9章 防水工事 7節シーリング

第09章 防水工事

7節シーリング

9.7.1 適用範囲

(a) この節は、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造及び鉄骨造建物の外壁コンクリート部分の打維ぎ目地、ひび割れ誘発目地、伸縮調整目地や化粧目地、部材の接合部及び建具枠回り、ガラス留付けにシーリング材を施す場合に適用する。

(b) 作業の流れを図9.7.1に示す。


図9.7.1 シーリング工事の作業の流れ

(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質事項を検討する。(  )内は主な管理項目を示す。

① 工程表(施工箇所別の着工、完了等)
② 製造所名、施工業者名、作業の管理組織等
③ シーリング材の材種及び色(JISでの分類等)
④ シーリング材の品質証明書等(JISに基づく試験成績書等)
⑤ プライマーの種類(品名、材種等)
⑥ バックアップ材及びボンドブレーカーの材質及び製造所名(寸法、粘着剤の有無等)
⑦ 材料の保管(消防法分類、保管条件等)
⑧ 施工箇所の形状・寸法、施工法及び養生等(目地詳細図、二面接着・三面接着、表面仕上げの有無等)

⑨ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

 

d) 用揺の説明

・不定形シーリング材

弾性シーリング材のように、施工時に粘着性のあるペースト状のシーリング材の総称である。

・弾性シーリング材

一般にポリサルファイド、シリコーン、変成シリコーン、ポリウレタン等の液状ポリマーを主成分とし、これと鉱物質充填材等をよく練り混ぜて製造したもので、変位の比較的大きい部材や部品間の隙間に充填する不定形シーリング材をいい、施工後は硬化し、ゴム状弾性を発現する。また、弾性シーラント又はり単にシーラントとも呼ばれる。

・基剤

2成分形不定形シーリング材において、主成分をいう。また、主剤と呼ばれることもある。

・硬化剤

一般的には、合成樹脂に添加、混合し、加熱若しくはその他の処理を行って硬化状態にする物質のことであるが、2成分形不定形シーリング材では、基剤と混合して、架橋(「硬化」の項参照)等の化学反応を起こさせる配合物をいう。

・硬化

一般的には合成樹脂の線状分子を硬化剤の添加、熱、光、触媒等によって相互に化学的に結合させて網状構造をつくり(架橋と呼ぶ。)、物理的性質が変化することであるが、不定形シーリング材では、ジョイントに施工してから架橋等の化学反応、水分の揮散等によって、シーリング材としての性質を発現することをいう。

・被着体

不定形シーリング材によって接合されるべき物体をいう。

・二面接着

ジョイントに不定形シーリング材を充填した場合、ジョイントを構成する材料の相対する二面で接着することをいう。目地に変位が発生するワーキングジョイントに適用される。

・三面接着
ジョイントに不定形シーリング材を充填した場合、ジョイントを構成する材料の相対する面及び目地底部の三面で接着することをいう。目地の変位がないか極めて少ないノンワーキングジョイントに適用される。

なお、「標仕」では二面接着が基本であり、動きの小さい打継ぎ目地等の場合に限り三面接着とすることができるとしている。

・界面はく離

不定形シーリング材が、被着体面からはく離し、接着界面で破壊されることをいい、接着破壊、界面破壊(略号:AF)ともいう。

・モジュラス

ゴム状弾性を有する材料の物性試験において、試験片に一定の伸びを与えたときの引張応力をいう。50%の伸びを与えたときの応力を50%引張応力という。

・クレージング

ひびともいい、ウェザリング等によるシーリング材の表面の細かい亀甲状のひび割れをいう。

・グレイジング

ガラスをはめ込み固定することをいう。

9.7.2 材 料

(a) 一般事項

(1) シーリング材の定義及び機能を次に示す。

(i) シーリング材〈シール材〉とは、「シール」すなわち「密封する」材料という意味である。

(ii) 建築工事では、建築用材料の各接合部の隙間や目地に充填し、気密性、水密性等を高める材料を総称してシーリング材と呼んでいる。

(2) シーリング材の性能は気候等により変化するので、使用条件に応じた材料の選定と材料に応じた施工が必要である。

(3) シーリング材は、作業者や周辺環境に著しい害を与えるものであってはならない。

(4) シーリング材は、対象とする被着面を侵すものであってはならない。

(b) シーリング材
(1) シーリング材の適用

シーリング材の性能について、「標仕」9.7.2ではJIS A 5758(建築用シーリング材)によるとしている。また、有効期間を過ぎたものは使用してはならない。

(2) シーリング材の分類
現在一般的に行われている主成分及び硬化機構による分類を図9.7.2に示す。

「標仕」表9.7.1では、施工箇所に応じたシーリング材の種類(主成分による。)を被着体の組合せで規定している。


図9.7.2 建築用シーリング材の一般的分類

(3) シーリング材の選定

(i) 「標仕」ではシーリング材の種類及び施工箇所は特記によるとされ、特記がなければ「標仕」表9.7.1が標準とされている。「標仕」表9.7.1に示されたシーリング材の種類と特徴を表9.7.1に示す。

表9.7.1 シーリング材の種類と特徴

(ii) 「標仕」表9.7.1に示されたもの以外にも、表9.7.2に示すような目地の区分と使用材料の組合せが考えられる。「標仕」で想定していない被着体の組合せや、表9.7.3に示す異種シーリング材との打継ぎで問題がある場合で、「標仕」表9.7.1によることが困難なときには、表9.7.2を基に受注者等と協議し、設計変更等の処置を行う必要がある。

表9.7.2 シーリング材の種類と使用部位(目安)(JASS 8より)

表9.7.3 異種シーリング材の打絹ぎの目安(JASS 8より)

(iii) 硬化後のシーリング材表面に塗料等で仕上げを行う場合、シーリング材と塗料の組合せによっては、表面が軟化し塵あいの付着による汚れが発生することがあるので、適合性に関する事前確認を行うことが必要である。特に、「標仕」表9.7.1以外のシーリング材を表9.7.2より選定する場合、汚染防止のためのバリアプライマー(シーリング材中の可塑剤の移行防止を目的とした塗布材)の要否を含め、適合性に関しシーリング材製造所及び塗料製造所双方への事前確認が重要である。

表9.7.4に示すワーキングジョイントに硬質な塗装を施すと、塗装が割れてはがれたり、割れた部分に変形が集中してシーリング材が損傷することがある。ワーキングジョイントに硬質な塗装を施す際には、事前検討を行うか塗装を避ける必要がある。

(iv) 建築基準法に規定される防火設備には、その設備の仕様で規定されたシーリング材の使用が必要である。

(v) ワーキングジョイントとなるALCパネルヘのアクリル系シーリング材の使用は避けた方が望ましいが、やむを得ず使用する場合は50%引張応力が経年変化で0.3 〜0.4N/mm2程度に上昇することを考慮して事前の検討を行う。

(vi) 「標仕」9章7節ではカーテンウォール工法を除いているが、カーテンウォー ル工事の場合については、17.2.2(b)及び17.3.2(c)でも参考例を紹介している。その他シーリング材と関連するALCパネル・押出成形セメント板工事、石工事、タイル工事、建具工事等のシーリング材の選定については、該当工事各章を参考するとよい。

(4) JIS A 5758(建築用シーリング材)の抜粋を次に示す。

JIS A 5758: 2010

1 適用範囲

この規格は、金属コンクリート、ガラスなどの建築用構成材の接合部の目地に不定形の状態で充てんし、硬化後に部材に接着して水密性及び気密性を確保するために使用する建築用シーリング材(以下、シーリング材という)について規定する。

4 種 類
4.1 一般事項

シーリング材の種類は、タイプ及びクラスによって区分し、図1による。


図1 – シーリング材の種類

4.5 主成分、製品形態及び耐久性による区分

4.5.1 主成分による区分

シーリング材は、主成分によって区分し、表2による。

表2 – 主成分による区分

4.5.2 製品形態による区分

シーリング材は、製品形態によって区分し、表3による。

表3 – 製品形態による区分

4.5.3 主成分及び耐久性による区分

シーリング材は、主成分及び耐久性によって区分し、表4による。

表4 – 主成分及び耐久性による区分


JIS A 5758 : 2010

(c) プライマー

(1) プライマーは、目地に充填されたシーリング材と被着体とを強固に接着して、シーリング材の機能を長期間維持するもので、場合により被着体表面を安定させ、下地の水分やアルカリの影響を防止するシーラーの役割も果す。

(2) プライマーが被着体に適合しなかったり、プライマーが経年で劣化した場合は、はく離による目地の不具合が生じる。そのためプライマーの選定には、十分な配慮が必要である。

(3) プライマーは、被着体及びシーリング材の種類によって使い分けねばならないがシーリング材製造所の指定するものを用いる。

「標仕」9.7.5では、外部に使用するシーリング材は、接着性試験を行うことを規定しているので、事前にできるだけ実際の被着体となる部材に対し、使用予定のプライマーを用いて接着性試験をしておく。試験方法は「標仕」9.7.5による。

(4) 接着性試験の結果が不合格となった場合は、プライマー又はシーリング材を選定し直して再試験を行い、所定の接着性を確保する。

(d) 補助材料

(1) バックアップ材

(i) バックアップ材は、シーリング材の三面接着の回避、充填深さの調整あるいは目地底の形成を目的として用いる。

(ii) バックアップ材は、シーリング材と接着せず、弾力性をもつ材料で適用箇所に適した形状のものを使用する。材質はポリエチレンフォーム、合成ゴム成形材で、シーリング材に移行して変質させるような物質を含まない材料を選定する。

(iii) バックアップ材は、シーリング材と被着体の接着面積が確保でき、二面接着が確保できるように充填する。裏面粘着剤が付いているものは目地幅より 1mm程度小さいもの、粘着剤の付いていないものは、目地幅より2mm程度大きいものを使用する。

