材にあっては、この取合い部の検討において、特に耐風圧性及び施工後のきしみ等の有害な震動をなくするように検討を行うことが重要である。
(d) 屋根に加わる外力の主なものは、風と雪である。風については「屋根ふき材及び屋外に面する帳壁の風圧に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」(平成12年5月31日 建設省告示第1458号)に基づき算出した風圧力に対して、雪については建築基準法施行令第86条に基づき算出した積雪荷重に対して、それぞれ構造耐力上安全であることを確かめなければならない。
施工に当たっては、設計で考えられた構造耐力性能を実現するために必要な監理を行う。また、「有害な振動がない」ようにするためには、屋根材と下地材の取合い、下地材と構造体の取合いを適切なものとする必要がある。いずれも監督職員の承諾を受けた施工計画書どおり施工が行われたことを管理記録等により証明できるようにするとよい。
なお、風圧力については「Eの数値を算出する方法並びにV0及び風力係数の数値を定める件」(平成12年5月31日 建設省告示第1454号)に「局地的な地形や地物の影響により平均風速が割り増されるおそれのある場合においては、その影響を考慮しなければならない」とされており、想定される要因としては、地表面の状況(無障害物平坦地)、傾斜地(崖地、傾斜地等)、風の通路(運河、水路、谷あい等)、局地風.ビル風等がある。
とい工事にあっては、ルーフドレンとコンクリート躯体の取合いを含め、各部材の接続が確実に行われることが重要であり、施工記録により証明できるようにするとよい。
13.1.3 施工一般
(a) 「標仕」では、降雨・降雷、強風等屋根に悪影響を及ぼす自然条件の場合は、施工を行わないとされている。安全面から考えても施工は取りやめるべきである。また、下地(野地板)の乾燥が不十分な場合にも施工を行わない。下地が十分に乾燥していないと、施工後の結露の発生のほか、下地の種類によっては、留付け用部品の下地との保持力の低下が懸念されるからである。
(b) 下葺材施工の際に下葺材を折り曲げることがあり、気温が著しく低い気候条件下では下葺材が破断するおそれがある。また、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)は粘着層の十分な接着性が得られない場合があるので、気温が著しく低下した場合には施工を行わない。

13章 屋根及びとい工事 2節 長尺金属板葺

13章 屋根及びとい工事
02節 長尺金属板葺
13.2.1 適用範囲
(a) この節は、折板葺を除く長尺金属板による横葺、瓦棒葺、立平葺、ー文字葺等の屋根葺形式を対象としている。
なお、瓦棒葺は心木なしの場合を対象としている。
(b) 作業の流れを図13.2.1に示す。
図13.2.1_長尺金属板葺の作業の流れ.jpeg
図13.2.1 長尺金属板葺の作業の流れ
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
屋根葺形式ごとの具体的な品質管理項目は、表13.2.5を参照されたい。
① 専門工事業者名及び施工管理組織
② 工程表(着工及び完了の時期)
下葺(材料及び工法)
鋼板類(種類、厚さ)
谷、棟、軒先、けらば等の納まり
⑥ 折曲げ及び小はぜ掛け
壁との取合い等の工法
⑧ 付属材料
⑨ その他専門業者の工法の仕様
風圧力及び積雪荷重に対応した工法、作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(d) 金属屋根工事の計画立案から施工管理まで担当する専門技術者の一例として、(-社)日本金属屋根協会では、昭和61年度より「金属屋根工事技士」の育成・教育を行っている。
13.2.2 材 料
(a) 平成25年版「標仕」では、屋根葺材に使用する長尺金属板の種類、塗膜の耐久性の種類、めっき付着量、厚さ等は、耐久性や耐風圧性を考慮して、設計者がすべて特記することとされた。
長尺金属板葺の場合は、一般的に、従来「標仕」で標準とされていた JIS G 3322(塗装溶融 55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)による CGLCCR-20-AZ150が使用されることが多い。
なお、長尺金属板の表示記号の意味を図13.2.2に示す。
図13.2.2_長尺金属板.jpeg
図13.2.2 長尺金属板の表示記号
(b) 屋根葺材の厚さ
上記のように、屋根葺材の厚さは構造計算等の結果を踏まえて特記されるが、めっき鋼板及び塗装鋼板では、耐久性を考慮して、最低寸法を0.4mmとする。ただし、ポリ塩化ビニル被覆金属板及び耐酸被覆鋼板においては、金属板原板の厚さが示される。
(c) 表13.2.1に金属屋根材料の概要、表13.2.2に金属屋根材料と屋根葺形式の関係を示す。
表13.2.1 金属屋根材料の概要(その1)
表13.2.1_金属屋根材料の概要(その1).jpeg
表13.2.1 金属屋根材料の概要(その2)
表13.2.1_金属屋根材料の概要(その2).jpeg
表13.2.2 金属屋根材料と屋根葺形式の関係
表13.2.2_金属屋根材料と屋根葺形式の関係.jpeg
(d) 金属屋根材料とその特徴等を次に示す。
(1) 長尺めっき鋼板
(i) 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3302)
① 材質、用途により16種類に分けられる。屋根用には種類の記号の末尾に Rが付けられている(例:SGCCR)。現在では無塗装のまま使用されることは少ない。
② めっきの種類は非合金化めっき(亜鉛めっき)と合金(亜鉛と鉄の合金層)に分けられ、めっきの最小付着量(g/m2)は両面の合計で 60~600g/m2である。屋根用には非合金化 Z25、Z27が使用されることが多い。耐食性は亜鉛の付着量に比例する。
③酸、アルカリ溶液及びガスに侵されやすいので、使用環境に注意する。
(ii) 塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3312)
① 溶融亜鉛めっき鋼板の表面をりん酸化成処理をし、熱硬化性合成樹脂塗料を両面又は片面(裏面はサービスコート)に焼付け塗装したもので一般にカラー亜鉛鉄板等と呼ばれている。
② 原板は溶融亜鉛めっき鋼板の冷延原板を使用しており、材質は8種類に分類される。屋根用は種類の記号の末尾にRが付けられている(例:CGCCR)。
③ 屋根用の裏面の色はベージュである。
④ 塗膜の耐久性は表13.2.3に示すように3種類に分類されているが、屋根には2類及び5類(2コート、2ベーク)以上を使用する。塗膜はアルカリに弱いため(特に1類及び4類)モルタルが付着した場合、水洗い等により取り除いておく必要がある。また、釘、鋼板の切り粉(切削屑)等の鋼が塗膜の酸化を促進させるおそれがあるので、屋根面に残さないようにする。
表13.2.3 塗膜の耐久性(JIS G 3312 : 2013)
表13.2.3_塗膜の耐久性(JISG3312_2013).jpeg
(iii) 溶融アルミニウムめっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3314)
① 鋼板に溶融したアルミニウムをめっきしたもので、耐高温性、熱反射性、耐酸性に優れている。
② 耐熱用と耐候用の2種類に大別され、屋根用には耐候用を使用することが多い。耐候用は純アルミニウム液を用いアルミニウム層、合金層はともに耐熱用に比べて厚い。
③ 表面が軟らかく傷つきやすいので、運搬時等での取扱いに注意する。加工時にめっき層に亀裂が入った場合は、犠牲防食作用が期待できないので早目に補修する。
犠牲防食(ぎせいぼうしょく):
亜鉛めっきが施された鉄であれば、万が一キズが発生し素地の鉄が露出してしまった場合でも、イオンになりやすい亜鉛が鉄よりも先に溶け出して電気化学的にキズ周辺を保護し、鉄の腐食は進行しなくなる。この作用を犠牲防食という。
(iv) 溶融亜鉛–5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3317)
① 機械的性質は溶融亜鉛めっき鋼板と同等であるが、めっき層に約5%のアルミニウムを含むため、亜鉛、アルミニウムの複合酸化物被膜を形成し、亜鉛の溶出速度を抑制するため、より高い耐食性を有する。
② めっき層の加工性は溶融亜鉛めっき鋼板に比べて優れている。無塗装のまま屋根に使用されることは少ない。屋根用は種類の記号の末尾にRが付けられている(例:SZACCR)。
(v) 塗装溶融亜鉛ー5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3318)
① 塗装溶融亜鉛めっき鋼板よりも原板の耐食性が優れ.加工性も優れている。
② 塗膜の耐久性は塗装溶融亜鉛めっき鋼板と同じである。屋根用は種類の記号の末尾にRが付けられている(例:CZACCR)。
③ 屋根用の裏面の色はベージュである。
(vi) 溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3321)
① 鋼板の表面に質量比でアルミニウム55%、亜鉛43.4%、シリコン 1.6%の合金めっきを施している。通称ガルバリウム鋼板と呼ばれ無塗装のまま使用することが多い。
② アルミニウムの特性(耐食性、加工性、耐酸性、耐熱性、熱反射性)と亜鉛の特性(犠牲防食作用)を兼ね備えている。アルカリには弱いので、コンクリート、モルタル等との接触は避ける。
③ 異種金属との接触により接触腐食を起こすことがあるので、留付け金具にはステンレス製あるいは亜鉛めっき等により絶縁処理されたものを使用する。シーリング材は、シリコーン系、変成シリコーン系等を用いる。シリコーン系は汚染が生じることがあるので、使用部位に注意する。
(ⅶ) 塗装溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3322)
① 原板に前記鋼板を用いているため、JIS G 3312、JIS G 3318に比べ耐食性に優れる。
② 鋼板の塗膜の耐久性は、JIS G 3312と同じである。屋根用は種類の記号の末尾にRが付けられる(例:CGLCCR)。
③ 屋根用の裏面の色はベージュとグリーンの2種類がある。
(ⅷ) ポリ塩化ビニル被覆金属板(JIS K 6744)
溶融亜鉛めっき頒板や電気亜鉛めっき鋼板にポリ塩化ビニル(塩ビ樹脂)を積層又は塗り付けたもので、一般に塩ビ鋼板と呼ばれている。塗膜は、塗装溶融亜鉛めっき鋼板と比較すると厚く、より高い耐久性を有する。「標仕」では屋根用として、用途による種類がA種(高耐食耐候性外装用)で下地鋼板がSG(溶融亜鉛めっき鋼板)を使用することにしている。
(ix) 耐酸被覆鋼板
① 溶融亜鉛めっき鋼板等を原板として、その両面に無機繊維と合成樹脂とを数層厚膜に被覆するか、合成樹脂のみを膜厚に被覆したものである。
② 耐酸性、耐アルカリ性、耐塩水性に優れ、熱・電気等に対する絶縁性がある。
③ 被覆が厚いため、加工時の曲げ角度は鈍角にするほか、切断面は補修塗装する。保護フィルムが付いている場合はそのまま加工し、積置きする際にも、塗膜同士の接着を防ぐため、保護フィルムを挿入する。
(2) ステンレス鋼板
ステンレス鋼板はJIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)、JIS G 3320(塗装ステンレス鋼板)があるが、一般にコイルが使用されている。
① ステンレス鋼板は鉄にクロム、ニッケル等を配合した合金であり、多くの鋼種があるが、建材製品に使われる代表的な種類については、14.1.5(c)(1)を参照のこと。このうち屋根用には一般的にSUS 304、SUS 316が用いられる。
なお、最近は塩害等に対する耐食性を高めた製品(SUS445等)も屋根用として使われている。
② 特 性
1) 耐食性に優れ、錆びにくい。これは合金中のクロムが酸化保護被膜(不働態被膜)を形成するためである。
2) 衝撃に強い。鋼、銅、アルミニウム等に比べて強度が大きく衝撃に強い。
3) 耐熱性に優れ、溶融温度が高く、高温下での強度が大きく、高温耐火性に優れている。
4) 熱伝導率が比較的小さく、熱膨張率もアルミニウムより小さい。
③ 使用上の注意
1) 材料の貯蔵時等で鉄板やアルミ等の異種金属と直接接触させない。接触部分に水分が入ると接触腐食を起こすことがある。
2) 表面に鉄粉等を放置するともらい錆が発生するので、よく清掃する。
3) ステンレス構板にけがき線を入れる場合は、けがき釘等は錆を誘発するので赤鉛筆や筆や専用用具を用いる。
4) 普通鋼に比べてスプリングバックが強いので、折曲げ等加工時に注意する。
(3) 留付け用部材等
小ねじ、ドリルねじ及びボルト類は亜鉛めっき又はステンレス製品とする。留付け用部材等の長さ、太さ、形状等は屋根葺工法、野地板の種類等に合わせたものとする。
平成22年版の「標仕」より木下地に関する規定が削除されたことから、屋根葺材等を木下地に留め付けるために使用する釘に関する記述を削除した。しかし、役物の取付け等の特殊な部位で釘を使用することもあるので、表13.2.4に使用例を示してある。
表13.2.4に留付け用部材の例を示す。
表13.2.4 留付け用部材の例
表13.2.4_留付け用部材の例.jpeg
(4) 下葺材料
(i) 「標仕」では、下葺材料は、JIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)によるアスファルトルーフィング940、又は平成25年版から採用された改質アスファルトルーフィング下葺材を使用することとされている。改質アスファルトルーフィング下葺材の品質は、「標仕」表13.2.2に適合するものとされている。下葺材の種類は特記によるものとされているが、「標仕」では、コンクリート下地のように釘又はステープルが打てない下地に下葺材を直接施工する場合は、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)を使用することとされている。
(ii) アスファルトルーフィング940の構成及び改質アスファルトルーフィング下葺材(一般タイプ、複層基材タイプ、粘着層付タイプ)の代表的な構成を図 13.2.3に示す。
① アスファルトルーフィング940の表面は、着色塗料を塗布したものと塗布しないものがある。
② 改質アスファルトルーフィング下葺材は、アスファルトに合成ゴムや合成樹脂を添加した改質アスファルトを使用したルーフィングで、アスファルトルーフィング940に比べて、ステープルや釘打ち部の水密性に優れており、また、低温性状や高温性状が改良されている。用途によって様々な材料構成があり、アスファルトルーフィング940と同様な基材に、改質アスファルトを被覆し、表裏面に鉱物質粉粒を付着させた一般タイプのほか、鉱物質粉粒の代わりに、表裏面に合成繊維、プラスチックフィルム、紙等を用いて、軽量化を図るとともに高温時の施工での表面のべたつきを改善した複層基材タイプ、裏面に粘着材層を配置し、下葺材施工時の仮止めにステープルや釘等が不要で、ステープルや釘打ち部の水密性が更に優れた粘着層付タイプがある。
図13.2.3_代表的な下葺き材料の構成(Asルーフィング940).jpeg
(イ)アスファルトルーフィング940
図13.2.3_代表的な下葺き材料の構成(一般改質Asルーフィング).jpeg
(ロ)改質アスファルトルーフィング下葺材(一般タイプ)
図13.2.3_代表的な下葺き材料の構成(複層基材タイプ).jpeg
(ハ)改質アスファルトルーフィング下葺材(複層基材タイプ)
図13.2.3_代表的な下葺き材料の構成(粘着層付改質Asルーフィング).jpeg
(ニ)改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)
  図13.2.3 代表的な下葺き材料の構成
(5) その他の材料
(i) 付属材料:面戸、唐草、けらば包み、棟包み等
(ii) 留め金具:ステープル、アンカーボルト等
13.2.3 工 法
(a) 屋根葺形式は、建物の意匠等にかかわるため、「標仕」では特記とされている。心木なし瓦棒葺、立平葺及び横葺の例を図13.2.4~6に示す。
なお、横葺については建設省の「建設技術評価制度」による「中層建築物における耐風型勾配屋根の開発」に基づき、評価書を受けている製品がある。
図13.2.4_心木なし瓦棒葺.jpeg
図13.2.4 心木なし瓦棒葺
図13.2.5_立平葺.jpeg
図13.2.5 立平葺
図13.2.6_横葺.jpg
図13.2.6 横葺
(b) 屋根葺工法は、構造耐力上の性能にかかわるため「標仕」では特記とされている。具体的には、葺板の寸法・厚さ、下地(野地板の種類、形状、強度)、留付け方法(吊子の種類・取付け方法、留付け用釘等の種類・強度)等である。
(c) 長尺金属板葺の耐風性能確保、施工方法等については、(独)建築研究所監修「鋼板製屋根構法標準」、(-社)日本金属屋根協会「金属屋根の施工と管理」、同「風と金属屋根 – 改訂版」、同「金属屋根の性能確認」が参考になる。表13.2.5に主な屋根葺形式の設計・施工上の要点を示す。
表13.2.5 屋根葺形式の設計・施工上の要点(風と金属屋根 – 改訂版より)
表13.2.5_屋根葺形式の設計・施工上の要点(風と金属屋根-改訂版より).jpeg
(d) 長尺金属板葺の工法
(1) 下葺材
(i) 防水を主な目的とする下葺材の施工は、水下側の下葺材が水上側の下葺材の上に重ならないように行う。軒先からこれに平行に張付けを開始し、隣接する下葺材を上下(流れ方向)は100mm以上、左右(長手方向)は200mm以上重ね合わせる。
下葺材の左右(長手方向)の継目は、図13.2.7に示すように、継目(◯印)相互が接近しないようにする。
図13.2.7_下葺材の施工例.jpeg
図13.2.7 下鋼材の施工例
(ii) アスファルトルーフィングの仮留めは、作業効率と安全性の面から必要に応じて行うものでむやみにステープルを打ち込むことは、下葺材を貫通する孔が増えるだけで防水機能面では好ましくない。仮留めを行う場合は、図13.2.7に示すように、下葺材の重ね部分で300mm程度の間隔、その他の部分は必要に応じて900mm以内の間隔とするのが通例である。
一方、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)の場合は、裏面のはく離紙等をはがしながら施工することで、粘着層による下地への仮止めができるため、ステープルを用いないで施工する(図13.2.8参照)。
図13.2.8_下葺材の施工例(粘着層による仮留め例).jpeg
図13.2.8 下葺材の施工例(粘着層による仮留め例)
(iii) 棟部はその形状から破断を起こしやすい部位であるため、図13.2.9に示すように棟の両側に250mm以上折掛けとしたのち.棟頂部から一枚もので左右 300mm以上の増張りを行う。増張りは下葺材と同材を用いる。
(iv) 谷部は水が集まる箇所であり、比較的漏水を起こしやすい部位であるため、図13.2.10に示すように左右300mm以上の下止材の一枚ものを先張りし.その上に下葺材を左右に重ね合わせ,谷底から250mm以上延ばす。
谷部に下葺を行うとき、下葺材が下地に密着するようにする。下葺材が下地から浮いた状態で張り付けられると破断しやすくなる。更に、谷底にはステープルによる仮止めは行わない。
図13.2.9_棟部の下葺材施工例.jpeg
図13.2.9 棟部の下葺材施工例
図13.2.10_谷部の下葺材施工例.jpeg
図13.2.10 谷部の下葺材施工例
(v) 壁面との取合いは、屋根面から下葺材を張り進め、壁に250mm以上、かつ、雨押え上端部より50mm以上立ち上げる。仮留めは屋根面と同様に下葺材の種類に応じてステープルや改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)の場合は粘着層にて行う。また、この部位は谷部同様下葺材が下地から浮いた状態で張り付けられると破断しやすくなるので下地に密着するよう張り付ける。
また、施工後躯体の動きによって当該部位の下葺材の破断も起きやすい。したがって建物の構造や気象条件によって柊113.2.11に示すように増張りを行う場合もある。
図13.2.11_壁面との取合い部の下葺材施工例.jpeg
図13.2.11 壁面との取合い部の下葺材施工例
(vi) 棟板(あおり板)、瓦棒・桟木等及びけらば部の水切り金物を取り付ける前に下葺を行う。これらを取り付けてしまうと、下葺材を留め付ける下地の不陸が大きくなり破断するおそれがある。
(vii) 両面粘着防水テープを使用する場合又は改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)を使用する場合は、しわ又はたるみが生じないように張り上げる。
(ⅷ) 軒先は、図13.2.12に示すように、下葺材を軒先水切り金物の上に重ね、両面粘着防水テープで密着させる。
なお、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付きタイプ)を用いる場合は、両面粘着防水テープを使用しなくてもよい。
図13.2.12_軒先部防水テープ施工例.jpeg
図13.2.12 軒先部防水テープ施工例
(ix) 鉄骨造の場合、屋根の軒及びけらばの槌当たり箇所は.図13.2.13に示すように下葺材をあらかじめ屋根下地材(垂木等)と壁の間に先張りする。先張りした下葺材に重ねる下葺材の重ね顛は,水下から水上へ張り上げる。
RC造等の場合で、当該部位に隙間がない場合は当該処置は必要ない。
図13.2.13_軒先壁当たり部施工例.jpeg
図13.2.13 軒先壁当たり部施工例
(x) 下葺材が破損した場合は.図13.2.14に示すように、破損した部分の上側部の下葺材の下端から新しい下葺材を差し込み補修する。ただし、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)の場合は、破損した部分の上に同材で増張り補修する。
図13.2.14_下葺材補修方法例.jpeg
図13.2.14 下葺材補修方法例
(2) 加 工
(i) 長尺金属板のロール成形機等による機械加工が多くなっているが、現場等での折曲げは十分曲げ半径を取り、切れ目を入れずに塗装、めっき、地肌に亀裂が生じないように行う。箱形の隅等は特に注意し、形に合わせて加工する。
ポリ塩化ビニル被覆金属板及び耐酸被覆鋼板を冬期に加工する時は、塗膜に亀裂が生じやすいので、材料を加温してから加工する。
(ii) 小はぜ掛け
① はぜ組みには、巻きはぜ(二重はぜ.ダブルはぜ)とこはぜ(一重はぜ、シングルはぜ)がある。巻きはぜはダクト等で用いられることが多く、屋根では銅板葺での屋根本体の板と板とのはぎ合せ、防水上特殊な部位に用いられる。図13.2.15に示す2種類がある。
図13.2.15_巻きはぜ.jpeg
図13.2.15 巻きはぜ
② 小はぜは主として屋根本体の板と板及び軒先、けらば部分のはぎ合せに使用される。小はぜは、図13.2.16のように加工し 3〜6mm程度の隙間をつくり、防水上の毛細管現象を防ぐ(図13.2.17参照)。ただし、隙間のない方が風による吹上げに強いので、隙間が大きくならないように注意する。
図13.2.16_小はぜ.jpeg
図13.2.16 小はぜ
図13.2.17_小はぜの折返し幅の例.jpeg
図13.2.17 小はぜの折返し幅の例
(3) 取付け
葺板の取付け方法は、屋根葺形式ごとに異なるため、ここでは心木なし瓦棒葺(通し吊子)の例を示す。
① 溝板を下葺材上の所定の位置に並べ、各溝板の間に通し吊子を入れる。
② 通し吊子は、母屋に留め付ける。
③ キャップは、構板になじみよくはめ込ませ、均一、十分に締め付ける。
(4) 棟、軒先、けらば、壁との取合い部及び谷の納まり
屋根の各部の納まりについて、心木なし瓦棒葺(通り吊子)の例を示す。
①棟(図13.2.18参照)
1) 棟納めは、溝板の水上端部に水返しを付け納めたのち、キャップ掛けを行う。
2) 棟包み固定金具をキャップに取り付けたのち、棟包みを棟包み固定金具に留め付ける。両端は、瓦棒の形状寸法に切りそろえて溝板底部まで折り下げる。
3) 継手は、棟板両端を各々折り返し、重ね継ぎとする。継手内には定形シーリング材をはさみ込み、間隔30mm以内に留め付ける。継手の位置は、瓦棒に可能な限り近い位置とする。
図13.2.18_棟の納まりの例.jpeg
図13.2.18 棟の納まりの例
② 斬先(図13.2.19参照)
唐草は、各通し吊子の底部にドリルねじ留めとし、唐草の継手は、通し吊子の位置で重ね継ぎとする。
図13.2.19_軒先の納まりの例.jpeg
図13.2.19 軒先の納まりの例
③ けらば(図13.2.20参照)
1) けらば納めは、溝板端部を唐草に十分つかみ込む。
2) けらば端部の長さは、働き幅の1/2以下とする。
図13.2.20_けらばの収まりの例.jpeg
図13.2.20 けらばの納まりの例
④水上壁との取合い部(図13.2.21参照)
1) 水上部分の雨押えの一方の端は棟納めに準じ、他方の端は 120mm程度立ち上げて胴縁に留め付ける。
2) 継手の施工は棟納めの継手に準ずる。
図13.2.21_水上壁取合い納まりの例.jpeg
図13.2.21 水上壁取合い納まりの例
⑤ 壁との取合い部(13.2.22参照)
雨押えの一方の端は溝板の底まで折り下げ、他方の端は120mm以上立ち上げて胴緑に留め付ける。
図13.2.22_壁取合い納まりの例.jpeg
図13.2.22 壁取合い納まりの例
⑥ 谷(図13.2.23参照)
谷板は稲妻谷とし、原則として、継手を設けない。葺板の溝板を谷板につかみ込んで納める。
図13.2.23_谷の納まりの例.jpeg
図13.2.23 谷の納まりの例

