1級建築施工管理技士 内装仕上 熱橋となるところ

建築品質 内装仕上工事


082)熱橋(ヒートブリッジ)となるところ

鉄骨の柱や梁が断熱材を貫通している部分や断熱工法における断熱材の欠損部位は熱橋(熱の通り道:ヒートブリッジ)となる。断熱材を隙間なく施工し断熱欠損の部位をなくすことができれば、結露のトラブルをなくすことができる。

1.外壁の入隅部や外壁と床の取合い部の熱橋

外壁と直交する住戸間界壁の折返し部分や床は熱橋となる。


外壁取合い部の熱橋

外壁側から室内側へ600mm程度までは発泡ウレタンを吹き付け、断熱する。断熱材の厚さ及び施工範囲は地域区分により異なる。例えば、北海道等寒冷地では900mm程度となる。
詳細は「省エネルギー基準」に準拠した「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計・施工及び維持保全の指針」(国土交通相告示第378号)を参照

2.打込み断熱材の継ぎ目の断熱欠損部は熱橋

屋根スラブや外壁に打込まれた断熱材の継ぎ目にコンクリートが流れると熱橋となる。断熱材の継ぎ目にコンクリートが流れ込まないように施工する。


打込み断熱材の継ぎ目

3.屋根スラブ打込みルーフドレンや吊りボルト

①屋根スラブに打込むルーフドレンは、雨水を集水するために周囲よりスラブ天端を下げて施工する。外断熱防水の場合はその周囲に断熱材を敷き込むことができないので、その部分が熱橋となる。スラブ裏面に断熱補強が必要となる。


打込みルーフドレン部のスラブ下断熱

②屋根スラブに打込む吊りボルト用インサートも熱橋となる。断熱用プラスチックインサートを採用する。

4.外壁に打込まれた設備ボックスも熱橋

外壁に設備配管や電気ボックスを打ち込んだ場合、外壁に断面欠損が生じ、配管やボックスが熱橋となる。設備配管や電気ボックス等は外壁に打ち込んではならない。

5.断熱した外壁に面した押入れの壁が結露することがある

外壁に面した押入れは、床にすのこを敷き、中段の棚と奥の壁との間に30mm程度の隙間を設け、空気を流れを作り押入れ壁面の表面温度が下がらないようにする。
押入れの壁に布団が接して収納されると、壁面の表面温度が押入れ空気の露店温度以下になり、結露を起こしカビが発生する。


外壁に面した押入れ

1級建築施工管理技士 内装仕上 内断熱と外断熱

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83)内断熱と外断熱

従来の建築の考え方は内断熱であったが、近年外断熱が話題に上がることが多くなっている。内断熱でも外断熱でも、断熱が途切れたところ熱橋(ヒートブリッジ)が発生する。熱橋部分が断熱効果を下げ、そこが結露する。内断熱と外断熱の特徴を理解し、熱橋を少なくするのが、省エネルギー計画上、重要なポイントである。

1.外断熱の特徴

外断熱は躯体が外部の熱環境の影響を受けにくいので、内部熱環境を一定に保ちやすい。躯体は断熱材で保護され、温度変化が少なく、躯体が長持ちする。ただし、躯体の熱容量がある場合(鉄筋コンクリート造等)は冷暖房の立上りが遅くなる。外断熱は躯体の外側を断熱層で包むという考え方であるが、バルコニーや屋上パラペット、基礎まわりは断熱材を完全に連続させることは困難で、熱橋が発生し結露する可能性がある。これらの熱橋での結露防止策は内断熱とする。
外断熱の外装は、断熱材がそのまま外装仕上となる材料がほとんど無いため、断熱材の上に、雨風をしのぐ耐久性のある外壁としての仕上が必要となり、一般的には内断熱に比べて建設コストが多くなる。


外断熱工法

2.内断熱の特徴

内断熱は躯体内側に断熱層を設ける一般的な工法である。躯体と断熱材の間に隙間を作らないことが重要である。内部環境はほぼ一定であるが、外断熱とケースとは逆に、躯体が外環境の影響を受けるので、躯体の寿命は設計時の計画年数の級になると考えられる。
外壁仕上は通常通り施工できるので、従来からのノウハウをそのまま適用でき、外断熱に比べると建築コストは抑えされる。外壁に交わる間仕切りや床の外壁際が熱橋となるので、そういう部分は熱橋対策として、断熱材を折り返して300〜900mm程度まで引き延ばす必要がある。
最上階も内断熱にすると、日射や寒暖により躯体への影響が大きくなるので、外壁内断熱工法を採用した場合でも、最上階スラブは外断熱とするケースが多い。その場合、防水層との順番に注意する。