(iv) バックアップ材の使い方は図9.7.3による。


図9.7.3 バックアップ材の使い方

(2) ボンドブレーカー

(i) ボンドブレーカーは、目地が深くない場合に三面接着を回避する目的で目地底に張り付けるテープ状の材料である。

(ii) ボンドブレーカーは紙、塩ビ,ふっ索樹脂,ポリエチレン,ポリエステル等からなる粘着テープで、プライマーを塗布しても変質せず、かつ、シーリング材が接着しないものを選定する。

(3) マスキングテープ

(i) マスキングテープは、プライマー塗布及びシーリング材充填の際の汚染防止と、 目地縁の線を通りよく仕上げるために用いる粘着テープである。

(ii) マスキングテープの選定に当たっては、次の点に注意する。
① 除去後、粘着剤が外装表面に残存しないこと。
② 清掃用洗浄剤やプライマーの塗布で溶解しないこと。
③ シーリング材の接着を妨げない材料であること。

④ 外装面の凹凸になじみやすい材料であること。

(4) 清掃用洗浄剤

(i) 清掃用洗浄剤は、被着面の油分や接党剤を除去するために用いる薬剤である。

(ii) 清掃用洗浄剤は、被着体や周辺の化粧材を変質させることがなく、接着を阻害しない材料を用いる。

(iii) 引火性があるものは、密封容器に入れて冷暗所に保管する。また、取扱いに当たっては、発生する蒸気を吸わないように注意する。

9.7.3 目地寸法

(a) 目地幅は、シーリング材に過大な応力やひずみが生じない範囲とし、凹凸、広狭等がないものとする。

(b) 目地深さは、主としてシーリング材の充填・硬化が適正に行われて、十分な接着性が確保できるように設定する。また、乾燥硬化1成分形シーリング材は、硬化に伴う収縮があるので、やや深めにする必要がある。

(c) シーリングの対象となる目地は表9.7.4に示すよう、発生するムーブメントによりワーキングジョイントとノンワーキングジョイントに大別される。

「標仕」9.7.3では特記のないかぎり部位ごとに最低目地形状を規定しているが、金属笠木等の部材接合部のように温度変化等により比較的大きな挙動が発生するワーキングジョイントとなる目地の寸法は、ムーブメントを算定し使用予定のシーリング材の設計伸縮率・設計せん断変形率を超えないように求める。求められた寸法を目地輻とするが、「標仕」9.7.3の最低目地幅を満足するものとする。

表9.7.4 ムーブメントの種類と主な目地(JASS 8より)

(-社)日本建築学会「JASS 8 防水工事」における温度ムーブメントの算定に関する抜粋を次に示す。

JASS 8 : 2008

2) 温度ムーブメントの算定

部材の熱膨張・収縮に起因する温度ムーブメントは以下の算定式により求める。

i) 突付けジョイント

解説表4.6 部材の実効温度差


解説図4.1 ワーキングジョイントの目地深さDの許容範圃

解説表4.3 シーリング材の設計伸縮率・設計せん断変形率 ε の標準値(%)


JASS 8 : 2008


9.7.4 施 工

(a) 施工の体制

シーリング工事においても、施工のほかに、事前検討や施工管理を含めた検討・調整等が重要である。例えば、日本シーリング材工業会では、これらの技術及び知識を有する「シーリング管理士」を認定している。「シーリング管理士」制度は昭和46年に発足し、昭和55年から実施された建設省総合技術開発プロジェクト「建築物の耐久性向上技術の開発」においても、「シーリング管理士」の参画による効用が記述されている。

なお、「シーリング管理士」は平成24年10月現在1,502名が認定されている。

(b) 材料の保管

(1) シーリング材は、製造年月日や有効期間を確認して、高温多湿や凍結温度以下とならない、かつ、直射日光や雨露の当たらない場所に密封して保管する。

(2) プライマー及び清掃用洗浄剤については、消防関係法令に基づいて保管する。

(c) 施工環境
(1) シーリング材の施工性、硬化速度等は温度や湿度に影響される。施工環境は一般には気温 15〜20℃で無風状態が望ましく、被着体の温度が極端に低いあるいは高くなるおそれがある場合は施工を見合わせる。

やむを得ず作業を行う場合は、仮囲い、シート覆い等による保温又は遮熱を行う必要がある。

(2) 「標仕」9.7.4では、降雨、多湿等で結露のおそれのある場合は施工を中止することにしている。すなわち、湿度が極端に高い場合はプライマー中の溶媒の気化により被着体が冷却して結露し、接着性が阻害されるおそれがあるので、作業をしない方がよい。

(3) 降雨時又は降雨が予想される場合は、施工を中止し、更に、シーリング材施工済みの目地部の雨掛りを防ぐ養生を行うことが望ましい。

(d) 下地処理

(1) 被着面に付着した塵あい、油分、粘着剤、モルタル,塗料等の付着物及び金属部の錆をサンダー、サンドペーパー及び清掃用洗浄剤等を用いて完全に除去する。

(2) 目地部に水分がある場合は,十分に乾燥させる。

(e) 施工手順

(1) バックアップ材及びボンドブレーカーの取付け

(i) バックアップ材は、所定の目地深さになるようにねじれ、浮上がり及び段差等が生じないように必要に応じて治具を用いて装填する(図9.7.4参照)。

(ii) ボンドブレーカーは浮き等が生じないように目地底に確実に張り付ける。

(iii) バックアップ材及びボンドブレーカー装填後、降雨があった場合は、バックァップ材及びボンドブレーカーを取り外し、目地が乾燥したのち、再装填する。

(iv) 動きの小さいコンクリート壁の建具周囲、打継ぎ目地、誘発目地並びに単窓及び1スパン内の連続窓回り等で、所要の目地深さが確保できる位置に目地底がある場合は、三面接着の目地構造とすることができる。

(v) バックアップ材の装填状況及びボンドブレーカーの張付け状況を確認する。


図9.7.4 装填治具例

(2) マスキングテープ張り

(i) マスキングテープは、シーリング材の接着面に掛からない位置に通りよく張り付ける。

(ii) 塗装面にテープ張りをするときは、塗装が十分硬化していることを確認し、

除去に際して塗膜を引きはがさないように注意する。

(iii) テープ張りのまま長時間たつと除去し難く、粘着剤が残存しやすくなるため、施工範囲を決めて張り付ける。特に、気温の高い時期は注意する。

(iv) 粘着剤が残存した場合は、速やかに清掃用洗浄剤等で除去する。

(3) シーリング材充填

(i) プライマー塗布

① 2成分形プライマーを用いる場合は、可使時間内に使い切る量を正しく計量して入念に混合する。

② プライマーは、塗りむら、塗残しあるいは目地からはみ出しのないように均ーに塗布する。

③ プライマー塗布後、塵あい等の付着が認められたり、シーリング材充填までの時間が長すぎた場合は再清掃し、再塗布を行う。

(ii) シーリング材の線混ぜ

① 2成分形シーリング材の基剤及び硬化剤の配合割合は、製造所の指定するものとする。

② 2成分形シーリング材は、機械練混ぜを原則とし、空気を巻き込まないようにして十分かくはんする。

③ 2成分形シーリング材の練混ぜは、可使時間に使用できる量で、かつ、1缶単位で行う。

④ 「標仕」9.7.4(d)(3)では2成分形シーリング材を用いる場合は、充填されたシーリング材の硬化の過程や硬化状態を確認するために、各ロットごとにサンプリングを行うことにしている。

この場合のサンプリングの採取方法は、1組の作業班が 1 日に行った施工箇所を1ロットとし、アルミニウム製チャンネル等に練混ぜたシーリング材を充填し、材料名・練混ぜ年月日・ロット番号・通し番号を表示する(図9.7.5参照)。


図9.7.5 サンプリング例

 

(iii) シーリング材の充填及び仕上げ

① シーリング材の充填は、吹付け等の仕上げ前に行うのが原則であるが、仕上げが施されたあとに充填することもある。その場合、目地周辺を養生し、はみ出さないように行う。

② シーリング材の充填は、目地幅に適し、底まで届くノズルを装着したガンを用い、目地底部から加圧しながら入念に行う。

③ シーリング材の充填は、交差部あるいは角部から図9.7.6の要領で行う。隙間、打残し、気泡がないように目地の隅々まで充填する。

④ シーリング材の充填は、プライマー塗布後、製造業者の指定する時間内に行う。

⑤ シーリング材の打継ぎは、目地の交差部及び角部を避けて図9.7.7のように行う。異種シーリング材との取合いの適否は、表9.7.3に示すとおりであるが、相互間の接着性試験を行うことが望ましい(9.7.5(d)参照)。

⑥ 充填したシーリング材は、内部まで力が十分に伝わるように、へら押えして下地と密着させたのち、平滑に仕上げる。


図9.7.6 シーリング材充填の順序

 


図9.7.7 シーリング材の打継ぎ(一般の打継ぎ)

(4) 着掃及び養生

(i) マスキングテープ除去及び清掃

① マスキングテープの除去は、シーリング材表面仕上げ直後に行う。

② 目地周辺の外装材に付着したシーリング材は、布等でふき取る。また、外装材を侵さない清掃用洗浄剤を利用してもよい。ただし、シリコーン系は未硬化状態でふき取ると、汚染を拡散するおそれがあるため硬化してから除去する。

(ii) 養 生

① シーリング材表面がタックフリーの状態になるまでは、触れないようにし、硬化するまでは塵あい等が付着しないように養生する。外装仕上げは、シー リング材が硬化してから行う。

② エマルション系シーリング材の場合は、硬化するまでの間に降雨が予想されるときは養生を行う。

③ あと工程でシーリング材が損傷されるおそれがあるときは、適切な養生を行う。その際、密封してシーリング材の硬化を妨げないように注意する。

(5) 確 認

(i) シーリング材の施工工程終了後、目地に対して垂れ等がなく正しく充填されているか、汚染・発泡等の著しい外観不良がないかを、目視にて確認する。不具合が認められた場合は、直ちに手直しを行う。