13章 屋根及びとい工事 3節 折板葺

13章 屋根及びとい工事
03節 折板葺
13.3.1 一般事項
(1) この節は、JIS A 6514(金属製折板屋根構成材)を使用する屋根を対象としている。
(2) 作業の流れを図13.3.1に示す。
図13.3.1_折板葺の作業の流れ.jpg
図13.3.1 折板葺の作業の流れ
(3) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
具体的な品質管理項目は、表13.3.1を参照されたい。
① 専門業者名及び施工管理組織
② 工程表(着工及び完了の時期)
折板(種類、厚さ、構成部品)
各部の納まり工法(棟、けらば、軒先、壁との取合いの各部)
タイトフレームの取付け方法
⑥ その他専門工事業者の工法の仕様
⑦ 付属材料
風圧力及び積雪荷重に対応した工法、作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(4) 金属屋根工事技士については、13.2.1(4)を参照する。
13.3.2 材 料
(1) 折板は、「標仕」13.3.2 (1)で、JIS A 6514に基づくものと定められており、形式、山高・山ピッチ、耐力及び材料による区分並びに厚さは特記される。JISでは所定の性能を確保するため、折板と主要な構成部品を一体にしているので、受人れの際に注意する。
(2) 折板葺用に用いる材料は、「標仕」13.3.2(2)及び(3)によって特記によるとされている。
(3) タイトフレームの材料は、JIS A 6514に基づき、原則として、JIS G 3302(溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)とされている。
(4) パッキンは、「標仕」13.3.2(4)で厚さ5mm以上のブチルゴム製又はクロロプレンゴム製、厚さ6mm以上のアスファルト製又はポリプロビレン樹脂含浸ポリエステル繊維フェルト製と定められている。ただし、耐火構造とする場合は、構造認定により、使用できるパッキンの材質に制限があるため注意する。
(5) 軒先面戸板の使用は、特記される。使用する場合は、折板と同じ種類の材料とする。面戸板には軒先面戸板のほかに止面戸(棟面戸)、エプロン、換気面戸、はぜ面戸等がある。
(6) 折板に裏張りする断熱材の種別等は特記される。断熱材には、ポリエチレンフォーム、難燃化ポリエチレンフォーム、無機質高充填フォームプラスチック、ガラス繊維シート、ロックウールフェルト、セラミックファイバーフェルト等があり、厚さは2.0~10.0mm程度のものが多い。
(7) 折板屋根は、折板のほかに結合用部品、補強用部品、その他の付属部品等によって構成されるが、折板は製作所によって各部に微妙な相異があるため、構成部品は折板の製造所が指定したものを使用する。ただし、ボルト・ナット、固定金具及びタイトフレームはJIS A 6514に規定されたものとする。
(8) JIS A 6514(金属製折板屋根梢成材)の抜粋を次に示す。
JIS A 6514: 1995
1. 適用範囲
この規格は、金属製折板屋根を構成する折板及び構成部品について規定する。
備考1.
折板は、金属板と裏打材で構成されたもの及び金属板だけのものとする。
2. 用語の定義
この規格で用いる主な用語の定義は.次のとおりとする。
(1) 折板
金属板をV字、U字又はこれに近い形に折り曲げて,屋根材として使用する部材。
(2) 構成部品
折板屋根を構成するための部品。
3. 各部の名称
各部の名称は、次による。
(1) 折板屋根
折板屋根の各部の名称は、図1、図2及び図3の例による。
JIS A 6514_図1_重ね形折板屋根の例.jpg
図1 重ね形折板屋根の例
JIS A 6514_図2_はぜ締め形折板屋根の例.jpg
図2 はぜ締め形折板屋根の例
JIS A 6514_図3_かん合形折板屋根の例.jpg
図3 かん(嵌)合形折板屋根の例
(2) 折板
折板の各部の名称は、図4、図5及び図6の例による。
JIS A 6514_図4_重ね形の例.jpg
図4 重ね形の例
JIS A 6514_図5_はぜ締め形の例.jpg
図5 はぜ締め形の例
JIS A 6514_図6_かん合形の例.jpg
図6 かん合形の例
(3) 構成部品
構成部品は、次のとおりとする。
(a) タイトフレーム
はりと折板との同定に使用し、ボルト付きタイトフレームとタイトフレームだけのもの及び端部用タイトフレームとする。
(b) ボルト及びナット
折板又は固定金具とタイトフレームとの固定に使用する。
(c) 固定金具
はぜ締め形又はかん合形折板とタイトフレームとの固定に使用する。
JIS A 6514_図7_構成部品の例.jpg
図7 構成部品の例
(4) タイトフレームの各部の名称
タイトフレームの各部の名称は、図8の例による。
JIS A 6514_図8_タイトフレームの例.jpeg
図8 タイトフレームの例
4.種類及び記号
折板の種類及び記号は形式、山高・山ピッチ、耐力及び材科によって次のとおり区分し、( )内に記号を示す。
(1) 形式による区分
形式による区分は、次のとおりとする。
(a) 重ね形(K)折板の重ねをボルトで結合する形。
(b) はぜ締め形(H)折板をはぜで結合する形。
(c) かん合形(G)折板をかん合で結合する形。
(2) 山高・山ピッチによる区分
山高・山ピッチによる区分は、表1のとおりとする。
表1 山高・山ビッチによる区分
JIS A 6514_表1_山高・山ピッチによる区分.jpg
(3) 耐力による区分
耐力による区分は、表2のとおりとする。
表2 耐力による区分
JIS A 6514_表2_耐力による区分.jpg
(4) 材料による区分
材科による区分は,次のとおりとする。
(a) 鋼板製(S)
(b) アルミニウム合金板製(A)
8. 材 料
8.1 折板に使用する材料
折板に使用する材料は、表9に規定するもの又は使用上これと同等以上の性能をもつものとする。
表9 材 料
JIS A 6514_表9_材料.jpg
8.2 構成部品に使用する材料及び表面処理
構成部品に使用する材科及び表面処理は.表10に規定するもの又は使用上これと同等以上の性能をもつものとする。
表10 材 料
JIS A 6514_表10_材料.jpg
8.3 裏打材
折板に裏打板を使用する場合は、受渡当事者間の協定による。
11. 製品の呼び方
製品の呼び方は、次の例による。ただし耐力、長さ及び厚さについては受渡当時者間の協定によって省略することができる。
JIS A 6514_11.製品の呼び方.jpg
12. 表 示
折板及び構成部品の包装には、次の事項を表示しなければならない。
 (1) 折板の包装表示
  (a) 種類の記号(製品の呼び方の例による。)
  (b) 製造業者名
  (c) 製造年月
 (2) 構成部品の包装表示
  (a) 名称
  (b) 寸法及び使用材料
  (c) 製造業者名
  (d) 製造年月
JIS A 6514: 1995
13.3.3 工 法
(1) 折板葺の耐風性能確保、施工方法等については、13.2.3(3)で示した図書が参考になる。表13.3.1に折板葺の設計・施工上の要点を示す。
表13.3.1 折板葺の設計・施工上の要点(風と金属屋根ー改訂版より)
表13.3.1_折板葺の設計・施工上の要点.jpeg
(2) 折板は、屋根の棟から軒先までを一枚の板で韮くことを前提に開発されたものなので、長さ方向には、原則として、継手を設けない。折板は長尺材であるため、道路交通法上の運搬制限や道路事情等により、工事現場での加工(現場成型)を行うことがある。この際、加工スペース等の制約から所定の長さの製品を加工できないことがある。このような場合にやむを得ず、流れ方向に継ぎ目を設けることが考えられるが、本来避けるべきことであり、計画段階から対応を考えておくべきである。
(3) タイトフレームの取付け
(ア) タイトフレームは、取付け位置の心に合わせ通り良く下地に接合する。台風時の折板屋根の被害には、タイトフレームの接合不備に起因するものが多いため、接合は入念に行わなければならない。
(イ) 「標仕」では、風による紐返し荷重による緩みを防ぐため、ボルト接合でなく、隅肉溶接と規定しているが、接合不備とならないよう溶接接合は入念に行う。
(ウ) 隅肉溶接に際しては、必要な溶接の隅肉サイズ、有効溶接長さ等の確認を行うとともに、ショートビードやアンダーカット等の溶接不良が発生することがあるため、溶接状態についても注意を払う。
なお、タイトフレームの有効溶接強度の確認方法については、(-社)日本金属屋根協会「風と金属屋根ー改訂版」が参考になる。
(エ) 溶接後は、スラグを除去し溶接部分及びその周辺に「標仕」表18.3.2[亜鉛めっき鋼板の錆止め塗料の種別]のA種の錆止め塗料を途る。
(4) 折板の取付け
(ア) 重ね形折板の施工
(a) 折板は、各山ごとにタイトフレームに同定し、折板の流れ方向の重ね部に使用する緊結ボルトの間隔は600mm程度とする。
(b) 折板の端部の端空き寸法は、50mm以上とする。
(イ) はぜ締め形折板の施工
はぜ締め形折板は、タイトフレームにボルト締めされた固定金具を介してはぜ締めする。固定金具の位置及び固定金具間は、手動はぜ締め機を用いて1mm間隔程度で部分締めする。
本締めは、専用の電動シーマー等で完全にはぜ締めする。
(ウ) かん合形折板の施工
かん合形には、片側を引掛けかん合する片かん合形と、キャップを上部よりはめ込みかん合する両かん合形とがある。
(5) 各部の納まり
(ア) けらばの納まり
(a) けらばの納めは、特記による。特記がなければ、けらば包みによる方法とされている(図13.3.2参照)。この方法は、けらば包み及び端部の折板を固定するための下地が必要である。間隔 1m程度とするこの下地は、鉄骨工事の段階で取り付けられる必要があるので、屋根葺作業に入る前に所定のものが取り付けられているか確認する。また、けらば包みの継手の位置には端部用のタイトフレーム等の下地を設ける必要がある。
なお、けらば包みを用いた場合は、変形防止材を用いないのが一般的である。
(b) 重ね形折板では、最端部の折板の上底で留める方法もある。この場合、最端部の折板には、図13.3.3に示す変形防止材を付けなければならない。
図13.3.2_けらば包みによるけらばの納まりの例(けらば断面).jpg
図13.3.2_けらば包みによるけらばの納まりの例(重ね部分).jpg
図13.3.2_けらば包みによるけらばの納まりの例.jpg
図13.3.2 けらば包みによるけらばの納まりの例
図13.3.3_変形防止材によるけらばの納まりの例.jpg
図13.3.3 変形防止材によるけらばの納まりの例
(イ) 棟の納まり
(a) 棟の納まりは、棟包みによる納まりを原則とする。
なお、図13.3.4に示す重ね形のほか、折板を棟位置で折り曲げる加工(ラジアル加工)もある。
(b) 棟包みは、折板の各山間にエプロンをなじみよく切り合わせ水漏れのないように留め付ける。
(c) はぜ締め形では、折板上部にはぜがあるため、ドリルねじ等による棟包みの固定が困難である。このため、棟取付け用のねじ受け金具等を用いる方法が一般的である。
図13.3.4_棟包みによる棟の納まりの例.jpg
図13.3.4 棟包みによる棟の納まりの例
(ウ) 軒先の納まり
折板の軒先は、先端部分下底に尾垂れを付ける。尾垂れはウェブと下底のりょう線部分を切らずに「つかみ」で曲げる(図13.3.5参照)。
図13.3.5_軒先の尾垂れ.jpg
図13.3.5 軒先の尾垂れ
(エ) 壁取合い部の納まり
雨押えは、150mm以上立ち上げる。水上部分の納まりの例を図13.3.6に示す。
図13.3.6_水上壁取合い部の納まりの例.jpg
図13.3.6 水上壁取合い部の納まりの例