露出防水の場合、
内側より、躯体 → 断熱材 → 防水層

歩行用の場合、
内側より、躯体 → 防水層 → 断熱材 → 保護層

よって、歩行用の場合は、外断熱にすると、躯体と共に防水層も断熱材に護られるので長持ちする。
外断熱と内断熱を利点を考慮しつつ、部位によって使い分け、その際に断熱層の切り替わり部分の熱橋対策をとることが重要である。


内断熱工法

1級建築施工管理技士 内装仕上 断熱材は適材適所に

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84)断熱材は適材適所に

建築用断熱材は布団状のグラスウールや板状の断熱ボード、現場発泡の吹付け断熱材などがある。それぞれの部位に最適な断熱材を使用する。

1.陸屋根の外断熱

屋上の露出断熱アスファルト防水では、断熱材の上に露出防水するため、断熱材はA種硬質ウレタンフォーム両面スキン付きを使用する。
保護断熱アスファルト防水では、防水の上に断熱材を敷いて保護コンクリートを打つため、断熱材は押出法ポリスチレンフォーム3種bのスキン層付きを使用する。

2.陸屋根、外壁の内断熱

躯体打込みの時は押出法ポリスチレンフォームとする。後施工では建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームを利用する。

3.土に接する床、最下階の床

躯体打込みの時に押出法ポリスチレンフォームを使用する。

4.天井面の断熱

天井面での断熱は施工性の面からグラスウール(24kg/m3)敷込みとすることが多い。この場合、照明器具や空調用吹出口等により、完全な敷込みができない部分が生じやすい。入念な施工が求められる。

5.木造の断熱

木造壁の断熱はグラスウールが多いが、内部結露の可能性があり、通気層を設けなければならない。グラスウールに比べて現場発泡の建築物断熱用吹付けウレタンフォームは壁面に密着し、狭小隙間部分にも確実に施工でき、性能も良いので使われるケースが多くなってきている。

6.建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォーム(JIS A9526)

建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームはA種、B種、難燃2級、難燃3級などがあり、特記仕様書に示される。特記がなければ、ノンフロンのA種1の難燃性を有するものとする。この発泡ウレタンフォームは現場での吹付け厚さで性能を確保するためその吹付け厚さ管理が重要である。この吹付け厚さの管理は4m2当たり1ヶ所吹付け厚さ管理用ピンを張り付け、均一に厚さを確保するように管理する。また、難燃であるが、火源によっては燃焼することもあるので、防火コートを吹き付けことを勧める。特にテナントビルなどではテナントの改修工事中の溶接の火などによる燃焼の危険性があるため防火コートは必要である。

※断熱材の種類によって熱伝導率λの値が異なり、熱貫流率の計算に関わるので、断熱材の変更を行う場合は注意する。

1級建築施工管理技士 内装仕上 環境にやさしい材料とは?

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85)環境にやさしい材料とは?

建築工事では建築計画や設計段階での取り組みに加えて、実施設計や施工段階でも環境に配慮した持続可能な社会や低炭素社会などの実現に向けた取り組みが求められている。

1.環境破壊や健康被害を起こす材料

環境破壊や健康被害を起こす次の材料は建築基準法で使用を禁止または制限されている。

①中皮腫やがんなどを引き起こす恐れのあるアスベストPCB
②シックハウスを引き起こす揮発性化合物(VOC)
③低温燃焼時にダイオキシンを発生する塩化ビニル樹脂
④オゾン層破壊物質であるフロン

VOCの発散が少ない建材、ノンフロン断熱材やCO2排出の少ない環境に配慮した材料を使用しなければならない。

2.室内空気環境では換気を基本

シックハウス対策の材料を使用しても、気密性が高い室内にすると健康に良くはない。

①CO2の濃度が1000ppmを超える居室は換気が不十分であり、さらに空気環境が悪化すれば、頭痛・めまい・倦怠感・吐き気など人体に悪影響を及ぼす。

②ガス燃焼器具(ガスコンロ・給湯器等)を使用する調理室には機械換気設備が義務付けられている。換気設備の能力が十分に発揮できずに、COの濃度が10ppmを超える居室は換気不足で不完全燃焼による一酸化炭素中毒を引き起こす恐れがある。

