6章コンクリート工事 11節寒中コンクリート

第6章 コンクリート工事
11 節 寒中コンクリート
6.11.1 一般事項
寒中コンクリートの適用は「標仕」では特記によることになっており、その適用期間の原則はコンクリート打込み後の養生期間にコンクリートが凍結するおそれのある期間である。寒中コンクリートでは、初期凍害の防止と低温による強度発現の遅れに対する対応の2点が技術的課題である。
JASS 5 12節[寒中コンクリート工事]では、初期凍害防止の対策を講じなければならない期間を、打込み日を含む旬の日平均気温が 4℃以下の期間とし、低温による強度発現の遅れに対する調合上の対策及び養生条件の検討が必要な期間を、材齢 91日までの積算温度が 840°D・D を下回る期間としており、解説の中で、表6.11.1のような地域と期間を定めている。
気象庁による 1981~2010年の平滑平年値を各旬ごとに表6.11.2 に示す。
気象記録のある気象台、測候所、観測所等の高さと異なる場合は、100m 高くなるごとに平均気温は 0.5~0.6℃低くなるものとして扱う。
表6.11.1 寒中コンクリート工事の適用期間(その1)
(JASS 5 (2009)の表を気象庁平年値 (1981~2010年)により修正)
表6.11.1寒中コンクリート工事の適用期間(その1).jpg
表6.11.1 寒中コンクリート工事の適用期間(その2)
表6.11.1寒中コンクリート工事の適用期間(その2).jpg
表6.11.2 旬平均気温 (0.1℃)(その1)(気象庁平年値データより)
(統計期間:1981~2010年)
表6.11.2旬平均気温(その1).jpg
表6.11.2 旬平均気温(0.1℃)(その2)(気象庁平年値データより)
表6.11.2旬平均気温(その2).jpg
6.11.2 材料及び調合
(a) 寒中コンクリートにおいても、構造体コンクリートの強度は、普通コンクリートと同様、材齢 91日までに所定の設計基準強度(Fc)が得られるものでなければならない。普通コンクリートと異なるのは,圧縮強度 5 N/mm2が得られるまでは、コンクリートが凍結しないように適切な養生を行うことが必要ということである。調合は、養生計画に応じて、養生期間内に圧縮強度 5 N/mm2 が得られるように定めなければならない。
(b)「標仕」では、かつて積算温度により管理することを原則としていた。しかしながら、積算温度方式は、一般的な現場での適用が難しいため、普通コンクリートと同じく、設計基準強度(Fc)に、「標仕」表 6.3.2 の構造体強度補正値(S)を加えた値以上となるように調合管理強度を定めて管理をすることとしている。
「標仕」6.11.2(c)の「ただし書き」における積算温度とは「材齢(日)」と「温度 + 10(度)」の積で求められる値であり、 28日間 20℃で養生した場合に 28(日) × ( 20 + 10 )(度)= 840°D・D となる。適切に初期養生が行われた場合には、日数と温度の組合せが変わっても、積算温度が同じであれば同程度の強度が得られるといわれている。経済的な養生方法で、材齢 91日までの積算温度が 840°D・D 以上となる場合には、普通コンクリートと同じく、設計基準強度(Fc)に、「標仕」表6.3.2 の構造体強度補正値(S)を加えた値以上となるように、調合管理強度を定めて管理をすれば、20℃で 28日間の場合と同様、設計基準強度の確保が期待できる。