13章 屋根及びとい工事 4節 粘土瓦葺

13章 屋根及びとい工事
04節 粘土瓦葺
13.4.1 一般事項
(1) この節は、粘土瓦を使用した屋根を対象としている。
なお、平成22年版「標仕」から、12章[木工事]の「小屋組」及び「屋根野地、軒回りその他」が削除されたため、13章においても適用される下地から木造下地 が削除されている。しかし、本書の12章では、「標仕」以外の工法として、平成 19年版「標仕」の「小屋組」及び「屋根野地、軒回りその他」の仕様及びその解説を残してあること、瓦葺は木造下地に施工される場合が多いことなどから、この節では木造下地関係の記述も参考に残した。
(2) 作業の流れを図13.4.1に示す。
図13.4.1_粘土瓦葺の作業の流れ.jpg
図13.4.1 粘土瓦葺の作業の流れ
(3) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表(着工及び完了の時期)
② 瓦の種類、製造所
③ 施工業者及び施工管理組織
④ 揚重及び小運搬計画
役物及び留付け用釘・緊結線・金物等の種類
風圧力及び地震力に対応した瓦等の留付け工法、管理の項目、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書及びその管理方法等
(4) 粘土瓦葺の施工水準の確保と施工の信頼性向上を図るため、(-社)全日本瓦工事業連盟では、「瓦屋根工事技士」資格制度を設けており、瓦屋根工事に関する知識及び技術の維持・向上、施工管理、安全管理等の能力を有する資格者を育成し、技術者の認定登録を行っている。
13.4.2 材 料
(1) 粘土瓦は、JIS A 5208(粘土がわら)により製造されたものとする。
(ア) 粘土瓦の種類、大きさ、産地等は設計図書に特記される。
(a) 粘土瓦の基本形となる桟瓦の形状及び寸法を、図13.4.2 及び 表13.4.1に示す。
図13.4.2_桟瓦の形状.jpg
図13.4.2 桟瓦の形状(JIS A 5208 : 1996)
表13.4.1 桟瓦の寸法(JIS A 5208 : 1996)
表13.4.1_桟瓦の寸法.jpg
(b) 粘土瓦は、日本の三大産地として、愛知県三河地方の三州瓦、島根県の石州瓦、兵庫県淡路島の淡路瓦があるが、日本各地(原料の粘土の産する所)で土質・焼成等の特質を生かした瓦が生産されている。
(イ) 役物瓦は、使用箇所ごとにその種類が設計図書に特記される。また、雪止め瓦を使用する場合についても特記されることになっている。
J形の役物瓦の種類及びその使用箇所を、図13.4.3に示す。
図13.4.3_屋根の各部.jpg
 図13.4.3_桟瓦と主な役物の名称.jpg
図13.4.3 屋根の各部及び桟瓦と主な役物の名称
(ウ) 「標仕」では、瓦の、JIS A 5208に基づく凍害試験等を行う楊合は、特記によるとしている。JISによる凍害試験は、凍結融解及び観察の操作を1回とし、その繰返し回数は「当事者間の協定による」とされているが、一般的には、繰返し回数は 5〜10回程度であり、寒冷の程度に応じて定めた繰返し試験成績書により確認する。
(2) 瓦桟木は、瓦の掛止め用等に使用するもので、その材質・寸法は設計図書に特記される。しかし、湿気による腐朽防止のため、「標仕」12.3.1による防腐処理を施した杉を標準としている。また、それらと同等の性能を有すると認められる人工木材、金属製品等も市販されている。
(3) 棟補強用心材は、冠瓦の取付け等に用いられるもので、その材質・寸法は設計図書に特記される。しかし、湿気による廊朽防止のため「標仕」12.3.1による防腐処理を施した杉が一般的に使われている。また、それらと同等の性能を有すると認められる人工木材、金属製品等も市販されている。
(4) 瓦緊結用釘又はねじ、緊結線、棟補強用金物等
(ア) 「標仕」では、瓦緊結用釘又はねじは、ステンレス製で、胴部の形状は振動等で容易に抜けないものとし、種類、径及び長さは特記によるとされている。
また、「標仕」13.4.3 (1)では、瓦緊結用釘又はねじの有効長さの最小値は、先端が野地板厚さの2分の1以上に達する長さ又は野地板の裏面(下地)まで貫通する長さとし、特記によるとされている。
図13.4.4_瓦緊結用釘又はねじの例.jpg
図13.4.4 瓦緊結用釘又はねじの例
(イ) 補強に使用する釘、ねじ及びパッキン付きねじは、ステンレス製とする。
なお、パッキン付きステンレスねじのパッキンは、耐亀裂性及び耐候性を有し、かつ、ねじを締めても頭部から飛び出さない材質及び形状のものとする。
図13.4.5_瓦補強用ねじの例.jpg
図13.4.5 瓦補強用ねじの例
(ウ) 緊結線は、合成樹脂等で被覆された径1.0mm以上の銅線又は径0.9mm以上のステンレス製とする。
(エ) 棟補強等に使用する金物等は、ステンレス製又は溶融亜鉛めっき処理を行った鋼製とし、材質、形状及び寸法、留付け方法は、特記による。
図13.4.6_山形金物、心材受け金物プレス一体型.jpg図13.4.6_山形金物+心材受け金物付きボルト一体型.jpg
図13.4.6_棒鋼受け型.jpg図13.4.6_心材受け型.jpg
図13.4.6 棟補強材取付け金物の例
図13.4.7_棟瓦の例.jpg
図13.4.7 棟瓦の例
(5) 下葺材は、一般的に二次防水として使用されるものであり、「標仕」では、標準としてJIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)に基づくアスファルトルーフィング940又は改質アスファルトルーフィング下葺材とし、種類は設計図書に特記される。
なお、緩勾配で漏水のおそれがある(J形瓦では、屋根勾配が4寸未満で流れ長さが10mを超える)場合は、防水性能の優れた「標仕」9.3.2 (1)に規定する改質アスファルトシートの使用について検討する必要がある。
(6) 葺土は、棟や壁際で冠瓦やのし瓦を安定させるために用いるもので、次による。
(ア) 「標仕」では、モルタル、山砂又は真砂土と消石灰をふのりの煮汁と適量の水で、丁寧に練り上げたものを使用するとしている。
(イ) 既調合のものを使用する場合は、信頼できる機関の試験成績書又は使用実績等により品質を確認する。
13.4.3 工 法
(1) 屋根葺材、外装材等は、建築基準法施行令第39条において「風圧並びに地震その他の震動及び衝撃によって脱落しないようにしなければならない。」と規定されている。
なお、風圧力の計算方法や風圧等に応じた取付け工法等については、(-社)全日本瓦工事業連盟等で2021年改訂版「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」等を作成しているので参考にするとよい。
(2) 下葺の工法
(ア) 下葺材を野地板等の下地に留め付ける場合、通常、タッカーを使用してステープルで留め付けるが、しわ、破れ、浮き等の損傷が生じないよう注意する。特に重ね部分については漏水が生じるおそれがあるため、施工に当たってはステープル等を必要以上に深く打ち込まないようにするなど十分な注意が必要である。
ステープルを使用しない工法には、接着工法、釘にシール用パッキンを組み合わせた工法等がある。
(イ) 棟、谷部分は、平部分に比べ変形による動きが大きく、損傷しやすいため防水性の高い下葺材(13.4.2 (5)参照)の使用についても検討することが望ましい。
(3) 瓦桟木の取付け
(ア) 瓦の取付け工法によって桟木の取付け位置が異なるため施工計画書に記載する。桟木の取付け位置は、軒瓦の出寸法及び登り寸法並びに桟瓦の働き寸法を割り付け、これに基づいて墨打ちを行う。
切妻の瓦割付けの例を図13.4.8に示す。
図13.4.8_切妻瓦割付けの例.jpg
図13.4.8 切妻瓦割付けの例
(イ) 木材以外の下地として一般的によく行われているのは、コンクリートにパーライトモルタルを塗った下地で、下地面の仕上り精度が高く、桟木の留付けはモルタルが固まらないうちであれば、木下地用の釘が使用可能である。その施工例を図13.4.9に示す。
図13.4.9_パーライトモルタル下地の施工例.jpg
図13.4.9 パーライトモルタル下地の施工例
(4) 平部の工法は、「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」では、次のような方法が示されている。
(ア) 全ての桟瓦は、1本以上の釘で瓦桟木に留め付ける。
(イ) 全ての軒瓦は、上端重ね部(尻部)の2か所を釘又は緊結線で留め付け、さらに、桟山をパッキン付きステンレス鋼製ねじ若しくは緊結線で補強するか又は重ね部の端をステンレス鋼製7形釘で補強する。
(ウ) 袖瓦は、瓦の形状に応じて以下の方法で緊結する。
(a) J形瓦は、尻部の2か所を釘又は緊結線で留め付け、さらに、桟山や袖部の垂れ際をパッキン付きステンレス銅製ねじ又は緊結線で補弛する。
(b) S形瓦は、垂れ部の2か所をパッキン付きステンレス鋼製ねじで緊結し、さらに、山部(尻部)にステンレス鋼製釘等で緊結する。
(c) F形瓦で、桟瓦に垂れが付いた一体型袖については、尻部に釘1本以上と露出部の軒際をパッキン付きステンレス鋼製ねじ1本で補強する。後付け袖については、平部1か所と側面2か所をパッキン付きステンレス鋼製ねじ1本で緊結する。
(5) 棟の工法は種々の工法があるため、「標仕」では特記によるとしている。
「標仕」では、標準的な棟の工法として、7寸丸伏せ棟、F形瓦用冠瓦伏せ棟(三角冠伏棟)及びのし積み棟の三つの工法の仕様が規定されている。平成31年版「標仕」から、のし一体棟工法は、近年の生産量の減少から、削除された。
その三つの工法の例を図13.4.10に示す。
図13.4.10_標準的な棟の工法の例.jpg
図13.4.10 標準的な棟の工法の例