「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(略称:ビル管法)」や「建築物環境衛生管理基準(建築基準法・施行令第129条の2)」では24時間換気と適切な換気が行われているか、風量の測定等の定期測定並びにその報告の提出が義務付けられている。
注)延べ3,000m2以上の事務所、百貨店、興業場が対象で、住宅、学校及び病院は除外されている。

3.「F☆☆☆☆」仕様の建材の採用(シックハウス対策)

シックハウスやシックビル症候群の原因となる揮発性有機化合物(VOC)、特にホルムアルデヒドは内装材である壁紙の接着剤やフローリング、キッチンキャビネット、クロゼットなどに使用される合板やパーティクルボードに含まれるもので、喉や目の痛み、吐き気や頭痛などを引き起こす。木製(合板やパーティクルボード製)の造付け家具などは製作工場での品質管理まで徹底しなければならない。

建築基準法では、建築材料を第1種~第3種のホルムアルデヒド発散建材に区分し内装仕上げとして使用可能面積の制限や使用禁止等の規制がなされ、ホルムアルデヒドの発散量を最も抑えた「F☆☆☆☆」仕様の建材の採用を推奨している。
接着剤及び塗料は、ホルマリン不検出のものとし、トルエンやキシレンの発生の原因となる有機溶剤の含有の少ないものを使用し、壁紙、木工用接着剤等に含まれる可塑剤は、難揮発性のものを使用する。木材保存剤(木材の防腐・防蟻処理剤)は、非有機リン系とし、工場において加圧式防腐・防蟻処理等を行い、十分に乾燥した後に搬入し、現場における塗布または吹付けは、現場において加工した箇所のみとするなどが重要である。


建築基準法におけるホルムアルデヒド規制

1級建築施工管理技士 内装仕上 集合住宅の騒音・振動対策

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86)集合住宅の騒音・振動対策

集合住宅の生活音には、建物の床や壁など躯体の振動で伝わる個体伝搬音と話し声や音楽など空気の振動によって伝わる空気伝搬音がある。この二つの音が複合的に混在し伝わって、集合住宅の騒音、振動のクレームにつながる。空気伝搬音は住戸間界壁や床、天井の下地材や仕上げ材の他、外装サッシの遮音性能などの影響を受ける。

設計条件として要求遮音性能値を明確にしても、反射や共鳴・共振・施工誤差等の不確定な要因のために竣工時の遮音性能を正確に予測することは困難である。住宅性能評価を受ける場合は、設計者、施工者は事業主と協議し、住戸の遮音性能を確認するための測定調査費用の予算を見込んでおくことが必要である。

1.外部からの騒音を軽減する

外部騒音を軽減するには、防音サッシが給気口からの音の伝搬を軽減させる消音ボックスを採用する。騒音が大きな道路に面した集合住宅では、T-3等級以上の防音合わせガラスのサッシを採用するのが望ましい。

> 049 建具に必要な性能

2.隣戸とのプライバシーに配慮した住戸間界壁

日本建築学会では住戸間界壁の遮音等級(室間平均音圧レベル差)はD-50を推奨している。乾式間仕切りを採用する場合は、各種取合い部分で遮音が低下するため、カタログデータの1ランク良いものを採用するほうが望ましい。

3.上下階の床の衝撃音と振動

集合住宅で最も厄介であるのが、家具などを動かす音などの軽量床衝撃音(LL)と子どもが走る音などの重量床衝撃音(LH)である。LLは床仕上げ材をクッション性の材料にしれば解決するが、LHは床版が振動して下階に伝わるため、振動を伝えにくい仕上げ材の使用、防振二重床の採用、躯体床の剛性確保(梁に囲われた面積(拘束面積という)を小さくするか、床スラブを厚くする)、下階の天井を防振吊りにし、天井裏に吸音材を敷設するなどが必要である。日本建築学会では床衝撃音の性能基準をして、LHはL-50、LLはL-45を推奨している。