しかし、北海道等では、保温養生によって材齢 91日までの積算温度を 840°D・D以上とするのが 不経済となる場合も多い。JASS 5 12節及び(-社)日本建築学会「寒中コンクリート施工指針・同解説」では、コンクリートの積算温度と強度の関係から、設計基準強度が得られる積算温度を、調合管理強度に応じて求める方法が示されており、材齢 91日までの積算温度が840°D・D を下回る場合の調合管理強度の決定、養生計画の立案の際の参考にするとよい。
(c) 混和剤として、AE減水剤遅延形や高性能AE減水剤を用いる場合には、コンクリートの凝結や硬化が遅れて初期棟害を生じる危険性が増すため、初期養生に注意する(6.11.4 参照)。
6.11.3 製造、運搬及び打込み
(a) 寒冷期にはコンクリートの輸送時間が長いと、コンクリートが冷されて、打込み時に「標仕」に定められた所定のコンクリート温度が得られないことがあるため、コンクリート製造工場の選定に当たっては、運搬時間を考慮する必要がある。
(b)「標仕」にコンクリートの荷卸し時の温度は10℃以上、20℃未満と定められているが、理由は次のとおりである。
(1) ワーカビリティーに対する影響がでる。
(2) 打込み中、湯気により作業に支障がでる。
(3) コンクリートの硬化が始まる前に、部分的に凍結するおそれがある。
コンクリートの練上がり時の温度は、6.11.1式で求められる。
6.11.1式.jpg
(c)セメント投入直前の材料の温度が 40℃を超える場合には、セメントが異常凝結を起こすおそれがあり、「標仕」では禁止されている。
(d)運搬中及び施工中のコンクリートの温度低下は、1時間当たり外気温とコンクリート温度との差の15%程度といわれている。
6.11.4 養 生
(a) 寒中コンクリートでは、初期養生が最も重要であるが、これは初期凍害の防止のためである。コンクリートが凝結中に凍結すると、その後の強度の上昇・回復は期待できない。
養生方法については、信頼できる資料を基に、工期、経済性等を十分に検討して決定しなければならない。
(b)「標仕」6.11.4(b)で、初期養生の期間を圧縮強度が 5 N/mm2に達するまでと定めているのは、凍害は硬化体の組織が粗いほど、また、引張強度が小さいほど激しいので、硬化体形成の目安を、上記の圧縮強度としているからである。
「寒中コンクリート施工指針・同解説」では、「コンクリート温度またはその周囲の温度の中でもっとも低い部分において求めた積算温度による強度の推定値および JASS 5 T- 603(構造体コンクリートの強度推定のための圧縮強度試験方法)による強度が、5.0 N/mm2 以上となった段階で初期養生を打ち切ってよい。」と定めている。
6.11.5 型 枠
型枠の取外しは、圧縮強度によることとし、「標仕」6.8.5では、せき板は圧縮強度が 5N/mm2 以上、支柱はスラブ下で圧縮強度が設計基準強度の 85%以上又は12N/mm2 以上であり、かつ、施工中の荷重及び外力について、構造計算により安全であることが確認されるまでとしている。また、梁下では圧縮強度が設計基準強度以上であり、かつ、施工中の荷重及び外力について、構造計算により安全であることが確認されるまでとしている。
6.11.6 試 験
(a) 初期養生期間の決定、任意材齢の強度の推定、強度上の水セメント比の決定等は、「寒中コンクリート施工指針・同解説」の試料3及び4に示された図表等を参考にして行うとよい。
(b)「標仕」6.11.6(c)は、従来「標仕」6.9.5[構造体コンクリート強度の推定試験]の中で規定されていたものであるが、材齢28日の現場封かん養生供試体の試験が寒中コンクリートを除いて削除されたため、ここに改めて規定されたものである。