(ii) シーリング材が十分硬化したのち、指触によりシーリング材の硬化状態及び接着状態に異状がないかを確認する。異状が認められた場合は、サンプリングした全ロットについて確認し、受注者等、専門工事業者及びシーリング材製造所に不具合範囲及び原因の究明を行わせ、対処方法を決定する。

9.7.5 シーリング材の試験

(a) シーリング材は、同一種類のものであってもシーリング材製造所ごとにその組成 が異っており、被着本との組合せによっては、接着性能に問題の起こる場合がある。このため「標仕」9.7.5では、防水上重要な外部に面する金属、コンクリート、建 具等に用いるシーリング材の接着性試験を行うことにしている。ただし、過去に同ーのシーリング材製造所の同一種類のシーリング材と同一被着体の組合せで実施した信頼できる試験成績書がある場合には、この接着性試験を省略してもよい。

(b) 簡易接着性試験において、常温で硬化養生を行う場合は、夏場に比べ冬場は長く養生期間を設ける。試験が不合格となった場合は、プライマー又はシーリング材を選定し直し、再試験を行う。

(c) 「標仕」9.7.5(b)(2)の規定による引張接着性試験では、試験で使用した被着体に対し、シーリング材製造所が規定するシーリング材の性能を満足するか否かを確認する。不合格となった場合は、(b)と同様に再試験を行う。

(d) 打継ぎ接着性試験を行う場合は、JASS 8を参考にするとよい。

なお、JASS 8では、異種シーリング材の打継ぎ接着性試験に関して、次のように述べている。

(1) 異種シーリング材を打ち継ぐことは好ましくはないが、やむを得ず打継ぎが発生する場合、あと打ちシーリング材との接着性の確認が必要となる。

(2) 試験方法としては図9.7.8(イ)、(ロ)に示すような試験体を用いた接着性試験、あるいは図9.7.9に示すような簡易接着性試験がある。判定方法としては破壊状況に着目し、界面ではく離しなければよい。

(3) この場合、先打ちシーリング材の硬化状態は JIS A 1439(建築用シーリング材の試験方法)による養生を行ったのち、あと打ちシーリング材にも同様の養生を行うことが多い。ただし、工場施工との打継ぎに際しては、先打ちシーリング材を1〜2ヶ月屋外暴露してからあと打ちシーリング材を養生して試験を行うことが望ましい。


図9.7.8 異種シーリング材の打継ぎ接着性試験(JASS 8より)

 


図9.7.9 異種シーリング材の打継ぎ簡易接着性試験(JASS 8より)

令和5年1級建築施工管理技士 二次検定 問題1 解答解説

令和5年 1級建築施工管理技士 二次 解答解説 問題1


問題1
建築工事の施工者は、発注者の要求等を把握し、施工技術力等を駆使して品質管理を適確に行うことが求められる。

あなたが経験した建築工事のうち、要求された品質を満足させるため、品質計画に基づき品質管理を行った工事を 1 つ選び、工事概要を具体的に記入 した上で、次の 1.及び 2.の問いに答えなさい。

なお、建築工事とは、建築基準法に定める建築物に係る工事とし、建築設備工事を除くものとする。

[ 工事概要 ]
イ.工 事 名
ロ.工事場所
ハ.工事の内容新築等の場合:
建物用途、構造、階数、延べ面積又は施工数量、
主な外部仕上げ、主要室の内部仕上げ

改修等の場合:
建物用途、建物規模、主な改 修内容及び施工数量
ニ.工 期 等(工期又は工事に従事した期間を年号又は西暦で年月まで記入)
ホ.あなたの立場
ヘ.あなたの業務内容

1.工事概要であげた工事で、あなたが現場で重点的に品質管理を行った事例を 3つあげ、それぞれの事例について、次の①から③を具体的に記述しなさい。

ただし、3 つの事例の①は同じものでもよいが、②及び③はそれぞれ異なる内容を記述するものとする。

工種名又は作業名等

② 施工に当たって設定した品質管理項目及びそれを設定した理由

③ ②の品質管理項目について実施した内容及びその確認方法又は検査方法

 

解答試案

【 事例1】

① 工種名又は作業名等:鉄筋工事

② 施工に当たって設定した品質管理項目及びそれを設定した理由:

異鋼種同断面があったため、鉄筋の鋼材種の確認した。

③ 実施した内容及びその確認方法又は検査方法:

鉄筋のミルシートの確認とロールマーク及びノギスにて鉄筋の鋼種及び径を確認した。

【 事例2】

① 工種名又は作業名等:コンクリート工事

② 施工に当たって設定した品質管理項目及びそれを設定した理由:

コンクリート出来形の寸法。構造強度及び仕上げ精度を満足するために必要であるから。

③ 実施した内容及びその確認方法又は検査方法:

型枠の脱型後に出来形検査を実施した。柱ついては見えかかり寸法、張りについては梁下端までの高さ及び幅、スラブ及び壁については開口部等を利用して断面寸法を確認した。

【 事例3】

① 工種名又は作業名等:コンクリート工事

② 施工に当たって設定した品質管理項目及びそれを設定した理由:

外壁のコールドジョイントの発生ゼロ。外壁にコールドジョイントがあると、そこからの漏水により外壁性能に大きく影響を及ぼすため。

③ 実施した内容及びその確認方法又は検査方法:

コンクリート打ち込み継続中の打重ね時間間隔(外気温 25℃未満で、150分以内、25℃以上で120分以内)を厳守するため、打重ねが発生した部分に関しては、打ち重ねまでの時間を記録、管理した。

【 事例4】

① 工種名又は作業名等:外壁タイル張り工事

② 施工に当たって設定した品質管理項目及びそれを設定した理由:

密着張りの張付けモルタルの時間管理。張り付けモルタルの可使時間を超えてからの施工は、タイルの密着性に悪影響を与え、タイルの浮きやはく落の原因となるため。

③ 実施した内容及びその確認方法又は検査方法:

張り付けモルタルは、一度に塗り付ける面積を2m2以内とし、塗付け開始後15分で進捗を確認した。さらに20分以内で張り終えたことを確認し、チェックリストに記録した。

2. 事概要であげた工事に係わらず、あなたの今日までの建築工事の経験を踏まえて、次の①及び②を具体的に記述しなさい。

ただし、1.の③と同じ内容の記述は不可とする。

① 品質管理を適確に行うための作業所における組織的な取組

② ①の取組によって得られる良い効果

解答試案

①品質管理を適確に行うための作業所における組織的な取組み:

各種工事に関する施工計画書を作成し、品質管理に関する項目として具体的に施工管理値及び限界値をうたい、施工着手前に品質管理の会議を行い、協力会社にその内容を徹底する。

② ①の取組みによって得られる良い効果

顧客の信頼が得られ社会的な評価を高めることができるとともに、工事に携わるもの全員がより良い品質の建物を施工するということを意識することで、全体としてスキルアップにもつながる。

令和5年1級建築施工管理技士 二次検定 問題2 解答解説

令和5年 1級建築施工管理技士 二次 解答解説 問題2

問題2
建築工事における次の 1.から 3.の仮設物の設置を計画するに当たり、 留意すべき事項及び検討すべき事項を、それぞれ 2 つ具体的に記述しなさい。
ただし、解答はそれぞれ異なる内容の記述とし、申請手続、届出及び運用管理に関する記述は除くものとする。

また、使用資機材に不良品はないものとする。
1. くさび緊結式足場

解答試案

・くさび緊結式足場の建地の間隔は、桁行方向1.85m以下、梁間方向 1.5m以下とする。

・くさび緊結式足場の地上第1の布の高さは、2.0m以下とし、布の上下方向の間隔は、2m以下とする。

など

基本的には、労働安全衛生規則 第571条(くさび緊結式足場)第1項を参照するとよい。

__

2. 建設用リフト

解答試案

・建設用リフトの搬器に労働者を乗せない。建設用リフトの搬器の昇降によって労働者に危険を生ずるおそれのある部分に労働者を立ち入らせない。

・建設用リフトのピットをそうじするときは、搬器の落下防止措置を講じる。建設用リフトの運転者を、搬器を上げたままで、運転位置から離れさせない。

・最大積載荷重を現地に表示し、その機能と能力を十分に理解するとともに能力と使用上の制限事項等を厳守させて使用する。

__

3. 場内仮設道路

解答試案

・資機材の運搬車両、工事用機械等、さまざまな用途の車両の通行を考慮し、道路の位置と幅員について検討する。

・地耐力を確認し、機械接地圧と比較検討を行う。なお、地耐力が不足している場合は、地盤改良工事を行う。

・杭打機など大型の工事用機械は接地圧が大きいので、整地後に切込砂利を敷き、十分転圧してから鋼板を敷く。

令和5年1級建築施工管理技士 二次検定 問題3 解答解説

令和5年 1級建築施工管理技士 二次 解答解説 問題3

問題3
市街地での事務所ビル新築工事について、右の基準階の躯体工事工程表及び作業内容表を読み解き、次の 1.から 4.の問いに答えなさい。

工程表は工事着手時のもので、各工種の作業内容は作業内容表のとおりであり、型枠工事の作業④と、鉄筋工事の作業⑦については作業内容を記載していない。
基準階の施工は型枠工 10 人、鉄筋工6人のそれぞれ1班で施工し、③ 柱型枠、壁型枠返しは、⑧壁配筋が完了してから開始するものとし、⑨梁配筋(圧接共)は、⑤床型枠組立て(階段を含む)が完了してから開始するものとする。

なお、仮設工事、設備工事及び検査は、墨出し、型枠工事、鉄筋工事、コンクリート工事の進捗に合わせ行われることとし、作業手順、作業日数の検討事項には含めないものとする。