4.機械室からの躯体の伝搬音と振動

機械式立体駐車場やエレベーター、ポンプ室、電気室などの機械が発する騒音や振動は躯体伝播で伝わるため、騒音を防ぐのは困難である。これらの設備室は別棟にすることが原則であるが、どうしても同じ棟に設けなければならない場合は、防振浮き床や浮き基礎にし、配管も防振吊りにする等、躯体と縁を切る、機械室内を吸音するなど徹底した防振防音対策が必要である。

5.その他の騒音源と振動

①玄関エンジンドアの駆動音や振動が上階居室に伝播する。エンジンドアは防振低騒音タイプをし、設置部分には防振装置を設置する。

②深夜には共用廊下や階段の歩行音がクレームになるケースもある。階段が鉄骨造の場合は段床にPCa版を採用するなどとし、床にはビニルシート等を張る。

③金属折板でできた庇や屋根で、断熱材が施工されていない場合は雨音に対する防音対策が必要となる。

集合住宅の騒音・振動対策

1級建築施工管理技士 外構 外構床のトラブル予防策

建築品質 外構工事


87)外構床のトラブル予防策

建物周囲のタイルや石で舗装された外構の床にまつわるトラブは意外と多い。

①雨の時、水たまりが発生する。
②人が滑って転倒する。
③タイルや石が割れる
④建物入口際で段差ができる(土間が沈下)

などなど、基本的な抑えをすれば発生しないものが多いが、軽視されることによるものと思われる。

1.外構の床や屋上と同様に水勾配が必要

道路の高さと建物1階の床の高さの関係は非常に重要であり、設計の初期段階で決めることである。建物をフラットにすることに注意が行き、雨水排水勾配を考慮していないケースがある。雨水勾配は1/50は確保したい。そうすれば排水もスムーズで、水たまりもできず、風で押し水が寄せされることもない。

2.外構仕上げ材は防滑性を確保

磨き石の床は雨の日、特に滑りやすい。床の防滑性に関して「JASS9 張り石工事」では滑り抵抗係数(C.S.R 値)の許容範囲を0.4〜0.8としている。「東京都福祉のまちづくり条例」では床材の滑り抵抗係数を0.4以上と規定している。本磨きや水磨きの石は使用してはならない。スロープは特に滑りには注意が必要である。ゆるい勾配だからといってジェット仕上げで大丈夫とは言えない。また、滑り止めの溝を切ったからといっても効果は少ない。溝部分にカーボランダムを埋め込むなど、確実な滑り止めを設けたい。


スロープの滑り止め

3.石やタイルの目地と土間コンクリートの目地を合わせる

外部土間にタイルや石を張るときは、下地の土間コンクリート(以下土間コン)がしっかりしていることが重要である。下地の土間コンが割れるとタイルや石が浮いたり割れたりする。土間コンの厚さは100mm程度以上とし、溶接金網(鉄筋径6mm、網目寸法150mm程度)を入れる。土間コンにはは3m内外の間隔で伸縮調整目地、或いはカッター目地を設ける。カッター目地の場合はメッシュ筋はかぶり確保のため切断する。その土間コンの伸縮調整目地とタイルや石の伸縮調整目地の位置は合わせなければならない。タイルや石の目地位置に合わせて、土間コンの目地位置を決めることになる。
建物との取合い部は伸縮調整目地を設ける。伸縮調整目地にはアスファルト目地板を入れる。その部分のタイル目地材はPS-2とする。


土間のタイル張り

尚、舗石やタイルの等の仕上材の厚さと土間コンクリートの厚さ、路床の厚さは、歩行者用と車両用で異なるので注意が必要である。

4.建物際の土間は沈下する

建物周囲は地下工事は基礎工事で掘り返されいるので、土間コン打設前に十分に転圧していたとしても、必ずといってよいほど土間コンは沈下し、建物側と段差が発生する。この沈下防止として、建物本体側から土間コンの下り止めを設けて、土間を乗せかけるおさまりとするするか、少なくともずれ止めの差筋で土間コンと建物側をつなぐ。これにより、土間の沈下は防げるが、建物本体を土間の境は必ずひび割れるので、タイルや石張りの目地位置に合わせて、土間の伸縮調整目地を設けなければならない。