6章コンクリート工事 12節暑中コンクリート

第6章 コンクリート工事
12 節 暑中コンクリート
6.12.1 適用範囲
(a) 暑中コンクリートは、日平均気温の平年値が 25 ℃を超える期間が適用期間となっている。日平均気温の平年値とは、過去30年間の日平均気温をKZフィルター(単純移動平均を数回繰り返す方法)を用いて、9日間の移動平均を 3回行った値である。例えば、東京では 7月13日から 9月 8日までが適用範囲となる。
(b) 暑中コンクリートは、次のような問題を生じやすい。
①単位水量の増加・・・・・・強度低下
②スランプ低下率の増大・・・ポンプ圧送困難、ワーカビリティー低下
③凝結、硬化の促進・・・・・打継ぎ不良、仕上げ不良
④急激な表面乾燥・・・・・・表面ひび割れの発生
⑤高温なコンクリート・・・・ひび割れの発生
コンクリートの温度が高い時は反応速度が早く凝結、硬化の進み方が早くなる。例えば、コンクリートの温度が 30℃になると 20℃の場合に比べ、輸送時間 60分のときでスランプが 1~ 2cm低下する。また、同じスランプを得るのに単位水量が 4~7kg/m3 増加する。
詳細については (一社)日本建築学会「暑中コンクリートの施工指針・同解説」を参考にするとよい。
6.12.2 材料及び調合
(a) セメントの温度が 8℃高いと、コンクリート温度は約1℃高くなる。セメントの温度が高い場合は、入荷後セメントサイロ内に一定期間放置して温度を下げるなどの対策が望まれるが、そのような対策をとるのは困難な場合が多く、骨材又は水を冷やす方が現実的である。
(b) 骨材は、コンクリート1m3 中に占める使用料が最も多いので、骨材温度はコンクリートの練上がり温度に大きく影響し、骨材温度が2℃高いとコンクリート温度は約1℃高くなる。 骨材の温度上昇を防ぐには、直射日光を当てないように屋根を設けたり、骨材に散水するなどの措置を講じるのがよい。ただし、細骨材に散水しても冷却効果は少なく、また、表面水の管理が難しくなるため、注意が必要である。
(c) 水は比熱が大きく、コンクリートの線上がり温度に及ぼす影響は、使用量の割には大きく、水の温度が 4℃高いとコンクリート温度は約1℃高くなる。したがって、なるべく低温のものを使用するのがよい。
(d) 6.12.1で記述したように凝結が早くなるので、凝結時間を遅延するためにAE減水剤の遅延形I種又は高性能AE減水剤遅延形I種を使用するのがよい (6.3.1(d)(3)参照)。この混入は、コンクリートのワーカビリティーを保つのに非常に効果がある。
(e) 高温下で養生されたコンクリートは、20℃で養生されたコンクリートよりも強度発現が停滞する傾向にあることから 「標仕」では構造体強度補正値(S)を特記により定めるとしている。特記のない場合は、上述の理由から、構造体強度補正値を 6 N/mm2 とすることとしている。
6.12.3 製造及び打込み
(a) 6.12.1(b)の弊害を抑制するため、「標仕」では、荷卸し時のコンクリート温度を、原則として 35℃以下とすることとしている。しかし、最近では各地域の最高温度が高くなる傾向にあり、盛夏期では、使用材料の温度制御等の対策では 35℃を超えることが避けられない場合も予想される。そのような場合を想定し、材料・調合、打重ね時間、養生方法・期間等についてあらかじめ検討し、対策を講じておくのがよい。
(b) せき板及び打継ぎ面が乾燥していると、あとから打ち込まれるコンクリートから水分がせき板及び打継ぎ面に吸収されるため好ましくない。ただし、散水後にせき板及び打継ぎ面に水がたまっているとコンクリートの品質が低下し、特に打継ぎ面に水がたまっていると打継ぎ部の一体性が損なわれるため、たまった水は高圧空気等によって取り除く。
(c) 輸送管が直射日光の当たるところに設置されると、配管の段取り替えや運搬車の待ち時間等で輸送管内のコンクリートの温度が上昇し、コンクリートのワーカビリティーが低下して閉塞やコールドジョイント等のトラブルが発生しやすい。したがって、輸送管等の運搬機器は、できるだけ直射日光を受けない場所に設置することが望ましい。 直射日光を受けるような場合は、輸送管をぬれたシート等で覆い、コンクリート温度の上昇を防ぐようにする。
(d) 「標仕」では、コンクリートの練混ぜを開始してから90分以内に打込みを終了するように定められているがそのためにはコンクリート運搬車の現場到着後の待ち時間をできるだけ短くすることが必要である。
(e) 打ち込まれるコンクリートが接する箇所の温度が高いと、これらに接したコンクリートの表層部は、急激に水分が吸収されるなどして、一体性や付着強度に悪影響を及ぼすことになる。したがって、打ち込まれるコンクリートが接する箇所は、表面温度が上昇しないように散水あるいは直射日光を防ぐなどの対策を講じる必要がある。ただし、散水によって冷却する場合は、型枠内に水がたまらないようにする必要がある。
(f) 暑中環境における打込みでは.コンクリートの凝結が急速に進み、コールドジョイントが発生しやすくなる。このため、打込み継続中における打重ね時間間隔の限度内にコンクリートが打ち込めるように、1回の打込み量、打込み区画及び打込み順序を考慮した打込み計画を立て、これに基づいて施工を行う。
6.12.4    養 生
(a) 表面からの水分の蒸発を防ぐことが大切であり、打ち上がったコンクリートの浮き水の状況や風速等を考慮し、急激な乾燥のおそれがある場合は散水を行う。打込み後は.6.7.2 に準じて湿潤養生を行う。
(b) コンクリート上面ではブリーディング水が消失した時期以降にコンクリートが乾燥の影響を受けるので、湿潤養生はこの時期から開始するのがよい。せき板に接している面は、封かん養生に相当する程度の養生条件が保たれているものと考えられるので。養生は脱型直後から開始すればよい。
(c) 湿潤養生終了後に、直射日光や風等によって急激にコンクリートを乾燥させるとひび割れが発生しやすくなる。湿潤養生後は、養生シート等をできる限り長く存置させて、急激な乾燥を防止するのがよい。