[ 工事概要 ]
用  途:事務所
構造,規模:鉄筋コンクリート造、地上 6階、延べ面積 3,000 m2
基準階面積 480m2

基準階の躯体工事工程表(当該階の柱及び壁、上階の床及び梁)

作業内容表(所要日数には仮設、運搬を含む)

ネットワーク工程表検討用

1.型枠工事の作業 ④及び鉄筋工事の作業 ⑦の作業内容を記述しなさい。

解答

 ④ 梁型枠組立て

 ⑦ 柱配筋

[ 解説 ]

一般的な型枠組立順序及配筋の順序は、

(型枠)

墨出 → 柱 → 内壁 → 大梁 → 小梁 → 外壁 → 床版

   ↑            ↑

  柱配筋          壁配筋

※覚え方 「鼻の大小が相当愉快」

「一級建築士 スーパー記憶術 原口秀明氏より」

(配筋)

柱 → 壁 → 梁 → 床

(垂直のもの)→(水平のもの)

である。

問題文に記載のない作業は、梁型枠組立て及柱配筋である。

__

2.型枠工事の ③柱型枠、壁型枠返しの最早開始時期(EST)を記入しなさい。

解答

 柱型枠、壁型枠返しの最早開始時期(EST):5日

[ 解説 ]

題意より、ダミーアローを記載すると下記のようになる。

よって、柱型枠、壁型枠返しの最早開始時期(EST)は、5日となる。

__

3.型枠工事の ⑥型枠締固め及び鉄筋工事の ⑦床配筋のフリーフロートを記入しなさい。

解答

⑥型枠締固めのフリーフロート 5日

⑩床配筋のフリーフロート 0日

[ 解説 ]

型枠締固めの最早終了時期は14日+ 3日=17日

コンクリート打設の最早開始時期は 22日なので、

22日 - 17日 = 5日

よって、⑥型枠締固めのフリーフロートは 5日となる。

⑩床配筋はクリティカルパス上にあるので、フリーフロートは 0日

__

4. 次の記述の [  ] に当てはまる数値を記入しなさい。
ある基準階において、②片壁型枠建込み及び ③柱型枠、壁型枠返しについて、当初計画した型枠工の人数が確保できず、②片壁型枠建込みでは2日、③柱型枠、壁型枠返しでは1日、作業日数が増加することとなった。
このとき、墨出しからコンクリート打込み完了までの総所要日数は[  ]日となる。

解答

 24

[ 解説 ]

②片壁型枠建込みはクリティカルパス上にはなく

2日 → 3日

となっても、クリティカルになくことなく

総所要日数に影響はない。

③柱型枠、壁型枠返しはクリティカルパス上にあり、

3日 → 4日

と作業日数が1日増えると、総所要日数も1日増え、

23日 → 24日

となる。

令和5年1級建築施工管理技士 二次検定 問題4 解答解説

令和5年 1級建築施工管理技士 二次 解答解説 問題4

問題4
次の 1.から 4.の問いに答えなさい。

ただし、解答はそれぞれ異なる内容の記述とし、材料(仕様、品質、搬入、保管等)、作業環境(騒音、振動、気象 条件等)、養生及び安全に関する記述は除くものとする。

1.土工事において、山留め壁に鋼製切梁工法の支保工を設置する際の施工上の留意事項2 つ、具体的に記述しなさい。

ただし、地下水の処理及び設置後の維持管理に関する記述は除くものとする。

解答例

山留め壁に鋼製切梁工法の支保工を設置する際の留意事項

・腹起しは連続して設置することとし、継手の設置位置は曲げ応力の小さい箇所となるようにする。

・切りばりの継手は切りばり支柱間に2ヵ所以上設けないようにし、同一方向の継手は同じ位置に並ばないようにする。

(その他の解答例)

・接合部が変形している場合は、端部の隙間にライナーなどを挿入し、切りばりの軸線が直線になるようにする。

・ 同一方向の切りばりの継手は、同じ位置に並ばないようにし、継手位置はできる限り切りばり交差部の近くに設ける。

__

2.鉄筋工事において、バーサポート又はスペーサーを設置する際の施工上の留意事項2 つ、具体的に記述しなさい。

解答例

バーサポート又はスペーサーを設置する際の留意事項

・柱又は壁は、上段は梁下より0.5m程度の範囲に、中段は上段よりl.5m間隔程度とし、横間隔は1.5m程度、端部は0.5m程度に配置する。

・梁は、間隔1.5m程度、端部は0.5m程度の位置に、上又は下いずれかと、側面の両側へ対象に配置する。

(その他の解答例)

・スラブにおいては、上端筋、下端筋それぞれ、間隔は0.9m程度、端部は0.1m以内に配置する。

・スラブにおいては、バーサポートは上端、下端とも、交差する鉄筋の下側の鉄筋を支持する。

・柱筋、壁筋のスペーサーは、上階に建ち上がる場合の台直しを避けるため、上階の梁底になるべく近く、柱では柱頭から500mm程度に、壁では最上段の横筋位置に設置する。

__

3.鉄筋コンクリ—ト造の型枠工事において、床型枠用鋼製デッキプレート(フラットデッキプレート)を設置する際の施工上の留意事項 2つ、具体的に記述しなさい。

解答例

床型枠鋼製デッキプレートを設置する際の留意事項

・フラットデッキには10mm程度のむくりがついているため、梁とのすき間からノロ漏れ等が生じないように施工する。

・フラットデッキが施工中に落下しないように、エンドクロース部分を型枠の上にのせ、かかり代を50mm以上確保する。

(その他の解答例)

・現場における切込み等の作業ができるだけ少なくなるように割付計画を行い、必要に応じてリブの切断を行う場合はデッキ受けを設け、確実に荷重が伝わるようにする。

・設備配管の貫通孔が規則的な場合又は集中している場合は、局部破壊の原因となるため補強を行う。

__

4.コンクリート工事において、普通コンクリートを密実に打ち込むための施工上の留意事項2 つ、具体的に記述しなさい。

解答例

普通コンクリートを密実に打ち込むための留意事項

・柱の打設は、自由落下高さを抑えて、コンクリートが分離するのを防ぐため、一度スラブ又は梁で受けた後に、柱各面から打込む。

・打重ね時に棒型振動機を先打ちコンクリートの中に10cm程度挿入して、後打ちコンクリートとの一体化をはかり、十分に締め固める。

(その他の解答例)

・柱壁は、スラブと梁との境目のひび割れ防止のため、梁下で一度打込みを止めてコンクリートを沈降させてから打ち重ねる。

・SRC造の梁への打設は、フランジの下部が空洞とならないように、フランジ片側から流し込み、反対側にコンクリートが上昇するのを待って全体に打ち込む。

令和5年1級建築施工管理技士 二次検定 問題5 解答解説

令和5年 1級建築施工管理技士 二次 解答解説 問題5

問題5
次の 1.から 8.の各記述 において、[  ] に当てはまる最も適当な語句又は数値の組合せを、下の枠内から 1 つ選びなさい。

1.塩化ビニル樹脂系シート防水の接着工法において、シート相互の接合部は、原則として水上側のシートが水下側のシートの上になるよう張り重ねる。

また、シート相互の接合幅は、幅方向、長手方向とも、最小値 [ a ] mm とし、シート相互の接合方は、 [ b ] と [ c ] を併用して接合する。

解答

 4

[ 解説 ]

塩化ビニル樹脂系シート防水の接着工法において、シート相互の接合部は、原則として水上側のシートが水下側のシートの上になるよう張り重ねる。

また、シート相互の接合幅は、幅方向、長手方向とも、最小値 40mm とし、シート相互の接合方は、接着剤又は熱風液状シール材を併用して接合する。

2. セメントモルタルによる外壁タイル後張り工法の引張接着 強度検査は、施工後2 週間以上経過した時点で、油圧式接着力試験機を用いて、引張接着強度と [ a ] 状況に基づき合否を判定する。

また、下地がモルタル塗りの場合の試験体は、タイルの目地部分を [ b ] 面まで切断して周囲と絶縁したものとし、試験体の数は 100 m2 以下ごとに1個以上とし、かつ、全面積で [ c ] 個以上とする。

解答

3

[ 解説 ]

セメントモルタルによる外壁タイル後張り工法の引張接着 強度検査は、施工後2 週間以上経過した時点で、油圧式接着力試験機を用いて、引張接着強度と 破壊状況に基づき合否を判定する。

また、下地がモルタル塗りの場合の試験体は、タイルの目地部分をコンクリート面まで切断して周囲と絶縁したものとし、試験体の数は 100 m2 以下ごとに1個以上とし、かつ、全面積で 個以上とする。__

3. 鋼板製折板葺屋根におけるけらば包みの継手位置は、端部用タイトフレームの位置よりできるだけ [ a ]ほうがよい。

また、けらば包み相互の継手の重ね幅は、最小値 [ b ]mm とし、当該重ね内部に不定形又は定形シーリング材をはさみ込み、 [ c ] 等で留め付ける。

解答

3

[ 解説 ]

鋼板製折板葺屋根におけるけらば包みの継手位置は、端部用タイトフレームの位置よりできるだけ近いほうがよい。

また、けらば包み相互の継手の重ね幅は、最小値60mm とし、当該重ね内部に不定形又は定形シーリング材をはさみ込み、ドリリングタッピンねじ等で留め付ける。__

4.軽量鉄骨壁下地のランナー両端部の固定位置は、端部から [ a ] mm 内側とする。ランナーの固定間隔は、ランナーの形状、断面性能及び軽量鉄骨壁の構成等により [ b ] mm程度とする。

また、上部ランナーの上端とスタッド天端の隙間は 10 mm以下とし、スタッドに取り付けるスペーサーの間隔は [ c ]mm 程度とする。

解答

2

[ 解説 ]

軽量鉄骨壁下地のランナー両端部の固定位置は、端部から50mm 内側とする。ランナーの固定間隔は、ランナーの形状、断面性能及び軽量鉄骨壁の構成等により900mm程度とする。