13章 屋根及びとい工事 5節 とい

13章 屋根及びとい工事
5節 と い
13.5.1 一般事項
(1) この節は、雨水排水用の各種雨どい(とい)を対象としている。
(2) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
とい(軒どい、たてどい)の材種と大きさ
とい(軒どい、たてどい)の継手の工法
とい(軒どい、たてどい)の受金物の形式と取付け工法並びに建物の納まり
④ とい(軒どい、たてどい)の排水勾配
⑤ 軒どいの製造業者による軒どいの取付け方法(硬質塩化ビニル雨どい)
ルーフドレンの位置、高さ、取付け工法
⑦ ルーフドレンの形式(防水種別及び使用箇所等による形式)
たてどいの防露の工法(床貫通部分を含む)
⑨ たてどい掃除口の有無
施工の確認方法
13.5.2 材 料
(1) 「標仕」では、表13.5.1で、といその他に適用する材種等を示している。次にその特徴を示す。
(ア) 配管用鋼管
JIS G 3452(配管用炭素鋼鋼管)は、圧力の比較的低い蒸気、水(上水道を除く。)、油、ガス、空気等の配管に用いるもので、黒管と白管(亜鉛めっき)があり、「標仕」では白管を用いることとしている。試験水圧は2.5MPaである。種類の記号 はSGPである。
(イ) 排水管継手
JPF DF 001(排水用ねじ込み式鋳鉄製鋼管継手)は、SGPを用いた排水配管に使用するねじ込み継手19種類、呼び11/4~6について規定したもので、鋳鉄製又は可鍛鋳鉄製である。90゜エルボ、Y等には流れ勾配が付いている。鋳放し品、溶融亜鉛めっき品及び内面樹脂コーティング品があるが、「標仕」では溶融亜鉛めっき品を用いることとしている。
(ウ) 硬質ポリ塩化ビニル管
JIS K 6741(硬質ポリ塩化ビニル管)は、一般流体輸送用の管で、呼び径と厚さの組合せによって、VP、VM及びVUの3種類がある。水圧試験値はVPが 2.5MPa、VMが2.0MPa、VUが1.5MPaである。呼び径はVPが13~300、VMが350~500、VUが40~600であり、同じ径でも肉厚が異なり、VPは、VUの 2倍程度の肉厚となっている。管の色は灰色で、定尺は4m、種類の記号はVP、 VM、VUである。
「標仕」表13.5.1では、使用圧力の大きいVPを使用することになっている。また、屋内に硬質塩化ビニル管を使用しない理由は、建築基準法施行令第129条の2の4第1項第七号に該当する防火区画等を貫通する排水管は、その貫通する部分及び前後 1mを不燃材料でつくらなければならないためである。
(エ) 硬質ポリ塩化ビニル管継手
JIS K 6739(排水用硬質ポリ塩化ビニル管継手)は、硬質ポリ塩化ピニル管の VP管を使用する排水配管の冷間差込み接合に用いる継手で、エルボ、Y、両Y、ソケット等14種類がある。
(オ) ルーフドレン
(a) ルーフドレンは、日本鋳鉄ふた・排水器具工業会規格の「JCW 301-2018(ルーフドレン)」(ろく屋根用Ⅰ型)を使用し、ルーフドレンの張掛け幅を 100mm以上とする。これは、アスファルト防水や改質アスファルトシート防水における防水層の重ね幅(100mm以上)と同程度の張掛け幅とすることで、ルーフドレンに防水層を確実に張り掛けるためである。この張掛け幅の規定は、アスファルト防水及び改質アスファルトシート防水だけでなく、合成高分子系ルーフィングシート防水にも適用するとしている。
なお、張掛け幅以外の内容も、JCW 301-2018に準拠している。
図13.5.1_ルーフィング類の引掛け幅(たて形).jpg
図13.5.1 ルーフィング類の張掛け幅(つばの幅)100mmのたて形ルーフドレンの例
図13.5.2_ルーフィング類の引掛け幅(横形).jpg
図13.5.2 ルーフィング類の張掛け輻(つばの幅)100mmの横形ルーフドレンの例
(b) ルーフドレンについては、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料 設備機材等品質評価事業」(1.4.4 (5)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。
(c) ルーフドレンは防水種別に応じたものとする。「アスファルト防水 シート防水用」と「モルタル防水・塗膜防水用」を用意している製造所が多い。
(d) 近年のゲリラ豪雨対策として、排水量を増やせるサイホン式の排水システムの採用が見うけられる。サイホン式の排水システムは、従来の空気と水が混在した重力方式の雨水排水システムに対し、とい管内を満流状態にすることにより、細い管で高速に排水するシステムである。特殊なルーフドレンとシステム設計が必要であるが、JIS等で規格化されていないため、詳細については製造所に確認するとよい。採用に当たり主な留意事項は以下のとおりである。
① ドレン径、配管径、合流などのシステム設計については、製造所の仕様による。
② サイホン作用を利用するため、中継ドレンを設けない。
③ 取り付け高さの異なるドレン、通常の重力方式のドレンを同一系統に接続しない。
④ 満流、非満流の繰り返し脈動となるため配管の支持方法、ピッチ等を個別に検討する。
⑤ ルーフドレン近くでは、満流、非満流の切り替わり時の音が懸念されるため、静粛性が求められる室の近傍では、ドレン直下の竪樋・ドレン下部に遮音シート巻きを検討する。
⑥ 流速が早く、流量も多いので、外構の桝接続部分では雨水が溢れないよう、桝のサイズ等を調整する。
(カ) 硬質塩化ビニル雨どい
硬質塩化ビニル樹脂を成型して作られた雨どいで、JIS A 5706(硬質塩化ビニル雨どい)に適合するものとする。ただし、JISによるものは、主に住宅に用いられる丸型のものである。非住宅用の形式の例を図13.5.3に示す。
図13.5.3_非住宅向け硬質塩化ビニル雨どいの例.jpg
図13.5.3 非住宅向け硬質塩化ビニル雨どいの例
(キ) 表面処理鋼板
といに使用する塗装鋼板及び被覆金属板は、鋼板の両面に塗装又は樹脂被覆が施されたもので、「標仕」では、JIS G 3312、JIS G 3318、JIS G 3322及びJIS K 6744の4種類のものが規定されている。
(ク) ステンレス鋼板
「標仕」では、といに使用するステンレス鋼板は、JIS G 3320(塗装ステンレス鋼板)又はJIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)としている。
(ケ) アルミニウム製雨どい
アルミニウム製雨どいは、「標仕」では規定されていないが、美観性の良さや優れた耐久性等を理由に、実績が増えている。アルミニウム製雨どいは、JIS H 4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)による押出形材でできており、外表面は陽極酸化塗装複合皮膜処理がされている。内面は表面処理を行わなくても20年以上の大気暴録で孔食深さが 0.3mm以下であり、十分な耐食性がある。また、エポキシ樹脂塗装等でさらに防食性を高めているものもある。高強度支持金物を用いることで、とい受金物の支持間隔を通常より大きくすることが可能な製品もある。
(2) とい受金物
とい受金物は、軒どいやたてどいの形状に合わせて数多くの種類が作られている。
「標仕」表13.5.2は、といの材種、といの種類及びとい径によるとい受金物寸法、取付け間隔を示している。
軒どい、たてどいの受金物は、といに加わる荷重や衝撃に十分耐えうる形状、寸法のものとし、とい材料の耐候性、耐食性に見合った材質又は防錆処理としたものとする。具体的には、JIS H 8641(溶融亜鉛めっき)のHDZT49以上が望ましく、近年ではステンレス製やJIS G 3323(溶磁亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板及び鋼帯)等を用いる場合もある。
なお、「標仕」では、とい受金物及び足金物の材種、形状及び取付間隔は、特記によるとされており、特記がなければ、表13.5.2により、溶融亜鉛めっきしたものとされている。ステンレス製のものも製造されている。
(3) 防露材
(ア) 「標仕」では、一般部分の保温筒はJIS A 9511(発泡プラスチック保温材)のEPS-C-3(ビーズ法ポリスチレンフォーム保温筒の3号)を使用し、とい径に応じて厚さ20mm又は40mmのものを粘着テープで巻くこととしている。 EPS-C-3は、ホルムアルデヒドを放散しない材料である。
また、防火区画等の貫通部分では、JIS A 9504(人造鉱物繊維保温材)のロックウール保温筒を使用し、とい径に応じて厚さ20mm、25mm又は40mmのものを亜鉛めっき鉄線で巻くこととしている。ロックウール保温筒のJISにおけるホルムアルデヒド放散による区分には、F☆☆☆☆、F☆☆☆及びF☆☆がある。「標仕」では、特記がなければ、F☆☆☆☆と定めているので注意する。
なお、一般部分においても、保温筒の使用箇所が 70℃以上となる場合は、ロックウール保温筒を使用する。
(イ) 粘着テープは、JIS Z 1525(包装用ポリ塩化ビニル粘着テープ)による1種で、厚さ0.2mmのものを使用するとよい。
粘着テープは、支持体によって分類される。種類、記号及び厚さを表13.5.1に示す。
表13.5.1 粘着テープの種類、記号及び厚さ
表13.5.1_粘着テープの種類、記号及び厚さ.jpg
(ウ) 合成樹脂製カバーは、合成樹脂を使用した難燃性の樹脂製カバーとし、JIS A 1322(建築用薄物材料の難燃性試験方法)に規定する防炎2級に合格したものとし、板厚 は0.3mm以上とする。
(エ) アスファルトルーフィングは、製品の単位面積質量の呼びが 940以上のものがよい。
(オ) ビニルテープは、JIS Z 1901(防食用ポリ塩化ビニル粘着テープ)に準ずる金属の防食性があるもので、厚さ0.2mmの不粘着性で半つやのものがよい。
13.5.3 工 法
(1) 鋼管製といの工法
(ア) 継手は、原則として、排水管継手とする。径が大きいものでも、なるべく溶接継手は避けるようにする。径が80mm以下のものは細いため、溶接により溶着金属が管内にはみ出し、ごみ等が付着し、管が詰まる可能性があるため、溶接継手は不適当である。
排水管継手を使用すると、継手部分が膨らんで意匠上好ましくない場合は、「標仕」13.5.3(1)(ア)で、径が80mmを超える管についてだけ溶接継手を認めることとしている。この場合、溶接工法が適切であるかどうかを確認する。
(イ) 管の接続後のねじ切り部、溶接部には、亜鉛めっき面の錆止め塗料として、「標仕」表18.3.2の変性工ポキシ樹脂プライマーを塗り付ける。
(ウ) 建築基準法施行令第129条の2の4第1項第七号に該当する防火区画等を貫通する排水管は、その貫通する部分及び前後 1mを不燃材料でつくらなければならない。また、同施行令第112条第20項で、貫通する部分の隙間をモルタル等の不燃材料で埋めなければならないと規定している。
(エ) 「標仕」では、といの下がり止めは、厚さ6mm程度の金物2個を、上下端のとい受金物及び中間1本おきのとい受金物ごとに、また、屋内で各階にスラブがある場合はスラブごとに取り付けるよう規定しているので注意する。
(オ) とい受金物をコンクリートに取り付ける場合は、図13.5.4のように行う。
図13.5.4_とい受金物をコンクリートに取り付ける場合(屋内埋め込み).jpg
図13.5.4_とい受金物をコンクリートに取り付ける場合(屋内スラブ受金物固定).jpg
図13.5.4_とい受金物をコンクリートに取り付ける場合(中継のある場合).jpg
図13.5.4 とい受金物をコンクリートに取り付ける場合
(2) 鋼管製といの防露巻工法
「標仕」表13.5.4の防露巻きについて図解すると、図13.5.5のようになる。
図13.5.5_鋼管製といの防露巻き.jpg
図13.5.5 鋼管製といの防露巻き
(3) とい受金物の工法
(ア) とい受金物の形式を、図13.5.6及び図13.5.7に示す。
図13.5.6_たてどい受金物の例(木造用).jpg
図13.5.6_たてどい受金物の例(コンクリート用).jpg
図13.5.6_たてどい受金物の例(コンクリート用あと施工).jpg
図13.5.6_たてどい受金物の例(鉄骨造用).jpg
図13.5.6 たてどい受金物の例
図13.5.7_軒どい受金物の例(木造、鉄骨併用).jpg
図13.5.7_軒どい受金物の例(木造用).jpg
図13.5.7_軒どい受金物の例(やむを得ずスレートに直接取り付ける場合).jpg
図13.5.7 軒どい受金物の例
(4) 硬質ポリ塩化ビニル管製といの工法
(ア) 継手は、原則として、JIS K 6739(排水用硬質ポリ塩化ピニル管継手)とする。管と継手は、ビニル系接着剤等を用いて行う冷間接合とする。接合部には、接着剤をつけ過ぎないようにする。
(イ) 継いだといの長さが10m以上になる場合は、製造所の指定するエキスパンション継手等で伸縮を吸収する。
(ウ) 配管用鋼管との接続は、鋼管用アダプターやTSバルブ用ソケット等を利用して行う。
(エ) といの下がり止めは、「標仕」では、といの製造所の仕様により固定するとしている。製造所の仕様には、といと同じ材質の部材(例えば、たてどいを輪切りにしたものや、それを細かなピースに切断したものなど)をたてどい受金物の上部のたてどい本体に接着剤を用いて固定する方法等がある。
(5) 硬質塩化ビニル雨どいの工法
硬質塩化ピニル雨どいの取付け方法は製造所の仕様によるが、次の事項に留意する。
(a) 軒どい
① といの継手、水止め及び曲がり等は、専用の部品を接着剤で取り付ける。
② 受金物は、所定の流れ勾配をとる。
③ 受金物とといは、1.2mm程度の金属線又は別の方法(金物の金属つめ等)で取り付ける。
④ とい1本の長さは10m以内とし、伸縮は集水器部分で吸収するようにするか、製造所の指定する長さ、方法で吸収する。
(b) たてどい
① 継手は専用の部品を用い、接着剤を用いて継ぐ。
② 継いだといの長さが10m以上になる場合は、製造所の指定するエキスパンション継手等で伸縮を吸収する。
(6) 鋼板製雨どいの工法
鋼板製雨どいの取付け工法は、次の事項に留意する。
(a) 軒どい
① といの両端部分は、丸型は耳巻き、角型は折曲げ又は耳巻きとする。
② 継手を設けないことが原則であるが、やむを得ない場合は、重ね代40mm程度とし、相互に力心を差し込みはんだ付けするか又は製造所の指定する方法による。大型のといの場合はリベット留めとする。
リベットをブラインドリベットとする場合は、シールドタイプとする。
なお、継手は漏水の原因となるので止水の処理を確実に行う。
③ 塗装及び被覆鋼板をはんだ付けする場合は、塗膜等のはく離と、そのあと処理に注意する。
④ といは、所定の流れ勾配をとり、伸縮は集水器、あんこう部分で吸収する。
(b) たてどい
① 継手は小はぜ掛けとし、はぜの緩止めを行う。
② 長さ方向の継手は、上にくるたてどいを下のといに直径寸法程度又は60mm程度差し込んで継ぐ。
(c) 谷どい
① 谷どいは、大量の雨水を処理すると同時に、じんあい、土砂等もここに流れ込んでくる。したがって、雨水やじんあい等の的確な処理のために必要な大きさ、勾配及び形状が大切な点となる。さらに谷どいは、ややもすると雨水とじんあい、土砂が一緒にたまりやすく、そのため屋根以上に腐食が早い。また、谷どいと屋根の接合部分からの漏水は、即室内への雨漏りとなるので、この部分の納め方が非常に難しくなる。納め方は屋根工法によって変わる。さらに、寒冷地域や積雪地域で一般地域と同じ方法で谷どいを納めると、氷や雪のため息わぬ漏水事故を引き起こす結果になるため注意する。
② 谷どいは、落ち口と落ち口の間又は落ち口とエキスパンションの間を1枚の板で所定の形状寸法に加工する。
③ 継手を設けないことが原則であるが、やむを得ない場合は、水上に設け、50mm以上重ね合わせ、リベット、薄板用小ねじ等で2列に千烏に留め付ける。
リベットをブラインドリベットとする場合は、シールドタイプとする。
なお、継手は漏水の原因となるので止水の処理を確実に行う(図13.5.8参照)。
④ 継手部分は、重ね合せ部にシーリング材を入れて留め付ける。
⑤ 受金物は、谷どいの底幅に合わせて、表13.5.2により間隔500mm以下で取り付け、勾配は1/200以上とする。
図13.5.8_谷どいの継手.jpg
図13.5.8 谷どいの継手
表13.5.2 谷どいと受金物
表13.5.2_谷どいと受金物.jpg
⑥ 谷どいの長さが15m以上になる場合は、エスキパンション継手を設ける。谷どいの水上端部に水止め板をリベット、簿板用小ねじ等で取り付け、両端部間は20mm程度開け、エキスパンション継手のキャップは水止め板につかみ込み取り付ける。水止め板は谷どいと同材とする。
リベットをブラインドリベットとする場合は、シールドタイプとする。
なお、やむを得ず異種金属の組合せとなる場合は、両者間に硬質プラスチックフィルム(厚さ0.5mm以上)を挟み込み、電気的に絶緑させる。
⑦ 概して、寒冷地域や積雪地域で谷どいを設けることは少なく、とりわけ北悔道では皆無に近い。その理由として、各部が氷結したり、雪のため、谷どいが埋もれて、とい本来の機能が発揮されないことが多いためである。したがって、上記の地域で谷どいを施工する場合は、融雪ヒーターを取り付けるなどの対策が必須である。
(7) ルーフドレンの工法
(ア) 「標仕」13.5.3(5)では、ルーフドレンの取付けは、原則としてコンクリート打込みとしているので注意する。ルーフドレンが傾いてしまうと排水管の接続が困難となるため、ルーフドレンが水平となるよう確実に固定する。取付けに際しては、ドレンのつばの天端レベルを周辺コンクリート天端より30~50mm程度下げ、コンクリート打込み時の天端均しでは、半径600mm前後をドレンに向かって斜めにすりつける。
なお、「標仕」では、構造スラブ厚が確保できない場合等、必要に応じて図13.5.9のようにコンクリートで増打ちを行うこととしている。
図13.5.9_たて形ルーフドレンのコンクリート増打ち.jpg
図13.5.9 たて形ルーフドレンのコンクリート増打ち
(イ) 防水施工及び押えコンクリート打込みに際しては、ルーフドレン内にアスファルトやセメントペーストが流入、付着しないよう養生等を行う。
(ウ) 横形ルーフドレンを設置する場合、その直下には梁がある場合が多いので、適切な勾配を取るために、 ドレンをスラブ天端から 30~50mm程度下げて固定するためには、梁天端を下げる必要がある。また、鉄骨鉄筋コンクリート梁では、鉄骨梁も下げることになり、十分な調整が必要となる場合が多い。さらに、場合によっては、階高を上げなければならないこともあるため、注意が必要である(図13.5.10参照)。
図13.5.10_横形ルーフドレンによる梁天端下がり.jpg
図13.5.10 横形ルーフドレンによる梁天端下がり
(エ) 縦形ルーフドレンを、パラペットの立上り部分に接近して取り付けると、ストレッチルーフィングやシート類の切張り補強、シート類の重ね張り作業が不確実となり、不具合を起こす原因になる。したがって、これらの施工が確実にできるように、立上り部からある程度離す必要がある(表13.5.3参照)。
表13.5.3 ルーフドレンの下地の形状・寸法
表13.5.3_ルーフドレンの下地の形状・寸法.jpg
(8) 清掃、その他
ルーフドレン及びといの取付け完了後、清掃を行う。
なお、取付け完了後の通水の確認は、通常の建物では降雨時又はドレンからの水の流し込みにより、管の接続部、横引き部等を目視で漏水のないこととする。
参考文献
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14章 金属工事 1節 一般事項