6章コンクリート工事 13節マスコンクリート

第6章 コンクリート工事
13 節 マスコンクリート
6.13.1 一般事項
一般に、断面寸法の大きい部材に打ち込まれたコンクリートは、硬化中にセメントの水和熱が蓄積され内部温度が上昇する。このため、コンクリート部材の表面と内部に温度差が生じたり、また、全体の温度が降下するときの収縮変形が拘束されたりして、ひび割れが生じるなどの問題が起きやすい。また、1回に打ち込むコンクリートの量が大量になる場合が多いので、入念な打込み計画のもとに施工しないとコールドジョイントが生じやすくなる。コールドジョイントが発生しないようにするためには、連続的に打ち込むことが重要である。また、先に打ち込まれ硬化したコンクリートからの拘束をできるだけ小さくするように打込み区画の大きさ、打込み順序・打込み時間間隔を定めることが重要である。
そこで「標仕」では、「部材断面の最小寸法が大きく、かつ、セメントの水和熱による温度上昇で有害なひび割れが入るおそれがある部分のコンクリート」は、マスコンクリートとしてこの節を適用することとしている。
この場合の目安としては、最小断面寸法が壁状部材で800mm以上、マット状部材・柱状部材で 1,000mm以上である。柱状部材では外部拘束が小さいので温度ひび割れが入りにくいが、構造体の強度発現に留意する必要がある。このほかに、設計要求性能のレベル、コンクリート強度、部材形状、拘束の程度、1回に打ち込まれるコンクリー卜量、実績等を考慮して、その適用を定める必要がある。
6.13.2 材料及び調合
(a) 部材の内部温度の上昇は、 他の条件が同じであればセメントの水和熱に比例して増加する。セメントの水和熱の大きさは、セメントの化合物の中でも、C3S(けい酸三カルシウム)、C3A(アルミン酸三カルシウム)の多少によって影響される。したがって、内部温度を低減するためには、できるだけ発熱量の小さいセメントを選定する必要がある。
マスコンクリートには、水和熱の小さい中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント又はフライアッシュセメントB種を用いるのがよい。これらのセメントは地域によっては入手が難しいことがあるので、事前に供給について確認しておくことが必要である。
高炉セメントB種はこれまで「標仕」のマスコンクリートの標準的なセメントであった。 最近の高炉セメントは、高炉スラグの粉末度を高くして強度発現性を改良する領向にあり、発熱速度が速くなるものもあるため、使用に当たっては注意が必要である。
早強ポルトランドセメントは、水和熱が大きいので用いない方がよい。
(b)化学混和剤の中のAE減水剤及び高性能AE減水剤の使用は、単位水量を減少させ、その結果、単位セメント量も少なくなり、温度上昇は小さくなる。特に、AE減水剤遅延形及び高性能AE減水剤遅延形は、セメントの水和反応を抑制し、温度上昇を緩やかにするのでマスコンクリートに適している。
AE減水剤標準形及び高性能AE減水剤標準形を用いる場合は、コンクリートの品質を確保しながら、減水効果が高<、単位セメント量をなるべく少なくできるものを用いるのがよい。
AE減水剤促進形は、セメントの水和反応が促進され、初期の水和熱量を増大させるので、使用してはならない。