また、上部ランナーの上端とスタッド天端の隙間は 10mm以下とし、スタッドに取り付けるスペーサーの間隔は 600mm 程度とする。

5. 仕上げ材の下地となるセメントモルタル塗りの表面仕上げには、金ごて仕上げ、木ごて仕上げ、はけ引き仕上げがあり、その上に施工する仕上げ材の種類に応じて使い分ける。

一般塗装下地、壁紙張り下地の仕上げの場合は、 [ a ] 仕上げとする。
壁タイル接着剤張り下地の仕上げの場合は、 [ b ]仕上げとする。
セメントモルタル張りタイル下地の仕上げの場合は、 [ c ] 仕上げとする。

解答

4

[ 解説 ]

仕上げ材の下地となるセメントモルタル塗りの表面仕上げには、金ごて仕上げ、木ごて仕上げ、はけ引き仕上げがあり、その上に施工する仕上げ材の種類に応じて使い分ける。

一般塗装下地、壁紙張り下地の仕上げの場合は、金ごて仕上げとする。

壁タイル接着剤張り下地の仕上げの場合は、金ごて仕上げとする。

セメントモルタル張りタイル下地の仕上げの場合は、木ごて仕上げとする。

6.アルミニウム製建具工事において、枠のアンカー取付け位置は、枠の隅より 150 mm 内外を端とし、中間の間隔を [ a ]mm 以下とする。
くつずりをステンレス製とする場合は、厚さ [ b ] mm を標準とし、仕上げはヘアラインとする。

また、一般的に、破損及び発音防止のためのくつずり裏面のモルタル詰めは、取付け [ c ] に行う。

解答

5

[ 解説 ]

アルミニウム製建具工事において、枠のアンカー取付け位置は、枠の隅より 150 mm 内外を端とし、中間の間隔を 500mm 以下とする。

くつずりをステンレス製とする場合は、厚さ1.5mm を標準とし、仕上げはヘアラインとする。

また、一般的に、破損及び発音防止のためのくつずり裏面のモルタル詰めは、取付けに行う。

7.せっこうボード面の素地ごしらえのパテ処理の工法には、パテしごき、パテかい、パテ付けの3種類がある。

[ a ] は、面の状況に応じて、面のくぼみ、隙間、目違い等の部分を平滑にするためにパテを塗る。

また、パテかいは、 [ b ] にパテ処理するもので、素地とパテ面との肌違いが仕上げに影響するため、注意しなければならない。
なお、パテ付けは、特に [ c ] を要求される仕上げの場合に行う。

解答

3

[ 解説 ]

せっこうボード面の素地ごしらえのパテ処理の工法には、パテしごき、パテかい、パテ付けの3種類がある。

パテかいは、面の状況に応じて、面のくぼみ、隙間、目違い等の部分を平滑にするためにパテを塗る。

また、パテかいは、局部的にパテ処理するもので、素地とパテ面との肌違いが仕上げに影響するため、注意しなければならない。

なお、パテ付けは、特に美装性を要求される仕上げの場合に行う。

8.タイルカーペットを事務室用フリーアクセスフロア下地に施工する場合、床パネル相互間の段差と隙間を [ a ] mm 以下に調整した後、床パネルの目地とタイルカーペットの目地を [ b ] mm 程度ずらして割付けを行う。

また、カーペットの張付けは、粘着剥離形の接着剤を [ c ] の全面に塗布し、適切なオープンタイムをとり、圧着しながら行う。

解答

1

[ 解説 ]

タイルカーペットを事務室用フリーアクセスフロア下地に施工する場合、床パネル相互間の段差と隙間を1 mm 以下に調整した後、床パネルの目地とタイルカーペットの目地を100mm 程度ずらして割付けを行う。

また、カーペットの張付けは、粘着剥離形の接着剤を床パネルの全面に塗布し、適切なオープンタイムをとり、圧着しながら行う。

令和5年1級建築施工管理技士 二次検定 問題6 解答解説

令和5年 1級建築施工管理技士 二次 解答解説 問題6

問題6
次の 1.から 3.の各法文において、[  ] に当てはまる正しい語句又は数値を、下の該当する枠内から 1 つ選びなさい。

1. 建設業法(下請代金の支払)
第24条の3 元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払 を受けたときは、当該支払の対象となった建設工事を施工した下請負人に対して、当該元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び当該下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、当該支払を受けた日から [ ① ] 以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならない。

2 前項の場合において、元請負人は、同項に規定する下請代金のうち [ ② ] に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮をしなければならない。

3 ( 略)

1. 10 日 2. 20 日 3. 1月 4. 3月 5. 6月

1. 労務費 2. 交通費 3. 材料費 4. 事務費 5. 諸経費
解答

① 3、② 1

[ 解説 ]

建設業法

第24条の3(下請代金の支払)

元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払 を受けたときは、当該支払の対象となった建設工事を施工した下請負人に対して、当該元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び当該下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、当該支払を受けた日から1月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならない。

2 前項の場合において、元請負人は、同項に規定する下請代金のうち労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮をしなければならない。

3 ( 略)

2. 建築基準法施行令 (根切り工事、山留め工事等を行う場合の危害の防止)

第136条の3
建築工事等において根切り工事、山留め工事、ウエル工事、ケーソン工事その他基礎工事を行なう場合においては、あらかじめ、地下に埋設されたガス管、ケーブル、水道管及び下水道管の損壊による危害の発生を防止するための措置を講じなければならない。

2 (略)

3 (略)

4 建築工事等において深さ [ ③ ] メートル以上の根切り工事を行なう場合においては、地盤が崩壊するおそれがないとき、及び周辺の状況により危害防止上支障がないときを除き、山留めを設けなければならない。この場合において、山留めの根入れは、周辺の地盤の安定を保持するために相当な深さとしなければならない。

5 (略)

6 建築工事等における根切り及び山留めについては、その工事の施工中必要に応じて点検を行ない、山留めを補強し、排水を適当に行なう等これを安全な状態に維持するための措置を講ずるとともに、矢板等の抜取りに際しては、周辺の地盤の [ ④ ] による危害を防止するための措置を講じなければならない。

1. 0.5  2. 1.0  3. 1.5  4. 2.0  5. 2.5

1. 沈下 2. ゆるみ 3. 崩落 4. 陥没 5. 倒壊
解答例

③ 3、④ 1

[ 解説 ]

建築基準法施行令

第136条の3 (根切り工事、山留め工事等を行う場合の危害の防止)

建築工事等において根切り工事、山留め工事、ウエル工事、ケーソン工事その他基礎工事を行なう場合においては、あらかじめ、地下に埋設されたガス管、ケーブル、水道管及び下水道管の損壊による危害の発生を防止するための措置を講じなければならない。

2 (略)

3 (略)

4 建築工事等において深さ1.5メートル以上の根切り工事を行なう場合においては、地盤が崩壊するおそれがないとき、及び周辺の状況により危害防止上支障がないときを除き、山留めを設けなければならない。この場合において、山留めの根入れは、周辺の地盤の安定を保持するために相当な深さとしなければならない。

5 (略)

6 建築工事等における根切り及び山留めについては、その工事の施工中必要に応じて点検を行ない、山留めを補強し、排水を適当に行なう等これを安全な状態に維持するための措置を講ずるとともに、矢板等の抜取りに際しては、周辺の地盤の沈下による危害を防止するための措置を講じなければならない。

3. 労働安全衛生法(総括安全衛生管理者)

第 10 条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。

一 労働者の [ ⑤ ] 又は健康障害を防止するための措置に関すること。
二 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
三 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
四 労働災害の原因の調査及び [ ⑥ ] 防止対策に関すること。
五 前各号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの

2 ( 略)

3 ( 略)

1. 危害 2. 損傷 3. 危機 4. 損害 5. 危険

1. 発生 2. 拡大 3. 頻発 4. 再発 5. 被害
解答例

⑤ 5、⑥ 4

[ 解説 ]

労働安全衛生法

第10条(総括安全衛生管理者)

事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。

一 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。

二 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。

三 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。

四 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。

五 前各号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの

2 ( 略)

3 ( 略)

10章 石工事 1節 一般事項

第10章 石工事

1.一般事項

10.1.1 適用範囲

a)適用除外の工法
「標仕」では、現場打ちコンクリートの表面に、天然石またはテラゾを取り付ける工事を適用範囲としている。

次の場合は、適用しない。

ⅰ)下地に鉄骨造(間柱及び胴縁)が用いられる場合もあるが、下地としての適否を個々に検討する必要があり、「標仕」では対象としていない。

ⅱ)石材に近似した用い方をする大形の陶板及び結晶化ガラス等は、物性、使用板厚等が異なることから、対象としていない。

ⅲ)薄石をセメントモルタルや接着剤を用いて壁面に張り付ける工法は対象としてない。また、帯とろ工法も、耐震性が懸念され、適用から除外されている。

b)作業の流れ


図10.1.1 石工事の作業の流れ

c)製作工場の決定

現在でも一部は国内産の石材が用いられているが、多くは外国産となっている。また、表面仕上げ方法も機械化されている。そのために、製作工場の取り扱い石種、機械能力、得手不得手等を十分に検討し、適切な工場を選定させる。一般には設計図書で指定されることが多いが、指定のない場合には次のような事項に留意する。

①工場の経歴・実績
②工場の規模及び機械の設備
③受注能力(月産加工能力)
④製品の出来ばえ

⑤その他

d)施工計画書の記載事項

施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。

なお、ゴシック部分を考慮しながら品質計画を検討する。

①工程表(見本決定、製品の検査・着工・完了等の時期)
②施工業者名、作業の管理組織
③製作工場の機械設備
④現場における揚重・運搬計画・設備
⑤石材・テラゾの種類、仕上げの種類及びその使用箇所
⑥材料加工の方法、石の裏面処理方法・材料
⑦置場の確保、整備(運搬しやすい場所、破損に対して安全な場所、角材等の受台準備等)
⑧保管方法
⑨標準的石張り工法、施工順序
⑩アンカー、下地鉄筋、引金物、だぼ、かすがい、取付け金物等の材質、形状、位置、寸法
⑪伸縮調整目地
⑫取付け後の養生