14章 金属工事
01節 一般事項

14.1.1 適用範囲
(a) 金属工事で取り扱う材料・工法は、非常に広範なものであり、一般的な基準は定めにくい。したがって、この章では表面処理、溶接、ろう付けその他について、一般的な標準となる事項を挙げている。
(b) 「標仕」14章では、主として工場で製品化されたものを現場で取り付けることを想定しているので、「標仕」の2節及び3節は、工場製作に対する規定と考えてよい。
(c) 工場地帯、海岸等の金属の腐食の激しい場所にタラップ、丸環等を設ける場合は、人身事故を防ぐために耐食性及び強度の優れたステンレス等を用いることが望ましい。また、丸環については、誤用を避けるため、耐力限度等の使用上の注意事項を明示するとよい。
14.1.2 基本要求品質
(a) 金属工事に使用する材料としては、一般に素材としてのJISが定められているものから、軽量鉄骨下地材のように製品としてのJISが定められているものまで多種多様である。このうち製品としてのJISが定められたものは、一般的な材料と同様に扱えばよい。素材としてのJISが定められた材料を加工して使用する場合にあっては、素材製造工場から製品加工工程を経て.工事現場に搬入されるまでの流れを管理することによって、所定の品質であることを証明できるようにするとよい。
金属工事の表面処理では、素材の規格でなく加工技術の規格としてアルミニウムの表面処理や鋼材の亜鉛めっき等のJISが定められている。これらの指定がされた材料にあっては、表面処理を行った材料が所定の品質であることが要求される。具体的には、表面処理後の材料に対して試験を行い確認することが考えられるが、表面処理工場の実績等を勘案して工場の品質管理記録によって、個々の試験に代えることも考えられる。
なお、表面処理のJISのうち、アルミニウムの陽極酸化皮膜、陽極酸化塗膜複合皮膜及び溶融亜鉛めっきにあっては、「加工技術」に指定されているため、JISの認証加工業者の工場で加工された材料にあっては、改めて材料試験を行う必要はない。
(b) 金属工事の製品は、一般に工場において加工され現場で取り付けられるため、現場で造込みがされる建築工事種目と比べて寸法精度は良いが、設計図書に基づき加工形状や加工寸法を定めるに当たっては、地震時の挙動や日射による熱伸縮の影響等に注意し、下地やその他の材料との取合いを含め、全体の仕上りのバランスを考慮して適切に行わなければならない。
また、金属工事のうち手すりやタラップ等は、使用安全性に直接影響を及ぼすため、堅固に取り付けられている必要がある。製品の取付けに当たっては、事前の取付け方法の検討だけでなく、施工途中の取付け状態の確認等により、完成後の使用安全性を確保できるようにする。
(c) 製品仕上り状態としては、有害な傷や見え掛り部の使用上問題となる傷、汚れ、ねじれ、反り、へこみ等について、あらかじめ限度を定めておき、この限度内に収まっていることと考えればよい。
14.1.3 工 法
(a) 受材の取付け
製品や部材を下地のコンクリート等に金属系アンカーボルト等を用いて留め付ける工法には、「先付け工法」(躯体の施工時にあらかじめアンカーボルト等を設置してコンクリートを打ち込む方法)と「あと施工アンカー工法」(硬化後のコンクリートを穿孔して、この孔にアンカーボルトを固着させる方法)とがある。
(i) 先付け工法
①「標仕」14.1.3(a)では、製品等の受材は、原則として、構造体に損傷を与えるおそれの少ない先付け工法で取り付けることとし、やむを得ない場合にあと施工アンカー工法の類とするとしている。
② 先付け工法に使用するアンカーボルト等には、頭付きアンカーボルト、鉄筋アンカーボルト、基礎ボルト、インサート類等がある。
③ コンクリート打込みに際しては、あらかじめアンカーの位置や方向等の精度を確保するように注意する。
(ii) あと施工アンカー工法
① あと施工アンカーは、次の金属系アンカーと接着系アンカーとに大別される。
1) 金属系アンカー
躯体コンクリート面にドリル等で所定の孔をあけて金属拡張アンカーを挿入し、打撃又は回転締付けにより下部を機械的に拡張させてコンクリートに固着させる方式であり、「おねじ形」(本体とボルトが一体のもの)と「めねじ形」(本体とボルトが分離しているもの)があり、種類により工法及び耐力特性が著しく異なるので注意が必要である。
その形状の例を図14.1.1に、施工の例を図14.1.2に示す。
図14.1.1_金属系アンカーの形状の例(おねじ形-本体打込み式).jpeg図14.1.1_金属系アンカーの形状の例(おねじ形-ウェッジ式).jpeg図14.1.1_金属系アンカーの形状の例(めねじ形-本体打込み式).jpeg図14.1.1_金属系アンカーの形状の例(めねじ形内部コーン打込み式).jpeg
図14.1.1 金属系アンカーの形状の例
図14.1.2_金属系アンカーの施工の例(本体打ち込み式).jpeg
図14.1.2_金属系アンカーの施工の例(ウェッジ式).jpeg
図14.1.2 金属系アンカーの施工の例
2) 接着系アンカー
躯体コンクリート面にドリル等で所定の孔をあけ、その内に接着剤を注入してアンカーボルトを埋め込む方法(注入型)と、孔内に樹脂及び硬化促進剤・骨材等を充填したガラス管のカプセルを挿入し、アンカーボルトをその上からハンマードリル等の回転打撃によって打ち込むことにより、接着剤の主成分(主剤)、硬化剤、骨材、粉砕されたガラス管等が混合されて硬化し、接着力によって固定される方法(カプセル型)がある。
接着系アンカーの留意事項等は、次のようなものである。
・接着材料には、ポリエステル系、エポキシアクリレート系(ビニルエステル系とも呼ぶ。)、ビニルウレタン系.エポキシ系樹脂等の有機系とセメント類の無機系とがある。
・金属拡張アンカーに比べ、一般に埋込み深さが確保されているので、引張耐力が大きい。
・耐熱性、耐火性又は耐薬品性が要求される部位に使用する場合には十分注意する。
・ 耐力の経年変化の有無については、製造所等のデータ等により十分検討する。
接着系アンカーの形状の例を図14.1.3に、その施工の例を図14.1.4に示す。
図14.1.3_接着系アンカーの形状の例(注入型).jpeg
図14.1.3_接着系アンカーの形状の例(カプセル型).jpeg
図14.1.3 接着系アンカーの形状の例
図14.1.4_接着系アンカーの施工の例(注入型).jpg
図14.1.4_接着系アンカーの施工の例(カプセル型).jpg
図14.1.4 接着系アンカーの施工の例
② 施工方法等
1) あと施工アンカー工法の開発・普及が進んできたことや必要な位置に正確に設置できることなどにより、近年、製品や内外装材の取付けのみでなく、重量物や既存建築物等における耐震補強部材の取付け等にも広く使用されるようになってきた。
「標仕」14.1.3(b)では、「あと施工アンカーの類とする場合は、十分耐カのあるものとする。」と規定している。通常、引抜き荷重の1/3 程度が設計用引張強度とされているが、躯体コンクリートの強度や施工品質等も踏まえて検討する必要がある。
2) あと施工アンカーの種類、耐力、断面寸法、間隔等の検討に当たっては、荷重条件等を整理し、設計用引張強度以下となるようにする。
なお、耐力は、コンクリート等の下地の状態、へりあき寸法、アンカーピッチ(間隔)、埋込み深さ等も重要な要素であり、適用部位や用途により異なるが、一般に、へりあき及び間隔は埋込み深さの2倍以上としている。また、コンクリートブロック等に設置する場合は、所要の耐力が期待できないこともあるので注意する。
3) アンカーに曲げが加わる場合や繰返し荷重や長時間にわたり振動を受ける場合等は、耐力が著しく低下することがあるので、必要に応じて設計担当者と打ち合わせて検討する。
4) あと施工アンカー工法とする場合は、防水層の貫通、埋込み配管等への損傷を与えないよう事前に対策を講ずる必要がある。
5) 「標仕」では、構造耐力又は安全上重要な部分に使用する場合には、特記により引抜き耐力の確認試験を行うこととしている。
試験箇所数は、1ロット当たり3本以上とする。
なお、確認試験を行うと特記された場合でも、構造耐力及び安全上から軽易と見なせるロットでは、試験を省略できるとしている。したがって、監督職員は、あと施工アンカーの取付け状況等を考慮して、安全性に問題がなければ試験を省略させてもよい。
6) 現場において引抜き耐力の確認試験を行い合格したものは、そのまま工事で採用されるため、試験荷重は設計用引張強度までとし、破壊に至るまでの加力は行わないこととしている。
7) 常時、引張力が作用する部位(例えば見上げ面等に施工する場合)において、引抜き方向にあと施工アンカーを適用することは避ける。ただし、引抜き方向に適用しなければならない場合は、フェールセーフを含めて安全性を十分に検討する。
8) 施工上の主な留意事項
あと施工アンカーの耐力は、躯体コンクリートの強度や施工品質に大きく左右されるため、次の事項に留意し、確実な施工管理を行わせる必要がある。
・ 所定のドリル径の選定及び穿孔深さの確保(ドリルにマーキングを施すなど)。
なお、モルタル等仕上材の厚さは,有効埋込み深さに含めない。
・穿孔内の清掃、異物の除去を確実に行う。
・躯体品質により、豆板等を有する場合は、その部位を避けて施工する。
・施工完了後全数について、目視による打込み代の確認、打撃音(手ごたえ)、締付けトルクによる確認等のほか、製造所等の指定する確認事項等を行う。
・接着系アンカーの場合は、施工中、接着材料の流動性、ボルトのマーキング、かくはん状態、接着材料の充填状態、ボルトの埋設状態等について確認する。
また、施工完了後自主検査を行う。自主検査項目は、目視、接触及び打音検査とする。
・あと施工アンカーの品質・性能を確保するためには、施工する技術者の技量等が重要である。これを維持・向上させるための一例として、(-社)日本建築あと施工アンカー協会では、平成8年から「あと施工アンカー技術者資格認定試験」を実施している。
(iii) 発射打込みびょう
「標仕」以外の工法として、発射打込みびょうがある。この工法はコンクリートや鋼材等に適応するびょう打ち機を用いて、空包(びょう打ち機用空包)の火薬の燃焼ガスにより打ち込むもので、びょう打ち機は「銃砲刀剣類所持等取締法」の適用を受け、空包は「火薬類取締法」による規制を受けており、所持及び使用に当たっては法令等に定められた手続きが必要である。
しかし、最近では、これら法令等に抵触しないガス式のびょう打ち機も使用されている。
1) びょう打ち機はその機構により、「高速式」(火薬のガスを直接びょうに作用させるもの)と「低速式」(銃口内にピストン等の中間機構を有するもので、下地に貫入する際の速度が比較的遅いもの)とがあるが、一般に建築の現場では「低速式」が用いられている。また、ガス式のびょう打ち機の機構も「低速式」である(図14.1.5参照)。
図14.1.5_びょう打ち機の機構(高速式-火薬式).jpeg
図14.1.5_びょう打ち機の機構(低速式-火薬式).jpeg
図14.1.5_びょう打ち機の機構(低速式-ガス式).jpeg
図14.1.5 びょう打ち機の機構
2) びょう打ち機の空包は、びょう打ち機の製造所が指定するものとする。
また、びょう打ち機には、各種防止装置や安全装置等が設けられているが、取扱いには注意する。
なお、空包の強さにより、弱・中・強等に分けられ、色で識別されている。
3) コンクリートに対する適正な貫入深さは、びょう軸径 27mm ±5mmで、それ以上深く貫入させてもびょうの固着力は大きくならない。
4) 施工上の主な留意事項
・下地の状況を確認する。特に材質と厚さに注意する。
・びょうが下地を貫通するおそれがある場合には、使用しない。
・改修工事等で既存のコンクリート、間仕切、スラブ等に施工する場合は下地の状態及び背後の状況を確認し、十分に安全性を確保する。
・コンクリートに打ち込む場合、端部の端空きは70mm以上、打込み間隔は80mm以上、母材厚100mm以上が原則とされている。
なお、同じ箇所に2度打ちしてはならない。
・取付け物ごとに群(複数本)による留付けを原則としている。
・びょう打ち機の取扱いについては、(公社) 全国火薬類保安協会「建設用びょう打ち銃、同空包の安全な取扱い」に、その要領が示されているので参考にするとよい。
(b) 金属の腐食と接触腐食防止方法
(1) 金属の腐食を大別すると次のようになる。
腐 食
湿食:接する環境に液体がある場合の腐食であり、200℃以下で起こる腐食はこれに属する。塩、亜硫酸ガス等は腐食を促進する。
乾食:接する環境に液体がなくても生じる腐食で、200℃以上でなければ生じない。
(2) 通常の腐食は、電解質の水溶液を電解液とする局部電池構成により電気分解を起こし、陽極側の金属が消耗する湿食である。
局部電池構成の原因は種々あるが、主なものは次のとおりである。
(i) 金属面の組成、組織その他の不均一性
(ii) 異種金属の接触(接触腐食という。)。異種金属には電極電位の相異があり、電位の差が大きければ腐食の進み方は早くなる。電極電位については表14.1.1に示す。
(iii) 水に溶解する酸素濃度の差。水面付近は、腐食が発生しやすい(通気差腐食 という。)がこれは酸素濃度の差が影響している。同様に、隙間あるいは深い傷等があると、隙間の底との濃度差により腐食が進行する(隙間腐食という。)。
表14.1.1 海水中における金属の電極電位(飽和廿しょう基準)
表14.1.1_海水中における金属の電極電位.jpeg
(3) 金属の接触腐食の防止のための処置
(i) 電極電位の差の小さい材料を選んで用いること。電極電位は環境条件等により変化するが表14.1.1を参考にするとよい。
(ii) 材料と材料の間に絶縁材を挿入する。
① 軟鋼とアルミニウムの場合
1) 軟鋼を塗装等により絶縁する。
2) ポリサルファイド系のシーリング材を接合部にこて塗りすれば非常に効果がある。
② ステンレスと鋼又は銅合金の場合
塩化ビニル材等の絶縁材で一方を被覆するか、間に挟む、あるいは合わせ目の全周にわたってシーリング材で完全にシールする。
③ アルミニウムと銅の場合
エポキシ系の塗料又はタールエポキシ系の塗料を塗り付ける。
(iii) アルミニウムとモルタルあるいは木材との接触腐食の防止
① モルタルに使用する砂は塩分の少ないもの(NaCl換算で0.04%以下)を使用する。
② 木材は塩分や水分(含水率20%以下)の少ないものを使用する。
(c) 表面処理の下地処理
鋼及び亜鉛めっきの下地処理は、18章2節によるものとし、アルミニウムの下地処理は、14.2.2(b)(5)による。
14.1.4 養生その他
(a) 製品のほとんどの部分が工場で仕上げられているので、現場搬入に先立ち養生する必要がある。
「標仕」14.1.4(a)では、比較的使用頻度の高いポリエチレンフィルム及びはく離ペイントを挙げているが、その他の材料でも金物に適したものならばよい。
はく離ペイントはビニル系のものが多く、仕上げ面に塗り付けることにより薄い被覆で保護するが、不要になれば簡単にはがすことのできる塗料である。
(b) 現場に取り付けた製品には、それぞれに相応した養生が必要であるが、出隅等の損傷のおそれのある部分は、当て板、ダンボール紙等の適切な保護材を取り付けて養生するのがよい。
(c) 養生の必要がなくなったときには養生材は速かに取り除き、汚染等があれば清掃除去する。
(d) 装飾等の目的で、鏡面仕上げ等をしたものは、必要に応じてワックス等でふき上げてつや出しをする。
この場合、材種、仕上げ等によっては損傷を起こすこともあるので、専門業者に任せるのがよい。
(e) 部品類は、破損しないようにダンポール箱等に入れ、紛失するおそれのない場所に保管するのがよい。
14.1.5 金属材料の概要
(a) 一般事項
金属の形状、構成による分類を図14.1.6に示す。
図14.1.6_金属の形状、構成による分類.jpeg
図14.1.6 金属の形状、構成による分類
(b) 鋼
(1) 金属工事に用いられる鉄は、ほとんど炭素鋼であり、炭素鋼は鉄を主とし、炭素の量によって主要な性質が支配される。
含まれる炭素量は、0.04~2.1%であり、その他に少量のけい素(Si)、マンガン(Mn)、りん(P)、硫黄(S)を含んでいる。
(2) 鋼製品については、それぞれ次のJISに規定されている。
形鋼:JIS G 3101(一般構造用圧延錮材)、
   JIS G 3350(7.11.2 (a)参照)
鋼板:JIS G 3101、JIS G 3141(冷間圧延鋼板及び鋼帯)
鋼管:JIS G 3444(一般構造用炭素鋼鋼管)、
   JIS G 3466(一般構造用角形鋼管)
鉄筋:JIS G 3112(5.2.1参照)
溶融亜鉛めっき鋼板:JIS G 3302(溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)
溶融亜鉛アルミニウム合金めっき鋼板:
   JIS G 3317(溶融亜鉛-5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯)
溶融アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板:
   JIS G 3321(溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)
(c) ステンレス
(1) ステンレスの種類
(i) 鉄(Fe)と11%以上のクロム(Cr)の合金をつくると外気中における耐食性が増すが、更にニッケルが添加されるといっそう耐食性を妍す。このような合金をステンレスという。
(ii) ステンレス製品については、それぞれ次のJISに規定されている。
ステンレス鋼管:JIS G 3446、JIS G 3448、JIS G 3459
ステンレス鋼板・帯:JIS G 3320、JIS G 4304、JIS G 4305
ステンレス条鋼:JIS G 4303、JIS G 4309、JIS G 4317、
        JIS G 4318、JIS G 4320、JIS G 4321
代表的な冷間ステンレス鋼板及びステンレス鋼線材の化学成分等を表14.1.2に示す。
表14.1.2 冷間ステンレス鋼板及びステンレス鋼線材の化学成分等
表14.1.2_冷間ステンレス鋼板及びステンレス鋼線材の化学成分等.jpeg
(iii) 各系の代表例を次に示す。
① SUS 410〈13Cr〉:マルテンサイト系
やや焦味を帯びた感じで、ステンレス鋼としては比較的錆びやすい。加工性はやや良好であるが、溶接性は良くない。磁性があり磁石につく。
② SUS 430〈18Cr〉:フェライト系
建築関係でSUS 304についで使用されるステンレスである。マルテンサイト系よりやや白く、耐酸性が不十分で、大気中でも少しずつ錆びるので、海岸地方での外装には不向きである。溶接性は良いが、溶接部の耐食性が母材より著しく劣る。また、加工性はオーステナイト系より劣り、焼人れしても硬化しない。熱膨張係数が小である。新品ではオーステナイト系と見分けにくいが、磁性があるので磁石につくことで見分けられる。
③ SUS 304〈18Cr-8Ni〉:オーステナイト系
建築関係で最もよく使用されるステンレスである。①及び②より銀白色である。Ni含有のため耐食性、耐熱性に優れている。加工性、溶接性とも良好で、高温時でも強度は大であり、焼入れしても硬化しない。原則として磁性はないが、加工法によっては結品構造が変わる(加工誘起変態を起こし、面心立方格子から体心立方格子に変化する。)場合もある。
④ SUS 316〈18Cr-12Ni-2Mo〉:オーステナイト系
SUS 304とほとんど類似した特性をもつが、組成分としてモリブテンを加えている。海岸地方や工業地帯のように腐食要因の多い環境の建築物の外装や屋根材として、SUS 304より、やや耐食性のあるものとして使用する場合がある。
⑤ SUS 305〈18Cr-12Ni-0.1C〉:オーステナイト系
SUS 304に比べ、加工硬化性が低い。へら絞り、特殊引抜き、冷間圧延に用いられる。
⑥ SUS X M7〈18Cr-9Ni-3Cu〉:オーステナイト系
建築関係で小ねじ等によく使用されるステンレス鋼線材である。
SUS 304に銅(Cu)を添加して冷間加工性の向上を図ったものである。
(2) ステンレスの取扱い上の注意事項
(i) ステンレスは、比較的耐食性の高い金属ではあるが、必ずしも錆びないものではない。したがって、不適当な使い方をすれば、錆びることもあり次の事項には注意する必要がある。
① 炭素鋼と接触させると、初めは炭素鋼が侵されるが、赤錆が発錆するとステンレスも侵される。
② 水のたまるような狭い隙間があると腐食が進む。これは、酸素が十分に行きわたらず、酸化皮膜が形成できないため、腐食しやすくなることによる。
③ 銅合金と接触して腐食が始まると進み方が急速になる。
④ 空気中の亜硫酸ガス、ばい煙の粒子、塩分等によっても腐食する。
(ii) ステンレスの汚れや鋳は、ほとんどの場合、鉄粉、塩分その他の異物の付着に起因するもらい錆である。したがって、鉄粉等が付着しそれが湿気を含んで赤錆状に広がらないうちに除去する。このため、特に錆びやすい環境で使用するステンレスの場合は、材質を考慮するとともにその納まりについても清掃しやすいよう配慮する必要がある。
(d) アルミニウム及びアルミニウム合金
(1) アルミニウム及びアルミニウム合金(以下、この章では「アルミニウム」という。)は、比重が2.7で鉄に比べ約1/3の軽い金属である。
表面は、銀白色で自然生成の酸化皮膜に保護されて美観を保つが、更にその性能を高め意匠性を付加させるために、陽極酸化処理や塗装等の表面処理が行われる。
アルミニウムの種類、化学成分、機械的性質(引張強さ、耐力、伸び等)について、板材はJIS H 4000(アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条)、形材はJIS H 4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)に定められている。
建築で用いる主なアルミニウムを表14.1.3に示す。
表14.1.3 建築で用いる主なアルミニウム及びアルミニウム合金
表14.1.3_建築で用いる主なアルミニウム及びアルミニウム合金.jpeg
(2) アルミニウムは、熱処理、加工硬化により材質の機械的性質を調整(調質)し、使用目的に合わせることができる。JIS H 0001(アルミニウム、マグネシウム及びそれらの合金ー質別記号)では、これによる分類を定めている。
建材においては、板材類ではHタイプ、押出形材ではTタイプが多く使われる。アルミニウムの材質表示として板材ではA 1100 P-H14、押出形材ではA 6063 S-T5が代表的なものである。
ここでAに続く番号は、表14.1.3 の合金種類の呼称、Pは板材、Sは普通級精度の押出形材を示し、H14、T5 はJIS H 0001による細分記号を示しており、H14は加工硬化だけで1/2 硬質にしたもの、T5 は押出し後空冷し、その後人工時効硬化処理を施したものである。
(3) アルミニウムは、比較的耐食性に優れているが、酸、アルカリ及び塩素分の介在によって腐食しやすくなる。このため、アルミニウム建材には各種の表面処理が施される(2節参照)。
(4) アルミニウムは湿潤環境で異種金属と接触すると電気化学的な腐食を生じることがある。乾燥状態では通常の仕様により防止できるが、アルミニウム周囲のモルタルや木材が漏水や結露水等により湿潤状態が持続されると腐食を生じることがある。このとき含有する塩素が多いと腐食は促進する。
(5) アルミニウムは大気中の汚染物質により汚れ、そのまま放置すると外観が損なわれるとともに点食等の腐食を生じることがある。美観を維持し使用するためには定期的なメンテナンスを行うことが必要である。
(6) 製品の仕上り及び劣化状態を診断する場合、有害な傷や見え掛り部の使用上問題となる傷、汚れ、反り、へこみ等についてあらかじめ限度を定めておき、この限度内に収まっていることを考えればよい。これらの限度を定めるに当たり判断基準として建設大臣官房技術調査室監修「外装仕上げの耐久性向上技術」の診断方法を抜枠して次に示す。
外装仕上げの耐久性向上技術
第4編 アルミニウム合金製外装および開口部材
2.2 診断手法