混和材を用いる場合は、コンクリート用フライアッシュⅠ 種若しくは Ⅱ 種又はコンクリート用高炉スラグ微粉末の3000若しくは4000を用いる。 ただし、フライアッシュ I 種は粉末度がⅡ 種より大きく、発熱抑制効果がⅡ種より小さいことが指摘されているので、信頼できる資料若しくは事前の試験等により性状を確認してから使用するのがよい。
(c) コンクリートの練上がり温度が高いと、最高温度も高くなり温度ひび割れが入りやすくなるので、使用する材料はなるべく温度の低いものを用いるようにする。骨材は使用量が多く、練上がり温度に及ぼす影響が大きいので、直射日光が当たらないようにしたり、散水をするなどしてなるべく温度が高くならないようにする。ただし、細骨材に散水すると表面水の管理が難しくなるので、避けたほうがよい。
(d) コンクリートの内部温度上昇を小さくするための重要な事項の一つは、単位セメント量を少なくすることである。粗骨材の寸法を大きくしたり、混和材・化学混和剤を活用するなどの使用材料上の配慮を行うとともに、次のようなコンクリート調合上の配慮が必要になる。
(1)必要以上に調合強度を高くしない。
(2)できるだけ低スランプとする。
(3)必要に応じ流動化剤を有効に使用する。
なお、詳しい内容は、JASS 5 21節[マスコンクリート]を参照するとよい。
(e) 構造体強度補正値(S)は、基本的には一般のコンクリートと同じであるが、中庸熱ポルトランドセメント及び低熱ポルトランドセメントを用いる場合、暑中期間における補正値は 6 N/mm2 ではなく、3 N/mm2でよいことになっている。
6.13.3 製 造
荷卸し時のコンクリート温度が高いほど内部温度上昇は速く進み.最高温度が高くなり.温度降下速度も大きくなる。また、大量のコンクリートを長時間にわたって打ち込む場合、荷卸し時のコンクリート温度が高いと、セメントの水和熱による温度上昇も加わって凝結が速くなり、コールドジョイント等の問題が生じやすい。このため、「標仕」では.荷卸し時のコンクリートの温度を35℃以下と規定している。
6.13.4 養 生
コンクリートの内部温度をできるだけ低くするのが、マスコンクリートの施工の最も大切なことであるが、内部温度を低くする目的で、コンクリート表面を冷水等で冷やしても、マスコンクリートの場合は主に表面部分の冷却のみにとどまり、内部の温度上昇を低くするのにはあまり効果がなく、かえって内部と表面部の温度差を大きくし、ひび割れを誘発する場合が多い。マスコンクリートのひび割れ防止のためには、 内部と表面部の温度差及び部材温度の降下速度をできるだけ小さくすることが重要である。このため型枠の存置期間を長くするなどの養生を行い、せき板等の脱型は表面部の温度と外気温との差が小さくなってから行うことが大切である。
6.13.5  試 験
(a)マスコンクリートの調合計画では、 一般の場合と異なりコンクリート部材の予想平均養生温度に基づいて調合強度を決定している。 また、構造体コンクリートの強度検査では、構造体コンクリートと同じ温度履歴を供試体に与えることが困難であるため、標準養生による供試体の強度試験結果による間接的な検査を行っている。
(b)構造体コンクリート強度の推定試験の判定は、ポテンシャル強度の確認によっているので、材齢 28日の圧縮強度試験結果が、調合管理強度以上であれば合格となる。