⑬作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

e)施工図の記載内容

石工事に必要事項は特記仕様に記載されている。この記載事項について設計担当者と十分に打合わせを行い、施工図(石割り図、取り付け工作図、その他の詳細図及び原寸図等)に反映させる。施工図の内容については工事開始前に詳細な検討を行い、具体的に工事条件と照合し、相互に疑義や相違がないかを関係者と十分に協議して決定する。

施工図の内容は、おおむね次のとおりである。

①各面の石の割付け
②一般部、出隅、入隅等の各部の収まり詳細
③湿式・空積工法においては、取付け金物類(引金物、だぼ、緊結金物、受金物等)の使用箇所及びその詳細、特に落下時の危険性が高い箇所の詳細
④乾式工法においては、取付け金物類(乾式工法用ファスナー等)の使用箇所及びその詳細、特に落下時の危険性が高い箇所の詳細
⑤特殊部位(窓、出入口、エレベーター等の開口部、アーチ、上げ裏、笠木、甲板、隔て板等)周辺の詳細
⑥関連工事との取合い(設備機器等の取付けのために必要な穴あけ、欠き込み等の位置、寸法及び目地等)
⑦水切、水返し等の詳細

⑧その他必要と思われる部分の詳細

10.1.2 基本的要求品質
a)使用する材料

石材は、設計図書に指定されたものとするが、天然材料であることから、同一の種類の石材であっても、品質のばらつきが大きい。特に、石材の色調、模様、仕上げの種類や程度については意匠上の要求が厳しく、あらかじめその限度を実物見本により確認し、同時に納まりや施工方法についても、検討しておく必要がある。

また、石材は、そのほとんどが外国産であり、使用部位による石種の選定、必要量の確保が可能かどうか、加工の難易度についてもあらかじめ確認しておく必要がある。

石材が建築物に取り付けらえているのは、金物類によってである。石工事に用いる金物類は、重量物である石材に堅固に留め付ける強度、外気や水分にさらされても性能劣化しない耐久性等要求される品質は極めて高い。実際に使用する以前に、材質、形状等を十分検討しておく。

b)仕上り状態

石工事は高級な仕上げであり、その仕上りについても他の仕上材料の場合と比べて高い精度が要求される。このため、仕上り面の形状や寸法の許容差は、他の仕上材料の場合よりも小さいものとなる。石材は工場において加工されるもので、通常は建築部材として必要な精度を持つものとなっている。しかし、石工事の仕上り面は、下地に石材を取付けた結果として得られるため、単に材料としての石材の精度が良いだけでは、適切な状態とはんらない。したがって、石工事の仕上り面の精度を上げるためには、下地面の精度を適切に管理することが重要なポイントとなる。

「標仕」10.1.3(c)では、下地面の精度の標準値を示しているが、建物の規模、石張り面の見え掛りの程度等のほか、石材施工業者の施工能力も含めて総合的に必要な目標精度を定めるようにする。また、「所要の状態」とは、仕上げの不ぞろいの程度、色合の程度等について、あらかじめ限度を定めておき、この限度内に収まるように管理を行うことと考えればよい。これらの限度を定める場合にあっては、同時に限度を外れたものの処置方法についても明確にしておく。

c)機能・性能

石材の下地への取付けは、建築物の一部として必要な性能を発揮するために重要なものであり、外壁、内壁、床、特殊部位等によって適切な工法を具体的に定めている。「下地への取付けが所要の状態」とは、想定される外力等に対して安全であることを下地を含めて要求していると考えれば良い。

「品質計画」の立案に当たっては、プロセスの管理をいかに行うかという観点で、例えば、定められて工法が手順どおりに行われたことをどのように記録していくかを提案させることが考えられる。

10.1.3 施工一般

a)石材の割付け

「標仕」には一般部よりもむしろ、事故が発生しやすく最も注意しなければならない部分の割付け方法が規定されている。

ⅰ)動きのある目地周辺

水平打継ぎ部、伸縮調整目地部分等は、下地の乾燥収縮量や熱膨張量の違いなどで挙動差が生じる。また、地震時の変位量を正確に推定することは難しく、かつ予想以上に大きくなる可能性もある。したがって、この部分をまたいで一枚の石を取り付けないことを原則としている。やむを得ず取り付ける場合には、乾式工法を用い、ファスナーを工夫するなど挙動差を吸収する検討が必要である。

ⅱ)開口部回り

開口部回りは、地震の際の変位が大きくなりやすく、破損や脱落の可能性が大きい部分であり、適切な割付けが必要である。開口隅角部で不整形な石をバランスよく取り付けることは難しく、かつ、欠き込み部分に応力集中が生じて割れやすいため、L型に欠き込んだ石材を用いないような割付けとすることが望ましい。また、開口部回りは通常、建具のファスナーやフラッシングが石材に当たらないように納める。

b)石材の加工
1)加工範囲

入隅等でのみ込みとなる部分は、見え隠れとなる部分でも、施工上の誤差を考慮して、あらかじめ所定の目地位置より 15mm以上、表面仕上げと同じ仕上げをしておく。ただし、自動機械で行う石材の表面仕上げの場合は、石材全面が同一の仕上げとなるのでこの限りではない。


図10.1.2 表面仕上げの範囲 [ 壁水平断面(湿式工法) ]

2)加工場所

だぼ、引金物及びかすがいを取り付ける穴は、位置・径・深さを精度良く加工するため、工場加工を原則とする。ただし、加工の容易な大理石や砂岩等の場合には、外壁への適用を除き現場加工が一般的である。

道切りは、引金物を目地部に突き出させないために、合端に設ける溝であり、小形カッター等で溝彫りする。


図10.1.3 引金物・だぼ・かすがい取付け用穴の例

c)下地面の精度

1)下地への要求精度寸法
石材の取付けには、引金物やファスナーのような金物を用いるので、下地面と石材裏面との間隔が場所によって大きく異なると準備した金物が使えなくなる。そのため、下地には、「標仕」表10.1.1に示す精度を求めることとされている。

2)ファスナーの寸法調整範囲
乾式工法では、石材を下地に取付ける金物をあらかじめ設計寸法に合わせて製作して用いる。通常、乾式工法に用いる金物はファスナー内で ± 8mm程度の面外調整機構を組み込んでいるが、下地面精度が許容範囲を超えていると、使用できない金物が出てしまう。その結果、工期の遅れを来したり、複数の調整代を持つ金物を用意しなければならないことがる。

3)下地のはつり作業回避
仕上げ代を確保するために躯体のはつり作業は行わない。取付け金物あるいは取付け工法の変更で対応する。

10.1.4 養 生

a)雨水に対する養生
雨水時のモルタル作業及び目地詰め作業は、雨水が入らないようにシート等で養生するか、作業を中止する。また、モルタルが完全に硬化するまでは、雨・雪等が掛からないようにシート等で覆いをする。

b)壁面の養生
目地詰めまで完了した仕上げ面は、ビニルシートによる汚れ防止のほか、ものが当たりやすく破損のおそれのある所や、溶接作業による火花の飛び散るおそれのあるところでは、クッション材を挟んで合板等を用いて損傷を防ぐ。また、出隅部、作業通路等で石の破損を防止するためには、樹脂製の養生カバーを取り付ける。

c)床面の養生
床の施工終了後、建築物が完成するまで歩行禁止することは困難であるが、モルタルが硬化するまで歩行を禁止するとともに、石の表面を汚さないようにポリエチレンシートを敷き、その上に合板を敷き並べるなどにより破損防止を目的とした養生を行う。

10.1.5 清 掃

石材の清掃は。石種や仕上げによって留意点が若干異なるが、原則は「標仕」に示すとおりである。

1)花崗岩・砂岩等の粗面仕上げ
原則として水、場合によっては石けん水、合成洗剤等でナイロンブラシを用いて洗い、塩酸類に使用は極力避ける。セメント等の汚れの場合は、事前に十分含水させ、希釈した塩酸で洗う。この場合、酸洗い後も十分水洗いを行う。

2)花崗岩・大理石等の磨き仕上げ
日常の軽度な汚れは清浄な布でからぶきする。付着した汚れは、水洗い又は濡れた布でふき取り、乾いた布で水分を除去して乾燥を待ち、再度からぶきする。目地回りに付着した汚れは目地材を損傷させないように、ブラシで取り除く。水洗いで除去できない汚れは中性合成洗剤等を溶かしたぬるま湯を用いて洗い。乾いた布で水分を除去して乾燥を待ち、再度からぶきする。

3)テラゾの磨き仕上げ
種石部分よりセメント部分が汚染されやすい。施工中のセメントモルタル等による汚染は、その都度速やかに清水を注ぎ、ナイロンブラシ等を用いて洗い落とす。特にテラゾは水洗いによってつやが消えやすいので、汚染しないことと乾燥した布での清掃が前提である。

4)床及び階段
石材の清掃は原則として水洗いまでであるが、維持管理のために、石工事でワックス掛けを行う場合もあるので、「標仕」ではワックス掛けの要否は特記によるとしている。ワックス掛けが特記された場合には、ワックスは仕上材を汚染しないものとし、ワックス掛けを石材の施工後すぐに行うと下地モルタルの水分により汚染が生じる場合があるので、その時期にも注意する。