劣化現象ごとの診断と判定は、2.2.1~2.2.5によるものとし、原則として目視による診断とする。診断は同一部位または同一部材について最低3箇所以上行い、劣化の進行程度(デグリー)に基づいて他との相対比較によって劣化度(グレード)を判定する。なお、診断においては診断箇所は、必ず乾燥面とし、できるだけ均ーな明るさのもとで行うものとする。

i) 診断は、非専門家が判断しやすいように原則として「なし」「目立つ」の2段階評価とし、汚れのうちのしみ、きず、腐食のうちの点食、その他の腐食および塗膜劣化については「目立つ」「やや目立つ」および「なし」の3段階評価とし、視力1.0程度の者が目視で5mの距離から認められる程度を「目立つ」とし、1mの距離から認められる程度を「やや目立つ」とする。
ii) 劣化の評価は評価者の知識、目的意識など主観に依存しやすいが、これをなるべく客観的、定量的な評価を行えるようにした。

(e) 銅及び銅合金
(1) 銅は淡赤色であり、亜鉛、すず、アルミニウム等と合金を作ると黄色から金色になり、ニッケルとの合金は白色になる。
(2) 一般に建築で用いられている銅合金には、次のようなものがある。
(i) 丹銀
銅に 5~20%の亜鉛を加えたものを丹銅という。
丹銅は、JIS H 3100(銅及び銅合金の板並びに条)のC 2100 ~ C 2400に定められている。このうち建築用としては C 2200、通称 9:1(くいち)丹銅が用いられる。プロンズ板というのは、ほとんどがこの丹銅板である。
(ii) 黄銅
銅に 30~40%の亜鉛を加えたものを黄銅という。
通常、黄銅には亜鉛の含有量により7:3黄銅、65:35黄銅、6:4黄銅に区分されている。色は亜鉛が少ないものほど黄色が強い。亜鉛が増すに従って強度は高くなるが、加工性は劣る。用途として建築用では階段の手すり、建具金物、目地棒、内外装材及び建築装飾に用いられる。
なお、銅、丹銅及び黄銅の組成と色調との関係を図14.1.7に示す。
図14.1.7_洞、鉛銅及び黄銅の組織と色調.jpeg
図14.1.7 銅、丹銅及び黄銅の組成と色調
(iii) 青銅
一般には、銅を主としてすずを加えたものを青銅という。
通常は、銅にすず 2~11%と亜鉛及び鉛を加えたもので、給排水金具、建築用金具として用いられている。特殊な建築金物にりん青銅が用いられることもある。
一方、建築金物の業界では、(i) の丹銅、(ii)の黄銅を含めて「プロンズ」ということが多いので注意する必要がある。
(iv) 洋白〈ニッケルシルバー〉
銅にニッケルと亜鉛を加えた合金で、ニッケルの多いものは銀白色、少ないものは黄色を帯ぴた灰色になる。
「洋銀」とは洋白の別名で銀白色である。
(3) 銅合金の仕上げの種類及び方法について表14.1.4に示す。
表14.1.4 銅合金の仕上げ
表14.1.4_銅合金の仕上げ.jpeg

14章 金属工事 2節 表面処理

14章 金属工事
2節 表面処理
14.2.1 ステンレスの表面仕上げ
(a) ステンレスの表面仕上げの一般事項
(1) ステンレスの一般的な表面仕上げを表14.2.1に示す。
表14.2.1 ステンレス板の表面仕上げ(その1)
表14.2.1_ステンレス板の表面仕上げ(その1).jpeg
表14.2.1 ステンレス板の表面仕上げ(その2)
表14.2.1_ステンレス板の表面仕上げ(その2).jpeg
(2) ステンレスの表面仕上げで表14.2.1以外には、めっき(金、銅、アルミ)、ドライコーティング等があるが、これらは、製作所が限定される。
(b) 建築材料としては、反射率の高いものは嫌われる領向にあるが、耐食性ではこの方が優れている。屋根等の防眩性が必要な部位については、防眩性に優れたダル仕上げを選定することがある。
表面を荒らすと大気中のほこり等がたまりやすく、腐食の原因になりやすい。しかし、「標仕」14.2.1では、美観を重視し、板材に限らずステンレスの表面仕上げは、指定がなければJIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼幣)のHL仕上げ程度と定められている。
なお、「標仕」でいう軽易な場合とはフード等である。
(c) 一般にヘアライン仕上げという場合は、HL仕上げのことをいう。この仕上げは、加工後生じた傷や溶接部分等に対し容易に補修ができるが、錆等がつきやすい。
その他の仕上げについては、加工後の傷の補修が困難であり、使用に当たっては、その点を考慮しなくてはならない。
14.2.2 アルミニウム及びアルミニウム合金の表面処理
(a) 表面処理の分類
アルミニウム表面処理の種類及び種別は図14.2.1に示すとおりである。また、これらの処理に意匠的な仕上げとして、研磨、エッチング、染色等の処理も行われることがある。
図14.2.1_アルミニウム表面処理の種類及び種類.jpeg
図14.2.1 アルミニウム表面処理の種類及び種別
(b) 各種表面処理の概要
(1) 陽極酸化皮膜
アルミニウムを陽極として、硫酸、その他の電解液で電気分解すると、表面にち密な酸化皮膜を生成し、耐食性、耐摩耗性を向上させることができる。この皮膜を模型図で示すと図14.2.2のようになっており、多数の微細孔がある。この微細孔に金属等を析出させ、容易に着色させることができる。また、この微細孔は封鎖する必要があり、一般に沸騰水等で処理し酸化皮膜が沸騰水との反応により水和化合物を生成し、不活性化すると同時に体積膨張等により封鎖する。これを水和封孔処理という。
図14.2.2_陽極酸化皮膜の模型図.jpeg
図14.2.2 陽極酸化皮膜の模型図
なお、水和封孔処理された酸化皮膜は大気中に暴露されたのちも不活性状態が保持され優れた耐食性及び耐汚染性を示す。
JIS H 8601(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜)では、皮膜厚さの種類と耐食性、耐摩耗性及び封孔度について規定している。
(i) 無着色陽極酸化皮膜
陽極酸化皮膜及び封孔処理を行い、着色や染色を行わないでアルミニウム素地のシルバ一色のままを無着色仕上げとするもので、「標仕」表14.2.1では皮膜の種類(厚さ)により、A-1種、C-1種として規定している。
(ii) 着色陽極酸化皮膜
着色傷極酸化皮膜は、「標仕」表14.2.1では皮膜の厚さにより、A-2種、C-2種を規定している。
なお、着色方法には、次の種類がある。
① 二次電解着色皮膜
二次電解着色とは、陽極酸化処理後、金属塩類を含む電解液中で二次的な電解処理により、皮膜の微細孔中に金属を析出することにより着色(ゴールドアンバー、ブロンズ.プラック等)する方法である。
なお、「標仕」14.2.2(b)では、特記がなければ、着色方法は、二次電解着色としている。
② 自然発色皮膜
自然発色皮膜には、素材中の合金成分を皮膜中に残存させ発色させる合金発色法、電解液に有機酸を用いて皮膜を発色させる電解発色法及びこれらを組み合わせて発色させる方法がある。
(2) 陽極酸化塗装複合皮膜
陽極酸化塗装複合皮膜は、アルミニウムに平均皮膜厚さ 5μm以上の陽極酸化処理を施したのち、塗装を施すことによって陽極酸化皮膜の性能に塗膜の性能を付加して、耐食性、耐候性、装飾性等の品質を更に向上させた皮膜であり、アルミニウム建材の表面処理で主流となっている。
JIS H 8602(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)は、2010年1月に改正されており、従来の皮膜厚さ及び塗膜厚さを規定した仕様規定から、用途及び適用環境により要求される特性項目とその合格基準を定める性能規定に変更された。この規格では複合皮膜の種類を複合耐食性及び耐候性により「A1、A2、B、C」の4種類に区分し、その品質を定めている。
「標仕」表14.2.1では、無着色陽極酸化塗装複合皮膜を「種別 B-1種」、着色陽極酸化塗装複合皮膜を「種別 B-2種」と規定しており、これに対応するJISの種類は「B(一般的な環境の屋外)」としている。しかし、使用する環境によっては、表14.2.3により適切な種類のものが選定される。
なお、改正JISの「種類B」は内容が変更されており、表C.1のように「旧種類B (透明系塗膜)」と「旧種類P(着色系塗膜)」の両方が含まれる形となって いる。したがって、これまで「標仕」では、「B-1種」は陽極酸化皮膜が無着色のもの、「B-2種」は皮膜が着色されたものとしていたが、JISの改正により、図14.2.1のように「B-1種」は陽極酸化皮膜及び塗膜のいずれも無着色のもの、「B-2種」は陽極酸化皮膜及び塗膜のいずれか又は両方が着色されたものとなっている。
塗装方法については、工場で行う主なものとして、電解塗装及び静電塗装がある。
(3) 化成皮膜の上に塗装(JIS H 4001による塗装)
アルミニウム及びアルミニウム合金の焼付け塗装板及び条(通称、カラーアルミ)の製品については、JIS H 4001(アルミニウム及びアルミニウム合金の焼付け塗装板及び条)が定められており、JIS H 4001では、種類及び記号(原板による区分、色による区分、つやによる区分)、品質(外観、膜厚、鉛筆引っかき硬度、付着性、耐曲げ性、耐おもり落下性、耐塩水噴霧性、耐候性、耐酸性及び耐アルカリ性、耐湿性)、寸法及び寸法許容差、質別及び機械的性質、試験及び検査等について規定されている。
「標仕」表14.2.1のD種の表面処理では、JIS H 4001における塗装が規定されている。塗装方法としては、通常、化成皮膜処理を施した上にロールコータ塗装である。
(4) 着色塗膜
「標仕」表14.2.1に規定する A~D種以外の表面処理の種類としてアルミニウム製カーテンウォール等に用いられる着色塗膜がある。
アルミニウムは、そのままでは塗料の付着性が良くないので通常下地処理として化成皮膜又は陽極酸化皮膜が施される。下地皮膜は、それ自体による防食性よりも、その上に施される塗膜との適合性が大切であり、塗膜の付着性をはじめとする種々の性能を考慮し、下地を選択する必要がある。
着色塗膜に使用する塗料の種類としてアクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリウレタン樹脂系、アクリルシリコン樹脂系、ふっ素樹脂系等のものがあり、一般にはアクリル樹脂系やポリウレタン樹脂系の塗料が使用される。より耐候性が要求される環境で使用される場合は、ふっ素樹脂系塗料が施される。
塗膜の厚さは 20~50μm程度であるが、色の均一性、隠ぺい性、使用環境や耐久性等を考慮して定める必要がある。また、塗装方法は、静電塗装、吹付塗装で行われる。
(5) 塗装に関する説明
(2)、(3)及び(4)の具体的な塗装方法については次のとおりである。
① 下地処理
1) 化成皮膜処理
酸性の水溶液中に浸せき処理し、アルミニウム表面に酸化皮膜、クロム酸塩皮膜、りん酸・クロム酸塩皮膜等を生成させる方法である。
皮膜は、陽極酸化皮膜より極めて薄く,柔らかいもので、耐食性を必要とするところにはそのままでは使用できない。
また、着色も不均ーであるため装飾用には不適当である。したがって、アルミニウムと塗料との密着性を増加させるため、塗装下地処理として使用される。「標仕」表14.2.1で規定しているD種は、化成皮膜の上に着色塗装を施したものである。
処理方法の一例を表14.2.2に示す。
表14.2.2 化成皮膜処理方法の特徴
表14.2.2_化成皮膜処理方法の特徴.jpeg
2) 陽極酸化皮膜
塗装下地としての陽極酸化皮膜は、(1)の陽極酸化皮膜と同様であるが、それ自体の性能よりも塗膜の性能を安定して付与する目的から皮膜厚さ等の規定はない。
② 塗装方法
1) 電装塗装
電気泳動法によって塗装する方法である。水溶性塗料中で被塗物を陽極として、直流電流を用いて塗装する方法であり、複雑な形状のものでも比較的均ーな膜厚が得られる。
2) 静電塗装
塗装損失が少なく高能率の塗装法として広く採用されている。被塗物(陽極)と塗料のノズル(陰極)の間に60,000〜100,000Vの直流電圧をかけ、帯電した塗料粒子を付着させる。静電塗装には形状、霧化方式により多くの種類がある。
3) 吹付け塗装
塗料をスプレーガンで吹き付ける方法であり、常温又は加熱塗料( 70〜80℃)を空気圧で霧化する方法と、塗料自体に高圧をかけその膨張により霧化するエアレス塗装の2種類がある。
4) ロールコータ塗装
金属平板やコイル塗装に適用され、ナチュラル形とリバース形がある。前者は17μm以下の薄膜塗装、後者は20μm以上の膜厚塗装に適する。
5) 粉体塗装
溶剤や水等の溶媒を含まないで粉体塗料粒子を被塗物に付着させる方法である。一般に他の塗装方法に比べて厚膜になる。
③ 乾燥及び焼付け条件
乾燥及び焼付け条件は、使用する塗料の種類により異なり、通常工場塗装ではポリウレタン樹脂系塗料は100℃ × 30分間、アクリル樹脂系塗料は180℃ × 30分間、ふっ素樹脂系塗料では低温型:100℃ × 30分間、中温型:160℃ × 30分間、高温型:230℃ × 20分間が標準とされている。
(c) 「標仕」表14.2.1のアルミニウム及びアルミニウム合金の表面処理の種別による適用は、次のようなものを想定している。
(1) A – 1、2種はメタルカーテンウォール等
(2) B – 1、2種は一般アルミサッシ、外装材等
(3) C – 1、2種はカーテンボックス等建物内部に使用する内装材
(4) D種は建物内部に使用する成形板及び屋根材
上記のうち、A種、C種は陽極酸化皮膜のままのため「標仕」14.2.2(c)(1)では、アルカリ材料と接する箇所は耐アルカリ性の塗料を塗布すると規定している。
また、シーリング接着面については、水和封孔処理を施した表面には生成物が付着していることがあるため「標仕」14.2.2(c)(2)では、この生成物を取り除くこととしている。塗装品についても、シーリング材との接着性を確認のうえ、選定することが必要である。
なお、「標仕」表14.2.1では種別が示されているが、これは一般的な斑対iの屋外や屋内に適用されるものであり、海浜や沿岸等腐食・劣化の激しい環境や過酷な条件で使用する場合には、耐久性向上のため皮膜等級や複合皮膜の種類が高いものを使用する必要がある。
(d) 陽極酸化皮膜の性能
陽極酸化皮膜の性能については、JIS H 8601(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜)に規定されており、その抜粋を次に示す。
JISでは、使用環境別試験の項目を規定しており、一般的な建築部材の場合、外観、皮膜厚さ、キャス耐食性、耐摩耗性が規定されている。
なお、JIS規格中の各試験方法については、(g)による。
JIS H 8601 : 1999
6. 特性及び品質
皮膜の特性及び品牲については、6.1から6.12に示す。このうち、適用される製品に必要な特性及び品質は、用途を考慮して取り決めるものとするが、一般に広く必要とされる重要な特性と用途を表1に示す。
なお、受渡当事者間による特別な協定がなされていない限り、表1の使用環境別試験項目及び各品質項目の規定を適用する。その他の品質項目については、特別な用途についてだけ要求される場合があり、必要に応じて受渡当事者間の協定で取り決めるものとする。試験は、7.に規定する試験方法によって行う。( 6.の一部及び 7.は省略)
表1 使用環境別試験項目
JIS H 8601_表1_使用環境別試験項目.jpeg
6.1 外観及び色
6.1.1 外観
皮膜の外観は、有効面上に、きず、表面上のむら、粉ふきなどの用途上有害な欠陥がないものとする。外観の品質は、必要に応じて受渡当事者間で合意した標準見本又は限度見本によって行ってもよい。
6.1.2 色とその許容範囲
色とその許容範囲は、受渡当時者間の協定によって取り決める。色とその許容範囲の品質は、必要に応じて受渡当事者間で合意した標準見本又は限度見本によって行ってもよい。
6.2 皮膜厚さ
6.2.1 皮膜厚さの等級
皮膜厚さは.平均皮膜厚さ(μm)によって表し、表2に適合しなければならない。
なお、皮膜厚さの等級は、製品の用途及び使用環境などを考慮して選択するが、受渡当事者間で特別な協定がない限り、表2による。
表2 皮膜厚さの等級
JIS H 8601_表2_皮膜厚さの等級.jpeg
6.2.2 皮膜厚さの等級と主な用途例
皮膜厚さの等級は、製品の用途及び使用環境を考慮して選択するが、受渡当事者llりで特別な協定がない限り、表3による。
なお、用途によって特別な皮膜厚さが要求される場合は、表2に規定する平均皮膜厚さの等級にない平均皮膜厚さを決めてもよい。
表3 皮膜厚さの等級と主な用途例
JIS H 8601_表3_皮膜厚さの等級と主な用途例.jpeg
6.3 耐食性
皮膜の耐食性は、各種の環境に耐える特性で、用途によっては酸性、アルカリ性及び塩水雰囲気などの環境に耐える特性が要求される場合があるが、その品質は表 4又は表5に適合しなければならない。
表4 アルカリ耐食性
JIS H 8601_表4_アルカリ耐食性.jpeg
表5 キャス耐食性
JIS H 8601_表5_キャス腐食性.jpeg
6.4 耐摩耗性
皮膜の耐摩耗性は、摩耗環境に耐える特性であり、用途によっては摩耗性物質の衝突による摩耗、しゅう(摺)動摩耗及び転がり摩擦などの摩耗環境に耐える特性が要求される場合が、あるがその品質は表6のいずれかに適合しなければならない。
 