6章コンクリート工事 14節無筋コンクリート

第6章 コンクリート工事
14 節 無筋コンクリート
6.14. 1 一般事項
(a) 「標仕」では、土間コンクリートのうち、亀裂防止等のため補強筋を入れているものについては、塩分総量規制を受ける普通コンクリートとして取り扱うこととしている。
なお、官庁営繕工事においては、土間コンクリートはすべて補強筋を人れており、無筋コンクリートの適用を受けるものはほとんどない。
(b) 無筋コンクリートの適用箇所は、「標仕」6.14.1(e)からも分かるようにあまり強度を必要としないところが多いことから、一般的には、設計基準強度を18N/ mm2とすればよい 。
(c) 防水層の保護コンクリートとして、「標仕」6.14.2 (a)により骨材の最大寸法 25mmの砂利を使用すると、コンクリートの厚さ60mmでこて仕上げをするのにはやや無理がある。こて仕上げを指定する場合は80mm以上とすることが 望ましい。
防水層の保護のコンクリートに気泡コンクリート (空気量が 50%以上も入る場合)を使用し、その上にモルタル 仕上げ等をすると接着力が弱く、はく離を起こすことが多い。こて仕上げに問題が多いので 「標仕」では気泡コンクリートを除いてある。
6. 14. 2 材料及び調合
(a ) コンクリート塊のリサイクルを促進するためには、適用箇所に応じて再生骨材を使用していくことが重要である 。
「 標仕 」 では無筋コンクリートにはJIS A 5308(レディーミクストコンクリート) 附属書A(規定)[レディーミクストコンクリート用骨材]の規定を満足するコンクリート用再生骨材 H を使用してよいことにしている 。
なお、再生骨材の産地を限定することは極めて困難なので、これを用いるコンクリートに使用するセメントは、アルカリシリカ反応抑制対策を考慮して高炉セメントB種又はフライアッシュセメントB種とするのが望ましい。
(b) 無筋コンクリートであるため、鉄筋を有する一般のコンクリートに求められる耐久性確保のための単位セメント量や水セメント比の規定は設けていない。
6.14.3 レディーミクストコンクリートの発注、品質管理等
(a) 「標仕」6.14.2 (b)に示すように、コンクリ ート構造体強度補正値の割増しは行わないことにしているので、使用するコンクリートの呼び強度は設計基準強度以上とする。一般的には呼び強度18 のコンクリートを使用すればよい。
(b) 無筋コンクリートの適用箇所を考えると、一般のコンクリートと同様に試し練りや構造体コンクリート強度の推定試験を行うのは実際的ではないことから、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)への適合を認証された普通コンクリートの場合には、試し練り及び構造体コンクリート強度の推定試験を省略できることとしている。

