1級建築施工管理技士 内装仕上 集合住宅の騒音・振動対策

建築品質 内装仕上工事


86)集合住宅の騒音・振動対策

集合住宅の生活音には、建物の床や壁など躯体の振動で伝わる個体伝搬音と話し声や音楽など空気の振動によって伝わる空気伝搬音がある。この二つの音が複合的に混在し伝わって、集合住宅の騒音、振動のクレームにつながる。空気伝搬音は住戸間界壁や床、天井の下地材や仕上げ材の他、外装サッシの遮音性能などの影響を受ける。

設計条件として要求遮音性能値を明確にしても、反射や共鳴・共振・施工誤差等の不確定な要因のために竣工時の遮音性能を正確に予測することは困難である。住宅性能評価を受ける場合は、設計者、施工者は事業主と協議し、住戸の遮音性能を確認するための測定調査費用の予算を見込んでおくことが必要である。

1.外部からの騒音を軽減する

外部騒音を軽減するには、防音サッシが給気口からの音の伝搬を軽減させる消音ボックスを採用する。騒音が大きな道路に面した集合住宅では、T-3等級以上の防音合わせガラスのサッシを採用するのが望ましい。

> 049 建具に必要な性能

2.隣戸とのプライバシーに配慮した住戸間界壁

日本建築学会では住戸間界壁の遮音等級(室間平均音圧レベル差)はD-50を推奨している。乾式間仕切りを採用する場合は、各種取合い部分で遮音が低下するため、カタログデータの1ランク良いものを採用するほうが望ましい。

3.上下階の床の衝撃音と振動

集合住宅で最も厄介であるのが、家具などを動かす音などの軽量床衝撃音(LL)と子どもが走る音などの重量床衝撃音(LH)である。LLは床仕上げ材をクッション性の材料にしれば解決するが、LHは床版が振動して下階に伝わるため、振動を伝えにくい仕上げ材の使用、防振二重床の採用、躯体床の剛性確保(梁に囲われた面積(拘束面積という)を小さくするか、床スラブを厚くする)、下階の天井を防振吊りにし、天井裏に吸音材を敷設するなどが必要である。日本建築学会では床衝撃音の性能基準をして、LHはL-50、LLはL-45を推奨している。

4.機械室からの躯体の伝搬音と振動

機械式立体駐車場やエレベーター、ポンプ室、電気室などの機械が発する騒音や振動は躯体伝播で伝わるため、騒音を防ぐのは困難である。これらの設備室は別棟にすることが原則であるが、どうしても同じ棟に設けなければならない場合は、防振浮き床や浮き基礎にし、配管も防振吊りにする等、躯体と縁を切る、機械室内を吸音するなど徹底した防振防音対策が必要である。

5.その他の騒音源と振動

①玄関エンジンドアの駆動音や振動が上階居室に伝播する。エンジンドアは防振低騒音タイプをし、設置部分には防振装置を設置する。

②深夜には共用廊下や階段の歩行音がクレームになるケースもある。階段が鉄骨造の場合は段床にPCa版を採用するなどとし、床にはビニルシート等を張る。

③金属折板でできた庇や屋根で、断熱材が施工されていない場合は雨音に対する防音対策が必要となる。

集合住宅の騒音・振動対策