土間コンの下り止め

1級建築施工管理技士 外構 階段・スロープの防水

建築品質 外構工事


88)階段・スロープの防水

外部から建物地下への階段やスロープでは人や車とともに、雨も一緒に入ってくる。滑りやすく、お汚れやすくなるだけでなく、白華現象(エフロレッセンス)も発生する。下部に部屋があると、アスファルト防水するが、階段やスロープの保護コンクリートが動いて割れたり、防水を切るなどのトラブルが発生する。

1.スロープの基本は緩和勾配と雨水の浸入防止

スロープのはじめと終わりには、車が腹や鼻先を擦らないように緩和勾配を設ける。また、スロープへ雨水が入らないように外部へ向かって勾配を付け、排水溝を設ける。もしスロープに雨水が入ってもいいように、スロープ下部にも排水溝を設けたい。車が通るスロープの仕上げは真空ワッパくし目仕上げをする。スロープ用タイル張りは滑りと剥離の可能性があるので注意する。石なら花崗岩の小舗石(ピンコロ石)が良い。

2.保護コンクリートが滑らないようにする

防水の保護コンクリートは常に下方へ滑る力が働いている。保護コンクリートが滑らないように躯体の方を滑り止め断面とし、その位置に伸縮調整目地を設ける。


スロープの防水

3.地下への階段もスロープと同じ

地下への階段は、降りはじめの段を1段上げて外部の水が入らないようにする。防水を必要とする地下への階段もスロープと同じように保護コンクリートの滑り止めを設ける。
階段を石張りにする場合は防水層の上に浸み込んだ水が下部へ集まり、エフロレッセンスを発生させる恐れがある。この浸み込んだ水は透水パイプで階段下の排水溝に排水するようにする。また、石は浸透性撥水材による表面処理をすると濡れ色にならず、白華現象(エフロレッセンス)も妨げる。


階段の防水

又、外構における階段の踏み面には水が溜まらないように1/100の勾配を設ける。一般的には、段鼻のレベルを蹴込位置のレベルより3mm程度低くする。
水の溜まった踏み面は、落ち葉等を含むと更に危険で、転倒の原因になるので、特に注意したいディテールである。

1級建築施工管理技士 設備工事 近隣の環境に配慮する

建築品質 設備


89)近隣の環境に配慮する

近隣との騒音・振動のトラブルには、計画建物が隣接建物の給排気口、冷却塔、受水層や受変電設備(キューピクル)等から影響を受ける場合と、計画建物が騒音・振動の発生源となって近隣へ影響を与える場合とがある。給気口と排気口の位置が隣接する場合は、空調設備の性能発揮にも大きく影響を与えるので、建物を計画する段階で現地確認を十分に行って計画する。また、施工する前に図面と現地を照らし合わせて問題が起きそうであれば、工事監理者は設計者や建築主と協議する必要がある。

1.騒音・振動の発生源

①排気口ガラリの風切音による騒音・振動
②空調屋外機や冷却塔による騒音・振動
③受水槽の水補給時の落水の音
④受変電用屋外キュービクルの騒音・振動
以上は、騒音・振動の発生源として、深夜には住人や近隣に対して与える影響が大きい。

2.外部騒音規制規準

外部騒音規制規準は自治体ごとに騒音振動規制条例で規準値が定められている。計画建物からの騒音振動は敷地境界線上で厳しく規制されているので、空調室外機など騒音や振動を発する機器の仕様については、設備機器発注の前に機器仕様書等の確認をするとともに、建物の完成引渡し時点で、現地の騒音の測定をして許容値内であることを確認する必要がある。騒音規制規準は自治体ごとに規制しているが、ほぼ同じであるので、例として大阪府の場合で解説をする。
住民の生活環境を保全する必要があると認める地域(指定地域)内に特定工場を設置している者は、当該特定工場等の敷地境界線において定められた規制規準を守らなけらばならない。
特定工場とは工場または事業場に設置される施設のうち、著しい騒音を発生させる施設を言い、詳細は昭和43年11月27日政令第324号で指定されている。
ここで注意しなければならないのは、定格出力が7.5kW以上の圧縮機及び送風機についてである。これは空調用室外機等が該当し、特定工場等の工場または事業場に集合住宅や戸建て住宅も該当することである。都市計画区域のほぼ全域において規制を受ける。