6章コンクリート工事 15節流動化コンクリート

第6章 コンクリート工事
15 節 流動化コンクリート
6.15.1 一般事項
(a) 流動化コンクリートを使用する場合には、その使用目的を明確にし、構造物のコンクリートが所定の品質のものとなるように、材料、調合、流動化の方法、品質管理の方法等必要な事項を施工計画書において確認する。
なお、(一社)日本建築学会では、「流動化コンクリート施工指針・同解説」において、流動化コンクリートの使用方法等について示しているので、これを表 6.15.1 に示す 。
表 6.15.1 流動化コンクリートの使用方法と調合の計画、使用目的
(流動化コンクリート施工指針・同解説より)
表6.15.1流動化コンクリートの使用方法と調合・使用目的.jpg
(b) 流動化コンクリートの施工に当たっては、工事現場にコンクリートについて十分な知識と経験をもつ施工管理担当者をおいて、入念な管理を行う必要がある。
6.15.2 材料及び調合
(a) 流動化剤は、JIS A 6204(コンクリート用化学混和剤)で標準形と遅延形に分類し、それぞれの品質規格を定めているが、銘柄によって品質に若干差があるので、JIS A 6204に適合するもののうちから品質の均一性及び使用実績等も考慮して選定する必要がある。
標準形は、一般のコンクリート工事に用いられるものであり、遅延形は、主として暑中コンクリート等でコンクリートの凝結を遅らせる目的に用いられる。
遅延形は流動化効果と凝結遅延効果を併せもつものであり、添加量によって流動化の程度と凝結遅延性が同時に変化するので、所定の凝結遅延性を得るためには、ベースコンクリートには遅延形のAE減水剤を用い、流動化剤は標準形とするのが望ましい。
流動化剤の主成分である高性能減水剤の中には、AE 効果が極めて小さいものがあり、ベースコンクリートに用いられるAE剤・AE減水剤との組合せについても十分に検討する必要がある。
(b) 流動化剤は、銘柄によって、流動化効果や空気量の安定性等に若干の差があるので、流動化コンクリートの調合は、工事に使用する材料を用い、実際の施工条件になるべく近い条件で試し練りを行って定める必要がある。
また、流動化コンクリートは、同じスランプの通常の軟練りコンクリートに比較してスランプの経時変化が大きいので、これについても試し練りの段階で検討を加えておくことが肝要である。
(c) 流動化剤は原液で用いられるので、通常の使月量で変化するコンクリートの水セメント比はおおよそ0.3%程度であり、圧縮強度に及ぼす影響はほとんどないこと、及び流動化剤添加前後の圧縮強度に関するする多くの実験報告によっても、流動化コンクリートの圧縮強度とベースコンクリートのそれとの間には、空気量が同じならば 有意な差はほとんど認められていないことにより、流動化コンクリートの調合は、ベースコンクリートの圧縮強度に基づいて定めてよいこととしている。
(d) ベースコンクリー ト及び流動化コンクリートのスランプは、コンクリートの種類・使用材料・運搬・打込み等の施工の条件に応じて無理のない組合せとし、「標仕」表6.15.1 を満足するように定める。
(e) 流動化コンクリートの空気量は、一般のコンクリートと同様に、通常の場合、普通コンクリートにあっては 4.5%とする。
( f ) 流動化コンクリートの品質は、ベースコンクリートの調合と流動化剤の添加量により左右される。 所要の品質の流動化コンクリートを得るためには、ベースコンクリートの品質が 一般のコンクリートと同様、「標仕」2 節の品質を満足していることが必要不可欠である。
6.15.3 コンクリートの流動化
(a) 流動化 コンクリートは、同じスランプの通常の軟練りコンクリートに比較してスランプの経時変化が大きいので、流動化剤の添加及び流動化のためのかくはんは、工事現場で行うこととしている。 また、かくはんの管理は、 回転数又はかくはん時間によって行うとよい。
なお、市街地でのトラックアジテータの高速かくはんは、騒音の問題が発生するので、工事開始前に住民の理解を得る必要がある(6.4.3 (b)参照)。
(b) 流動化剤を水で希釈して使用すると、コンクリートにあと添加される水の量が増えることになり、強度その他の性能に及ぼす影響が無視できなくなるので、流動化剤は原液で使用することとしている。