なお、噴射摩耗試験の耐摩耗性は、導通判定法によることとし、素地が露出するまでの摩耗時間 [ WJ(T)]で表す。
表6 耐摩耗性
JIS H 8601_表6_耐摩耗性.jpeg
6.5 封孔度
封孔度は、各種環境に適用した場合の耐食性、耐汚染性などを左右する重要な特性であり、特別な用途として封孔しない皮膜が要求される場合及び AA3を除き、表7のいずれかに適合しなければならない。
表7 封孔度
JIS H 8601_表7_封孔度.jpeg
JIS H 8601 : 1999
(e) 陽極酸化塗装複合皮膜の性能
陽極酸化塗装複合皮膜の性能については、JIS H 8602(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)に規定されており、その抜粋を次に示す。
また、適用環境(参考)における区分をJIS Z 2381(大気暴露試験方法通則)により示す。
なお、JIS規格中の各試験方法については(g)による。
JIS H 8602 : 2010
4 種 類
複合皮膜の種類は、複合耐食性及び耐候性によって区分し、表1の4種類とする。なお、種類は、複合耐食性及び耐候性の両方の性能を満足しなければならない。
表1– 陽極酸化塗装複合皮膜の種類
JIS H 8602_表1-陽極酸化塗装複合皮膜の種類.jpeg
5 品 質
5.1 外 観
外観は6.3によって試験を行い、きず、むらはがれなどの使用する上で問題となる欠点があってはならない。
なお、使用する上で問題となる欠点の判断は、受渡当事者間の協定による。欠点の程度は、限度見本によって示すのが望ましい。
5.2 性 能
複合皮膜の性能は、箇条6によって試験を行い、表2による。
表2 陽極酸化塗装複合皮膜の性能
JIS H 8602_表2_陽極酸化塗装複合皮膜の性質.jpeg
附属書 C (参考)種類
序 文
この附属書は、本体に規定する種類とJIS H 8602 : 1992に規定する種類との対比を示すもので、規定の一部ではない。
C.1 種 類
種類の対比を表C.1に示す。
表C.1 – 種類の対比
JIS H 8602_表C.1-種類の対比.jpg
JIS H 8602 : 2010
JIS Z 2381 : 2001
附属書1(参考) 暴露環境の区分
1.2 日本の気候の区分
日本の気候区分は世界的に広く使われている植生の分布に基づいて作成されたケッペンの気候区分によると、北海道は、’’冷帯多雨気候型”、その他の日本各地は、沖縄まで含めて”温帯多雨気候型”に区分される(2)。気温・降水量・日照率・水分過剰量の四つの気象要索による代表的な日本の気候区分”開口による日本の気候区分(2)”をベースにし、金属材料の腐食度に注目して区分すると、次の九つの気候区分に区分できる(3)。その気候区分図を、附属書1 図1に示す。
(2) 関口「教養の気象学」朝倉書店.p158
(3) 「鉄鋼系社会資本材料の耐候性・耐食性試験評価方法に係わる調査研究」平成8年度報告書、p50 社団法人日本建材産業協会
a) 北海道・西 北海道の日本海側
b) 北海道・東 オホーツク海、太平洋側
c) 太平洋・北 伊豆半島以北(関東・東北地方)の太平洋側、甲信地方
d) 太平洋・南 東海・中部・近畿・四国・九州地方の太平洋側
e) 瀬戸内海 四国・中国・九州地方の瀬戸内海側
f) 日本海・北 能登半島以北(北陸・東北地方)の日本海側
g)日本海・南 福井・近畿・中国地方の日本海側
h) 九州・西 玄界灘に面した九州西祁
i) 南西諸烏 鹿児島県の南部の島から琉球列島に属する島(亜熱帯海洋性気候に類似した地域)
JIS Z 2381_付属書1図1_日本の気象要素による気候区分.jpeg
附属書1図1 日本の気象要素による気候区分
1.3 大気汚染区分(大気汚染物質による区分)
大気汚染物質[硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、降下ばいじんなど]の発生源及び飛来による影響、並びに火山、温泉などの特殊環境によって、次の五つの環境に区分する(3)
a) 工業地域 生産活動に伴って、大気汚染物質を発生する地域。
b) 都市地域 商業及び生活活動に伴って大気汚染物質を発生する地域。
c) 田園地域 大気汚染物質の影響が少ない地域。
d) 酸性雨地域 酸性雨の原因物質の直接の発生源ではないが、原因物質の飛来による影響の大きな地域。
e) 火山・温泉 火山性物質及び温泉からのガス(硫化水索ガスなど)の影響を大きく受ける地域(自然現象による特殊環境として区分する)。
1.4 海塩区分(海塩粒子の影響度合いによる区分)
金属材料の腐食に大きく関与する飛来海塩粒子の影響を考慮して、海岸線からの距離によって、次の五つの環境に区分する(3)
a) 海 上
b) 海 浜
海岸線から300m以内の地域(飛来する海塩粒子の影響が最も激しい地域)。
c) 沿 岸
海岸線から300mを超えて2km以内の地域(飛来する海塩粒子の影響が比較的大きい地域.ただし、南西諸島の島は、海岸線から2kmを超えても、すべてこの区分に入れる。)。
d) 準沿岸
海岸線から2kmを超えて20km以内の地域(飛来する海塩粒子の影響が比較的小さい地域)。
e) 内 陸
海岸線から20kmを超えた地域(飛来する海塩粒子の影響が無視できる地域)。
JIS Z 2381 : 2001
(f) 使用環境による表面処理の種類
JIS H 8601及び8602では表面処理の性能に応じた種類を規定しており、使用環境や用途に応じて適切に選定を行う必要がある。
使用環境に応じた表面処理の例を表14.2.3に示す。また、特殊な用途の表面処理の例を表14.2.6に示す。
表14.2.3 環境別表面処理基準
((-社)軽金属製品協会 ビル用アルミニウム建材の環境別表面処理基準より)
表14.2.3_環境別表面処理基準.jpeg
表14.2.4 使用環境の解説
((-社)軽金属製品協会 ビル用アルミニウム建材の閑税別表面処理基準より)
表14.2.4_使用環境の解説.jpeg
表14.2.5 種別による着色塗料の種類、厚さ及び塗装方法
((-社)軽金属製品協会規格 建築用アルミニウム及びアルミニウム合金の着色塗膜より)
表14.2.5_種別による着色塗料の種類.jpeg
表14.2.6 特殊な用途の表面処理基準
((-社)軽金属製品協会 ビル用アルミニウム建材の環境別表面処理基準より)
表14.2.6_特殊な用途の表面処理基準.jpeg
(g) 表面処理の試験
アルミニウムの表面処理の試験は、JIS H 8601.、 JIS H 8602.、JIS H 4001のそれぞれに規定されており、外観、皮膜、塗膜厚さ等のほか、用途に応じて当事者間の協議により行う項目もある。
設計図書で示された表面処理の性能及び品質を満足することを証明する資料としては製造所で通常生産されている製品であれば、その品質検査記録によることができる。
ただし、生産実績が少ない場合は、必要な試験を行い、品質及び性能を確認することとなる。
JISに規定する各試験項目の概要は、次のとおりである。
(i) 外観試験
外観試験は照度が600Ix以上の場所において目視で行う。光源は常用光源 D65、高演色形の蛍光ランプ(演色AAA)又は拡散昼光とする。背景は無光沢の黒、灰色等の無彩色であることが望ましい。
(ii) 陽極酸化皮膜厚さ試験
陽極酸化皮膜厚さ試験は渦電流式測定法又は顕微鏡断面測定法等により平均皮膜厚さ(μm)の測定を行う。複合皮膜の試験片は陽極酸化皮膜に損傷を与えない方法で塗膜を除去してもよい。
(iii) キャス試験
銅塩の添加で腐食作用を促進した酢酸酸性の塩水を噴霧し、皮膜や複合皮膜の耐食性を調べる試験。判定は発生した孔食をレイティングナンバにより評価する。
(iv) 塗膜の付着性試験
①碁盤目試験
複合皮膜の塗膜に 1mm間隔(塗膜 0〜60μmの硬い素地に対して)で6本ずつのクロスカットを入れ、25のます目をつくる。セロハン粘着テープを塗膜に張り付け、その後引きはがす。このときにはがれた塗膜の状況により塗膜の付着性を評価する。塗膜のいずれのます目もはがれが認められないものを、25/25とする。
②沸騰水碁盤目試験
複合皮膜の沸騰水試験は、脱イオン水を加熱した 95℃以上の沸騰水に試験片を5時間浸漬させ引き上げ、5min以内に塗膜の外観にしわ、割れ、ふくれ及び著しい変色等の有無を評価する。続いて、碁盤目試験により付着性を評価する。
(v) 塗膜の耐溶剤性試験
塗膜の耐溶剤性試験は、キシレンを浸した脱脂綿等で塗膜を30回往復して軽くこする。試験前後の塗膜の鉛筆硬さの変化によって耐溶剤性を評価する。
(vi) 耐アルカリ性
複合皮膜の耐アルカリ性試験は、5g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を複合皮膜の表面に接触させて、発生した孔食及びふくれの発生程度をレイティングナンバで評価する。
(vii) 複合耐食性試験
複合皮膜の複合耐食性試験は、紫外線蛍光ランプ式促進耐候性試験を行ったのち、キャス試験を行い、外観及び腐食の発生程度をレイティングナンバで評価する。
(ⅷ) 促進耐候性試験
複合皮膜の促進耐候性試験は、キセノンランプ式又はサンシャインカーボンアーク灯式促進耐候性試験機のいずれかにより所定時間の試験を行う。外観の変退色、チョーキングの程度及び光沢保持率により評価する。
(ix) 皮膜の封孔度試験
陽極酸化皮膜の封孔の効果を調べる試験。染料吸着試験及びりん酸ークロム酸水溶液浸漬試験等により評価を行う。
(x) 耐摩耗性試験
皮膜の耐摩耗性は噴射摩耗試験、砂落とし摩耗試験及び往復運動平面摩耗試験により評価する。噴射摩耗試験及び砂落とし摩耗試験は、皮膜に研磨材を噴射又は落下させ、皮膜が削り取られて素地が露出するまでの時間を測定する。往復運動平面摩耗試験は、装置の摩耗輪に研磨紙を張り付けた摩耗輪と試験片の間に一定の荷重を加えて往復連動させ、皮膜厚さの減少量を測定する。
14.2.3 鉄鋼の亜鉛めっき
(a) 亜鉛めっきの一般事項
(1) 「標仕」14.2.3には、鉄の防食を目的とする表面処理のうち、最も多く行われる亜鉛めっきについて定められている。
(2) 亜鉛の付着量は、「標仕」14.2.3(a)に定められているもののうちでは、溶融亜鉛めっきが多い。電気及び連続ラインによるものは、溶融亜鉛めっきよりはるかに少なく、大量に付着させるのは困難である。
(3) 亜鉛めっきの厚さと付着量は,14.2.1式の関係になる。
A=7.2 × t ・・・・・・(14.2.1 式)
A:亜鉛付着量(g/m2
7.2:めっき皮膜の密度(g/cm2
t :めっき膜厚(μm)
(4) 「標仕」の亜鉛めっき
(i) 「標仕」表14.2.2では亜鉛めっきの表面処理方法(溶融亜鉛めっき及び電気亜鉛めっき)やめっきの付着量により、A〜F種の種別が定められている。この他の亜鉛めっきとしては、従来の連続ラインにより製品化されていた表面処理亜鉛めっき鋼板類がある。
亜鉛めっきの種類とその使用箇所との関係は簡単には決められないが、目安を表14.2.7に示す。
表14.2.7 亜鉛めっきの種類と使用箇所
表14.2.7_亜鉛めっきの種類と使用箇所.jpeg
(ii) 「標仕」14.2.3(a)に定められている亜鉛めっきの通常の工程を図14.2.3及び4に示す。
① 溶融亜鉛めっきの工程
図14.2.3_溶融亜鉛めっきの工程.jpeg
図14.2.3 溶融亜鉛めっきの工程
② 電気亜鉛めっきの工程
図14.2.4_電気亜鉛めっきの工程.jpeg
図14.2.4 電気亜鉛めっきの工程
(b) 亜鉛めっきの各論
(1) 溶融亜鉛めっき
(i) 溶融亜鉛めっきは、溶融した亜鉛の中に鉄材を浸せきして、亜鉛めっき皮膜を生成させる方法である(どぶづけめっきとも呼ばれている。)。
(ii) めっきは素地とよく密着し、使用に際してはく離を起こしてはならない。
(iii) JIS H 8641(溶融亜鉛めっき)による溶融亜鉛めっきの種類等を次に示す。
JIS H 8641 : 2007 
4. 種類及び記号
めっきの種類及び記号は、表1による。
表1 種類及び記号
JIS H 8641_表1_種類及び記号.jpeg
6. めっきの品質
めっきの品質は、次による。
6.2 付着量及び硫酸銅試験回数
めっきの付着量は、7.3の試験を行ったとき、表2に適合しなければならない。硫酸銅試験同数は、表2の試験回数とし、7.4の試験を行ったとき、JIS H 0401の 6.8に規定する判定基準を満足しなければならない(7.3. 7.4省略)。
表2 付着量及び硫酸銅試験回数
JIS H 8641_表2_付着量及び硫酸銅試験回数.jpeg
(iv) 施工上の主な留意事項
① めっき工場に設備された製品を浸せきする槽の大きさ等により、一度にめっきできる部品の大きさが制限されるので、施工図を検討する際には細手位置等の検討を行い、最大部品の大きさとめっき槽との関係を検討しておく。特に規模の大きい工場がない地方では注意が必要である((a)(4)(ii)参照)。
② 密封した部分や空洞があると、ピンホール等から水分が浸入し,めっき槽に浸せきした際、急激に膨張し爆発することがあるので、このような部分をつくってはならない。
③ 可動部分で擦れ合う箇所は、めっき厚さを見込んだ十分な余裕がないとめっきにより動きが悪くなる。
ボルト、ナットの場合は、ナットのねじを普通より大きめにしておくか、めっき後ねじ部の亜鉛をさらう必要がある。
④ 板厚の薄い製品をめっきすると、熱のためにひずみを生じやすいため、板厚により亜鉛の付着量に限度がある。手すり、柵の類を製作するときに起こりやすいので注意する。
⑤ 溶接部には、アンダーカット、ピット、割れ等があってはならない。また、スラグは入念に除去されていなければならない。
(v) 溶融亜鉛めっきのめっき厚さは、部材を構成する板厚が異っている場合、薄い部材で決まってしまうため、「標仕」表14.2.2では最小板厚の規定をしている。
(2) 電気亜鉛めっき
(ⅰ) JIS H 8610(電気亜鉛めっき)に定められている電気亜鉛めっきの等級は表14.2.8のとおりである。
表14.2.8めっきの等級及びめっきの最小厚さ
          (JIS H 8610 : 1999)
表14.2.8_めっきの等級及びめっきの最小厚さ.jpeg
(ii) 「標仕」表14.2.2では、クロメート皮膜は JIS H 8625(電気亜鉛めっき及び電気カドミウムめっき上のクロメート皮膜)によるCM2 Cが指定されている。
(iii) 電気亜鉛めっきは、めっきの層が薄く短時間に防錆効果が失われるので、そのままで使用されることは少ない。
特に屋外においては、めっきの上に塗装するのが原則である。塗装については、18章を参照する。
(3) 表面処理亜鉛めっき鋼板
表14.2.7に示すように、表面処理亜鉛めっき鋼板には溶融亜鉛めっきによる方法及び電気亜鉛めっきによる方法とがあり、ともに工場生産品である。
① 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯のめっきの最小付着量については,JIS G 3302(溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)に規定されている。
② 電気亜鉛めっき鋼板及び鋼帯については JIS G 3313(電気亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)に規定されている。そのめっきの付着量の抜粋を次に示す。
JIS G 3313: 2010
4. 1 めっきの付着量
めっきの付着量は、12.1.2によって試験を行い、それぞれの試験片の片面ごとの最小付着量は表4による。ただし、附属書 JEによってめっきの付着量を測定する場合には、JE.6.5によって求めた測定値のそれぞれに適用する。
板及びコイルには、両面のめっきの付着量が同一のもの(以下、等厚めっきという。)、両面のめっきの付着量が異なるもの(以下、差厚めっきという。)及び片面だけめっきしたもの(以下、片面めっきという。)がある。
4.2 めっきの付着量表示記号
めっきの付着量表示記号は、表4のめっきの片面付着量表示記号の組合せととしその表し方は次による。
a) 板の場合は、めっきの片面付着量表示記号を、積載された板の上面/下面の順に表す。
 例1 E16/E16
b) コイルの場合は、めっきの片面付着量表示記号を、コイルの外面/内面の順に表す。
 例2 E16/E32
c) 片面めっきの場合は、鉄面の片面付着量表示記号(ES)/板又はコイルの面のめっきの片面付着量表示記号の順に表す。
 例3 ES/E40
d) 必要に応じて板又はコイルに差厚めっきであることを表すマークを付ける場合は、マークを付けた面のめっきの片面付着量表示記号の後にDを付記する。
 例4 E8/E16D
表4 – めっきの付着量表示記号及び片面の最小付着量
JIS G 3313_表4_めっきの付着量表示記号及び片面の最小付着量.jpeg
JIS G 3313: 2010
(c) 鉄鋼の亜鉛めっきの検査
(1) 亜鉛めっきの膜厚測定
亜鉛めっきの付着量は、膜厚を測定すれば、14.2.3(a)(3)の 14.2.1式により求めることができる。膜厚測定器としては、非破壊で簡便な電磁厚み計がある。これは、多少誤差が大きいが、概略の付着量を知るのに適しているので、現場における施工管理の参考として利用できる。
測定は、1箇所につき5回以上とし、平均値をその箇所の厚さとする。
なお、亜鉛めっきの膜厚測定は、JISでは電気亜鉛めっきについてのみ規定している((2)(ii)参照)。
(2) 亜鉛めっきの試験
(i) JISによる亜鉛めっきの試験は、付着量試験として直接法と関接法、硫酸銅試験、密着性試験、性状試験等がある。
① 付着量試験では、一般に塩化アンチモン液又はヘキサメチレンテトラミン液を用いる間接法で行われるが、これは破壊試験となるので、製品と同等な条件で作られた試験片(10cm角程度)で行うことになる。
② 直接法は、素材の表面積及び質量の測定が可能なものに限られるため、小さい金物類に適用される。
③硫酸銅試験は、最小膜厚を調べるもので、塩化アンチモン液又はヘキサメチレンテトラミン液を用いる関接法と同様な試験片を用いて行う。
④ 密着性試験と性状試験は、通常行われていない。
JISによる試験の適用を表14.2.9に示す。
表14.2.9 試験方法の適用(JIS H 0401 : 2013)
表14.2.9_試験方法の適用.jpeg
(ii) 電気亜鉛めっきの皮膜厚さ試験は、JIS H 8610に次の方法が規定されている。
① 顕微鏡断面試験方法
② 磁力式試験方法
③ 電解式試験方法
④ 蛍光X線式試験方法
⑤ β線式試験方法
⑥ 測微計による試験方法の中の触針走査法
⑦ 質量計測によるめっき付着量試験方法の中のめっき破壊質量法
(iii) 表面処理亜鉛めっき鋼板における溶融亜鉛めっき鋼板のめっきの付着量試験は、JIS G 3302のめっきの付着量試験による。また、電気亜鉛めっき鋼板のめっきの付着量試験は、JIS G 3313のめっきの付着量試験による。
(d) 溶融亜鉛めっき面の仕上り及び補修について
(1) 溶融亜鉛めっき面の仕上り外観
溶融亜鉛めっき面の仕上り外観については、JIS H 8641(溶融亜鉛めっき)による。次にその抜粋を示す。
JIS H 8641 : 2007
3.2 めっき表面に見られる諸現象
a) 不めっき
局部的にめっき皮膜がなく,素材面の面出しているもの。
参考
不めっきが小さい場合は、周辺亜鉛の犠牲的保護作用によって耐食上あまり影響はない。保護作用の効果が及ぶ不めっき部の大きさは、実験的には、φ5.5mm又は5mm幅までである。
b) や け
金属亜鉛の光沢がなく、表面がつや消し又は灰色を呈したもの。甚だしい場合には暗灰色となる。
参考
この現象は合金層がめっき表面に露出したものであり、大気中での耐食性には影響ない。やけは、密着性さえ十分であれば実用上の欠陥とはならないので、外観基準を設定する場合は、この点を考慮することが必要である。
なお、金属亜鉛の光沢は酸化の進行とともに失われ、やけの表面と類似した色調となってくる。素材の鋼製造工程(脱酸法)によってけい素含有量に違いがあり、その影響でやけの発生頻度に差が生じる。
c) た れ
端部又は部分的に、亜鉛が多量に付着しているもの。
参考
一般的にやけの発生しやすい素材は、めっき温度を低くしてめっき作業をするため亜鉛の流動性が低下し、たれを発生させてしまうことが多い。たれの部分をやすりなどで研磨し、平滑面を得ようとするときは、素材表面を露出させないようにする。実用上障害とならない限りそのままにしておいたほうがよい。
d) シーム
素材にきずがあると、めっきしたときに、めっき表面に特徴ある線状の凹凸になるめっき。
参考
シームは、通常めっき皮膜が形成されているので、そのまま使用しても問題はない。しかし、その面を平滑にしようとすると素材表面を露出することがある。
e) かすびき
表面に亜鉛酸化物又はフラックス残さが著しく付着しているもの。
参考
一般に耐食性に影響がある。したがって、付着した場合はやすりなどで除去しておくほうがよい。
f) ざらつき
微粒状の突起があり、懸濁(けんだく)浮遊物質(ドロス)が付着した部分。
参考
耐食性には影響はない。
g) き ず
めっき作業中、めっき用具とめっき表面とが接触したこん(痕)。
参考
めっき表面のきずは、発生位置、大きさ及び深さによってその有害性を判断する必要がある。
h) 変 色
保管中の薬品などの付着及びめっき浴からの引上げ時に、めっき表面が変色したもの。
参考
めっき引上げ時に生じる変色は、光の干渉・反射に起因したもので、耐食性に影響はない。
i) 白さび
保管中に雨水の付着、結露などによって生じた塩基性炭酸亜鉛などの腐食生成物。
参考
白さびによるめっき皮膜の消耗はわずかで、耐食性にはほとんど影響はない。
6. めっきの品質
めっきの品質は、次による。
6.1 外 観
めっきの外観は、受渡当事者間の協定による用途に対して使用上支障のある不めっきなどがあってはならない。また、めっき表面に現れる耐食性にはほとんど影響のない、濃淡のくすみ(やけなど)及び湿気によるしみ(白さびなど)によって合否を判定してはならない。
備考
めっきの主目的は、耐食性にあり、美観的要求事項を渦足させることではない。
また、装飾の目的で施されるものでもない。めっきは表面素材を滑らかにすると考えがちであるが、素材表面より良くならないのが普通である。
JIS H 8641 : 2007
(2) めっき面の欠陥部分の補修
溶融亜鉛めっき面について不めっき、傷、かすびき、摩擦面のたれ等があるものに関しては、「標仕」表14.2.4により補修を行う。