1級建築施工管理技士 設備工事 設備インフラを引き込むとき

建築品質 設備


90)設備インフラを引き込むとき

建築が実際に機能するには、都市インフラと建築設備を敷地内で接続しなければならない。ここでの都市インフラは、電気、通信、上水道、下水道、ガスなどを示す。その接続部は検針や点検が必要で、設置には制限もある。大事なアプローチ部分に無造作に設置されたりすることもある。引込みの方法や位置、仕上げに関しては、建築と設備の担当者が協議して、納める。

1.敷地周辺のインフラ調査

敷地に接する道路にある既設のインフラ(電気、通信、上水道、下水道、ガスなど)について、地中埋設管や架空配線の位置や径などを調査・確認することは重要である。例えば、公共下水管の位置と敷地最終会所の位置は正確に調査・測量する必要がある。この測量により、敷地内排水管から下水本管へ自然勾配で接続できるようように計画することができる。

2.電気・通信の引込みは引込み専用柱とする

架空配線の市街地では、電力ケーブルを通信線を電柱から敷地内に引き込むことになる。建物に取り付けたブラケットに直接引き込むのは建築を傷つけることになり、体裁もあまりよくはない。電柱から敷地内に立てた引込み専用柱を経て、地中配管配線で建物内に引き込む計画とする。また、住宅では電力メーターの検針が道路側からできるように、メーター取付け位置やその意匠にも配慮したい。


電力の引込み


外壁に直接引き込んだ例

3.上下水道、都市ガスの敷地内の納まり

上下(市水)を引き込んだところに量水器を設け、道路側から検針ができなければならない。下水は敷地の最終会所(マンホール)を道路際に設けることになる。敷地が狭い場合、玄関へのアプローチ上に下水のマンホールや量水器があり、毎日その上を歩くことになりかねない。都市ガスの引込みも同様である。ガスメーターやガスの遮断弁を道路際に設けることになる。電力メーターや量水器、ガスメーターなどは1ヶ所にまとめて、意匠的に処理したいものである。また、上下水道やガスの配管類は、外部から建屋内の土間下にトレンチを設けて納めるとメンテナンスや維持管理がし易くなる。


上下水道ガスの引込み


アプローチはすっきりと

1級建築施工管理技士 設備工事 電気室を水から守る

建築品質 設備


91)電気室を水から守る

電気室は建物の中で最も重要な室である。万が一漏水などで電気室がダウンすると、建物のほとんどの機能が停止する。電気シャフト(EPS)も含めて、万全な漏水対策が必要である。このように、建物にとって重要な室を重要機能室と呼ぶ。重要機能室は建物の用途によっても異なり、サーバー室や金庫室、重要書類の保管室なども重要機能室となる。あらかじめ建築主と確認しておくことが必要である。重要機能室を水から守るための対策が必要である。


電気室の漏水対策

1.水配管を通さないこと

電気室内の空調(冷房)する場合、空調機を別室に置くか、そうでなければ、ドレン配管などから水が漏れた時にも大事に至らないような対策が必要である。医療施設や研究施設の重要機能室は機能上、天井裏や室内に給排水の配管が必要となる。その時には、漏水センサーを設置するなど、漏水事故があった場合でも早期に発見して被害を最小限に抑える対策が必要となる。

2.上階からの漏水対策

電気室の上階で水を使用する部屋がある場合、①床を防水するか、②電気室内に水受け天井や防水パンを設置する。上階が事務室でも、エアコンのドレン配管だけでなく、加湿型では給水管もあるので、同様の対策が必要である。①や②の対策が取れないときは③屋外型キューピクルとし、配管は底部から引き出す納まりとする。

3.隣室からの漏水対策

電気室の隣室に水を使用する部屋がある場合、隣室の間仕切り足元の切付け部を塗膜防水するなど、電気室への水の浸入防止を図る。電気室の入口は100mmほど立ち上げておく。重要機能室となるサーバー室も同様である。

4.電気シャフト(EPS)への漏水対策

EPSとパイプシャフト(PS)をまとめて設ける場合は、PSとEPSは壁で区画し、PS側の漏水がEPSに流入しないようにEPSの床を上げるか、周囲に立上りを設ける。EPSを独立して設ける場合も同様に床を上げる。

5.人目につきにくいPSは漏水センサーで監視

人目につきにくいPSは床や給水配管等に漏水センサーを設置して機械監視をするとよい。サーバー室の床下も同様である。