10章 石工事 2節 材 料

第10章 石工事 第2節 材 料 石 材
2.材 料
10.2.1 石 材
(1)石材の品質
JIS A5003(石材)では、石材の品質は産地及び種類ごとにそれぞれ1等品、2等品及び 3等品となっているが、「標仕」では特記により等級を選択するのを原則としている。建築用の石工事では、1等品を用いるのが通常である。ただし、「標仕」では、特記がない場合に床用石材は2等品となる。
上記のJISの品質等級は、欠点の有無や色・柄のばらつきのような外観の良否を評価基準としているために、あくまで主観的な判断とならざるをえない。したがって、商取引上は、見本品を作成することにより外観上の品質を規定することが行われている。
一方、石材の品質は、外観のみならず、使用部位での要求条件に即した品質を有していることが前提となる。特に張り石では、JISで規定していない曲げ強さや金属取付部の耐力及び発錆懸念の有無等が必須の選択指標となる。いずれも、事前に検討が必要となる。10.5.1 (5) (ⅰ) に示した留意点も参照されたい。
表10.2.1 にJISに定められた品質の基準を参考までに示す。
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表10.2.1 品質の基準(JIS A5003:1995)
(2)石材の種類
ⅰ)建築用石材は使用箇所に見合った性質、色合、感触のものが用いられており、過去の使用実績が多く、物性及び取り扱い要領がよく知られている石材の種類は、花崗岩、大理石及び砂岩である。各種石材の特徴を表10.2.2 に示す。
表10.2.2 主な天然石の特徴
花こう岩(火成岩)
花こう岩はいわゆる御影石とよばれ、地下深部のマグマが地殻内で冷却固結したもので、
結晶質の石材で硬く、耐摩耗性、耐久性に優れ、磨くと光沢があり、大材が得られる石材として建築物の外部・床・階段等を中心に最も多く用いられている。耐火性の点で劣るなどの欠点もある。
大理石(変成岩)
大理石は主に建物の内部で用いられる代表的な装飾石材で、石灰岩が地中の熱で変成し、再結晶した石材である。石灰質の混入鉱物によって白・ベージュ、灰、緑、紅、黒等の色がある。また、無地のほか、しま・筋・更紗・蛇紋等の模様が入り、ち密で磨くと光沢が出る。耐酸性・耐火性に乏しく、屋外に使用すると半年から一年で表面のつやを失う。
砂岩(堆積岩)
砂粒とけい酸質・酸化鉄・石灰質・粘土等が水中に堆積し、こう結したもの。一般に耐火性に優れたものが多いが、吸水性が大きく耐摩耗性・耐凍害性・耐久性に劣り、磨いてもつやは出ない。国産は少なく、インド等かだの輸入材を用いることが多い。
石灰岩(堆積岩)
石灰岩は大部分が炭酸カルシウムからなり、炭酸石灰質の殻をもつ生物の化石や海水中の成分が沈殿しあt岩石である。大理石にくらべて粗粒であるが他の石材にない独特の風合をもつ。一般には柔らかく、加工しやすい反面、取付け部耐力、曲げ強度等は他の石材に比べると小さく、耐水性に劣り、また、産出場所による品質のばらつきが大きいために、原則として内装の壁・床材として用いることがのぞましい。
安山岩(火成岩)
花崗岩とともに代表的な硬石である。石質・色等の種類が多く、強度・耐久性に優れ、特に耐火性は大きく外装用石材としても用いられる。しかし、外見は花崗岩に劣り、磨いてもつやが出ず、大材が得られない。
凝灰岩(堆積岩)
火山の噴出物、砂、岩塊片などが水中あるいは陸上に堆積して凝固した岩石で、栃木県の大谷石、静岡県の伊豆若草石が有名。
蛇紋岩(変成岩)
かんらん岩が変質したもので、黒・暗緑・黄緑・白色等が入り混じった模様があり、磨くと美しい光沢が得られる。性状は大理石とほぼ同じで、やはり屋外で使用すると光沢を失い退色する。
ⅱ)建築に石張りを用いる箇所には意匠性、躯体保護機能等はもとより、建物の使用期間中に外観を損なったり、損傷・脱落することがなく、取付けやメンテナンスがしやすいなど、様々な性能が要求されている。現在一般的に使用されている花崗岩と大理石について、その名称・産地の例を表10.2.3および4に示すが、同一産地でも採取する山が違ったり国内の取扱い業者が違う場合には名称やカタカナ表示が異なる場合もある。石材は天然材料であり、物性値についてもあくまで参考値である。
①花崗岩は世界各地から輸入されており、現在は韓国・インド・中国が三大供給地であり、中国産が増加している。また、例示した花崗岩には磨き仕上げを施すと風化現象が目立つ石材(例えば、シェニートモンチーク)や色調の不ぞろいが出やすい石材(例えば、マホガニーレッド)も含まれているので、過去の使用例も参照し、注意して選択しなければならない。
②大理石はイタリア産が多く、最近は輸入品の6割以上が板石に加工され輸入されている。
なお、表中の組織は組織の粗さであり、級別は市場価格の目安である。
表10.2.3花崗岩の石種と物性例2.jpg
表10.2.3 花崗岩の石種と物性例
表10.2.4大理石類の石種と物性例2.jpg
表10.2.4 大理石の石種と物性例
3)石材の形状・寸法
石材の形状及び寸法は特記によるが、取付け部位や工法を考慮することが求められる。一般的には、形状は矩形とし、1枚の面積は 0.8m2以下とする。
4)石材の表面仕上げ
仕上げの種類に対応する仕上げの程度・方法や石材の種類は、「標仕」による。また、その特徴を表10.2.5に示す。同一石材でも仕上げの種類が異なると、表面状態が変わるだけでなく、色調も大きく異なるので見本品で確認する。
なお、各種仕上げの使用状況を表10.2.6に示す。
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表10.2.5仕上げの種類とその特徴
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表10.2.6各種仕上げの使用状況
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    のみ切り
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    びしゃん
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    こたたき
b)テラゾ
1)テラゾの品質
テラゾは、JIS A5411(テラゾ)に定められており、花こう岩、大理石や石灰岩の砕石を種石とした上塗りモルタル(化粧モルタル)と一般のコンクリートに用いる川砂を骨材とした下塗りモルタル(裏打ちモルタル)を2層で振動加圧成型し、十分硬化するまで養生したのち、上塗りモルタル部を切削研磨し、大理石のような光沢に仕上げたブロックおよびタイルである。JIS規格による分類を表10.2.7に、その品質規格を表10.2.8に示す。昨今では、国産テラゾの価格が輸入石材価格を上回ることとなり、テラゾブロックはほとんど姿を消している。テラゾタイルも海外製品が輸入されている。
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表10.2.7 テラゾの分類(JIS A5411:2008)
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表10.2.8 テラゾの品質(JIS A5411:2008)
2)テラゾの種類
ⅰ)種石は種類が多く、一般的には表10.2.9に示すものが使用され、寸法は 5〜12mm(3.5分下5厘止め)が標準であるが「標仕」では特記することとし、特記のない場合は、大理石で 1.5〜12mmのものとしている。
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表10.2.9 テラゾ用種石の物性
ⅱ)セメントを着色するための顔料は、耐アルカリ性・耐光性があり、コンクリートの強度や収縮等に悪影響を及ぼさない無機質系材料が使用されている。
3)テラゾの形状・寸法
テラゾブロックおよびテラゾタイルは、製作物であるため、その形状・寸法はいずれも特記される。
なお、テラゾタイルでは、規格寸法の輸入製品が流通している。
4)テラゾの表面仕上げ
テラゾブロックおよびテラゾタイルの表面仕上げは、石材の磨き仕上げに順じ、その種類・程度は特記される。