14章 金属工事 3節 溶接,ろう付けその他

14章 金属工事
3節 溶接、ろう付けその他
14.3.1 一般事項
(a) 「標仕」14.3.1(a)でステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金の溶接を、原則として工場溶接と定めているのは、これらの製品は、そのほとんどが、工場において完成品となるものであるためである。
(b) 溶接、ろう付けに際しては、被溶接材に加えられる高熱によって生じやすいひずみを防ぎ、溶接を正確に、かつ、確実に行えるようにするために、種々の治具を用いる必要がある。
14.3.2 鉄鋼の溶接
鉄鋼の溶接については、「標仕」には7章を準用するように定めているが、金属工事で扱うものには、簡易なものから相当に重要なものまで含まれるので、幅をもたせる意味で準ずることにしている。したがって、強度上重要と思われるものについては、鉄骨工事の仕様をそのまま適用する必要がある。
14.3.3 アルミニウム及びアルミニウム合金の溶接並びにろう付け
(a) アルミニウムの溶接の概要
(1) アルミニウムの溶接は.溶接形態から融接・圧接、ろう付けに大分類できる。このうち、融接の一種である不活性ガス(イナートガス)溶接、圧接の一種であるスポット溶接(スタッド溶接)、ろう接の一種であるろう付け等が、建材において広く使われる。
(2) アルミニウムの溶接性は悪くない。材料的特性から不適切な溶接による欠陥として、割れ、ブローホール、融合不良.ひずみ等が挙げられる。溶接に関する標準として、JIS Z 3604(アルミニウムのイナートガスアーク溶接作業標準)及び JIS Z 3040(溶接施工方法の確認試験方法)がある。
(3) 耐食処理としての陽極酸化皮膜は、溶接、ろう付けに妨げとなるため、接合後に皮膜処理を行うか、又は皮膜を取り除いたうえ接合する。
(4) 参考として、(-社)軽金属溶接協会では、JIS Z 3811(アルミニウム溶接技術検定における試験方法及び判定基準)により、アルミニウム溶接の資格認定制度を設けている。
(b) 主な溶接、ろう付け方法の概要
(1) 不活性ガス(イナートガス)溶接
アルミ建具、カーテンウォール等の製作で広く使われる溶接である。アルゴン、ヘリウム等のイナート(不活性)ガス雰囲気中で発生させたアークで加熱し溶接する方法であって、テイグ(TIG)溶接とミグ(MIG)溶接の2種類がある。
表面の見え掛りの重要な部分の溶接には仕上りのきれいなティグ溶接を用い、裏面の取付け部分ではミグ溶接を用いるのが一般的である。
(2) スタッド溶接
建築パネル類の取付けボルトを溶接する方法である。抵抗溶接の一種でスタッド先端と母材との間にアークを発生させ、加圧して溶接を行う。
(3) ろう付け
ブレージングとも呼ばれる溶接方法で、一般に450℃以上の融点をもつ金属又は合金を溶加材として用い、溶加材のみを溶融し、母材間隙に毛管現象を利用して流入させ、ぬれ現象で母材同士を接合する方法である。溶加材としては、アルミニウムーシリコン系合金を用いる。装飾金属に用いることが多い。
なお、450℃未満の低い融点をもつ溶加材を使用する場合は、はんだ付けと称す。
14.3.4 ステンレスの溶接及びろう付け
(a) ステンレスの溶接についての概要
(1) 溶接に際しては、その特質を損ねてはならないので、ステンレス協会規格 SAS 801(ステンレス鋼溶接施工基準)を制定し、材科、工法について詳細に定めている。
(2) ステンレスの溶接方法には、一般に被覆アーク溶接、不活性ガスアーク溶接(TIG. MIG等)、電気抵抗溶接(スポット、シーム等)がある。
(3) 建築では、オーステナイト系のSUS 304 (14.1.5(c)参照)のステンレスを多く使用している。このステンレスには次のような性質がある。
(i) 溶接による焼入れ硬化がなく、低湿脆化もないので溶接性は比較的良好である。
(ii) 溶接熱により組織的変化が生じ、溶接割れや溶接変形並びに耐食性が低下する場合があるため、溶接部の温度上昇を抑えるなど、入熱や溶接条件には十分に注意する。
(iii) 溶接によりクロムが酸化しやすく、クロム量が著しく減少した場合は耐食性が低下する。それを防止するには、酸化皮膜からなる変色部をステンレスのペーパーやプラシにて除去するか、酸洗いにより除去するなど、適切なあと処理を施さなければならない。
(iv) 熱膨張係数が炭素鋼に比べて大きく、熱伝導度が低いので、熱集中が大きくひずみの発生が多い。そのため、アーク溶接では電流調節、溶接速度により出来上りが非常に異なってくる。
(v) 不活性ガスには、アルゴンガスの使用が多いが、不純物が多いと次のような欠陥が生じゃすいので、純度99.5%以上のものを使用する必要がある。
① ビードの内部及び外部に気泡を生じる。
② ビードに褐色のスケールを生じる。
③ ビード下にひび割れを生じやすい。
(b) ステンレスのろう付け
(1) ステンレスのろう付けは、ステンレスの溶接と同じく、ステンレス協会規格SAS 801に材料工法について詳細に定められている。
(2) ステンレスのろう付けは、次の2つに分けられる。
(i) 軟ろう付け
はんだを用いたはんだ付けのことをいう。薄板は450℃以下の低温で簡単に付けられるが、強度が小さい。
(ii) 硬ろう付け
溶融温度450℃以上の銀ろう等を用いたろう付け。
(3) ステンレスのろう付けは、板厚0.3〜2.0mm程度のものが多いがそれ以上のものも可能である。
(4) ろうと母材の材質が違い、接合部が目立つので表面に表さないようにする。
(5) 継手の強度は、一般に重ね代の大きい程強くなる。
(6) 軟ろう付けの場合、強度を必要とするときは、はぎ合せ(小はぜ)にするが、スポット溶接を併用することが望ましい。
(7) SUS 304のステンレスは、熱膨張係数が大きいので、材料の膨張する量を計算しておく必要がある。
銀ろうの場合、0.05〜0.13mmが適当である。
(8) 銀及び銅を含んだろうを使用した場合は、硝酸で酸洗いしてはならない。継手部を清掃にするときは、エメリーペーパー又は非金属の粒子を使って研磨する必要がある。また、ステンレスの粉末以外の金属粉末でショットプラストを行うと、錆や腐食の原因となるので注意しなければならない。