(c) 流動化コンクリートの施工に当たっては、流動化における工程管理は、できるだけシンプルであることが望ましいので、ベースコンクリートが所定の範囲で管理されている場合は、流動化剤の添加量は、あらかじめ定めた一定量とし、これを一度に添加することとしている。
なお、コンクリート温度の変化、その他の原因により、流動化効果が変化した場合、また、スランプの変動が大きい場合、工事現場における運搬車の待機が長くなった場合等においては、添加量を変更するなど適宜対処する。
(d) 現在、市販されているほとんどの流動化剤は液体であるので、質量又は容積のいずれかで計量することとし、計量誤差は,JIS A 5308(レディー ミクストコンクリート)の 8.2.2 [ 軽量誤差 ]の混和剤の規定と同じく1回計量分量の ± 3 %以内としている 。
6.15.4 品質管理
(a) 流動化コンクリートを製造するうえで、ベースコンクリートの品質変動ができるだけ小さくなるように品質管理することが特に重要であるので、一般のコンクリートと同様、ベースコンクリートの品質管理も「標仕」 5 節による。
(b) 流動化後のコンクリートの品質管理試験は、流動化の工程が計画どおりに実施され、所定の品質に適合したコンクリートを製造しているかどうかについて試験し、確認するものであり、あらかじめ定めた頻度で「標仕」5 節に準じて試験を行い、流動化工程の品質を管理し、また、運搬から打込みまでの品質の変化が確認できるようにする。そのため、流動化剤の投入場所には、コンクリートに精通した専任の施工管理担当者を配置し、入念な管理を行う必要がある。
なお、流動化コンクリートの調合強度は、ベースコンクリートの圧縮強度とほぼ同じとみなすことができるので (6.15.2 (c)参照)、ベースコンクリート及び流動化コンクリートの品質管理状態が良好と判断されれば、流動化コンクリートの調合管理強度の管理試験は省略してもよい。
6.15.5 運搬並びに打込み及び締固め
流動化コンクリートの運搬並びに打込み及び締固めの方法は、基本的には、一般のコンクリートのそれらと変わることがないので、「標仕」6 節によるとしている。
一方、流動化コンクリートは、同一スランプの軟練りコンクリートと比較して、スランプの経時変化が大きい、分離しやすいなど施工に関わる問題点もあるので、運搬並びに打込み及び締固めには、更に、次の事項も考慮する必要が ある。
(1) 流動化コンクリートは、通常の軟練りコンクリー トに比べてスランプの経時変化が大きく、また、使用材料や調合によっては、分離や品質変化が生じやすくなることがあるので、流動化後から打込みまでの時間が短くなるように事前に十分検討して、適切な運搬方法を定める必要がある。
(2) 流動化コンクリートは、練混ぜから流動化までの時間が長いほど、流動化後のスランプの経時変化が大きくなる。したがって、練混ぜから流動化剤添加までの時間をできるだけ短時間とし、また、荷卸しから打込み終了までに要する時間も外気温が 25℃ 以下の場合は 30分以内、25℃ を超える場合は 20分以内とすることが望ましい。
(3) 流動化コンクリートは、通常の軟練りコンクリートに比べてスランプの経時変化が大きいため、先に打ち込んだコンクリートの流動性を考慮して打重ね時間間隔の限度を定めるのがよく、外気温が25℃以下の場合は 60 分、25℃を超える場合は 40分程度にすることが望ましい。

6章コンクリート工事 [参考文献]

第6章 コンクリート工事
[ 参 考 文 献 ]
 
建築工事標準仕様書・同解説
 JASS 5 鉄筋コンクリート工事(2015) 日本建築学会
 
鉄筋コンクリート造建築物の
 品質管理および維持管理のための試験方法(2007)
暑中コンクリートの施工指針・同解説(2000)
型枠の設計・施工指針(2011)
 
鋼構造設計規準 (2005)
 
軽鋼構造設計施工指針・同解説(SI単位版)(2002)
 
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コンクリートのひびわれ調査、補修・補強指針(2013)
   日本コンクリート工学会
公共建築改修工事・標準仕様書(建築工事編)(平成25年版)
  建築保全センタ—
建築改修工事監理指針(平成25年版)
床型枠用鋼製デッキプレート(フラットデッキ)
 設計施工指針・同解説 (2006)
 公共建築協会フラットデッキ工業会