10.2.2 取付け金物
a)外壁湿式工法及び内壁空積工法用金物
1)引金物・だぼ・かずがい
ⅰ)湿式工法・空積工法に使用する引金物、だぼ、かずがいは、「標仕」にステンレス(SUS304)と定められている。一般的なステンレス(SUS304)の種類の例を表10.2.10に示す。現状の石工事では、引金物には曲げ加工の比較的容易な JIS G4309(ステンレス鋼線)のSUS 304 W1(軟質2号、引張強さ 800N/mm 2程度)が多く使用されている。このほかでは、SUS304-W1/2H(半硬質、引張強さ 1,200N/mm2程度)も使用されている。
ⅱ)引金物、だぼ及びかすがいの径は、使用する石材の厚さとのバランスを考慮して、一般的に使用されている寸法が「標仕」に定められている。このうち、空積工法用の引金物については、この工法が内装に限定され、積上げ高さも一般的な壁高さに限定されていることから、ひとまわり細い径を許容寸法としている。一般的な湿式工法の金物の使用例を図10.3.1に示す。
ⅲ)だぼの形状として、従来より関東方面では通しだぼが、関西方面では腰掛だぼが多く使われてきた。腰掛だぼは、石材の保持性能に問題があり、阪神大震災でも被害が多かったことから、通しだぼ形式に限定されている。
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表10.2.10 ステンレス鋼線の種類の例(JASS9より)
2)受金物
受金物は、湿式工法・空積工法の場合に、石材の荷重を受けるために設ける金物で、「標仕」10.2.2(a)(2)では、入手の容易さ等を考慮して、特記がなければ、材質がSS400の山形鋼を切断加工して用いることとしている。この鋼材の品質は、JIS G3101(一般構造用圧延鋼材)に規定されており、建築構造物に最も一般的に使用されるもので、その機械的性質を表10.2.11に示す。受金物の錆止めとして。「標仕」表18.3.1 [ 鋼材面錆止め塗料の種別」に示すA種を1回塗りすることとしており、これはJIS K5625(シアナミド鉛さび止めペイント)またはJIS K5674(鉛・クロムフリーさび止めペイント)に規定される塗料である。外壁の受金物に用いる場合は、上記のA種を用いるか、またはめっき防錆処理、ステンレス製アングル材の使用等の対策を施す必要がある。受金物の使用例を図10.3.4に示す。
表10.2.11「標仕」に定められている受金物の機械的性質.jpg
表10.12.11「標仕」に定められている受金物の機械的性質
3)鉄筋
引金物緊結用の流し鉄筋は、湿式工法の場合ではモルタルで被覆されるが、外壁に使用されることから耐久性を考慮して錆止め塗料塗りを行うこととしている。錆止め塗料の詳細については 18章を参照されたい。
b)乾式工法用金物
1)「標仕」で乾式工法用金物は、スライド方式かロッキング方式を特記することとしており方式が決まると形状・寸法が決まる。いずれの方式も、仕上り面精度の確保が比較的容易であることや、躯体の変更をある程度吸収可能であること等からダブルファスナー形式としている。ファスナーに使われているステンレス鋼材は、JIS G4317(熱間成形ステンレス鋼形鋼)またはJIS G4304(熱間圧延ステンレス鋼板および鋼帯)のSUS304を加工したものが一般的である。
2)石材とファスナーとの取合いは、だぼを使用するが、石材の重量、厚さ、強度等を総合的に判断して寸法を決定する。一般に乾式工法用のだぼは湿式工法用に比べて太径のものが使われる。「標仕」には標準の形式・寸法が定められている。
3)ステンレス鋼材の場合、穴あけ加工や溶接によってひずみが発生し、取付け誤差の原因となったり、現場での加工が困難であることから、ファスナーはだぼやワッシャー等全ての部品の寸法形状を決めて、工場加工し納入することが原則である。
c)特殊部位用金物
1)引金物・だぼ・かずがい
湿式工法・空積工法で施工する場合の特殊部位に使用する引金物、だぼ、かすがいは、一般部分に使用するものと同様であるが、それらの形状・寸法および用い方は、当該箇所の石材の納め方に応じて決定する。
2)ファスナー
乾式工法に用いる金物は、基本的に一般部位に用いる金物と同一のものを用いる。石材の大きさ等によっては同じ寸法の金物と取り付けられない場合もあるので、特記を原則としている。ただし、だぼの形状は、通しだぼとしている。
3)吊金物・吊りボルト
石材を上げ裏やまぐさ等の部分に取り付ける場合には、吊金物、吊りボルトや受金物等石材の自重を支える金物を用いるが、これらの場合はその都度設計し、特記された金物を用いる。軒裏側に化粧ナットを見せない場合や、各種アンカー金物を使用する場合には、材質や取付け方法とその耐力を確認して採用しなければならない。吊りボルトの頭部の処理の方法を図10.7.1に示す。
4)隔て板用金物 
隔て板に使用する金物は、隔て板どうし、隔て板と前板の取合いに使用するだぼ、かすがいがあり、「標仕」に材質、寸法、形状等が定められている。隔て板上部にはこれら以外にT型、I型等の形状のステンレス鋼板を用いる場合もある。使用例を図10.7.4に示す。
d)先付けアンカー
1)アンカーの種類
「標仕」10.2.2 (d)では、アンカーの材料および寸法は特記することを原則としているが、特記がない場合は、「標仕」10.2.2 (d)(1)または(2)によるとしている。石材を構造体に締め付けるに当たって、アンカーは重要な役割を果たす。
先付けアンカーの場合は、アンカーの種類、定着長さを適切に確保すれば、その強度はアンカーボルトの耐力で決まり、信頼性の高いアンカーである。
2)乾式工法用アンカー
乾式工法用のアンカーは、ファスナーとの耐久性等のバランスを配慮してステンレス製とする。
e)あと施工アンカー
本来、アンカーは、先付けアンカーが望ましいが、施工性や施工精度に問題があるため、最近ではあと施工アンカーが多く使われている。
あと施工アンカーの場合は、下地コンクリートの状態、配筋等により必ずしみ十分な耐力が得られるような施工がしにくことがある。接着系アンカーは埋込み長さが長いことや、養生時間を必要とすることから、金属系アンカー、なかでもめねじ形(打込み式)より信頼性の高いおねじ形(締込み式)アンカーが推奨される。あと施工アンカーの引抜き耐力を確認するために、「標仕」14.1.3(b)(4)に定められた試験を行い、その結果を提出させることを原則としている。この試験はあと施工アンカーの最大耐力(破壊耐力)を求めるものではなく、設計された引張強度不足がないことを前提としている、常時引張力の作用する箇所の使用に当たっては十分な安全率をみる必要がある。(14.1.3(a)(ⅱ)参照)
f)その他の金物
その他の金物としては、役物部分の裏側に補強のために取り付けるアングルピースや、石裏の力石を取り付けるためのだぼ、力石の代わりに取り付ける荷重受金物等、主として特殊部位に使用する金物があり、特記されたものを使用する。
特記のない場合は、実物見本、組み立て見本あるいは、物性、品質等の証明となる資料を監督職員に提出する。

10.2.3 その他の材料
a)セメントモルタル
1)使用材料
セメントモルタルの材料は、15.2.2 による。基本的に、セメントは普通ポルトランドセメント、砂は粗目とする。石材が白色系や透明度の高い大理石の場合には、川砂中の不純物によって大理石を黄変させたり、裏込めモルタルあるいは取付け用モルタルの色が表面に透けて見えることがあるので、寒水石粒等白色系の砕砂を白色ポルトランドセメントを用いる。
2)調合
セメントモルタルは使用する部位に応じて、その要求する軟度が異なり、施工性および施工後の品質に影響を及ぼす。セメントモルタルの調合は、目安が「標仕」表10.2.5に定められているが、これ以外は15章に準ずる。
3)混和材料
石工事に用いるセメントモルタルに混合される混和材料は、モルタルの用途に応じていくつかの種類がある。
①裏込めモルタルは、躯体と石材の間を確実に充填し、充填部分にじゃんか等の欠陥が生じず、モルタルと石材や躯体との間に隙間が生じないことなどが要求されるために、減水材・分散剤等の混和材が用いられる。
②敷きモルタルは、いわゆるバサモルと称されるもので、混和材料が使用されることは少ない。
③張り付け用ペーストや目地モルタルには接着性・防水性等が期待され、メチルセルロース、SBRや防水剤等が用いられる。
4)取付け用モルタル
取付け用モルタルは、特に急結性を要し、硬化の早い材料を使用する。最近は止水・充填・補修用の材料である止水用セメントが多く使われている。石裏面の各種の金物は、金物表面が結露しやすく、その際にモルタル中に塩分が存在すると腐食が促進されるため、塩化カルシウムを含む急結剤は使用してはならない。
5)目地モルタル
目地モルタルは、作業性の向上、ひび割れ防止および白華防止等を目的として既調合セメントモルタルが数種類市販されており、既調合材料を使用することが望ましい。ただし、現場調合とする場合は、「標仕」表10.2.5による。
b)石裏面処理材
1)石裏面処理材が使用される目的は、主としてぬれ色および白華の防止であり、湿式工法で採用される。また、乾式工事や空積工法においても、最下段の石は水分の多い環境に取り付けられるため、ぬれ色、白華対策として石裏面処理材を使用することが望ましい。
2)石裏面処理材は、各接着剤製造所によって様々なものが開発されているが、過去の実績や不具合等の例を知っている石材施業者の指定する製品を用いるのが無難である。
3)石裏面処理材は、製作工場で施工することを原則とするが、止むを得ず現場で塗布する場合には換気に留意する。
c)裏打ち処理材
裏打ち処理材は、繊維補強タイプ(クロスヤチョップを樹脂で張り付けたもの)と、石材の荷重受けとしての力石のようなものとに分けられる。
ⅰ)繊維補強タイプは、石材が衝撃を受けた場合の飛散・脱落防止を目的として乾式工法や空積工法の壁および上げ裏等で採用される。
ⅱ)力石は、石材の小口に引金物を設けにくい箇所、石材荷重を納まり上見ばえよく受けるため、あるいは石材を補強するために石裏面に施すもので、乾式工法、湿式工法および空積工法で用いられる。
d)シーリング材
シーリング材の詳細は第9章6節を参照されたい。シーリング材は使用部位や目的に応じて使い分けなければならないが、石工事において留意すべき点は、目的周辺部の汚染である。
ⅰ)成分の移行による石材そのものの汚染は、プライマーによって防止できることが多いので、プライマーを必ず使用する。その際、表面と小口との角の部分は切断状態がシャープでなく欠けていたりして、プライマーが十分塗布できず、しみが発生する要因になることがある。目地幅は、プライマー塗布の作業性等も考慮して、最低 6mm以上を確保する。
ⅱ)ほかにもシーリング材に付着した塵あいによる汚れ等にも留意する。
ⅲ)特に大理石の場合には、シーリング材からの揮散成分が付着した目地周辺部に、汚染が比較的多いので、事前にシーリング材製造業者および石材施工業者と協議することが望ましい。
ⅳ)花こう岩等についても吸水率の大きい材種については同様である。
ⅴ)汚染の観点から評価すると、表10.2.12のようになる。シーリング材は、石工事ではなくシーリング工事の範囲で取り扱われることから、硬化後の諸性能に勝る2成分形の使用がほとんどである。
表10.2.12シーリング材による汚染の観点からの評価.jpg
表10.2.12 シーリング材による汚染の観点からの評価
e)ドレンパイプ
ドレンパイプは石裏または石目地裏に設け、浸入水の排水と通気による裏込めモルタルの乾燥促進を図り、ぬれ色や白華を防止するためのものでその仕様は特記による。石材の縦目地ごとに設けることが望ましいが、事例としては縦目地2~3本ごとおよび出隅・入隅に配置することが多い。一般的に樹脂ネット製の25〜35φのパイプに目詰まり防止用としてクロスのメッシュを巻いたものが使用されている。
f)だぼ穴充填材
だぼ穴充填材にはセメントペースト、エポキシ樹脂、ゴムチューブ等が用いられている。それらは、次の事項に留意して選定しなければならない。
ⅰ)だぼ穴に充填しやすい
ⅱ)取り付け金物の形式に応じた硬さを持つ
ⅲ)適度の接着強度をもつ
ⅳ)石材を汚染しない
ⅴ)適度の止水性能を持つ
ⅵ)変質・膨張しない。